小樽市・旧手宮線沿いつれづれ日録の題字

 2002年11月後半

 表紙へ  美術展のスケジュール  札幌の11月のギャラリー日程  11月前半へ  12月前半へ

 11月30日(土)
 安藤栄作展=北海道教育大学岩見沢校美術研究室ギャラリー(岩見沢市緑ヶ丘2)
 福島県在住の彫刻家。
 木彫9点と、ドローイング4、5点を展示しています。
 木彫は、二本足の部分だけをデフォルメしたユニークな形状の「森のあし」、リズミカルな繰り返しが印象的な抽象作品の「風のはしご」など。鉈(なた)だけで作っているため、表面の傷跡が生々しいものばかりです。
 同校の坂巻正美さんに写真を見せてもらいましたが、野外でアースワーク的なアプローチも行っており、そちらも面白そうでした。
 12月1日まで。

 なお、岩見沢までは、中央バスが1時間に3、4本出ており、岩見沢インターの出口の停留所で下りても10分あまりです。
 筆者は、特急で往復しました。ぜいたくだと思われる向きもあるかもしれませんが、「Sきっぷ」を買うと、普通列車で行く場合と、片道80円くらいしか違わないのです。
 行きは、岩見沢駅から大学まで徒歩。これだと20分余り。
 帰りは「岩見沢市内線・Bコース」に乗って、6分ほどでした。

 「12月のギャラリー日程」をいちおうアップしました。
 札幌市資料館の日程資料がまだ入手できていないなど、不完全版です。早急に充実を図る予定ですので、ご諒承ください。


 11月29日(金)
 きのうは、歯医者で虫歯を抜いて、元気がなかったので休みましたm(__)m

 spongeアートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル6階)
 札幌に拠点を置きつつ、グラフィックスやイラストレーションなどで全国的に活躍するユニット「rocketdesign」と、家具デザインや製作にたずさわる「chocolate room」のコラボレーション。
 家具は白いテーブルなどがあるくらいで、ちょっと点数的にさびしいけれど、CGによるイラストは、大作が5点、小品が26点。動画もモニターで流してます。雨の中を傘をさして歩く子どもたちの、かわいらしい絵柄です。
 興味のある方はrocketdesignのサイトをぜひごらんください。
 「えっ、あの女性誌の表紙の絵も描いてたの!?」とびっくりすること請け合いです。
 サイト自体もとてもおしゃれです。

 The Origin=同(5階)
 大谷短大美術科の卒業生のグループ。
 向中野るみ子さんは「意志」などと題した抽象画を出品。いずれも、濃淡のある地の上に、棒状の形を二つ配した図柄です。棒のような形は、まっすぐだったり、斜めになっていたりして、あるいは心の状態をあらわしているのでしょうか。
 岩込祐里さんは、石膏の顔を使ったインスタレーションをふたつ。白い顔が天井からぶら下がってるのはけっこう不気味ですが、その裏側が赤く塗られているのもあやしいです。
 いずれも12月2日まで。

 aoiro 富樫はるか・日本画とペン画=this is gallery(南3東1)
 ペンで輪郭を書き、日本画の画材で着彩したとおぼしき紙本着色の小品が24点と、カラー写真を転写したようなテイストの小品が3点(中尾峰くんの作品に似ている)。
  群青のなかの草原を描いた絵。あるいは、電信柱。あるいは、木々のシルエット。群青の空に浮かぶ月…。こういった、シンプルな構図の風景画にまじって、若い人物の顔をアップでひとりずつ描いた絵がならんでいます。
 筆者はこういう、深い青い色によわいんですよ。なんだか、夜明け前のしずかな時間を表現したみたいです。
 12月1日まで。 

 LAD#03 Liberty and doing 若者/自由/写真=イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)
 札幌学院大の学生と卒業生の若手4人による写真展。
 いずれもカラーで、人物をモティーフにしています。
 佐々木織恵さんは、蝶と女性のイメージを二重写しにした3枚組みの「羽」など。
 ほかに、大沢亜実さん、佐久間亮さん、櫛谷吏代さんが出品。みんな、モデルも撮り方も若いです。
 佐々木さんのサイトはこちらです。
 12月3日まで。

 意図したわけじゃないんだけど、若手特集の日になってしまった(たぶん全員20代)。

 北海道新聞の札幌市内版できょうから「まちかど探見 白石本通かいわい」が始まりましたが、挿絵を描いているのは、10月にコンチネンタルギャラリーで個展を開いた真鍋敏忠さんです。
 ご本人のサイトはこちら


 11月27日(水)
 ロングラン企画・関川敦子の贈り物12ヶ月 11月・小さな版画の贈り物=GALLERIA CAFFEクルトゥーラ(北区北12西4)
 メルヘンの薫りあふれるリトグラフをつくる札幌の関川さん。今回は、擬人化された動物たちが主役の小品が約30点展示されています。
 トラがカフェで手紙を書いたり、犬の紳士が河畔で古書店を店開きしていたり、どうやらパリの街角が舞台みたいですね。「Cafe Au Lait」という作品は、黒いクマが「Cafe」のポットを、白いクマが「Lait」のポットを持って、カップに注ごうとしている図柄です。
 印刷じゃなくてちゃんとした版画なのに、4000円から10000円が価格帯の中心なので、なにかクリスマスに贈り物を−と考えている女性にはぴったりの企画だと思います。足を運んでみてくださいね。
 30日まで。

 アートスペース201のakaさんのサイト「ぞ」によると、INAXガレリアセラミカ(中央区南2西2 札幌南二条ビル INAX札幌ショールーム)が今月19日かぎりで閉鎖になったそうです。
 手元に資料がないので正確なことは書けませんが、前身のINAXスペース時代には意欲的な企画画廊として、杉山留美子さんや艾澤詳子さんら地元勢や、本州の現代美術作家の個展を、毎月開いていたように記憶しています。
 97年には、キューバを代表する若手作家サンドラ・ラモスさんの個展も開いています。
 その後、担当者が本州に異動したうえ、(たしか)2000年にはショールームの改装にともなって面積も狭くなり、東京のINAXで開催した作家(おもにセラミック系)の個展の移動展のみが行われるようになりました。それからは筆者もあまり熱心には見ていません。

