JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
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1997年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director ミミ・レダー Cast ジョージ・クルーニー ニコール・キッドマン マーセル・ユーレス アレクサンダー・バルエフ アーミン・ミューラー=スタール レネ・メドヴェセク ランドール・バティンコフ マイケル・ボートマン ゴラン・ヴィシュニック 短評 『ペイ・フォワード/可能の王国』『ディープ・インパクト』の監督M.レダーの作品。クライマックスのニューヨークにおけるテロリストのボスニア人デューサン(M.ユーレス)を追跡するシーンのテンポ、スピード感はあった。だが、ニューヨークの街を核爆弾で吹っ飛ばそうなどと企みは被害規模の大きい非道なテロ活動のため同情など出来ないはずである。なのにデューサンは♪ショパン・ノクターン第20番♪等を弾き、家族を失った悲劇的背景をもってして悲哀を訴えかけようとする。女性監督だからか、アクションの中に情を持ち込もうとする。その結果中途半端な敵役になってしまった。挙句の果て、追い詰められてあっさり自殺する。後は残されたデヴォー大佐(G.クルーニー)とケリー博士(N.キッドマン)二人で行うありきたりの爆弾処理となってしまった。犯人グループが残した44という暗号から次々と犯人の計画を突き止めていくケリー。頭は切れるようであるが、一つだけ納得いかない。強引に押し入ってコンピューターファイルから盗みだした取引経歴の印刷物。追っ手から逃げるも車が爆発。間一髪で車から逃げようとする時、ケリーは印刷物を取ろうとするがデヴォーに「構うな!」と制止させられる。しかし、その後ケリーは「メール送付していたの」と車と共に燃えたはずの盗み出したファイルをノートパソコンで見ているのである。なんじゃそりゃと言いたい。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ラジャ・ゴズネル Cast マーティン・ローレンス ニア・ロング ポール・ジャマッティ ジャーシャ・ワシントン テレンス・ハワード アンソニー・アンダーソン エラ・ミッチェル 短評 映画『ホーム・アローン3』『25年目のキス』で監督したゴズネルの第3作。FBI捜査官に扮するローレンスは変装の名人というわけ。ハワード演じる、医者を殺害し刑務所を脱走した犯人を捕まえるため、元愛人(ロングによる)を張り込む。彼女の母親がミッチェルの150kgの巨体であり、その巨体にローレンスは変装するというわけ。犯人を逮捕するために、次第に恋心を抱く彼女に対し偽る事への葛藤を描く。ハワード以外の人物にシリアスさというものは全くなく、コメディとはいうののの締まりがない映画だった。プロポーズを行う場面や親子愛に訴えかけるところはローレンスはじめ黒人の俳優が多いためかゴスペルをバックに表現する。しかし、いまいち訴えかけるものが弱い気がした。 1998年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ジョエル・コーエン Cast ジェフ・ブリッジス ジョン・グッドマン ジュリアン・ムーア スティーヴ・ブシェミ ピーター・ストーメア サム・エリオット ジョン・タートゥーロ デヴィッド・ハドルストン ベン・ギャザラ リチャード・ガント フィリップ・シーモア・ホフマン 短評 一癖二癖あるキャラクターがおりなす奇妙なドラマ。ぶっ飛んだ人達のストーリーだけに滑稽。デュード(J.ブリッジス)はリボウスキという同姓の富豪ビッグ・リボウスキ(D.ハドルストン)と間違われ事件に巻き込まれる。事件を複雑にしてくれるありがたい友人は、ボーリング仲間でベトナム帰りのいかれ野郎ウォルター(ジョン・グッドマン)。決まったフォームで投げ、いつもと同じようにストライクを得、“ワォ”と言って喜ぶといったパターンを繰り返す男ドニー(S.ブシェミ)。デュードなんかの子供を欲しがるのは何故なのか、デユードとのセックスの後に妊娠しやすい体操をする前衛アーチスト、モード・リボウスキ(J.ムーア)。まだまだ変わり者はいる。ボーリングのライバルでやたら股間をまさぐるジャージ男ジーザス(J.タートゥーロ)。名前だけでもとんでいる。こんな人達を描きながらもビッグ・リボウスキの妻ドニー誘拐事件の真相に近づけていくコーエン兄弟の演出には感心する。