つれづれ日録の

2001年1月後半

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 1月31日(木)
 今週も札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)は下のフロアのみ。
 以前「火曜会」を名乗っていた、道新文化センターで米谷哲夫さん(全道展会員)に油彩を習っている受講生たちが「第30回記念アルディ会」という展覧会を、ABCの3室で展覧会を開いています。
 福江文子さん(同会友)の絵にいちばんひかれました。絵の上部に二人の人物が横たわっているのですが、下のほうに描かれた人は薄い線描だけで、いまにも地に溶け込んでいきそうです。そこから人間存在のはかなさのようなものに思いをはせてしまいます。ともすれば、空間恐怖症的にいろいろなものを画面にかきこみがちなところが、すんでのところで救われています。地の、何もかかれていない部分を、いかに絵の具の塗りだけでもたせるか、というのは、なかなか大事なことのように思いました。
 熊谷京子さん「木立ち」は、木立ちの中のいすに腰掛けて本を読んでいる女性を描いています。これまでの熊谷さんの絵にくらべると、ずいぶんすっきりしてきたようで、好感を持ちました。あんまりすっきりしてくると、「デザイン的だ」だなんて、悪口を言う人がいるかもしれませんが、筆者は、単純な構図のほうが好きだな。
 山本和雄さんは、あいかわらず丁寧なタッチ。北野敬子さんはますます表現主義的というのか、激しい筆遣いになっています。名畑昌子さんの女性像にはボリューム感があります。仲井みち子さんは、風景を見るまなざしが真剣なんだと思います。
 2日まで。


 1月30日(水)
 スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、第12回新孔版画札幌展を見ました。
 札幌の版画家、渡會純价さん(日本版画協会、春陽会、全道展の会員)が顧問として指導的立場にあるこの会、まあ分かりやすく言えばプリントゴッコによる版画の集まりで、道内はもちろん、東京や海外からも出品があります。
 プリントゴッコといってもばかにはできません。なかなかの作品ができます。
 道内勢では、佐野千尋さん「サザンブリーズ」が、おしゃれでさわやかなタッチでヨットハーバーの風景を描写しています。
 東京の見代ひろ子さん「晩秋」も目を引きました。川あるいは池の前にたたずむ二人の人物を中景に配し、手前に萩らしき花や紅葉した潅木を、遠景に高い木や山並みを置いた奥行きある構図。見ていると、なにか物語が生まれてくるようです。
 千葉の西岡とし子さんの作品は「謄写版」となっていますが、これって昔懐かしいガリ版ってことでしょうか!?
 だとしたらすごいですよね。作品自体は、どこか子供っぽさを残していますが、それも一つの味だと思いました。

 同じ会場では、第7回北海道高等聾学校専攻科情報デザイン科作品展も開催中です。
 1年生4人と2年生2人が発表しているのですが、指導の山崎亮さん(道展会員)が「ウチは広く浅くですから」と言うように、とにかく幅が広い! ひとりで油絵、家の図面、金工、木工、コンピューター(HTML言語)、アクセサリーなどをこなしているんです。
 いずれも2月3日まで。

 円山・裏参道に昨年11月オープンしたカフェ・エルエテ・デ・ミュゼに行ってきました。
 大阪出身のオーナー渡辺さんが自分でコレクションした池田満寿夫らの版画を飾っていますが、1日から1カ月間、櫻井マチコさんの個展が行われます。
 道内在住の作家がなかなか道外で知られない現状の残念さなどを熱く語っていました。
 ただの貸しギャラリーではなく、企画などもやっていきたいということです。
 道内で美術をメシの種にしていくのは正直言って大変だと思いますが、ガンバッテほしいと思います。
 中央区南1西24、リードビル2階(以前、spプロジェクトが入居していたビルです。郵便局向かい)。月曜休み。正午から午後9時まで。


