東川の空つれづれ日録の題字

 2002年8月前半

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 8月14日(水)
 
家族のリクエストで、ふたたびイタリア・ルネサンス三大巨匠素描展 −レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロとその流派芸術の森美術館)を見に行きました。
 会期末とあって、さすがにかなり混雑していました。

 ここでおさらい。
 「ダ・ヴィンチ」というのは、苗字ではありません。「ヴィンチ村の」ぐらいの意味で、レオナルドの出身をあらわしているだけです。
 だから、彼のことを「ダ・ヴィンチ」と呼ぶのは、かなりおかしいことです。
 わたしたちは、名前といえば「姓プラス名」(あるいはその逆)というふうな固定観念でとらえがちですが、そうでない名前もたくさんあります(たとえば、ミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんは、すべて名であり、姓はふくんでいません)。
 ところで、ラファエロとミケランジェロは、姓ではなくて名だとおもうのですが、どうして名のほうでよぶのでしょうか。どなたかご存知のかたはご教示ください。


 8月13日(火)
 仕事に行くためバス停でバスを待っていたが、いっかな来る気配がない。
 どうしたものかと思っていたら、気がついた。きょうから「お盆ダイヤ」で、土日のダイヤになるのだ。
 というわけで、きょうはギャラリー回りはありません。


 8月12日(月)
 第32回 グルッペ・ゼーエン展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)A、B室
 恒例の、道教育大の同窓生7人によるグループ展。毎年つづけていることに、まず敬意を表したいと思います。
 全体的には、シンプルな作品が多く、すっきりした会場になっています。
 やや画風が変わったのが照井栄一さん(札幌)。これまでのめだつモティーフだった紙風船が姿を消しました。「《降》シリーズ」は、オレンジ、濃緑、ベージュ3色の円が、ピンクや茶の壁のような空間を、スローモーションのように降りてくるイメージです。
 井上象元さん(岐阜県)は、前進色や後退色の効果をたくみに用いた絵画を毎年出品しているので、目がはなせません。ことしの「晶シリーズ」は、濃淡ある青の地の上に、刷毛をさっと走らせたような白の筆触が、全面にちらばっていますが、よく見るとこの白は薄い紙を張り付けたものなんですね。
 「ふぁー」シリーズで七色の薄い布を発表してきた染織家の西本久子さん(札幌)は、今回は薄い色の布を天井からつるしています。複数の布で、色のうつろいを表現しているようです。
 多田紘一さん(同)「風樹」は曲線を生かした木のかたまりを組み合わせた彫刻。
 玉木憲治さん(岩見沢)「徊シリーズ」は版画。似たかたちの繰り返しの効果。
 野崎嘉男さん(同)「記シリーズ」は、ここ数年取り組んでいる、規則正しくならべて描いた正方形のなかに、それぞれ異なる単純な線や形をひっかいて描くというもの。ただし、正方形が、凹型になっていたりして、変化の兆しが見られます。
 丸藤信也さん(札幌)「色の帯」も近年取り組んでいるシリーズで、細い線の反復と色の帯で、いろいろな色調の画面をつくっています。

 これから…展=同D、E、F室
 こちらは、道教大美術課程卒業35年記念展。開催は3度目です。
 まだ教職についている方が大半ですが、大橋郁夫さんが「函館」の油彩を2枚出品しています。

 渡辺和弘・塗装工芸展=同G室
 札幌在住の漆工芸作家。
 うつわは一点もなく、すべて平面作品。大作は「旋烈」「虚煌回廊」の2点。いずれも、斜めの線や曲線を生かした、ダイナミックな抽象画といえます。表面のつやと光は、漆ならではです。

 Group鳥7人展=同C室
 絵画、陶芸など多彩なグループ展。
 岡村祐子さんの「嵐が去った日」は、まさにそんな感じのする水彩画。草原の上にさまざまな色がとんでいます。
 辺見富美子さんの油彩「三日月の夕」はロマンチックな雰囲気が漂います。

 いずれも17日まで。

 SUMMER WAVE 7ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
 たぴおではよく開かれるタイプのグループ展。
 太田ひろ、川村雅之、小林孝人、鈴木功一、高坂史彦、竹田博、名畑美由紀、M.ババッチ、藤川弘毅、丸勢文現、山岸誠二の各氏が出品。DMには林教司さんの名もあるけど、作品は見当たりません。
 山岸さんは、絵の具のしぶきが飛び散る絵画ですが、いつもと違うのは、細長い紙を使って、天井から螺旋状につるしているところ。ブランクーシじゃないけれど、天へと永遠に上っているように見えます。
 太田さんは金属の棒を置いた「もの派」的立体。小林さんは、なぜかキノコのカラー写真。
 川村さんの絵画は、表面に銀の飛沫がちらばり、女性像をおおいかくしているようにも見えます。
 24日まで。日曜は午後1−5時のみ開場。

