2002年2月前半
2月14日(木)
ああ、眠い。
昨晩、ソルトレークシティ五輪のジャンプ個人ラージヒルのテレビ中継を午前3時過ぎまで見ていたせいです。
ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館)で開かれている嶋田観展は、1980年代の旧作の展示です。
といっても、筆者には初めてなので、けっこう面白かったですけれど。
ギャラリー主宰の竹田さんは
「嶋田さんのストライプの原点なんだ」
なんて、言ってました。
正面に、細かい刷毛めのような線の入った長さ10メートルもの巻き紙が置かれています。大工さんの使う墨壺で引いた線とのことです。たいへんな労作です。
近くに積み上げられた風景写真のプリントは3000枚あるそうです。
どこかステラ(米の抽象画家)の初期を思わせる禁欲的な画面の美しさよりも、行為の積み重ねのほうに関心が行ってしまいますね。
嶋田さんは小樽在住。16日まで。
昨夜NHK総合テレビで放送された「地球に乾杯」は、中国を代表する現代美術作家蔡国強さんが、昨年上海で開かれたAPEC首脳会議にあわせ、花火によるパフォーマンスを行うまでの記録でした。
大都市・上海の川と空を彩る花火の量のすごいこと! 日本の花火大会なんて、児戯にひとしいものにすら感じられてくるほどです。高さ400メートルを超すタワーや、古いビル群にも大量の火薬が仕掛けられ、空を焦がしていました。
蔡国強さんの強みは、このときも地元政府から横槍が入ったんですけれど、そういう介入とか制約にぜんぜんメゲないことなんですよね。どんどん柔軟に方針を変えていく。横浜トリエンナーレでもきっと本物の花火を使いたかったんだろうけど、電飾を使っていたし、イスタンブールビエンナーレでは予算がないのでシンプルなビデオ作品を出したり、ほんとに切り替えの速い人です。
夏の帯広のデメーテルが楽しみです。ね、オダイさん、花火みたいなこと、やるんでしょ?
2月13日(水)
ありゃ、2日もサボッてたんですね。失礼しました。
この間、アートな本棚をひさしぶりに更新し、北山寛明展の「展覧会の紹介」を書きました。
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)で川本ヤスヒロ油彩画小品展が開かれているので行ってきました。
全道展などで見る、骸骨をモティーフにした重量級の大作とは違って、風景画、猫の肖像(?)画、さらには、魚を模した陶板などが並んで、もう少し気楽に見られる展覧会であります。12号が2点、残り約30点はほとんどサムホール、8号程度。
ただねー、色彩感覚とかはやっぱり川本さんだよねー。たんなる写実的な絵ではない。
たとえば「エッフェル塔」とかトレドとか、空が黄色いんだよね。よく見ると、水色の上に黄色を塗ったことが分かる。小品といえど、いろいろトライしているんだなー。緑や赤を塗った顔も、不思議と違和感ないし。
筆者が気に入ったのは「トレドにて」。6号ながら、奥行きのある構図と、すごくたくさんの色を使いながらもよくまとまっているのが好みです。よく見ると、木々に水色を使ってたりして。それでもちゃんとまとまっているんです。
同じギャラリーでは、濱登武個展も開かれていました。
ナント、70点ン近い油彩すべてが自画像!
これはねー、見るほう、圧迫感ありますよ。なんだか視線に囲まれているみたいで。作者が画廊にいなくてほっとしたりして。
サルトルやマルクスでも読んでいそうな長髪の学生ふう、つなぎを着た労働者ふう、裸電球のしたで笑っている図、真剣な表情、写実的なタッチ、激しいタッチ…と、さすがにいろんな自画像があります。年号が入っているのでいちばん古いのは1982年。うーん、この人はいったいどういう人なんでしょう。
いずれも17日まで。
今晩11時からNHK総合テレビ「地球に乾杯」で、蔡国強さんが特集されます。
現代美術ファンは要チェック!