最後は遺灰になり、海に巻かれることも叶わず、風でウォルターに向かって飛ぶことになったドニーが、ボウリング駐車場でのいざこざで心臓麻痺で死ぬこととなったあの日の、ストライクが取れずに“ワォ”と言えずに寂しそうだった顔が忘れられない。軽く見える彼の死だが心に残る。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director デヴィッド・トゥーヒー Cast ヴィン・ディーゼル ラダ・ミッチェル コール・ハウザー キース・デイヴィッド ルイス・フィッツジェラルド クラウディア・ブラック 短評 映画『プライベート・ライアン』でタフな一方人情をも見せた兵士を演じたV.ディーゼル。確か『プライベート〜』では、廃墟での戦闘で隊の気の緩みから死んでしまったが、今回は最後まで生き残る。凶悪な殺人犯でありながら、徐々に人間性を取り戻していくという物語に必須なリディック役であった。監督であるD.トゥーヒーは、はるか彼方のとある惑星世界を描く本作の脚本も兼ねている。太陽が三つあり夜の無い世界であるこの惑星も、22年に一度太陽が直列に並び日食によりピッチ・ブラック(真の闇)が訪れる。恐怖と直面するまでに、人影の無い基地を発見したり、巨大生物の残骸などを見せるプロットは上手かった。闇の中でこそ恐ろしい力を持つ生命体・クリーチャーとの戦いの舞台は宇宙船が不時着した不毛の砂漠。広大な舞台であるにも関わらず、閉塞感を感じるのは闇であるためで、蟻塚のようにそびえ立つ巣の入り口も不気味である。周りが見えないというのはやはり怖い。この状況で、義眼手術により夜目が利くリディックが役立つキャラとなる。よく練られた設定だと思う。新しい演出法で話題になった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』も闇やハンディカメラの視野の狭さからもたらされる閉塞感を恐怖につなげていたが、この映画に通じるものがある。女性主役は不時着する宇宙船操縦士で生き残った乗客、乗組員を立場上率いるフライ(R.ミッチェル)。『ハイ・アート』でシリアスな役をこなしたミッチェルである。主役として頑張るフライだが、『ディープ・ブルー』の女性主役を務めたスーザン・バローズと同じ様にかわいそうな運命であった。 1995年 イギリス/フランス/ドイツ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director スティーヴ・バロン Cast マーティン・ランドー ジョナサン・テイラー・トーマス ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド ウド・キア ベベ・ニューワース ロブ・シュナイダー コリー・キャリアー 短評 映画『エド・ウッド』でベラ・ルゴシを演じ、強烈な印象を残しているランドーが人形作りの名人ゼペットおじさんである。丸太から作り上げられた人形・ピノキオのお話。木の人形のデザインがなんだかいまいち気に入らなかったが、コオロギはなかなか良かった。ランドーがはまり役だったが、他の俳優のせいなのかピノキオが人間になるところでも大した感動が得られず。映画のせいにしているが、こちらの感受性に問題がある? 2001年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ロン・ハワード Cast ラッセル・クロウ エド・ハリス ジェニファー・コネリー クリストファー・プラマー ポール・ベタニー アダム・ゴールドバーグ ジョシュ・ルーカス ヴィヴィエン・カーダン アンソニー・ラップ 短評 R.ハワードは“ゲーム理論”によるノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの実話をファンタジックに描いていた。2001年アカデミー監督賞を受賞した。作品賞はアカデミー他ゴールデン・グローブでも受賞。人間愛に包まれたヒーローは『バックドラフト』や『アポロ13』の中では消防士、宇宙飛行士であった。今回は天才数学者である。R.クロウ演じるナッシュの闘病生活を優しく献身するアリシアの姿に感動的な夫婦愛を見ることが出来る。栄光のノーベル賞受賞式の挨拶で語るアリシアへの感謝の言葉。ここに特別な能力を持ったヒーローにとっても愛情が人生を満たすために必要な最重要アイテムだと分かる。アリシアを演じるのが、この映画でアカデミー、ゴールデン・グローブの助演女優賞を獲得したJ.コネリーである。一方、脚本のアキヴァ・ゴールズマンは脚本賞を得ている。