10月 … 神無月・神去月・時雨月・開冬(かいとう) |
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10月29日
卒業7年目にして大学祭に主力で関わるということ
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昨年、千葉大学祭でメイド喫茶を出してみました。資金集め、人集めから始めて試行錯誤の連続でしたが、結果的には多くのお客様にお越し頂き、一応の成功を収めることができました。その大学祭メイド喫茶を今年もやるべく準備を進め、まもなく本番です。
私はOBという立場で2年間、この企画に携わってきました。すると面白いことに、学生と社会人の立場の違い、考え方の違いを実感することができました。それは今まで自分が6年ないし7年間、学生的な人間からゆっくりと社会人的な人間になってきた中で、自分では気づきにくかったことでした。
即ち、このメイド喫茶企画は、参加者の一人である自分が社会人だったから可能だったわけで、全員が学生だったらうまく行かなかったのかもしれません。それだけ、私は6年半の会社員生活でいろいろなものを得たということでしょうか。仕事の進め方とか、お金の扱い方とか、人の使い方とか。少なくとも私はサラリーマンとしては成績が良くないので、会社を辞めることが決まった時も、自分から自主的に退職スケジュールを検討して自分の仕事の都合が一区切りしたタイミングで辞めた、というより、上長に促されるような形で(「君はこの会社で働くより別の進路を考えたほうがいいんじゃないか?」などのように)退職スケジュールが決まったわけですが、それでも気づかないうちにものすごく大きな収穫を得ていたことに、今になって認識させられたわけです。
来年、私は大学院を受験することになりますが、学生的な考え方と社会人的な考え方を今後も併せ持ちつつ、学部生時代より充実した、実りのある院生を目指したいものです。
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10月14日
10月14日日経記事「美術館格付」について
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14日の日経新聞朝刊の記事です。
「横浜美術館など最高ランク6館、日経が“実力調査”」(http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20061014AT3G1200E13102006.html)
日経が主な全国の公立(都道府県立・市区立)の美術館について、「(1)展覧会や収蔵品の充実度を表す学芸・企画力、(2)運営の安定度をはかる運営力、(3)学校や商業施設との連携をみる地域貢献力」を「総合的に実力を評価した」そうです。
ウチでは日経新聞を購読していないのですが、ネット上で調べた限り、AAA評価だったのは、
横浜美術館・愛知県美術館・東京都写真美術館・静岡県立美術館・神奈川県立近代美術館・東京都現代美術館
の6館。
で、私はこの調査の3つの項目について、各館に対し具体的にどのような具体的基準で調査したのかはわかりませんが、6館とも財力のありそうな館が並んでおります。まあそういうことになるでしょう。少々偏った見方かもしれませんが、私の思うに、(1)〜(3)の各項目について高評価となるのは、以下のような館なのではないでしょうかね。
(1)展覧会や収蔵品の充実度を表す学芸・企画力
収蔵品が多いこと、著名な芸術家の作品を所蔵すること、企画展等のイベントを頻繁に開催していること、企画展等で他館の所蔵品を頻繁に借用していること、カラー写真を多く掲載した図録を出版すること、等
(2)運営の安定度をはかる運営力
財力があること、利用者が多いこと、広報活動に積極的であること、等
(3)学校や商業施設との連携をみる地域貢献力
集客力のある大規模商業施設に近いこと、小中学校の校外学習のコースに入っていること、等
もしこのような基準で評価を行っていたとすると、格付の高い館に偏りができてしまうような気がします。即ち、財力があって、大都市に所在し、公共交通の便も良く、規模も大きい。そういう館が高い評価を受けるのは、まあ当然のことです。
自分としましては、これらの条件だけでは正しく美術館を評価できないのではないかと気になります。規模の小さい館は必然的に評価が低くなってしまいますし、評価の材料が「各館からの調査の回答」と「美術評論家」と「利用者」というのも気に掛かるところです。自治体関係者は?博物館学関係者は?学校教員は?もっといろいろな専門家からも意見を聴いた方がいいでしょう。
