JABITTの WONDERLAND YG-AKIRAの映画評論 旧掲示板「アパートの鍵貸します」 |
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2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ウディ・アレン Woody Allen Cast ウディ・アレン トレイシー・ウルマン ヒュー・グラント エレイン・メイ トニー・ダロウ ジョン・ロヴィッツ マイケル・ラパポート エレイン・ストリッチ 短評 会話が面白い。それぞれが自己中心的な発言をしてるんだけど、会話の筋は通ってる。会話で楽しむ映画である。T.ウルマン演じる元ストリッパーながら庶民的な味の嫁さんがいい。クッキー作りに関してみんなを魅了する技を持ちながら名人を匂わせないおばさんである。W.アレンとの夫婦間には一風変わった温かみがある。ウルマンは泥棒稼業から足を洗えない旦那に愛想を尽かしながらも、穴掘り作戦についていくというかわいらしさも持つ。普通なら穴掘り金庫破りがメインストーリーになるもんだが、この映画はそんなものから早々と方向転換し、上流社会へ庶民が入り込む様を描く。高尚なものへの憧れ、そして俗に浸ることの落ち着き等を対比している。雅なものは見上げ夢見るものだと認識。泥棒癖が治らない庶民たちのオトボケちょんぼも嫌みが無く、アレン流コメディならでは。 1974年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ガイ・ハミルトン Cast ロジャー・ムーア クリストファー・リー モード・アダムス ブリット・エクランド リチャード・ルー クリフトン・ジェームズ マーク・ローレンス バーナード・リー ロイス・マクスウェル 短評 ドラキュラ俳優C.リーがスカラマンガという悪役殺し屋を演じる。C.リーの愛銃が黄金銃、007のワルサーPPKとの対決である。金ぴかの黄金銃は組み立て式のため、デザイン的にはかっこ悪い。銃そのものにセクシーさをも感じるワルサーとは大違い。また、スタントマンよカッコイイと思うことの出来る見せ場がある。1回転ひねりを加えて川を渡るシーンである。このシーンは、一旦戻って助走をとってからのアクション。そのため、これから挑もうとするウルトラCも容易に想像でき、スタントに対して準備万端で見ることが出来る。一方、B.エクランドはお間抜けボンドガールを演じてくれている。G.ホーンがよく演じるような役柄。彼女のトンマで、007お決まりのアジト爆破が達成できる。ビキニ姿でソーラーシステム装置にダメージを与えていく姿は憎めない。シリーズ第9作目を監督したG.ハミルトンは他、『007/ゴールドフィンガー』『007/ダイヤモンドは永遠に』『007/死ぬのは奴らだ』3作の監督もしている。 1984年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★ Director ウィラード・ハイク Cast ダドリー・ムーア エディ・マーフィ ケイト・キャプショー ジョージ・ズンザ ヘレン・シェイヴァー マーク・アーノット ピーター・マイケル・ゴーツ トム・ヌーナン デヴィッド・ラッシュ ポール・コミ マシュー・ローレンス エレン・クロフォード 短評 戦車に搭載するジャイロを開発する模様と、開発したミサイル誘導システム・ジャイロを搭載した戦車を開発から2年後のクウェート実戦で試運転する模様を同時進行で描くところは面白い。開発に携わるうだつのあがらないワイリー(D.ムーア)が偶然手にした設計図でヒーローとなるドタバタ。クウェートで実戦に臨むランドリー(E.マーフィ)のおちょけ。緊迫感のない単なるコメディで終わってしまった。同時進行で描くという発想がもっと生かされるべきだった。互いの状態を受けてもう一方のストーリーが展開するといったところを見せて欲しかった。ミサイル誘導が上手くいかず絶体絶命のランドリーの姿を受けて開発システムの抱える問題を次々と提示していくといった方法もあったと思う。ワイリーの妻ローラ(K.キャプショー)と、ワイリーが同僚ロパリノ(G.ズンザ)と憧れるクレア(H.シェイバー)とはもっとドタバタ絡んでくれて良かった。コメディなんだからこういうキャラは思いっきり利用すべきである。『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』のW.