2002年9月上旬
9月16日(月)
さむい夏にくらべ、9月はほんとうによいお天気がつづきました。
きょうはおやすみです。
9月15日(日)
もういちど、つみあげてみる 「風の門」原田ミドー展=4プラホール(中央区南1西4、4丁目プラザ7階)
原田さんは江別在住の彫刻家。
今回の個展は、彫刻の小品のほか、デッサン、野外彫刻の写真展示などからなっています。
「FOUR MEN」のような具象もあれば、「呼吸する柱」「龍の舌」といった抽象もあります。いや、原田さんの彫刻ほど、具象・抽象の別が些細なことと思える彫刻はすくないかもしれません。それほど、かたちに無駄がない。じつに、すっきりとして、生命の原形質のような部分を掘り当てようとしている気がします。
似た資質をもつ彫刻家に、ブランクーシや安田侃などがいるとおもうのですが、たとえば安田さんの彫刻がどこか鉱物的なのにくらべ、原田さんのは生物的な印象を受けます。これは、ほんと印象であって、うまくいえないというのがほんとうのところですが。
「風の門」は、江別市セラミックアートセンターに、古いれんがを使って原田さんがつくったパブリックアートだそうです。筆者は恥ずかしながら、ことしはまだ一度も同センターをおとずれておらず、「風の門」も未見であります。たしかに、同センターは、おそらく道内でもいちばん足の不便な美術館ですが、陶芸を主軸にすえてけっこう意欲的な展覧会などを組織しています。
この作品については、北海道新聞江別版では逐一報道されていたようですが、ほかの地方版ではあまり出ていなかったとおもいます。こんど、「風の門」のエスキースではなく実物を見るためにも、センターに行かなくては、とおもいました。
なお、今回、経歴を見てはじめて、84年の道展で新人賞、87年に会友、89年に会員というスピード昇格をはたしながら、93年に退会している「原田緑」さんが、本名だというのを知りました。1963年生まれ、東京造形大卒。
17日まで。
遅ればせながら、新道展の紹介をアップしました。
まだ「展覧会の紹介」を書いていない展覧会が、4つもあります。m(__)m
札幌・自衛隊前の自主映画などの拠点「屋台劇場・まるバ会館」のHPで、映像作家の伊藤隆介さんが8月から「腹たちねたみ日記」を書いています。
むちゃくちゃ多忙でオタクでカルトな? 日々がなかなかおもしろいので、筆者はだいたい毎日覗いてみています。
こないだ発売されたばかりの村上春樹の新刊長編小説「海辺のカフカ」(新潮社)の書評が、はやくも道新、読売、日経に出ていました(朝日、毎日は未掲載)。
いくらなんでも、はやすぎる。
おそらく新潮社のほうで、新聞社や批評家のところに、装丁する前の本を送っておいたのでしょう。
すごい部数になると思う人もあるかもしれませんが、じつは、新聞社で自前の書評を数多く掲載しているのは、いま挙げた5紙のほか、中日=東京、産経と、共同通信社くらいのはずです。
通信社というのは、記事の卸売業者みたいなもので、各マスコミは自前で取材できない地域の記事などをもらって(買って)くるのです。多くの地方紙は、書評欄も通信社から配信をうけています。
さて、筆者は、村上春樹の新刊小説はだいたい買って読んできましたが、「海辺のカフカ」はまだです。
たぶん買うことになるとおもいますが。
筆者がいちばん好きな彼の小説は、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」です。
9月14日(土)
第20回 清池会書展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)全室
藤根凱風さん(札幌)が指導するグループ。漢字ばかりで、臨書が半数を超えています。
その藤根さんですが、「鶯啼」という創作を出品しています。ますます、閑寂、清らか、しんとした静けさの世界です。
創作では、上田祐峯さん(三笠)「無量寿」が、速くやわらかい筆使い。
三浦幽香さん(札幌)「飛霞」は、淡墨で、筆の緩急がよく感じ取れる作品です。
臨書では、阿部翠羽さん(同)、太田凌雲さん(同)などが印象にのこりました。
15日まで。
詩人、美術評論家で、明大名誉教授の宇佐見英治さんが亡くなりました。
1918年、兵庫県生まれ。東京帝大卒。
旧制一高時代、および戦後に、小島信夫、加藤周一、矢内原伊作らと同人誌を発刊。
「美術手帖」や「みすず」などに、ジャコメッティなどについてエッセーを書きました。
筆者が印象にのこっているのは、染織家の志村ふくみさんとの対談・往復書簡をおさめた「一茎有情」(ちくま文庫)です。日本の美について、なんと気品のあることばがかわされていたことか。両者の、ひそやかな英知ともいうべきものに、しずかに感動しました。
著書に、「雲と天人」(岩波書店)、訳書にスタンダール「恋愛論」(共訳)などがあるそうです。
今夜は、岩手の小平林檎園から上梓されたエッセー集「明るさの神秘」を枕頭の書としてねむりにつくことにします。
9月13日(金)
美瑛・富良野 湊征一郎個展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
丘の畑の雄大な風景を、アクリルなどで描いた小品がならびます。
こまかい筆でじつに丹念に描いています。「陰影を抑えたアカデミズム」とでも形容すべきでしょうか。だれにでも受け入れられる画風。といって、いかにも手慣れているといった感じというよりは、職人のようにひたすら筆を置いて制作しているふうです。
ところで、8月のグループ展「燎原会展」の際、人形の絵を出していてビックリしたという意のことをかきましたが、どうやら風景にとりくむ以前は、人形の絵ばかり描いていたようです。知らずに、失礼しました。
湊さんのHP「絵画工房丘」はこちら。
2002 蒼樹会北海道支部小品展=同
全国の公募展の支部の主催。毎年春にひらかれる支部展には大作がならびますが、秋は支部展。3号から10号の油彩がならびます。写実的な風景画、静物画ばかりで、なんだか、いかにもアマチュアのグループ展という感じがして、見ていてけっこうなごみます。
中山美津子さん(札幌)「摩周湖」。これまで小山昇ら幾多の画家の創作意欲をそそってきた画題です。中山さんは近景に白樺を2本配することで、画面に奥行きを出しています。
百島忠雄さん(札幌)「街中の牧場」は、近景の柵、中景の牛、遠景のポプラと、きっちり構図を決めており、安心して見ていられます。
桜井寛さん(後志管内岩内町)「紫陽花」。この花を題材にすると、色の配置ばかりが主題になりがちですが、まるく立体感を出しています。
