JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
こ 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ケリー・マキン Cast ヒュー・グラント ジーン・トリプルホーン ジェームズ・カーン バート・ヤング ジェームズ・フォックス ジョー・ヴィテレッリ 短評 グラントの恋人だった?エリザベス・ハーレーが製作らしい。そのためグラントのことを良く理解できているんだろう。ケリー・マキンというあまり聞かない監督の手腕でもあろうが。常識のあるまじめな庶民として描かれる主人公をグラントが演じて、他方彼女、今回はトリプルホーンが演じているが、トリプルホーンの置かれた境遇の抱える問題に巻き込まれるラブコメとしたのが上手い。『ノッティング・ヒルの恋人』とパターン的には一緒。こういう役柄しか彼には演じることは出来ないんだろうが、ナイスなキャスティングである。今回の話、大笑いするようなことはないが、笑いの質が自分向きで満足。この映画を支えているのが、『ミザリー』にも出ていたのカーンだろう。マフィアでありながら、それほど凄みがなく、トリプルホーンの父親で、非常になれない根っからの気質がいい感じで醸し出されていた。一方、『ロッキー』シリーズで知られるヤング。彼の役は重要ではあるが、上手く演じようが、下手に演じようが演技の上手い下手に影響を受けるようなものでないのでOK!。映画の中でオークションに出されるマフィアの描いた絵画があるんだが、あの絵画センスは気に入ってしまった。 2000年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director イモジェン・キンメル Cast シャーロット・ブリテン リー・ロス アネット・バッドランド ジェームズ・フートン 短評 ヒロイン・デイジー(C.ブリテン)が相撲を始めて、工場のボス(A.バットランド)に与えられたシコ名がGreat White Jerryfish、吉本の藤井隆がシコ名に関しては監修を行ったらしいが、日本語でいうとクラゲ姫だそうだ。タイトルからすると恋愛模様における彼女の自信獲得ストーリーだと思ってたのに、ブリテンは結婚してて、夫ケン(L.ロス)と相思相愛なのである。ただ、デブということで消極的な彼女が自信を持ち始めるというもの。自分のヌード写真等とんでもないと思っているため、旦那によるボディペイントアートも人に見せられるものではないと考えていたが、最後は自らポストカードにし売りさばく。そんな自己改革の元になるのが相撲というわけ。ところが残念なのが、修行を行い、心技体の精進するが、相撲の強さを表現することに遠慮がちなのである。一度だけ旦那をぶっとばしたぐらいで、最後に日本人力士を登場させ、デイジーがラッキーな勝利を収めるだけ。もっと相撲パワーで町中をアッと言わせてほしかった。ケンはSFマニアなわけだが、デイジーの変貌を宇宙人の侵略と考え、対処していくあたりは非常に面白い。太目のヒロインを大事するその様子は、マニアチックな夫から非常に納得できることが多い。L.ロスは第1回CINE小屋大賞主演男優賞候補とした。 1991年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director マイク・ニコルズ Cast ハリソン・フォード アネット・ベニング ビル・ナン ミッキー・アレン ドナルド・モファット ナンシー・マーチャンド レベッカ・ミラー 短評 『パーフェクト・カップル』『バードケージ』『ウルフ』『ワーキング・ガール』『卒業』のM.ニコルズ監督によるマーヴィン・ルロイ監督、ロナルド・コールマン、グリア・ガーソン出演の『心の旅路』のリメイク。エリート弁護士ヘンリー(H.フォード)が強盗に撃たれた銃弾により記憶を失った。心のさすらいは家族と触れ合うことにより人間の優しさ取り戻すための旅であった。介護士ブラッドレー(B.ナン)がビールを片手にヘンリーの迷いにアドバイスする言葉の中に、真摯に看護に励む彼の誇りが見て取れる。ヘンリーと共に心を動かされてしまった。記憶喪失事故以前の彼はビジネスに徹する弁護士、家でも仕事に追われホームパパとは程遠い存在だった。そんな彼の行動は妻サラ(A.ベニング)の浮気をもたらした。また、サラだけでなく彼の方でも浮気をしていたのだ。現代ではやはり『心の旅路』のような本当の純愛は描けないのか?