 浜野三喜男彫刻展=大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)
 フクロウなどの木彫が10点、石膏?の首が3点あったけど、首のほうが好きです。
 恵庭在住。

 七田篤則(芳山)作品展=同
 宮澤賢治、種田山頭火の詩句を書いた色紙、軸装した墨彩画など。一種の文人画でしょうか。
 「風がふけば桶屋が儲かる」の全文?などをマジメに書いているのがオカシイ。
 1938年深川生まれ、盛岡在住。
 いずれも13日まで。

 古代エジプトの至宝−ピラミッドとオベリスク写真展NHKギャラリー(大通西1)
 病院長の田中信義さんのカラー写真展。
 たしかに、ピラミッドを至近距離から撮った写真って、ありそうで案外なかったかも。
 15日まで。

 表紙の題字を、開設以来はじめて変えました。
 題字が細くなり、スクロールの手間がちょっと省けたと思いますが、いかがでしょう。


 8月11日(日)
 道東編ダイジェスト。

 9日、特急「とかち4号」で帯広へ。
 まず道立帯広美術館へ行き、池田緑展とニルス=ウド展を見る。
 
 ニルス=ウド展は、すべて写真による紹介。木の実を積んだり、浮島にスイセンを植えたり、花で染めた雪玉を置いたり−といった、自然の中に自然の素材で、いずれは消えてしまう作品を設置した記録。まあ、一種のアースワークであり、それもアースワークのロマン主義的な面が出た作品だとおもいました。
 ただ、あんまりこういうナショナリティーがどうこうという言い方はすきじゃないけど、でもやっぱり、日本人ならもっとあっさりやってのけそうなところを、さすがドイツ人、なんでもきっちり幾何学的に、しっかり構築されたものをつくらなきゃ気がすまないんだな−と感心。そっと、タンポポの花で図形を作ったりするだけじゃ物足りないらしく、ものによってはほとんど土木工事的なスケールになっています。
 個人的には、69年までパリに滞在し、72年から現在のスタイルの作品になったというのがどうも気になります。これは推測でしかないのですが、ドイツ・ロマン派が、ナポレオン戦争の敗北によって故国「ドイツ」(という物語)を「発見」したのと同じように、世界的な学生反乱の敗北を機に作者が別の世界(ユートピア)を「発見」したのではないか−という気がしてならないのです。
 9月4−6日に公開制作。
 7日午後2時から、レクチャー「自作を語る」。

マスクツリー拡大図mask_tree 池田緑展については、回顧展的な構成。ニューヨーク滞在中につくったビデオ作品が新展開といえそう。
 なお、美術館外にも、マスクがあちこちにあります。目を凝らしてください。
 右の写真(29.8kb。ちょっと重くてすいません)の木も「マスクツリー」と題され、枝からいっぱいマスクがぶらさがっています。右側のブールデルの彫刻にもマスクが結わえられていますので、これからご覧になる方は、見落とさないでください。
 ほかにも、館内の意外なところにあるかもしれませんよ。

 いずれも9月16日まで。 

 隣接の帯広百年記念館で「小林満枝日本画の世界」を見ました。
 これは、まったくノーマークで、館の前を通りかかって初めて知ったのですが、いい展覧会でした。
 小林さんは、ことし1月に82歳で亡くなった帯広在住の日本画家。十勝ではじめての道展会員です。
 展示37点の大半は植物を題材にした絵で、ほかに風景画がすこしあります。いずれも、派手さはないものの、落ち着いた目で対象を凝視しています。
 (紹介を「十勝日誌 2002夏3」に)
 18日まで。

 両館のたっている緑ヶ丘公園を一周して「とかちの環境アート2002」を見ました。
 広い公園内に、地元・十勝の作家によるインスタレーションなどが点在しています。
 あす以降、写真とともに紹介します
 9月23日まで。

 それから、都心部に点在する「デメーテル」関連のCITY PROJECTを見て回りました。
 ちょっときついかき方になりますが、はっきり言って、大半の会場に失望しました。
 ホシビルに展示されている十勝の作家の作品についても、緑ヶ丘公園のほうがずっと見ばえがしました。屋外と室内の作品を有機的に関連付けたうえで、ある一定の水準まで達していたのは、佐野まさのさんぐらいだったとようにおもえました。

 それからふるさと銀河線で北見へ。
 帯広競馬場(デメーテルのメーン会場)は、帰路(11日)、蔡国強さんの花火とあわせて見るつもりでしたが、家族が体調をこわし、立ち寄ることができませんでした(T_T)
 近いうちに再再訪を果たすつもりです。