 アクセスが5万を突破しました。
 3万が6月14日、4万が9月上旬ですので、だいたい3カ月弱で1万というペースはあまり変わっていないようです。
 ともあれ、みなさまのおかげです。これからもよろしくおねがいいたします。


 11月26日(火)
 13th DON/呑展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)A室
 大林雅さん、小林敏美さん、櫻庭恒彌さんの3人による毎秋恒例のグループ絵画展。
 大林さんは例によって、エイリアンのような、しわしわの不気味な物体のある風景を描いていますが、ことしは「荒廃」「虚無」など、かなり生き物としてのかたちが壊れて、抽象的になってきたようです。「できそこない」にいたっては、まったくの平面です。
 櫻庭さんは毎年土偶を平面的に処理した画風ですが、ことしの連作「渦と土偶」5点は、題の通り渦に囲まれたかたちの土偶がモティーフで、その縞模様は白砂の庭を思わせます。
 例年、日本の神話に材を得た絵を発表している小林さんは、「むすめをばあわせたてまつらむや 八俣の大蛇退治」など、古事記がテーマ。日本的な題材でどこまで洋画として表現できるか、挑戦をつづけています。

 第13回友彩会展=同B室
 絵画のグループ展。
 横関静枝さん「黄色いテーブルクロス」は、構図はよくある室内画ですが、色彩がクリアで、見ていて心が和みます。どうも道内では、汚い色を使う人が多いので、こういう絵は希少価値があると思います。
 金山当子さん「NOCTURNE」は、画面全体に飛び散るさまざまな色の飛沫がおもしろい効果を挙げています。

 キャンバス会展=同C室
 絵画のグループ展。
 筆者の記憶にまちがいがなければ、前身は北電の社内サークルだったとおもいます。
 メンバーは5人ともなかなか達者。斉藤章恵さんの静物画「秋桜(セレナーデ)」や、紅葉の山や川を描いた「秋色(コンチェルト)」は、オレンジや青の発色が豊かで、たくさんの色をつかっているにもかかわらず、ちっともうるさくありません。
 加藤清人さん「群集」や「晩秋の鳥」は、人間精神の不安に迫る作品です。

 愛澤光司陶展=同D室
 「土との語らい」と題し、球に近い形の素焼きのオブジェを床にたくさん置いたインスタレーション。

 ほかに、E・F室で絵画展「グループはるにれ会展」が、G室で、ドーナツ型に表面を削った板を陳列した「佐渡芙二夫作品展 無の極(Nobody,nowhere)」が、それぞれひらかれています。
 30日まで。

 陶三人展=さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)
 札幌の尾形修一さん、根室管内中標津町の藤田直平さん、盛岡市の雪ノ浦裕一さんによるうつわの展示会。
 雪ノ浦さんは旭川生まれです。粉引に特長があり、「鳥館」「羊壷」といった、なんとものんきな立体が、皿などにまじって置かれていました。

 デジタルアートと写真 加藤良明展=同
 すべて正方形のカラー写真と、おなじ大きさのコンピュータグラフィクス、計およそ60点がならぶ。
 写真は海外の風景を中心に、なんでもあり。コンピュータグラフィクスも統一性はなく、さまざまな画風のイラストレーションやポスターがならんでいるといった感じです。
 いずれも、12月1日まで。 


 11月25日(月)

 訃報です。
 札幌在住の画家、阿部国利さんが亡くなりました。
 阿部さんは、1938年後志管内岩内町生まれ。奇妙にデフォルメした人間像を精緻に描く独特の絵画を展開しました。
 モノトーンに近い沈んだ、しかしクリアな色調で描かれた人間たちは、植物や建物と同化しているようなところもあり、不気味ではありましたが、それを超えて、人間と時代の本質に迫るものがありました。
 毎年のように個展を開いていたほか、新道展会員として会の運営に尽くしました。本展のほかに、小品移動展「リムーヴ」を組織するなどのオルガナイザーでもありました。
 ここ数年は体調が悪かったのですが、札幌時計台ギャラリーでひらいたことし6月の個展には、病室を抜け出して会場に来ていました。このときの個展の模様については、こちらのサイトに記録があります。
 とにかく、このときは、画家魂というか、その根性のすごさに感服させられました。
 ご冥福をお祈りします。

 もうひとり。
 「最後のシュルレアリスト」と称されたチリ出身の画家ロベルト・マッタ氏が亡くなりました。
 1911年生まれ。はじめは建築をこころざしますが、36年にロンドンでひらかれた国際シュルレアリスト展に参加したころから絵画に転じます。
 39年、戦火の欧州からニューヨークへ一時亡命。かの地で、ブルトンやエルンストらと交誼がありました。
 代表作に「地は人」「エロスの暗景」、マンスールとの詩画集「地獄墜ち」などがあるそうです。
 マッタの絵は、オートマティズムによる抽象画というべき、自由に線や色塊が躍るものですが、ポロックやゴーキーに影響を与えています。
 (この項、「THE ART BOOK」(PHAIDON社)、「みづゑ」75年1月号を参考にしました)

 それでは、まず26日で終わるアートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル5、6階)の展覧会から。
 6階は、第1回むつはな師範会展
 漢字、かな、近代詩文と、多彩な書風です。
 千葉麗佳さん「かじかみし…」。俳句。かな、というよりは近代詩文でしょうか。半紙を手でまるくちぎって額装しているところがしゃれています。
 和田京華さん「墨痕の燕の一字飛び立てり」も俳句。センスのよさを感じました。

