JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
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2002年 アメリカ/イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director リー・タマホリ Cast ピアース・ブロスナン ハリー・ベリー トビー・スティーヴンス ロザムンド・パイク リック・ユーン ジュディ・デンチ ジョン・クリーズ マイケル・マドセン ウィル・ユン・リー ケネス・ツァン エミリオ・エチェバリア コリン・サーモン サマンサ・ボンド マドンナ 短評 『スパイダー』のL.タマホリが監督するシリーズ第20作目にしてジェームズ・ボンド(P.ブロスナン)が捕虜に。タイトルバック前のストーリーとしては1,2を争う悪い出来。テロリストとして西側が捕らえていたムーン大佐(W.Y.リー)の腹心ザオ(R.ユーン)との交換により14ヶ月もの捕虜生活から解き放たれる。スパイとしての威厳が失われたような気がする。凄腕のスパイのあるべき姿ではない。善玉ボンドガール、ジンクス(H.ベリー)も悪玉ボンドガール、ミランダ(R.バイク)もビューティであるが、歴代求められてきたワイルドさに欠ける。特にミランダの方に要求される荒々しさがないのだ。MI6の諜報員ながら裏切り者であったと終盤に判る設定のためある程度は仕方がないのかもしれないが。悪役グスタフ(T.スティーヴンス)は結構良かった。ダイヤモンド産地を偽るいかさま事業で巨額の富を持つグスタフは、衛星イカルスの強大な武力による世界的陰謀を謀り、自らの遺伝子を書き換えた後遺症で眠ることがないというサイコ度抜群のキャラだ。一方、ザオが乗るジャガーと氷上チェイスシーンを繰り広げるボンドカー、アストン・マーチンは素敵だ。BMWからの返り咲きに感動。今作からのニューQ(J.クリーズ)はいい感じ。発明の方はというと、アストン・マーチンをインビジブルにしてしまう、ちょっとやり過ぎな改良。遊び感覚は大事にしたのだろうが、テクノロジーの域を超えてしまっている。他にもやり過ぎはある。マネーペニー(S.ボンド)のバーチャルシステムでのプレイだ。ボンドとのラブシーンを一人勝手にバーチャルプレイなんてのはして欲しくなかった。マティーニネタもあるにはあるが、作り方なんてどうでもいい感じになってきた。シェイクに拘ってはいるようだが・・。ブロスナンの走る格好はますます『ターミネーター2』のT−1000に似てきました。カメオ出演のマドンナが主題歌♪ダイ・アナザー・デイ♪を歌う。主題歌の流れるタイトルバックに本編に関わるシーンをカットバックで挿入するというという試みもあったが、捕虜となった間の拷問シーンでは、007が捕虜という設定を認めたくないだけに効果アリとは言えない。 1983年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ジョン・ランディス Cast ダン・エイクロイド エディ・マーフィ ラルフ・ベラミー ドン・アメチ デンホルム・エリオット ジェイミー・リー・カーティス ポール・グリーソン カースティン・ホルビー フランク・オズ 短評 『サボテン・ブラザース』のJ.ランディス監督によるコメディは以後同じくE.マーフィを起用した『ビバリーヒルズ・コップ3』『星の王子ニューヨークへ行く』とノリは同じ。足の悪いベトナム復員兵を装い路上で小銭をせびるビリー(マーフィ)はいかにもといったキャラクター。環境が卑しさを引き出すのであって、ビリーのような男でもそれなりの地位や環境を与えれば会社も経営していけるとするランドルフ(R.ベラミー)とモーティマー(D.アメチ)デューク兄弟の1ドルの賭けにもてあそばれるビリーとデューク先物仲買会社重役ルイス(D.エイクロイド)。いやいやながらデューク兄弟の人間行動科学実験に協力するコールマン(D.エリオット)はある意味ひどい執事だ。泥棒の罪をきせられたルイスは釈放された後、オフィーリア(J.L.力ーティス)と共に自分の邸宅に帰るが、コールマンに知らんぷりされるのだ。冷凍オレンジの事前情報をビークス(P.グリーソン)から手に入れ、大儲けを企むデューク兄弟に仕返しをする。脱げない猿のぬいぐるみを着せられ、発情した猿と共にアフリカに送られるビークスの訴えかけるようなぬいぐるみ奥の目の演技が哀愁たっぷり。デューク兄弟には破産を、自分達は大金持ちになっている4人はルイス、ビリー、オフィーリアに、最後の一人はなんとあの知らん振りコールマンである。