 10日には、網走市立美術館の松樹路人展を見ました。
 松樹路人さんの回顧展は、97年に道立近代美術館でも開かれましたが、今回はその後の展開もフォローしており、またちがう作品もかなり多く出品され、見ごたえのある個展になりました。

 というわけで、詳細はあす以降。


 8月8日(木)
 
10日で終わってしまう展覧会2題。

 森山三郎素描展
ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館)
 小樽に住み、小樽の風景を描き続けた森山さん。
 10年ほど前に亡くなりましたが、いま健在なら一原有徳さんのひとつ上になります。
 50年代のものが中心ですが、木炭で懸命にフォルムをとらえようとしている素描は、古い坂と港の町の息遣いをいまにつたえています。

 30周年記念 日本現代工芸美術展北海道会展札幌市民ギャラリー(南2東6)
 昨年も書きましたが、伝統工芸に比べ自由にものづくりをしている点で、スタンスがちがいます。
 ことしは、陶芸の清新さが、なぜか筆者の目を引きました。
 4月に個展を開いた横田恵子さん(札幌)の「雪動」は、純白のざらついた色彩もさることながら、シャープな造形と優美さとがすっきり同居しているところがいいです。
 佐山由紀江さん(帯広)の「十勝野−予感」「十勝野−躍動の季節」は、十勝の大草原を連想させるゆるやかなフォルムと鮮烈な緑色による、わかりやすい作品。
 古家智子さん(同)「樹海…薄暮」は、オレンジから緑へとうつろう色彩の変化がうつくしく、見ていて飽きません。
 木村クニさん(同)「風のささやき」は、まるいフォルムに親近感がわいてきます。
 
 鋳金、鍛金の会員も、重厚なたたずまいの作品を発表していました。

 ほかの出品者はつぎのとおり。
 木工
阿部憲司(函館)「今朝は颯爽と」=会員
 陶芸
伊藤英実(渡島管内七飯町)「廃屋」
石井幸子(帯広)「円かなるとき〜朝」
石川久美子(函館)「星時雨の粒」「Dulcamara」
岩崎貞子(岩見沢)「風樹」
海野真紀(帯広)「安寧」「混淆」
柿崎直人(渡島管内森町)「凛々と02」
金子章(帯広)「悠空」
佐藤勝子(函館)「an object of」
佐藤留利子(函館)「ニケ」
清水幸子(帯広)「慈しみ99」
高橋タケ(帯広)「山水」
谷口光伸(檜山管内乙部町)「蒼天の岬」
原久肖子(帯広)「大地からの芽吹きU」
三浦千代志(函館)「跡」
宮川祐美子(帯広)「胎生」
山中佳津美(帯広)「流氷〜オホーツク海〜」=以上会員
岩間幸子(函館)「glowing」「zone」
 染織
笹島和子(函館)「逝夏」「縄文賛歌(U)」
庄司光江(同)「霊華」「流れ星」
田中和子(渡島管内七飯町)「凍夜幻想」=会員
 ガラス
佐藤博子「眠らない街」
安井幾久子(小樽)「growth」
安井顕太(小樽)「緑彩紋花器」=以上会員。
小橋由実(函館)「きつねの窓」「伉儷」
 鍛金
田部隼夫(札幌)「想う」「層層」=会員
 鋳金
折原久左エ門(函館)「連作−道標T」「連作−道標U」
中秋勝弘(札幌)「北辺の道」「連作−北の街−」
中川眞一郎(檜山管内乙部町)「微風」
福井伸一(渡島管内七飯町)「elements」
丸山裕淑(渡島管内松前町)「定−2002春−」=会員
 七宝
関原範子(札幌)「道」=会員
 
市川萌(札幌)「2002 宙に奏でる」 

 9、10日は、またまた札幌をあけるので、更新しません。
 11、12日には、道東の情報をお伝えできれば−と考えています。


 8月7日(水)
 本州、四国、九州の方、連日の猛暑、お見舞い申し上げます。
 北海道はすずしいです。
 札幌は正午の気温が24度。午後からまた雨です。
 あすの紋別の予想気温は、最高が13度、最低が12度。皆様方の暑さをすこしわけてもらえないものでしょうか。

