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あーとだいありー 2004年9月以降

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 10月26日(火)

 第81回赤光社展=テーオーデパート(函館市梁川町)
 函館を中心とする道南の公募美術展。
 しゃっこうしゃ、と読みます。
 1921年(大正10年)創立だから、道展より古い歴史を誇ります。
 会員には、全道展や新道展の会員・会友が多く、壮観です。春陽や行動の会員もいます。
 道展は、道南には会員が少ないこともあって、ほとんどだぶっていません。
 かつては、田辺三重松、蛯子善悦、岩船修三、橋本三郎、箱根寿保(以上故人)、鵜川五郎、木村訓丈、野本醇、鎌田俳捺子、菅野充造といった面々も会員だったのですから、まさに北海道の美術史のかなりの部分をになってきた団体であることはまちがいないでしょう。
 もっとも、会場がせまいこともあって、小さい作の会員や、出品していない会員も多いのですが。
 長谷川常雄、木村良ら、全道展の出品作をそのままもってきたようなベテランも見受けられます。
 会員でいちばん筆者の目を引いたのが、飯田辰雄「路上の譜」でした。
 これまで浜にある巻き胴をリアルな筆致で描いてきた飯田さんが、がらりとモティーフを変え、横断歩道のストライプを、写実的に描いています。いわば、ドライな抒情といったものを感じさせる、洗練された作品だと思います。
 鈴木博「群集」(大野)は、筆者は知らない作家です。厚塗りをいかした抽象画です。
 山田あや子「層」(上磯)も、はじめて見ました。絵の具を垂れさせて描いた抽象画で、米国の抽象表現主義の作品を思わせる緊張感のある絵だと思いました。
 ほかに、佐野忠男「夕暮れの部屋」、吉田玲子「赫光」、石原佑一「人間家族」(森)などが印象にのこりました。
 会友では、江畑良子「壁画A」(木古内)がユニーク。タペストリーを思わせる赤や茶の厚い地に、ひっかき傷のような線が縦横に走ります。
 それにくらべると、一般入選者が、かなり見劣りするのは否定できません。協会賞の紫和留理子「何処へ−03」(上磯)のように、たしかな広がりを持った画面を構築できている人もいますが、なかには
「えー、こんなのも入選しちゃうわけ」
という絵もまじっています。
 26日で終了。


 ところで、新聞で最近、北海道の将来の美術に影響をおよぼしそうなニュースが散見されます。

 ひとつは札幌市立高専の大学昇格の問題です。
 川崎某は学長をやめたものの、それでも大学昇格にあたって移行できない教員がいることから、教員側は組合を結成して抵抗する構えを見せています。
 その委員長が現代美術の畑俊明さん。副委員長には金工、水中写真の金子直人さんが就任しました。
 みなさん、人生設計にかかわる問題ですから、必死です。

 二つめは、道内の美術家の過半数を輩出してきた道教育大の再編問題です。
 最終案によると、美術コースは、岩見沢キャンバスに集約することになりそうです。
 これは、札幌からかなりの程度の数と水準の若手作家がいなくなることを意味します。
 フリースペースPRAHA(中央区南15西17)を中心に、札幌の美術シーンにあたえる影響は小さくないでしょう。たしかに、札幌と岩見沢は、それほど遠くはないですが。
 また、集約によって、札幌高専と同様の、教員の処遇問題が浮上してくる可能性も否定できないでしょう。
 さらに、まあこれはどうでもいいことなんですが、現在、道教大の卒業生は、札幌が道展に、岩見沢や旭川が全道展に出す傾向が強いです。それぞれのキャンパスの先生の所属団体によるものだと思われます。やっぱり数では札幌が多いですから、近年の道展で若手が元気な背景になっています。この微妙なバランスが崩れるかもしれません。

 9月26日(日)・27日(月) 10月11日記す

 藤野千鶴子展STV北2条ビル エントランスアート(中央区北2西2 地図A)
 藤野千鶴子さんの作品宇宙の広がりを感じさせる抽象画を描く札幌の藤野さん(美術文化協会と新道展の会員)ですが、今回の作品は、ちょっといままでとちがう感じがします。
 右の写真は、100号クラスのキャンバスを4枚横につなげた大作です。青系の地に白い線が躍っているのは、これまでと似ていますが、いままでの多くの作品が、暗い色の地が残されていたのに対し、全面を覆っています。
 というわけで、なんだか、むしろ高橋靖子さんの絵を思い出してしまう筆者でありました。
 会場は、ビルの入り口。ほかに、版画の小品と、外から見える窓際のイーゼルに大きな絵が1点架かっています。
 10月10日で終了。
 藤野さんの個展は、10月18−23日に札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)でもひらかれます。