けさは4時半に目が醒めてしまい、雑用をしながらテレビを見ていました。清水選手、惜しかったですね。0・03秒差ですからね。勝負の世界は厳しい。
あー、でも、冬季オリンピックも最大の山場は終わっちゃったような感じだなあ。がんばってるみなさんには失礼ですけど。
2月10日(日)
9日の続き。
9日で終わった展覧会、もうひとつありました。
CAI(中央区北1西28)で開かれているAGAINST INTERPRETATION The Collectors:Part1です。もっとも、Part2が、12日から20日まで開かれますが(18日休み)。
札幌市内のコレクターから数点を借りて展覧会にしています。
コレクターってあこがれますよね。でも、子供が社会人になるころ買えるようになるかもしれない…って思うくらいで。いまのところ、絵はがきと図録より高いものは、手が出ません。
たまたま会場にいらしてた女性が、Bettina Rheimsのカラー写真の被写体になっている女性の青いひとみが気になる−と話していました。筆者はオジサンなので、小さいブラジャーのほうばかり目が行ってたんですけど。
パークギャラリー(南10西3、パークホテル内)で開催中の第24回北の会展は、11日が最終日です。
北の会といっても、そういうグループがあるのではなくて、単に、鎌倉の画廊が、院展・日展・創画に所属する日本画の大家の作品を札幌で展示するということです。即売もすると思うんですが、どこにも値段が書いてないんだよなー。
そうそうたる顔ぶれなので、へたに値段を書いておくと大変なことになるからかもしれないし。
そのくせ会場には係の人がだれもいないんだよなあ。無用心だなあ。1年でいちばんホテルがにぎわっている時期だというのに。
作家は24人。小品を1点ずつ。なぜか福井爽人だけ版画です。
片岡球子「赤富士」、後藤純男「行く春大和」、菊川三織子「野の少女」、岩橋英遠「鶴」(売り絵なんだけど、やっぱりどこかに背筋の伸びたものが感じられるのはさすが岩橋英遠)、菊川多賀「花(ガーベラ)」(生命感ある小品。色彩も豊か)…あたりが北海道関連。ほかに中島千波、平山郁夫、斉藤博康(その節はお世話になりました)といった有名作家がずらり。
筆者がいちばんひかれたのは、池田遙郎「寥」。遠くに建物のようなものが見えるだけの風景画。寂しげです。
アートスペース201(南2西1、山口中央ビル5階)の「第15回 十九(とく)の会展」は12日まで。
石川雅敏さん(札幌。一水会会員)の指導する、中高年を中心とした油彩、水彩の集まりです。
阿部政毅さんが50号以上を3点も出品していて目を引きます。「真駒内川河畔」は、右側のポプラ並木が効果的ですが、阿部さん、こういう風景好きだなー。
長谷川良造さん「エルムの朝」は、乗馬する人がモティーフ。さわやかな風すら感じさせる、良い絵だと思います。
綿谷憲昭さん「静かな時間」も、遠くに塔のある建物が見えるほかは何の変哲もない風景ですが、筆勢が一定で、心地よいリズムが画面全体を支配しています。
道立近代美術館(北1西17)で砂田友治展を見ました。これも、そのうち「展覧会の紹介」として詳しく書きたいと思います。展覧会は3月21日までです。
この日は、ミュージアム・コンサートと称して、画家の次女の砂田真理子さんがピアノで「展覧会の絵」(ムソルグスキー作曲)を、エントランスホール(ロビー)で演奏しました。100人近くが耳を傾けました。
当HPは音楽評論のサイトではないし、しろうとですからあまり詳述しないほうがいいとは思いますが、筆者はこの曲が大好きです。理由は、異様だからです。
クラシックの名曲といわれるなかでも、この曲くらい異様な曲って、ほかにないんじゃないでしょうか。
有名な「プロムナード」の部分からして、♯が6つくらい付いていて、5拍子と6拍子を1小節ずつ繰り返すのです。
世界的に有名なピアニストでもコンサートでとちるくらいの難曲です。しかも体力がいる。ペース配分を考えずに弾いていたのでは「バーバ・ヤーガの小屋」あたりで息切れして、力強い打鍵ができなくなるのでは、と思います。
この、ピアニストには修行のような曲を、暗譜して弾ききったという力量に、敬意を表したい。そして、きっちり「キエフの大門」ではカタルシスを感じさせてくれました。感動しました。
3月にもう一度あるそうなので、興味のある方はどうぞ。
なお、この曲は、ラベルが管弦楽用に編曲したものが有名です。ほかに、やや田舎くさいストコフスキーによる管弦楽バージョンもあります。ギタリストの山下和仁が全曲ソロという無謀な(しかし立派な)演奏もしています。筆者がいちばん好きなのは、70年代英国のロックトリオ、エマーソン・レイク&パーマーの演奏です。全曲ではありませんが、ロックとクラシックを融合させた史上最高の例だと思います。
イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)では為岡進展。