 綿引展子展=TEMPORARY SPACE(中央区北4西28)
 VOCA展(現代絵画の登龍門)に2年連続してノミネートされた若手画家。
 和紙にオイルパステルで、おおまかなかたちと明快な色彩の絵を描いている。人の顔や目、口などが昔のマンガのように単純化されており、どの絵にも真っ黒い部分がある。
 会場に貼ってあった筆者のテキストによると、この黒い部分は「虚無の穴」だという。
 「生き物としての有と、虚無の穴」が相対峙しているのだ。
 もっとも、テキストと、「拮抗し、素手で受け止める」「断念と自由を同時に信じる」といったタイトルがもしなかったら、畦地梅太郎の木版画の一部を拡大した絵みたいに見えるんだよなあ。
 10日まで。

 以下の項は、すべて11日まで。

 小坂耀一 木彫近作小品展=エルエテ ギャラリースペース(南1西24の1の11リードビル2階)
 毎年の道展には、削り跡とフォルムの美しい木の立体を出品している小坂さん。「工芸」部門なのはどうしてだろうと思っていましたが、今回の個展で疑問が氷解しました。
 フクロウのレリーフや、花をモティーフにしたちいさなペンダントやかわいらしいブローチなどがあわせて100点ほど。どれも「作品」というよりは、日々の生活に彩りをあたえそうなものばかりです。しかも、いかにも北海道らしいんですよね。
 小坂さんは、光風会と道展の会員。
 パソコンの具合が悪くて、写真がアップできていません。おわびします。

 ところで、エルエテではしばらく個展の予定がありません。渡辺さんがさびしそうなので、会場が決まっていない方はどうぞ。

 第5回 燎原会展ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)
 石崎哲男(岩見沢)、辻井秀郎、光永実奈子、湊征一郎(以上札幌)による絵画展。
 石崎さんは花の小品が多い。色彩を散らすのではなく、花弁それぞれの存在感をたしかめるような描法。
 湊さんが、昨年の個展にくらべて格段にうまくなったのにびっくり。風景のほか、人形などの静物画も3点ほど出品しています。湊さんのHP「絵画工房丘」はこちら
 辻井さんは、同じギャラリーの隣の部屋で、インドなどを旅したときに見た人々や風景を、水彩や油彩にして、個展も開いています。

 〜生きがい〜宮内英而・孝子夫婦展札幌市資料館(大通西13)
 ご主人は写真と鎌倉彫、奥様は油彩のふたり展です。70代で夫婦で展覧会が開けるなんて、いいですね。
 写真は「木」をテーマに撮ったもの。大木の全体をとらえるより、接近して幹を写したものが多く、表面のしわや光が意外に饒舌なのがおもしろいです。すべて札幌市内で撮影したというのもおどろきでした。
 英而さんのHP「手作り写真集」はこちら(この1年更新していないみたいですが)。

 写遊塾展「四季逍遥2002」=同
 道内のネイチャーフォトがずらり。発色がきれいなのが特徴かも。
 指本直勝さん「静かな夜明け」は、すみれ色の空、薄いオレンジ色の湖面、そしてシルエットを見せるみおつくしなどが、えもいわれぬ調和をつくっています。
 後藤了さん「客土の朝」は、空知管内月形町で撮影。黒々と盛り上がった土と、白い雪の対比のリズムがおもしろいです。

 このほか、資料館では、写人シャドウ15周年写真展、中村昭夫風景画展が開催中。
 スケジュール表に、「高沢のり子 松本淑江二人展」とあった展覧会は「第25回高沢のり子油絵展」になっていました。
 女性の半身像ばかり25点。ピカソを連想させる画面構成です。もっと塗りは平坦ですが。
 高沢さんは新道展会員。この個展は25日まで。

 石林清 四季の風物詩 水彩画展=コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 とにかく会場に置かれた花の数がすごい。百合の香りが数10メートル先から漂います。いったい何をやってらした方なのでしょう。
 花や風景など計55点を展示。

(追記)8日の北海道新聞地方版によると、札幌商工会議所の元専務理事で、89歳だそうです。


 8月6日(火)
 広島原爆忌。

 岸葉子個展=エルム画廊(中央区北2西2、チサンホテル本館2階)
 それまでの、白を基調に絵画空間をつくり、裸婦を配した画風を一変させた岸さん。
 今回の個展では、全道展出品作の「木のある庭園」などをならべています。
 「こんなグリーンの使い方ははじめて。いろいろ言われるかと思ったけれど、案外評判が良くて」
 さまざまな階調の緑の筆が不規則に置かれ、茫漠としたおだやかな空間をつくりだしています。
 パリ・セーヌ河畔の、サンルイ島とシテ島の双方を望む位置からスケッチした作品もありました。
 岸さんは、春陽会と全道展のベテラン会員。東京在住。