それが残念で仕方ない。サラや娘レイチェル(M.アレン)と触れ合えることの重要性に気付いたヘンリーは誠実に生きるため、不正な弁護士生活に見切りを告げる。記憶を取り戻せてはいない彼、及び彼の家族の将来は心配だが、良心に従い裁判の証拠を原告の患者に届けたり、家族が共に暮らすことを望み、寄宿学校のレイチェルを引きとりに行く等の、終部にたたみかける彼の行動には感動した。 1953年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director フレッド・ジンネマン Cast バート・ランカスター モンゴメリー・クリフト デボラ・カー フランク・シナトラ ドナ・リード アーネスト・ボーグナイン フィリップ・オーバー ジャック・ウォーデン 短評 実直なラッパ吹きの若い兵隊さんロバート(M.クリフト)はハワイの隊に公正な待遇を期待してやってくる。しかし、この部隊も陰湿な上司、嫌がらせが横行するところであった。昔、友人を怪我させたことからボクシングを拒否するこの兵隊にいじめは始まる。その中で理解を示してくれるのが、一等兵マギオ(F.シナトラ)とウォーデン曹長(B.ランカスター)である。マギオは営倉送りの上、いじめにより殺害される。ロバートは復讐により殺人に及ぶ。軍隊の抱える諸問題を抉り出した映画なのだからしかたないのだろうが、すっきりすることはないもない。兵役においてはいい曹長であるウォーデンも、上司の妻カレン(D.カー)と情事に及んでいた。それでも1953年アカデミー賞では、『ローマの休日』『聖衣』を抑えて作品賞、助演男優賞(F.シナトラ)、助演女優賞(D.リード)、監督賞(F.ジンネマン)、脚色賞(ダニエル・タラダッシュ)、撮影賞(バーネット・ガフィ)等を受賞。『ローマの休日』『聖衣』の方が絶対いいと思うが、F.ジンネマンは1952年に『真昼の決闘』をもってして受賞出来なかった。こちらはいい映画だったし、アカデミーでもそう思っていたのでは?アカデミーではよくある併せ技一本受賞であったのだろう。 2003年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director マチュー・カソヴィッツ Cast ハリー・ベリー ロバート・ダウニー・Jr ペネロペ・クルス チャールズ・S・ダットン ジョン・キャロル・リンチ バーナード・ヒル ドリアン・ヘアウッド 短評 ジョエル・シルバーとロバート・ゼメキスが設立したダーク・キャッスル・エンタテインメントによる『TATARI/タタリ』『13ゴースト』『ゴーストシップ』に続くホラーは『クリムゾン・リバー』のM.カソヴィッツ監督を据えた、題名も『ゴシカ』というゴシックホラー。夫ダグラス(C.S.ダットン)を惨殺した容疑で収監されたミランダ(H.ベリー)。見知らぬ少女に出会ってから惨殺に及んだいきさつについては全く分からず、記憶も無い。自分を操る少女の影に怖れるミランダは心理学者である。悪魔の支配により父親を殺したとするクロエ(P.クルス)を治療していたが、クロエの訴えを理解できずにいた。今や精神を病んでいると思われる立場にいる。ミランダに好意を寄せていたピート博士(R.ダウニー・Jr)が今や彼女の主治医となった。ミランダが精神病棟行きになるという設定においては面白い人間関係にあったと思ったが、以後のストーリー展開に全く生かされていない。クロエは同じ問題を共有できた仲間となるだけだし、ピートはミランダを診る特別な感情を見せることのない普通の医者である。ミランダを悩ますものは死んだはずのフィル(B.ヒル)の娘だけだ。恐ろしい姿となってミランダにポルターガイストする。少女に取り憑かれてやったことであるから、夫殺しの責罪云々はどうでもよくなり、憑依のせいに出来る。結局、刑務所を脱獄し、ミランダ自身が隠された秘密を暴いていくわけである。他のキャラクターは全然役に立っていない。脅された訳でもないのに、脱獄を見逃した上に車まで貸してしまう監視のおじさんは何なんでしょう。また悪役はダグラスと少女監禁殺害を行なっていたライアン保安官(J.C.リンチ)である。正体がばれてからの凄みも無く、自らガスを充満させ、ライフル銃を発砲し爆死するというしょぼさである。ただし、サブリミナルのように見せられる少女の怒りに満ちた顔は恐い。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ジム・ジャームッシュ Cast フォレスト・ウィテカー ジョン・トーメイ クリフ・ゴーマン ヘンリー・シルヴァ イザーク・ド・バンコレ 短評 ニューヨークにも武士はいるのだ。