為岡さんは、北海道開拓記念館で写真を撮る仕事をしています。今回の個展は、昆虫標本や、ミシン、根付など昔懐かしい道具、陶器などの一部を拡大して撮った作品を並べています。ちょっとクイズみたいな写真展ですが、古いものの木や鉄の質感が、誇張のない確かな階調でとらえられています。
それにしても、さいきんの道具はプラスチックとかが多いからナー。こういう、使い込むほど味の出るものってないだろうなあ。ぺこぺこだもんなあ。
19日まで。
プラハのロッパコ展に行けなかった。ごめん。
この日の交通費は計2650円! もちろん1DAYカード(1000円)を使ったので、1650円得しました。
2月9日(土)
ああ、寒かったあ。
さっき、さっぽろ雪まつり会場で開かれた"Snow Project 2002"から帰ってきたところです。
大通公園の7丁目にあるHBC広場の大雪像にビデオアートを投影するプロジェクトもことしで5回目となりました。
これまでは、昨春まで札幌に住んでいた古幡靖さんとあと1、2人の作品だけだったのですが、なんと今回は古幡さんプラス5人、スペシャルゲスト端聡さんというニギヤカさです。
お客さんも例年より多いように感じました。
さて、古幡さんは"To be colonized, To be loved"
colonizeは「植民地にする」という意味ですが、このタイトルはどんな意味があるんでしょうか。
のんびりした音楽に乗せて、熱帯ふうの植物がさまざまな角度から写されます。どうやら、どこかの植物園の大きな温室で撮影されたようです。
暖かな雰囲気が、真冬の雪像とコントラストをなしているのが面白いです。
また、欧州にとって、熱帯植物のかもしだすエキゾチシズムが、南方の植民地とダブって見えるのに対し、日本の最初の植民地がこの北海道の地であったという、対照的な事情が、作品から透けて見えます。
あとは概要だけ。
アーティスト・イン・レジデンスで札幌に滞在していたオランダのマリアン・ラパー"Dansende Jorgen"は、校庭のようなところで踊る子供たちの列をスローモーションでとらえた短い作品で、CAIでの昨年11月の個展でも発表されたもの。
上遠野敏"Four Seasons Sapporo"は、昨春のさっぽろ美術展で一部上映されたもの。雪の塊が自然に崩れていく様子と、森の映像。
小池晋"DRUG 2"は新作です。CGを活用した、ノリの良い映像。
吉川貫一「近未来パラダイス」は、例によってウサギの耳形帽子を被った作者が、上半身裸でプロレスをしたり、「マイウエイ」の音楽に乗せてひたすら道路を走ったりする映像。どこまで続くお笑い路線。
冨田哲司"TRACING"。札幌高専の、上遠野さんの生徒さんらしいです。画面中央に映る男性はほとんど動かないのに、バックの公園などがどんどん速度を増して後退していくというもの。アイデアは良い。
最後に、昨年9月に岩見沢の「北方圏音楽祭」で行われた端聡さん監督の「BOLERO U」のビデオが上映されましたが、これはもともと雪像投影用ではないため、
見に来ていたご本人が
「あんまり見やすくないなあ」
とこぼしておりました。
予定が変わり、10日が最終上映です。11日は上映しませんので注意!
きょう見たのは、あす10日で会期の終わる展覧会が大半です。
まず、さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)の北山寛明展。
日本画です。なかなかの力作ゆえ「展覧会の紹介」にまわします。
スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、第92回どんぐり会展。学生全道展でも例年活躍している北海高校美術部の年1度の作品展です。
ことしも、穏当な写実をぶっ飛ばし、エネルギーに満ちた油彩の大作が並んでいます。最大は、なんと200号です。
その200号をかいた陰山晃「出会い」(50号)。どこか熱帯か、あるいはディズニーランドみたいな緑濃い川で、舟に乗った女と、岸で待つ男が描かれています。画面右にはまるい文様が並ぶ欄干のある高い橋が見えます。いったいなんなんだ!?
清野有香「鼓動」(S110号)は、存在感ある大きな犬がモティーフ。谷愛子「皆無」は、混沌とした世界を描いた抽象画です。
稲葉有哉「煌めき」(S110号)は画面いっぱいにまばゆい黄色のヒマワリが躍ります。伊藤明日香「焔(ほむら)」(S110号)は、正面を向いた大きな女性の顔が迫力たっぷりです。こういうのって、若いうちしかかけないんだよなあ。いいなあ、と思います。
長谷川華菜「煉瓦」(S110号)は、遠近法などそっちのけで描いた倉庫群が見る者に迫ります。
一方、寺尾佳広「佳曲」(50号)は、林の中におかれたピアノがモティーフ。熱気を帯びた絵のなかで、ささやかさが異彩を放っています。
その他の出品者は次の通り。
吉田一海、山瀬甲人、甲斐聖子、渡邊加奈子、菊池宏之、室崎暢人、宮内ちひろ、中村奈緒美、安藤大輔、西脇佑美子、中田裕克、池田裕太、小野央愛、宮澤祐輔、稲實愛子、深沢安奈
