JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
し 1991年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director オリヴァー・ストーン Cast ケヴィン・コスナー ジム・ギャリソン シシー・スペイセク ジョー・ペシ ゲイリー・オールドマン トミー・リー・ジョーンズ ウォルター・マッソー ジャック・レモン エド・アズナー ドナルド・サザーランド ケヴィン・ベーコン ブライアン・ドイル=マーレイ サリー・カークランド ジェイ・O・サンダース マイケル・ルーカー デイル・ダイ ヴィンセント・ドノフリオ グレン・フォード ウェイン・ナイト ジョン・キャンディ 短評 アメリカ大統領ジョン・F・ケネディがテキサス州ダラスをパレード中エルム街で1963年11月22日暗殺された。「JFK/ケネディ暗殺犯を追え!」の著者ニューオリンズの地方検事ジム・ギャリンソン(K.コスナー)を主人公に、暗殺後2時間も経たないうちに逮捕されたリー・ハーヴィー・オズワルド(G.オールドマン)の単独犯行とするアール・ウォーレン(J.ギャリソン)暗殺事件調査報告書に異議を唱える作品である。ウォーレン報告書に疑問を持ち謎を追及したギャリソン本人がウォーレンを演じているのはちょっとした気の回しか。ギャリソンはオズワルドが護送中にジャック・ルビー(B.D.マーレー)に撃ち殺されたこと、ジャック(J.レモン)からの匿名電話により拘留したオズワルドの昔の教官フェリー(J.ペシ)がすぐ釈放となったことなどから、組織的な犯罪関与を感じるようになる。ギャリソンはルー(J.O.サンダース)やビル(M.ルーカー)達スタッフと共にケネディ暗殺の謎に迫る。FBIやCIAが絡む陰謀であり首謀者がクレー・ショー(T.L.ジョーンズ)であることを突き止めたギャリソンは彼を告訴する。証人が消されたりと身の危険を感じさせる妨害にあいながらも、裁判でケネディに対する三方からの射撃を論理的に説き、単独犯であるためには7箇所の傷跡を1発の銃弾で負わさないといけない“魔法の弾丸説”は考えられないとする。ショーは無罪となるが、裁判クライマックスシーンにおけるギャリソンの熱弁は凄い。コスナーの熱演に感心すると同時に、ギャリソンの追求にも全く動じないジョーンズの怪演も凄い。♪モーツァルトの「ホルン協奏曲第2番」が妖しく流れる仮装パーティはショーが主催する。パーティに負けない妖しさがショーにある。最後に、X(D.サザーランド)が語った政府の陰謀が暴かれることはあるのだろうか?O.ストーンのドキュメントフィルムを用いた映画編集はケネディ暗殺に見え隠れする背景を強烈に訴えかける。“国のために何が出来るか”というギャリソンの言葉にこの映画制作で応えようとしている。非文書公開の年は2039年。その時明らかになることは?フェリーが語ったように“謎の中にあるなぞなぞの中のミステリー”で終わってしまうのか? 2001年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ジェームズ・アイザック Cast ケイン・ホッダー レクサ・ドイグ リサ・ライダー チャック・キャンベル ジョナサン・ポッツ ピーター・メンサー メロディ・ジョンソン ダーウィン・ジョーダン デヴィッド・クローネンバーグ 短評 クリスタル湖から何度も甦るジェイソンをついに捕らえ、刑務所に。ジェイソン(K.ホッダー)を殺すことが出来ないため超低温室に冷凍隔離することになる。その時まで監禁されるその姿はまさに『羊たちの沈黙』のレクター博士そのもの。監禁から逃れて殺戮大暴れするものの結局冷凍に至ったジェイソンは女性科学者ローワン(L.ドイグ)と共に400年の眠りにつく。見捨てられ放置された地球を調査に来た未来人はジェイソン及び科学者を回収。ジェイソンは蘇生し、宇宙船内でまたまた殺戮を繰り返す。宇宙船を舞台とする彼はまさに『エイリアン』、プロの軍人(P.メンサー)も敵ではなかった。そんなジェイソンを一度は殺すに至らしめたのはアンドロイド(L.ライダー)。彼女はジェイソンの足と顔をぶっ飛ばす。しかし、未来の自動再生装置はまたまたジェイソンを蘇生。穴があいても、足がぶっ飛んでも元に戻る姿は『ターミネーター2』のT−1000である。再度画面に表れたジェイソンは銃による攻撃にもびくともしない『ロボコップ』のようだった。とにかく不死身、無敵のジェイソンも宇宙に放出したと思いきや流星になって大気圏突入。落ちた先はまたまた湖というわけ。『13日の金曜日』も今作10作目。ここまでやるともうアッパレというしかない。 1996年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director フランコ・ゼフィレッリ Cast シャルロット・ゲンズブール ウィリアム・ハート アンナ・パキン ニック・ナイト ジョーン・プロウライト ジェラルディン・チャップリン ビリー・ホワイトロー マリア・シュナイダー サミュエル・ウェスト 短評 シャーロット・ブロンテの名作の映画化。『レベッカ』と同じように秘密を持つ屋敷にまつわる話。家庭教師の先生として子供を教えながら、屋敷主の心を捕らえ、恋に落ちていくのは『サウンド・オブ・ミュージック』のようでもある。『ピアノ・レッスン』のA.パキン、C.ゲンズブールが演じたジェイン・エア。パキンが演じた幼年期は気強い。そのあと、ゲンズブールが演じることにより、パキンの演技が残した気強さが次第に消え、女性の持つしとやかさが感じられるようになる。ロチェスター卿(W.ハート)には実は妻がいて、ジェインとの間の支障となる。しかし、彼が妻を隠すのにも理由があり、彼も妻も辛い運命である。妻の自殺、妻を救おうとしてのハートの失明などがあったものの、最後はジェインと結ばれるというエンディング。そしてこの手の主人公によく、残されている財産も手に入れハッピーエンド。ロチェスター卿がジェインに対し恋をうち明ける時に言う言葉「離れているとき・・ハート(胸)から血を流す・・・」等は恥ずかしくなりそうなんだけど、文芸ものとして見てるので違和感ないんだよね。 1990年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ベルナルド・ベルトルッチ Cast デブラ・ウィンガー ジョン・マルコヴィッチ ジル・ベネット キャンベル・スコット ティモシー・スポール エリック・ヴュ=アン フィリップ・モリエ=ジュヌー トム・ノヴァンブル ニコレッタ・ブラスキ 短評 B.ベルトルッチ監督だけにエロスを感じる。舞台をサハラ砂漠としてエキゾチックに表現する。倦怠期を迎えたポート(J.マルコビッチ)とキット(D.ウィンガー)。愛を失いつつあった夫婦は旅行を通して二人の間を修復できるのはと思い、ニューヨークから北アフリカへ。確かに砂漠の風景や街並みはロマンチックに美しく撮られている。男と女はムードに酔いしれることもあるだろう。しかし、旅というもの、疲れる上、自由な行動が可能なだけに性格の合う合わないが浮き彫りになることがあるのも事実である。片やポートが、「街を散歩したい」と言ってもキットが「行かない」なんてのはよくあることである。ハエがめちゃめちゃ飛び交い、もう、顔に止まったハエも、すぐには掃おうとしなくなるような環境は二人にとっていい状態とはいえない。案の定、2人の関係は険悪になってゆく。このような旅行にキットに想いを寄せる友人タナー(C.スコット)を連れてきたのも何故なのかいまいち納得いかない。結局のところ、過酷な環境にポートが死んでしまった、ただそれだけの映画。 2002年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★★ Director ロブ・マーシャル Cast レニー・ゼルウィガー キャサリン・ゼタ=ジョーンズ リチャード・ギア クイーン・ラティファ ジョン・C・ライリー テイ・ディグス ルーシー・リュー クリスティーン・バランスキー コルム・フィオール ドミニク・ウェスト 短評 ミュージカルはどうしても突然踊りだす、歌いだすというのに違和感を感じると思われる。