JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
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1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director スタンリー・キューブリック Cast トム・クルーズ ニコール・キッドマン シドニー・ポラック トーマス・ギブソン マリー・リチャードソン アラン・カミング マディソン・エジントン レイド・セルベッジア リーリー・ソビエスキー ヴィネッサ・ショウ 短評 S.キューブリックの映画は難解である。ある館で行われている秘密のパーティーは危険な禁断の世界だ。キューブリックにしか描けないだろう、♪リゲティ「ムジカ・リチェルカータ」♪がよりいっそう妖しさを増す仮面乱交会である。内科医ビル(T.クルーズ)が、パーティで視線を合わせた海軍士官に欲望を感じたと妻アリス(N.キッドマン)にうち明けられ、動揺するところから物語が始まる。アリスと海軍士官が性的行為に及ぶ妄想に取りつかれる。アリスは夫や子供との何不自由ない生活に不安を持っている。それから前述のいかがわしい経験、命の危険をも通してビルが得たものは妻アリスへの正直な告白であった。恵まれた環境から危機的状況を1、2日体験しただけで、置かれていた環境に感謝しなくてはと言うに至る夫婦には笑っちゃうところもある。しかし、映画予告編からただならぬ映画の印象は強く、観る前から期待感を持った映画であった。強烈なインパクトはあったといえる。高度な日常に慣れた人間の性的願望はこんな風に描かれる世界なんだと、完全には理解できていないながらも、これを観てちょっと大人になった気がする。 1986年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ランダ・ヘインズ Randa Haines Cast ウィリアム・ハート マーリー・マトリン パイパー・ローリー フィリップ・ボスコ アリソン・ゴンフ ジョン・F・クリアリー ジョン・ベイシンガー 短評 片田舎の聾唖学校に赴任したジェームズ(W.ハート)は耳の不自由な生徒達に音楽やダンスの楽しさを知って欲しいと考える風変わりながら、親身になって生徒と触れ合う熱血教師である。そんなジェームズが学校で出会う掃除婦として働く聾唖の女性サラ(M.マトリン)との恋。聾唖者に偏見など持っていないように見えるジェームズも、サラとの生活の中で、気遣うことなく聴けるはずだった♪バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲♪が聴けない。また、健常者の世界を体験させてあげれる喜びになんら疑問を持っていなかったジェームズが知ることになるのはサラが望む障害者の自立への思い。身体障害の有無という障壁を乗り越えて得たジェームズとサラの関係は甘い恋愛に終わらず、分かりあってたはずの分かり合えていなかった二人のすれ違いを描いている。優しく扶養してくれるジェームズのもとを去り、縁遠くなっていた母(P.ローリー)のもとに帰る。サラは嫌っている、聾唖者であるサラを娘に持ちながら手話も覚えないとして世間からも非難されている母ではあったが、ジェームズと別れたサラを迎えるその姿はそれほど悪い母親ではないと思う。サラは手話をてきぱきとこなす。ジェームズのやさしさの中で複雑な聾唖者の心情を表現したマトリンは1986年アカデミー主演女優賞受賞。子供の頃にかかった病気により実際に耳が聞こえなくなった聾唖者でもある。 1987年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ジョエル・コーエン Cast ニコラス・ケイジ ホリー・ハンター トレイ・ウィルソン ジョン・グッドマン ウィリアム・フォーサイス サム・マクマリー フランセス・マクドーマンド ランダル・テックス・コブ 短評 ハイ(N.ケイジ)コンビニ強盗を繰り返すのは、刑務所の婦人警官エド(H.ハンター)に会わんがため。エドと結婚できてからは真面目に働きだした。だが、彼らに子供は出来ない。エドが不妊症なのだ。どうしても子供が欲しい彼らは5つ子誕生のニュースを知る。そこからはコーエン兄弟お得意の誘拐へと話は進む。