JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
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2002年 日本 おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director 篠原哲雄 Cast 江角マキコ 豊川悦司 筧利夫 麻生久美子 寺脇康文 平田満 根岸季衣 江守徹 岸谷五朗 斉藤由貴 樹木希林 短評 作家、柳美里の私小説を映画化。美里(江角マキコ)は子供を出産する。子供の父親(寺脇康文)は妻帯者でもあることもあり結局」は慣れていく。一緒に子供を育てようと言う劇団を主宰する東(豊川悦司)はかつての恋人で手遅れの癌を患っている。死と向き合う東との闘病生活が、子供を出産し育てていく美里を力強くする。かつて自殺願望があった美里が悲しみの中でしっかり生きている姿は、美里の母(樹木希林)に「子供が出来て、これで死のうとするようなことは無い」と言わせるほど。生まれくる子供と死に行く東を対比させることで、死と向き合うことの意義を重みのあるものとしている。担当医(平田満)と積極的に延命治療法について語り合い要求していく姿がとても痛々しい。 1996年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director チャールズ・ラッセル Cast アーノルド・シュワルツェネッガー ジェームズ・カーン ヴァネッサ・ウィリアムズ ジェームズ・コバーン ロバート・パストレッリ ジェームズ・クロムウェル ダニー・ヌッチ アンディ・ロマノ ニック・チンランド 短評 『マスク』のC.ラッセルが監督するはアクション俳優シュワちゃんをヒーローに、『シャフト』のV.ウィリアムズをヒロインに据えたノンストップ・活劇エンターテイメント。ヒーローは証人保護プログラムのために証人の死を演出し過去を消去するイレイザー野郎ジョン・クルーガー(A.シュワルツェネッガー)。兵器会社に務めるリー(ウィリアムズ)はEMガンに関連する陰謀を暴くため、証拠をディスクにコピーする。しかし、重要証人となったリーは命を狙われることに。ジョンの師であるドゥゲラン(J.カーン)が敵に情報を流す裏切り者であるというありきたりの設定にストーリーとしては安っぽさを隠しえない。また、お偉いさんベラー局長(J.コバーン)の何をするでもない存在感の薄さも気になる。だが、貨物線の踏み切りに車に閉めこまれ置き去りにされるドゥゲラン他悪人達。彼らの慌てぶりを含め、列車に衝突させられイレイス(消去)される様はスカッとし爽快である。また、ジェット機から脱出し降下するものの自分に向かってくるジェット機に対してパラシュートをクィックィッと操る姿や、以前助けた恩義から協力を惜しまないジョニーC(R.パストレッリ)をめぐるコミカルなシーンは単純なストーリーには合っていたし面白かった。 2003年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ジェーン・カンピオン Cast メグ・ライアン マーク・ラファロ ジェニファー・ジェイソン・リー ケヴィン・ベーコン ニック・ダミチ シャーリーフ・パグ 短評 『ピアノ・レッスン』のJ.カンピオンはまたまた抑圧された女性の性が剥き出しになっていくを描く。今回は大学の文学講師フラニー(M.ライアン)が危険と知りながら愛欲の世界に落ちていく。『ピアノ・レッスン』の男は野性的な魅力で女を魅了していった。フラニーが出会う刑事マロイ(M.ラファロ)も男くささが漂う。その上猟奇的な殺人事件を捜査するマロイは、犯人ではないかと疑わしく描かれる。フラニーが目撃した犯人らしき人物はスペード3のタトゥーを手首に彫っていた。殺された女性との行為に自分が心の奥底に秘めていた性の意識を刺激されてしまったフラニーには、怪しいマロイを拒絶しきれない。マロイの手首にも同じタトィーがある。その結果愛する妹ポーリーン(J.J.リー)を惨すぎる死に至らしめる。しかし、ラブコメ道をのみ突っ走ってきたM.ライアンに妖艶な世界を表現することは無理。自分の行動を妹に相談する甘ちゃんで、ポエム浸りのブリっ娘レディである。所々で聞かされるポエムも先住民の詩として紹介されるを代表にストーリーに絡んだ意味を持つものとは思えないため、詩が響くこともない。猟奇殺人のサスペンスとしてもお粗末。