 石垣亜希個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 一転、20代の若手です。
 ことし全道展に入賞した「空虚」など油彩の大作がならぶ、意欲的な個展です。
 一言でいうと、
「若いっていいなあ」。
 いや、筆者はけっしてちゃかしているのではありません。
 自意識の過剰とか、世界への不信感といった、若さゆえの感情やエネルギーの発露というのがありまして、それらをいろんなかたちで表現する人はけっこう多いのです。だけど、はっきりいって、スキル(技術)がともなっていない例が大半です(すくなくても美術の世界では)。
 その点、石垣さんは、自画像を大きく描く一方で、おびただしい人物(=他者)を藍系統の色で背景に配置するという路線ができています。「居場所」もそういう一点。これらには、作者の精神情況が、はっきりと刻印されているのだと思います。
 作者のHPはこちら。 

 第26回藻花会日本画展=同
 道教大の川井坦教授の研究室から出発したグループ展。
 越智次郎「景」は、墨だけで描いた木々の絵。といっても、東洋の水墨画とまったく違い、きちんと陰影をつけており、むしろグリザイユににている。
 大塚さつき(道展会員)は3点出品。「星の降る里」が、ロマンチック。
 安栄容子「房すぐり」は、これまでとおなじく写実的な絵柄。あえて右上を空けた構図が良い。
 佐藤弘美子(道展会員)「夏」は、緑や青系統で埋め尽くされた画面に蛍の光がちらばる。きょうのような暑い日にぴったりの絵でした。

 伊藤光悦個展は「展覧会の紹介」で。いそいで書いたので、粗いところがあるかもしれません。ご指摘いただければ直します。ともあれ、重量級の個展でした。
 ほかに北川たまみ個展も開かれていました。
 いずれも、10日まで。

 林茂竜個展スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 札幌在住。台湾出身だということはきょう初めて知りました。
 例年どおりの、水墨画、墨彩画です。
 皮革造画は、ミズバショウなどはあまり革の質感がめだちませんが、後ろ向きの裸婦などは革の存在感がなまめかしいです。

 傳展=同
 札幌の長谷川伝さんの油彩個展。20号以下が29点。
 濁りのない明るい色彩で、自由に構成した風景画などを描いています。「モイワ冠雪」など、季節のうつろいをとらえる目が大胆です。

 想展=同
 押し花絵、染織など多彩なグループ展。
 明本モト子さん(道展会員)の皮革画が目立ちます。その両脇に、古田良子さんと細野マサコさんの皮革画の大作があって、なかなかおもしろい作品でした。

 第29回馬齢会展=さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)
 昨年亡くなった画家の砂田友治さん(独立美術、全道展会員)の「太陽とレール」が賛助出品されています。
 みな作風がばらばらなのは気持ちが良い。
 土井善範さん(全道展会友)「家族」は、キュビスムふうの処理をしつつも、幸福そうな一家の団欒を描いています。
 佐々木和子さん「岬にて」は、緑の波頭がハデにうねる作品。
 高梨美幸さん「横顔」は、小品ながらなぜか気になる女性像です。

 同ギャラリーでは、原賢司・北海道の花と風景画展も開催中。
 以上、いずれも11日まで。

 現在「スケジュール表」には、36もの展覧会が「開催中」となっています。
 まさに、ことしは「美術の夏」とでもいうべきにぎわいです。情報をお寄せいただいたみなさまに感謝します。


 8月5日(月)
 浦島甲一遺作写真展 「十勝野メモリーズ」富士フォトサロン札幌(北2西4、札幌三井ビル別館)
 十勝川の河口のハルニレなどを写しつづけ、昨年4月に亡くなった写真家の遺作展。
 ちいさな判形の写真集「TREE」などは、本屋さんでもよく見かけるロングセラーなので、ご存知の方も多いかもしれません。
 とくに、夕焼け(朝焼け?)をバックに、防風林やサイロを撮った写真は、うつくしいの一言につきます。
 ぜひ右のボタンをクリックして、作品の一部を見てください。
 7日まで。

 ふと思ったのですが、筆者のように札幌住まいの人間にとって、浦島さんが撮影したような十勝の風景は、日々身近にあるものではないにせよ、ちょっと車を飛ばせば見ることができるわりあい身近でなつかしいものなのですが、東京とか本州とかの方はどうなんでしょう。やっぱり、スイスとかノルウェーの風景写真を見るのと似たような感覚なのかな。

 それと、きのうまで車窓から見た道東の景色も思い出しました。
 新得の牧場では、夕闇のなかを、和牛の群れが走っていました。
 馬はよく走りますが、牛が機敏に動くのはめずらしいと思いました。
 エゾニュウとおぼしき背の高い、白い花が、あちこちの森や湿原に、彩りを添えていました。

 さて、本日の真打登場です(^.^)