そもそも「美術館」がどの館を指しているのかが不明瞭です。「美術館」には明確な定義や法的根拠がないのです。単に美術品を収蔵展示しているのが美術館というわけでもありません。美術館というのは主に美術品を対象とする博物館のことなのです。ですから、館名が「博物館」や「記念館」である美術館も多く存在します。
では具体的にどのような美術館が「実力のある」館なのか、美術館の実力を調べるには上記3点以外にどのような点を調査する必要があるのか、私としては例えば以下のような要素が必要かと思います。
1.学芸員等による研究活動
研究活動を行っていない美術館はありません。その館が今までどのような研究活動を行い、成果物を発表してきたか、ということは、館の評価を左右するはずです。
2.ユニバーサルデザイン
どの公共施設にもバリアフリーを採用するのは当然ですが、特に美術館・博物館ではユニバーサルデザインの考え方が必要です。それは単に、高齢者や車椅子でも入館できる、ということではなく、健常者を含む全ての入館者に対して等しく利便性を向上させる手法です。
3.収蔵資料の保存や展示の方法
博物館・美術館は、一般的に展示してある資料は収蔵品のごく一部であり、収蔵庫には何倍もの収蔵物が眠っています。それらの収蔵物は、資料の種類によって保存方法が異なります。美術資料の場合、近代絵画は火や水に弱いため、防火には細心の注意を払いますが、落下しても破損が少なくて済み、一方で陶磁器等は多少の熱や水には耐えますが、落下すると破損してしまいます。紙資料は虫害や酸性物質による劣化を防ぐ必要もありますし、前近代の絵画資料では適宜補修も必要になります。
4.収蔵品データベースの作成と公開
収蔵品をデータベース化し、Web上で公開している館もあります。将来的には収蔵品のあらゆる情報をデジタル化し、自由に閲覧できるようにすることが望まれます。
どうやら今回の日経の調査というのは、利用者から見える部分、表の部分を中心とした調査であるように見受けられます。しかし、美術館の活動というのは、表だけではありません。寧ろ、裏の活動の方が重要と言ってもいいでしょう。しかも、ただひたすら館の活動にお金を注ぎ込むのがよいことではありません。公立美術館の財源は地方税です。血税を館活動に注ぎ込む以上、住人の理解が必要です。例えば「地域貢献力」が評価基準に入っていますが、それも単に学校や商業施設との連携ができていればいいというわけではなくて、例えば地元出身の作家の作品や地元に関連する資料を収蔵しているか、とか、それらの作家や作品を研究活動の対象としているか、などが問われるところです。この辺り、特に公立美術館の活動のセンスが問われるところでしょう。
企画展や特別展だって、ただ回数を重ねたり、入館者の興味を惹きそうな内容にしたり、著名な作品を借りてくればいいというわけではありません。企画展や特別展にはとにかくお金がかかるのです。やりたくたってできない館がたくさんあるんですよね。
まあ、アレですよ、美術館について調査するなら美術館の専門家の意見も聴きましょうよ、ということです。
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10月11日
美術館巡り 〜出光美術館〜
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今日は、午前中に東京藝術大学美術館、午後は出光美術館に行ってきました。いずれも有名な美術館ですが、今回初訪問でした。
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【一口メモ/「ギャラリー」と「美術館」の違い】
ギャラリー(画廊)というのは、美術作品(絵画・工芸・写真等)の展示を主目的とし、同時に美術品の販売を行う場合もあります。また、貸画廊として広く一般に美術作品の展示スペースを提供することもあります。が、いずれにせよ法的に定められているものではありません。一般的に美術館より展示面積は狭いことが多いです。一方、美術館は主に美術作品を扱う博物館を指します。博物館は単に収蔵品を展示するだけの施設ではなく、展示に加えて「収集保存」「調査研究」「教育普及」の3つの活動を行い、専門職としての学芸員を一人以上有する施設です。これには法的根拠がありますが、博物館にはいわゆる美術館や資料館、動植物園、プラネタリウム等を含んでおり、博物館のうちのどれが美術館なのか、ということについては法的に定められてはいません。一般的に「美術系博物館=美術館」という認識で構わないと思われ、例えば東京国立博物館は施設名に「博物館」が入っていても美術館的な施設であると言えます。