フラニーを追い回すストーカー男ジョン(K.ベーコン)は怪演技であったが、マロイと共にどう考えても犯人じゃないという存在。新犯人が明かされてもそれまでの絡みが少ないだけに、突然犯人を連れてこられた感が否めない。♪ケ・セラ・セラ♪が流れるざらついたオープニングタイトルは雰囲気あったが、そこまで。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ポール・バーホーベン Cast エリザベス・シュー ケビン・ベーコン ジョシュ・ブローリン キム・ディケンズ グレッグ・グランバーグ ジョーイ・スロトニック 短評 流石『スターシップ・トゥルーパーズ』『トータル・リコール』『ロボコップ』のP.バーホーベン。ビジュアルの面では素晴らしいと言うしかない。人体が透明化する過程を上手く描写する。しかし、柳田理科雄氏は書籍でアメリカ軍のプロジェクトとしては裸にならないと姿を消すことが出来ないこの研究は、シベリアでもベトナムでもイラクでも任務を遂行する手段となり得ないためお粗末であると指摘していた。このあたりのことについては今後制作されるだろう映画に期待するとして、これまで透明人間をテーマに映像化してきたものに見られた、透明人間の持つ物体の空中浮遊などのシーンで遊んでみるといった事はこの映画には無かった。しかーし、今回、透明人間になるのは、国家機密で行っているような研究のトップ研究者である。そんなインテリジェントな人間が透明になってすることが、寝ている女性の胸を触ったり、子供を驚かしたり、まるで志村けん扮するバカ殿がやりそうな低レベルのことばっか。透明になり、誰にも見られることが無くなったとき、邪悪な心が支配的になるというコンセプトはいいと思う。それにまあ、男っていうのは所詮そんなもんかもしれないが、もっと高レベルの悪事を行って欲しかった。透明人間セバスチャン(K.ベーコン)は火炎放射で燃やされても殴られても高圧電流を食らってもくたばらず、ついには不死身のターミネーターになってるではないか。透明であれば、いいことばかりではないはず。単に化け物にするんじゃなくて、人と違ったところに位置することの孤独な面など哀愁といったものも表現して欲しかったかな。とにかく、この映画で得たことは悪い奴には余計な能力を持たすんじゃないということ。 インファナル・アフェア 2002 香港 おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★ Director アンドリュー・ラウ アラン・マック Cast アンディ・ラウ トニー・レオン アンソニー・ウォン エリック・ツァン サミー・チェン エディソン・チャン ケリー・チャン 短評 麻薬取引を検挙しようとする警察と捜査網を掻い潜り取引を成立させようとする香港マフィアの緊迫感溢れる攻防がスリリングだ。マフィアに送り込まれたヤン(T.レオン)の10年の厳しい潜入捜査が神経をすり減らしボロボロになった演技、マフィアのボス・サム(E.ツァン)に認められ警察学校に送り込まれ、長けた能力で警察内で信頼を得ながらマフィアに情報を漏らすラウ警察官(A.ラウ)の汚れた行動の中に見せるエリート感。結婚を控えた恋人メリー(S.チェン)との関係もスマートに演じる。彼ら二人の演技が秀逸で引き込まれる。潜り込むスパイ工作も警察学校から仕組まれた遠大なものでリアリスティックに繋がるストーリーになっている。ウォン警視(A.ウォン)の存在がヤンとラウ二人を惹き立てる。ウォンを信頼しているからこそ潜入捜査を耐えて続けるヤン。サムを挙げるという二人の男の信念を感じる。ラウにだって自分を引き立ててくれたウォンの死に、最後はサムを裏切り殺害に至る善への道への流れを無理なく我々は受け入れることが出来る。善とは一応述べたが、彼がかたぎになるのは必ずしも善というのは適切でない。むしろヤンの死、自分同様警察に進入していた男を殺し自分の素性を消し去ることで成り立つのだ。ウォン警視やヤンの死に追いやった責任を痛ながら警察官として生きていくことが無間地獄であるという。この映画は長寿が無間地獄であることを最初と最後で説くが、無間地獄という言葉をあまりにも印象付けしすぎであると感じる。ヤンの墓に敬礼するラウの姿の後は説明は要らなかった。ラウとメリーの関係のようにヤンと精神科医リー(K.チャン)の関係も重きを持たせて演出はしていない。しかし、リーがヤンの墓の前に佇むその姿だけで充分である。拷問にもヤンのことを漏らさなかったウォン警視とヤンの悲しき栄光は心を打つ。 |