北星学園大写真部学外展を、札幌市写真ライブラリー(北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)で見ました。
昨年の石川ひとさんのような傑出した存在は見受けられませんでしたが、けっこうみんな、若者じゃなきゃ撮れない、生き生きとした写真を撮っています。
加藤D輔「GOD DON`T MAKE GIRLS」は、大写しの顔が、その人の存在そのものを主張しているようですし、波打ち際を撮った連作"WHAT
I WOULD SAY TO YOU"は、適度に感傷的です。
おとなり、コニカフォトサロンでは、留萌市主催 日本一の夕陽コンテスト。
第一部は「国内で撮影した夕陽・夕景」、第二部は「留萌市内で撮影した名所・イベント」となっています。
第一部のグランプリ、坂本禎一「夕日に乗って」は、釧路・幣舞橋で撮影しながら彫刻をあえて入れなかったのが勝因でしょうね。同じ車種の自動車がずらりと並んで西日を反射する光景をとらえた中保広「黄昏」は、異様さで目を引きます。
留萌は、筆者が駆け出しのころ(1988〜91年)に住んでいたので懐かしいのです。でも、風力発電所ができたり、フェリーが入港したり、夏や冬のイベントが変わったりと、さすがに変化しているようです。
グランプリ、飛内達也「港・けあらしの朝」は、冬の早朝らしい緊張感みなぎる一枚。
筆者がふしぎだったのは、森井弘二「水中花」です。留萌港の海面を真っ赤に反射させるほどに、花火が満開です。でも、筆者も、じつは留萌海上保安部の建物の屋上から花火大会を狙ったことがあったのですが、こんなに海面が赤くなるタイミングというのが想像できません。長時間露光だったら花火の光跡がきれいに写らないだろうし…。どうやって撮ったのかなあ。
あれっ、これはしばらく先までやっているはずです。
ギャラリーユリイカ(中央区南3西1、和田ビル2階)では、第1回春を待つ5人展というのが開かれていまして、大上和則さんの絵に久しぶりに合いました。
大上さんは98年ごろ、洋菓子屋の2階を改造した「かのや茶屋」というギャラリーで個展を開いておりまして、なんだか妙な絵が多かったように記憶しています。若いかたでした。
今回も、一面の花模様が、陶芸の三島のようにびっしりと繰り返される「空満開」、抽象的な波模様の間にぽつんと一人だけごく小さな人物の影をかきいれた、軸装水彩画「母」などが出品されていましたが、”へんちくりん度”は若干下がったかもしれません。
ほかに、飯利薫さんが「は」「る」など変わった題名の4点を出品。枯葉などを入れた手漉き紙に、木の枝などを組み合わせたユニークな作品でした。
コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)の「きさらぎ展」は、なかなかユニークな書展でした。
中島真知子さん、神山美子さん、久野美津子さんの3人が、主に隷書の少字数書を書いているのですが、アクリルを使った額装をしていたり、どれも現代的でしゃれているのです。洋間に飾っていても似合いそう。
もちろん、ずっしりとした重みはないのですが、筆や墨が日常から消えつつある今日、現代生活にマッチした書の試みとして高く評価したいと思いました。
すでに大変な分量になってしまったので、きょう9日で終わった展覧会について書いた上で一区切りつけたいと思います。
現展第31回北海道支部展。札幌時計台ギャラリー(北1西3)。
全国公募展「現代美術家協会展」の支部展で、毎年1月か2月に開かれています。道内作家のほか、首都圏から賛助出品があるのが特徴。ことしは、道内19人、賛助出品14人です。
村上豊さん(後志管内余市町)「やすらぎ」「やすらぎの時」。海外の街並みに取材した、いつもの作風。つまり、赤や緑、青といった原色の色斑を全面に散らしています。
阿部国良さん(旭川市)「記憶の箱02」。茶を主に、色彩の透明感が引き立つ抽象画。
亀島ヒサ子さん(江別市)「赤い大地」は、皮革を使った絵画。
近藤弘毅さん(檜山管内今金町)「北の心象−bX」。洞爺湖らしき風景と裸婦をデフォルメした画面を、自由に走る曲線。線に囲まれた範囲を、さまざまな階調の青が埋め尽くします。昨年は一部にピンクが使われていましたが、やはり深い青が近藤さんには似合うようです。
細川久美子さん(札幌市)「飛翔−絆」は、和紙ちぎり絵を生かした美しい抽象画。
黒崎和男さん(室蘭市)「崖岸A」「崖岸B」は、ごつごつした断崖絶壁に正面から取り組んでいます。
工藤英雄さん(小樽市)は「鉄くず」と題した大作を2点。片方は、水色がかった灰色が、もう片方は鉄錆の茶色が主です。後者の絵は、昨年道展に出して会友に推挙された作品のようです。
それにしても思ったのですが、工藤さんの絵を見て、廃棄物問題とか、鉄くずが象徴する現代文明とかを考える人と、あたかも抽象画のように繰り返される線のリズムに目が行く人とが、いるんだろうなあ。