5つ子を授かったのはこの映画の舞台と同じ名の家具販売店社長アリゾナ(T.ウィルソン)。5人も中の1人ぐらいはいいだろうとベビーを盗み出すことをハイに持ちかけるエドの子供欲しさの執念は凄い。盗みを働いたやばい状態の二人に更なる試練はやってくる。まず、ハイの務所仲間ゲイル(J.グッドマン)とエベル(W.フォーサイス)だ。子供を誘拐し、そっと隠れていたいハイとエドにとって脱獄してきた彼らは非常に迷惑だ。迷惑はまだやって来る。グレン(S.マクマリー)、ドット(F.マクドーマンド)夫妻だ。子供に憧れ誘拐までしたエドらにとって、うるさい彼ら親子(子供5人)の姿は特にうんざりだ。そしてスワッピングまで持ちかけるグレンをハイは許せなかった。しかし、会社上司であるグレンを殴っていいわけは無い。ましてハイ夫婦が誘拐を働いたことを察知したグレンは子供をよこせと脅す。職を失ったハイのやることがまたまたコンビニ強盗というのが面白い。強盗に及んでる最中を目撃し、呆れ怒るエドがハイをコンビニに残して車で去るのも絶妙。残されたハイが犬に追い掛け回されたりするのとあわせて、着せられたフードで演技する赤ちゃん等このシーンの演出は冴えている。ところどころ劇画調にするのも渋い。おタク監督は賞金稼ぎレナード(R.T.コブ)をアメコミのキャラのように描く。レナードを撮るとき、彼のブーツ、背中に背負うライフル銃等のアップから入ってくれる。『レオン』ではスタンフィール(G.オールドマン)はピンを抜いた手榴弾をレオンから受取り爆死する。レナードに殴られ続けボロボロのハイは映画『レオン』ばりにレナードをやっつける。そのやられ方も劇画チックでいかしている。最後は赤ちゃんを返しに行くハイとエド。そこで二人を発見するアリゾナ社長の意外な言動にホロリと温かくなれる。遊び心を持ちながらまとめるところは纏めた映画。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director マット・ウィリアムズ Cast ナタリー・ポートマン アシュレイ・ジャッド ストッカード・チャニング ジョーン・キューザック ジェームズ・フレイン レイ・プルイット ローラ・ハウス マッケンジー・フィッツジェラルド カレイ・グリーン キース・デヴィッド ディラン・ブルーノ メアリー・アシュリー・グリーン サリー・フィールド リチャード・ジョーンズ ボブ・コンロッド アリシア・ゴッドウィン マーガレット・アン・フォード 短評 お腹の子の父親ジャック(D.ブルーノ)に見知らぬ町で置き去りにされるノヴァリー(N.ポートマン)は無一文ながらウォール・マートで隠れ住み、子供を産み落とす。マットや目覚まし時計等生活用品はスーパーに揃っており、使っては元の棚に戻すノヴァリーの力強い生き方は凄い。泥棒には違いないのであるが、ウォール・マートへの借りをリストにしているのが憎めない。スーパー住まいが明らかになったことで有名になった彼女は500ドルというお金を手にするが、これも騒ぎを聞きつけてやって来た実の母親(S.フィールド)に持ち逃げされる。どうしようもない人間達である。しかし、この映画は苦しみながらも人に対する思いやりを忘れない人達も描いている。4人の子持ちながら男運に薄いレクシー(A.ジャッド)、アルコール中毒の会のメンバー、ハズバンド(S.チャニング)、アルコール中毒の姉を献身的にたった一人面倒をみるフォーニー(J.フレイン)等である。途方に暮れるような状況の中でノヴァリーは彼等に出会い自分を見出していく。写真に魅入られ、写真家への夢を追いかける。彼女はフォトで賞を取るまでに至るいわゆる成功を掴むが、それは若くして未婚、恋人には逃げられた過酷な状態の中でも子供を育て責任を果たすたゆえである。一方、ジャックもノヴァリーを置いて逃げた時点で出番は終わりかと思っていた。だが、ミュージシャンとしてちょっと浮き出したかなと思いきや落ちていく彼の人生を結構長々と追いかけていくのだ。なんでなのか疑問であったのだが、列車事故で足を切断したジャックには役割があった。フォーニーのプロポーズに「愛してる」と答えられなかったノヴァリー。フォーニーが去って以降思いを募らせる自分の真意は違うことを自覚させ、そのことをフォーニーに伝えるために会いに行こうと決心させる愛のキューピット役であったのだ。登場人物の内面を映し出し、人生の痛みを感じさせ、彼らとの触れ合いの中で成長していくノヴァリーの姿に心が温まる。