オーソドックスな展開ながらE.マーフィとD.エイクロイドのコンビは結構いける。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ジュリー・テイモア Cast アンソニー・ホプキンス ジェシカ・ラング アラン・カミング ジョナサン・リース・マイヤース マシュー・リース ハリー・レニックス 短評 ブロードウェイで活躍し、『ライオン・キング』の演出によりトニー賞を受賞したテイモアが監督。彼女は「魔笛」等クラシックオペラの演出でも評価されている。そんな彼女の監督作品であるが、前衛的な作品で評価されているテイモアは、今回も時代背景が中世でありながら、オープンカーを登場させたりピンボールマシンを設置したりと奇抜な発想でシェークスピアの舞台劇を表現する。私にはこの辺の感覚について行けず、いまいちという感じ。しかし原作はシェ−クスピアの「タイタス・アンドロニカス」、血で血を洗うような凄まじい復讐劇でありながら、人間の心理描写は流石。テイモアの『タイタス』も人間性の面を深く掘り下げ表現していくという原作の優れた部分は失ってはいなかった。また、腕を切り落としたり、殺した後、パイに混ぜて食べさせたり内容は残酷そのものであるが、目を背けなければならないことはない。ラングとホプキンスはそれぞれはまり役であるが、彼らに負けず、皇帝役を演じたカミングが良かった。独裁者でありながら、ラング演じる王妃に操られるというところを奇妙に演じる。余談だが、カミングは佐藤B作に似てる? 1997年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ジェームズ・キャメロン Cast レオナルド・ディカプリオ ケイト・ウィンスレット ビリー・ゼイン キャシー・ベイツ フランシス・フィッシャー ビル・パクストン バーナード・ヒル 短評 本作品、アカデミー賞11部門受賞。その瞬間キング・オブ・ザ・ワールドになれたそうなJ.キャメロン監督の脚本は見事大衆の心を掴んだ。何度も映画化された実際に起こった海難事故を題材にラブストーリーを絡めた超大作である。タイタニックのあの悲劇から生き残ったヒロインがタイタニック号の自らが語る回想世界へ引き上げ船の船員と共に我々を引き込むといった展開は上手い。引き上げ船とヒロイン・ローズ(K.ウィンスレット)を結びつけるのが、海底から発見されたスケッチ画のモデルだったことと、彼女が見につけていた碧洋のハートという宝石。ただ、この宝石、高価なだけで嫌なやつだったB.ゼーン演じる婚約者から送られたもの。みんな海底を探していたが、実はローズが持っていた。ローズも嫌っていたはずだけど一財産は簡単には捨てられんわな。最後、ラブストーリー部分に一言。ローズとジャック(L.ディカプリオ)があそこまで惹かれあう理由、説得力が弱い。上流階級と三等客室の庶民、互いに自分の世界外に憧れたんだと納得するしかないんだろうか? 1976年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director アラン・J・パクラ Cast ダスティン・ホフマン ロバート・レッドフォード ジェイソン・ロバーズ ジャック・ウォーデン ハル・ホルブルック ジェーン・アレクサンダー ネッド・ビーティ 短評 ニクソン大統領を始めとするホワイトハウスの違法諜報活動、後にウォーターゲート事件として知られる陰謀に挑む二人のワシントン・ポスト紙記者バーンスタインとウッドワードの活躍を描いた映画。D.ホフマンとR.レッドフォードが謎を求め、聴き込み調査により断片的な事象から根気良く、奥に潜む黒幕追跡する。タイプライターの音も高らかに記事にしていく様は、リズミカルで力強いし、イニシャル、等浮かび上がった題材から次々に謎解きしていくことが探偵業の様でもあり面白い。表現の自由をもと、一方では報道責任から裏づけにこだわりつつ、部下を信用する編集長の姿はカッコイイ。この役でJ.ロバーズはアカデミー助演男優賞を獲得したそうな。陰謀という題材のため全体に暗いイメージであるが、ワシントン・ポスト紙の編集室は非常に明るく、机や椅子、書類入れなどは、赤や青、緑などの原色を使っており、活気のある職場であることが強く伝わってくる。難しい題材ではあるが、面白い映画。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ジョージ・ティルマンJr. Cast ロバート・デ・ニーロ キューバ・グッティングJr. シャーリーズ・セロン アーン・ジャニュー・エリス ハル・ホルブルック マイケル・ラパポート 短評 マスター・ダイバーとして讃えられたブラシアの半生の映画化。