2月8日(金)
きのうの「書くことなし」は、早とちりでした。
後志管内岩内町の木田金次郎美術館から広報誌「群暉(くき)」第26号が届きました。
どうもありがとうございます。
新年度の展示計画が書いてあります。常設展以外に、次の展覧会が予定されているそうです。
ことしこそは、後志方面に行きたいんですけどねえ。
また、三神恵爾さんから、「シネマレストラン」9号もご恵送いただきました。お礼申し上げます。
さて、きょうはギャラリー大通美術館(中央区大通西5大五ビル)に行きました。
まず、清水淑江木版画個展です。
どこか女体や脚をを思わせる曲線がひそかにエロティシズムを漂わせます。全面ではなく、一部に明るい色面があるのが、効果的です。
19点すべてに「Heroine-Overture-」という題名がついています。題の下に「ミクストメディア」という表記があるので、木版を中心に、ほかの技法も採用したということかもしれません。
また、そういう題がついていながら、エディションなどを書き入れる部分に、鉛筆で別の題がしるされていることがあるのが面白い。
たとえば「ウバユリ」と記された一枚。トルソのような形の上に、花がちりばめられ、これまたちょっとエロティックです。
同じ会場では、「かおり絵画グループ展」という展覧会も開かれていました。
札幌の画家、酒井芳元さんが教えている教室の展覧会です。
水彩の風景画が中心で、一部油彩もあります。みなさん、なかなかお上手で、趣味でこれだけかけたら楽しいだろうなあ、と思います。中西京子さんの「美瑛の風景」など、逆光気味の並木の描写が絶妙ですし、大野信子さんの描く、木々に囲まれた家は、「こういう家に住みたいなあ」と思わせるものがあります。
詳細はこちらのHPをごらんください。
酒井さん本人の油彩、水彩も展示されています。こちらはホントにプロの絵です。
淡彩ふうの風景画。とくに紫の使い方が絶妙です。
また、尾川明ステンドグラス展も開かれています。
すべて小品です。特徴として、アメジストなどきれいな鉱石を効果的に用いた作品が多いこと。ガラスをたっぷり使うのではなく、むしろ骨組み、アクセントのように使った名刺立てや置物が新鮮に感じられます。
尾川さんもHPがあります。こちらをごらんください。
いずれも10日まで。
HTB(北海道テレビ)夜の「鈴井の巣」で、「雅楽戦隊ホワイトストーンズ 愛の戦士たち」が始まりました。南郷、本郷、北郷の3兄弟が白石区の平和を守るために悪の秘密組織と戦う、という続き物。ヒーローもののパロディーとしてはなかなか手の込んだつくりです。それにしてもローカル。
もともと「ホワイトストーンズ」は、同局の人気番組「水曜どうでしょう」の初期に放送されたもので、一部のファンから根強い再放送の要請がなされていました。今回のは(たぶん)新たに撮りなおしたものでしょう。脚本・出演は鈴井貴之。北海道のCM王、大泉洋らが出演しています。
たぶんあすの更新は大量になります。
2月7日(木)
朝9時20分から10時間半近く会社にいるので書くことなしです。
2月6日(水)
久しぶりに、埼玉の古幡靖さんからメールがとどきました。
古幡さんは昨春まで札幌に住み、芸術の森美術館で開かれた「北の創造者たち」展などで活発に作品の発表をしていました。
なんと、ことしも、さっぽろ雪まつり(5〜11日)の会場で、大雪像への映像作品の投影をやっているそうなのです。
会場は、大通公園7丁目のHBC広場。時間は、午後10時から11時までです。
ことしは、古幡さんのほか、札幌高専の上遠野敏さん、オランダ出身でアーティスト・イン・レジデンスのため札幌に滞在していたマリアン・ラパーさん、札幌の現代美術作家・端聡さん、昨年も発表した小池晋さんら、計7人が参加するということです。
ただし、雪像修復のため、8日と10日は休みとのこと。CAIに聞いたら日程などくわしいことは分かるそうです。
昨年の映像作品投影のようすについてはこちらに書いてあります。
ここまで書いてきて気が付いたのですが、HBC広場の大雪像は、HBCのホームページで24時間、ライブカメラで見ることができるんですよ。
ということは、インターネットを通して、古幡さんたちの作品が鑑賞できるかもしれません。
もちろん、寒さの中震えながら見ることに意義がありますから、お近くの方はぜひ会場へ。まあ、昨年に比べると、ことしは相当暖かいし、いい機会かもしれません。
新聞などでもうご存知と思いますが、日本の具象彫刻を代表する一人、舟越保武さんが亡くなりました。89歳でした。
舟越さんは1912年岩手県生まれ。東京美術学校(現・東京芸大)卒。学校では、終生のライバルにして親友の佐藤忠良さん(札幌二中=現・札幌西高=卒)と同期でした。39年には、忠良さん、本郷新さんらと、新制作派協会彫刻部の旗揚げに参加します。
戦後はカトリックの洗礼を受け、宗教的な深みのある、重厚、あるいは優美な具象彫刻作品を多数残しました。