 1月28日(月)
 第1回 サッポロ未来展2002なる展覧会が、3月4日から9日まで、札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)の7室すべてを借り切って開かれるというので、事務局の波田浩司さん、河野(かわの)健さん、武蔵野美大の田中怜文さんにお会いしてきました。
 さきごろ東京で、道内出身の美大生が集まって開かれたグループ展「001展」の出品者に、地元の若手が加わるかたちで、第1回の開催の運びとなるそうです。
 「東京で活動していて何年かたって、いざ道内で作品を発表したくても、足がかりがないことが多い。この展覧会が、そういう場になれば」と話す加藤さんは、これまでほとんど作品を発表していません。「これからやっていこうと張り切っている人を集めたい」と波田さんは張り切っています。
 いまのところ、40歳以下の約40人が出品する予定です。筆者は7、8人しか知りません。なかなかフレッシュな展覧会になりそうです。

 リンク集の「MARIのページ」の説明を一部変更しました。


 1月27日(日)
 佐々木敏光油絵小品展を、北海道画廊(中央区南3西2、HBC三条ビル2階)で見ました。
 サムホールが中心です。いやー、いいですよ。
 何気ない風景に、美を発見しているのが、見ていてうれしくなります。
 明るい空と雲を描いた「夕空」。
 疎林のあいだの小道を描いた「小道をぬけて」。
 落ち着いた緑が印象的な「新しい道」。
 そして、黄色いマルメロを描いた作品の数々。背景が、まるで写真のボケのように描かれています。
 何よりも感心したのは、画廊の外の廊下にあった題のない小品です。板が立てかけられ、半ば錆びた鉄パイプで区切られた廃園。このような、ふつう人がけっして足を止めないような風景にも、美を見出す姿勢に、強く共感しました。
 30日まで。

 i-modeのページを衣替えしました。
 パケット通信料を安くするため、つれづれ日録は1日1ファイルとし、1週間より以前の日録はアップするのをやめました。
 感想をお聞かせください。
 また、リンク集に、mariのページを追加しました。心やさしいmariさんのコメントが、BBSを読む人の気持ちをほのぼのとさせます。
 開設以来はじめて、「このサイトについて」のコーナーを設けました。すこし、表紙をすっきりさせようと思ったのですが、なかなかうまくいきません。


 1月25日(金)
 札幌市資料館(中央区大通西13)に、朝イチで行きました。
 こっそり陶展・2「なごみ空間無料招待展」は、高野陽子さん門下のTamami Oikawa、中村知代、たかはしちか、メオ・サチ、出羽昌美、ゆのき秀山の6氏によるグループ展。なんだかよくわからん展覧会タイトルですが、中味はユニーク。あっさり、清楚な中村さん、備前ふうで渋いゆのきさん、ポップで楽しいメオさんなど、多彩であります。
 いやー、高野教室は、みんな良い意味ですき放題やってるんだよなあ。
 お隣の部屋では、離陸? 凍ったり腐ったり展という、これまたよくわからんタイトルのグループ展。黒田拓さん、Meosachiさん、オサナイマキさんによるイラストと写真の展覧会です。
 なかでは、黒田さんの長時間露光による風景写真(カラー)にひかれました。長い時間露光すると、海面が幻想性を帯びてきます。
 いずれも27日まで。

 アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)の赤木さんがやっているサイト「ぞ」の掲示板が閉鎖されてしまい、残念です。もうすぐ、サイト自体も閉鎖するとかで、これは道内の美術界にとって大きな損失ではないでしょうか(少なくてもわたしはすごく不便で、さびしい)。
 でもねー、本人に無理強いするわけにもいかんし。

 春陽会会員の折登朱実さん(札幌)からメールがきました。
 函館の春陽会会員、宮西詔路さんは体調がすぐれず、出品をお休みしたそうです。はやくお元気になるといいですね。


 1月24日(木)
 きょうはギャラリーに寄る時間なし。
 地下鉄南北線北18条駅近くの北天堂書店へ行き、ホームページの在庫目録で見つけて取り置いてもらっていた「アート・ディーラー 現代美術を動かす人々」(PARCO出版)を買いました。1800円プラス税。
 ついでに、本郷淳が父・本郷新を回想した「おやじとせがれ」を1200円で購入しました。

