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青春の輝き

世界中がアイ・ラヴ・ユー

セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ

セレンディピティ 

ザ・セル 

戦場のピアニスト 


青春の輝き

1992年

アメリカ

おすすめ度(10点満点) ★★★★★

Director  ロバート・マンデル

Cast   ブレンダン・フレイザー  クリス・オドネル  マット・デイモン  ランドール・バティンコフ  アンドリュー・ロウリー  アンソニー・ラップ  ベン・アフレック  コール・ハウザー  ケヴィン・タイ  エイミー・ロケイン  エド・ローター

短評

イングランドの名門校に、フットボール奨学生として入学したデビッド(B・フレイザー)。彼はユダヤ人であるが、ユダヤに対する偏見から高校転入のため町を出てくるときにも喧嘩をしたばかり。ところが名門校の中でも寮生が口にする偏見を耳にし、不本意にもユダヤ人であることを隠さなければならない。重そうなテーマなのだが、デビッドはフットボール・クォーターバックとしての活躍を中心に人気者に、クォーターバックの座を追われたディロン(M.デイモン)、ディロンの彼女・サリー(A.ロケイン)を取ってしまうデビッド、ディロンのカンニング等やってることは高校生。青春グラフティである。上流階級であるために伝統的に優秀であることを強要され、フランス語のテストでパニくったり、カンニングに至ったりとプレッシャーに若者が潰されていく様は『今をいきる』とかなりダブってしまう。しかし、この映画のテーマは人種に対する偏見であったはずである。デビッドがユダヤ人であることがばれてからはいやがらせ等を描いていくも、問題提起としては弱い気がする。ユダヤ人であると堂々と言えずに葛藤する姿があまり描かれていない。特にサリーに対してはユダヤ人であることがばれてから、彼女に会ってくれないことに文句をいいに行くも、それに至るまで彼女に打ち明けるか否かで悩む部分が見えてこない。彼女とのデートはただただ浮かれていただけのように映る。デビッドのルームメイト・リース(C.オドネル)の偏見はそれでもまだ弱い、寮生それぞれ偏見を持ちながらも正義感によってとる行動も違うのである。なのにデビッドとの出会いを通してユダヤ人への考え方は変わらなかったのだろうか。意識の改革が行われた生徒はいない。ただ、デビッドのみが現実を悟り名門校を後にするのである。


世界中がアイ・ラヴ・ユー

1998年

アメリカ

おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★★

Director  ウディ・アレン

Cast    アラン・アルダ  ウディ・アレン  ドリュー・バリモア  ゴールディ・ホーン  エドワード・ノートン  ナタリー・ポートマン

短評

この映画、前妻、前夫という設定の人が多すぎて最初の方は、彼ら及びその子供達の関係を整理するので精一杯だった。でも、系図が頭に描けるようになるとこの映画は面白いジャンとなる。原題がEveryone Says I Love Youと言うのだが、彼らは凄くややこしい間柄であるが、それぞれ悩みながらも自分の意志を通して生き抜いており、難しい境遇でも自分を見失わずに生きればいいんだと感心する。それだけ全ての登場人物が魅力的に描かれているわけである。監督だけでなく脚本も手がけたW.アレンは凄いと思う。そして、この映画は、唄が目茶苦茶上手いってわけでなくいかにも素人的な歌唱なれどもミュージカルとしては成り立っており、むしろその素人っぽい歌が魅力となっている。アレン風のギャグ、笑いが混ぜられ、最近は敬遠されがちで、成功が見られなかったミュージカルの分野に新しい形を示したといえる。そして、笑いのエッセンスとして良く効いていたのがT.ロス。彼のいかれた演技は最高であり、キレまくったこういうキャラクターが他のキャラを際立たせるのである。個人的に好きなシーンは、ウィンドウの向こうのマネキンが実は人間で踊り出す所やセーヌ河畔でのアレンとホーンの空中ダンスシーンである。ファニーな要素が含まれたシーンがお気に入り。


セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ

2000年

アメリカ

おすすめ度(10点満点) ★★★★★

Director  ジョン・ウォーターズ

Cast   スティーヴン・ドーフ  メラニー・グリフィス  エイドリアン・グレニアー  アリシア・ウィット  ラリー・ギリアード・Jr  マギー・ガイレンハール  ジャック・ノーズワージー  マイケル・シャノン

短評

この映画で、ラジー賞の主演女優賞にノミネートされながらもマドンナにその座を奪われてしまったグリフィス、残念でした。まず、言いたいのはえらいドギツイ映画じゃなあということ。ハリウッド映画に物申すというのは面白いし、その通りだと肯けることがたくさんあった。映画館でのマナーなどもその一つ。自分の気にならないことをとやかく言われるのは嫌なのでいつも語ることはないが、この映画ではそやそやと笑いながら見ることが出来た。しかし、シネマ抗議で人を殺し、焼身するか?デビッド・リンチ等を崇拝する映画集団のボスである脚本・監督を演じるのがドーフである。彼はホントに切れた役が似合う。『ブレイド』の悪役以来の印象である。彼が演じた監督の名前はセシル・B・ディメンテッドで確かには名前が示す以上に発狂状態にあった。セシル・Bといえば、『十戒』の監督セシル・B・デミルからとっているとしか思えない。デミルの作品はあまり知らないが大した監督だったんだろうか。


セレンディピティ

2001年

アメリカ

おすすめ度(10点満点) ★★★★★

Director  ピーター・チェルソム

Cast    ジョン・キューザック  ケイト・ベッキンセイル  ジェレミー・ピヴェン  モリー・シャノン  ジョン・コーベット  ブリジット・モイナハン  ユージン・レヴィ

短評

冬のニューヨーク、“セレンディピティ3”というセレブにも人気のスポット、今回はめちゃ美味しいケーキが食べられるカフェとして登場。セントラルパークのあのスケートリンクも雪がちらつく中、二人の思い出の場所となる。その二人、主人公となるカップルはJ.キューザックとK.ベッキンセイルである。キューザックはトレンディでちょっぴり知的なセンスを出せるし、ヒロインはというと『ブロークダウン・パレス』『パール・ハーバー』では比べ物にならない程ベッキンセイルはかわいい。物語の中心となる題材はセレンディピティ“幸せな偶然”。運命的なものにこだわり、サインとして出会いを描いていく。ニューヨークを舞台としたラブストーリーとしては『オータム・イン・ニューヨーク』『めぐり遭えたら』に負けない視覚的美しさもあった。これらラブストーリーには結ばれるに至るまでの障害がが欠かせない。『ユー・ガット・メール』などもそうである。この映画も『めぐり遭えたら』のように最後の最後まで二人は会うことが出来ない。しかしである。この二人はセレンディピティにかこつけて自ら遭えなくなる障害をつくっていく。ドラマチックな自分達に酔ってるとしか思えない。それに、幸せな偶然に拘りながら、最後は自分自らキューザックを探しに行っとるやないか!ベッキンセイル。最初から電話番号と名前を教えて欲しいとせがんでいたキューザックは許そう。彼女のそばかすを星座に譬えてカシオペアなんて言いながらマジックでなぞってみせる憎いまでにロマンチストな彼だからね。『マイ・フレンド・メモリー』は良かったじゃないって思った監督のP.チェルソムだったのに、彼にはなんとしても本と5ドル紙幣に名前と電話番号を残すしかどうしようもなかったっていう状況を設定して欲しかった。自らその道を選ぶという設定だけはやめてくれ。


ザ・セル

2000年

アメリカ

おすすめ度(10点満点) ★★★★★

Director  ターセム

Cast   ジェニファー・ロペス  ヴィンス・ヴォーン  ヴィンセント・ドノフリオ  マリアンヌ・ジャン=バプティスト  ジェイク・ウェバー  ディラン・ベイカー  タラ・サブコフ