ハイク監督。 1983年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ジョン・グレン Cast ロジャー・ムーア モード・アダムス ルイ・ジュールダン クリスティナ・ウェイボーン カビール・ベディ スティーヴン・バーコフ デスモンド・リュウェリン ヴィジェイ・アムリタラ ロイス・マクスウェル 短評 シリーズ13作目。12作目の『007/ユア・アイズ・オンリー』から16作目『007/消されたライセンス』までを監督したJ.グレンによる。R.ムーアとのコンビとしては『美しき獲物たち』を含めた3作中2作目。のっけからミニジェットが登場する。今作の乗り物アクションの見せ所はこのミニジェットとトゥクトゥクみたいなので行う街中カーチェイス。翼を折りたたんだ姿でトラックから出てくる非常にコンパクトなジェットはおもちゃのようであるがスピードは速い。熱追尾ミサイルと追いかけっこが出来るのである。他、熱気球というちょっとゆったりめの乗り物も登場するが、これはご年配のD.リュウェリンことQと共に登場するため、無理もない。軍事施設をターゲットにした謀略だったんだが、そんなんぶっとんでしまってて、いつしかインドにずっぽり。宝石密輸の真の目的などどうでも良くしてしまうようなストーリー展開でした。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ジョン・エアーズ Cast ジェイ・ハリントン デヴィッド・ビークロフト キャロリン・ロウリー ラヴィル・イシアノフ リッコ・ロス 短評 大型タコがメインのモンスターパニック映画。タコが大型化に至った突然変異の原因が、昔キューバ危機の時に沈んだ原潜に詰まれていたた毒物マークのドラム缶というもの。海水調査で炭素菌、つまり生物兵器(毒)であると判明。しかし、原潜が沈んだわけだから変異原は放射能漏れと考えるべし。こんな毒物マークのドラム缶を際立たせる必要は無かったし、ドラム缶の中身に何の意味も無かった。凶悪な国際的テロリストを護送する羽目になった新米のCIAエージェントは、これまで大量の人命を奪ってきた犯人なのに、丸腰だからという理由で拳銃で撃つことが出来ず、何度も逃げられそうになる。情けない。最後になっても、ヘリで逃げようとする凶悪テロリストを撃てないこのエージェントはほんと成長のないダメダメ男だった。ダメ男によって成されなかった犯人との決着はタコモンスターによるタコ足刺しの刑という形で終わった。とっぱしの黄色いドラム缶が海底に放り出されるシーン、野球拳ポーカーのシーンあたりから、「これは!」と思ったこの映画。潜水艦クルーのパニック時の情けない言葉や、セクシーな姿になった女性学者(学者には見えない)に向けられる言葉もチープでとても米軍潜水艦を任されたクルー、艦長には見えない。B級っぽさがそこかしこに満載。 1937年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ヘンリー・コスター Cast ディアナ・ダービン アドルフ・マンジュー レオポルド・ストコフスキー アリス・ブラディ ユージン・パレット ミシャ・オウア ビリー・ギルバート アルマ・クルーガー ジェッド・プラウティー ハワード・ヒックマン フランク・ジェンクス クリスチャン・ラブ ジャック・マルホール 短評 キングレーベルCD《ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、L.ストコフスキー指揮♪チャイコフスキー「交響曲第5番」♪》に関しては自由奔放な演奏という感想を持つ。そのストコフスキーが本人役で出演している『聖衣』のH・コスター監督の映画は多くの曲を聴かせてくれる。オープニングでは♪チャイコフスキー「交響曲第5番」♪、失業中のトロンボーン奏者、父ジョン(A・マンジュー)を含め急遽組織した100人の失業演奏家による楽団を指揮してもらおうとストコフスキーの練習場にパッツィ(D.ダービン)が潜り込んだ時演奏しているのが♪ワーグナー「歌劇『ローエングリン』」♪。演奏に合わせて唄い出したパッツィの歌声は賞賛するもストコフスキーは楽団の指揮は承知しない。その時の曲が♪モーツァルト「ハレルヤ」♪。事務所にかかってきた電話にパッツィが出て受け答えしたことが、ストコフスキーの失業楽団指揮という誤った新聞記事騒動に発展する。