 筆者はふだん、インターネット・エクスプローラー6.0を使っています。
 こないだ、ネットスケープを使っている人から、カウンターが「888888」になっていると指摘されました。ブラウザが違うと、そんなこともあるんですね。ちなみにいまは、だいたい18000というところです。

 北海道陶芸会の中村照子さんから会社に電話があり、会でHPをつくったからリンクしてほしいとのこと。さっそく貼っておきました。


 1月23日(水)
 きのうの続き。
 札幌駅北口のパセオ、Tom's Cafeで開かれているRhythm Exhibition By Paint Box
 札幌出身で鎌倉在住の画家碓井良平さんが、A.Ninadさん、出戸明代さんと組んだユニットの、道内初登場です。
 といっても、喫茶店の壁に、額縁のない抽象画の小品14点ほどがかかっているだけ。題などは表示されておらず、また絵にサインがないので、だれがかいたかも判然としません。
 絵は、白い線を格子状に描いたもの、ピンクや赤の斑点が全体を覆っているものなどで、なんだか店の内装にすっかり同化していました。絵が展示されていることに気づかないまま店を出てしまうお客さんもけっこういるんじゃないかと思われます。
 やたらと自己を主張するのではなく、暮らしの空間に溶け込むのもアートのひとつのあり方なんだと思いました。
 お店はパセオの地下の東端。玉光堂とか弘栄堂書店の近くです。
 31日まで。 

 春陽会の道作家展は、「展覧会の紹介」ページを設けて詳しく書きました。
 絵の好きな方は、ぜひ足を運んでください。

 「てんぴょう」10号の横浜トリエンナーレ特集に載っている筆者の文章はどうでもいいものですが、同時掲載の日夏露彦さんの批判はなかなか鋭いところをついています。スポンサーにおもねり、アーティストに規制の枠をはめようとする実行委側の旧態依然ぶりを批判しているのです。この催しはいろんなメディアでとりあげられましたが、これほどしっかりした批判というのは初めてじゃないでしょうか。一読を勧めます。

 きのう、開催中の写真展について書いた横山宏さんが、北海道新聞の、先日の記事(道央面)に続き、札幌市内版の「人はなし」にも登場していました。
 まあ続けての登場というのは、たまにあることなのですが、気になったのは、ふたつの記事のどこにも「土、日曜休み」って書いていないこと。
 なぜかはわかりません。ただ、「煩雑になる」という理由で、書かない記者、書いてあっても削ってしまうデスクというのが存在するのは確かです。たかだか数文字挿入して煩雑になることのマイナスさと、記事を読んでわざわざ足を会場まで運んで休みだったときに読者がこうむる損失(そして道新に対しての失望感)は、比べものにならないのではないかと思うのですが。


 1月22日(火)
 朝、家を出たら、家の周りで除雪車が動いていました。
 シャーベットの海との闘いを覚悟していたのですが、幸いなるかな、だいぶ歩きやすくなっていました。
 札幌では1月としてはここ30年間で最大の降水量となったそうです。

 美しい写真展を見ました。横山宏写真展 北の大地U 陽は沈み、そしてまた、昇るです。
 横山さんは東京在住ですが、道東の自然に魅せられ、冬は通い詰めているとのこと。
 「夢の架け橋」は、白い二重のアーチの映像。霧に朝日が反射してできるもののようです。
 藻琴山麓で撮った「ミッドナイトシーン」は、巨木をバックに、冬の星々が緩やかな弧を描いています。4、50分間シャッターを開放にして撮ったものです。無造作に星空にレンズを向けた写真はよく見かけますが、この写真は枝ぶりのうしろをちょうどオリオン座やシリウスが横切っているのがミソです。
 山のように盛り上がった流氷の間から、けあらしが立ち上っている一枚もあります。筆者もけあらしを狙って冬の早朝に出かけた経験がありますから、どんなに寒いか見当はつきます(^_^;)  流氷写真で有名な遠峰徹弥さんから「流氷がこんなふうになるなんてひと冬の間でも何日もない」と言われたそうです。
 野付半島で撮影した「月下の流氷」も、氷の尖端に黄色い光りが反射した一瞬をとらえた稀有な作品。
 ほかにも、スローシャッターで写した蓮葉氷、阿寒横断道路から撮った鮮やかな紅葉、津別のシバザクラ、硫黄山麓の靄に浮かぶ針葉樹林など、バラエティーに富んでいます。どの写真も、すぐにレコードジャケットかなにかになりそうな感じです。