下山康麿さん(札幌)「夏のカッパ渕」、齋藤義雄さん(江別)「麓郷の森」も、手堅い出来。
ことし5月の支部展はこちら。
以上、15日まで。
カワシマトモエWORKS=アリアンスフランセ-ズギャラリー(南2西5、南2西5ビル2階)
「RAIN DROPS」をテーマに描かれた大小のアクリル画(1点だけ油彩)を展示。96年あたりから近作まで。
90年代のペティポンやオーウェンスらの絵画と同時代性をかんじる、道内ではごく少数の描き手だとおもいます。
だからどうだといわれると、困るんですけど。
14日まで。
招待券があったので、第35回記念道美展を見に、札幌市民ギャラリー(南2東6)に行ってきました。5年ぶりです。
「道美」は「北海道美術作家協会」の略です。
道展、全道展、新道展につぐ「第4の公募展」といわれることもあります。会員、会友、一般という階梯は、ほかとおなじですね。
部門は、絵画、工芸、写真の3つです。原賢司さんが「会長」を務めているのも、事務局長がいるだけで会員相互に上下の差のない他の3展と異なる点です。
結論から先に言うと、アマチュアで、陶芸と写真をやっている人は、見ておもしろいとおもいます。
ただ、写真は、カメラ雑誌のうしろのほうの投稿欄に出るようなのばかりが、ずらーっと並んでいます。99%がカラーです。森山大道やティルマンスが好きな人は「およびでない」ですね。
工芸は、大半が陶芸です。
香西毅さん(胆振管内白老町)「太陽その2」と、村田征一さん(札幌)「辰砂釉掛け壷」が会場で隣同士にならんでいて、おなじ辰砂なのに、前者はあざやかな赤、後者は部分に青っぽい色がさっとかかっていて、その違いがおもしろかったです。
北国らしい風土を反映した壷もめだちました。
北野一年さん(岩見沢)「浅水青磁『初冠雪』」の水色、今野静子さん(稚内)「流氷」の、全体を覆うガラス質のきらめきと貫入、福田節子さん「淡雪」の重なり合う灰色と白の釉薬の層など。
ほか、堀田雄四さん(胆振管内厚真町)「ルリ白釉壷」の澄んだ色合いもわすれられません。
焼き締め系はあまり多くありませんが、山下雅恵さん(釧路)「木灰釉焼〆つぼ」は、灰釉の被り方に景色をかんじました。
杉沢広子さん(札幌)「ダンテ『神曲』」は、はげしい形状が異例の作品です。
こうして見ると、良いとおもったのは、圧倒的に会員の作品ばかりでした。これは、工芸だけの現象でした。
一般では、三田京子さん(栃木県)「練上花器『驟雨』」のまとまりのよさを挙げておきます。
陶芸以外の工芸にもふれておきます。
高さ470センチ、幅285センチという、山内和子さん(西宮市)の染色壁かけ「私の天の川」にはおどろかされました。
が、なんといっても、筆者が感服したのは、加藤一義さん(日高管内静内町。会友)の「大輪」「新山」。1本の木の幹をくりぬいて作ったもののようですが、まだこんなに太い幹が手に入るのですね。「大輪」は年輪模様がうつくしい、球形にちかいフォルム。「新山」は、ごつごつした表面を生かしつつも滑らかに仕上げた入れ物。まさに職人芸です。
ほかに、鎌倉彫、能面などがありました。
畠山司さん(札幌)「初秋の上富良野ホップ園」は、そのまま土産物屋のいちばん目立つ壁に貼りたくなるようなレリーフでした。
写真は、工芸ほどには、会員・会友・一般の別を、作品水準にかんじません。
会員は、あまりゆっくり見る時間がなかったのですが、ベテラン掛川源一郎さん(同)の「向日葵」、堀江和彦さん(同)「雪化粧」など、ツボをおさえた手堅い作品がならんでいました。
浅野義雄さん(同)「土星食」は、輪のはっきり見える土星が月に隠れていく瞬間をとらえた天体写真。
新沼正光さん(伊達)「古寺秋色」は、陰になった寺の屋根の入れ方が大胆。
畠山茂さん(岩見沢)「廃坑」はソラリゼーション技法による作品です。
会友。
秋田和彦さん(胆振管内虻田町)「風に乗る噴煙」。洞爺湖の上にたなびく噴煙の形がユニーク。
池内宏好さん(室蘭)「moon walk」。ちいさな観覧車の背景に、月の日周運動を、数十分おきに撮影して多重露光した、幻想的な1枚。
大友健一さん(岩見沢)「昇天」。滑り台を真正面から低い位置で撮り、天国へのジャンプ台のように見立てた作品。モノクロ。
大場稔康さん(北見)「冬の日だまり」。真紅の壁の前におかれた黒いいす。その対照があざやか。
今野啓吾さん(留萌)「夕映え」。黄金岬の夕日。雲が多く色彩的にはそれほどでもないが、鳥の位置が絶妙。
佐藤栄子さん(上川管内美瑛町)「夕景」。こちらは赤ワインのような色彩で魅了。
田中明子さん(岩見沢)「厳冬のハンター」。雪の上で大きく羽根を広げたシマフクロウ。よくあるショットではあるが、これほどキマッている瞬間を撮るのはやはりむつかしいと思う。
深田健嗣さん(伊達)「落下の堀」。桜の花びらで覆われた水面がみごと。
三田和正さん(栃木県)「ひと休み」。牛の背中にちょこんとアオサギが乗った、ほほえましい図。
こうして見ると、会友の、とくに地方在住の人に、筆者は感心しているようです。
一般。
伊藤忠さん(札幌)「光る風」。きらきらとかがやき、揺れるススキ。
井上哲夫さん(帯広)「小川の早春」。葉や枝の先から水面ギリギリまで垂れ下がった、梨のようなかたちの氷の塊。やや長時間露光したらしく、水面に躍る光の線がじつにうつくしい。
小垣恵子さん(網走管内端野町)「夏の終り」。蛙と紅葉という組み合わせがおもしろい。
佐藤安津子さん(青森県)「ある日の私」。巡査に叱られている? 若い女性。後ろにちいさく、物損事故の現場が見える。ユニークな1枚。
沢谷敏夫さん(室蘭)「静寂な時」。クレーンや橋脚のシルエットと、晧晧と光る満月。群青の空が印象的だ。
堰代剛幹さん(網走管内訓子府町)「ニペソツ岳下山」。冬山の厳しさを伝える。三角形の山が繰り返される構図もみごと。
田中二三哉さん(旭川)「オホーツクの夜明け」。海から上がってくる四角い太陽と、鳥のシルエット。
長井健さん(北見)「樹」。吹雪の中で耐える老木。フリードリヒを思わせる。手前の笹は余計か。
森美千代さん(札幌)「揺れる座標軸」。びん、銀のグラスなどを配した、おしゃれな静物写真。
森木欣一さん(旭川)「黄砂」。雪の積もった早春の畑に融雪剤をまくのはよくあるが、その雪がうっすら黄色くなっているのがミソ。
吉村重一さん(同)「赤い放水車」。一面のヒマワリ畑のとおくに現れた朱色の円が異様だ。
工芸、写真に比べると、正直言って絵画は見ているのがつらい。