オペラと同様音楽で表現される芸術であることを理解しなくては。悲しい時も踊る。辛い時も歌う。悩める時も皆でダンスするのである。それでも映画では芝居に上手く溶け込むよう工夫がなされる。『サウンド・オブ・ミュージック』は音楽をテーマにしたストーリー。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はビョーク演じる主人公の現実逃避の世界をダンスや歌で表現した。『シカゴ』の場合はショービズの世界に憧れを抱くロキシー(R.ゼルウィガー)や他キャラクターの妄想シーンと取れる。ミュージカルと現実のシーンのつなぎが上手い。ゼルウィガーの甘えた声は、単純おバカで愛人を殺してしまった主人公ロキシーによく合う。一方、心配していたタップダンスも無難にこなした弁護士ビリー役のR.ギア。悪徳弁護士という役柄はギアの細くちっちゃいお目めにマッチする。彼のセクシーさはこの役のようないやらしさで引き立つのだ。ロキシーはビリーに操られるがまま彼の描くストーリーにのっとって行動する。ビリーが用意したセリフどおりにコメントするロキシーはいつしか腹話術人形になっているのである。脚本はほんとよく出来ていた。腹話術師と人形の演技も上手かった。特にメイクが上手い。不二家のキャラクター・ポコちゃんペコちゃんのような目が忘れられない。有名なミュージカルを映像化したこの作品、2002年アカデミー賞、作品賞、助演女優賞(C.ゼタ=ジョーンズ)、美術賞、衣裳デザイン賞、音響賞、編集賞、2002年ゴールデン・グローブ作品賞、主演女優賞(ゼルウィガー)、主演男優賞(ギア)を獲得した年度を代表する映画である。ヴェルマ(C.ゼタ=ジョーンズ)のダンスは凄かった。実生活で母親となりボディにも出てきた迫力はそのままダンスにも生かされていた。さすが助演女優賞である。ヴェルマと5人の女囚が刑務所内で歌い踊る♪セル・ブロック・タンゴ♪、繰り返される殺人のキーワード(ポップ、シックス・・アアッ、シセロ・)が最高にカッコイイ。またノミネートされながら受賞を逃したJ.C・ライリーの哀愁ある演技が素晴らしかった。エイモス(ライリー)が世間で注目されない、気付かれないとして歌う♪ミスター・セロファン♪は心に残る一曲。 2000年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director マーク・ハーマン Cast クリス・ベアッティ ロイ・ハッド グレッグ・マクレーン チャーリー・ハードウィック ティム・ヒーリー トレイシー・ウィットウェル ケヴィン・ワッテリー アラン・シアラー 短評 『ブラス!』『リトル・ヴォイス』のM.ハーマン監督の作品だけに期待してしまう。ところが、この映画が描く人物の家庭環境がめちゃ悪い。貧しいとはいえ、万引き、強盗では、夢がピュアに映ってこない。音楽を題材としなければ、ハーマン監督の良さが出ないのか?500ポンドもするシーズンチケットが汚れてしまうではないか。シーズンチケットなんて確かに夢だ。ちなみに自分に置き換えて巨人のチケットと考えると興奮してくる。日本円で10万弱といったところだろうが、野球が週一で必ず見れるような球場近くに住んでいたなら買う。絶対買う!そしてさぞかし美味しいんだろうと思うのが、ニューカッスル・ユナイテッドの試合観戦中スタジアムで飲むイグランド・ティー。心から好きで力の入るサッカーの試合を見ながらである。東京ドームでビールサーバーガールについでもらったビールの美味いこと!からも容易に想像がつく。エンディングは満足。結局、強盗で捕まり、シーズンチケットを獲得出来ないが、代わりの観戦シートを用意していた。それは、奉仕活動の結果から人間の温かみさえも感じるシートである。高層マンションのベランダであっても・・いいではないか。たたずんでいるだけのように見えた守護天使の像が、街の人々を見守ってくれているように感じ見終わることが出来た。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director スコット・サンダース Cast アレック・ボールドウィン レベッカ・デモーネイ マイケル・ジェイ・ホワイト アンドレ・ブラウアー デヴィッド・バード ブルース・グリーンウッド リチャード・エドソン ロバート・ミアノ 短評 死期が迫った飼い犬フラニーと暮すマッキン(A.ボールドウィン)はマフィアのボス、ライル(R.ミアノ)から信用される盗みのプロ。今回ライルから請け負ったフードチケットの盗みは成功だったが、現金化してくれるドラッグディーラーが曲者だった。組織のメンバー、ポインティー(M.J.ホワイト)が、マッキンに渡した報酬2万ドル欲しさに彼を警官2人に売る。マッキンは警官に殺され、2万ドルはポインティーの元に戻るはずだったが、警官は逆に殺されてしまう。ポインティーにはめられたとマッキンは復讐を開始する。ポインティー等が所有する倉庫を高級盗難車ごと全焼させたり、クラブの金を奪ったり。これで借りは返したはずだったのに愛犬フラニーが殺され、またまた収まりつかないマッキン。だが、警察に嗅ぎつけられるもとになるこれ以上の争いを良しとしないイタリアン・マフィアはライルを仲裁に寄こす。ポインティーは仲裁の場であっさり殺されてしまう。我々視聴者以上にあっけに取られた風のマッキン。愛犬に対する愛情等どこか優しいという描写が狙いだったのだろうが、A.ボールドウィン演じるマッキンに人の良さこそ見えるがマフィアに関わる凄みは無い。女刑事ペトロン(R.デモーネイ)はフォードチケット強盗と警官殺しを結び付きや過去の強盗をひっくるめてマッキンを捜査線上ターゲットとする切れ者風を装うが、ポインティー宅に押し入り凄むところまで。この後はなんの活躍を見せず、警官殺し事件はどこへ行ったのか?結局彼女は、マッキンが聴いたカセットからジャズのセンスを見抜くだけに終わった。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director M・ナイト・シャマラン Cast ブルース・ウィリス ハーレイ・ジョエル・オスメント トニー・コレット オリヴィア・ウィリアムズ トレヴァー・モーガン ドニー・ウォールバー グレン・フィッツジェラルド ミーシャ・バートン M・ナイト・シャマラン 短評 インシュピレーションや勘がいわゆる第六感といわれるが、この映画で言う六番目の感覚は霊を感じることが出来るというもの。それも死んだ時の姿で現れるのだから怖い。誰もが畳の上で安らかに死ねるわけではない。死ぬ時は一瞬で死にたいと思っているが、こういう映画を見ると、一瞬で死ぬことは出来てもきれいな姿でないといかんな等と考えてしまう。H.J.オスメント君扮するコール少年は死人が見える。それも死人はお互いが見えず、自分が見たいものしか見ていないという。この設定が衝撃のラストのためにとても大事なのである。第六感のために自分が抱える恐怖を母親(T.コレット)や周囲の人に理解してもらえず悩むコール少年を治療するのが精神科医マルコム(B.ウィリス)なのである。愛する妻(O.ウィリアムズ)とのすれ違いに苦悩するマルコム自体もコール少年の治療を通して癒されていく。霊が見えるという事実を受け入れ、悩める霊たちと付き合うことを選んだコール少年は母親にも事実を打ち明けることが出来、救われていく。そしてマルコムも自らが死んでいたということを最後に知らされる。いや、ある意味彼は自らの運命を受け入れるのである。衝撃のラスト、トリックのみが注目されがちなM.N.シャマランが脚本したこの映画であるが、苦悩をさだめとして受け入れなければ幸せは来ないということが、オスメントとウィリスの抑えた演技によりじわっと伝わってきた。