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5月 … 皐月・雨月・啓明(けいめい)・田草月



5月30日   大阪のミナミのもう一つの顔
 概ね先進国の大都市には、2つの顔があります。一つは整然としたオフィス街、もう一つは雑然とした繁華街。オフィス街や官庁街は、ビジネスマンやら買物客やらで昼間に賑わいを見せます。繁華街は夕方から深夜にかけて、主にアフター5の時間帯に賑わいます。
 東京の山手線沿線には、東側にオフィス街、西側に繁華街があるのと同じように、大阪にも環状線の北側にオフィス街、南側に繁華街があります。そして、その南側の繁華街の片隅に、釜ヶ崎という、大きな問題を孕んだ街があります。

 GoogleやYahoo!等の検索サイトで、「釜ヶ崎」をキーワードに検索してみると、ヒットするページの多くは、「ホームレス」「日雇い」「雇用問題」等に関するものです。このような問題でかつて暴動事件まで起きてしまった釜ヶ崎は、現在ではかなり整備されてきたものの、まだ多くのホームレスや低所得労働者たちが、ギリギリの生活を送っています。
 JR大阪環状線・南海電鉄の新今宮駅を降りると、通りに沿って安い旅館やビジネスホテルが並んでいます。安いというのは、1泊3000円台とか、そういうレベルではなくて、素泊まりで1000円台とか、場合によっては1000円でお釣りが出るところもあります。こういう宿は今でこそ旅行系のWebサイトから予約できるなど、旅行やビジネス目的でも使用されるようになりましたが、もともとホームレスや低所得者が多く利用する木賃宿だったところです。当然、内装等もきれいなものではなく、最低限の宿泊施設といった感じですが、そういった設備面でのレベルの低さより、寧ろこの地域の夜間の治安の悪さから、慣れない人には敬遠される向きがあります。一方で慣れてしまった人には安価な宿としてよく利用されているようです。
 そして駅のすぐ前にある職安、ここには日雇いの仕事を求めて毎朝多くの労働者たちが来るそうです。日雇いの仕事は毎日あるわけではないのですが、市が行う清掃などに時々参加することで、少なくとも食事の分くらいは収入が得られます。かつては公園内のテントで無許可のカラオケ居酒屋を営み、多くの人に利用されていたこともありましたが、現在では強制撤去されています。

 この地域が現在のように多くのホームレスを抱えるようになってしまったのは、戦後の高度成長の頃からです。低所得街は世界中の大都市に見られますが、要するに現在の産業構造では彼らが単純労働の定職に就いて定収入を得ながら家庭を持って生活していくことが非常に難しい。社会から溢れてしまった、と言ってしまうと大変失礼かもしれませんが、国も地方自治体も、彼らの雇用対策に本腰を入れているとは言い難い状況です(現状、本腰を入れられないのです)。特に大阪市は、かつて無駄な箱物を作りまくったツケが回ってきて財政的にかなり厳しい状況です(もっとも箱物批判は今だからこそできるのですが、バブルの頃の価値基準では官民ともに無駄な投資を続けていたわけですし、それによって多くの人が収益を上げていたのも事実ですから、単純に批判して済むものでもないのですが)。また、ホームレスの人々自身の努力不足を非難する人もいるのですが、それは少し違います。何せ職に就きたいのに就けないのですから、寧ろ彼らの就労の権利を守るよう訴えかけていく必要があります。
 釜ヶ崎は極端な事例だとしても、雇用に関する問題は大阪に限ったことではなく、大都市では必ずといっていいほど起こっています。その解決は一朝一夕には成し得ませんが、単に雇用を確保するだけではダメで、結局時間が経てばまたホームレスの街に戻ってしまいます。労働・住居・治安・衛生など、関連する諸問題の全てを解決するまでは、無宿の彼らを救い出すことはできません。