 第30回GROUP火曜会展・第8回創遊会展
 5階の3室でひらかれており、どちらがどちらの発表会場だかよくわからないのでまとめて記します。
 油彩、水彩、デッサン、写真、彫塑など、小品がたくさんありました。
 裸婦クロッキーでは北林八重子さんがしっかりした肉付けのものを何点も展示しています。
 草刈喜一郎さんは筆者の好きな老アマチュア画家ですが、今回の「ある街角」も、先だってのスイス旅行に材を得たものらしく、落ち着いた味を出しています。
 佐藤孝夫さんは、じぶんのなかに表現したいなにものかをつよく持っている人だなーといつも感じます。「『存』現実と仮想の間」は小品ですが、この方なりの思索の痕みたいなものがあるように思いました。
 ほかに、内川英優さん、佐藤良明さんの絵に惹かれました。

 傘寿記念 八木保次展=ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
 「熱い抽象」をいまでも追究する八木さん。
 しかしご本人は「具象のつもり」とおっしゃいます。
 「何描いてるの、と聞かれたら『森羅万象さ』と答えるんだ。あははは」八木保次展の会場風景
 今回の個展には、大小二十数点の絵がならびます。すべて無題、グワッシュです。ここ数年は水彩ばかり取り組んでいるそうです。
 「油は乾くのが遅くてね。次々と上からかいていくことができない。でも、また油絵やりたくなってきたな」
 写真の中央の作品が筆者は好きです。白、青、黒…。さまざまな絵の具が重なり合い、上から下へと垂れ落ち、まさにオールオーバーな絵画空間をつくっています。
 八木さんは、形態よりも色彩の画家だということがわかります。
 左側の作品はまるで前衛書のようです。黒は墨汁だそうです。
 八木さんは、もちろん洋画を描いているわけですが、こうして見ると、どこかに日本的なものがわずかににじみ出てきているようにも思えます。
 80になってもベルボトムのジーンズを颯爽とはいてお元気な八木保次さんは札幌在住、全道展会員。妻の伸子さんも画家なのは有名です。
 たぴおの25周年記念展。30日まで。  

 北口さつき展ギャラリーどらーる(北4西17 HOTEL DORAL)
 北口さんは、どっしりと存在感ある女性像を描き続けている日本画家です。
 それも、美人画のような女性じゃなくて、目も唇も大きくて、色の浅黒い、どちらかというと南方系の若い女性です。
 すこしずつ変わって来ているところもあります。以前は裸婦ばかりでしたが、今回の個展では裸婦はひとりもおらず、大半がキャミソールのようなのを着ています。
 「想うT」「蒼い月」などの大作は、昨年の個展の「ひと」と同様に、女性像の周囲を、濃厚な匂いを振りまいているかのように咲き乱れる百合の花がとりかこんでいます。
 ただ「ひと」に描かれた女性が3人だったのに対し、ことしの大作ではいずれもふたり。手前の女性は正面を見据えていますが、奥の女性は薄い色彩で描かれ、目を閉じて横たわっています。あるいは、ひとりの女性の陰と陽、明と暗といったものを表現しようとしているのかもしれません。
 もうひとつ目を引くのは、花を描いたたくさんの小品です。
 考えてみれば、女性たちの周囲にこれだけおびただしい百合が咲き誇っているわけですから、当然花もスケッチしているのでしょうが、昨年の個展で小品がゼロだったこともあって、とてもめずらしく感じました。
 札幌在住、道展会員。ご本人のサイトはこちら
 30日まで。

 さてきょうは休日だったので、南幌(なんぽろ)と江別に足を伸ばしました。
 東西線で新さっぽろまで行き、夕鉄バス「南幌東町行き」に乗りました。夕鉄バス車内
 はじめは5人しか乗っておらず、北海道のローカルバスらしいなあと思っていたら、江別市内に入ってしだいに乗客が増え始めました。しかも、老人が大半です。
 この人たちをふくめ、乗客を観察していておもしろかったのは、大半の人が乗ると後ろ側を見向きもしないんですね。どんどん前のほうにすわる。
 筆者なら、二人がけの席に見知らぬ人と二人ですわるのは(北海道弁で)あずましくない、それよりも後ろ側でひとりですわったほうがラク−とおもうのですが、夕鉄バス利用者はちがうようです。後ろ側がガラガラでも、そちらにすわるという発想はまったくなく、前のほうに詰めてすわり、あるいは立つのです。
 バスは国道12号から「鉄東通」に入り、JR線にほぼ沿って走ります。上江別で南側に遠回りしたあと、踏切を渡って江別駅前に出て、ふたたび線路をくぐって「あけぼの団地」を通ります。「あけぼの団地行き夕鉄バス」というのをよく見かけますが、なるほど、江別市の市街地の最前線に古い集合住宅がならんでおり、バスの終点にふさわしい風情。これを過ぎると、突然農地がひらけます(突然市街が終わるのは北海道の特徴)。
 たくさん乗っていた老人たちは全員「南幌温泉前」で下り、乗客は筆者をふくめてふたりだけになってしまいました。
 そこから数分で南幌の市街地です。
 「町立病院前」で下り、さんざん迷ったあげく、喫茶風樹へ。
 なんのことはない、バス停からすこしもどればよかったのです。

 別府肇小品展=風樹(空知管内南幌町栄町4)
 木の枝や石、金属などを使ったオブジェ十数点。
 うーん、わるくはないのですが、前回の個展がとても良かっただけに、物足りない思いもすこしのこりました。
 個展のときの作品とのいちばん大きな違いは、支持体の紙がないことだと思います。
 クレンザーを使ったり、古びた感じを出したりした紙のマチエールが、小さな作品に大きな広がりをあたえていたのです。今回はそれがなく、ちょっとクラフトっぽくなっています。
 クラフト的といえば、会場には、他人のクラフト作品や古だんすなどが所狭しと置かれ、はなはだ雑然としています。テーブルや椅子は丸太をそのまま利用したもので、これはこれで良い雰囲気だとは思うのですが、別府さんの作品を引き立てる空間になりえているかというと、むしろ埋没してしまったように感じます。あるいは、そういう生活空間の中でひっそりと息づくものをつくりたかったのかもしれませんが。
 30日まで。