しかし、シャマランは自分のことは分かっていないようである。A.ヒッチコックを敬愛し自ら映画に出演するのはいいが、大した演技力を持たない彼は通行人程度のエキストラレベルの出演に抑えるべきである。今回のドクター役は荷が重い。『アンブレーカブル』『サイン』と続く映画においても彼の演技力の上達は見られていない。最後に非常に残念だったことを一つ。私はラストに至るまでに謎が分かってしまった。T.コレットとB.ウィリスが、向き合っているようないないようなという微妙な角度で椅子に座っているところである。この状態でオスメント君が戻ってくるのであるが、この時の対応に違和感を感じ、この後しばらくして確信に変わった。二人の向き合う角度が不自然であったのだ。ここのところが何とかならなかったのだろうか? 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ロジャー・スポティスウッド Cast アーノルド・シュワルツェネッガー トニー・ゴールドウィン ロバート・デュヴァル マイケル・ラパポート マイケル・ルーカー サラ・ウィンター ウェンディ・クルーソン 短評 クローン人間の継体で永遠の命を・・というストーリーは『ルパンVS複製人間』とかなりダブる。この手の話の面白みはそれぞれのキャラクターが“自分がオリジナルか?複製か?”と問いかけ、不安を抱えながら悪に立ち向かわなければならない点にある。この映画の“シックス・デイ”とは神の人類創造にちなんだ6d法から来ている。この法律で禁じられている人間のコピーを行っているのが、悪玉親分、T.ゴールドウィン。悪役とはいえ、最後は悲惨な姿になる。R.デュヴァル、M.ルーカーの『デイズ・オブ・サンダー』組も頑張っていたものの、二人とも軽い。そして馬鹿っぽい。ルーカーに悪役の凄みは全くなかった。監督であるR.スポティスウッドは『トゥモロー・ネバー・ダイ』や『ターナー&フーチ/すてきな相棒』で見せた切れはない。『刑事ジョー/ママにお手あげ』もいまいちだったが、スタローンやシュワちゃんのようなアクション俳優の扱い方が下手である。クローンとして存在することの悲哀を表現しなければならない役どころにシュワちゃんはちょっと無理。クローン技術により双子のようになってしまったシュワちゃんは二役である。家族思いのお父ちゃんはレーザー銃をぶっ放すアクションヒーローとして活躍するという筋であるが、最後までアクションは中途半端、こちらもこれと言う見せ場が無かった。 1998年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director アイヴァン・ライトマン Cast ハリソン・フォード アン・ヘッシュ デヴィッド・シュワイマー ジャクリーン・オブラドース テムエラ・モリソン アリソン・ジャネイ ダニー・トレホ 短評 『ゴーストバスターズ』シリーズ、『ツインズ』『ジュニア』のI.ライトマン監督が描く無人島に不時着した男と女が織り成す漫才劇。恋人フランク(D.シュワイマー)とマカテア島で過ごすはずだったバカンスに仕事の邪魔が入ったロビン(A.ヘシュ)。タヒチへ慌て戻らなくてはならないロビンはまたまたクイン(H.フォード)の操縦するオンボロ飛行機に乗ることになる。嵐の中無人島への不時着まで繰り広げられるクインとロビンのお馬鹿なやりとりには呆れるほど。無人島に残されてしまったという緊迫感は全く無い。海賊に追われることになってもキャーキャー言って逃げ回る二人は楽しんでいるようでさえある。しかしこの二人を超えるお間抜けさんがこの映画には溢れている。もちろん海賊に凄みなんて無い。止めはロビンとクインをくっつけるために、クインの飛行機の副操縦士アンジェリカ(J.オブラドーズ)と関係したことを明かすフランク。自爆する海賊や間抜けに自白するフランク、お馬鹿を繰り広げるキャラこそがライトマン監督映画に必要なものであろうが、配するには真面目すぎる物語設定である。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ドミニク・セナ Cast ニコラス・ケイジ アンジェリーナ・ジョリー ジョバンニ・リビージ デルロイ・リンドー ウィル・パットン チー・マクブライド 短評 J.ブラッカイマー製作映画はアクションは凄く迫力ある活劇となる。見ているときは本当に楽しめ、ケイジも久々のアクションを見せてくれる。車泥棒をこれほど格好良く、スポーティに描くのは流石。車に女の名前をつけて呼ぶあたり車への執着心が非常にクールである。エレノアと呼ぶのはいいが、○○コとか○○エという日本でよくある名前では感じが出ない。横文字文化ならではだ。とにかくカーチェイスにカーマニアを魅了する数々の車。車を見て楽しむ映画である。ブラッカイマー映画はその中に盛り込むストーリーで感動させよう、共感を得ようとするが単純でこっ恥ずかしくなるのである。今回はメンフィス(N.ケイジ)とキップ(G.リビジ)の兄弟愛そしてアトレイ(W.パットン)等昔の仲間との友情。だが、何だかんだいっても所詮は車泥棒。カリートリー(C.エクルストン)にキップの命を脅されて足を洗ったはずの泥棒稼業に手を染めなくてはならないという正当性もどこか軽い。彼らを追うローランド刑事(D.リンドー)も捜査に執念を持っているのか、単に車おたくで、メンフィス達に共感してしまってるのか中途半端な男になってしまった。オット役のR.デュバルは『デイズ・オブ・サンダー』のメカニック役とめちゃかぶってる。一方、J.ジョリーは『17歳のカルテ』できっちりアカデミー賞助演女優賞をとっておいて、こういった娯楽映画にも登場。バランス良く映画出演を果たしているが、メンフィスの元彼女スウェイの役には中身が見られない。最後に、1日やそこらで50台もの高級車を盗まれるこの街の警戒態勢はいかがなものだろうか。いくらなんでも盗もうとする車の台数は多すぎた。 1998年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ブラッド・シルバーリング Cast ニコラス・ケイジ メグ・ライアン アンドレ・ブラウワー デニス・フランツ 短評 天使が永遠の命と引き替えに愛することを選ぶ。そんなの当たり前ジャン。ケイジ演じる天使の生活のどこがいいねん。ただ人間を見つめ、死んでいく人に付き添うこと。あと、相手してくれるのは子供だけ。そりゃ大人の女の子と話したいわ。というわけで、ライアンに恋し、自分の心に従って天使から人間になるケイジ。でも彼女は死んじゃうんだよね。だったら、天使のままでいた方が良かったのでは・・。天使だったケイジの心に触れる彼女。彼が気になるのは既に彼女が死に行く運命にだったからでは・・・・。そんなことも分からんようでは天使としては未熟者じゃ。それから、天使が黒い服を着て砂浜に集うシーンは最高。一方、ケイジの変質者のような見つめ方が気になる映画だった。やはり、オリジナル映画『ベルリン天使の詩』には勝てなかった。 1973年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ガイ・ハミルトン Cast ロジャー・ムーア ヤフェット・コットー ジェーン・シーモア クリフトン・ジェームズ ジェフリー・ホールダー デヴィッド・ヘディソン バーナード・リー ロイス・マクスウェル マデリン・スミス 短評 前作『007/ダイヤモンドは永遠に』で降板したS.コネリー後のボンド役三代目にR・ムーアを抜擢した第8作目。非情さが消えユーモアを持つボンドが誕生。麻薬市場を狙うDr.カナンガ(Y.コットー)の陰謀は007に出てくる悪党としてはスケールが小さい。ブードゥー呪術の踊りのシーンはエキゾチックさを引き出すには必要としたのであろうが、例えば、考古学者を主人公にした『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のようにはこの映画ではストーリーにマッチしない。