 イタリア・ルネサンス三大巨匠素描展 −レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロとその流派芸術の森美術館(南区芸術の森2)
 「事業」
という観点からすると、この夏のゴッホ展のライバルにあたるわけですが、べつに身びいきするわけじゃないけど、ちょっと地味かもしれません。
 ネームバリューはすごいけど、なにせ素描です。
 作品は小さいし、会場は暗い。
 でも、やはりそこは、神様のような芸術家の真筆ですので、さすがに圧倒されます。
 レオナルド・ダ・ヴィンチ「2点の昆虫の習作」とりわけ、この中では「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という作者名の後に唯一、「?」だの「派」だの「周辺の画家」だのが付いていない作品(ようするに、疑いなくレオナルドの真筆であるという作品)は、評価額が12億円ときくと、
「ひえー、カミキリムシが6億円で、アリジゴクが6億円かあ」
と、驚きも倍加です(ちなみに、下の絵はトンボではないようです。初めは筆者も、むかしのトンボって胴が太かったんかいな−と思ってました。そんな500年やそこらで生物が進化するわけないやろ)。
 しかし、値段を聞いて感心するなんて、アホみたいだなー。じぶんがイヤになってきた。
 ミケランジェロは、真筆が8点。
 ラファエロは、真筆のデッサンが4点と、油彩の小品が1点です。
 油彩は「聖カタリナ」という作品です。たいへん優美ではありますが、どうしても右腕の二の腕が長すぎるような気がしてなりません(一度気になると、とまらない)。
 この作品、以前はフィリピンのマルコス大統領が所蔵していたという話です。
 デッサンは、やはりラファエロ「《聖母子と幼児ヨハネ》のための習作」「《聖母子と幼児ヨハネ》のための習作」は、見て
「おおー」
って感じでしたね。
 だって、あの名作の聖母子とヨハネの像−「美しき女庭師」と通称がある−を思わせますからね。
 筆者も、かなり以前ですが、ルーブルで実物を見てきました(あそこは、このクラスの超有名作が2段がけになっている、ある意味でおそろしい美術館です)。

 全体を見ると、とくにレオナルドとミケランジェロは、輪郭を黒々と書くことをやめて、油彩のスフマートに通じる明暗の表現を重視してきているようでした。しかし、素描(とりわけペン画)では明暗をつけるのがむつかしいので、鉛白(ようするにジンクホワイトのことだとおもうんですけど)でハイライトを明るくする技法がよくもちいられていたようです。
 それにしても、この展覧会の予習のために、ブルクハルトとか、講談社現代新書の「メディチ家」とか読んだのですが、あまり直接は役に立ってないような(というか、身についてない)気がします。
 と言いつつ、会場の出口には、道内の美術展としてはめずらしく関連図書がかなりたくさん販売されていて、筆者はつい「ルネサンスの光と影」という高階秀爾先生の本を買ってきてしまいました。

 そうだ、いま思い出したのですが、ラファエロは若いころ、仲間を引き連れてずいぶん街でハデに遊んでたようだということを、ブルクハルトが書いていました。
 「美しき女庭師」を書いたのが24歳のとき。あの清純さと、放蕩とは、どうもむすびつかないような気がするのですが、まあ天才ですからねえ。なにがあってもおかしくありません。
 ミケランジェロは、苦労した人みたいですね。

 ナカムラアリ個展 Pandora's Box 2札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 小樽在住の木版画家。海外でのグループ展などにも活発に出品しています。
 会場正面にある「希望の構図 COMPOSITION OF THE HOPE 2002」は、「凍りついた希望」など3種の作品10枚を組み合わせた作品。
 ナカムラさんは昨秋の米国のテロがショックだったようで
「希望のない時代だけど、希望は持ち続けていかなくては」
と考えながら制作したそうです。
 その右側にある「なないろの…」は、紙の端っこを焼いた効果がおもしろく出ています。
 10日まで。

 ロイ・スターブ/Roy F. Staab展 SITE INSTALLATION SCULPTURE & EXHIBITIONFree Space PRAHA(南15西17)
 札幌アーティスト・イン・レジデンス(S−AIR)実行委のまねきで、札幌に滞在している米国人アーティストのインスタレーションが庭にあるとのことで、見てきました。
 題は BIG SHIMENAWA IN SMALL MOUNTAINS
 庭にあるニセアカシアの大きな木の、枝をまたぐように、イタドリで造られたアーチが弧を描いています。さらに、ニセアカシアの高いところから地面へ向けて、U字型にイタドリのつるが吊るされています。
 シンプルな、三つの弧による作品です。それでいて空間のたたずまいを、たしかに変えています。一種のアースワーク的な面もあるのかもしれません。
 10日まで。
 ところで、S−AIRのサイトを見たら、スターブさんの作品は、豊平川の東橋の下と、琴似発寒川にもあるそうです。まだ撤去されてないかな。きょうの大雨で流されていなければいいんですが。

