JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
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1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director キンバリー・ピアース Cast ヒラリー・スワンク クロエ・セヴィニー ピーター・サースガード ブレンダン・セクストン三世 アリシア・ゴランソン 短評 トランスジェンダーというのが、もともと生まれながらに持っている問題であるのかどうかは分からないというのが本音だが、トランスジェンダーの持つ悩みが少し理解できたような気がする。これはアメリカで実際に起こった事件を映画としたもの。トランスジェンダーであるブランドンをヒラリー・スワンクが演じており、アカデミー賞・最優秀主演女優賞を獲得している。確かに男として女の子に興味を持ち、男として生活していく見事な演技。ブランドンはトランスジェンダーに悩むだけの人生だっただろうが、それでも自分を理解してくれた彼女ラナ(クロエ・セヴィニー)に出会えたことが救いだったし、町の人間に化け物とののしられ絶望の中に見せる唯一ラナによって癒される一面をスワンクは上手に演じていた。それにしても、異端を憎むヘイトクライムという社会的な感情は非常に恐ろしい。ピアースはこの事件に至るまでの登場人物の感情の動きをありのままに描き真実を伝えてくれた。それだけに考えさせられることは多い。 1995年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ジョフ・マーフィ Cast スティーヴン・セガール エリック・ボゴシアン エヴェレット・マッギル キャサリン・ヘイグル モリス・チェスナット アンディ・ロマノ ブレンダ・バーキ ピーター・グリーン パトリック・キルパトリック スコット・ソワーズ アフィフィ サンドラ・テイラー ジョナサン・バンクス ロイス・D・アップルゲイト ニック・マンキューゾ クリストファー・ダーガ ドン・ブレイクリー デイル・ダイ 短評 『ヤングガン2』のG.マーフィ監督がNAVY・SEALSのコック、ケイシー・ライバック(S.セガール)活躍のために、グランド・コンチネンタルという豪華列車がハイジャックされ暴走するという閉ざされた空間を用意した。戦艦ミズーリの時と同様、訓練されたテロ集団の計画は用意周到に準備されたはずだった。だが、ライバック一人の存在で10億ドルを手にし、ペンタゴン地下の原子炉を破壊という企みが崩されていく。レーザー砲を搭載したグレイザー1という人工衛星をのっ取り優位に交渉していけるはずだった衛星設計者デイン(E.ボゴシアン)と傭兵ペン(E.マッギル)の野望は制圧したはずの列車内部から打ち砕かれていくのだ。彼らはライバックの姪サラ(K.ヘイゲル)を含め人質を得ていた。だが、ライバックは人質ぐらいでは顔色一つ変えない。ライフルで体を撃ち抜かれても痛そうにも見えない。とにかく強い。ベンも男の意地でタイマン勝負を挑むもコックのナイフさばきには勝てず、切り刻まれた後関節決められてボキッとされてアウト!最後は石油を搭載した列車との衝突による爆発で迫り来る爆炎から列車後方車両へ走り逃れるというアクションを完成させる。あいつがいるのか、あいつは凄いと誰しもに認められ暴れまわるライバックに超越したヒーロー像を見ることが出来る。一方、ポーターのボビー(M.チェスナット)がライバックと協力し、衛星とコンタクトに必要なCD−ROMを奪うも逃げ切れず奪い返される。だが、CD−ROMには傷もつけていないという間抜け振りが気になった。 1972年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ハーバート・ロス Cast ウディ・アレン ダイアン・キートン トニー・ロバーツ スーザン・アンスパッチ ジェニファー・ソルト ジェリー・レイシー 短評 『摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に』『フットルース』のH.ロスが、ハンフリー・ボガードに憧れる映画評論家アランを描く。アランの奮闘振りはやはり一癖も二癖もあるW.アレンが監督をやっているんじゃないかと思えるアレン節。妻ナンシー(S.アンスバッチ)に逃げられ、友人ディック(T.ロバーツ)とリンダ(D.キートン)夫妻に女友達の世話をしてもらう。デートで気取って見せようとすればするほどズッコケ不器用なアランは他の映画で見ることのできるいつものアレンそのまんまだ。進展などあろうはずの無いアランの恋に幻のボガード(J.レイシー)がアドバイスし、その結果行き着くは友人の妻リンダとの不倫であった。ディックから打ち明けられるリンダの不倫疑惑。悩むディックに罪の意識を感じながら、空港に到着し、リンダをディックと共に送り出そうと『カサブランカ』のラストシーンのように決めてみせるアラン。男になったと決別を告げる幻のボガードの似せようと務めるところがアレン風コメディに妙に合う。