またソリテア(J.シーモア)のタロット占いを当てにしているところが、製作陣の狙いとは裏腹にDr.カナンガを小物にして見せる。CIAエージェントを殺しジャズ葬で犯罪を包み隠すシーンは町に住む黒人全員がグルであるかのようで納得いかないところだ。また、ショーン・ボンドの真似にならないようにと、007の拘りであったウォッカマティーニをバーボンに変えてオーダーするムーア・ボンドにも納得出来ない。モーターボートのチェイスシーンは長く、スタント等苦労したのは分かるが、緊張感が得られない。このシーンに挿入された必要のなかったお間抜け保安官のやり取りのせいだ。南部なまりのC.ジェームズのボケ役は濃すぎるとよくない。G.ハミルトンはシリーズ中他に『007/ゴールドフィンガー』『007/ダイヤモンドは永遠に』『007/黄金銃を持つ男』を監督。 2003年 カナダ/スペイン おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director イザベル・コヘット Cast サラ・ポーリー スコット・スピードマン デボラ・ハリー マーク・ラファロ レオノール・ワトリング アマンダ・プラマー ジュリアン・リッチングス マリア・デ・メディロス アルフレッド・モリナ 短評 二人の子持ちアン(S.ポーリー)が突如宣告された二ヵ月後の死の告知。迫り来る死を誰にも知らせることなく前向きに生きる姿を描いている。トレーラーハウス生活で夫ドン(S.スピードマン)も失業中であるにも関わらずアン一家は暖かい。それだけに彼らがアンの死に対して悲しむ姿を見ないですんだのは良かった。しかしその一方でたった一人で死を見つめるアンの姿から伝わってくるものは重い。死期の迫ったガンであることを告知するトンプソン医師(J.リッチングス)とのやりとりでは死に向かい合わなければならない辛さが痛いほど伝わってくる。アンは死ぬまでにしたい10のことをリストにする。「娘達に愛してると言う」とか、「娘達に18歳になるまで誕生日メッセージを録音する」「娘達の好むママを見つける」等を実行する姿には泣けてくる。彼女が選んだ未来のママ、隣に越してきた女性(L.ワトリング)の名がアンであるのも嬉しい。だが、彼女のリストは優等生なことばかりではない。俗っぽいこともやっぱやっときたいのだ。「好きなだけ酒やタバコをやる」「髪型を変える」などはささやかな希望である。しかしこれがまたいじらしいのだ。さらには自分に正直に、成し得なかった興味を実行する。「夫以外の男とメイクラブする」「恋に落ちるよう誰かを誘惑する」がそうだ。たが、それを叶えるために現れた測量技師で世界を回るリー(M.ラファロ)との恋は真面過ぎて、夫ドンへの裏切りを感じてしまう。そこが納得いかない。 2003年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★ Director ゲイリー・ロス Cast トビー・マグワイア ジェフ・ブリッジス クリス・クーパー エリザベス・バンクス ウィリアム・H・メイシー ゲイリー・スティーヴンス キングストン・デュクール エディ・ジョーンズ エド・ローター マイケル・オニール マイケル・アンガラノ ロイス・D・アップルゲイト アニー・コーレイ ヴァレリー・マハフェイ 短評 『カラー・オブ・ハート』でT.マグワイアを起用したG.ロス監督が“シービスケット”という競走馬に賭ける男達のドラマを描く。靭帯切断のシービスケットと共に脚の複雑骨折という逆境から再度レースに復帰するジョッキー・レッドに再びT.マグワイアを起用。ジョッキーを演じるために体重を落とし研ぎ澄まされた勝負師魂を身に着けたマグワイアの役者根性は大したもの。『スパイダーマン』に臨んだ時の体型の違いに驚かされる。世の中に取り残されていたカウボーイ・トム(C.クーパー)と、自動車産業に目をつけ事業家として成功するも、息子を自動車事故で失い、妻にも去られるハワード(J.ブリッジス)、レッドがシービスケットに魅了され、勝利と共に希望を見出していく。逆境から這い上がり夢に向かうはまさに男のロマンである。挫折を乗り越え栄光を掴む男達の姿は美しい。彼らは単に金儲けありきの競馬をしているのではない。迫力あるレースシーンを疾走するサラブレッドの筋肉が男達の思いを乗せて躍動する。ハワードは、レッドが右目視力が失っており、勝利を逃した原因が騎手として致命的な問題を抱えていると判った際にも彼を外すことはなかった。宿敵ウォーアドミラルとの一騎打ちを控え、大怪我をしたレッドに変わってシービスケットに騎乗することになったアイスマン(G.スティーブンス)もハワード達の心うちを理解したスピリットの持った紳士だ。そんな彼らの男っぷりがカッコイイ。シービスケットの持つ潜在能力を見抜いたトムを演じたC.クーパーの声色には最初驚いたが、この声こそがシービスケットを調教するに必要だったのだ。暴れ馬シ−ビスケットを一流の競走馬に育て上げる様はホースウィスパラーのようだ。競馬をピュアな男達により構成したストーリーは、レッドがシービスケットの鞍上でとる前傾姿勢のように観る者を惹きつけ前のめりにさせる。大恐慌時の人々を勇気付けた実話は、今再び我々を癒し夢に浸らせてくれる。 1995年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director スティーヴ・オーデカーク Cast ジム・キャリー イアン・マクニース サイモン・キャロウ メイナード・エジアシー ボブ・ガントン ソフィー・オコネドー 短評 T.ロビンズ『ナッシング・トゥ・ルーズ』を監督したS.オーデカーク。『エース・ベンチュラ』の続編である。主人公エース・ベンチュラ(J.キャリー)は動物探偵、動物レスキューはターザンやドリトル先生に負けない動物とのコミュニケーション能力を持つ上、はちゃめちゃな性格ときている。そのためやることなすことおちゃらけ、したい放題の無敵ヒーローである。また、こういう人間がチベットの僧院にこもり、さも悟りを得たと思い込んだりしたら、無敵度はさらにアップ。もうジム・キャリーの独壇場。彼のパフォーマンスが取り立てて面白いわけではないが、エースのおちゃらけ性格に笑ってしまった。笑ってやり過ごすだけの映画ではあるが、虫を食うこうもりの糞がグアノといい良質の肥料となることを勉強できた。このグアノによる利権獲得のために起こった事件だったというのが、私にはある意味新鮮だった。J.キャリーはやりたい放題、他の俳優は特に高度な演技力を要求されるでなく、J.キャリーの取り巻きのよう。動物達もエースと語り合うような場面は無く難しい演技は不必要。演出陣は楽だっただろう。 1956年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ジョージ・スティーヴンス Cast エリザベス・テイラー ロック・ハドソン ジェームズ・ディーン マーセデス・マッケンブリッジ サル・ミネオ ロッド・テイラー キャロル・ベイカー バーバラ・バリー デニス・ホッパー 短評 『シェーン』のG.スティーヴンス監督が1956年アカデミー監督賞を受賞した作品。テキサスに広大な土地を持つビック・ベネディクト(R.ハドソン)は東部に馬の買い付けに来て、令嬢レズリー(E.テイラー)と惹かれ合う。二人は結婚してビックのもとにレズリーは嫁ぐ。西部の風習に慣れないながらも、巻かれること無く意見をはっきりいう強い女性である。そのためビックの姉ラズ(M.マッケンブリッジ)には厳しく接せられ、夫婦間においても喧嘩も耐えないが仲直りも早い。3人の子供に恵まれ、思い通りにならない子供の育て方に苛立ちながらも家族を作り上げていく。牧場経営が主であったテキサスは、ジェット(J.ディーン)が石油を掘り当てたことで産業が違う様相を呈していく。ベネディクト家に仕えていたジェットは性格上ビックと衝突することが多く嫌われるも、ラズに目をかけられる。落馬事故により突如亡くなった彼女の残した遺言により土地を手にする。