 S.C.リボン グループ展=カフェ&ギャラリーShiRdi (南3西28)
 やっぱりリボンの展覧会ではなかった。写真が4人、ドローイングがひとりです。
 アカネ「ばいばい」。モノクロ4枚組み。
 アサキチカ「My Melody」。カラーたくさん。わりと「女の子写真」系かも。
 島瀬美祈「四月の女」。ドローイング3点。
 ツルノユキコ「DAILIES R.I.P」。カラー4枚。半透明なフィルムに写真を焼きつけ、ちょっと間隔をあけてかさねているのか、なんだかふしぎな感じ。色合いも妙に古くさいし。気になる作品でした。
 野越さゆり「意識の手前」。モノクロとカラー双方の写真たくさん。とくに、花と洗面台が多いみたい。「女の子の日常」というには、どうも「乾いたなまめかしさ」みたいな感じがあります。
 あす6日で終了。

 第3回中央美術協会北海道支部展=大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)
 絵画公募展のひとつらしいです。
 関東・関西の会員の作品が多く、道内からは、8人のみ。
 大黒利勝(石狩管内厚田村)「古い家」「牛舎」は、赤いトタン屋根の色がよく表現されています。
 小野司(札幌)「南国の詩」「しょうぶ園」は、赤、白、黒などの色で葉脈を描き、派手な絵になっています。
 佐藤和(同)の「掩目捕雀」は、漢字をデザイン化してプリント基板にしたようなふしぎなシルクスクリーンです。「和而不同」「USE OF NO USE」も出品。
 ほかに、佐々木亮介(恵庭)、小崎正史、福原よしかつ、横内博子(以上札幌)の各氏が出品。
 6日まで。

 北海道開拓記念館で開催中の描かれた北海道 18・19世紀の絵画が伝えた北のイメージについて、ようやく「展覧会の紹介」にアップしましたので、ご一読くだされば幸いです。


 8月4日(日)
 帯広、北見、釧路とまわって、帰ってきました。

 このうち帯広は、道立帯広美術館池田緑さんのトークショーを聴いただけの、あわただしい滞在でした。
 池田さんは帯広の美術家です。1980年代、絵画制作・発表にたずさわっていた池田さんは、90年代半ばからいわゆる現代美術のフィールドに活動を広げ、昨年から今年にかけてニューヨークに滞在し版画技法を学ぶなど、活発に活動しています。
 現在、同美術館で「十勝の新時代X 池田緑展」が開かれており、今回のトークショー「標本から沈黙の風景へ 私の創作過程」はその関連事業としておこなわれました。盛況だった池田緑さんトークショー 

 お話は、まずかんたんに90年代なかばまでに描いた絵がつかわれているカレンダーや本の表紙などを見せたあと、おもにニューヨーク滞在中に撮影したスライドを投影しながらおこなわれました。
 93年まで帯広北高で国語の先生だったという池田さん、さすがに人前で話すのが上手です。
 この日のお話によると、池田さんの転機になったのは96年でした。
 この年、第25回日本現代美術展に「My Own Specimen(1943年4月3日に生まれて)」が入選し、移動展会場の京都に旅します。
 大阪の空港で、同美術館の寺島弘道学芸課長にばったり会い、
「これから和歌山県立近代美術館に『紀伊半島を歩いて−ロジャー・アックリング、ハミッシュ・フルトン展』を行くんですが、どうですか」
とさそわれます。
 あまり時間がないのでためらっていると
「たとえ10分でも、良い展覧会は見なきゃ損ですよ」
と促されました。
 じつは、アックリングさんのほうはこの春札幌にいらしたばかりで、そのときの模様は4月15日の「つれづれ日録」に書いていますが、まさかその時は、彼が池田さんに重大なインスパイアをあたえたとは思いもよりませんでした。
 彼の作品のコンセプトを書いた紙のコピーが資料としてくばられましたが、「DRY WALK」などの作品にふれて
「これがアートか。これでもいいんだ」
とおどろき、それから現在の、マスクをつかった作品づくりにとりかかったそうです。

 スライドには、ニューヨークで会ったたくさんの日本人も登場しました。
 9・11テロ直後、個展を開いた札幌の画家、森健二さんや、ボクシングペインティングで有名な篠原有司男(うしお)さんなどです。篠原さんはモヒカンはやめていましたが、写真で見る様子だけでも、パワフルでした。
 長くなりそうなので、これ以降は、来週書く「展覧会の紹介」にまわします。