ゴースト・ドッグは“武士道というは死ぬことと見つけたり”の「葉隠」が愛書の読書好きな殺し屋。ビルの屋上で鳩を飼い、隠れ家としている。マフィアファミリーのボスは娘に溺愛、財産も彼女名義にしているが、娘の彼がファミリーの一員。でもそれが気に入らない。殺しを依頼したが、その殺しが父の依頼と娘に悟られるわけにゃいかん。幹部の一人がゴース・ドッグに殺しを依頼する。完璧に実行されたはずの殺しだが、娘にばれた。そしてゴースト・ドッグ抹殺命令が。内々の事情など知らないゴースト・ドッグは親友がアイスクリームを売る公園へ。親友との関係は奇妙だ。アイスクリームをフランス語で売る彼と英語しか分からないゴースト・ドッグ。彼らはお互いの言葉は分からない。しかし、これが心のつながりと言いたいのだろう。武士道修練のたまものだ。ゴースト・ドッグの修行のシーンはカッコいい。流れに任せて刀を振る。ウィテカーをこの役に使うあたりしぶい演出だ。それにしても、刀を鞘に収める様に拳銃を懐にしまうか!しぶすぎる!それなのに、殺しに来た幹部に対し反撃できないゴースト・ドッグ。やって来た殺し屋は命の恩人だからだ。後は実際見てもらいたい。公園でのオーディナリーな日常の場面では、本が好きな少女が登場し、ゴースト・ドッグと本の貸し借りをする。この関係もいい。映画『レオン』でもそうであるように、殺し屋と少女というんは哀愁を強調できるベストな関係だ。 1984年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director アイヴァン・ライトマン Cast ビル・マーレイ ダン・エイクロイド ハロルド・ライミス シガーニー・ウィーヴァー リック・モラニス アニー・ポッツ アーニー・ハドソン 短評 B.マーレイ、D.エイクロイド等が演じるお化けを研究する科学者のキャラに尽きる。彼らの考え方、行動、お化け退治のマシンまでユーモラスである。I.ライトマンが描くゴーストは、最後に大きく登場するマシュマロマンを始め愛嬌がある。マシュマロマンが撒き散らす泡など意外なところで拘りを見せていることが面白い。 1997年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director ジェームズ・マンゴールド Cast シルベスター・スタローン ロバート・デ・ニーロ ハーベイ・カイテル レイ・リオッタ アナベラ・シオラ ピーター・バーグ ジャニーヌ・ギャロファロ 短評 ニューヨーク市警の警官が多く暮らすギャリソンは”コップランド”と呼ばれる街。そんな”コップランド”においてカイテル扮する警官達の悪事が警官の誤射事件をきっかけに暴かれることになる。内部捜査官に扮するデ・ニーロが調査するが、カイテルの抑圧により操作は中断する。『ランボー』『コブラ』などで暴れ回ることによってのみ存在意義を見いだしてきたスタローン扮する警官も今回の映画ではおとなしくしていたものの、続いて起こる警官の不審な死により、終盤やっと真相解明に立ち上がる。しかし、立ち上がってからも、デブ腹でこの映画に臨んだせいか、大した銃撃戦も繰り広げることなく、何となく事件を解決する。スタローンは抑えた演技でシリアスな役に挑戦したんだろうが、結局、鈍げなイメージで終わっただけだった。また、デ・ニーロもここだという場面では登場することなく、かつらかと思ってしまうヘアースタイルで”おそ松くん”おじさんを印象づけただけだった。『17歳のカルテ』でアンジェリーナ・ジョリーの演技を引き出したマンゴールドもこのキャストの面々では本人達にまかせるしかなかったのだろう。 2001年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director アンドリュー・デイヴィス Cast アーノルド・シュワルツェネッガー イライアス・コティーズ フランチェスカ・ネリー クリフ・カーティス ジョン・レグイザモ ジョン・タートゥーロ 短評 コラテラル・ダメージとは大義のための犠牲をいう。2001年9月11日の貿易センタービル崩壊という事件により公開が延期された映画。確かに生々しく写るだろうし、被害者及び関係者には耐えられない映画である。しかし、コロンビアのテロリストであること、テロ行為によって妻子の命を奪われた消防士を演じるA.