 店を出てすぐ尿意をもよおしました。
 こういう時は、だれでも入れる大型店か公共施設をさがすのが一番です。
 どうも大型スーパーは見当たらないので、以前から興味のあった「南幌ビューロー(ふるさと物産館)」を目ビューロー指しました。
 風樹からは徒歩6、7分といったところでしょうか。南幌行き、あるいは南幌経由のバスはすべてここにいったん止まります。ほかに高い建物のない町内では、どこからでも見えるので、道しるべに便利だと思います。
 もっとも、物産館というわりには、販売されている特産品は20種類もないようです。「キムチラーメン」がうまそうでしたが、クーラーボックスがないので、ブルーベリージャムと三升漬を買いました。
 最上階の5階は展望台になっています。
 かなり見晴らしが良いので、時間のある方はぜひどうぞ。南幌もけっこう大きな町だということがわかります。
 ここでは、野鳥の写真展がひらかれていました。
 4階では、書道とアートフラワーの展覧会もひらかれていました。
展望台から見た南幌町市街地 書は高橋時雄さんという方で、すべて漢字。
 「生死不可道者」という軸がなぜか心にのこりました。

 ビューローの向かい側には
「夕張鉄道南幌向駅跡」
の看板も立っています。
 そうです。南幌、というのは、南幌向(みなみほろむい)が語源なのです。
 筆者もむかしは
「どうして札幌の東にあるのに南幌なんだ」
と勘違いしていました。
 かつて、野幌(江別市)−南幌−栗山(空知管内)−夕張の間に、夕張鉄道が走っていましたが、74年に廃止になりました。現在は、鉄道のない町です。ちなみに「夕鉄バス」を走らせている会社は、いまでも「夕張鉄道」という名前です。
 道内の民営鉄道の中ではかなり後まで走っていたほうですが、もうすこし踏ん張っていれば、南幌も、札幌のベッドタウンとしていっそう発展できたかもしれません。南幌向駅の跡
 それでも、比較的安くて、広い一戸建て住宅を求める人はけっこういて、南幌は、道内の町村ではめずらしく人口が増えています。
 最大の「売り」は、電話の市外局番が札幌とおなじ「011」であること。どうして空知なのに「011」なのか知りませんが、東京の狛江が「03」であること以上に不思議です。
 このことを、たとえば札幌に隣接する石狩市などの住民には、ひそかに、おもしろくなく思っている人が多いのではないでしょうか。

 ところで、時刻表では、札幌から南幌への行き方が非常にわかりづらいので、ここで整理しておきたいと思います。
 1.中央バス
 これが一番速いです。
 札幌ターミナル(大通東1)から、栗山行きか、夕張行きの高速バスに乗ると、町立病院まで40分です。1日9往復。
 時刻表には、南幌を通るとは書いてありません。
 2.夕鉄バス
 新札幌駅のバスターミナル北レーンから平日26便が出ています。所要44〜52分。
 これも時刻表では誤解をまねく表現がされていますが、「栗山・南部方面」行きは、南幌を通らないかのような書き方がされています。しかし、これは「南幌東町」を通らないだけで、町立病院前やビューローなど町内の主な停留所にはすべて停車します。
 ちなみに、大麻、野幌、高砂、江別の各駅前を経由します。江別からは22分。始発から乗るより、このほうが速いかも。
 3.JRバス
 大谷地駅から北広島駅を経由するバスが1日10便、北広島始発の便が3便出ています。
 北広島からは20分。

 さて、夕鉄バスを「酪農学園前」で下り、跨線橋をわたって徒歩10分弱で、大麻東町ニュープラザに着きま大麻東町ニュープラザす。
 江別市大麻地区は、札幌圏でも最大級のニュータウンです。
 たくさんの公営団地がならんでいます。
 かつては新しい町だったのでしょうが、いま訪れると、高度成長期からそのまま時が止まったかのような錯覚に陥ります。
 左の写真は「ニュープラザ」のアーケード街ですが、これにつづく「大麻銀座商店街」ともども、なつかしい感じがします。

 ネパール王国の美 ガシェンドラ・マン・スレスター展=カナリヤ(江別市大麻東町15)
 作者はカトマンズ美術大を出て、ネパール芸術院の会員だそうです。
 ただし、陳列作品は、ペンによる細密なデッサンが中心です。ネパール製の、色の濃い紙に、寺院や仏像などを描き、ハイライトを金のアクリル絵の具で着彩しています。
 この大きさのデッサンはまだほかに、会場にたくさん積んでありました。
 タブローも数点ずつありますが、「シタールを弾く」など、人間の姿態を単純化したものなど。3点の掛け軸は仏像などを明るい色で描いていますが、掛け軸がカラーというのもなんだか不思議です。
 いずれにせよ、これだけではこの画家の実力は判断しかねるという気が、正直言ってします。
 どうしてネパールの画家が江別の画材屋で個展を開いているのかというと、壁に貼ってあった毎日新聞の切り抜きによると、滝川で個展を開いていて「江別でも」という声があったそうです(しかし、これでは、なぜ滝川で開いていたのかがわからない)。
 29日まで。
 なお、新札幌から「大麻11丁目」行きのバスに乗り、「大麻12丁目」で下りるのがいちばん速いと思います。