ハイパーリアル(!。すごいですよ)を追求した大越啓一さん(札幌)「深海のバラ」、トラピスチヌ寺院をユニークな色彩感覚でとらえた仁部重夫さん(渡島管内七飯町)「北の旅情」、真紅を大胆に塗った久村弘さん(函館)「聖(さびたの丘)」など、個性的な絵もあるけれど、大半は、時計台ギャラリー3階とか札幌市資料館とかでしょっちゅうひらかれているグループ展の油絵を、たんに100号に拡大しただけのような絵です。
なによりさびしいのは、描いている人のたのしさ、感動が、いっこうにこちらにつたわってこないことです。
どれも、そこそこ写実的にまとめているのですが、なにをおもしろがってみなさん絵筆をとっているのか、迫力がまるでありません。これは、たとえば「色がナマっぽく、発色に深みを欠く」「地に前進色を、モティーフに後退色をつかうので、モティーフが引っ込んで見える」などの技法上の欠点以前の問題ではないでしょうか。
一般で、山本厚枝さん(札幌)「晩秋」と、堀内寿与さん(同)「秋のダム湖」が、モティーフや技量にはとりたてて特徴のない風景画でありながら、賞をうけたのは、一生懸命さがつたわってきたからではないかとおもいます。
なお、賞には漏れましたが、久保隆さん(同)「支笏湖畔」は、簡素な構成で、個性をかんじました。こういう絵を評価せず、こまかい描写ばかりの絵を賞にえらぶ審査も、いかがなものでしょう。
15日まで。会期中、午後5時終了(最終日はもっとはやい)。
広瀬智央・コンセプチュアリズムT=this is gallery(南3東1)
札幌生まれ、イタリア在住の気鋭の現代美術家が、96年の札幌でのプロジェクトや、98年(だったとおもう)閉鎖前の佐賀町エキジビットスペースについで、どんなことをやるのか、興味しんしんで見に行ったら、90年代半ばより前の小品が3つあるだけ。思わせぶりな展覧会タイトルがついているだけに、これはひどいよ。
13日の北海道新聞後志版に、西村計雄さんが1930年代に描いた「前田村」の、モティーフの場所がわかった、という記事が出ていました。
西村計雄記念美術館が「探偵団」を掲げて、マチのお年よりなどから聞き取り調査をしていたものです。
いやあ、みんなでたのしくやってましたもんね。これで、ふだん絵なんぞ見ない人も、美術館に関心を持ってくれればいいですよね。
9月12日(木)
川畑和江展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
風景画の中に静物画を組み入れる試みによる新作の油彩が中心。
ずっと、隔年で、夫の画家の盛邦さんと交互に個展をひらいてきましたが、昨年は、ギャラリーどらーるでの個展があったため、3年連続での開催になりました。
緑生い茂る倉敷地方の風景の中央に、花をいけた花瓶をのせたテーブルなどの静物が置かれ、緑と花という近しいものでありながらも異質なものを組み合わせた画面になっています。
川畑さんご本人によると、静物は自分という存在の代わりだそうです。
「でも、人物を入れるとまた構成を変えなくちゃいけないし」
たしかに、人物を入れるのは、これまたむつかしそうですね。
ほかに、ダブルサムホールという、短冊のようなユニークな形の小品など、ほとんどすべてが新作です。
札幌在住、道展会員。
第30回 美術文化北海道支部展=同
大林雅さん(札幌)は「だいじょうぶかあ」など油彩3点。例によって、腸のおばけのような不気味な物体が画面を覆っていますが、「触手」は比較的人間の原型?をとどめた物体が三つ、頭を抱えて座り込んでいます。
永井唱子さん(函館)は、新道展に引き続いて力作です。モティーフが多すぎてうるさい、という人もいるかもしれませんが、筆者はエネルギーが感じられて好きだな。
宮沢克忠さん(帯広)も、ポップなわりにちょっと古くさかった画風が刷新され、洒脱になりました。小品「プラハ回想」もおしゃれ。
柳川育子さん(札幌)は「追想」と題した2点。風にはためく白い布は変わりませんが、花やチョウが画面に躍ります。個人的には、もうすこし彩度にメリハリがあったほうがすきです。
三浦恭三さん(小樽)は「シーサイド」の連作。こちらは、明快な色遣いと構成による抽象画。すっきりしたスピード感は、職人芸です。
藤野千鶴子さん(札幌)「宙−パルサー2001」。壮大な時空を感じさせる大作だけど、前にも見たような気が…。鈴木秀明さん(函館)も小品が3点。あれ、函館の個展で見た作品に、いつのまにか両手が書き加えられているぞ。青山清輝さん(岩見沢)は、既成の和紙を張り合わせた抽象の平面。
金子賢義さん(夕張)と西田靖郎さん(檜山管内熊石町)が病気のため旧作を展示なのがさびしいところ。とはいえ、金子さんの70年代の木版画など、素朴な調子の中にも、人生の意義を正面から問うすごみがあります。
新道展で風変わりな立体造形を発表している細野弥恵さん(札幌)があらたに仲間入りしました。
昨年の展覧会はこちら。
坂田雅義陶芸展=同
なんと、時計台ギャラリー25回目の個展だそうです。帯広在住だけに、よけいにすごい記録です。
さて、坂田さんというと筆者はフクロウのイメージがあるのですが、今回は猫のほうが多いです。ざっと30匹はいます。デブのやつ、体を丸めているもの、顔を洗っているものなど、個性ゆたかなさまざまな猫の置物が、ほとんど焼き締めで、会場の一角を占拠しています。
ほかに、昨年から始めた粉引の器も。白のなかにも、ピンクや青がほのかに見えてくるからふしぎです。
さらに、今回初めて練上に挑戦しています。
ほかに、林一油絵個展も開催中。
視点集4=ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
6人によるグループ展。千葉愛子さんの作品がおもしろいです。
一種のイラストといってよいとおもいますが、奇妙な植物や空飛ぶ魚やトンボ、躍る妖精たちといった、インクで描かれたさまざまなモティーフが、切り抜かれて、台紙に張り付けられています。したがって、子供向けの「飛び出す絵本」にも似て、それぞれのモティーフが台紙から飛び出て見えるのです。
どれも、たんに台紙から浮いて張り付けられているだけではなく、おなじかたちのものを何枚も描いて重ねてはり合わせているので、立体感に富んでいます。そのくせ、どれもペンのみで描かれ、全体の上から茶色の絵の具がざっと塗られているだけなので、みょうに渋い感じになっています。
村元由紀子さんは油彩2点。原野の小川に両足を浸らせて立つ女性の絵が、ふしぎと印象にのこりました。