ジェットは石油を夢見て掘り続けついに掘り当てる。真っ黒な油が吹き上がり、真っ黒に浴びて喜ぶジェットがそれを伝えにベネディクト家に悪態をつきに来るシーンが忘れられない。ジェットは大金持ちになり、色んな事業に手を出し、病院ごと寄付できる程になる。石油王となっても彼の彼の心に安らぎは見られない。『エデンの東』『理由なき反抗』でも見られるディーンの塞ぎがちな演技がここでも見られる。愛が得られない役なのだ。ビッグマネーを得ると言う役柄だからこそ愛の欠乏が余計に浮き立つ。ホテル事業進出に伴う落成記念当日にへべれけに泥酔し打ち明けたのが、叶わぬレズリーへの思いなのだ。愛が得られぬジェットは可哀相だが、ベネディクト一家の結びつきが強くなっていくのを感じられることが嬉しい。家族を守ろうとして立ち上がったビック。ビックは打ち負かされるもそれをカッコイイと語って聞かせるレズリーに心温まる。そんな彼らは石油産業から手を引き、牧場経営をやり直す決意をするのだった。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★ Director ボブ・ミシオロウスキー Cast キャスパー・ヴァン・ディーン アーニー・ハドソン コールデル・マックィーン ジェニファー・マクシェーン トニー・カプラリ 短評 『ディープ・ブルー』と基本的には同じ様なストーリー。というのも、こちらの映画も新薬開発(ガンが治る)のために鮫に人工ホルモンを投与し、その結果鮫がジョーズとなって人を襲うようになるといったところ。「シャーク・アタック」とアタックなんて言うわりにはパニック映画と言えず、海洋研究所で新薬を開発しようと違法投薬による人体実験を続ける研究者、あるいは、いかにも妖しく、最期に海底油田の利得を得ようと鮫を利用していたことが分かったホテル経営者にスポットを当てるサスペンスといった感じ。最初にこの鮫騒動に疑問を持ち、殺された研究者の妹と死ぬ前に呼び寄せた友人が一連の謎を解明していく。研究者は新薬投与による人体実験以外には殺人に関与しておらず、全てホテルオーナーの企みだった訳だが、彼が最期主人公を窮地から救った時に語るセリフ”それほど悪い男じゃないだろ”というのにはまいった。充分お前は悪いよ、お前の薬で今も子供が死んでいこうとしてるじゃんかと突っ込みたくなった。この映画、B級なので高評価を得るのは難しいだろうが、もっと工夫せねば。特に、鮫があまり怖くなかったのが非常に残念でした。 1997年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director クエンティン・タランティーノ Cast パム・グリアー サミュエル・L・ジャクソン ブリジッド・フォンダ ロバート・デニーロ マイケル・キートン 短評 ジャクソンとデニーロ、フォンダのいかれぶり。武器密売人ジャクソン宅で、ビデオを見ながら、鳴った電話を取れの取らないのとやり合う場面はほんまにいかれてる。さすが、この辺の表現はタランティーノといった具合。でも今回はいかれ野郎のバイオレンスだけではない。グリアー扮するジャッキー・ブラウンがハイなセンスを維持しつつ、マネー争奪ゲームを始める。このゲーム感覚が今までのタランティーノには無かったものだ。出し抜きマネー争奪に爽快感をも感じてしまう。『アウト・オブ・サイト』を見て本当に心底楽しむなら、この映画は見ておくべき。 1991年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director スパイク・リー Cast ウェズリー・スナイプス アナベラ・シオラ スパイク・リー オシー・デイヴィス ロネット・マッキー ジョン・タートゥーロ アンソニー・クイン サミュエル・L・ジャクソン ハル・ベリー 短評 『マルコムX』のS.リー監督。『コップランド』『ゆりかごを揺らす手』のA.シオラ始め、A.クイン、S.L.ジャクソン他、『ブルワース』のH.ベリーという大物が出演。W.スナイプスは『ワン・ナイト・スタンド』のようなノーアクションものに挑む。そして『ワン・ナイト・スタンド』同様情事に及ぶ。今回の浮気相手役は、有能な建築家を演じるスナイプスの秘書として人材派遣されたA.シオラである。シオラが演じるのはイタリア系アメリカンであり、A.クインが演じる父親、家族を含め周り近所の黒人に対する偏見や、スナイプスが居住するハーレム住人の白人に対する偏見を過激な言葉で表現する。大物俳優多くの出演で訴えたかったのはリー監督だからこそのこのテーマ。男と女という関係から人種の垣根を越えたかに見えた二人も最後別れてしまうのは、不倫という理解の得られるはずのない関係だけが原因でない。スナイプスの浮気がばれてから黒人女性が集まっての談議に集約されているように思う。ここでの話題に同じ黒人の中でも白人に対する偏見の大きさが違うし、人種意識に拘らない人間も集団社会の中では思想も流されざるを得ないということを感じた。社会に悪影響を受けないためには思想は信念でなければならないのである。と難しいことを絡めた映画ではあったが、不倫関係そのものには男女の思いに熱く燃え上がるものを感じないし、成り行きだけの軽い関係で終わってしまった。 1998年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director ジェイムズ・アイボリー Cast クリス・クリストファーソン バーバラ・ハーシー リーリー・ソビエスキー ジェーン・パーキン ドミニク・ブラン ジェシー・ブラッドフォード 短評 『地上より永遠に』や、あの難解な映画『シン・レッド・ライン』の原作者ジェイムズ・ジョーンズの娘ケイリー・ジョーンズの自伝的小説の映画化。原題は映画の中で度々聞くことの出来るセリフ“A Soldier's Daughter Never Cries”である。シャンヌ(ソビエスキー)を中心に家族の姿を描いた映画なのだが、養子として家族に加わるビリー(成長してからをブラッドフォードが演じる)を含め、家族の優しさ、絆がテーマである。パリにいながらアメリカを意識し、アメリカへ帰国することも家族には大きな問題となる。とにかくハーシー演じる母親とクリストファーソン演じる退役軍人でもある作家の父親の子供への理解は凄い。いい親である。『ディープ・インパクト』でイライジャウッドの恋人を演じたソビエスキーはこの映画ではかなり妖艶。幼少時代のルイーザ・コンロンもかなり魅力的だった。『ザ・ビーチ』のヴィルジニー・ルドワイヤンがビリーをお腹に抱えた状態の母親役として映画の最初と最後に登場するシーンは印象的。彼女の日記を綴る姿が手放すことになるビリーへの愛情を感じさせる。孤児であったビリーの立場で、救いとなるお母ちゃんの姿である。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ジェームズ・マンゴールド Cast ウィノナ・ライダー アンジェリーナ・ジョリー クレア・デュバル ブリタニー・マーフィ エリザベス・モス ジャレッド・レト 短評 ウィノナ・ライダーが製作に加わっている。それだけに力が入っているような気がする。原作はライダーが演じるスザンナ・ケイセン。彼女の自伝的著作品である。スザンナは自我形成期に親を含め世間に対応できず、混乱に陥る。その結果、本人曰く死ぬつもりはなかったというアスピリン大量服飲事件を起こす。この行動自体はまともではないが、世間と向かい合うことが出来ないというのも、小説家になりたいが為に大学進学を拒否したことを理解してもらえないというようなジレンマからである。このような考え違いや大人世代との言い争いというのは誰にもある。自殺未遂を除いては普通の青春期問題である。スザンナは境界性人格障害と病院で診断される。自傷行動や過剰セックス、不安感やイライラ感など情緒が不安定になるというような病気らしい。自傷行動は別にして、怒ったり不安になったりすることは誰にでもある。