 11月24日(日)
 きょうはギャラリー回りはなし。

 自衛隊駅前にある「まるバ会館」に、山崎幹夫作品集Wを見に行きました。
 新作の短篇「あいたい<2002年版>」「セル、眠っちゃだめだ」「こぼれる黄金(きん)の月」と、99年作の「グータリプトラ」(56分)の再映です。すべて8ミリフィルム。
 山崎さんは北大在学中、80年ごろだったとおもうけど、自主制作映画集団「映像通り魔」を結成し、札幌の自主制作映画シーンの盛り上げに一役買った人です(どうして筆者はこういうことをリアルタイムで知っているんでしょう。答え…トシだから)。
 「グータリプトラ」はすごい映画でした。
 といっても、ふつうの映画を見慣れた人にはひたすら退屈なだけかもしれないけど。
 ひとり暮らしの中年男が自室で過ごす毎日、日本酒を傾ける夜、空を流れる雲や日没時の太陽の高速度再生などが延々と繰り返されます。セリフなし、登場人物は山崎さんひとり。BGMはモスクワ放送。4回だけ、山崎さんのギター弾き語りフォークが挿入されます(作詞作曲は湊谷夢吉)。
 最後に「1996−1999」と表示が出ますが、日常と生の空虚さと意味について、これほどまでに考えさせられる作品は少ないと思います。
 87年に「極星」を見たときは
「なんか暗いなあ」
と思ってイヤになった記憶があるのですが、いまはこの暗さが、人生のひとつの断面をあらわしているような気がします。
 とにかく、荒木経惟とか岩野泡鳴なんかよりは、よっぽど「私小説」してるのは確実であり、自分をさらけ出していて、「生への違和感」のようなものに忠実であるということはいえると思います。


 11月23日(土)
 きのうのつづき。
 札幌市資料館(中央区大通西13)での、染織・ファイバーアートの5個展同時開催の話でした。
 以前、ギャラリーたぴおでグループ展を開いたときとおなじ顔ぶれが、しめしあわせて開いたのだそうです。
 まず、加藤祐子ファイバーアート展-痕跡-
 すべてモノトーンの布が十点あまり。
 床に置かれた作品は、なんだか人が横たわっているみたいだなーと思って、見ると、白い人の手のかたち(マネキン?)がにゅっと出ていてビックリ。
 加藤さんは小樽在住。

 松岡えり子展
 白い三角錐型の立体33個を、床に不規則にならべたインスタレーション。
 大きさといい、表面の斜めの模様といい、クリスマスなどで頭にかぶる三角帽を思い出させますが、まあ色がぜんぜんちがうし、それぞれの頂点には木の枝がささり、自然の暗喩になっています。
 松岡さんも小樽。 

 堂間葉子織布展
 5人のなかではいちばん「染織展」ふう。珈琲などで染めた肩掛けなどがならびます。
 暖色を中心とした縞模様には、あたたかみがあります。
 堂間さんの工房は札幌。

 田村陽子ファイバーアート展 -Untitled-
 前回の個展などと同様、ずっと取り組んでいる釣り用の緑の糸を、今回も使って、部屋全体でインスタレーションを展開しています。
 緑色の釣り糸をひたすら織ってつくった布が会場中央をぐるりと覆っています。糸じたいは半透明なのですが、光を反射しやすく、内側は見えそうで見えません。
 外周をたどってゆくと、布の壁がとぎれ、内側にはいれます。おなじ糸をぐるぐる巻きにしたものを、人工芝のマットのようにたいらにしたものが大小6枚ほど敷いてあって、靴を脱いで上がれるようになっています。
 足の裏でも感じることのできる作品なのです。
 もっとも、筆者は
「これがいっせいに青虫に変わったらきもちわるいだろうなあ」
などとアホなことを考えていました(外観は似ていないこともない)。
 「布を織るのが大変だった。個展の2倍の糸を使ってます」
と田村さん。
 敷き物とおなじ平面を彎曲(わんきょく)させて、内側にライトを入れた「あかり」も展示されています。

 小山三千子個展-暮れゆく-
 18枚、おなじ大きさの、縦長の布が壁にずらりと並んで展示されています。
 ただ、色彩のうつくしいこと! 赤系から青系へとしだいにうつろっていきます。これは展示のうまさですね。表面にかすかにうかぶ斜めの線も、統一感を強めています。
 わりとざっくりした感じに見えますが、材質は絹とのこと。
 「ショールやマフラーなど、自由につかえます」とのことでしたが、展示をぱっと見ただけでは、実用品であることに気がつかないほどでした。
 小山さんは深川在住。

 Groupぱれっと油彩展
 A室だけが、他の5室と無関係な展示です。
 わりとよくある絵画のグループ展なのですが、個性的な絵がまじっています。
 菅原健さん「樹皮の表情」。木の幹の樹皮が派手な色で塗り分けられていて、しかもあちこちに人の顔が描かれていて、なかなか不気味。
 児玉美晴さん「眠り」。うずくまる裸婦を横向きに描き、背景に巨大なアンモナイトを配した意欲的な構想画。色調も、微妙なにじみが出ています。
 内田進二さん「夕暮れ」は、オランダ風景画のような心地よさを感じさせます。
 ほかに、石田眞樹子さん、尾崎啓子さん、成瀬桂子さんが出品。

 タニグチ・ススム陶展2002ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)
 小さな陶片をつなげてかたちにしたような花器などを展示しています。
 「土」の存在感をこれほど感じさせてくれる陶芸家も、すくないと思います。
 食器などは、おおむね信楽風といえばよいのでしょうか。自然釉による景色のおもしろさがあります。微妙な緑色は還元によるものでしょうか(あまりテキトーなことを書くと無知がばれる)。
 以上、24日まで。