川村雅之さんは「LEMON CAKE」など大作2点。エナメルらしき絵の具をぶちまけているのはいつものことですが、今回はフォルムなし、マチエールのみの白っぽい抽象画です。
後藤顕さんは「蛸」「蟻」など漢字一文字を八つほど取り上げ、CGによるカリグラフィー作品にしたてています。
ほかに、久保千賀子さんと竹田博さんが出品しています。
いずれも14日まで。
9月11日(水)
土日の代休で仕事はやすみ。自家用車で午後からギャラリーまわり。
WAVE NOW '02=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
北海道出身で首都圏在住の画家4人が、札幌の阿部典英、杉山留美子、丹野信吾、米谷雄平の4氏をさそって、この4月、銀座・井上画廊で開いた初のグループ展の移動展。
豪華メンバーなので、詳細は「展覧会の紹介」をお読みください。
牧野秀昭・間笑美 二人展=ギャラリーミヤシタ(南5西20)
牧野さんは流木を活用した立体。木でつくった小舟に、石炭を積んだり、流木の束を積んだり。後者の作品には「RUMOI」と題がありましたが、留萌の海岸で拾ったのかなあ。舟に着彩しているのは、どんなもんでしょう。
間さんは、ちょうど羊かんとまくら木のあいだくらいの大きさの直方体に、油絵の具で着彩したもの約20本を、壁に展示しています。
この支持体は、作者の腕の長さと、手のひらの幅の大きさになっているそうです。そして、画廊空間の中央に置かれた舟が、たどりついた町や緑などの風景をあらわしています。
なお、同ギャラリーで二人展がひらかれるのははじめてだそうです(98年春、学生大勢で設営した谷口顕一郎くんらの二人展はのぞく)。
古川糸央人形展=茶室月菴・茶房森彦離れ(南3西26)
札幌在住の人形作家による11点。ふつうの、和服を着た女性像のほか、妊娠した裸婦や、乳児などもありました。
粘土にガーゼをはって造ったそうで、見た目よりも堅かったです。
以上、15日まで。
月菴は、地下鉄東西線・円山公園駅から徒歩4分。メルパルクと美容室の間にある界川遊歩道をてくてくあるき、裏参道をわたって、次に交叉する細い道を右に曲がるとすぐです。
第13回写真同好会「歩歩」写真展=札幌市資料館(大通西13)
年配の男女6人によるグループ展。
もちろんアマチュアだから、驚嘆すべき傑作というのはないけれど、かなりいい線いってる写真展だとおもいます。
どこがいいかというと、的がしぼりきれていて、なにが言いたいのか明白なんですね。へたに欲張っていない。みな、すごく意図がはっきりした写真ばかりです。ラベンダーとかタンチョウとか「またかよ」と言いたくなる被写体もなく、そこそこオリジナリティーもあります。
安藤裕さんは、大通公園の木を、思い切ってあおり気味に逆光で撮り、まるで森のなかの巨樹のように表現しています。
田中公子さんはなごり雪に埋もれたクロッカスをとらえた「また降っちゃった雪」などを出品しています。
宮内英而さんは、市場で出会ったイイ顔の人たちの写真です。「馬耳東風」は、耳打ちをしている子供たちの手前を馬が通り過ぎていくのがおもしろい。
ほかに、河合玉枝さん、宮浦禮子さん、山田信子さんも、良い写真を出していました。
第19回恵彩会展=同
戸坂恵美子さん指導の染織展。しぼり、ろうけつ、型など、染の技法のオンパレードで、多彩な布がならんでいます。
米田博司個展=同
札幌の人。油彩43点。30号以下。木立と原野の間に白い絨毯? が浮かぶ「静寂」はユニークな絵。と思うと、四頭立ての馬車とか、造り酒屋のおかみとか、どうもとらえどころがありません。
第6回彩遊会水彩画展=同
山崎賢六郎さん指導の教室展。櫻井龍三さん「タロの家」は、北大植物園の博物館附近がモティーフのようです。絵も達者ですが、題名がほほえましいですね。
資料館は、いずれも16日まで。17日(火)はお休みなのでご注意を。
NAC展〜陶による造形〜=ギャラリー山の手(西区山の手7の6)
その名のとおり、陶による造形を目指すグループ。
昨年までの、伊勢幸広さん(岩見沢)、木村初江さん(札幌)、滝本宣博さん(上川管内東川町)、林雅治さん(後志管内倶知安町)、堀江隆司さん(夕張)の5人に、前田英伸さんがあらたにくわわりました。
伊勢さんは、腕のない具象彫刻のような「青空」と、少年の胸部像「夏の日」。
後者には野球帽をかぶらせ、近くで拾ったセミの抜け殻を添えています。
滝本さんは「ゆらゆら2002」と題したインスタレーションふうの作品。きのことも花ともつかない17本のほそい茎のような物体。とくに、頂上の笠にあたる部分がおもしろい。
前田さんは、六つの皿のような物体をならべた「VASE」と、壁掛け型「石であり、土であり、水であるもの」。前者は、すっきりしたフォルム。
堀江さん「TSURU」は、陶というより土そのものの展示というかんじです。
林さんは「物体」「考えてるとき」、木村さんは「太陽と月」などを出品しています。
19日まで。
引き続き、21−28日(日祝日休み)は、おなじメンバーによるうつわ展(CAN展)を開催。
28日から10月9日までは(月曜休み)は、夕張市美術館(旭町)でNAC点の移動展を開きます。無料。
ギャラリー山の手は、東西線西28丁目駅から市バスに乗り「ふもと橋」下車、住宅街のなかを1、2分あるいて、琴似発寒川に突き当たった地点にあります。
旧国道5号線を走るJRバス・中央バス(高速おたる号など)に乗って「琴似本通」で下車し、約1キロあるくという手もあります(いちばんやすい。200円)。
西窪愛子写真展「PARIS―桜の頃―」=サッポロ珈琲館(西区八軒1の3)
モノクロとカラー。おもにモンマルトル附近で撮影されたものが多い。
サクレクール寺院などのショットの間に、何気ない街角の風景や、職人たちの横顔といった写真が挿入され、よくありがちな「海外旅行に行って撮ってきました」的な写真展に陥らずに済んでいる。
15日まで。
サッポロ珈琲館は、JR琴似駅から徒歩2分。駐車場あり(ただし、入口は中通にあります)。
ギャラリーの回廊と、喫茶店、豆などを売るコーナーがそれぞれ分かれているので、何も飲まずに出てくることは可能。
風間ゆり子個展=Ciel(中央区南19西15)
札幌の市街の何気ない風景や、家の解体現場などの写真。
林の中で空を見上げて撮った6枚組みも。
その6枚の、写真と写真のあいだの空白に着目し
「私達が目で見ている空間は本当に連続しているのでしょうか。微妙に『ズレ』を生じているのではないでしょうか」
とか、ほかにもいろいろ思弁的なキャプションがついていた。