実話であるだけに凄いと思うところもあるが、アカデミー賞男優を配したわりにはちょっと残念な映画。ただ、時代背景から、映画に出てきたクラシックな潜水用具は今のハイテクのものに比べ、独特の雰囲気を出していて、登場人物の印象も無機質でない温もりを感じるように思える。なんでもそうであるが、クラシックでアンティークのいいところはそれに尽きるのではないだろうか?その時代背景の衣装はセロンに合う。『サイダー・ハウス・ルール』や『バガーヴァンスの伝説』でも似合っていた。最期に、デビッド・キースが出ていた。最近では『U571』にも出ていたし、『愛と青春の旅立ち』のシド・ウォーリーで印象的な演技を見せた彼は、軍隊ものばっかという感じだが、どんどん脇によっていってるぞー。 2003年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director リチャード・ドナー Cast ポール・ウォーカー フランシス・オコナー ジェラルド・バトラー ビリー・コノリー イーサン・エンブリー アンナ・フリエル マートン・ソーカス マイケル・シーン ランベール・ウィルソン マット・クレイヴン デヴィッド・シューリス ニール・マクドノー 短評 『オーメン』『スーパーマン』『グーニーズ』『マーヴェリック』『陰謀のセオリー』『リーサル・ウェポン』シリーズの監督R.ドナーがマイケル・クライトンの原作を『ワイルド・スピード』シリーズでブレイクのP.ウォーカーを起用して臨むSF歴史ロマン。この映画ではタイムマシンで時空を移動するのではない。物質を量子レベルにまで分解情報化し、別の場所で再生しようというテレポーテーション操作の結果、偶然に存在するワームホールから14世紀のフランス社会へトリップするというもの。ただ、ワームホールは一方通行だったと思う。14世紀社会から同じ量子化装置に帰ってこられるというのには納得いかないところもあるが・・。現代科学から期待される夢のタイムトラベル技術の提示はこれまでに無く面白い。また、科学技術がもたらす夢のみを語るのではなく、一方では科学技術のクリアー出来ない限界も語ることで、真実味を持たせている。テレポートを繰り返すことである確率で起こる複写エラーがもたらす歪も生じ完全な身体に復元できなくなるというもの。またこういった題材においては、時間を行き来することによる歴史の改変が面白みであるが、それを遺跡発掘に携わるチームを登場人物として描くことで考古学的ロマンを演出するあたりグッドアイデアといえる。14世紀の地層から救助を求めるジョンストン博士(B.コノリー)のメッセージを発見。彼を助けるべくITC社のテレポートマシンに乗り込む息子クリス(P.ウォーカー)達。転送先はイギリスと百年戦争真っ最中のフランスである。彼らの前に現れるは歴史的ヒーローである。アンドレ(G.バトラー)は歴史ヒロイン、レディ・クレア(A.フイエル)に出会い恋をする。憧れを抱いていた仲睦まじい男女の発掘像が自分であったことに気付いたアンドレはクレアと共に14世紀に残ることを決意する。時空を超えて出会ったアンドレとクレアはロマンチックに描けている。その一方でクリスとケイト(F.オコナー)の間で描いているものが希薄なのが残念である。メインとなるカップルであるにも関わらずである。帰還用スイッチを押して戻ってきた隊員が手榴弾でバラバラにぶっ壊す転送装置。複写エラーの起こり得ることまで提示した装置であったのに、その装置を6時間足らずで復旧していたことには納得できない。 1971年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ガイ・ハミルトン Cast ショーン・コネリー ジル・セント・ジョン チャールズ・グレイ ラナ・ウッド ブルース・キャボット ジミー・ディーン ノーマン・バートン バーナード・リー ロイス・マクスウェル 短評 『地中海殺人事件』『クリスタル殺人事件 』『007/黄金銃を持つ男』『007/死ぬのは奴らだ』『007/ゴールドフィンガー』のG.ハミルトン監督作。G.レーゼンビーからS・コネリーがボンド役に復帰したシリーズ第7作。大量のダイヤモンドの行方を追って、ボンドのスパイ工作が繰り広げられる。オカマの二人組みとのダイヤの奪い合いから始まり、科学研究所への侵入。スパイならではの活躍。そして殺しのライセンスは随所に行使。大量のダイヤが如何扱われるか?