 今村とおる 古生物とヒトの接展=ギャラリー山の手(西区山の手7の6)
 木彫の個展です。
 でも、ちょっと、ヘン。ユニークというべきでしょうか。
 入って左側には、古生物の木彫です。トリケラトプスやアンモナイトの仲間はともかく、カンブリア紀のナンダカという舌を噛みそうな動物もあります。
 右側は、新作の人の臓器です。
 心臓、脳、神経細胞、ミトコンドリア、DNAといった作品がならんでいます。
 ただし、色は着いておらず、木彫なので、理科室の模型のような生々しさはまったくありません。むしろ、ほのぼのとしています。
 ただ、彫刻は(抽象は別にして)、たいてい人間とか動物が題材なので、臓器がならんでいると、どうもヘンな感じがします。たしかにフォルムはおもしろいですが。大きさも、実物とはぜんぜん関係ないし。神経細胞は、イチイの枝をそのまま生かしています。
 唯一、作者の諷刺を感じるのが「1億年後へのメッセージ」という、海岸で拾った流木に直接彫り付けた作品です。人間の化石を1億年後にべつの生物が掘り当てたらどうなるだろう−という想定でこしらえた作品で、腕の骨の先に携帯電話があるのがミソです。
 30日まで。

 ギャラリー山の手には、きのう行ったのですが、東西線西28丁目から市バス「西21 山の手線」に乗ったら、西高校前から高校生が大勢乗ってきてたいへんな混雑になりました。
 夕方行く人は、あらかじめ前のほうに乗っておかないと、下りるとき苦労しますよ。
 帰りは「ふもと橋」から、市バス「西43 西野第二線」で東西線琴似駅へ。
 それにしても、琴似本通ってどうしてあんなに路駐が多いのじゃ。

 富田幸衛油彩個展=大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)
 セザンヌに私淑したとおぼしき、微妙な青の階調と、明るい肌色が特徴的な風景画、静物画が中心。
 「夕暮の浜」は、遠景の船の手前をびっしりと埋め尽くした球形の消波ブロックが異様な印象。
 「牧廠夕映」は、逆光気味にとらえたサイロと周辺の光景がうつくしく描かれています。
 上下フロアを使った個展。26日まで。

 駒井千恵子写真展「お花畑の彩り」富士フォトサロン札幌(北2西4、札幌三井ビル別館)
 題名の通りの写真展。あまりマニアックな花がないのも、うれしい。
 27日まで。

 きょうは、道新ホールで開かれた「北海道炭鉱映画祭」にちょっとだけ顔を出し、山田五十鈴主演の「女ひとり大地をゆく」(1953年)と、北炭の記録映画「黒い炎」(58年)を見ました。
 前者は、ヘンな映画でした。前半はドキュメンタリータッチで進み、戦前の日本がどれほどまずしかったか知ってあらためて驚かされるのですが、おしまいのほうは取って付けたような左翼映画になっています。
 後者は、勉強になりました。石炭の掘り方とか。

 というわけで、今週で終わる展覧会のうちthis is galleryにまだ行ってません。


 11月22日(金)
 札幌学院大写真部学外展札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
 作品にバラエティーがあって、かなりたのしめる写真展です。
 いまごろ「ブレ、ボケ写真展」出品のため東京にいるかもしれない畠平諭さんは、今回「no concepts」という連作を、ひもで結わえて壁に並べています。
 腕と下半身のないマネキンの写った鏡の表面に傷や汚れをつけて、それをモノクロで撮影したようです。
 ただし、その傷や汚れが、鏡についているのか、あるいは直接フィルムやプリントについているのかは、ちょっと見ただけでは判断がつきません。見る人の視野を限定する、風変わりな作品だといえます。
 坂本昂輔さん「エキノックス」は、薔薇の花をモティーフにした、シンプルで静謐な美しさをたたえた連作。画面を2分の1に上下、あるいは左右で分割し、ネガとポジの関係のような、白と黒が反転した画像を焼き付けています。しかし、よく見ると、白いほうと黒いほうで画像がかならずしも一致しなかったりします。見せ方にこだわった作品です。
 岡村修一さん「LOVE LETTER」は、よくある女の子写真といえなくもないのですが、極端に薄い焼きで独特の情感を出しているのが特徴です。髪を洗ったばかりのような彼女のしぐさもステキです。
 大館徳子さんは、1枚ものを数点。「つづきゆく日々」は、いま別れたばかりで、はなればなれになっていこうとしているとおぼしきふたりの下半身をとらえた、いささか演劇的なシーンの1枚ですが、森の中のあちこちに零れ落ちるこもれ日が美しいです。いずれも、若くなければ撮れない写真だと思います。
 1年生では、川原ゆりさんの、木々の影に焦点を当てた「のびる朝」が、独特の味を出していました。

 鳥居純子作陶展=コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 この展覧会は、ちょっと驚きでした。
 たしかに、粉引ふうの皿とか、信楽っぽい自然釉の器などがあって、陶芸展にはまちがいないのですが、メーンは陶の人形なのです。
 どれも、巨大なドレスをつけた女性の、高さ数十センチの立像です。
 といって、一般的なフランス人形とは異なります。ドレスには帯のようなものがうねうねと附着しているのです。その帯は、薔薇の花にも変身したり、ドレスの上で波打ったりしてます。しかし、なぜか不自然さはありません。むしろ、女性のたかぶった感情が、自然にドレスの形となってあらわれたかのようです。
 照明を暗めにしたり、小物の器やつるで作った器などをそこここに配し、会場全体を見せるわざも心得ていて、なかなか感服しました。

 札幌市資料館(大通西13)では、ファイバーアート(染織)に携わる作家が5人もそろいました。
 (以下つづく)


 11月21日(木)
 画家の櫻井マチ子さんが絵画教室を新規開設するので、告知します。
 「初心者歓迎」とのことです。
 たいへん個性的な絵を描く人です。新道展会員です。
 どんな絵を描くかは、過去の「つれづれ日録」に絵の画像がありますので、ごらんください。
 昨年12月の個展はこちら
 ことし2月の個展はこちら(ご本人も登場)
 ことし10月の個展はこちら
 くわしくは、
郵便番号007・0868 東区伏古8条5丁目3の3の802 ロジメント伏古
まで。