つまり現在はまともに社会適応できているとしても、病気の因子は持っている。正常といわれる人間は無意識の内に感情の起伏をコントロールしているのである。病は気からというが、精神が病んでいるとなったら事はやっかいである。気持ちで治すことが出来ない。そして病であるか否かの認識が出来ないのである。ジョリーやデュバルが演じていたのも自分の状態が理解できない女性であった。ジョリーはこの演技でアカデミー助演女優賞を得たが、確かに自然な演技だった。病の認識がなく勝手で、反社会的、攻撃的な行動をとりながらもどこか寂しさを感じさせた。『コップランド』を監督したマンゴールド。彼の演出かどうか分からないが、ウーピー・ゴールドバーグのような個性の強いキャラの俳優を映画の中で浮き立たせないことに成功していた。彼女の今回の役どころは決して目立ってはいけない看護婦であったわけだから。 1994年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director アイヴァン・ライトマン Cast アーノルド・シュワルツェネッガー ダニー・デヴィート エマ・トンプソン フランク・ランジェラ パメラ・リード 短評 I.ライトマンは『キンダガートン・コップ』『ツインズ』などを監督しているが、シュワちゃんをコメディに使いたがる。そのコメディセンスはなかなかソフトでなかなかセンスがいい。同じような試みをし、スタローンを『刑事ジョー/ママにお手あげ』に使っているが、こちらは失敗?製作のみで監督でなかったのが原因かな?『エボリューション』は彼が監督であるので『ゴースト・バスターズ』のような出来に期待する。本映画の話に戻るが、ラリー(D.デビート)とアレックス(シュワちゃん)の競演であるのでもう『ツインズ』そのもの。今回は男であるアレックスの体内で子供を育て、出産するというとんでもない発想だが、アクション俳優シュワちゃんの妊夫の懸命な演技が絶妙の面白さを引き出す。男性に妊娠体験させることで母性本能というものを表現してみせる。子供は自分の分身であるという考えが持ててこそいとおしいという感情が生まれるのだろう。ダイアナ(E.トンプソン)とことに及ぶアレックス、妊夫ではあっても女性はひきつけることは可能であるらしい。 1993年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director スティーヴン・スピルバーグ Cast リチャード・アッテンボロー サム・ニール ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム アリアナ・リチャーズ ジョセフ・マッゼロ マーティン・フェレロ ボブ・ペック ウェイン・ナイト サミュエル・L・ジャクソン B・D・ウォン ジェリー・モーレン ミゲル・サンドヴァル キャメロン・ソア 短評 続編の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』『ジュラシック・パーク3』と違い、遥かに出来はいい。マイケル・クライトンの同名小説が原作である。原作では恐竜を現代に甦らせるための遺伝子工学による取り組みを詳しく描いており、そこがリアリティをもたらし面白くさせていた。恐竜を呼び物にしたアミューズメントパークで起こるパニック、こんな題材をS.スピルバーグが放っておくはずがない。島にジュラシック・パークを建設した大富豪ハモンド(R.アッテンボロー)の起業家としての夢や野望。恐竜学者グラント博士(S.ニール)と古代植物学者サトラー博士(L.ダーン)の長年のロマンを目の前の現実に出来たことによる探究心。予測出来ない一つの出来事から思いも寄らぬ事態へ流れていくのだというカオス理論を説明してみせる数学学者マルコム教授(J.ゴールドプラム)。彼らはそれぞれ重要なキャラクターを持っている。しかし、博士らと共に招かれたハモンドの孫レックス(A.リチャーズ)とティム(J.マゼロ)。その内レックスの役割はティムに「コンピューターおたく」と言われるほどの能力で、最後にパークのセキュリティシステムを復旧させるのだ。専門家でも出来なかったことをヴェロキラプトルに襲われる中、簡単にやってのけるのは安直過ぎる。レックスに代表されるように人物描写の徹底がなされておらず、優れた原作が生かされていない。その一方で恐竜の映像は素晴らしく、次々に襲ってくる危機のたたみかけにより全く退屈させない。 2001年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ジョー・ジョンストン Cast サム・ニール ウィリアム・H・メイシー ティア・レオーニ アレッサンドロ・ニヴォラ トレヴァー・モーガン マイケル・ジェッター ブルース・A・ヤング 短評 『ロスト・ワールド/ジェラシック・パーク2』の失敗からすると、かなり良質。『ジュマンジ』で動物を扱ったジョンストン監督が、恐竜をスクリーン上に。昔々滅んでしまった恐竜は頭が悪く暴れん坊なので、『ジュマンジ』の様にはいかない?事はない。『ジュマンジ』の動物はほ乳類をはじめとするとはいえ、暴れん坊だったのだ。それに恐竜とはいえ、凶暴で大きいだけではない。ヴェロキラプトルは人間にトラップをかけるし、仲間同士で合図するのである。頭に毛まで生えているので、は虫類でもかなり進化してるんであろう。ストーリーは8週間も消息を絶った子供エリック(T.モーガン)を探しに両親ポール(W.H.メイシー)、アマンダ(T.レオーニ)がジュラシック・パークのあった島に行く。探しに行くなり、スピノサウルスの餌食になる大人が数人。なのにエリックは装甲車を住処に何週間も困難を乗り越え、生存。T−REXのオシッコを集めて、恐竜を寄せつけないなんてのには感心する。父親ポールがダメダメで終わらず、頑張って恐竜に対峙するなど基本的な話筋は王道といっていい。もっと要求をするなら、ヴェロキラプトルとグラント博士(S.ニール)の頭脳対決を見たかった気がする。 1969年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ピーター・ハント Cast ジョージ・レーゼンビー ダイアナ・リグ テリー・サヴァラス ガブリエル・フェルゼッティ バーナード・リー ロイス・マクスウェル 短評 007シリーズ6作目になる映画。2代目ボンドにはG.レーゼンビーが抜擢。S.コネリーやR.ムーアに比べると、ちょっと真面目に見えるが、ボンドが唯一結婚するというストーリーだけに、レーゼンビーで良かった。また、彼はこの1作のみの出演である。彼が出ないことにより、今後の作品においてボンドが抱える今作のイメージがダイレクトに残らずに済んでいるのも007シリーズ全体で考えるとレーゼンビーの起用は正解である。ボンド夫人にたとえ一瞬でもなり得たD.リグは抜擢された数多くのボンドガールの中にあって世界でただ一人である。そういう意味でD.リグは忘れ難いボンドガールと言える。一方、悪役としてプロフェルドがまたまた登場。整形しようとやはりつるっぱげのプロフェルドはハゲと低音の声を売り物にしているT.サヴァラスが演じる。007に欠かせないアクションはアルプスを舞台にスキーにボブスレーに氷上カーレース等充分楽しめる。しかし、007の秘密兵器(ボンドグッズ)で楽しむことは出来ない。一方、結婚にたどり着くストーリーであるため心情描写にはこだわっていた。私には真面目っぽく見えるレーゼンビーだが、そんな彼だからこそ、弁護士の事務所に忍び込み金庫破りをしている待ち時間に、新聞を読むのかと思いきや雑誌プレイボーイをさりげなく読むシーンは好きである。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ガス・ヴァン・サント Cast ショーン・コネリー ロブ・ブラウン F.マーリー・エイブラハム アンナ・パキン バスタ・ライムス マット・デイモン 短評 『誘う女』『グッド・ウィル・ハンティング旅立ち』『サイコ』のガス・ヴァン・サント監督作。