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director キャメロン・クロウ Cast ビリー・クラダップ フランシス・マクドーマンド ケイト・ハドソン パトリック・フュジット ジェイソン・リー アンナ・パキン フェイルザ・バーク ノア・テイラー ズーイー・デシャネル フィリップ・シーモア・ホフマン 短評 “ベッドの下で自由を見つけて”或いは“ろうそくをつけて聴くと未来が見える”という姉アニタ(Z.デネシャル)の言葉でロックの世界にのめり込むことになるウィリアム(P.フェジット)。ウィリアムはクリーム誌の編集長レスター(P.S.ホフマン)との出会いにより、ロック評論を行うことになる。取材活動中にバンド・スティルウォーターに認められた彼はツアーに同行することになる。そんな彼が出会うのがペニー・レイン(K.ハドソン)。彼女はバンドの追っかけだが、自分のことをグルーピーとは呼ばず、バンド・エイドだという。このペニー・レインが魅力的。女の子として、まず自信を持っていて、バンドメンバーに気に入られる事への自信を感じる一方、田舎町出身でバンドを追っかける素朴さ、有名人を追っかけているだけというどこかしら儚さを併せ持つ。セクシーさも表現するハドソンであれば、ゴールデングローブ助演女優賞も当然に思える。スティルウォーターのギタリスト・ラッセル(B.クラダップ)もいい演技により支えられた登場人物だった。コメディ要素を織り交ぜながらのバンドメンバーの友情と葛藤も良かった。実在のバンドの様に見えたが、スティルウォーターは、C.クロウが脚本した架空のバンド。モデルとなったバンドはオールマン・ブラザーズ・バンドだそうだが・・、知らない。クロウ自らがローリング・ストーン誌で評論していたことを原案としたこの脚本はアカデミー賞を獲得した。スティルウォーターの演奏する音楽はクロウの嫁さんであるナンシー・ウィルソン作だそうだ。あのバラード・ロックはぴかいちの“ハート”のギタリスト。♪ネヴァー♪などいい曲あるんだよな。作品賞でもゴールデングローブを獲得したこの映画、クロウ監督に対する私の評価は、マット・ディロン主演の『シングルス』とで併せ技一本。 1999年 日本 おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director 小泉堯史 Cast 寺尾聰 宮崎美子 三船史郎 吉岡秀隆 原田美枝子 檀ふみ 井川比佐志 加藤隆之 松村達雄 仲代達矢 短評 1999年ヴェネチア国際映画祭・緑の獅子賞、2000年日本アカデミー賞、作品賞、主演男優賞(寺尾聰)、助演女優賞(原田美枝子)等他5つ受賞。また、2000年ブルーリボン賞助演女優賞(宮崎美子)が獲得している。日本アカデミー脚本賞は故・黒澤明への追悼ということだろう。映画自体最初に、黒澤監督の写真を挿入し巨匠に捧げると語る。映画にはよく見られることだが、これは映画の最後、それもエンドクレジットの後にして欲しい。ダウンタウンの松本人志が「シネマ坊主」で同じことを言っていた。とにかく黒澤監督のイメージを引きずりすぎているところが残念な映画である。剣術に優れた三沢伊兵衛(寺尾聰)は仕官が出来ない浪人者。長雨で大井川を渡れないため、長く足止めされ滞在しているが、宿屋の他の貧しい人達の気を紛らわそうと、賭け試合をしてそのお金で皆に振舞う。禁止された賭け試合をしてしまったことを平に謝る伊兵衛とそんなお人好しの彼に理解を示しついていくたよ(宮崎美子)が実にいい感じの良妻。侍同士の果し合いを見事仲裁した伊兵衛はたまたま通りがかり一部始終を見、感心した城主・永井和泉守重明(三船史郎)に気に入られる。仕官させよとする城主だが、家老・石山喜兵衛(井川比佐志)らに反対される。御前試合に任せてみようとするが、伊兵衛の敵はいない。相手を名乗り出る者のいない中、重明自ら相手をするが、圧倒的強さで負ける。その時敵を気遣うやさしさが相手を傷つけていることを重明の口から語られる。それが剣の猛者であり、やさしい伊兵衛が未だ浪人である理由なのだ。自分のためというより、酒や食べ物を貧しい人に振る舞うために剣を構えるい伊兵衛に対し、参ったと剣を交えることなく剣をしまう剣豪・辻月丹(仲代達矢)の言葉が強さの秘訣を明らかにする。そんな損な性分の伊兵衛ではあるが、仕官の話を賭け試合を理由に断りに来た家老に対し、たよは「何をしたかでなく、何のためにしたのかだ」と、それが分からんぬ家老等を木偶の坊呼ばわりし仕官の話は逆に断る。