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マーラーの部屋

    GustavMahler(1860-1911)

 マーラーはオーストラリア、ボヘミア地方のカリシュトにおいて、ユダヤ人商人の家に生まれた。ピアノから始まり、音楽の専門教育を受ける。1875年にウィーン音楽院に進み、卒業後、プラハ、ライプツィヒ等の歌劇場の指揮者を歴任した。その後1888年にハンガリー王立歌劇場の音楽監督に、1891年にハンブルク歌劇場、1997年にウィーン宮廷歌劇場の総監督に就任した。1907年に同歌劇場から去ってからもメトロポリタン歌劇場、ニューヨーク・フィルの指揮者として活躍。


交響曲第1番ニ長調「巨人」

●第1楽章 ニ短調 ●第2楽章 アンダンテ・アレグレット「花の章」●第3楽章 イ長調 スケルツォ●第4楽章 ニ短調●第5楽章 ヘ短調  通常は花の章のない4楽章

1888年に作曲。ブタベスト王立歌劇場の指揮者として滞在していた当地にて完成。89年にマーラー自身の指揮により、2部構成による交響詩としていた。第1部「青春の日々から、花、果実、そしていばらなど」、第2部「人間喜劇」であった。人間喜劇とは、また何という標題と思ってしまうが、初演の結果はかんばしくなかったそうだ。現在「巨人」として人気のある曲だが、当初はそれほどでもなかったようだ。その後若干手を加えて4楽章からなる交響曲として発表。この時は「花の章」は省略された。交響曲としての「巨人」は4楽章である。「巨人」というタイトルはマーラーがつけたそうだが、ジャン・パウルの小説「巨人」に由来している。この曲が小説に影響され、背景となっている。

コンサート体験 

◆ネーメ・ヤルヴィ 指揮   スウェーデン国立エーテボリ交響楽団   2002.11.19  香川県県民ホール

ネーメ・ヤルヴィ

1937年エストニアに生まれ、レニングラード(現サンクトペテルブルグ)音楽院に学ぶ。1971年にローマのアカデミア・ディ・サンタ・チェチリア指揮コンクールで第1位となる。1982年にスウェーデン国立エーテボリ交響楽団の首席指揮者になる。1990年からデトロイト交響楽団の音楽監督、日本フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の名誉指揮者を務める。

スウェーデン国立エーテボリ交響楽団

1905年に結成された北欧で最も古い歴史を有する。シベリウスも客演指揮者としてオーケストラを指揮している。彼自身の殆どの作品をオーケストラと演奏している。1997年オーケストラは“スウェーデン国立”として任命された。

感想

2階席から見ると後ろの打楽器がよく見える。ティンパニ演奏者二人の掛け合いも見ることが出来る。3楽章のティンパニと弦が奏でる低音が続くところなどは耳でリズムを得るだけでなく、目で感じることになる。ラッパの向きよりあるラッパの音だけが聞こえ過ぎたり、聞こえなかったりというのがあるだろうが、それが無く平均的にラッパ(金管楽器)が聴ければ、2階席の方が楽しめる。他プログラム曲はマルティソン(スウェーデン)『A.S.への追憶』と、ソロ・中村紘子によるグリーグの『ピアノ協奏曲イ短調』であった。アンコール曲はステンハンマルの『メランシュピール』、チャイコフスキーの『バレエ「雪娘」ダンス・オブ・バウンズ』であった。

◆ヤコフ・クライツベルク 指揮   NHK交響楽団       2001.3.25  香川県県民ホール

ヤコフ・クライベルク   

ベルリン・コミッシュオーパーの音楽監督、ボーンマス交響楽団の常任指揮者・音楽顧問である。サンクト・ペテルブルク生まれ。76年にアメリカに亡命。それまではイリア・A・ムーサン(サンクト・ペテルブルク音楽院指揮教授)に習った。1986年にはニューヨークのレオpルト・ストコフスキー指揮コンクールで第1位となる。

NHK交響楽団

1926年「新交響楽団」として発足。日本交響楽団の名を経て、1951年にNHK全面支援のもと現在の名称となる。59年、ウィルヘルム・シュヒターが常任指揮者に就任。67年からはロヴロ・フォン・マタチッチ、ヨゼフ・カイルベルト、ウォルフガング・サヴァリッシュらが名誉指揮者として客演。96年、シャルル・デュトワが常任指揮者となる。98年からはN響初の音楽監督に就任する。

感想

前から2列目でステージに近かったため、後ろの打楽器演奏者の姿が全く見えなかった。そのかわり、指揮者や弦楽器奏者の顔はよく見え、弦から響いてくるばい音も良く聞こえた。そのため、巨人独特の激烈な音楽の合間に見られる優美なメロディが肌で感じられた。また、打楽器や特にラッパ類は頭上を音が飛んでいくんではないかと心配したが、割と大丈夫だった。第4楽章のティンパニの連打などは天井を突き抜けるかと言わんばかりの迫力で生で聞くことの良さを痛感した。帰りに、CDで第4楽章を聞いてみたが、生の感動が残っているときでは非常に味気ないものであった。