筆者が思うに、それは考えすぎです。
空間をつづけて撮影したつもりでも、写真と写真の間にはわずかにズレが出てきます。それはたぶん、レンズは球面だからです。
29日まで(月曜、17日休み)。正午から午後11時まで(平日は午後3−6時準備中)。
Cielは、古い民家を改造した、ビールやワインが飲めて食事もできるカフェ。
作品は、別室に展示されていますが、そこにもテーブルがあるので、混雑している時はお客さんがいると思われます。
筆者が入った時は、午後1時半でしたが、店内は客もすくなく、じつにしずかで、おちつけました。
そうそう、玄関などに、竹下青蘭さんの墨象のシルクスクリーンがありましたよ。
なにも注文せずにギャラリーだけ見て帰るのはちょっと勇気が要りそう。
白石藻岩通沿い。市電ロープウェイ入口下車、環状通と藻岩山麓通の交叉点に出たら左折してすぐ。徒歩3分。
駐車場4台あり。
そのほか、札幌彫刻美術館(宮の森4の12)に「北の彫刻展」を見に行きました。これは後日。
そこで、学芸員の井上さんからお聞きしたのですが、ことしも旭川で「彫刻フェスタ」が開かれている由で、忠別川の河川敷で、山谷圭司さんと、藤井忠行さん(と一般市民のみなさん)が、公開制作をしているそうです。
一昨年とちがい、ぜんぜん情報が札幌につたわってきてないような気がするんですけど。
新道展の紹介もまだ書いていません。もうちょっとお待ちください。
あの世界を揺るがせた事件から1年。とりあえず、これまでのところ大事件は起きていないようです。
9月10日(火)
樫原 功写真展「翔 飛…北の空から」=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館)
網走管内小清水町で熱気球愛好家団体の副会長を務めている樫原さんの初個展。
写真の大半は、熱気球に乗って上空から写したものではなく、熱気球のある風景です。いやー、広々としていて、いいですよー。
なんだかストレスたまってるナーって人は、ふらっと見に行くと、きもちが楽になるんじゃないかなあ。
小清水は、網走市にわりとちかい畑作のマチ。オホーツク海に面しており、原生花園などがありますが、マチの中心は内陸です。
北海道でも、札幌はかなりの大都会ですが、小清水までくると、どこまでも規則正しい畑と防風林によるパッチワークのような風景がひろがり、その向こうに、斜里岳や海別岳など知床の神々しい山々がそびえているのです。
画像の一部がこちらにあります。◆
北海道新聞の10日夕刊1面トップに
「道銀、本店ビル売却」
という記事が出ていました。
それによると、北海道銀行の本店ビルは1964年建設で、耐用年数は約50年。「道銀は五年前から新しいビルのあり方を検討してきた。」とあります。
いまでこそ札幌には無数のビルがありますが、このビルが大通公園に面した一等地に出来たときには、東北・北海道で最大のビルだったのです(もともと日銀の札幌支店があった)。ビルの南側にひさしが造られたり、北側から南側に通路をとおして自由に通れるようにしたり―といったことは、当時の札幌では劃期的なことだったようです(「さっぽろ百景」北海タイムス社、1965年刊)。
ところで、気になるのは、この本店ビル1階ロビーに、北海道がうんだ彫刻の巨匠、本郷新、佐藤忠良、山内壮夫の合作になる巨大なレリーフ「大地」が設置されていることです。旧東京都庁舎の取り壊しとともに岡本太郎の壁画もこの世から消えましたが、かねてから文化に理解の深い道銀には、その轍を踏まぬようおねがいしたいものです。
9月9日(月)
ホームページの一部が閲覧できない状態になっていたのは、やはり容量オーバーが原因でした。このたび、サーバから一部のページを削除しました(5、6、7月のスケジュール、i-mode用ページなど)。とりあえずはこれで大丈夫かと思いますが。
ホームページが不完全な状態でいるあいだに、40000ヒットを達成しました。
3万が6月14日でしたので、3カ月足らずで1万を積み上げた計算になります。みなさまが訪れていただいたおかげです。ありがとうございました。
というわけで、本格的な更新はあす以降になります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくおねがいします。
9月7日(土)
まずは、8日で終了する展覧会について、まとめて寸評。
白戸孝行作陶展=ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28)
白戸さんは、赤平に窯をひらいてます。
道内の陶芸界では「北海道の土は陶芸に不向き」というのが定説になっているのですが、白戸さんは、上川管内剣淵町の土など、道内でとれる土だけを用いて、シンプルな器や茶碗、壷などをつくりつづけているのがすごいところです。
今回は「塩釉」という技法による鉢や茶碗にもとりくんでいます。
これは、窯が高温に達したとき、窯のなかに塩を投げ入れると、熱で分解したナトリウム(塩の一部)と粘土の珪酸が反応して釉薬になるというものだそうです。
見た目は、自然釉よりも焼き締めにちかいものがありますが、備前のように自己を主張するのではなく、おちついた渋いつやがあります。
能登誠之助七宝展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
能登さんは札幌在住で、道内でがんばって七宝に携わっている作家の一人。今回は、平面が20数点展示されています。
一般的な七宝よりも能登さんのは、色彩が抑えがちなのが特徴。
また、支持体である金属を露出させた作品もあって、あらためて七宝が金工の一部門であったということを思い出させます。
「憧とアクロポリス」と題された連作は、古代ギリシャの壷などをモティーフにしていますが、ガラスの技法なども併用しているのでしょうか、ちいさな画面に奥行き感がずいぶん出ています。
工藤和彦、小寺沢恵子、佐藤倬甫 陶・三人展=同
いずれも個性的な器がならびます。佐藤さんは粉引、小寺沢さんは絵付、工藤さんはこれは自然釉でしょうか。この3人については、akaさんが「ぞ」でくわしく紹介しているので、そちらを読んでいただいたほうがよろしいかと思います。
千葉尚・博子 布もの・土のもの=さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)
芦別の方。尚さんは、灰色の微妙な色調に特徴のある器。博子さんの染織は、シンプルです。