たよの夫を信じきっぱりと言い切る行動、彼女の幸せそうな微笑みが幸せな気持ちにしてくれる。寺尾聰、宮崎美子の演技はお人好しの夫婦として素晴らしいのは言うまでも無く、三船史郎の城主も、吉岡秀隆や井川比佐志の木偶の坊ぶりも味があったと思う。 1973年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ジョージ・ルーカス Cast リチャード・ドレイファス ロン・ハワード ポール・ル・マット チャーリー・マーティン・スミス シンディ・ウィリアムズ キャンディ・クラーク マッケンジー・フィリップス ウルフマン・ジャック 短評 『スター・ウォーズ』で知られるG.ルーカス監督作。特別仕様の車で街に繰り出し女の子に声をかける、そんなハイティーンブギな一夜を描く。カスタム・カーで女の子にいいかっこする男と自分にあつらえられたかのように車込みで男を選ぶ女の子。それは若いが故のひと騒ぎなのだ。まさしく青春のグラフィティ、人生というスケッチブックに描く落書である。バカをした思い出こそ懐かしい。カーラジオから流れるのオールディーズ・ミュージックナンバーが’60Sを懐かしめ、♪プラターズの「オンリー・ユー」♪が心を震わせる。たそがれの明かりトワイライトを柔らかく、また優しい光としてほんわかと捉える撮影技術は素晴らしい。女の子をナンパするため磨き上げた車のボディー、例えばカート(R.ドレイファス)が一目惚れした美人の乗っていた白色サンダーバード、ジョン(P.L.マット)の乗る黄色フォードはメタリックな美しさを併せ持った上、カラフルな街の光を映し出す。一目惚れの女性を求めるも会うことの出来なかったカート。街を出ることよりも恋人ローリー(C.ウィリアムズ)を選んだスティーヴ(R.ハワード)。スティーヴから借りたシボレーに乗って、デビー(C.クラーク)をナンパ、苦労の末ものにするもお楽しみ中に車を盗まれ慌てるテリー(T.M.スミス)。いろいろあった一夜もジョンらのカーレースと共に明け始める。町を出て大学へと飛行機で旅立つカートと共に淡い青春は終わりを告げる。続いて彼らの将来がテロップが流れる。車に轢かれ死んだジョン、ベトナム戦争で行方不明となるテリーら未来は厳しい。だからこそ青春のグラフィティはたそがれの街明かりのように淡くていとおしい。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ポール・ウェイツ Cast ジェイソン・ビッグス アリソン・ハンニガン クリス・クレイン ミーナ・スバーリ トーマス・イアン・ニコラス エディ・ケイ・トーマス シャノン・エリザベス タラ・リード ナターシャ・リオン ユージン・レヴィ ジェニファー・クーリッジ ショーン・W・スコット クリス・オーウェン イーライ・マリエンタール 短評 高校卒業までに女の子と寝る。そんな作戦を繰り広げる典型的な青春おバカ・コメディ映画である。外国の高校はやはりなんといってもプロム。そこで、大切なものを再認識するという青春映画の王道。一番の収穫はM.スバーリが出でいたことか。オズ(C.クレイン)が女子大生に振られて、入ったコーラス部で出会う彼女、ヘザー役だ。スバーリは『アメリカン・ビューティー』と違い、この映画の中ではまともな恋をする。大失態の禁場面をインターネットサイトで流されてしまったジム(J.ビッグス)はブラスバンド部のオタク彼女ミッシェル(A.ハンニガン)をプロムに誘う。ところがミッシェルがすごいセックス狂だったいう、主人公ジムの体験はこんなオチ。それにしてもこんなノリ(ロストヴァージンのドタバタ)の映画をとりあえず最後まで見ることが出来る!流石アメリカ映画だ。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director マーティン・ベル Cast ジェフ・ブリッジス エドワード・ファーロング ルシンダ・ジェニー ドン・ハーヴェイ トレイシー・ティラ・カピンスキー 短評 宝石強盗のジャック(J.ブリッジス)は仮釈放、保護観察の身。刑務所から出たジャックを親い息子ニック(E.ファーロング)は会いに来る。預けていた妹の所に帰ってくれないニックとの暮らしが始まる。世間はなかなか堅気の生活になることを決意するジャックを受け入れてはくれない。