YG-AKIRAが部屋で聴いてるCD

◎小澤征爾 指揮   ボストン交響楽団           

Total time 60分26秒    レーベル ドイツ・グラモフォン    録音 1977.10  ボストン

ボストンだけあって、金管の良さを感じる。また、このCDは、花の章がついている。この楽章は緩徐楽章として必要であるようにも思える。第3楽章の後半部分が無ければ、花の章は削除されなかっただろう。トランペットの聞かせどころもあり、なかなかである。全体での長さを考えると5楽章構成はつらく、コンサート的にはつらいが、CDでは問題ない。

◎レナード・バーンスタイン 指揮   アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

Total time 56分12秒    レーベル ドイツ・グラモフォン    録音 1987.10  アムステルダム

全体のバランスがいい。


交響曲第5番

●第1楽章 嬰ハ短調 葬送行進曲●第2楽章 イ短調●第3楽章 ニ長調 スケルツォ●第4楽章 ヘ長調 アダージェット●第5楽章 ニ長調 ロンド−フィナーレ、アレグロ

マーラー中期の作品。1901−02年に作曲。マーラーの難解な交響曲の中で分かりやすく聴きやすい曲。音楽理論も分からず、ただ聴くのが好きだという私には、第8番と共に鑑賞頻度の多くなる曲。聴き難かったこれまでのものと違い、なんだかロマン性があると言われる。アルマと1902年に結婚しているが、これが原因?ベートーベンの「英雄」での第2楽章とは違い、いきなり第1楽章に葬送行進曲をもってきている。トランペットのファンファーレから始まり、音量が最大になるとこは最高。盛り上がりと寂しげな音楽の繰り返しがいい。第2楽章の打楽器、第4楽章のハーブ、第5楽章のホルンなど、ソロ的に聴かせる部分との調和が見事。

コンサート体験 

◆エリアフ・インバル 指揮   フランクフルト放送交響楽団      2000.11.6  岡山シンフォニーホール

エリアフ・インバル   

1936年エルサレム生まれ。エルサレム音楽院でバイオリンを学んだ後、シエナのキージ音楽院で指揮をチェリビダッケに師事。バーンスタインの推薦でパリの音楽院で学んだそうである。グイド・カンテルリ国際指揮者コンクールで優勝。1974年にフランクフルト放送交響楽団主席指揮者に就任。1989年まで音楽監督を務める。

フランクフルト放送交響楽団

1929年室内アンサンブルが、ハンス・ロスバウトを主席指揮者に迎え、60名前後のオーケストラとして創立。1947年からカール・ベーム、1955年からオットー・マツェラート、1961年からディーン・ディクソン、1974年からインバル、1990年からディミトリ・キタエンコ、1997年からはヒュー・ウルフが主席指揮者となる。本拠地はフランクフルトのアルテオーバー。マーラーとブルックナーの演奏楽団として有名。

感想

CDでは味わうことの出来ない各パートの独立した存在感に触れることが出来た。といって、決してバラバラというのではない。また、ラッパ(トランペット)の奏者もラッパ中のツバを出すことに大変そうだったが、ソロパートも上手く演奏していた。ただ、第2楽章の一カ所のみ音が上がり切れてなかったかな?とにかく、ホルン(たぶん日本人だと思う)と共に金は良かったと思う。とにかく彼らにとっては、十八番ともいえる演奏曲なだけに聴けて良かった。

YG-AKIRAが部屋で聴いてるCD

◎エリアフ・インバル 指揮   フランクフルト放送交響楽団           

Total time 72分22秒    レーベル DENON    録音 1986.1  フランクフルト アルテオーバー

本拠地での録音。実際に聴きに行ったコンダクター・オケの演奏なので、CDから得られる以外のものも感じてしまう。第4楽章のハープはとても美しく、コンサートを聴きに行ったときには特に考えなかった女性のハープ奏者の姿が頭に浮かぶ。

◎小林 研一郎 指揮   チェコフィルハーモニー管弦楽団           

Total time 71分18秒    レーベル CANYONCLASSICS    録音 1999.3  プラハ「芸術の家」ドヴォルザ−ク・ホールにて

日本フィルの指揮者として有名なコバケン。コバケンは大阪フィルで振ったときのマーラー交響曲第8番を演奏したコンサートを聴きに行った。この時の力強い演奏が思い出されるがごとく、クライマックスも非常にダイナミック。また、チェコフィルはゲルト・アルブレヒト指揮によるブラームス交響曲第1番を聴きに行ったことがある。弦楽器が印象的だったチェコフィルだけに弦楽器とハーブだけで演奏される第4楽章は穏やかなだけでなく美しさをも感じるような気がする。