これがいかにもボンド映画らしく、宇宙衛星に張り巡らせレーザー光線を作り出すという宇宙兵器となる。この宇宙兵器を操るのはカセットテープで、このアナログ記憶媒体で人工衛星をコントロールしようとするのだからブロフェルドは凄い。また、ボンドがせっかく摩り替えたのに、気を利かしてカセットを元に戻すというおとぼけ、いらんことしいのボンドガールも健全。『アベンジャーズ』のR.ファインズが乗ってたような水上移動風船などボンドの乗り物もユニークだし、なんといってもカーチェイス。ボンドはムスタングを華麗に操り、片輪走行からジャンプまで、ラスベガスの街を縦横無尽に走る。オカマの悪役二人のどこか間抜けなキャラといい007っぽさがいっぱい見られる。 1996年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ジョルジ・パン・コスマトス Cast チャーリー・シーン リンダ・ハミルトン ドナルド・サザーランド サム・ウォーターストン スティーヴン・ラング ベン・ギャザラ セオドア・バイケル テリー・オクィン 短評 大統領補佐官のボビー(C.シーン)は記者アマンダ(L.ハミルトン)が過去に追っていたホワイトハウス内不正・陰謀を暴こうとする関係者・教授が目の前で撃たれ殺された事から、不穏な動きを知る。ところが、自分が狙われる身となり逃走することとなる。アマンダの協力を得ながら逃走を続けるボビーは米国大統領暗殺計画を知る。といったホワイトハウス陰謀物であるが、サスペンス度は非常に低い。C.シーンが演じるからなのかボビーは電話の傍受にも気付かない大馬鹿さんである。この映画をスリルのないものにしているのが、黒幕演じるD.サザーランドである。ただ、彼の演技だけでなく、凄みが無く、潔ぎよく、最後は自ら死を遂げるような大して主人公を威圧することのないちっちゃい悪役キャラがいけないのだ。。また、この男が何を目的に暗殺を謀ったのか定かにならなかった。不正隠しなのか、思想に基づくテロリズム的行為からなのかである。よくわからない陰謀だった。また、大統領に威厳がない。ちゃちい。『カプリコン・1』『キリング・フィールド』のS.ウォーターストンが演じていた。とにかく難しげなスリリングは用意されていないのである。なんと言って、『トゥームストーン』『コブラ』『ランボー/怒りの脱出』の G.P.コスマトス、アクションだけで表現している監督なんだから。 2002年 日本 おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director 山田洋次 Cast 真田広之 宮沢りえ 小林稔侍 大杉漣 吹越満 伊藤未希 橋口恵莉奈 深浦加奈子 神戸浩 草村礼子 嵐圭史 中村梅雀[2代目] 赤塚真人 佐藤正宏 桜井センリ 北山雅康 尾美としのり 中村信二郎 田中泯 岸恵子 丹波哲郎 短評 『男はつらいよ』シリーズの山田洋次が監督、脚本。藤沢周平の短編時代小説3作を基にした映画。幕末に生きる井口清兵衛(真田広之)は幕末の庄内、海坂藩の下級武士。妻を病気で亡くし、借金を抱えた貧しい生活を萱野(伊藤未希)、以登(橋口恵莉奈)という二人の娘とボケ老母と送る。仕事を終え城から帰る時に同僚との付き合いは全て断りまっすぐ家に帰る。“たそがれ清兵衛”と呼ばれる理由だ。彼の親友・飯沼倫之丞(吹越満)の妹・朋江(宮沢りえ)は幼なじみで憧れの人。嫁ぎ先の夫が酒乱で出戻っていた。元夫の言いがかり、成り行きで果し合い。その剣の実力から、藩命によりこの後、切腹の命にたてつき家に立てこもる凄腕の余五善右衛門(田中泯)を討ち取れとの使命が下る。清兵衛と善右衛門の果し合いは緊張感みなぎるシーンとなっていた。ここでもリアルを追求し、こう構えてこう切りかかる、そしてこう受けるといった型にはまった殺陣にはなっていない。滑って転ぶわ、倒れるわ、刀はやたら振り回すわ。命のやり取りに余裕など無い。しかし、善右衛門演じる田中泯の倒れ方、生き絶え方はしなやかで美しかった。互いに想いを打ち明けられないもどかしい清兵衛と朋江の純な関係は細やかで繊細だ。下級武士の生活をリアルに描きながら、『男はつらいよ』のような暖かみのある庶民情緒も忘れていない。籠に乗って戻った家老が、籠から降りてよたつかせるなどはいかにも山田洋次の演出と嬉しくなる。2002年日本アカデミー作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(宮沢りえ)、助演男優賞(田中泯)、監督賞(山田洋次)、脚本賞(朝間義隆、山田洋次)、音楽賞(冨田勲)の他、撮影賞、照明賞、美術賞、録音賞、編集賞、新人俳優賞(田中泯)を獲得総なめした。