昔の仲間レイニー(D.ハーヴェイ)は強盗から足を洗えず、ジャックを仲間に引き込もうとする嫌なヤツ。窓拭きの仕事は真面目に務めるもなかなかアパートの家賃も払えない苦しい生活。しかし、刑務所でのお勤め中に知り合った文通相手のシャーロット(L.ジェニー)とは愛し合いいい関係に。二人を結びつけたのが文通雑誌が『アメリカン・ハート』、映画のタイトルでもある。しかし、この映画はジャックとシャーロットの関係はあくまで添え花、メインはニックとの親子愛である。同じアパートのモリー(T.カピンスキー)に恋心を抱き、また、ストリート・キッズと遊ぶようになるニックも運命に導かれるように盗みの道へ。アラスカで新しい生活を夢見る親子に押し寄せる悪の道への誘い、堅気であろうとすることに対する抵抗が腹立たしい。結局、レイニーは親子が頑張って貯めたお金を盗んだ上、ニックを強盗仲間に引き込んでしまう。ニックを悪の道へ引き込んだレイニーに撃たれ、夢のアラスカ行きのフェリーの上でニックに抱かれ息を引き取るジャック。その姿は虚しく悲しいが、父親になれたジャックに感動の余韻が残る。『ターミネーター2』のE.ファーロングの演技が見もの。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director サム・メンデス Cast ケビン・スペイシー アネット・ベニング ゾーラ・バーチ ミーナ・スバーリ ウェス・ベントレー 短評 「美」に魅了されるのは幸福体現の一つである。が、諸般に沿わず、周りに認めてもれえないものに「美」を感じちゃったら・・。自らの生活に足りないものに興味を持つのは当然だが、その行為が社会規範外であれば、当然抑制が働く。そのために心在する空虚、いや空虚が感性を変えるのか?とにかく自分勝手に動き始めると、周囲の人の引き金となる。レスター(K.スペイシー)の家族はバラバラになった。この映画では「美」をバラにより具現化する。レスターが憧れる娘ジェーン(T.バーチ)の友人アンジェラ(M.スバーリ)がバラの花びらに包まれ、バラが降ってくるシーンはお見事。舞い上がったレスターの頭の中である。その他、バラはさりげなく生けられている。ここが、問題。何気ない生活のちょっとした「美」を意識できなければ、空虚がそこに去来する。たとえ食卓にアメリカン・ビューティ(バラ)を生け、気取ってみてもそこに流している音楽はジェーンに指摘されるような邪魔にならない魅力のないエレベーター・ミュージックなのである。レスター家族の生活は実感のないアメリカン・ビューティー(理想の生活)を装っていたのだ。話は変わって、レスターが裸でバーベルを持ち上げトレーニングに励むシーンがある。このトレーニングの動機もコミカルだが、これが騒動、事件を引き起こす。トレーニング中の裸を覗き見するのがお隣に住むフィッツ大佐(C.クーパー)。息子との関係を勘違いし、レスターに会いに行き、彼の体に触れた時、大佐は自分に気付くのである。このシーンはショキングである。規律で雁字搦めにしコントロールしてきた彼が自らの本性に出会い、それ自体を認めない。そんな怖さを知った。社会的問題を描きながらもある面ではコミカルだった。それにしてもレスター、いい年して娘の友達にバラをイメージするとは、いやはや。 1961年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director ジョン・ヒューストン Cast クラーク・ゲイブル マリリン・モンロー モンゴメリー・クリフト イーライ・ウォラック セルマ・リッター ジェームズ・バートン エステル・ウィンウッド 短評 『風と共に去りぬ』からするとだいぶ、いやかなりお爺さんになったC.ゲーブルがカウボーイを演じる。しかし、時代はカウボーイの存在意義を変えていく。例えばカウボーイが狩でしとめた野生の馬は業者に引き取られ、ドッグ・フードにされ、もはや馬は人間の必需品でなく、ペット用である。そんなカウボーイの仕事をM.モンロー演じる都会の女性が理解できる訳もなく、C.ゲーブルやM.クリフトの行う馬狩も、馬を殺すことはないとモンロー演じる女性に避難される。しかし、美しい女性は男にとって影響大。馬がかわいそう、馬を殺すことはないと泣き騒げば、一見頑固そうなC.ゲーブル演じるカウボーイの信念は変わり、カウボーイとしてやってきた人生感に変化をもたらす。何とかして欲しかったのが、C.