 ところで、会場のキヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)ですが、改装されてだいぶ広くなってたんですね。知らなかった。
 サブ会場も併設され、佐野善一郎さんの雲のシリーズが展示されていました。これも、気象図鑑みたいでおもしろかったです(31日まで)。
 横山さんの写真展は2月1日まで。朝9時から午後5時半まで、土、日曜休みというスケジュールは、一般の勤め人にはツライかも。2月18日から3月1日まで仙台キヤノンサロンに巡回。

 ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)では、3つの絵画展が始まりました。
 小展示室は、第23回山崎幸治個展です。割合小さなサイズの絵画16点に、廃品利用とおぼしきオブジェ5点が並んでいます。
 山崎さんの絵の大半は、トルソか頭部像がモティーフです。「ゆ〜」「対話」というタイトルのものが何点かあります。タッチは粗く、形象はあいまいで、それほど達者な作品というわけでもないようなのですが、なぜか、対象へのあくなき追求心が込められています。というか、山崎さんのメンタリティーって絵かきなんだなあ、という感じがすごくするのです。
 いちばん好きなのは「或る日」と題された人物画。ルオーばりの強い筆遣いとでこぼこしたマチエールが目を引きます。

 手前の部屋では、グループ蓮(れん)展
 といっても、昨年亡くなった菊地又男さんの96年の作品が展示されていたりして、何のグループなんだか判然としません。
 隣の部屋の光画会企画展 レッド&ブルー展と出品者が重複しており、二つまとめて紹介します。「画家」というほど名高い人々ではないけれど、だれそれ先生の教室展ではなく、さまざまなグループ展で名前を見かける人が多いです。
 佐藤孝夫さんの「存」の連作3点は、人の顔と、惑星を思わせる球などを組み合わせ、哲学的な深みをたたえた作品になっています。
 北林八重子さんは「幻壁」と題した、一種の平面インスタレーション。ピエロなどのモティーフには新鮮味はありませんが、ひび割れなどをかき込むことにより、それらの絵が古い壁画のように見える効果をあげています。
 大石慶子さんは「教会」などで、フォルムを崩して建物を描いています。どこか、醒めかけの夢のようです。
 野口良子さん「そろそろ立ち上がらなければ…」は、前景の青一色で塗られた人物を通し、物憂い日常を過ごす孤独な人間が見えてくるようです。
 水彩では、風景などの松田一郎さん、裸婦の佐藤信明さんは、手慣れています。
 ほかにも、塚原宏平さんの「バラ」や横山真佐子さんの「黄色い季節」は、荒っぽいタッチではありますが、絵らしい絵だという感じがして好感がもてました。
 いずれも27日まで。 

 量が多くなったので、きょう見た2002年春陽会道作家展は、あす書きます。


 1月21日(月)
 会社を出たら、大雨
 真冬の札幌で雨が降るのは、何年かに一度はあり、とくべつ珍しいことではありませんが、これほどの大降りはちょっと記憶にありません。道の雪がどんどんとけて、どこもかしこもシャーベット状態。足もコートもびしょびしょです。

 アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)では、和の趣 染織―いろどりの暦と題した、朝田千佳子さんの展覧会に惹かれました。
 小品はなくて、センターテーブルや、大きな作品が壁にかけてありますが、大半は月を題材にしたごくシンプルな作品。半月や満月など、満ち欠けの度合いの違う四つの月を並べたものもあります。
 作者の言葉が添えてありましたので、勝手ながら引用させていただきます。 

 アメリカのテロ事件のあと、1カ月くらい作品を作れず、いろいろ考えました。その中で"平和"というのは、夜、何の心配もなく、月を見ることができて、それを美しく感じられる状態にいることもひとつかな? と思い、地球上の人々が、やすらかな夜をむかえられるようにと、祈りをこめて今回の月シリーズを織りました。