シュワルツェネッガーVSテロ組織のボス“ウルフ”を演じるC.カーティスという個人的な戦いであるように感じる。というのもウルフのテロ活動に至る原因は娘の命を奪われたことによる。家族愛が強調され、私には『フェイス・オフ』がだぶる。@主人公は悪役ボスに息子を殺され(『コラテラル〜』では妻も殺されるが)、対決。A敵ボスにも妻子がいる上、その妻子とは敵味方を抜きにした人間的な接触。B敵妻子は二人とも死に、残された子供を引き取る(『コラテラル〜』でも引き取るだろう)。一方、9.11とダブったのは『マーシャル・ロー』の方。貿易センタービル駐車場爆破、テロ組織がイスラム原理主義者であったこちらの方が生々しい。C.カーティスとその妻を演じるF.ネリーが最後シュワちゃんに襲いかかるが、ここで彼らはターミネーターになってしまった。シュワちゃんのトラップ、地下通路を天然ガスで充満させ、彼ら存在下爆発させたのであるが、爆発後表れたのは無傷の彼ら。知略をめぐらせ危機を回避させる設定はいいが、肉体能力を現実にはあり得ないレベルにして化け物を描くのはやめて欲しい。A.デイヴィス監督の他映画と比較すると、『チェーン・リアクション』よりはかなりましだが、『逃亡者』『沈黙の戦艦』『刑事ニコ/法の死角』より出来はかなり落ちる。 1995年 イギリス/アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director マーティン・キャンベル Cast ピアース・ブロスナン ショーン・ビーン イザベラ・スコルプコ ファムケ・ヤンセン ジョー・ドン・ベイカー チェッキー・カリョ ゴットフリード・ジョン アラン・カミング セレナ・ゴードン デスモンド・リュウェリン サマンサ・ボンド ジュディ・デンチ ミニー・ドライヴァー ロビー・コルトレーン 短評 17作目の007は『007/消されたライセンス』のティモシー・ダルトンから5代目としてP.ブロスナンが就任。真面目、実直だったダルトン・ボンドから、歩き方まで洗練されたセンスを感じるニュー・ボンド誕生。殺しのライセンスを持つボンドとしては非情さをどこか感じさせ、渋さが光るショーン・コネリーには適わないが、スマートなボンドとしては1番だ。他にもMはJ.リンチが新しく演じることになり、ボンドの上役も女性となったわけである。マネー・ペニーはS.ボンドとかわいくなった。そんな一新の感が強いボンド映画をM.キャンベルが監督。この映画での経験が『マスク・オブ・ゾロ』での躍動感のあるアクションに生かされた。タイトルの“ゴールデンアイ”とは電磁波攻撃用衛星システム。これを奪い、世界混乱を企む悪役にヤヌスという二面性の意を持つ異名で暗躍する同僚006(S.ビーン)。イカれたコンピューターおタク・ボリス(A.カミング)。そして荒々しいセックスアピールで怪演のF.ヤンセン。真っ赤なフェラーリでボンドに街道レースを挑む雄雄しさ、彼女の必殺技は男に馬乗りになっての胴締め。けたたましく声を上げながら襲いかかる彼女の名が、ゼニア・オナトップとこれまた凄い。良い役の方のボンドガール(I.スコルプコ)はおとなしいー。ダムからのスケール大のバンジージャンプ、スーツ姿で戦車を運転、市街を走る007のアクションは凄いが、Q(D・リュウェリン)が用意したブルーボディのBMWに乗るも全く装備された秘密兵器を使わないのが残念。使わなければ兵器は秘密のまま、最初からないのと同じである。 1997年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ブライアン・シンガー Cast ブラッド・レンフロ イアン・マッケラン ブルース・デイヴィソン デヴィッド・シュワイマー エリアス・コーティアス 短評 『X−メン』でコミック・ヒーローものを陰の部分をセンス良く表し、キャラクターに対しても、限られた時間で多くのキャラクターをそれぞれ格好良く描ききったシンガー監督作品である。『ユージュアル・サスペクツ』でもサスペンスを表現した彼が、スティーブン・キングのマインドサスペンスホラーの世界を描く。マッケラン扮する元ナチスの正体をアウシュビッツで大量虐殺を行った事による戦犯者だと見抜いた高校生(レンフロ扮する)が、ホロコーストに興味を持ち、危険な世界へ入っていく物語。マッケラン扮する老人は、その正体を隠しての生活は、過去の過ちからの逃亡生活を送っているのである。その弱みにつけ込んで犯罪者であることを通報するというのをタテに、優位に立ったレンフロは、マッケランにナチス時代の事を語らせる。