本を読むのが好きで物書きとしての才能を持つ高校生。自らの進む道に疑問・不安を抱えている彼が、コネリー演じる堅物の、過去にはピューリッツァ賞をも得ながら隠遁生活を送っている小説家と出会い、黒人として世間が期待するバスケットボールの世界でなく、文学への道を歩み始める物語。並外れた才能を持つ彼のこの物語は、数学の才能を持つ青年をマット・デーモンが演じた『グッド・ウィル・ハンティング』と似ている。デーモンは才能を持つ一方、仲間とつるみ、喧嘩など不良行為に及ぶ。今回の映画でも、ブラウン演じる青年も、お母さんが言ってたが“本を読むのが好きなんだが、仲間外れになるのが嫌でバスケットをやっている”云々のセリフにあるとおり、インテリ道を行く人間の青春時代故の悩みも再び描いている。また、この映画では、エイブラハムが高校の先生を演じている。彼は過去にコネリー演じる小説家に負け、物書きへの道を断念し、教師の道を進んでいる。彼は、ブラウン演じる高校生の創作文の出来の素晴らしさに疑いを持ち、理事会で査問しようとする。これは言い換えると嫉妬の現れではないかと思う。もちろん、偏見というのもあるだろうが。この状況で思い浮かぶのが、『アマデウス』のサリエリ。宮廷音楽家であるサリエリは、モーツァルトの才能に嫉妬する。なまじっか音楽を理解出来る才を持つために悲劇は生まれる。今回の映画でも、文章の良し悪しが判る能力が備わっているために・・と思うのである。サリエリを演じていたのがエイブラハムで、アカデミー主演男優賞を獲得している。エイブラハム、またアンタか。こうゆう役はアンタの為にある。コネリー演じる小説家が“第1稿はハートで書け、推敲は頭を使え”というセリフがあるが、私にはまず初稿しかない。そして推敲できる頭がない。エイブラフム同様不幸である。最後に、ブラウンの彼女を演じたパキンは理知的でカワイかった。 2001年 香港 おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director チャウ・シンチー Cast チャウ・シンチー ウォン・ヤッフェイ ヴィッキー・チャオ ン・マンタ パトリック・ツェー 短評 大袈裟な描写を深く考えずに楽しもうという映画。サッカーボールはその衝撃波でグランドを掘り進み飛んでいく。ゴールポストとキーパーをぶっ飛ばす。そんなシュートを受け止めたキーパーのグローブとユニフォームの袖が衝撃でちぎれていく。蹴ったアルミ缶(スチール缶かもしれない)は石にめり込む。“黄金の右脚”と呼ばれたサッカー選手でありながら今では雑用係も首になったファン(N.マンタ)。少林拳の使い手シン(S.シンチー)に出会う。“鋼鉄の足”シンのキック力に魅了されたファンは自分から選手の栄光を奪い陥れたハン(P.ツェー)の持つデビルチームに挑むため、少林チームを結成、育成する。少林拳を学んだ“鋼鉄の頭”“魔の手”と呼ばれるようなメンバーでサッカーとは呼べないようなプレーで敵を圧倒する。決勝戦であたる敵デビルチームは筋肉増強剤等薬物投与で対抗。少林の修行に耐え抜いた猛者たちを潰していく。代わりの選手がいなくなった時、現れるのが饅頭作りの女の子でシンの恋人ムイ(V.チャオ)だ。坊主頭で現れたムイにはあっけに取られる。彼女結構可愛いが、この他でも変わったコスチュームプレイでいっぱい楽しませてくれる。最初からむちゃくちゃな設定におかしな点を指摘することは出来ない。自ら主演してCGとワイヤーアクションでやりたい放題のS.シンチー監督映画を何も深く考えず楽しむべき。 1999年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director トロイ・ダフィー Cast ウィレム・デフォー ショーン・パトリック・フラナリー ノーマン・リーダス デヴィッド・デラ・ロッコ ビリー・コノリー デヴィッド・フェリー 短評 W.デフォーの演じる自己陶酔デカが最高。クラシック音楽を聴いてはエレガントに推理を進める。女装しては自分に陶酔している。デフォーの意外な魅力を発見。ヴァイオレンス映画ならではのシーンも数多くある。シャンデリアぶら下がり回転乱射シーンもその一つであるが、ユーモアを含みながらも美しい。撃って撃って撃ちまくって悪人を一掃していく兄弟を演じるのがS.P.フラナリーとN.リーダス。神に啓示を受けた彼らの、動じる事のない堂々としたマフィアの一掃ぶりはかっこいい。突如、見られる彼らの父との再会。殺し屋である父が兄弟の進めようとする処刑人事業に参加するのも、面白い。が、突飛ではある。このあたりのことを深く考えさせることなしに勢いで見せきるところが逆に素晴らしい。 1994年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★★ Director フランク・ダラボン Cast ティム・ロビンズ モーガン・フリーマン ウィリアム・サンドラー ボブ・ガントン ジェームズ・ホイットモア 短評 スティーブン・キング原作小説の映画化。題名はにはリタ・ヘイワースの名があったと思うが、映画の題名は違う。リタ・ヘイワースは刑務所の囚人の間で人気の女優、そして彼女の映画が所内で上映される。所内で映画が見れるなんてのはいいじゃあないか。ただし、毎日同じものばかりだが・・。リタ・ヘイワースのポスターは無実の罪でショーシャンク刑務所に服役するインテリ囚人アンディ(T.ロビンズ)が自らの希望の穴を隠すのに使われる。映画の終部、このポスターを看守が剥がし、脱獄が発覚するところはヤッターっという気持ち、その後の爽快感につながっていくシーンである。アンディは鉱物採集が趣味として得たちっちゃなロックハンマーで脱獄の為の穴掘りを成し遂げる。何十年もかけてちょっとずつ、彫り上げたことに感心するが、所外への希望があるから出来た。まして彼は無実である。罪を悔いることもない。そんな彼は囚人仲間の囚役作業以外の生活に変化を与える。アンディが所内にスピーカーで流す彼の見つけたレコード♪モーツァルトの「フィガロの結婚」♪には憧れる自由への想いが込められた魂の響きが感じられるいいシーンだ。ガントン扮する所長が刑務所所員の資産運用のアドバイスをさせるために彼を図書係にしたことも所内に新しい思想をもたらす。しかし、所長は保身のためにアンディの無実を証明できる青年を殺してしまう。青年(M.ブロデリック)はアンディにより学問に目覚め、変わりつつあったので残念である。この所長は結局追いつめられて自殺するので、めでたしめでたしだが。最後、所内で友情を育んだエリス(M.フリーマン)も出所する。長年の刑務所生活で不安でしかない世間となった。しかし、エリスにはアンディとの友情があった。約束の場所へ向かう時、友情がいかに尊いか感動できる。バスの中のエリスと一緒に私もドキドキワクワクした。終わった後は爽やかで見て良かったと思える。監督はF.ダボランである。『グリーンマイル』を監督しており、これも刑務所もの。今後も素晴らしい刑務所ものに期待したい。 1975年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★ Director スティーヴン・スピルバーグ Cast ロイ・シャイダー ロバート・ショウ リチャード・ドレイファス ロレイン・ゲイリー カール・ゴットリーブマーレイ・ハミルトン ジェフリー・クレイマー スーザン・バックリーニ ジョナサン・フィレイ クリス・レベロ ジェイ・メロ テッド・グロスマン ピーター・ベンチリー 短評 一台の乗用車を執拗に襲うトラックの恐怖を『激突!』で描き、才覚を示したS.スピルバーグが、巨大な人食い鮫によるパニックを描く。ユニヴァーサル・スタジオのアトラクションとて欠かせないJAWS。JAWSとは顎のことであるが、シャークという言葉より恐い響きを有する。日本語で顎なんて言うとしょぼいけど。リゾート観光地の町は海水浴の出来る夏が稼ぎ時。