 22日まで。

 ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)では、水戸麻記子 新見亜矢子 二人展が始まりました。水戸麻記子「JAJOUKA」
 水戸さんは1972年生まれ。
 札教大を卒業後も、「ミトラマ」と題した個展を、フリースペースPRAHAなどで盛んに開いていました。二人展というのは珍しいです。
 一時は、中国風の極彩色の絵をかいたり、メキシコのプロレスにも傾倒していたようですが、昨年の道展入選作「The Pipes of Pan」は、神話的な雰囲気を漂わせた作品でした。
 今回も、その延長線上にある作品が目をひきました。左は「JAJOUKA」(100号)。前景に3人がいます。
 左は、羽衣の天女を思わせる裸婦。
 中央は、羊の角を持った人物。
 右は、馬の頭部をした人です。
 全体の風景は、札幌の北大植物園のスケッチを元にしています。植物の描写は達者ですが、単に緑色で葉を描くのではなく、青やオレンジなどを使って異化効果を出しています。
新見亜矢子「市場−午後−」 ほかに、やはりどこか神話の薫りがする「水浴」、封筒を持った女の子を描いた「Love Streer」(じつは、60年代米国西海岸の伝説的ロックバンド「ドアーズ」に材を得たそうです)などを出品しています。
 一方、新見さんは昨春札教大を卒業し、いまは大学院に在学中の若手です。昨年は、故郷に近い後志管内岩内町のホテルで個展を開くなど、活動しています。

 新見さんの絵は、固有色にこだわるのではなく、全体の色調をどうするかというところから発想されているように思います。本人も「下塗りの段階からいろいろ考えていきます」と言っていました。
 写真は、100号の「市場−午後−」。構図は手堅く、果実を描いた部分の円形の繰り返しも快いですが、黄色・オレンジの系統の部分と、青い部分にかき分けたあたりはなかなか大胆です。
 ほかに、昨年の道展入賞作のエスキスとおぼしき「路地」、赤を基調に枯れ野原を描いて独特の空気感がある「あき」などを出品しています。
 新見さんのHPはこちら
 26日まで。
 会場に、道新の記者が来ていました。一昨年暮れにHPを開設して以来、ギャラリーや美術館で道新の記者を見たのは初めてです(元北海タイムスの五十嵐さんには何度も会ってるけど)。

 スケジュール表i-mode版週末おすすめ展覧会展覧会の索引などを更新しました。
 表紙の、リンクに一部貼り間違いがありましたので、直しました。


 1月19日(土)
 橋本祐二ガラス博物誌から書きます。橋本祐二ガラス博物誌の会場なかなか楽しい展覧会です。
 橋本さんは札幌在住。江別市野幌の道工試に勤めています。以前、江別市野幌の江別市セラミックアートセンターが企画するグループ展に出品しています。
 今回は「空きびんと窓ガラスが語りかけてきた」との副題の通り、約100点すべてが、廃品を材料に作られたものです。中央のテーブルには、一升瓶やビール瓶からつくったペーペーウエイトや皿、花瓶などが並んでいます。
 右の写真でいうと、薄緑色は一升瓶の色。茶色はビール瓶。右側のマグカップは、持ち手が瓶の底の部分でつくられていて、「BEER BEER」と刻印があります。これで一杯やったら、うまそうだなあ。
 壁に掛かっているのは、瓶に熱を加えてつくったもので、まるで紙のようにくしゃっとなっているのがおもしろいです。
 写真にはありませんが、和紙のような瀟洒な質感のあかりも出品されていました。
 これらの作品はどれも、ほんとうなら埋め立て処理される運命のガラス。とてもそうは見えないのがミソです。
 江別市大麻東町15の11、カナリヤ。31日まで。火曜休み。
 新札幌駅から、大麻方面行きのJRバスで「大麻12丁目」下車、徒歩1分。
 大麻駅からは、北口(メーン玄関)を出て右に曲がり、大麻中央公園を抜け、住宅地図看板のある道を入り(歩行者専用道路に左折しないでください)、大麻福音キリスト教会の先の行き止まりを左折。しばらく行って、セブンイレブンを右折すると「大麻銀座商店街」に出ます。その商店街を突っ切って、さらに直進すると「東町ニュープラザ」なる小さなアーケード街に到達します。カナリヤはその中にあります。
 15〜20分はかかります。


 スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、創立30周年記念 第18回虚心会展が開かれています。
 漢字の堅実な作風の山田太虚さん主宰の社中で、会は5年ぶり。なんと109人が出品し、大規模な展覧会になっています。
 臨書から、ピチカートファイブの歌詞の近代詩文まで、バラエティーに富んでいます。
 主宰の山田さん「鴻慈」は、スケール感のある創作。鴻の「れっか」が紙の中央部分にあり、おもしろい効果をあげています。
 山田起雲さん「蓮」は、「MONETの睡蓮によせて」の但し書きつき。ただし、モネの絵が水平方向に広がるのに対し、これは垂直方向への広がりのある字でした。
 塩谷粧香さん「竹解虚心」は、淡墨の持ち味を生かしながらも力強い作品でした。
 20日まで。

 ギャラリー市田(北1西18)の「アフガンの子どもたちへチャリティー展」は、八木保次さん、中橋修さん、高橋英生さんなどの小品が所狭しと展示されています。
 筆者はあまり金を持っていなかったので、D.HISAKOさんの絵はがきを買ってきました。これって、チャリティーの対象になるかどうかわからないんだけど。
 最終日の20日は、オークションがあるそうです。

 時計台ギャラリー(北1西3)は19日でおしまい。今週は、2階しか借り手がいなかったようです。北海道は冬になると、文化活動全般がさびしくなりますね。
 A、B室は、第19回大洋会道支部展。100号クラスの具象の油彩が並んでいます。
山崎和香子「湿原地帯」 ことしは、山崎和香子さん「湿原地帯」が目を引きました。細岡展望台から見た釧路湿原の風景です。
 平坦な風景を、少ない色数でうまくまとめています。水平方向の線を強調したのがよかったのでしょうか。それでも、前景には数本の潅木を配し、中景の黄色みを帯びた池とともに、良いアクセントになっています。
 道支部長の江頭洋志さんは、ここ数年手がけてきた欧州の風景から、日本の古い風景に戻りました。「水車のある風景」です。さすがに、手堅くまとめています。
 原田富弥さんは、豊浦漁港の夕焼けの景色を、鮮やかな色彩で描きました。黄緑まで使った空。かすかに彎曲(わんきょく)した防波堤。明るい部分と暗い部分の対比がダイナミックです。
 加我幸子さん「imagine」は、初め美瑛の田園風景をモティーフにしていましたが、制作途中で米国の同時多発テロが起き、援助物資の投下とか、テロを報じる英字新聞のコラージュとかが画面に入ってきています。そのため、統一感が失われてしまっていますが、作者の切迫した心境は伝わってきます。
 岡田和子さん「昼下り」は、手前にテーブルと花瓶を配した静物画。背景の建物の薄い処理がうまく、空気感が上手に表現されていると思いました。
 C室は、第4回グループF展。豊田満さんの教室で、欧州に絵を描きにいったんですね。みなさん、達者です。

 1月13日の項に書いた、「現代陶芸の造形思考」(阿部出版)を、大通西19の並樹書店で入手しました。4200円は痛かった。
 まあ、定価は5800円だから1800円以上は得したんだけど。

 あしたはたぶん更新しません。


 1月18日(金)
 うるかす事件、16年ぶり再発!

 北海道新聞の「おかず」欄に「うるかす」ということばが出てきたので
「これって北海道の方言なんですよねえ」
とひとりごちたら、デスクが
「そうかあ? 標準語だろ」
と言います。わたしの言うことに納得できないらしく、広辞苑を持ち出して
「ほら、載ってるだろう」
「えっ」
「あ、これは『うるおす』か」。

 「うるかす」というのは、水につける、浸すという意味です。
 ただし、石のように、つけておいてもやわらかくならないものについては、この言葉は使いません。米とか豆のような場合に使います。