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さて、今回訪問した2つの美術館、どちらも予想を遥かに上回る大混雑でした。1日で2館巡る必要があるので、少し急ぎたかったのですが、入館者の列がゆっくり進むので、藝大美術館の方は1時間半くらいかかってしまいました。私としては、どちらかと言えば出光美術館の方が主目的でしたので、早く移動したかったのですが…。
午後の出光美術館もものすごい混雑だったのですが、貴重な美術資料を間近に見ることができました。現在行われている展覧会は「伴大納言絵巻展」で、同美術館の代表的な所蔵品である伴大納言絵巻(国宝)の公開です。平安時代後期に作成されたこの絵巻物は、上・中・下各巻がありますが、週替わりで実物と複製を入れ替えて展示します。12日は全巻実物展示に当たっていました。
伴大納言絵巻は高校の歴史教科書などにも登場する、重要な美術史料なのですが、最新の技術でこの作品を分析すると、今までわからなかったことが判明するらしいです。例えば人物描写には下描きの跡がなく、作者は人物の描写は得意だったようですが、建造物の描写には下描きの跡と見られる有機物の反応があり、建造物の描写は不得手だったのではないか、とか。また、紙の貼り合わせ方の不自然さから、第十三紙と第十四紙が実は後世に張り替えられたのではないか、とか。
私は、美術作品を鑑賞するセンスに欠けるのかもしれません。普通、絵が展示されていたら、例えば「この作品は明確な輪郭がなく色の微妙な変化を巧みに使っていて、いかにもモネの作品らしい」とか、「東山魁夷の風景画は心象風景のようなイメージを受ける」とか、そういった感想を持つ人が多いことでしょう。ですが私の場合、「この絵が展示されている展示ケースの温度湿度の管理はどうなっているのか」とか「この作品はどうやって輸送したのか」とか「ここの欠損部分は補修した跡が見えるが、どのような技法で補修したのか」などといったことを考えてしまう上、例えば絵巻物の詞書(ことばがき)の部分など、文字の部分があると、そこを読もうとしてしまうという日本史学生の性のようなものがあります。これも作品の鑑賞方法の一種と言えば一種なのですが、それは美術史料の鑑賞というより、歴史資料の鑑賞です。
まあそれはそれとして、ここ最近は美術系の館をいくつか訪問したので、次は産業技術系や自然史系でどこか適当なところを探しましょうかね。興味ある方、同行者募集中です。帰りにラーメンおごります。
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10月5日
米澤代表のこと
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今月1日、コミックマーケット前代表の米澤氏の突然の訃報を受け、あまりにショックだったのですが、私も10年近くコミケにお世話になった者として6日の通夜には一般参列させて頂くことにしました。
もともと少女漫画が好きな女の子がメインの小さなイベントに過ぎなかったコミケを、50万人規模の自主創作イベントに育て上げた彼の実績は偉大です。何せ、彼がいなかったら、自主創作物の発表の場は現在まで存在しなかったかもしれないのです。現在、コミケや、コミケの存在を前提とする同人創作活動から、新人作家、新人漫画家が多数生まれています。同人活動は商業活動ではないので、自分の好きなように、好きなだけ作品を作ることができます。そのため、商業ベースに乗らないような、マイナージャンルの研究書などもよく見かけますし、それらの研究成果が案外役に立ったりもするのです。
コミケ参加者が50万人いたとしても、同人誌の売上数は商業誌の売上数には遠く及びませんし、商業誌の存在を知っていても同人誌の存在を知らない人はたくさんいます。言わば同人誌というのは、ロングテール的なものなのかもしれません。需要の集中する、いわゆる「ヘッド」の部分は商業誌が担い、商業誌としては採算が合わない「テール」の部分について同人誌が担えばよいのです。特に現在ではインターネットを使えば小さな初期投資で個人売買ができるのですから、ますます「テール」としての同人活動の意義は大きくなると思います。
明日はどうやら終日雨のようですが、雨の中、多くのファンが麻布の善福寺に集まることでしょう。
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