一人や二人鮫の犠牲者が出ようと、観光地の利益には代えられない。市長(M.ハミルトン)は人命よりも利益を優先する。結局、海水浴場での犠牲者が増え、結局は街のイメージ失墜。賞金付鮫退治に至る。海水浴を楽しむ人が泳ぐ姿を海中下から捉えたショットは、人間が獲物として見える鮫の視線のようで恐い。海水浴場の休業を訴える警察署長ブロディ(R.シャイダー)は意見が通らないものの、自分の息子にだけは入り江の方だけで泳ぐよう指示し安全を図る。しかし、ジョーズは逆をついて入江を襲う。また、背びれで恐れさせておいて、いたずらだったとするのも上手い。鮫退治に名乗りを挙げた漁師クイント(R.ショウ)と共に警察署長ブロディ(R.シャイダー)と海洋学者フーパー(R.ドレイファス)も船に乗り込む。船の名はオルカ(鯱)号、三人それぞれの職業、キャラクターがバランスよくオルカ号の上で描けている。ジョーズが襲ってくるたびに流れるジョン・ウィリアムズの音楽が迫り来る恐怖を感じさせる。敵ジョーズは鯱号よりでかい。ジョーズに壊されボロボロになっていく。とことんまで追い詰められてからの逆転劇というのもいい。 2003年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ピーター・ハウイット Cast ローワン・アトキンソン ナタリー・インブルーリア ベン・ミラー ジョン・マルコヴィッチ ティム・ピゴットト=スミス 短評 英国秘密諜報局はここではMI−7。MI−7事務系のジョニー・イングリッシュ(R.アトキンソン)がスパイとしての任に着き巻き起こす騒動を描くコメディだ。スパイになることを夢見てきたおたくは、知識だけはあるものの実戦で生かすことが出来ないどころか考えられない失態を繰り返す。しかし、言い訳のように取り繕うことに関しては冴えを見せる。失敗にも省みることなく次々に繰り返す失敗を笑おうというもの。R.アトキンソンをキャスティングしたコメディだからしょうがないが、結末が予想できるギャグばかり。ブラックジョーク等といったセンスのあるものではない。だが、全く笑えないということもない。失敗が招く結末が前もって頭に浮かぶため、映画が見せる前に笑う。自分で先読みして笑ってしまうのだ。ある意味自分のセンスで笑うのであって、その箇所に来るともう笑えない。イギリスの王位を狙うパスカル(J.マルコヴィッチ)もジョニーの失態を冷ややかに見ている感あり。コメディーの悪役を務めたマルコビッチも面白いと思ってはいないだろう。また、スパイ物のヒロインとしてローナ(N.インブルーリア)にセクシーさ、妖艶さが足りない。インターポール特別捜査官に求められる凄さや知的さも感じられないのが残念。一方、パスカルの陰謀を暴くため、ジョニーとコンビを組みミッションを遂行する部下のボフ(B.ミラー)のツッコミをやっているのかボケているのか、その微妙な演技は良かったと思う。ミラー演じるボブが救いであった。『スライディング・ドア』のP.ハウイットもMr.ビーンのギャグ域を逸脱させることは出来なかった。 1998年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★ Director ジョン・アミエル Cast ビル・マーレイ ピーター・ギャラガー ジョアン・ウォーリー アルフレッド・モリーナ リチャード・ウィルソン 短評 ビデオ店に勤めるリッチー(B.マーレイ)は実業家である弟(P.ギャラガー)からの誕生祝に応え、英国へ。弟の誕生日プレゼントにより演劇体験に参加することになったリッチーは勘違いにより次々と騒動を巻き起こす。ドラマは公衆電話から始まるのであるが、英、露諜報員の陰謀の話と公衆電話を起点に話が入れ替わってしまう。芝居であることに疑いもなく対応していくリッチーに周りが振り回されるというストーリー展開。ブッチャーを職業とする殺し屋(A.モリーナ)もどこかお間抜けな勘違いがとてもいい感じ。芝居であると勘違いできれば人間強く振舞える。ましてや堅くなることなく、役になりきり楽しめるものであれば。『コピー・キャット』のJ.アミエル監督と『薔薇の名前』のハワード・フランクリン脚本が冴え渡り、勘違いから生まれる言葉、会話が非常に面白く笑いっぱなしだった。 1992年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★★ Director キャメロン・クロウ Cast キャンベル・スコット キラ・セジウィック ブリジット・フォンダ マット・ディロン シーラ・ケリー ジム・トゥルー ビル・プルマン ジェームズ・レグロス アリー・ウォーカー エリック・ストルツ トム・スケリット ポール・ジアマッティ 短評 リンダ(K・セジウィック巧演)は留学生に騙され失恋。そんな中出会ったスティーブ(C.スコット)とは良い仲でありながら結婚に踏み切れないカップル。彼らは互いにすれ違いながらも、幸せの4回ノックでよりを戻す。ジャネット(B・フォンダ)は成功を目指すロッカー・クリス(M・ディロン)に片思いだが、クリスの自分への接し方を物足りなく感じている。ジャネットの理想はくしゃみをした時に「恵みあれBless you」といってくれる男。今は「お大事に」といってくれるのも仕方ないとしている。なのにバンドメンバーと真面目に“雄バチの交尾”のビデオに見入るクリスは、ジャネットのくしゃみに「うつすなよ」という男。別れることを決意したジャネットだったが、クリスは失いかけて分かったジャネットへの想いを伝え、エレベーターの中でジャネットのくしゃみに対してクリスから聞こえてきた言葉は「恵みあれ」!。一方、20ドルで紹介所にビデオを作ってもらったデビー(S.ケリー)の愉快な恋人探し。『サイコ』のシャワーシーン風に始まるビデオのタイトルは“デビー・カントリー”、『スーパーガール』のように飛びながら自己紹介する姿がいかにもデビーらしくて可笑しい。ステーブとジャネット、クリスは同じアパートの隣人であるなどの設定からそれぞれのストーリーを上手く絡ませている。それぞれのキャラクターがナレーターのように語るシーンも人物描写に生かされていているし、違和感なく挿入されているのが上手い。『ザ・エージェント』『あの頃ペニー・レインと』のC.クロウ監督の脚本はテンポ良くキャラクターを描き出す。 1965年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ノーマン・ジュイソン Cast スティーヴ・マックィーン アン=マーグレット カール・マルデン エドワード・G・ロビンソン チューズデイ・ウェルド ジョーン・ブロンデル ジェフ・コーリイ 短評 『ザ・ハリケーン』『華麗なる賭け』のN・ジュイソン監督作はラストが負けで終わるポーカー賭博映画。ニューオリンズでその名を馳せるスタッド・ポーカーの名手シンシナティ・キッド(S.マックィーン)はザ・マンことポーカー界の君臨者ランシー(E.G.ロビンソン)が街にやってきたと聞いて勝負を挑む。手持ちカードのいくつかがオープンにされるルールであるが故に、キッドが瞬時にカードの数字、順番を覚えることが出来るというプロットが生かされキッドの強さを裏付けている。カードをこまめに取り替えると言うほど念入り注意を払う賭博場。勝負のシーンは息詰まる真剣さを持つ。キッドが勝つようにイカサマを強要されたディーラー、シューター(K.マルデン)が真剣勝負の場でイカサマをやらなければならなくなった緊迫感はゲームが始まると意外とあっさり片付けられてしまう。いいカードを配られたキッドがゲームを中断し、ディーラーを内々示談で降ろして決着。希望を少し言うと、ストレートフラッシュ(最後の最後でザ・マンが女ディーラーとイカサマを仕組んだか?と思えるぐらい良い手)で負けが決まった瞬間のキッド、ランシーの表情、周りの反応が素晴らしい。キッドの打ちひしがれ様の中に男を感じる。だが少し要望もある。負けて出てきたキッドには恋人と言葉少なく触れ合って欲しかった。 |