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★ Director エドワード・ノートン Cast エドワード・ノートン ベン・スティラー ジェナ・エルフマン イーライ・ウォラック アン・バンクロフト ミロシュ・フォアマン ホランド・テイラー 短評 ノートンが主演・監督・製作を行う映画。『真実の行方』でリチャード・ギアを、『ファイト・クラブ』でブラッド・ピットをくってしまう演技を見せる(とはいっても、ギアもピットも演技の上手いとされる俳優ではないが・・)彼だけに期待は大きかった。また脚本も大学時代からの友人スチュアート・ブルムバーグ(兼製作)であることから脚本にも多少なりともノートンの意向が入るはず。そういうわけで充分ノートンの考えが反映できる舞台が整っての彼の映画は楽しみであった。そして、感想はというと、グッドである。話は小学校の幼なじみだった3人が再び再会する話。ノートンは神父、スティラーはユダヤ教のラビ、後残りの女性であるアナ・バナナ(エルフマン)は大企業でキャリアを有する女性である。この人物設定がなかなか面白い。この3人の幼なじみ故の友情も心地よいし、とても良い関係である。『メリーに首ったけ』で知られるコメディアン・スティラーがラビっていう役柄が信じられないようだが、このラビはお堅くなく、ノートン扮する神父同様、他宗教をも認めることが出来る上、街中でも人気の楽しい説法をこなすのである。そんなスティラーはお似合いだった。また、スティラー以上にお似合いなのが、幼なじみからスティラーの彼女になるアナに扮するエルフマン。彼女は、ドラマ『ふたりは最高!ダーマ&グレッグ』のダーマ役で有名。このドラマ結構面白く、やんちゃでキュートな彼女なのだが、アナを演じる彼女はがらりと変わってキャリアを有するスマートな女性になっている。宗教感を人物描写に大きく用いているためか、感情が思想的で明確に表現されて面白かった。原題が“Keeping the Faith”なのだから、信仰ゆえのしがらみがドラマに仕立て上げているのは言うまでもない。最後に今でも残っているセリフを一つ、‘ここはニューヨークなんだ。誰が信号を守るというんだ。’これはスティラーがエルフマンに自らの思いをうち明けに行く途中、もたついているところでノートンが言う言葉。神父が語る言葉だけに重みがある。 2001年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ユレク・ボガエヴィッチ Cast ハーレイ・ジョエル・オスメント ウィレム・デフォー リアム・ヘス リチャード・バネル オラフ・ルバスゼンコ 短評 ナチス占領下ポーランドの話。ユダヤ人であることを偽り、カトリック教徒として両親の元を離れ田舎の村に預けられる少年ロメック(H.J.オスメント)。素性を隠して生きていかなければならない中、預けられた家族にも気を使う息苦しくなるような思いが伝わってくる。生活を共にする家族には兄ヴラデック(R.パネル)と弟トロ(L.ヘス)がいる。優しいトロとの交流をはじめ、村の子供達とふれあいの中でナチス政策の恐ろしさを描いている。ユダヤ人への虐殺を、神父(W.デフォー)に豚を追いかけさせたり、ロメックにユダヤ人に対し追いはぎをさせそれを見物するという非道さで描写する。これは一つ間違えれば強いる側のゲーム感覚が強調されてしまうこととなるが、私には迫害の惨さ恐ろしさを感じた映画となった。恐ろしい虐殺の光景が心優しいトロに奇妙な行動をとらせる。神父が自らの体に鞭打つ姿にとらわれたトロは苦行に救いを求めたのである。神を信じユダヤ人と行動を共にしようと決意するトロの清らかな目、その目の中には悲しみをも見せる好演であった。 1992年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ミック・ジャクソン Cast ケヴィン・コスナー ホイットニー・ヒューストン ビル・コッブス ゲイリー・ケンプ ミシェール・ラマー・リチャード マイク・スター トマス・アラナ 短評 M.ジャクソンは『ボルケーノ』の監督。アカデミー賞をも受賞しようかというビッグスター歌手・女優レイチェル(W.ヒューストン)を脅迫状の差出人から守ろうというボディガードのお話。ボディガード・フランクに扮するのがK.コスナー、彼が演じるヒーローはこちらがこっ恥ずかしくなるくらいかっこよく描かれるが、この映画も類に違わない。ボディガードが仕事だからと言って『用心棒』の映画が好きで60回も観た、これからも観るというフランクのせりふも照れてしまう。もちろん身を挺してレイチェルを守り身代わりに撃たれるというあの仕事振りも。この映画は一応サスペンスなんだろうが、レイチェルを狙うヒットマンは誰なんだという疑いも、作品中盤でレイチェルの輝かしい成功に嫉妬を抱く姉が黒幕であることが分かり、ヒットマンが誰だろうがかまわなくなった。以降の緊迫感はなくなった。後はもう、ケビンとヒューストン二人の世界である。主題歌♪I Will Always Love You♪は超メガヒットとなっただけに誰でも聴いた事のある歌となった。 1996年 フランス おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ジャック・ドワイヨン Cast ヴィクトワール・ティヴィソル マリー・トランティニャン グザヴィエ・ボーヴォワ クレール・ヌブー デルフィーヌ・シルツ マチアス・ビューロー・カトン 短評 ヴェネチア映画祭で女優賞をとったというV.