5月29日   交通事故
 どうやら大学の知人が交通事故に巻き込まれたようです。命に別状ないものの、重傷を負って最近まで入院していたとか。全く知らされていなかったので、退院してから知ってびっくりでした。
 原因は運転していた人のスピード超過で、私の知人はその車に同乗していて事故に遭ったとのこと。やはりスピードの出し過ぎは怖いです。状況が悪ければ命を落としかねない所だったのでしょうが、よほどの衝撃を受けない限り、現在の日本の自動車は、通常の衝突事故であればシートベルト+エアバッグで運転席と助手席の人の生命は保護されます。シートベルトだけでも大きな効果があり、エアバッグは実は生命を守るには十分な力がなく、シートベルトの役割の補助に近い位置づけです(エアバッグの空気圧を強くすると、衝突そのものから体を守れますが、エアバッグ自体が運転者や助手席の人を圧迫する可能性があるので、日本車ではエアバッグの空気圧を弱めてあります。日本ではシートベルト着用は義務化されているので、シートベルト着用を前提とすれば、エアバッグは弱い方がいいのです)。まあそもそもスピードを出しすぎないことの方がよほど重要なのですが。
 先日の尼崎でのJRの脱線事故の主要因は、制限速度の超過だったようです。時速100キロ前後で脱線してしまうような区間の制限速度を70キロにしておくのは不適切だと私は思うのですが(40〜50キロ程度が適切だと思います)、いずれにせよスピードの出しすぎは非常に危険です。鉄道でもあれだけの大事故になるのですから、自動車のスピード超過はもっと恐ろしいことになります。自動車事故全体では、毎年9000人が犠牲になっています。
 最も手っ取り早い解決策は、運転者がスピードを出そうとしても、制限速度以上は出せないようにすること。即ちトラックには義務づけられているスピードリミッターを、乗用車にも取り付けることです。例えば高速道路を走っていると、100キロ制限であるにもかかわらず、130キロくらいの猛スピードで飛ばしている車をよく見かけます。自分は100キロくらいまでしか出さないようにしているので、そういう猛スピードの車は怖いですね。警察も見て見ぬふりですから、実質的に黙認状態です。高速道路の事故原因の大部分は速度超過に関わるものですから、スピードリミッターでかなり改善されるはずなんですけどね…。
 当然、多くの人は自分からリミッターを取り付けようなどとは思わないでしょうから、法令で義務化する必要があるでしょう。補助金も必要になるかもしれません。しかし今、日本の自動車社会は限界に達してきています。様々な制限を設けないと、絶対に事故の数も死傷者の数も減りません。近年の自動車は技術面の進歩が著しく、万一の事故に備えての安全対策は非常にしっかりしています。しかし、事故が起こった場合の安全性を問うより前に、事故そのものを減らすのが先決です。
 ただ、本当は、いちばん良いのは運転者が制限速度を守ることを常日頃心掛けることですね。

5月21日   「センター試験」は「測驗中心」
 先日、秋葉原の「三月兎」という小さな店で、「もえたん」の繁体中国語版を買いました。中国語版は台湾限定で、日本国内では一般には発売されていません。韓国語版も国内では発売されていないのですが、こちらは昨年末の三才ブックスのイベントで購入できました。中国語版は何度か実物を見たことがあるのですが、なかなか購入できる機会がなく、何とかして入手したいものだと機会を狙っていたのでありました。神田の書店街には中国書籍を扱う店がいくつかあり、そこに入荷されていないかと覗いてみたこともあったのですが、やはり見つかりませんでした。
 もともと三月兎では、中国の雑誌や書籍を発売していたので、もし入荷する店があるとしたらここだろう、とある程度予測はできていました。ですからかなり頻繁に覗いていたのですが、その隙をついて少部数入荷し、即日完売してしまい、そのことを知ったときには悔しい思いをしましたので、次回入荷予定について直接店員氏に訊いてみましたら、「入荷日は未定だが、次回はある程度まとまった部数を入れる予定」とのこと。今度こそ逃さないようにしようと、ほぼ毎日会社帰りにこの店に立ち寄っていたのですが、先日遂に店頭に中国語版もえたんが並んでいるのを発見、即、購入したのでした。
 中国語版もえたんは3ヶ国語併記で、英語の例文、中国語訳のほか、日本語の訳文も掲載されています。もっとも漢字の大部分が中国語風のフォントになってしまっているので、かなり怪しく見えるのですが、例文そのものは日本語版と全く同じものです。例えば有名な最初の例文、
「アレゲな人々が、英単語帳をつくっているらしい。(They say the lunatic people the English word book.)」
は、
「據説是一群頭殻壊去的人在製作這本英文単字手冊。」
となっています。

 勿論、帯もついていて、「最萌的英文單字集終於登陸台灣!!」とあります。日本語版の「注)本書は大学受験用の参考書です」は、「註)本書是“日本”大學入學考試的參考書!!」とあり、日本の参考書であることをやや強調しているようです。
 例文レビューは次の機会に回します。