ゲーブル演じる男の“ゲイ”という名前。なんか他になかったのか。監督は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のA.ヒューストンのおとっちゃまJ.ヒューストンである。 1986年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ジュノー・シュウォーク Cast クリストファー・リーヴ ジェーン・シーモア テレサ・ライト スーザン・フレンチ クリストファー・プラマー ビル・エルウィン ジョージ・ヴォスコヴェック ジョン・アルヴィン エドラ・ゲイル オードリー・ベネット ウィリアム・H・メイシー ローレンス・コーヴェン 短評 『サンタクロース』『スーパーガール』のJ.シェウォーク監督。『JAWS/ジョーズ2』の監督は一転して切ないラブストーリーを描く。ホテルの肖像画に写るエリーズ(J.シーモア)に心を奪われるリチャード(C.リーヴ)は彼女に会う為にタイムトラベルを試みる。着る物など当時のものを揃えて念じればタイムトラベルが出来るという素朴さもいい。タイムトラベルを心理学とも科学とも取れるような設定しているところが、美しい幻想の世界を引き立たせているようだ。ラブロマンスには隔てた二人を結びつけるものが不可欠であるが、それが懐中時計であり、♪ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲♪であるのだ。リチャードが昔にタイムトラベルして始まったエリーズとの甘い時間。しかし、時が二人の壁になる。ポケットの中の現在のコインがリチャードを元の世界に引き戻す。リチャードが置いていった懐中時計を老婦人となったエリ−ズが返しに来るシーン、脚本家リチャードの処女作パーティに現れ、「私のところへ戻って来て」と告げる彼女は切な過ぎる。時を越えた想いがロマンチックなストーリー。特にラフマニノフの音楽が二人を甘美に惹きたてる。図書館等での調査でエリーズのメイド(T.ライト)を突き止め、リチャードはタイムトラベルを試みる前に、肖像画の彼女が老婦人であることを知る。ただ、この事実はタイムトラベル以降にリチャードに分かるようになる方が、行動が衝動的であるが故の運命的なものを強く感じられた気がする。 1998年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director マイケル・ベイ Cast ブルース・ウィリス ビリー・ボブ・ソーントン リヴ・タイラー ベン・アフレック ウィル・パットン スティーヴ・ブシェーミ ピーター・ストーメア オーウェン・ウィルソン キース・デイヴィッド クリス・エリス ジェイソン・イザック 短評 『バッドボーイズ』シリーズ、『パール・ハーバー』『ザ・ロック』のM.ベイ監督がJ・ブラッカイマーと作り上げる映画は大衆受けする娯楽作だ。小惑星飛来パニックのこの映画は同時期に公開となった『ディープ・インパクト』に対し圧倒的な興行成績で勝利した。隕石が飛んでこなければ小惑星が飛んでくることに気付かない。衝突まであと18日しかないなんて、世界中の天文台観測者は何していたんだろう。小惑星を核爆弾で内部から爆発させるしかないという。飛来する小惑星にシャトルでたどり着き、想像を絶する空間で作業をするという信じられないような無謀な計画だ。小惑星穴あけ作業には石油掘り野郎がいいとしてハリー(B.ウィリス)等をリクルートし、彼等に付け焼刃の訓練をさせ始めるのだ。地球人類の存亡がかかっているような大変なミッションの取るべき方法ではない。それからは我々を感動させようと、娘グレース(L.タイラー)の恋人A.J.(B.アフレック)の存在に戸惑いながらも娘を思う父親の姿を見せたり、地球を救うため、仲間を救うために小惑星と吹っ飛ぶハリーの独壇場だ。地球を救うためのプロジェクトに命を駆けて臨むことで疎遠になっていた家族の絆を取り戻すチック(W.パットン)の話などお涙頂戴のトピックが目白押し。観ていて恥ずかしくなる。これでもかと彼等をヒーローとして祭り上げるのだ。ヒーローを引き立たすため、だめ人間としてハリーの採掘仲間であるロックハウンド(S.ブシュミ)を擁していたが、実にうざっとい存在で邪魔なだけだ。 