 学生のころも似たようなことがありました。
 わたしは東京に住んでいました。
 高校時代の同級生が札幌から来ることになり、東京にいる友人たちと集まって飲むことになりました。
 その場で北海道の方言の話題になりました。
 わたしが
「うるかすって、方言だよね」
と言うと、その場にいた全員から反論されました。
 「じゃあ、ヤナイ、うるかすが方言だとして、標準語ではなんというんだ」
と無理難題をふっかけるやつもいます。
 友人のひとりは、東大に通っていましたが、翌日学校でクラスのみんなに言ったそうです。
「なあ、うるかすって、言うよな」
 その場がシーンとしたのは、言うまでもありません。
 彼は、あとで
「ヤナイ、あの時は悪かった」
とあやまっていました。

 ぜんぜん美術に関係のない話題で失礼しました。

 「てんぴょう」10号が出ました。
 筆者は、森弘志さんの個展のほか、横浜トリエンナーレについても駄文を草しています(ほんと、ほかの評者に比べると駄文なんだってば)。でも買ってください。


 1月17日(木)
畑野天秋「怒れる魂」 恒例のお正月展が、大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)ではじまりました。
 このグループ展は、札幌の彫刻家・畑野天秋さんが主に若手の作家に呼びかけて毎年開かれているものですが、とくに傾向はなく、これといって主義・主張もありません。そこらへんが、いい意味でイイカゲンで、毎年楽しみにしています。
 ことしも「えっ、この人がこんな作品を?」という意外性や、初めて見る若手の作品もあり、おもしろく見ました。
 目立ったのは、ふだんは抽象彫刻を多く手がけている人が、今回は具象作品を出していることです。
 右の写真は、呼びかけ人の畑野さんの「怒れる魂」。凝集力の感じられるフクロウの木彫。ストレートな表現です。八子晋嗣さんは、FRP?の裸婦像を出品。歴史の長いグループ展「存在派」を主宰する金子辰哉さんも、素朴さの漂う人物でした。
 大上和則さんは、紙版画を連想させる素朴な味わいの絵画を、軸装していました。
 野村裕之さんも、木を組み合わせた平面レリーフ「縁」「阿弥陀」などが、プリミティブな、独特の雰囲気を漂わせます。
 杉吉篤さんは、獣の頭を思わせる壁掛けレリーフに、1センチくらいの格子のメッシュを添えた作品。ふだんのタブローとは違います。
 中村修一さん「emerge」は、野焼きによる土のオブジェをたくさん並べた作品。
 宮尾知宏さんはアクリル板で覆ったモノタイプの版画が3点。手漉きの紙に不思議な凹凸が刻まれています。
 ただ、版画は、深みのある抽象画面をつくる友野直美さん、渡邊慶子さん、童画ふうの心安らぐ画面が特徴の府川誠さんは、いつもどおりの作品です(これはこれで安心して見ていられる)。
 鉄の彫刻で知られる橘井裕さんは、錆びた廃品の組み合わせによるオブジェでした。
 石川亨信、小宮山和子、三箇みどり、韮沢淳一、前川アキ、山田恭代美の各氏も名を連ねています。
 29日まで。23日休み。 


 1月16日(水)
 ファイルサイズが大きくなりすぎるので、試験的に、一カ月を前半と後半に分けてみます。

 楢原武正展に行ってきました(this is gallery=中央区南3東1)。
 いつも巨大なインスタレーションに使用しているブリキ板やくぎなどによる平面の小品が並んでいました。
 19日まで。

 丸善版画入札会という催しが、丸善札幌南一条店(南1西3)の3階ギャラリーで開かれています。
 約150点のうち大半は、平山郁夫や上村松園、加山又造といった人気作家のリトグラフです。いわゆる版画では、棟方志功と斎藤清が目を引きました。さすがに、棟方は、一枚ずつ手彩色という事情も加わって最低入札金額でも100万円以上です。斎藤は、京都の冬の情景を描いたものなど4点。しっとりと落ち着いた情緒が木版でしっかり描かれていて、なかなか気に入りました。買えないけど。
 あす17日午後4時で終わりですが、三越に用事のある方は寄ってみてはいかがでしょう。

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