ご夫人が、釧路出身の歌人です。ちなみに、昨年、道立近代美術館で開かれた「永遠へのまなざし」展に木彫作品が出品されていた舟越桂さんはご子息です。
道新には、釧路市生涯学習センター(まなぼっと)の「杏」のこと、中原悌二郎賞の受賞作となった「原の城」が旭川市彫刻美術館に常設展示されていることなどが書いてありましたが、一般の道民にとってもっともなじみ深い舟越さんの作品は、なんといっても、釧路・幣舞橋にある「道東の四季・春」でしょう。これを含む4つの人物彫刻によって幣舞橋は道内を代表する名橋といわれるようになったのです。
札幌市民が見られる舟越作品は、筆者の勤めている北海道新聞社の1階ロビーにある「シオン」です。理想化された女性の曲線が美しい作品です。
舟越さんは1982年に「巨岩と花びら」という画文集(現在はちくま文庫)を出し、日本エッセイストクラブ賞を受けています。
表題になっている文章は、短いながら人の心を打ちます。
山梨に山女魚(やまめ)釣りに行き、山あいの巨大な岩のそばで休んでいるとき、山桜の花びらがふと飛んできて、去っていったという情景を描いているだけなのですが、何万年もここにある岩に比べると自分の存在などこの花びらのようにはかない、という無常観が淡々と書きつづられているのです。
その後、舟越さんは87年に病に倒れて半身不随となり、それでも左手だけで作った首を新制作展に出品し続けていました。
その様子をテレビでみたことがあります。自由の利かない左手で実にぎこちなく髪や鼻をつくっていくのですが、どうしたものか、そうしてできた作品になんともいえない深みがあるのです。倒れてからの作品の方が良いと言った評論家もあったほどです。
70年来の親友を失った佐藤忠良さんの悲しみはいかばかりかと思います。筆者ごときが心配することでもないのかもしれませんが。
ご冥福をお祈りします。
2月5日(火)
まずきのうの訂正。
日本航空写真家協会展(富士フォトサロン札幌=中央区北3西4)は6日までの開催です。すいませんでした。
それと、Free Space PRAHA(南15西17)のリンクがきちんとはられていませんでした。リンク集に追加しておきます。さいきん、リンク集は拡充していますので、お時間に余裕のある方はぜひお立ち寄りください。
ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)で平松和芳展が開かれています。
1973年から現在にいたる平面オブジェ作品約20点と、74年前後のシルクスクリーン作品14点が並んでいます。
で、このシルクスクリーンがなかなかいいんですよ。
「マタドール」なんて、闘牛士のシルエットのバックに、芹沢調の民芸ふうの模様が妙にマッチングしているのです。
「アンダルシアの夜」は、色調の深い抽象作品。
オブジェは、平松さんお得意の鉛を使ったものなどがありました。
それにしても、どうして平松さんは鉛でハートを作るんでしょうか。冷たい素材と熱いモティーフ。「オズの魔法使い」を思い出しちゃったりして。あれはブリキだったっけ。
2月4日(月)
きのうの続き。
あと数日で閉店となるBig Off札幌店(中央区南1西3)で、絵画セールをやっています。たしかに、花をかいた油彩小品のすごい投げ売りもあるのですが、大半は普通の価格で普通に油絵を販売しています。筆者の知らない画家の多い中、佐藤武さんと真柄修一さんの小品が2、3点ずつありました。
Free Space PRAHA(南15西17)で土日に継続中の±0Cafe。紹介は昨年11月に書きましたが、隣接した空きスペースで、貸しギャラリーが始まりました。
といっても、壁を区切って貸すシステム。いちばん狭い、およそ30平方センチの壁は、なんと8日間で100円!
まーねー、ここでちっちゃな絵を1点だけ飾っても、見に来る人はけっして多くないかもしれないけど、それにしても安いよねー。
古書ザリガニヤ(大通西12)では、森雅之展が開かれています。
森さんは札幌在住の漫画家。ほんとにほのぼのとした漫画をかく人で、道新の新年特集でも何度か原稿をお願いしたことがありました。今回は、冬の都会で、一角だけ雪の解けた地面で遊ぶ兄妹などの原画が展示されています。
15日まで。
富士フォトサロン札幌(北3西4)では、日本航空写真家協会展が開かれています。
曇天に鈍く光る戦闘機や、ふんわり空に浮かぶ気球は見ていてきれいなのですが、スカイダイビングの写真がけっこう多く、高所恐怖症の人にはツライかもしれません。
6日まで。
2月3日(日)
節分。
この半月ほど、穏やかな天候が続いています。
きょうも道路の雪がかなりとけていました。
午後2時から、世界凹み図鑑完成記念論文発表会なる催しが、Free Space PRAHA(中央区南15西17)で開かれました。
と書くと、たいへん硬そうな集まりのように思えますが、じつは、札幌在住の現代美術作家、谷口顕一郎さん(1976年生まれ。みんな「けんちゃん」と呼ぶ)によるイベントであります。