■03年10月の個展(画像あり)
■美術文化北海道展(03年9月)
■03年5月の個展(画像あり)
■02年10月の個展(画像あり)
■01年の美術文化北海道展


 第二十八回北海道抽象派作家協会秋季展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 抽象をテーマにこれほど長続きしているグループもめずらしいでしょう。
服部憲治さん(左)と佐々木美枝子さんの作品 もともとは、北海道美術界でさまざまな前衛グループを組織して活躍した渡辺伊八郎さんが主導して1973年に旗揚げしたグループです。
 毎年、推薦メンバーを交えた本展と、同人だけによる秋季展をひらいているのですから、その勤勉さにはあたまが下がります。
 その後、めまぐるしいメンバーの加入、脱退を経て、98年以降は、今荘義男さん(空知管内栗沢町)と佐々木美枝子さん(札幌)のふたりのオリジナルメンバーを軸に、不動の顔ぶれでしたが、今回から、七宝や金属を使った重厚な立体の神谷ふじ子さん(同)が脱退しました。
 彼女は、メンバーで唯一中央の公募展(二紀展同人)に出品しているので、いそがしいようです。
 さて、彩度の高い赤が多用されている佐々木さんの絵ですが、今回は文字がおもなモティーフとなっています。
 「作品A」では、エメラルドグリーンの「Octobre」という字がまばゆいです(フランス語で「10月」の意)。
 服部憲治さん(苫小牧)「作品A」「作品B」。
 後者(写真の左)は、黄色と青などを組み合わせた矩形の上に、軽快なセルリアンブルーの横線が走る作品。
 これまでの服部さんの絵にくらべると、すっきりした印象を受けます。
今荘義男さん「作品B」(左)と三浦さん「循環」 今荘さんは「古里 イ」「古里 ロ」の2点。
 東洋的な、渋く深いモスグリーンと白を主にした、じつにシンプルな絵画。
 しんみりします。
 三浦恭三さん(小樽)「循環」(写真の右)も、陸上トラックのような全体の形態はこれまでの延長線上にありますが、すっきりと軽快な印象が強まってきています。
 後藤和司さん(札幌)の「イメージ04」。
後藤和司さん「イメージ04」 ちょっと画像がゆがんでまして、どうもすいません。
 春の展覧会とも違った作品で、青が鮮烈なコラージュです。
 春の作品のような、細かい線などはなく、即興的な印象が強いです。
 あべくによしさん(旭川)は、長年「記憶の箱 風が透き通った日」のシリーズにとりくんでいます。
 箱の輪郭のように、縦、横、斜めにテープを張ったキャンバスに、ふわふわと、風のように着彩がほどこされています。
 ただし、その色合いは茶系がつよく、以前のような有彩色が後退して、枯れた味わいあべくによしさん「風が透き通った日」(左)になっています。
 毎年、アルファベットの文字をテーマに制作している外山欽平さん(函館)は、「h」のシリーズに突入しました。
 パッと見ただけではわからない細かい技法がもちいられているようで、それが図と地の絶妙なせめぎあいを生んでいるようです。
 近宮彦彌(旭川)さんは、ダンボールによるコラージュ2点を出品。
 林教司さん(空知管内栗沢町)は「しるべ」という新しい趣向の作品です。
北海道抽象派作家協会展の過去の展覧会
■01年春 ■同秋 ■02年春 ■同秋 ■03年春 ■同秋 ■04年春(画像あり)

■企画展・今荘義男「古里」(03年)

佐々木美枝子さん
■03自由美術北海道グループ展(画像あり)

■外山欽平さんの個展(04年3月 画像あり) ■03年の個展画像あり) ■02年の個展 ■01年の個展

林教司さんのおもな発表
■キャバレーたぴお展(01年) ■個展FGOPPE(01年。画像あり) ■多面的空間展VOL..4(02年) ■個展 具象から抽象へ(02年、画像あり) ■キャバレーたぴお展(02年) ■閉塞形状展(02年) ■1970−2001年自選展(03年) ■新 素材の対話展(03年) ■SUMMER WAVE展8(03年) ■BOOK'S ART展(03年) ■北海道立体表現展(03年) ■ディメンションの多様展5th(04年)■今井和義追悼展(04年)

林さん、今荘さん、後藤さん共通
■01年新道展 ■新道展(02年) ■新道展企画・共同制作「INCREASE/増殖 紙によるインスタレーション」(02年、画像あり)


 伊藤幸子彫刻展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 伊藤幸子さんの作品着彩した人物像など、一般的な具象彫刻とはちょっとちがう彫刻をつくる札幌の伊藤さん。
 右はトルソの写真ですが、上半身がリベットの突起みたいになっています。
 ほかに、首、くもみたいなかたちなどがありました。
 伊藤さんは道展会友。

 ■03年3月の新保恭子さんとの二人展(画像あり)


 8・6の会展=同
 新道展の指導的立場にあった画家の故・阿部国利さんに絵を習った女性7人によるグループ展の2回目。
 河合キヨ子、鴇田由紀子、野呂恵子、藤井静江、藤田恵、福島靖代、細木博子の各氏。いずれも新道展の会員あるいは会友で、繊細なマティエールが特徴です。
 野呂さんが、画風を微妙に変化させているのが目に付きました。土偶のようなモティーフは姿を消し、植物の曲線がめだちます。

■03年10月の展覧会


 第15回 友彩会展=同
 こちらは、独立美術と全道展の会員だった画家の故・砂田友治さんに絵を習っていた人たちのグループ展ですが、今回で最終回だそうです。
 入宇田能順、岳上恵子、金山当子、岸尾道子、中村友子、能登智子、星成雄、山本圭子、横関静枝の9氏が出品しています。

 以上、10月2日までで終わり。


 川畑盛邦展ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL) 地図D
 画像は、ギャラリーのサイトでごらんになってください。
 吉田豪介さんの解説によると、自然にできた絵の具のかたちに人物を当てはめるという図法で、風景と人物を描いているらしいです。
 そのためか、とくに小品は、抽象っぽさが強まっているようです。
 100号クラスの作品も、浮遊感というか、不安というか、不思議というか、独特の感じが全体にただよっています。
 9月いっぱいで終了。

 出品作はつぎのとおり。
 「赤い服」「my portrait 1」「my portrait 2」(4F コラージュ)
 「風景03−9」「風景03−11」「風景03−10」(30号)
 「風景03−1」「風景03−2」「風景03−10」(100号)
 「風景04−4」(15号)
 「風景04−5」「風景03−6」「風景03−7」「風景03−8」(20号)
 「空飛ぶ船04−8」(サムホール)
 「青い服」(ダブルサムホール)
 「白い服」(6号)
 「空飛ぶ船04−7」(0号)

■2003年9月の個展(画像あり)
■2001年の個展