5月14日   数カ月ぶりの土曜ゼミ
 今日はゼミの日でした。
 大学卒業後も毎月1回程度、土曜に近世文書の演習があり、特に用事が入っていなければ参加していたのですが、ここ数ヶ月間、都合により開催されていなかったのです。それが久々に開催されたので、顔を出すことにしました。
 演習後、魚沼の地酒を飲みながら先生やゼミ生と暫くお話していたのですが、自分が卒業してから5年が経過し、その間に大学の様子が随分と変わってしまったものだと実感しました。ちょうど卒業の直後に文学部の新しい院棟が完成し、ゼミもそちらの建物を使うようになったようで、かなり悔しく思われたものですが、一方で旧院棟は学生が好き放題使っているようで…新院棟は研究室内での私語禁止らしいですし、生活感というかアットホームな感じではないですね。旧院棟では時々院生が寝泊まりしていましたから。私は院進しなかったのですが(そのことを永らく後悔している)、もともと旧院棟は学部生もよく使っていて、私もよく給湯室に水を汲みに行ったりしていたものですが、最近では給湯室もあまり使われなくなったようで、かなり荒れていて炊事できる状態ではなくなっています。
 文学部史学科の入試科目も再来年から変更されるとのこと。私が受験した年までは、歴史は日本史と世界史の一方を選ぶことになっていましたが、翌年から日本史・世界史双方必須になっていたのです。それが、再来年からまた選択制になるとのこと。
 1時間ほど先生・ゼミ生と思い出話などしていたのですが、久々に学生時代のことが思い出されるひとときでした。

5月4日   時代の流れに消えゆくもの(その3)
 消えゆくものシリーズはひとまず今回で終了とします。他にもいろいろと絶滅危惧種がありますので、気がついたら都度紹介していこうかと。

その2…6桁市外局番 (消滅危険度★★★★)
 固定電話の番号は、通常10桁となっていて、基本的には<市外局番−市内局番−加入者番号>の3部分により構成されます(加入者番号はNTTのパンフレット等では「お客様番号」とも呼ばれています)。加入者番号は現在では4桁と決められていて、市外局番と市内局番の合計が6桁となります。そのため、東京や大阪、千葉県や埼玉県の一部など、市内局番が2桁の地域は必然的に市内局番が4桁となります。一昔前までは市外局番が2桁なのは東京(03)と大阪(06)だけでしたが、千葉県や埼玉県に2桁の地域ができてきて、どこまでが市内通話でどこからが市外通話なのか少々混乱してしまいます(市外局番が2桁・3桁の場合、市外局番が同じでも市外通話になってしまうことがあります)。
 市外局番の桁が減り、市内局番の桁が増えるのは全国的な流れで、全国各地に見られた<市外局番5桁−市内局番1桁>の地域も徐々に減りつつあります。その背景には、新規通信事業者の参入やIP電話の普及等で、電話番号が不足することが懸念され、電気通信番号規則により番号を確保することになったことがあります。
 そんな中、なんと<市外局番6桁−市内局番なし>という地域が、ほんの僅かですが残されています。市内通話なら加入者番号4桁のダイヤルで通じてしまうわけです。平成10年頃まで全国で10箇所ほどありましたが、急速に減って現在では北海道の一部になってしまいました(広島県・岐阜県・三重県の一部に残っていたものは最近消滅しました)。その稀少な現存6桁局番は「北海道上川支庁上川郡朝日町(016528)」と「滝上町(015829)」です(例えば朝日郵便局)。
 今後も市外局番の桁は全国的に減らされると思われ、今や5桁の番号すら貴重になりつつあります。北海道の一部など、市部でも5桁を使っているところもありますが、郡部でも都市に近い地域は3桁や2桁の番号になったりして、5桁市外局番が消滅するのもそう遠くないことかもしれません。そのような状況ですから、6桁市外局番の絶滅は目前に迫っていると見て間違いないでしょう。20年〜30年くらい前には、7桁市外局番(加入者番号が3桁)の地域もあったんですけどね…。

5月3日   時代の流れに消えゆくもの(その2)
 本日は、昨日に引き続き「消えゆくものシリーズ続編」です。一応、明日まで3回シリーズにしようと思っております。が、それ以降も何かネタを思いついたら続けていきます。

その2…腕木式信号機 (消滅危険度★★★)
 宮沢賢治の童話に『シグナルとシグナレス』という作品があります。この童話では2機の鉄道信号機が擬人化されていますが、この信号機は細長い「腕木」が上下に動いて現示する「腕木式信号機」です。よく博物館に保存されていたり、昔の駅の写真に出てきたりしますし、機関車を取り上げた絵本にもこっそり登場したりしますが、現在、その実物を見たことのある人は少ないと思います。
 実は腕木式信号機自体は全国各地に細々と残されており、例えば首都圏なら銚子電鉄等で見ることができます。しかし、JR線では、オフ扱い郵便局とほぼ時を同じくして急激に数を減らし、昨年の時点で全国で3路線になってしまいました。そのうち北海道の石勝線清水沢駅と、三重県の名松線家城駅の信号機が相次いで「色灯式」(現在多く使われている信号機と同型のもの)に交換され、青森県・岩手県を走る八戸線が最後の砦です。この路線も今年秋頃には自動信号に置き換えられるとの噂があり、オフ扱い郵便局と同じ運命を辿ることになりそうです。
 ただ、JR以外の地方私鉄線や、JRでも旅客営業していない貨物線の一部には、若干数の腕木式信号機が残されています。こちらはもう少し長生きしそうです。だから危険度はちょっぴり低めです。