彼は、ギャラリーなどの壁の漆喰の剥がれなどに着目し、そのかたちをトレースしたものを黄色いプラスチック板で表すという作業を続けてきています。昨年は、世界各国に旅した友人や職場の上司などからあちこちの建物などで採取した「凹み」の形を紙にうつして郵送してもらい、それを形にして、ハンブルクと東京での個展で発表しました。
いわば、その図録が「世界凹み図鑑」(資生堂の助成を受けた)であり、札幌では、その内容を、スライドとともに発表したのが、今回の発表会であります。
なにせ作品の元になっているのが、壁の凹みですから、どれも数センチの小さなもの。左の写真(図録からスキャンさせていただきました)の上の列中央は、サンクトペテルブルクのスモールヌィ修道院の壁の凹みで、10月革命の直後はレーニンの革命政権が一時置かれていたという由緒ある建物です。
また、その右となりは、アムステルダムの「飾り窓」で採取したもので(そういうところで日本人が壁をこすりつけているようすを想像するとなんだかおかしいけど)、なんだか淫靡な形に見えなくもありません。
けんちゃんは当初、壁の凹みに、人為的なものではない、自然な力強さを見出したようです。しかし、各国の凹みを収集しているうちに、その国や都市の歴史などにも思いをいたすことになったようです。
そして、論文では、地形や、ストレスでぬけた頭髪なども「凹み」とみなせるのではないか、という、凹み概念拡張も提言されました。
立ち見も出た会場からは
「戦争の跡も採取してこそ、現代のアートではないのか」
「凹みには深さもある。平面だけでやっていくことは妥当なのか」
「なぜ凹みなのか」
等々、鋭い質問が飛んでいました。
けんちゃんはこれらの意見も柔軟に取り入れ、「凹み」作品を自らの発見の媒体として、発展させていくようです。
この発表会について、ギャラリーミヤシタ(南5西20)で話したら、オーナーの宮下さんと、いま個展を開いている梅沢みほさんは知らなかったらしく
「けんちゃん、冷たいなー」
と言っていました。
さて、開催中の梅沢みほ展。初めての個展です。
道教育大では、けんちゃんより一つ上の学年。若いです。
油彩の平面が11点。セットで「日常」というひとつの作品をなしています。
どれも、電信柱や木などのある風景画のようですが、具体的な場所の景色ではないようです。
「実際の風景ではなく、記憶のなかにあるものをかいているんです」
と梅沢さん。
黄色、オレンジ、黄緑といった明るい色彩で構成されています。
よく見ると、黒い線が縦横に走っているだけでなく、下地には相当傷がついていたり、ジェソで凹凸ができていたりで、画面に独特のリズムを与えています。
17日まで。月曜休み。
アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)は6階のみ。
沼田彩子さん、北原明日香さん、船山奈月さんという未知の3人によるグループ展「桃源郷」が、意外と面白かったです。
約70点の箱が会場の床と壁に配置された大きなインスタレーション。
箱というと、すぐにジョセフ・コーネルの、どこかノスタルジックな作品が思い浮かびますが、今回の展示ほどコーネルとほど遠い箱型アートはめずらしいんじゃないかと思います。
というのは、題名こそ桃源郷ですが、箱の中は、カイガラムシみたいな突起が内側を埋め尽くしていたり、蚕の繭みたいな形がびっしり並んでいたり、どうも虫を思わせるイメージが多いのです。
このほか、抽象画や、裸婦像が描かれている半ば平面の箱や、ミニチュアの書簡とかがたくさん入った箱もありました。しかし、総じて、自然物や印刷物のコラージュがほとんどありません。コーネルとまったく違う、ちょっと不気味で独特の(しかし、あまり統一感はない)世界になったのは、そのためかもしれません。
残る2部屋は、いわゆるアウトサイダー・アートの人と思われます。
上杉克也さんはペンによる人物画。
日當学さんは陶のオブジェ。なかなかおどろおどろしい世界をつくっています。
いずれも5日まで。
サッポロファクトリー(北2東4)に行ったら、通称煙突広場に、竹中博彦さんによる流氷のオブジェが置いてありました。
暖気ですこし溶けていましたが、存在感があります。
ただ、横のほうにあったペンギンのオブジェはなくてもいいんじゃないかという気がしました。
先ごろ亡くなられたお父さんの敏彦さんも氷のオブジェをよく制作していました。
あまり展覧会場として使われることのない、1条館の「サガティック」(北ガスショールーム)で、岩間隆新作展が開かれています。
岩間さんは札幌の木工作家。昨年の11、12月、札幌芸術の森で開かれた「北のクラフト展」にも出品していたので、ご存知の方も多いでしょう。
お盆や家具、フクロウの置物などのほかに、目を引いたのが「プライド」というゴリラの人形。高い檻の中にあっても誇りを失わなずどっしり構えています。