そして、彼ら二人は危険な世界に入っていく。ここの部分がキングのホラー性だって感じ。マッケランは次第にナチス式の敬礼などを自ら行うようになる。つまりヒトラーの支配は続いているのである。そして、ナチズムはレンフロに継承されていくのである。マインド支配下で生まれる狂気は最期衝撃のラストへと向かわせる。レンフロは興味半分でこの世界に踏み込んだのだが、思想というものの真の恐ろしさを知るのである。これはレンフロの演技の上手さもあってほんとに怖い。 1964年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ガイ・ハミルトン Cast ショーン・コネリー ゲルト・フレーベ オナー・ブラックマン シャーリー・イートン セク・リンダー タニア・マレット バーナード・リー ロイス・マクスウェル デスモンド・リュウェリン ハロルド坂田 短評 シリーズ3作目はいよいよ金をめぐる犯罪者が登場。その名もゴールドフィンガー(G.フレーベ)。ゴールドフィンガーの企みというのが、アメリカ中の金塊を貯蔵するフォートノックスの放射能汚染。自分が保有する金の値打ちを上げるのである。そのため核は手に入れるわ、毒ガスを用いた作戦など結構スケールの大きい陰謀を抱いた犯罪者。「空想科学映画読本」の著者柳田理科雄氏によるとコバルト爆弾で汚染された金はβ線によりプラチナに変わるとあり政府は喜ぶんじゃないかと述べているが・・。フリスビータイプの殺人帽をかぶった殺し屋(ハロルド坂田)がいい味を出している。どっから見てもプロレスラー、力技による接近戦しか出来無そうなんだが、殺人帽という飛び道具を華麗に操る。実はセリフを吹き替えていたというG.フレーベと共に話し下手な二人は言葉少なくい演技で、逆に魅力的な悪党キャラとなっている。ボンドカーはアストン・マーチン。戦闘機のごとく助手席がシートごと飛び出す仕組みなどを有する。アストン・マーチンやボンドガールの扱いが華麗でセクシーなS.コネリーのボンドぶりがカッコイイ。ボンドガール(H.ブラックマン)のプッシー・ガロアという名前がまた凄い。この名前を聞き舞い上がったボンドはドリンクをサービスする彼女に「マティーニをステアせず、シェイクで」などと決めてみせる。ここでは拘ってカッコつけたボンドであるが、以後続編を見ていくと、彼の言動からはシェイクしたいのかステアしたいのかもうわかんないし、通常、ジンにドライベルモットを少し入れ、完全に混ぜずにステアだけで飲むマティーニをシェイク、シェイクとボンド流飲み方に拘った彼がこの作品にさかのぼって理解できなくなるのだ。クライマックスも最後、爆破装置を残り時間007で止めるあたりのお洒落心は嬉しい。G.ハミルトン監督の他作品『007/黄金銃を持つ男』『007/死ぬのは奴らだ』『007/ダイヤモンドは永遠に』と比べるとこちらは秀逸。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director デヴィッド・マクナリー Cast パイパー・ペラーポ マリア・ベロ アダム・ガルシア ジョン・グッドマン メラニー・リンスキー イザベラ・マイコ 短評 ブラッカイマー製作の下、ビデオクリップで著名なそうな新人監督マクナリーも、ストーリーのせいか、ブラッカイマー色一杯でマクナリーの存在は感じられない。ただ、青春ストーリーっぽく若者のハートに鼓動する映画ではあるのだろう。音楽などのノリは良く、映像のBGMであるというよりミュージック、ダンスが強調され、音楽自体に興味が向く。実はサントラ盤は買っている。映画の中でもペラーポの歌声はリアン・ライムスに吹き替えられている。「キャント・ファイト・ザ・ムーンライト」はお気に入りである。映画評価は辛くつけながら、ブラッカイマーの商業戦略にちゃっかりはまっているのである。映画内容に戻るが、青春サクセスストーリーである『フラッシュダンス』と全く同じ展開。ダンサー(ジェニファー・ビールス)がシンガーソングライター(ペラーポ)になっただけなのだ。恋人のサポートぶりも一緒のように思えてくる。しかし、同じサクセスストーリーとはいえ『ファラッシュダンス』で目指していたものの方に重みがあった。貧乏故に我流でしか学べなかったダンスを、心を揺さぶり、体をも揺さぶるといったダンス自体が持つ本質の面から審査員に納得させるのだ。ところが今回、主人公のしがらみは貧乏なことでも勉強ができないことでもなんでもない。