『スイス』スケッチ紀行展=コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
毎年恒例、札幌の版画家の渡會純价さんと行く欧州スケッチ旅行のメンバーによるグループ展。
となると
「ははあ、外国の風光明媚な風景を淡彩かなにかで写生したのが並んでいるんだな」
と思うでしょ。
でも、それだけじゃあないんですよ(もちろん、そういうのもあるけど)。
とくに今年は、スケッチの成果を油絵や版画に仕立てて出品している人がめだちます。
草刈喜一郎さんの「トゥワン村にて」は、いつものようなおだやかなタッチの油彩ですが、「イボワールの一角」は、斜めの直線を生かした力強い構図で、マチエールもナイフを使って、迫力ある画面にしあがっています。
黒田博子さんは「ユングフラウの詩」など4点の版画で、アルプスなどの印象を単純な色彩に再構成。
藤松繁治さんの水彩も味わいがあります。
さて、渡会さんはパステルなどを使った、独特のあたたかみあるスケッチ4点を「旅映え」と題して展示しています。
あー、それにしても夢のような旅行だなあ。スケッチブックを小脇にのんびりヨーロッパ。いいなあ。あと20年はむりだろうなあ(ためいき)。
サークルもりの木水彩展=札幌市資料館(大通西13)
森木偉雄さんの教室展ですが、なかなかみなさんおじょうずで、楽しく見ました。写実的な画風の人が大半です。
特徴としては、裸婦がけっこう多いこと。
そのなかでは、小路七穂子さん「華V」が、気品があって好感をもちました。「中島公園 盛夏」も、落ち着いた風景画。
三村克彦さん「エンジン」は、昨年の道展入選作につうじる、迫力ある大作。
湯淺恵美さん「何時かどこかで」は、人形やカレンダーをモティーフとしたうまい作品で、いつかどこかでみたことがあるなあとおもっていたら、昨年の道展入選作でした。
橘田君代さん「樹」は、太い幹を手前にもってきた構図が良いです。
第2回十人十色会水彩画展=同
こちらは国井しゅうめいさんの教室展。ただし、国井さんは「国井周明」の名で、林の中の古い民家を描いた「いにしえの風」を出品しています。
全体的なさわやかさ、明度の高さは講師ゆずりでしょうか。といって、全員がおなじ画風なのではありません。
永井悌子さん「たんぽぽ」は、黄色の点が野原いっぱいにひろがり、夢の中の景色のようです。
大滝千津子さん「小さな村」は、フランス・イボワールの風景。レマン湖のほとりにある村ですが、こんなところの絵を1時間のあいだに2枚も見るとはおもいませんでした(^_^;)。大滝さんも、渡会さんのツアーに参加したようです。
こんどは、10日終了の展覧会。
北の祭 江差姥神大神宮祭礼 為岡進写真展=イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)
タイトルの通り、江差のお祭りの情景をとらえた写真展。数えてみたら、216枚もありました。
とても人口13000人の町とはおもえないほどの盛り上がりです。
北海道の人間には、この手の「伝統行事」的ノリはかえって新鮮だったりします。
会場では写真集も販売していますが、展示していない写真ばかり載っています。さすが通い詰めているだけのことはあります。
金沢一彦銅版画展=大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)
たのしい、夢の世界を繰り広げる金沢さんの版画。近年は、木口木版やエッチングに凝った時期もありましたが、ことしは金沢さんほんらいの、サンドブラストによる作品が大半です。
金沢さんの作品の魅力は、うまくいえませんが、あんがい2色というのがいいのかもしれません。カラーよりも、落ち着いた色合いが、むかし見た夢の記憶にちかいような気がするのです。子どもたちが、あそんだり、馬に乗って出かけたり、平和なユートピアとでもいうべき情景が展開されています。
ことしは、螺旋や、うねる道のイメージが多いようで、右の写真の「羽衣」もその1点。単色の大作「天に行く路」(題名ちがっていたらすいません)は、うねうねとした道を人々や馬車がすすんでいる一見のん気な作品ですが、筆者は
「ああ、なんだか人の一生みたいだなあ。人は、長い長い道のりをあるいて、しかしけっきょく天にたどりつくことはできない。たどりついたときには死んでいて到着を認識することができない。むなしいなあ。でも、そうやって生きていくしかないのだなあ」
などと、とりとめのないことをかんがえていました(どうもさいきん、発想が暗い)。
1枚2000円の「ちいさな銅版画」という超ミニ作品もあります(写真の右側にたくさんうつっているもの)。
金沢さんは道展、日本版画協会、道版画協会の会員。札幌在住。
龍玄陶展=同
空知管内栗沢町美流渡に窯をかまえる塚本竜玄さんの個展。
塚本さんといえば、黒釉の壷や器のイメージがありますが、ことしも天目、油滴の茶碗をはじめ、何点もならんでいます。そして、ただ黒いだけでなく、よく見ると青みがかっているのもあったりして、黒という色の奥深さをあらためてかんじさせます。
黒釉ではない、「伸びる塔」「いつ夜が明ける」といったオブジェも出品され、あらたな展開をみせています。
ほかに、木下知子個展(スカイホール)、遠藤英子油絵展(さいとうギャラリー)、塚田正巳個展(コンチネンタルギャラリー)、木村寿之水彩・裸婦デッサン展、トライアングル展、第2回福原純子・斎藤絹子二人展〜花に想いをこめて(以上札幌市資料館)を見ました。
十勝日誌vol.3で米原眞治さんのお名前が間違っていました。どうもご迷惑をおかけしました。
9月6日(金)
きのうは、2行書いたところで力尽きて寝てしまった。
アレキサンダー・ディミトリエヴィック SRBIJA DO TOKIJA 〜セルビアの勢力を東京まで〜=CAI(中央区北1西28)
なぜか、ここでブラウザの画面がとぎれてしまうので、彼の個展については、ページの下に移します。■
9月5日(木)
第47回新道展へ行きました。
ことしから図録がオールカラーになりました。
詳細は「展覧会の紹介」にて。
9月4日(水)
小樽に行きました。
まず、市立小樽美術館(色内1)の「ぼくらのヒーロー&ヒロイン展」。
一見、子供向けですが(そして、じっさい、当初はそういう計画だったそうですが)、じつは「美術館」「美術」という「制度」を根っこから再考させる挑発的な展覧会になっています。
「展覧会の紹介」を読むと、筆者の意外な(あるいは「やっぱり」な)一面がわかるかもしれませんが、それはさておき19日までです。小樽へGO!