全体的な流れは見事であるが細かな部分にも注意を払ってもらいたい。E.ハリス演じる諜報員とP.ベタニー演じるナッシュの友人は彼のみにしか見えない幻覚である。ナッシュは皆には見えない彼らと話をする。それは皆から観ると一人芝居のようなもの。しかし、幻覚が物を動かせるはずがないのである。友人の前で幻覚が机を投げるなんてことはないはずである。机は勝手に動かない。そんなところが気になってしまう人のためにディテールにもこだわって欲しい。 1963年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ブレイク・エドワーズ Cast デヴィッド・ニーヴン ピーター・セラーズ クラウディア・カルディナーレ キャプシーヌ ロバート・ワグナー フラン・ジェフリーズ 短評 カルディナーレ扮する王女が持つ“ピンク・パンサー”という銘のダイヤを巡るドタバタ喜劇。ヨーロッパで人気の宝石泥棒“ファントム”(ニーヴン)とクルーゾー警部(セラーズ)により怪盗ものとしても楽しめる。スキーもこなす卿が“ファントム”の隠れ蓑であるが、ニーヴンは紳士でいてセクシーという感じが出て適役だった。王女の別荘のパーティーの日、金庫破りを実行に移すが、卿と彼の甥(ワグナー)(叔父が泥棒だったことに気付く)が二人ともゴリラの仮装で、何故か対面で扉になっている金庫(そして何故か扉は繋がっている)を開けようと金庫の周りをぐるぐる回るシーン、その後のカーチェイスシーンは下らなさすぎて、それでいてハイセンス。気に入ってるシーンだ。捕らえられた卿の裁判で、クルーゾー警部は自分の女房と王女が仕組んだ芝居で、自分が真犯人にされる。ところが、市民たちがおくる“ファントム”への讚辞に、しだいに得意気になる。このあたりの単純さをセラーズは自然に面白く演じられる。とにかく、事件解決のカギは“ファントム”の手先と思われる女の逮捕にあるとにらんでいたクルーゾー警部、その彼の妻(キャプシーヌ)がそのカギだというのがいい。強盗を実行に移すまで、ロッジで隣り合わせの部屋になったクルーゾー警部と卿。このシチュエーションでドタバタの場合、その時の行動は定番だ。 2002年 日本 おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director 曽利文彦 Cast 窪塚洋介 ARATA サム・リー 中村獅童 大倉孝二 松尾スズキ 夏木マリ 竹中直人 短評 幼いころからお婆ば(夏木マリ)が経営する卓球場に通っていた今は高校生のペコ(窪塚洋介)、スマイル(ARATA)、アクマ(大倉孝二)が卓球を通して描く幼なじみの友情スポ根もの映画である。漫画家・松本大洋の同名原作である。漫画ならではの動的描写が小さいテーブルで行われる卓球のゲームシーンを迫力あるスピード感に生かされている。ピン球のクローズアップ、コーナーを抜けっていくスマッシュショット。サーブでの緊迫感など素晴らしい。高校総体準決勝ではドラゴン(中村獅童)相手にペコは2mのジャンプスマッシュまでするのである。そのうち台に上って打つんじゃないかと思ったぐらいだ。(台の上に上がっても手を着かなきゃOK。)流石にここまでは無かったけれど。カットマンのスマイルに対し、前陣速攻型といっていたペコの戦術があまり目立っていなかったのが残念だ。最近流行の前陣型はあの福原愛ちゃんの型である。愛ちゃんのおかげでリターンのテンポを早くする前陣ピッチ型というのを良く耳にするようになったこの言葉を映画の中で確認できたのに・・。アクションだけでなく、才能或いは勝たなければならない境遇、宿命といったものを通して競技に打ち込む若者の心情を描く。ペコとスマイルは片瀬高校の卓球部だがまともに練習には参加しない。自信家で卓球をある意味なめているかのようなペコだが能力の伸び悩みにも薄々感づいている。一方、卓球は暇つぶしとするスマイルはペコの能力に合わせたプレイをしながらも幼なじみと共に出来ることなら卓球レベルを向上させたいと願っているのである。成長し高校生となった時点で夢に対する現実に挫折しそうになる。才能と言うものを痛感し現実を受け入れるアクマ。幼なじみであるが故の助言と小泉コーチ(竹中直人)やお婆ばの指導で立ち直るペコとスマイルの姿が熱く爽やかである。コーチする竹中はバタフライ・ジョーというコテコテの異名と共に、『ウォーターボーイズ』『シコふんじゃった』で見せたようないかにもっていう演技。つるっぱげで卓球道を強面で邁進、敵役ドラゴンを演じた中村獅童は2002年日本アカデミー新人俳優賞を受賞した。 |