記事内容にスポンサーとしての魅力を感じたフロスト氏(E.パレット)の援助を得た楽団がストコフスキーを説得しに自宅にまで押しかけ侵入し、階段やフロアを占領して懸命の演奏をするのが♪リスト「ハンガリー狂詩曲第2番」♪。心動かされたストコフスキーは指揮を始め、演奏はそのままカーネギー・ホールへ。自分の楽団だと満足なフロストを前に、パシィの素晴らしい歌声に合わせ失業者寄せ集め楽団は♪ベルディ「歌劇『椿姫』第1幕〈乾杯の歌〉トラビアタ」♪を演奏する。拾った財布を返しに行き、使い込んだ分をお礼に要求する正直であどけないパッツィをフロスト夫人(A.ブラディ)は気に入り、生活に苦しむ失業演奏者のスポンサーを約束する。先走って楽団結成するも夫人はヨーロッパ旅行へ行ってしまい、フロスト氏には援助を得られないドタバタ劇なのだ。タクシー運転手(F.ジェンクス)にも料金をスポンサーから受け取るよう無責任に言ってのけるパッツィの行動は練習場や家に押し入る等ちょっとばかし強引にも思える。だが、彼女の行動は父を始めとする演奏家達を結果的にスポンサー付の楽団結成へと導き、登場人物皆を幸せにする。単純なストーリーの中に失業状態にあっても明るい演奏家達やパッツィの笑顔に代表される元気な映画。 2001年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director スティーヴン・ソダーバーグ Cast ジョージ・クルーニー ブラッド・ピット ジュリア・ロバーツ マット・デイモン アンディ・ガルシア ドン・チードル エリオット・グールド カール・ライナー ケイシー・アフレック スコット・カーン バーニー・マック エディー・ジェイミソン シャオボー・クィン カール・ライナー レノックス・ルイス ウラジミール・クリシュコ 短評 粋。ソダーバーグの映画はカメラワークのせいだろうかセンスがいい。自らカメラを持ち、ファインダーを覗きながらフィルムにしていく。そのフィルムにはソダーバーグの感性がダイレクトに表現されている。『アウト・オブ・サイト』で見た“粋”には大人の色気もたっぷりあったが、この映画では色気は感じられない。なぜだろう?それはオーシャンの妻テス(J.ロバーツ)と『アウト・オブ・サイト』のヒロインを演じたJ.ロペスの違いなのである。J.ロバーツは『ペリカン文書』『陰謀のセオリー』のサスペンスもの2作品でいまいちという印象を持たせてくれた女優である。泥棒物っていうのはオシャレに描ける格好の題材。ラブ・コメでもラブロマンスでもなく、そういったものにすべきでないと思っている。J.ロバーツはラブロマンス向き女優である。G.クルーニーはスーツを着こなす泥棒としてセンスよくオーシャンを演じる。対するカジノオーナー・ベネディクトも『ゴッドファーザーPart3』で凄みを得、この手の役を演じるべき俳優として定着させたA.ガルシアだけに良かったと思う。テンポ良い娯楽映画である。音楽♪ドビュッシー「月の光」♪と光(ラスベガスのネオン)、水(噴水)の取り合わせも非常にエレガント。オリジナルの『オーシャンと11人の仲間』では5つのカジノそれぞれに金庫があったが、時代は変わり、金庫は主要カジノ3つ分をハイテク管理の地下金庫一つにまとめている。何重にも張り巡らされた警戒網を破るのがこの映画の醍醐味。そのスリルはオリジナルに勝る。 1960年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director ルイス・マイルストン Cast フランク・シナトラ ディーン・マーティン サミー・デイヴィス・ジュニア ピーター・ローフォード アンジー・ディッキンソン リチャード・コンテ セザール・ロメロ パトリス・ワイモア ジョーイ・ビショップ エイキム・タミロフ ヘンリー・シルヴァ バディ・レスター リチャード・ベネディクト ノーマン・フェル クレム・ハーベイ シャーリー・マクレーン イルカ・チェイス ジーン・ウィルス 短評 『オーシャンズ11』のオリジナルである。元空挺部隊員オーシャン(F.シナトラ)の仲間はかつての戦友10人とラスベガスでの大仕事の企画者エースボス(A.タミロフ)の11人である。彼らの企みは大晦日の午前0時、サハラ、リビエラ、デザート・イン、サンズ、フラミンゴの5つのカジノを襲撃しようというもの。