短評

猟奇殺人を描いた映画なので、ちょっと見るに堪えないシーンがあるが、それはしょうがない。犯人は水槽の中で女性を溺死させ、女性を漂白処理する。その後、快楽の絶頂を味わうためとはいえ、なんという格好になっとるんだ。痛いのに気持ちいいのか?ドノフリオくん。といっても彼は役を演じているだけなんだが。そして、彼は、また一人セルに閉じこめ、犯行に及ぶが、彼女を閉じこめた状態でFBIのお縄になる。彼の飼っている犬が手掛かりとなるんだが、彼の犬は色素を持たないんだそうだ。まあそれはいいとして、捕まったものの、ご迷惑にも彼は、ウィルス性の精神分裂症を起こしており尋問できない状態である。そこで、登場するのが、ロペス。彼女は人間の脳の中に入り込むことが出来る。この技術を描くのが、この映画のみそ。どんな映像で人の脳内世界を描くのか、そこが楽しみであったが、ちょっと私には理解しにくい世界だった。人間考える事、想像する事、イメージする事は自由とはいえ、あそこまで現実離れした世界が頭の中にあるだろうか。あれだけのイメージ世界を頭に持っている、ドノフリオ、ロペスは芸術家として生きることが出来るのではと思えた。それに、ドノフリオの脳世界を見てきた後で、あのロペスの世界は、そこまで平和で清らかなの?と突っ込みたくなる。ただ、ストーリーの発想は面白く、その点では良かったし、ロペスの貫禄も『アウト・オブ・サイト』で確固たるものになった感アリ。監督はインド出身のターセムだが、シャマランはじめ、ほんと最近インドの監督大活躍やね。


戦場のピアニスト

2002年

フランス/ドイツ/ポーランド/イギリス

おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★

Director  ロマン・ポランスキー

Cast    エイドリアン・ブロディ  エミリア・フォックス  ミハウ・ジェブロフスキー  エド・ストッパード  モーリン・リップマン  フランク・フィンレイ  ジェシカ・ケイト・マイヤー  トーマス・クレッチマン  ルース・プラット

短評

ドイツ占領下のワルシャワ、ゲットー生活に苦しむユダヤ人、そしてゲットーを脱出するも恐怖のドイツ監視下から隠れて暮らさなければならない身に詰まされるような生き方を強いられたユダヤ人ピアニスト・シュピルマン(A.ブロディ)を描いた映画。垂れ下がった眉毛が悲しみを誘うブロディの演技は、食べ物に飢え、孤独ゆえの愛に飢える姿を切実に表現する。ユダヤ人の側から描いた映画は、ゲットーでの過酷な体験者でもあるR.ポランスキーの監督により第55回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞する。この映画では強制収用所ではなく、ゲットーというユダヤ人居住区の生活が描かれる。そこは強制収容所へと続く絶望と恐怖の空間である。ユダヤ人が一人また一人と虫でも殺すかのように殺されるシーンを見る度に体が萎縮し硬直する。精神崩壊せずに生き抜く事の方が奇跡に思える。しかし、シュピルマンは生き抜いた。ピアノを弾くことしか知らなかった優男が生き抜いたのである。重労働も強いられた。家族と別れた孤独感、自分だけ助かったという罪悪感に耐えながら。しかし、彼にはショパンの調べがある。音楽を愛し、それに癒されることの出来る能力がある。音楽の才能を通して理解し合える人間に彼は救われるのである。危険を伴いながらもドイツ人の目を盗んで隠れ家を用意してくれるのは女性歌手(R.プラット)であり、女性チェリスト(E.フォックス)である。彼女達はシュピルマンの才能を理解し、音楽を通して友情を築いているのである。また、シュピルマンはドイツ人将校(T.クレッチマン)に命を救われる。隠れ住んでいたところを見つかったシュピルマンはピアノの演奏で語りかけた。ドイツの作曲家ベートーベンの♪ピアノソナタ「月光」♪を弾いていた将校に聴かせたのはポーランド出身のショパンの曲である。ここでも彼は音楽を理解し合えることで救われたのである。張り詰めた緊迫感の中で弾いてみせる♪ショパン・バラード1番♪は悲しく熱い。このシーンをピアノの特訓により代役なしに演じ切ったA.ブロディが本当に素晴らしかった。生き抜くことを大切に思える作品である。『ピースメーカー』でテロリストが弾いていた♪ショパン・ノクターン第20番♪も聞くことが出来る。