それにしても、行くのがおそくなって、Hさんにはご心配おかけしました。
美術館のすぐ横には、旧手宮線のレールがまだのこっており、ことしになってずいぶんきれいに整備されましたが、それを余市側に進むと、駅から海に至る道路から先は草ぼうぼうの空き地のままです。そこが、’02小樽・鉄路・写真展の会場です。
写真の野外展なのですが、ずいぶんたくさんの人が参加していました。
展示の方法も、パネルを立てたり、金網に取り付けたり、写真を入れたファイルを箱に入れて置いたり、とさまざまです。藤川弘毅さんのように、写真を古い額に入れて、赤い脚立から吊り下げた人もありました。
衣斐隆さんはプリントを、金網からつりさげていましたが、だいぶ丸まっていました。
写真の中身についてですが、「小樽イコール・ノスタルジックな街」という印象に凝り固まった人が多いのがざんねんでした。まあ、しかたないのかもしれませんが。
そんななかで、新田真紀さんは、さびしげな坂道や栗の実などをうつし、等身大の小樽の街に目を向けていました。
また、紅露亜希子さん、平野真由美さん、窪田万里絵さんといった人たちは、なにもない道や植物を撮り、或る種のしずけさをとらえていたようにおもえます。川畑理恵さんの海、植村奈央美さんの夜景や砂浜にも、似たような感受性があります。モノクロというのも共通しています。
一方、原田朱美さん(? メモの字がきたなくて判読できない。ごめんなさい!)は、オリンパスペンで撮った札幌などの風景。河川施設やネオンサインの色が毒々しい。といって、この人はそれを責めているのではなく、けっこう愛着をもってながめているみたい。
岩沢睦さんは、古いコンクリート構築物をでかいプリントで表現し、迫力があります。
男性では、瓜生裕樹さんが、倉庫や有刺鉄線などを題材に、空虚感、殺伐とした感じをよく出していました。
大友俊治さんも力作。仮面を剥いだ男のイメージは鮮烈でした。
8日まで。
作家集団「連」展=古屋ギャラリー(花園4)
道展などの入賞・入選をめざして切磋琢磨しあう男性グループの絵画展。8人が100号9点、130号1点とう、意欲的な展覧会です。
小川智さん「残照の秋(とき)」はあかるく影のない色彩で小樽運河を描きます。一方、高橋晟さん「古い建物」は、ナイフをフルに使って、建物を威圧感ある様相に仕立てています。
比較的あたらしいメンバーの村元道男さん「懐しの小樽」は、素直でおだやかなタッチが、見る人の心を和ませます。
ほかの作品はつぎのとおり。
上嶋俊夫「裏小路」
小川「爽秋の丘」
佐藤順一「漁船」
奥谷晃啓「朝の汽笛」
工藤英雄「鳥」
小林達夫「12月積丹」
村元「火山と湖の大地」
ほかに、道展会員がこの会の世話人として賛同出品しています(野田恭吾「夏の華」=F6、松田孝康「9・11の碑」=F8、古谷五男「小樽公園教会」=F10)。
8日まで。
古屋ギャラリーは、花園十字街から坂を上り、教会の裏手にあります。
1日、小樽駅構内に「小樽ステーションギャラリー」というちいさな画廊がオープンしました。
類似の施設は釧路駅にもあります。釧路は、佐々木栄松の絵を駅の端っこの大きな部屋に常設展示しており、たしか有料でした。
小樽は、いろいろな人の絵や彫刻を展示しています。無料ですが、1番ホームの端(余市側)にあるので、列車の利用者や入場券を買った人でないと入れないのがミソです。
ギャラリーの入口には、以前から
「小樽駅の記念撮影スポット」
として知られる、石原裕次郎の等身大写真があります。
絵を見に来る人を「俺は待ってるぜ」ってなとこでしょうか。
展示されているのは以下の通りです。
松島正幸 「釧路河口」(F10)「灯台の見える夏の漁村」(F20)
森本三郎 「天狗山」(F25)
上野山清貢 「蟹」(F25)「摩周湖」(F40)
伊藤昭夫 「小樽港風景」(F20)
國松登 「雨後の海・鵜」(F10)「夕影」(F30)
田辺三重松 「夏の洞爺湖畔」(F80)「羊蹄山早春」(F60)
金丸直衛 「北の街と港」(F80)
勝見渥 「手宮機関庫」(F60)
流政之 「化身」(黒御影石)
というわけで、流さんの抽象彫刻をのぞけば、あとはなにがかいてあるのか分かる絵ばかりで、一般の人も気軽に入れます(^.^)
流さんと勝見さん以外はみな故人で、道内の美術史に名を残す人たちばかりです。
筆者は、松島の「灯台…」にひかれました。あかるく、濁りのない色調で、松島のなかでも佳品に属するのではないでしょうか。
また、國松「夕景」は、馬に乗った長い髪の白衣の少女を近景と遠景に配し、右側には水面に影をうつす3本の木、イエローオーカーの丘の土、左奥には森、上方にはオレンジの空を描いており、彼の作品でもとりわけロマンチックな詩情をたたえています。
9月3日(火)
2日は、丸山隆さんの「お別れ会」に行った。
丸山さんについては8月30日の項で書いたのでくりかえさないが、とにかく、信じられないというきもちがまだつづいている。
人の死について。芸術家が遺した作品とのかかわりについて。とりとめのないことをかんがえつづけながら、苗穂駅までの道を歩いた。
夕方は、第11回押花アート展の審査を、多比良桂子さんからたのまれていたので、搬入の終わったばかりのギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)に出かけていった。
この業界のことはさっぱりわからないのだが、じぶんの好みでやらせていただいた。
というか、絵とおなじく、構図がすっきりしていて、配色がうつくしいものという基準でえらんだ。
多比良桂子個展も開催中。
樹皮をつかい、あえて色をあまりつかわない作品にもチャレンジしているのがおもしろかった。
9日まで。その後、月形温泉に巡回。
多比良さんのページはこちら。
つづいて、傘寿記念・栃内忠男自選展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)へ。