裏切りが許されない仲間どうしの関係が命を懸けた戦場を共にした戦友であるのには説得力がある。ハーモン(D.マーティン)、ステファンズ(R.ベネディクト)、フォスター(P.ローフォード)、バーグドーフ(R.コンテ)、ハワード(S.デイヴィスJr)等により組織される。電気技術師バーグドーフが停電後切り替えた自家発電により金庫が開かれるように仕掛けする。音楽家志望のハーモンはピアノ弾きとしてカジノに潜り込む。しかし、それぞれの役割分担はあまり上手く描かれていない。ハワードはゴミ運搬車のドライバーになりすまし、ゴミと共に大金を非常線外に持ち出す役であるが、元プロ野球選手という設定が生かされていないのだ。プロ野球選手として顔がわれていることを利用する計画は出来なかったのだろうか?それぞれの個性が生かされていないため大物俳優を使っているのであろうが印象は薄い。オーシャンズ11と言うよりオーシャンズ5ないし6といった感じ。そのような中でフォスターには大事な役割があった。オーシャンズ11の勝利で終わらないところがこの映画の渋いところ。彼の母親の新しい夫サントス(C.ロメロ)がカジノ襲撃がオーシャンズ11であることに気付くきっかけとなるのである。サントスに気付かれたオーシャン達は苦し紛れに、大金をバーグドーフの棺に隠し、本拠に運ぼうと考える。しかし、棺は当地で火葬されることになり、大金は戦友と共に灰となる。金を奪還するためとはいえ、怪しまれる危険を顧みず葬儀に参列する11人。結果的に戦友を大金をもって見送った彼らに好感を覚える。一方、大金が棺に隠されていることを知ったサントスが実は火葬前に大金を棺から取り出しているのではと深読みするのも一興である。しかし、カジノの金庫からお金をる奪う時のスリルには欠けている。 2002年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★ Director ジェイ・ローチ Jay Roach Cast マイク・マイヤーズ ビヨンセ・ノウルズ マイケル・ヨーク セス・グリーン ロバート・ワグナー フレッド・サヴェージ ミンディ・スターリング ヴァーン・J・トロイヤー マイケル・ケイン 短評 『ミート・ザ・ペアレンツ』の監督J.ローチの『オースティン・パワーズ』『オースティン・パワーズ/デラックス』に続く第三弾。『007/ゴールドフィンガー』を題名からしてパロっている。醜い中年体型でM.マイヤーズは新たにASSネタ満載の外国人力士、ゴールドメンバーの2役を加え4役をこなす。相も変わらず下ネタで押しまくるが、今回はDr.イーブルの駄々っ子のようなセリフに遠慮が見られた。もっと息子スコットやナンバー2を相手にダダをこねて欲しかった。また、オースティンとDr.イーブルの過去が明かされるが、明かしすぎ。そういうところは謎めかしておくべき。学生時代も、例えば卒業式も優等生総代に選ばれるはずだったDr.イーブルが選ばれなかっただろうところまでに留めておき、その後はモザイクなどかけて想像に任せるなどの工夫が必要。総製作費160億円というこの映画。カメオ出演陣は凄い。T.クルーズ、B.スピアーズ、G.パルトロー、K.スペイシー、D.デヴィート、R.ロウ、J.トラボルタ、S.スピルバーグまで出演させるという、もうまさにハリウッド映画人の息抜きお楽しみ映画という感じである。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★ Director ジョアン・チェン Cast リチャード・ギア ウィノナ・ライダー エレイン・ストレッチ アンソニー・ラパグリア ヴェラ・ファミーガ ジル・ヘネシー 短評 J.チェンが監督だがアジア的なところが全くなく、普通のアメリカ映画となっていたのが少し残念だ。だからといって、ニューヨークを舞台にアメリカ以外の感覚を表現して意味があるかと言えば、やはりアメリカ的に描くことが一番だと思うが。つまり、チェンが監督をするのだから、舞台を違う町にすべきだったのでは・・・。神経芽腫という難病に冒され、若くして死んでいってしまうシャーロット(W.ライダー)はかわいそうなんだが、なんか、いまいち迫るものがない。原因は一つ。人気レストランのオーナー・ウィル(R.ギア)の軽薄な行動のせいだ。1年の命であることを知らされてなお、欲望のまま行動するのか。後、もう一つ言いたい点あり。