「林檎」は、皮の剥きかけたリンゴを模したユーモラスな小品。
「TO SPACE」は、主に美工展で発表している、抽象レリーフ。左端にはめ込まれた縦に細長い板と、中央に転がる小さな立方体が、悠久の時を感じさせます。
24日まで。
コニカプラザサッポロ(レンガ館3階)では、堀内孝写真展「第七の大陸 マダガスカル」を見ました。
アフリカ大陸の東に浮かぶマダガスカル。日本ではほとんど紹介されることのない巨大な島の自然、人々、風俗をとらえています。まあ、日本のマスコミに登場しない、というのは、戦争とか大災害がないということで、平和の裏返しなんですけどね。
名高いバオバブの木がいっぱい生えています。ヤシの一種の疎林がどこまでも広がるイサル国立公園があります。ヌシベとよばれる海岸リゾートは、じつに透き通って美しい青い海をもっています。
また、数年に一度のお祭りでたくさんの人々が大騒ぎする情景も収められています。
畑に被害を及ぼすバッタの大発生、焼き払われていく森林−といった、近年の変化にもふれています。
うわすべりの紹介にとどまらない、貴重なリポートといえそうです。
6日まで。
お隣の札幌市写真ライブラリーでは、札幌ハッセルブラッドフォトクラブ第18回写真展が開かれていました。
高画質を生かした風景写真が目立ちます。
赤坂勲さん「大樹」、窪田覚さん「十勝安政火口」など、大自然を美しい構図で見せています。太田繁さんの「十勝岳」連作は雄大な山岳写真。木村繁さん「樹影」は雪景色のシンプルさが光ります。
畑田巖さん「野付半島の日出」は、前景の流氷も、暗いながらもしっかり写っていて、露出の確かさに舌を巻きました。
この写真展を含め、あとはすべて3日で終了ですので、駆け足でいきたいと思います。
北星女子高美術部の第39回はしどい展は、札幌市資料館(大通西13)で。14人が出品しています。
イマジネーションが自由にほとばしるのが、この美術部の特徴。唯一3年生で出品した坂井梨絵さん「閃光」は、巨大ロボットのような物体が暴れていますし、佐藤照美さん「刹那の華」は、落ちて行くようなイメージ。
丹羽絵里香さん「荒廃」は、一原有徳さんの版画みたいな金属的なイメージの奥に水色の女性像が描かれています。
久保弥生さん「迎えに来て」に描かれた、赤い蝦のような怪物も、不気味です。
ほかに、佐藤加奈子、高橋侑希、鷹田香吏、佐藤照美、十河友香里(以上2年)、成瀬知恵子、山元綾子、高島紗代、田中文子、中川桃子、木林暁香(1年)のみなさんが出品しています。
三越(南1西3)ギャラリーの森崎修太展。
千葉在住の画家。道内の個展ははじめて、とのことですが、なかなか良かったです。
南仏などの風景を、大まかなタッチと、やわらかな色彩でとらえた作品ばかり。ピンクの夕空に、赤い海など、一見派手ですが、計算され尽くした色の配置が、とても心地よいです。畑は、緑と黄色の線でさっさっとかくなど、こまかく描きすぎないところに、好感を持ちました。
朝日新聞によると、夫人が赤平出身だそうです。
2月2日(土)
ほとんどどこにも行かず、昼寝。本を開いてもすぐ眠たくなってしまいます。
2月1日(金)
櫻井マチコさんの個展「Pretty Eros」が、札幌・裏参道のカフェ・エルエテ・デ・ミュゼ(中央区南1西24 リードビル2階)で始まり、オープニングパーティーがありました。
会場は、カフェという名前ですが、実際の飲食コーナーは片隅にカウンターがあるだけで、4分の3以上は展示スペースとなっており、申し分のない広さです。
櫻井さんは、一部旧作を含む油彩約30点と、鉛筆画、ボックスアートを出品しています。会場の外側に並ぶ旧作の100号クラス2点をのぞくと、サムホールから20号までです。
いつもながらの櫻井ワールドが展開されています。スムーズな曲線。ピンクなどの明るいがどぎつくはない色彩。デフォルメされた人や鳥などのモティーフ。見ようによってはエロティックな形態。抽象とも具象とも、西洋的とも東洋的ともつかぬ、とても個性的な油彩であります。
個性的といえば、画家本人も右の写真でみるように、たいへん個性的でありまして、筆者がこれまで会った人の中でいちばん年齢不詳であるのは間違いありません。この日は、真っ青なドレスに、水色のテディベアを髪飾りにしていました。
写真左側は「嬖妾の陰謀または争い」という20号の新作。しなやかな体つきをした2匹の獣の周囲に、マルメロともびわともつかぬ果実がみのっています。ほかにも「この場所にて−数限りなき接吻を交わせり」「伝導、略奪、倒錯王マルス」など、題名がむずかしくなっています。
28日まで。月曜休み。
ところで、会場で、ギャラリーたぴおの竹田博さんにお聞きしたのですが、カメラマンの熊谷重俊さんが急死されたそうです。
昨年なくなった43Zこと清水一郎さんのピエロ姿の写真をよく撮影していて、清水さんのフリーペーパーCHONZAにもよく名前が出ていましたから、ご存知の方も少なくないと思います。
まだ60過ぎのはず。ご冥福をお祈りいたします。