 「アートな本棚」に「逸脱する絵画」を追加。リンク集「道内のアーティスト」に帯広の人形作家・伽井丹彌さんのサイト「伽藍」を追加し、リンク集のトップページに掲載しているサイトを一部入れ替えました。
 また、18日に書いた香取正人油絵個展について、長文のため、「展覧会の紹介」に移設しました。


 11月20日(水)
 千窯 高橋千弥作陶展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 案内状を見たら備前かと思いましたが、鉄釉のあめ色でした。
 それよりも多かったのは、瑠璃色の器。深みがあって、しかしステンドグラスのような派手さはなく、おちついています。
 生活のうつわのほか、茶碗も多いです。黒っぽい釉薬は、茶映えも良さそうです。
 24日まで。

 「展覧会の紹介」に「赤穴宏展」を追加しました。
 ことし道内で開かれた絵画の個展でも、白眉といえる感動的な展覧会でした。


 11月19日(火)
 太田保子油彩画展 -on the wind-スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 うーん、ふしぎな絵です。
 ほとんどモティーフが霧の向こうにとけかかっているような、かといって抽象でもない、ぼわーんとした絵です。
 色面と、オイルチョークで書いたみたいな線とだけがのこりそうで、猫や人や雨がうっすら見える世界。
 なんだか、上野憲男さん(栃木在住)とか、折登朱実さん(春陽会会員、札幌)を思い出すなー、と思ってたら、会場に折登さんがあらわれたのでした。会場には八木伸子さん(同)もいらっしゃいました。八木さんの、直接ではないけれど、お弟子さんのようです。
 それにしても、八木さん、きのうまで東京に行って、「ピカソ 天才の誕生」展を見てきて、あすまた、全道展の長老小川マリさんの102歳(!)の誕生日を祝うために上京するのだそうです。
 元気だなー。見習わなきゃなー。
 話がそれましたが、太田さんは東京在住です。24日まで。

 唐突ですが、インタビューの短いコーナー「ちょっとお話」をつくりました。
 第1回に登場していただくのは、とかち国際現代アート展「デメーテル」の裏方をつとめた小田井真美(おだい・まみ)さんです。
 これからも、あまり肩に力を入れずに、月に1度は更新していこうと思っています。


 11月18日(月)
 連休が開けて、きょうは長文です。
 23日まで開かれている展覧会をまとめて紹介します。

 小林和子個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)B室
 「刻のゆくえ」など、複数の人物を組み合わせた油彩が中心。重い色調です。
 札幌在住。

 佐々木治油絵個展=同C室
 全道展会友ですので、独特の群像図には見覚えがあります。
 ことしの出品作「暗い空」は、手前に二人、比較的明るく着彩された人物を配し、背景に十数人を、いくらか小さめに、抑えた色調で描いています。
 色彩は、水色や黄緑などいろいろな色がちりばめられているのですが、どうもみな、表情が沈鬱です。“現代の群像”をかこうとすると、やはりこうなってしまうんでしょうか。
 個人的には、見慣れたそれら群像画よりも、風景を題材にした小品のほうが好きです。
 赤い鉄橋のある川の風景や、巨木の根もとに小さな家のある「大きな木」、古い木造の建物を存在感たっぷりに描写した「留萌造船所」など、微妙に震える線が、作者の気持ちを反映しているかのようです。
 ほか、ヒマワリなど、静物画もたくさんありました。
 佐々木さんは滝川在住。全道展で受賞したのが1971、72年ですから、会友に推薦されたのは73年ごろだと思いますが、図録には記載がありません ⇒訂正。会友推薦は89年でした

 第15回 水曜会サークル展=同D、E室
 池上啓一さん(道展会員、札幌)の指導する油彩教室展。

 大場良子写真展=同F室
 小樽市朝里、夕張などで撮られた何気ない風景写真。すべてモノクローム、キャビネほどの大きさで、一種の心象風景といえそうです。
 2枚ないし4枚が組みになって額装されているものもたくさんあります。
 風景のほかに、自分の足元や空を撮った写真もまじっています。おなじ立ち位置で、カメラを上に向けたり下に向けたりしているようです。

 本間弘子 リトグラフ・じゃぱんめいど展=同G室
 イラストのような版画展。
 たがみよしひさじゃないけど、大きな絵と小さな絵で画風が異なります。小さいほうがマンガふうにデフォルメされ、大きいほうは、繊細な線で描かれた若者たちがいきいきとした表情で描かれています。

 なお、A室の「香取正人油絵個展」は「展覧会の紹介」に移設しました。

 閉塞形状展=ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
 「たぴお」では1年にかなりの回数、6−15人程度のグループ展がひらかれていますが、今回は見ごたえのあるほうだと思います。
 まず三神恵爾さん。ボックス型の作品3点を出しています。
 「幼年期の罪 2002年」は、中に土の詰まった靴が戦車のおもちゃを踏みつぶしています。
 「支えられしもの−メランコリア− 2002年」は、左半分に、星条旗をまきつけたテディベアがうなだれ、右半分には小さなガラクタのぎっしり入ったクリスマスのおもちゃ袋が置かれています。テディベアは右手に、紐のついた小さな分銅のようなものをぶらさげています。
 背面には、オシップ マンデリショタームと、漱石「それから」の引用文が書かれた紙が貼られています。
 「なんにも知らないアメリカのアリスは 2002年」は、アーチ型の空間の中で、燃えさかる炎の図像が大きくコラージュされ、手前に、後向きの少女の絵が小さく立っています。
 これらの作品の意味するところは、正確にはわかりません。ただ、連続テロから1年以上が経過し、米国による世界支配という現状にまで視線を向けている点では、崩壊するビルの絵をただ引用しているような作品にくらべると、意義のある作品であると思います。
 また、三神さんのこれまでの作品から見て、これらのオブジェは宗教的な意味合いを持っているように感じられます。アリスが見ている大きな炎は、家イコール世界を焼き尽くす「サクリファイス」(タルコフスキー監督)の炎に通じるものがあると思います。つまり、黙示録的な業火なのです。