難しい手術のため、引き受け手の無い中、腕利きの外科医として手術を引き受け、ヘリコプターで手術に向かう医者。彼の演技から手術の困難さ、生死に関わる重たいものが伝わってこなかった。なんかすごく、事務的でビジネス的なもので終わってしまった。病で死に行くことが陳腐なもんになってしまってる。ライダーの演技に一言。役柄が大学生という設定とはいえ少女っぽさが強く、私のこの映画に求める女性像とちょっと違う。一方、ギアの風貌は女たらしの役にぴったりであることを確信した。 1992年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director ウディ・アレン Cast ウディ・アレン ミア・ファロー ジュディ・デイヴィス ジュリエット・ルイス リーアム・ニーソン シドニー・ポラック リセット・アンソニー ブライス・ダナー 短評 W・アレンが語り部的に熟年期を迎える夫婦の関係を時にユーモアを交えながら真面目に描く。実生活でも女子大生との恋仲が発覚、ミア・フォローと別れたわけだから自分のスキャンダルを映画制作に利用したわけだ。ベラベラとめどなく流れるセリフはいつもとっつき悪いが、途中慣れてくると、やっぱこれがアレン節という感じ。内容はというと、ジャック(S.ポラック)、サリー(J.デイヴィス)夫婦に離婚を決意したことを打ち明けられ、信じられないと彼らを非難するゲイブ(アレン)、ジュディ(ファロー)夫婦。ジャックの夫婦は一旦は別れるものの、またよりを戻す。終わってみればゲイブ達夫婦が離別していたという映画。中高年期にさしかかり不安定になる夫婦関係を題材としている。剥げおじさんゲイブは文学を大学で講義する文学者、どこにでもいそうな普通のおじさんだけどインテリを演じる。このおじさん、なんと女子大生レイン(J.ルイス)の短編小説を「fabulous(素敵)」だなどとべた褒めし、ちょっとした関係になるが、中年オヤジのいやらしさが感じられるのがアレンならでは。これを味わえるとアレン映画が面白くなる。J.デイヴィスがL.ニーソンとデートし、♪マーラー交響曲第9番♪のコンサートを聴いた後、二人の批評がてんでバラバラなのが笑える。クラシックの感想は変にうんちくっぽくなるんだよね。 1991年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★ Director フランク・オズ Cast ビル・マーレイ リチャード・ドレイファス ジュリー・ハガティ チャーリー・コースモー キャスリン・アーブ トム・アルドリッジ スーザン・ウィリス 短評 恐怖症持ちの精神病患者ボブ(B.マーレイ)が著書でも評価を受ける精神科医レオ(R.ドレイファス)に付きまとうという映画。精神病を患うB.マーレイに付きまとわれるというだけでコメディのパターンが想像できる。おとぼけ勘違い野郎であることは言うまでも無い。レオの家族との休暇を自分が邪魔していることに全く気付かないボブ。だが、毛嫌いしているのはレオ一人。水を恐がる息子シギー(K.アーブ)に対し飛び込みを無理強いするレオ。TV取材にも神経質に準備を怠らない。一方、恐怖症のため、船にも車にもまともに乗れないボブではあるが、とぼけた性格は周囲の人には人気を得る。シギー飛込みが出来るようになることにも一役買う。形に拘り厳格なレオの方が精神病かと思えてくる。どうしてもボブを追い返したいレオの行動は狂気じみてくる。ボブの体に爆弾を仕掛け殺そうとしたが、爆破したのは自分の別荘。この瞬間レオはとうとうプッツンしてしまう。爆死させられようとしたことも診療だと考えるボブはどこまでもお人好しの勘違い野郎である。自分が治療を受けた経験を生かして精神科医になるボブが“必殺療法”というベストセラーを著するというのがオチの映画。監督は『スコア』『イン&アウト』のF.オズ。 1974年 イギリス/西ドイツ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★ Director ロナルド・ニーム Cast ジョン・ヴォイト マクシミリアン・シェル メアリー・タム マリア・シェル ノエル・ウィルマン シビル・ダニング 短評 逃げ生き延びる元ナチス親衛隊のロシュマン(M.シェル)の行方を追うルポライター、ミラー(J.ヴォイト)。戦犯として捕まらないように結束を硬く、色々な国、職業に力を張り巡らせ影響力も多岐に渡っていた秘密組織オデッサの実態を描く、『ポセイドン・アドベンチャー』のR.