ティヴィソル。女優っていってもあんな子供だ。演技は確かに上手かったが・・。ポネット(ティヴィソル)は母(M.トランティニャン)の死を認められず、現実を拒絶する。そんなポネットを取り囲む父(X.ボーヴォワ)や叔母、従姉弟などみんないい人だ。だから、そんな周りの人間と距離を設け、打ち解けていけないポネットにちょっと私は歯痒さを感じる。そんなポネットに奇跡が起き、お母さんが現れるのであるが、これは映画ならではのミラクルである。これで物語を完結するというのは安直過ぎるとは思うが、私は母親(幽霊)との再会場面を心理描写ととることにしている。ポネットを見守り、母親の死を乗り越えることを暖かく導こうとするお父ちゃんを始めみんなの気持ちがポネットの心の中で実を結んだのだと。愛する者の死により心にダメージを受けたとき、認めたくない死を現実として心得させるためには、神が必要とされる存在であることを感じた。 2001年 日本 おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director 中田秀夫 Cast 黒木瞳 小日向文世 小木茂光 徳井優 水川あさみ 菅野莉央 小口美澪 谷津勲 短評 ハリウッドでリメイクされた『リング』の中田秀夫監督が、再び鈴木光司原作の恐怖を映画化。離婚後、娘・郁子(菅野莉央)を連れ、マンションへ引っ越してきた淑美(黒木瞳)は天井にシミを見つける。シミは大きくなり、このマンション内で黄色いカッパを着た女の子を目撃するようになる。もはや天井から染み出てくる水量も尋常じゃないというのに、マンションの管理人はやる気無しのおじいちゃん(谷津勲)。頼りになんてならない。黄色いカッパに赤いカバンの女の子は2年前から行方不明になっている河合美津子ちゃんと判る。そして上階に美津子ちゃんが住んでいたと思われる表札を発見する。なんども赤いバックが発見される屋上、屋上には2年前から点検されていない給水タンクがあるのだ。次第に行方不明の女の子の事実が見えてくるが、それに伴って恐怖が増してくる。給水タンクに美津子が落ちた?と気付いた淑美がタンクのはしごを登っているときに、タンクを内側から叩いて変形させるところは最高に恐かった。また、美津子に襲われた郁子を助け、抱いてエレベーターで逃げようとする時、部屋から追いかけてきたのが、美津子でなく郁子であると判った瞬間が恐怖のクライマックス。傍にいる女の子になんて目をやれない。親権をめぐって争っているために簡単には引越しできない設定を上手く絡めていた。霊的恐怖は日本の独断場である。こんなの観るとエレベター付のマンション、アパートに一人で行けないよ。ドア一枚一枚が恐い。 1992年 アメリカ・イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ティム・ロピンズ Cast ティム・ロビンズ ジャンカルロ・エスポジート ブライアン・マーレイ レイ・ワイズ スーザン・サランドン ジェームズ・スペイダー 短評 フォーク歌手のボブ・ロバーツが上院議員に立候補するお話。アメリカお得意の選挙ものであるが、T.ロビンズの手腕が光る。ドキュメンタリーのような作り方をしているため、シリアスな雰囲気を持つのにコメディなのである。対立候補との関係や支援を受ける政治団体との関係もなんかコミカルである。ボブ・ロバーツ(ロビンズ)は選挙運動中に撃たれるが命をとりとめ、その後カリスマ存在である彼は熱狂的な支持者達に救世主の様な扱いを受ける。下半身不随?となったロバーツが当選し、その一方、暗殺者とされるラブリン(G.エスポジート)が過去に傷を負ってしまっていて引き金なんて引くこと出来ないってことから釈放されるのに、ロバーツ信者に殺された。その後アメリカはなんと湾岸戦争に突入する。ブラックユーモアたっぷりの映画。よくウディ・アレンがこんな映画を創るが、アレンより上手いんじゃないの。 2000年 日本 おすすめ度(10点満点) ★★★ Director 若松節朗 Cast 織田裕二 松嶋菜々子 佐藤浩市 石黒 賢 吹越 満 橋本さとし 工藤俊作 古尾谷雅人 平田 満 中村嘉葎雄 短評 真保裕一の小説を映画化。映画を観てから本を読んだが、面白かった。なのに映画はどうしていまいちなのか。脚本を同原作者が行っているが、映画用に書き換えなければという意図とは反して映画への効果が観られなかった。ベストセラーになった自らの小説にもう少しこだわっても良かったのでは?例えばテレビ中継車、連絡を取るのに小説通り無線だけでいいじゃないか。タダでさえ映画は小説より時間というものに制約される訳だし。一方、小説の筋書きも大切にしたいというのは分かるが、人物設定をもっと簡素化すべき、日本のアクション映画もやっとここまで来たかという映像技術だったんだから、アクションに重点を置くべき。犯人グループ“赤い月”の仲間割れ、裏切りなどの行動にはそれぞれの過去における人物設定を描かなくても観客はついていける。とにかくはしょれるストーリーははしょり、緊迫した場面にはもったいないくらい時間をかけるのがアクション映画なのだ。最期に奈々子ちゃん演じる役は最期まで織田裕二をダウン寸前の逆境からはい上がらせる力となる存在のはずだが、なんか薄っぺらい。逆に彼女いなくても良かったのではと思うくらいなのがちょっと残念である。 |