ただ、シンガーソングライターとしてみんなの前で歌うのが怖いってもの。最後はライトを消し真っ暗にして歌い始め、大成功。もう、ほんとに甘ちゃんなんだから。実はこの映画飛行機の中で見たのだが、その時は2回目の鑑賞。既に劇場で見ていたのだが、2回目の方が良かった。たぶん音楽にのれるようになっていたためである。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ロッド・ルーリー Cast ゲイリー・オールドマン ジョーン・アレン ジェフ・ブリッジス クリスチャン・スレイター サム・エリオット ウィリアム・ピーターセン ソウル・ルビネック 短評 まず、どうしてこうも良きに連れ悪しきに連れアメリカはクール(格好いい)なのだろうか。というか、政治の世界にしてもエンターテイメント性がある。それが良いか悪いかについては分からないが、映画の題材にはしやすい。主張し、言い争う者をアメリカの政治の世界で描こうとした監督R.ルーリーは脚本もしている。任期中に亡くなった前任者に代わり誰を副大統領にするのかということで話は進む。エヴァンス大統領(J.ブリッジス)の思惑、ラニヨン司法委員会委員長(G.オールドマン)の復讐、モラリズムによるハンソン副大統領候補(J.アレン)への執拗な追求、攻撃。彼らの政治戦略のドラマの中で、我々に女性蔑視、プライバシーの擁護などの問題を投げかけてくる。ブリッジスは『パーフェクト・カップル』で姿までクリントン前大統領に似せて演技したトラボルタより大統領らしかった。『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』の演技も良かったが、今回もNOTSOBADって感じかな。アレンも最近『フェイス・オフ』『カラー・オブ・ハート』等私から観て上質な映画への出演が続いている。ハンソンが映画の中でラニヨンに厳しい追及を受けながらも、反撃の材料となるラニヨンのプライベートな情報を知りつつ、それを持ってして反撃しなかった所などは、プライドを持って対処していくことによるプライバシー侵害やフェミニズムに対する力強い抵抗として心に残った。エヴァンス大統領の言葉“女性から偉大さを学んだ”というように自分にないものを認め、そこから何かを得ることこそ重要であるのだろう。 2002年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ジョージ・クルーニー Cast サム・ロックウェル ドリュー・バリモア ジョージ・クルーニー ジュリア・ロバーツ ルトガー・ハウアー マギー・ギレンホール デヴィッド・ジュリアン・ハーシュ ジェリー・ワイントローブ フランク・フォンテイン ブラッド・ピット マット・デイモン 短評 ジョン・マルコビッチになれるという奇妙な設定を描いた『マルコヴィッチの穴』のチャーリー・カウフマンが脚本。マルコビッチが穴に入るとどうなるんだという世界も面白く表現したカウフマンの脚本は良く出来ていた。’70年代アメリカのテレビでは“ゴング・ショ−”“デート・ゲーム”などの番組がお茶の間の人気を得ていた。日本の“パンチDEデート”や“NHKのど自慢大会”の原型に触れたことにまず満足だが、これらのTV番組プロデューサーで司会者のチャック・バリス(S.ロックウェル)が、CIAの秘密工作員をしていたという自伝を基にした物語は充分にサスペンス的要素を持っていたと思われる。しかし、カウフマンらしい冴えが見られない。だが原因は脚本ではないかもしれない。スティーブン・ソダーバーグと共に映画制作を行ってきた、これが監督初作品であるG.クルーニーは、ソダーバーグの色抜き技術を学んでフィルムノワール調で望んだ。全体的にセンスよく仕上がっているが、暗殺という秘密工作もスリルを感じることなく淡々と描かれていた様に思う。チャックのペニー(D.バリモア)やパトリシア(J.ロバーツ)との女性関係は程好い色気を保ちながらセンスよく見せてくれる。工作員の中に裏切り者がいる?次のターゲットは?虚構の中の不安がチャックに感じられた時の、薬殺シーンにおけるパトリシアとのやり取りだけは迫力があった。薬をすりかえられたことを察しながら死んでいくパトリシアの断末魔の表情は凄い。チャックに工作員の仕事を持ちかけるジム(クルーニー)は渋かった。渋さを出せる俳優である。B.ピットとM.デーモンが“デート・ゲーム”で視聴者として参加している男性人としてチョイと登場のおまけ入り。 |