 林教司さんもオブジェ3点を出品。
 いちばん手が込んでいるのは「悲しき玩具2002」で、ポケット酒瓶、天秤の部品、中にトウガラシが入ったランプの部品、磔のような人物彫像などからなっています。リボルバーの銃身の一部みたいのもあり、小さく「ロシアンルーレット」と書かれた紙が貼ってありますが、林さん、こんなのどこで入手したの?
 ほかに、白い箱と鍵、音叉からなる「終章」、石膏取りした手と古い電話機の一部を組み合わせた「夢みたものは」の2点です。

 古い物を組み合わせたボックス型オブジェは、仙台の上條千裕さんも出しています。題して「ひとひの恵み」。時計、鉱石、ガラス、砂、セミの抜け殻などが入った箱は、懐かしい感じ。コーネルというよりは、宮澤賢治でしょうか。
 神谷ふじ子さん「遺稿」は、アクリルの中に緑青の浮いた金属板をはめ込んだ、いつもながらの力作。
 千葉愛子さん「不思議の国のアリス」「雪の女王」は、9月のグループ展「視点集」の時とおなじく、シャドウボックスの技法を使った作品。でも、型紙が箱からはみ出てきたり、茶色の単色だけが使われているところがユニークで、或る種の過剰さがあると思いました。
 山岸誠二さん「あいろこいろBOX」は、すりガラスのような乳白色の箱で、赤や青の光がぼんやりと透けて見えます。明滅はしないようです。なんの役に立つのか分からないけど、なんだか不思議な立体。
 横山隆さん「マリーの牢獄」は、灰色に塗り固めた段ボールのオブジェでした。
 ほかに、川村雅之、後藤顕、杉田光江、竹田博、福原多賀士、藤川弘毅、吉住ヒロユキの各氏が名前を連ねていましたが、杉田さんの作品が見当たりませんでした。

 以上、23日まで。

メゾンプラハの会場風景 「MAISON PRAHA」-メゾンプラハ- -斯波太郎 三上智子 presents-Free Space PRAHA(南15西17)
 プラハの中に、ルームシェアして暮らしているじぶんたちの部屋を再現したという設定で、おこなわれている写真展。中央の白いテーブルが中仕切りで、奥が斯波さん、手前側が三上さんのスペース。三上さん側には、DJセットがあって、レコードもいっぱい置いてありました。
 写真はスナップが多く、こういう発表形式のためか、カジュアルに見えます。
 なお、右側の白い柱にべたべたと貼ってあるのは、来訪者のポラロイド写真で、akaさんの写真もありましたよ。
 24日まで。

 中川久雄の世界 光と風・油絵個展=大通公園ビル(大通西6)
 15号くらいの、ほぼ同じ大きさの油絵26点。
 現場で描いたとおぼしき、勢いのあるタッチが特徴。水田に陽光が反射してきらめく「夕照映して」、サイロの向こう側に日が沈む様子を描く「童子に還る日」といった、ドラマティックな光景がお好きなようです。あるいは、早春の大地を題材にした「萌える荒地」「累塁の緑」など、お住まいの石狩管内当別町の自然を満喫しているように見受けられました。
 会場は、北大通側の、ヤクルトの看板のあるビルのロビーです。
 12月30日まで。

 ほかに、吉岡正春 ステンドグラス作品展=札幌全日空ホテル、市江多樹子個展、清水美幸・廣田衣里二人展=以上大同ギャラリー、KIK撮影会入賞作品展、写真甲子園2002作品展=以上富士フォトサロン、一期一会作陶展 吉田鈴恵・岡崎榮子・木田千草=札幌後楽園ホテルを見ました。


 11月15日(金)
 加藤、斎藤、原田写真展−三人展−Gallery Strawberrys(中央区南2西1、RISEビル3階)
 北大写真部の原田玄輝さん、斎藤市輔さん、北星学園大の加藤D輔さんの、若手(そりゃ学生だから)バリバリ3氏による写真展。
 作品はすべてモノクロ。いいですよー。
 加藤さんは、広場の夜景に「迷路」という題をつけるセンスがすごい。斎藤さんも、夜の明かりを、情感を込めて、しかしクールに切り取ってる。
 すごくまとまっているのが原田さん。どの風景も無人で、切々とした孤独感がせまってきます。シラカバ林などを撮っても、よくあるネイチャーフォトとはずいぶんおもむきがちがってくるもんですね。また、卵のシリーズもおもしろい。もうだれかやってそうな気がしないでもないけど。おそろしくシンプルな写真です。
 18日まで。

 アートスペース201(南2西1、山口中央ビル)は、5部屋中4部屋が、鈴木啓子さんの写真教室の作品展。
 もう1部屋は、札幌大学美術部OB・OG展「第4回ななかまどの会美術展」
 ギャラリーミヤシタでおなじみ伊賀信さんの半立体から、子供の絵まで、すごく幅広い展覧会でした。

 きょうも全段。
 職場では「全段男」とよばれている。
 ぜんぜんうれしくない。
 8段くらいの狭い面を担当して、さくっと帰りたい。
 おまけに、右の奥歯近くの歯茎が急に腫れ出した。
 あわてて15年ぶりに歯医者に行ったら
「38、9度の熱がある人とおなじように安静にしていてください」
と言われた。
 写真展を見に行ったり、仕事してる場合じゃないのだ。
 というわけで、とりあえず2日間、更新しません。
 メールの返事なども滞ると思いますが、かんべんしてください。

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