♪井上陽水「決められたリズム」♪が心に響く。“ただ、愛する人のために”清兵衛はたそがれ、実直に生きる。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★ Director ウィリアム・マローン Cast ジェフリー・ラッシュ ファムケ・ヤンセン テイ・ディグス アリ・ターラー ブリジット・ウィルソン 短評 『シャイン』のラッシュがテーマパークプロデューサーを演じていた。人を怖がらせるのが好きで、今度は仕掛けを創った館にて生き残りパーティーを開く。しかし、集まった客は招待の覚えのない男女。実はこの館幾つもの怨霊を住まわせてしまうおぞましい出来事が過去にあった。ストーリーとしては、肝試しを利用し殺人を企む者あり、この館の危険性を感じながらも、冷静に話すことなく、信じてもらえそうにない程にただわめくだけの者あり。設定はホラーの定番といった具合なのに緊迫感は無し。何と言ってもTATARIと言う響きからなるおどろおどろしさが全くなし。ラストもそれで終わりかよってな感じで、ひねりも何もない。この映画ラッシュは息抜き出演といったところやな。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ルイス・ギルバート Cast ショーン・コネリー 浜美枝 カリン・ドール 丹波哲郎 若林映子 ドナルド・プレザンス バーナード・リー ロイス・マクスウェル 短評 シリーズ第5作は『007/私を愛したスパイ』『007/ムーンレイカー』の監督でもるL.ギルバートによる日本を舞台とした映画。外国人が日本を表現するとこんなになっちゃうんだと言ってしまいそうなセット。つい数年前の、リドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』でも違和感があった。日本の描き方はなんら変わらない。日本人が観ると明らかにおかしい。ケン・アダムのデザインした敵アジトは火山の火口にある。これも007映画の醍醐味。火口の中のアジトをボンドと共に攻撃するのが丹波哲郎と浜美枝。丹波哲郎の役名はタイガー田中。やっぱ田中かっていう納得の名前ながら、凄い名である。浜美枝はボンドと神前結婚する。偽装ではあるが・・。しかし、この結婚がスパイ活動に生かされたかと言うと、殆ど意味が無かったように思う。最初の偽装死もそれほど効果があったと思えない。タイトルから期待されるストーリーじゃなかった。 1991年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ジェームズ・キャメロン Cast アーノルド・シュワルツェネッガー リンダ・ハミルトン エドワード・ファーロング ロバート・パトリック アール・ボーエン ジョー・モートン 短評 “キング・オブ・ザ・ワールド”のキャメロン監督が製作・脚本もこなす作品。『G.I.ジェーン』のデミ・ムーアもびっくりのムキムキで登場のハミルトンは、今回は善玉ターミネーターT−800として登場のシュワちゃんと前回の『ターミネーター』に続き共演。そのたくましさは『エイリアン』のシガニー・ウィーバーをも越えているかも。今回の悪役はT1000型ターミネーターであり、R.パトリックの無機質な演技が素晴らしい。走り方などもうパーフェクト。『ダイ・ハード2』『パラサイト』にも出ていたが、これらの映画でももう、ターミネーターにしか見えない。そんな彼とT800型のシュワちゃんのバトルは凄い。しかし、この映画は、マシン同志の戦いでは終わらない。“人間が何故涙するのかわかった”といって溶鉱炉に降りていくシュワちゃんに象徴されるように人間愛の物語である。マイルス(J.モートン)が身を挺し、未来におけるターミネーターの出現を阻止したと言っていたが、如何に未来を変えたとしても、ジョン・コナー(E.ファーロング)は未来から来た父とハミルトンとの間に出来た子供で、ハミルトンの心には未来から現れたという過去の事実は変わらないのである。そういうことからいえば、どうしたって将来ターミネーターは創られるわけで、『ブルース・ブラザーズ2000』において最高の覚醒シーンで笑いを誘ったモートンがシリアスに演じたマイルスではあったが、彼の死は無駄死にということじゃなかか。 