ニーム監督によるサスペンス。ミラーはオデッサの集会に潜り込み目を付けられ、電車に突き落とされて殺されかけた。そんなミラーが、その後の訓練で元ナチのコルブになりすまし、口ひげを付けただけでオデッサに潜り込めると考えることには納得いかない。ミラーが恋人のジギー(M.タム)にかけた駅からの電話から便宜を依頼してきたコルブとすぐ分かってしまうことにはなるが、言わばブラックリストであるミラー本人が、鼻の下のみの髭で変装がばれないわけがないではないか。しかし重苦しい精神的緊迫感は保っていた。イスラエルに飛ばすと言っていたナセルの細菌兵器ロケットを飛ばすことを計画するオデッサはともすれば007映画に出てくる悪の組織のようでもある。ただし、この計画については、終部でキーフェルと名を変えていたロシュマンの工場が焼けてロケットは飛ばなかったと描写するに留まった。オデッサの悪だくみがもし強調されていたなら、ボンド映画になってしまうところであった。ナチ収容所での生活を綴った日記を残して自殺したユダヤの老人を運ぶ救急車に遭遇したことがきっかけで友人の警部補から遺品となった日記を手にする。その日から彼はロシュマンを追跡する。危険を冒してまでオデッサを調査するミラーの真意が、ライターとしての本能や野望といったものでなく、復讐であったという結末に上手さを感じる。ロシアの反撃による退却時に大尉であったミラーの父親をロシュマンが射殺したことが日記に綴られいたのだ。ミラーの危険を顧みない手段にルポライターの域を脱していると違和感を感じたが最後には納得できた。 1999年 イギリス おすすめ度(10点満点) ★★ Director マーサ・ファインズ Cast レイフ・ファインズ リヴ・タイラー トビー・スティーヴンス レナ・ヘディ マーティン・ドノヴァン アラン・アームストロング ハリエット・ウォルター 短評 チャイコフスキーのオペラ“エフゲニー・オネーギン”の映画化。監督のM.ファインズはJ.ファインズの姉。兄R.ファインズの立場で考えてみると、兄妹の目の前でよく演技なんかやれると思う。映画をそんな観点から観て、俳優の身になって心配なんぞしていてはいかんのだが・・。映画を観ていてずっと悔しく思うんだが、オネーギン(ファインズ)っちゃ情けないやんけ。タチヤーナ(L.タイラー)の気持ちにも応える事ができない。オネーギンは平和に大人として返答したつもりだろうが、解ってはいないのである。すべてが終わってから気付きダダをこねるというもの。また、彼の生活姿勢も怠惰。財産をただただ食いつぶし、遺産が入ればそれでまたフラフラ。友人であるレンスキー(T.スティーヴンス)を死に至らしめるのも彼が直接的に悪いわけではないが、フラフラした場当たり的な姿勢のせいだとも思えてくる。最後にL.タイラーは綺麗であったことをあえて付け加えておこう。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ジョエル・コーエン Cast ジョージ・クルーニー ジョン・タートゥーロ ティム・ブレイク・ネルソン ジョン・グッドマン ホリー・ハンター クリス・トーマス・キング チャールズ・ダーニング デル・ペンテコスト マイケル・バダルコ 短評 だて男“ダッパーダン”というポマードをいつだって手にし、ヘアーの乱れをせっせとせっせと整え、ヘアーネットをかぶって寝る主人公エヴェレット(J.クルーニー)。理屈屋エヴェレットの伊達男ぶりが最高。といっても、ピート(J.タトゥーロ)やデルマー(T.B.ネルソン)のおとぼけにも合わしてしまう、いや、エヴェレット自身お惚けなんだろう。《ずぶ濡れボーイズ》としてカントリー♪アイ・アム・ア・オブ・コンスタント・サロウ♪を歌うときの彼の顔は真面目に楽しそうで最高じゃ。牛殺し(乱射)やKKK等どぎついネタ(ファレリー兄弟が用いるようなきついジョーク)もあるが、E.コーエン、J.コーエンはジョークとするより社会風刺に仕上げている。脱走囚3人が最後に見つけるであろうお宝の予言、そこで目にするお牛様。ダム建設による町の水没時に彼ら以外に多くの“ダッパーダン”と共に流されるいろんなもの。この絵的構図も最高。彼らが本来求めた宝は無かったが、州知事パピー(C.ダーニング)の恩赦により無罪に。エヴェレットは愛想をつかされ他の男と結婚しようとしていた元妻ペニー(H.ハンター)とよりを戻すことが出来る。