2階のA・B・C室をつかった、大規模な個展である。
栃内さんは独立美術・全道展の大ベテランで、まだまだ矍鑠(かくしゃく)としておられるが、近年は目の調子があまりよくないらしい。
作品は、栃内さんの長年のテーマともいえる自画像とリンゴが中心。
生っぽい色を大胆につかった絵が多くて、マティスの晩年をおもいだしてしまう。
それにしても、栃内さんの記憶力は驚嘆すべきもので、戦中に見た独立美術の絵のことなどをしっかりおぼえていらっしゃる。
「ぼくがはじめて見たのは、第14回で、まだ会員で死んだのは三岸好太郎だけだった。戦後すぐの独立美術では、戦時中に死んだ清水登之の特陳をしてた。清水登之、いいえかきだったなあ」
「さいきんはみんなぼくのところへ聞きにくるんだ。この秋に芸術の森で、亀山くん(良雄。道展の画家。97年歿)の展覧会をやるだろ? 美術館から話を聞きにくるっていうから
『畠山(三代喜)くんのところへ行ったほうがいいんじゃないか』
って言ったら
『いや、畠山先生は入院なさっていて』
と言うんだな。そしたら、すぐ亡くなっただろ。会がちがってもぼくのところへくるんだ。小谷(博貞)さんも亡くなったし、あのころの(=むかしの)話をする相手がどんどんいなくなってしまう」
「ぼくは、小川原さんを目標にがんばっていたんだ、あのくらいまでは生きようって」
「いま全道展(の絵画。道内)でいちばんのお年は遠藤ミマンさんか。あの人は、若いころリウマチで苦労された。だからね、病気が多いから早死にとか、元気だから長生きとか、そういうのはないんだなあ」
なんだか、しんみりしてきました。
阿部啓八展=ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
つぶした空き缶を表面に張るなどした抽象画。色を抑え、シャープな表現。
いずれも8日まで。
9月1日(日)
PLATE-MARK ]T=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
小樽出身で東京在住の版画家、小林大さんの呼びかけで、毎夏ひらいている版画展。札幌と東京の若手・中堅版画家の作品が見られる、ユニークな展覧会です。
ことしは、石川亨信、上田靖之、小林大、佐竹邦子、鈴木吐志哉、角田元美、戸嶋由香、友野直実、西川肇一、涌田利之、渡邊慶子の各氏が参加。
初出品は千葉県の角田さん。ベニヤ板によるリトグラフの「原始 OKHOTSK」など、角の生えた魚のシリーズがなんともかわいらしいです。
昨年はちょっぴり淫靡な感じで魅せた木口木版の湧田さんは、ことしは、ビートルズや、昔の日本映画へのさりげないオマージュの感じられる作品です。
主宰の小林さんは、シーサーを主題にした20種の版画を各50枚、計1000枚あまりを、ずらーっと壁にならべました。版画の複数性を意識化しつつも、それぞれが刷りの状態などで微妙に違うという、版画ならではの特性を打ち出した作品だといえるでしょう。
佐竹さんは、あいかわらず豪快ですが、細長いシャッポのようなフォルムが特徴で、すこしまとまりが出てきたのかなーという感じです。
3日まで。版画好きはぜひ!
パソコン不調のため、彼のテキストが消えてしまいました。書き直します。
アレキサンダー・ディミトリエヴィック SRBIJA DO TOKIJA 〜セルビアの勢力を東京まで
札幌アーティスト・イン・レジデンスがユーゴスラビアから招聘した作家。
ついこないだまで、それまでなかよく共存していた諸民族が憎しみあい血で血を洗う内戦を繰り広げていたところだけに、テーマも重い。
今回は、作家がベオグラードの工事現場で見つけた、ファシストによる落書きがヒントになっている。
自国の勢力分野をユーラシアの果てまで広げようという失笑ものの落書きだが、一笑に付すことのできない深刻なものをはらんでいるのではないかと作家は言うのだ。
「ひとつの民族、ひとつの帝国、一人のリーダー」というイデオロギーに基き日本まで侵略したいのでしょう。日本の向こうには、彼らには興味のない海しか無のです。自らの大儀の正当性を訴え、その力を誇示するために、はるか東にある大都市「東京」を、漠然としたイメージとして利用したのです。そこで、大意なしに描かれたこのスローガンを、このメッセージを向けられた日本に、実際に設置するのはどうだろうかと考えました。このスローガンを、どのように札幌の街に取り込むのがよいかと考え、広告や信号機のように設置するのがよいのではないかと思いつきました。そこで、セルビア語、日本語、英語で、「セルビアの勢力を東京まで」とそれぞれ描いた旗を、すすきのと琴似に設置しました。また、同じスローガンを描いた、小さな看板を作り、お寺や、居酒屋などにも設置しました。このアイデアは二つの異なるイデオロギーの大いなる相違を示そうとしました。どちらもトラディショナルな価値に基づくものです。ひとつは近代的で成功した社会、そしてもう一つは古い間違った神話をリサイクルし、現実離れしたイデオロギーの社会なのです。
というわけで、CAIの前にものぼりが立っていました。
こののぼりを、すすきので、通りすがりの少年らに持ってもらい、撮った写真などが、会場に展示されていました。
「破壊的な政治を行う人々」と題されたビデオ連作3本も流されていました。
会場内のパネルには、自国の政治状況を批判して
「民放局B92の討論番組も自称『革新的なセルビア知識人』の政治議論好きな人々を満足させるにすぎない」
という意味のことが書いてありました。
ミロシェビッチ独裁下でB92がどれほど弾圧に耐えてがんばってきたか、筆者はまったく知らないわけでもないので、こういうふうに断言されると「そうかなあ」という気もしますけど…。
6日で終了。
(柴田尚事務局長から寄せられた文章はこちら)