◎ズービン・メータ 指揮   ニューヨーク・フィルハーモニック           

Total time 69分27秒    レーベル WARNERCLASSICS    録音 1989.9  ニューヨーク マンハッタン・センターにて

メータの十八番というものの、力強さやダイナミックさにやや欠けるのかなあ。第3楽章や映画「ベニスに死す」で有名な第4楽章はムードを感じる様な気がする。メータに対する思いこみが影響してるかもしれないが・・・。

◎クラウディオ・アバド 指揮   シカゴ交響楽団           

Total time 69分8秒    レーベル ドイツ・グラモフォン    録音 1980.2  シカゴ

個人的には一番好きである。第3楽章がややテンポ良く、力強さと上手い具合に出来上がっている。第4楽章は逆にゆったり奥行きがあるような気がする。全体的には洗練、研ぎ澄まされた様な感じ。


交響曲第8番「千人の交響曲」

●第1部 讃歌「来たれ、創造主なる聖霊よ」 ●第2部 ゲーテ「ファウスト」からの終幕の場

1906年に作曲。8週間後に全曲のスケッチを完成したらしい。翌年に管弦楽用に完成。1910年マーラー自身の指揮でミュンヘンにおいて初演。その時、合唱団858人、オーケストラ171人のマーラーを含め総勢1030人で演奏される。「千人の交響曲」の通称は興業主グートマンによる宣伝用キャッチコピーであった。マーラーはこの通称を嫌っていたらしい。第1部の讃歌「来たれ、創造主なる聖霊よ」 は後にマインツの大司教になったラバヌス・マウルスが作ったラテン語の讃歌をマーラーが自由奔放に作り替えたもの。第2部は「ファウスト」の第2部終幕のファウスト救済の7つの場の内、最後の「山、峡、森、岩、荒地」にあたり、ドイツ語で歌われる。アダージョ、スケルツォ、終曲に分かれ、8人のソリストに役割が与えられている。第1ソプラノ「罪深き女」、第2ソプラノ「罪を悔いる女」、第3ソプラノ「栄光の聖母」、第1アルト「サマリアの女」、第2アルト「エジプトのマリア」、テノール「マリアを讃える学者」、バリトン「法悦の神父」、バス「瞑想の神父」である。マーラーは「今までの私の交響曲は、全てこの曲に対する序曲に過ぎなかった。この交響曲は偉大な歓喜と栄光を讃えるものである。」と指揮者メンゲルベルグに言ったそうである。

コンサート体験 

◆小林 研一郎 指揮   大阪フィルハーモニー交響楽団      1999.7.25  フェスティバルホール

小林 研一郎   

1940年福島県いわき市生まれ。東京芸術大学作曲科と指揮科を卒業。指揮を渡邊暁雄、山田一雄に師事。1974年第1回ブダペスト国際指揮者コンクールで第1位・特別賞。ハンガリー国立フィルハーモニーのプレジデント・コンダクター、日本フィル常任指揮者、チェコフィル常任客演指揮者、ネーデルランド・フィル、東京交響楽団、九州交響楽団の主席客演指揮者であると共に東京音楽大学の客員教授として指揮法を教える。

大阪フィルハーモニー交響楽団

1947年「関西交響楽団」として発足。1960年に現在の名称となる。創立以来、朝比奈 隆が常任指揮者を勤める。秋山和慶が主席指揮者となる。フェスティバルホールで定期演奏会を開催している。

感想

第1ソプラノ・感英三子、第2ソプラノ・六車智香、第3ソプラノ・秋吉邦子、第1アルト・竹本節子、第2アルト・片桐仁美、テノール・伊達英二、バリトン・青戸知、バス・田中勉がソリストを勤めた。武蔵野合唱団や大阪フィルハーモニー合唱団、大阪すみよし少年少女合唱団などの合唱団と合唱指揮者・富澤裕、管弦楽団、指揮者を合わせても千人はいなかったと思うが、千人近くの演奏は迫力満点。第九と同じく人の声が究極の楽器であることをあらためて痛感した。まさに歓喜の時を体験した。マーラーが語った「やがて私の時代がくる」との言葉どおり、今がYG-AKIRAにとってのマーラーの時代を予感させるコンサートだった。

YG-AKIRAが部屋で聴いてるCD

◎エリアフ・インバル 指揮   フランクフルト放送交響楽団           

Total time 77分55秒    レーベル DENON    録音 1986.10  フランクフルト、アルテオーバー

マーラー第5番を聴きに行ったインバル・フランクフルトの演奏であるが、合唱団が加わりスケールが大きいだけに、インバルだからどうこうというといことまでよく分からない。なんとはなく、小澤・ボストンの方が気に入っている。

◎小澤 征爾 指揮   ボストン交響楽団           

Total time 79分10秒    レーベル PHILIPS    録音 1980.10、11  ボストン、シフォニーホール

ボストンの持つ管の力が示しにくい曲ではあるが、小澤征爾は第2部を実にまろやかに表現。オケやそれ以外の合唱団、ソリストが小澤に応えている。第1部、第2部それぞれ違った雰囲気にまとめている。