2003年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ジョナサン・モストウ Cast アーノルド・シュワルツェネッガー ニック・スタール クレア・デインズ クリスタナ・ローケン デヴィッド・アンドリュース マーク・ファミリエッティ アール・ボーエン モイラ・ハリス チョッパー・バーネット クリス・ローフォード キャロリン・ヘネシー ジェイ・アコヴォーン M・C・ゲイニー 短評 J.モストウが前二作のJ.キャメロンに代わり監督。『U−571』『ブレーキ・ダウン』で切れのいいメーカーぶりを見せていただけに、惰性で作られていくんだろう続作であるにも関わらず意外と面白い出来である。シュワちゃんことT−800が死闘を繰り広げ身を挺してジョン・コナーを守り、未来を変え、“審判の日”は回避されたたはずだった。10年後、母親サラを失い、放浪の旅を続けるジョン(N.スタール)の前にスカイネットが未来からT−X(K.ローケン)を刺客として送り込む。そしてジョンの前に現れるもう一体のターミネーターは見た目はT−800と同じという設定で、マイナーチェンジした(おそらく性能は改良されたのだろうが、外見は少し老け気味にデザイン?)T−850(A.シュワルツネッガー)。新型ターミネーターが女性の姿でT−850とジョンを無機質に追い詰めていくという設定も面白かったし、形状が記憶された変形可能なマシーンであるT−Xの弱点が高磁場であるというのもなるほどと思える。T−Xのターゲットはジョンだけではない。ジョンと共に抵抗軍に加わるメンバーもターゲットである。ターゲットの中には、ジョンと結婚し共に抵抗軍を組織するというケイト(C.デインズ)の名もあった。T−850に幼なじみのケイトが将来の嫁さんだと告げられ、ジョンは最初こそ驚くが、ドラえもんののび太くん状態。静ちゃんと将来結婚できるとしてまんざらではない。そのような新たな設定も盛り込みながら、ターミネーター同士のバトルは大理石、ビル等全てを破壊しつつパワフルに展開し飽きさせない。一方、T−850が回避不可能であった核爆弾降下の事態になってもジョンを守ろうとしたそのプログラムへの忠誠に、機械ながらその行動に訴えられることもある。ローケンとシュワちゃんの痛みを感じないターミネーターとしての動きは、よく練習したなと感心させられる。また、C.デインズの演技が意外に良かった。 2000年 デンマーク おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ラース・フォン・トリアー Cast ビョーク カトリーヌ・ドヌーブ デビッド・モース ピーター・ストーメア ジョエル・グレイ ビンセット・パターソン 短評 トリアー監督が提唱しているドグマ95という運動はオールロケや手持ちカメラによる撮影を目指したものだという。ミュージカルシーン以外はこの運動に基づいたものだった。飾り気のない現実感が画面から伝わってくる。失明という運命を持つ女性が、遺伝により同じさだめを持つ息子のために生き抜く姿を描く。息子の為に身を粉にして貯めた手術代を盗まれた為に殺人、死刑台に至る。殺人といったって、殺されたモース演じる警官、あれってもう自殺じゃん。あんなんで人を殺したことになるなんてひどすぎるよ全く。その後、国選弁護人も大したこともなく、求刑が決まるが、息子のための手術費用支払状況が分かることにより、ドヌーブ演じる友人から弁護人を雇い再審の提案を受ける。しかしというか彼女にして当然、息子のためのお金を自分の為に使うわけがない。107のステップで処刑台に上る。ミュージカルのシーンはデジタルカメラにより一転して鮮明な画像となる。目が見えなくなることに対して「もう全て見た。ヤナギの木や平和な世界はもう見た。万里の長城は?エッフェル塔は?・・」と語っていき、貨物列車や線路の上でゆっくりゆったり繰り広げられるミュージカルは美しー!ミュージカル好きの彼女が空想するシーンをミュージカルとする脚本センスに感服する。他のミュージカルシーンも法廷シーンを除いて大成功といえる。107のステップを踏みながら処刑台に向かうところの最後のシーンをミュージカルにするなんて素晴らしい。法廷シーンのミュージカルが気に入らないのは、彼女の理解者ではない判事や証人、検事などとも仲良く踊るからである。辛く哀しくじわっと来てるときにあのミュージカルはいかん。せめて一人で踊るべきだったろう。それにしても、素晴らしい歌唱力によりミュージカルシーンを格好良く演じ、壮絶な人生の主人公を演じきったビョークは歌手・ミュージシャンだそうだ。カンヌ映画祭の主演女優賞にも納得させられる。音楽をも担当していたというからほんまに素晴らしい。哀し過ぎるが、完成した脚本、俳優に支えられた素晴らしい映画だ。 |