5月2日   時代の流れに消えゆくもの(その1)
 現場をよく知らない上層部による「合理化」の一言で、人知れず消えてゆく産業遺産たち。人目につき、目立つ存在なら、文化財に登録されるなどして現役状態で保存されることもままあるのですが、残念ながら一部の関係者等以外に知られることなく、いつの間にか消滅している事例も多いのです。
 特に近年まで全国に細々と残っていながら、平成10年代に入って急激に数を減らした風前の灯火を、いくつか紹介します。

その1…オフライン扱い郵便局 (消滅危険度★★★★★)
 郵便局で貯金をする際に発生する各種取引データは、現在、電話線を介したオンラインで貯金センターと遣り取りし、郵便局員とのインターフェイスは端末機に設置されたモニタとプリンタということになります。しかし、平成10年頃までは、諸般の事情により、貯金のオンライン扱いができない郵便局が全国に10箇所程残されていました。
 ところが、これら十数局は、次々にオンライン化、或いは局そのものが廃止され、遂に残り3局になってしまいました。奈良県に1局、山形県に1局、愛知県に1局。それらのうち、愛知県の局…これは有名な博物館明治村の中に設置された明治村内郵便局なのですが、ここにはオンライン端末が設置されているものの、端末が稼働しない土休日に限ってオフ扱いで貯金を受け付けていました。が、現在、土休日は貯金の扱いを中止している模様です。そしてつい先日、4月1日に、奈良県の東の川簡易郵便局が廃止されてしまいました。最後の1局である山形県の的場簡易郵便局(農協併設局)は現在一時休止中でして、もし仮に今後、営業が再開されるとしても、オンライン端末を設置される可能性もあり、実質的にオフ扱い郵便局は全滅してしまったのです。私は郵便局についての知識に乏しいのですが、このような前時代の遺産は是非後世に伝えてほしいものです。的場簡易局のオフ扱い再開に最後の望みを託すのみです。

5月1日   タンポポ
 小学校時代、とある本(タイトルは忘れました)を読んで、タンポポには在来種と外来種があることを知りました。しかも現在、都会の住宅地では外来種であるセイヨウタンポポの方が在来種より圧倒的に多く見られる、とのこと。中学では最初の理科の授業でタンポポが取り上げられましたが、やはり在来種と外来種の見分け方について教科書にも掲載されていました。
 小学校時代から在来種と外来種があることを知っていながら、どこに在来種が生えていて、どこに外来種が生えているのかを詳しく調べたことがなかったので、中学校の授業のフィールドワークの機会に調べてみることにしました。すると、どこを捜しても外来種ばかり。近所の道端に生えているタンポポのほぼ全てが外来種でした。外来種と在来種の外見上の違いは、(まあ検索すればすぐにわかると思いますが)花の下にある「総苞外片」(がくのようなもの)が上向きになっているか下向きに反り返っているか、という点に着目すればすぐに見分けられます。上向きなのは在来種、下向きなのは外来種です。



 「きっとうちの近所にも在来種があるはずだ」と思い立った中学時代の私は、思い当たる場所を探し回りました。在来種は農地・山林など宅地開発があまり進んでいない場所に見られるとのこと。そのような場所は近所にあるのか…?
 そして、遂に近所の神社の近くで在来種のカントウタンポポを発見することができました。つい先日、その当時のことをふと思い出し、まだカントウタンポポが残っているか確かめるため、その神社の近くに行ってみました。すると、約15年前と変わらず、カントウタンポポが咲いていました。上の写真の右側が、そのカントウタンポポです。ついでに左の写真は外来種のセイヨウタンポポなのですが、在来種のタンポポより茎が短いようですね。
 実はいろいろと調べてみると、外来種のタンポポは自身の株の花粉で繁殖できるそうですが、在来種のタンポポは他の株の花粉でないと繁殖できず、故に在来種は群生するそうです。確かに神社の近くに生えていたカントウタンポポは群生していました。



 花の拡大です。このように総苞外片が上を向いて閉じているような形のものが在来種(関東では主にカントウタンポポ、関西では主にカンサイタンポポ)です。白い花を咲かせるシロバナタンポポも在来種なので同様の特徴を持ちます。興味を持たれた方は、一度近所のタンポポを調べてみてはどうでしょうか。



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