隠し場所が水没し“ダッパーダン”と共に流されたとき、本当の洗礼式が完了するのである。憎めない3人の珍道中なのだ。 2002年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★★★ Director ジョン・リー・ハンコック Cast デニス・クエイド レイチェル・グリフィス ジェイ・ヘルナンデス ブライアン・コックス ベス・グラント アンガス・T・ジョーンズ リック・ゴンザレス 短評 150キロ以上の速球を引っさげ35歳にしてメジャーデビューを果たした化学の教師ジム・モリスの実話を元にしたもの。一度は野球に挫折した男ジム(D.クエイド)が、家族の理解を得ながら支えられ夢を実現する姿に感動してしまう。ジャイアンツを愛し、野球を最も愛するスポーツとしている私は野球映画の採点を甘くする。野球に男のロマンを感じるのである。特にベースボールは平均年俸2億以上というメジャーの存在によりその夢は大きく、AA、AAAなどのマイナーリーグの存在が夢への想いを強くする。『フィールド・オブ・ドリーム』が野球を通し父、息子を描いていたように、野球は言葉なくして男同士の気持ちを伝え合うことが出来る。この映画でもジムを挟んで父親と息子の間3世代の絆を野球を通して描いている。入団テストを受けに行ったら、150キロの球を投げられた。「それだけのことでメジャーに行けるのか」なんて言ってはいけない。彼は夜な夜な一人野球を愛しボールを投げ続けた。「その程度の努力なんて、やってる人は結構いるんじゃない」なんて言ってもいけない。ジム・モリスは子供のころから人一倍野球を愛し続け、投げるという行為にむしろ癒されていた。メジャーへの夢、野球への愛がその行為に自然と込められていたのだ。練習という言葉には鍛錬、疲労という文字が見え隠れする。私は、ジムの投球練習にはそれが無かったのではないか、むしろ癒されていたのではないかと思うのである。投げるごとに癒された彼の肩は150キロの球を投げ得るようになったと考えるのである。また、夢の実現に周囲の人の応援が不可欠であることを物語る。挫折を経験した時には、親父さんの無理解はもちろん、妻(R.グリフィス)の真の理解は無かったものと考える。しかし今度は違う。ジムの野球選手時代の写真を部屋中に飾る息子の姿と、「息子に途中で諦めたなんて言えないでしょ」と戸惑うジムをむしろ積極的に応援する妻の姿があるのだ。まして、彼が顧問する高校野球チームの部員達。普通に暮らす幸せもあるが、努力して夢を掴むことに気持ちを通わせ、奇跡的に地区優勝を果たした高校生部員がいるのである。町中の人々の夢を抱えてメジャーへの階段を上っているのだ。映画の始めと終わりの言い伝えの話はちょっと余計だったが、愛、愛、愛が満ち溢れた気持ちの良い映画で、たまには単純に感動するのもいいじゃないかと思う。R.グリフィスは映画を離れれば、全裸でデモ抗議に参加するような女優さんと聴いているが、そんな印象とは別に映画では、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』等で見せた演技のように地に足の着いた力強い役を見事に演じている。 2000年 アメリカ おすすめ度(10点満点) ★★★★★★ Director グレゴリー・ホブリット Cast デニス・クエイド ジム・カヴィーゼル ショーン・ドイル エリザベス・ミッチェル アンドレ・ブラウアー ノア・エメリッヒ 短評 『ジャスティス』『悪魔を憐れむ歌』『真実の行方』のG.ホブリット監督は30年という時を隔てて父フランク(D.クエイド)と息子ジョン(J.カヴィーゼル)が交信するというドラマを作り上げた。オーロラがニューヨーク上空に出現するという異常気象が無線のタイムトラベルを可能にしたという設定。アマチュア無線だけで男のロマンを感じる。そしてさらには親父と息子の間に共通するベースボールへの憧れ。ファイヤーファイターとして殉職するフランクを歴史に反して助けようとする警官ジョン。いかなる時代においても男たるを感じる職業である。殉職するはずだった父を助け歴史を変えた事を始めとして連続殺人事件の様相が変わっていくストーリー展開も面白かった。気になったシーンを一つ。カルテを見ないで薬剤を投与する医師に「そんなことしたら死んじゃいます」と日常会話のように言ってのけることを優秀な看護婦であるかのような安直な表現はやめて欲しい。 |