1999年 アメリカ・アイルランド おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director アラン・パーカー Cast エミリー・ワトソン ロバート・カーライル ジョー・ブリーン キアラン・オーウェンズ マイケル・リッジ ロニー・マスタースン 短評 ピュリッツァー賞を受賞したフランク・マコートの「アンジェラの灰」の映画化。無職で飲んだくれの父を持つ家族の極貧生活を描いたものだが、本当の話なだけに身につまされる。食べ物もない、燃料もない、そんな生活の上に、雨が多いじめじめした天気。アイルランドはそんなトコ?と今までとかなり違う印象を得た。無職で飲んだくれの父を演じたのがカーライル。『フルモンティ』でも無職だっただけに板に付いてきた。母親アンジェラを演じるワトソンはかなり気丈。それにかなり辛抱強い。あんな旦那だったらはよ分かれたらいいのに・・。やっぱり宗教的な理由で離婚できないのか?カトリック教徒はかなり厳しいとは聞くが。でも、母親や姉妹のために目を真っ赤にして石炭運び等働いていたフランクが今やピュリッツァー賞作家なんだと思うと救われる。それほど、惨めな生活だったわけで、飢えと寒さで死んでいった兄弟が3人もおり、よく生き抜いたと思える映画だった。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director クリス・コロンバス Cast ロビン・ウィリアムズ エンベス・デイビッツ サム・ニール オリバー・プラット キルスティン・ウォーレン ウェンディ・クルーソン 短評 アイザック・アシモフ小説の映画化。頭脳回路に異変が起きた1体のロボット、それがアンドリュー(R.ウィリアムズ)。アンドリューはリチャード・マーチン(S.ニール)家族のお手伝いロボットして家族の仲間入りする。彼は普通なら持ち得ない学習能力と自我を持ってしまったことから人間と同じように感情をももつようになる。リトル・ミス(E.デイビッツ)やマーチン家族の一員として彼らの暖かい心に触れながら成長していく。そんなアンドリューはけなげで心優しく、まさにウィリアムズが演じるためにあるような役。「聖者の行進」短編集の中に著されている「バイセンティニアル・マン」が原作であるが、原作ではリトル・ミスとの恋物語などは描かれていない。映画の方が、恋愛をも絡めて、ラストのアンドリューが死を選ぶ辺りかなり重みがある。映画の方が原作より上というのはそうあるもんではない。最近では『ビーチ』位だろうか?とにかくこの映画の脚本は誉めていい。ロボットのデザインも綺麗だったし、ロボットにあれだけ表情を持たすなんて見事。『ジングル・オール・ザ・ウェイ』や『グッド・ナイト・ムーン』の製作でちょっと失敗?だったコロンバス監督も『ホーム・アローン』以来の成功と言っていいのでは? 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director M・ナイト・シャマラン Cast ブルース・ウィリス サミュエル・L・ジャクソン ロビン・ライト・ペン スペンサー・トリート・クラーク シャーレーン・ウッダード 短評 M.N.シャマランお見事。インド出身の彼は、だからこそ、アメリカにはない精神面も描ける。『エリザベス』の監督シェカール・カプールもインド出身であるが、彼とは全く路線を異にしている。展開はシャマラン前作の『シックス・センス』と同じで、最後にアッと言わせるのである。『シックス・センス』の展開は、完全的中とはいかなかったが、B.ウィルス演じる主人公は妻を始め皆に見られていない様で何か不自然さを感じ、何となく彼がこの世に存在していないことを予想した。しかし、今回は完全にダメだった。ミスター・ガラス(S.L.ジャクソン)を彼の可愛そうな境遇から、まずもって疑惑の対象から外してしまっていた。今思えば、Mr.ガラスは「引き替えに・・犠牲にしたもの・・・」云々など謎に繋がることを語っていた。ちょっと不満が残るのが、デイヴィッド(B.ウィリス)の息子ジョセフ(クラーク)が父親をアンブレイカブルな存在と信じ拳銃を向けるシーンだ。ジョセフが引鉄を引いてしまうのかといった一触即発の状態は3人の緊迫感が要求されないといけないシーンなのだ。ワンカットで撮っているため、デイヴィッドの妻(R.W.ペン)を含む3人の演技に緊迫感が伝わってこない。間延びした印象を持った。シャマランの狙いはワンカットによる緊迫感だったのだろうが、仇になったような気がする。 |