 釧路では、展覧会をいくつか見ました。
 最大の眼目だった「聖母子と子供たち」=釧路市立美術館(幣舞町4の28、釧路市生涯学習センター3階)は、デューラーやルーベンスやカルラッチがみられてよかったです(知らん画家もいっぱいいたが)。
 9月1日まで開催の後、道立函館美術館に巡回します(9月10日〜10月17日)。
 海外のコレクションの一部をそっくり持ってくるという、よくある展覧会ですが、作品は家族みんなでたのしめるとおもいます。紹介はこちら

 同美術館の「プチ・コレ」(所蔵品展示室)では「花のアートに囲まれて−スィート・フラワーズ」が開かれていました。
 同美術館や釧路市が所蔵する美術品のうち、花に関するものばかりをあつめています。
 尾山幟「彩苑」「緑苑」がおもしろかった。前者は、太く短い線の集積で、孔雀や緑の庭を描き、後者はさまざまな緑色の葉をかさねて配することで、平面的でありながら分厚さのある空間をつくりだしています。
 写実性を犠牲にせず、平面的な装飾性をももっているおもしろい絵だと思います。
 おやま・のぼり(1921−95年)は、釧路生まれの日本画家で、「緑苑」は51年に日展に初入選したときの作品です。
 阿部貞夫は「トドワラの花」「樹林」の2作。後者は、一列に並んだエゾマツが闇の奥へ消えていくさまに惹かれます。
 阿部(1910−69年)は、東京生まれ、留萌育ちの版画家で、53年から釧路に住み、日本版画協会会員などとして活躍します。北海道らしい、雄大な木版画が特徴です。
 ほかの出品作はつぎのとおり。
 岩戸敏彦「薔薇」
 久本春雄「白い壷とハマナス」「山吹」「千成茄子雀」
 杢田たけを「花」「花の祭典C」「花馬車」
 尾山幟「花菖蒲」
 佐々木栄松「釧路湿原」
 鎌田義裕「蒲桜」
 西塚栄「蓮花」
 森田曠平「桃山おとめ」
 第十二代酒田柿右衛門「錦岩牡丹画花瓶」

 第7回釧路教職員美術展も、同センター1階の市民展示ホールで開かれていたので、ついでに見てきました。
 柳悟さん(全道展会員)「牧場の人人」は、柳さんならではのライトグリーンを基調にした人物画。
 竹本万紀さん「流れ」は、抽象的な文様をたくみに生かした切り絵。
 松久充生さん(新道展会員)が「Liar」と題したおしゃれなコラージュを3点発表していました。英語の文字が中心ですが、ランダムに並んでいて、文字じたいにはあまり意味はないようです。

 パピエ・ア・ラ・モード 紙による衣裳の美−華麗なモード300年道立釧路芸術館(幸町4)
 ひえー。これは、筆者には、語る資格がありません。
 あまり男女差を言うのは気が進まないのですが、やっぱり多くの男にとって、ドレスなどはどうでもいいものなのです。
 女性たちが
「わー、きれい」
というのが目に浮かびます。
 衣服が好きな人、デパートやブティックが好きな人にはおすすめ。でも、筆者のように、一刻も早く服えらびなんか終えて本屋にでも行きたい人種には「猫に小判」でした。
 9月16日まで。

 それにしても、道東はさむかった!
 札幌は晴れていましたが、日高山脈をこえる日勝峠のトンネルを出たとたん、あたりは深い霧。帯広から北見へ向かう途中は雨でした。
 4日の釧路は、港まつりが開かれていて、いつもはまるで人のいない中心商店街はたいへんなにぎわいでしたが、街頭の温度計は20度そこそこで、長袖シャツを着ていても肌寒さを感じました。
 ところが、帰りの列車で、日高山脈の狩勝トンネルを過ぎたら、青空がひろがっていたのです。
 北海道の広さを、あらためて認識しました。


 8月2日(金)
 CINQ10周年記念展 石山緑地をめぐって=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 CINQ(サンク。フランス語で「5」の意味)とは、國松明日香、永野光一、松隈康夫、丸山隆、山谷圭司の5氏による彫刻家集団です。永野さんが旭川住まいのほかは、札幌在住です。
 また、國松さんが1947年生まれで、ほかの4人は54年から55年の生まれと、わりあい世代もちかいです。
 この5人が中心となって、札幌軟石の採掘場の跡地を、緑地として再生させたのが「石山緑地」です。
 今回の展覧会には、その模型、写真パネルなどと、5人の新作(比較的小さな作品)が展示されています。

 かんがえてみたら、最近石山緑地に行ってないよなー。芸術の森の帰り道、「石山東3」のバス停で降りればそこが石山緑地だということは分かっているんですが…
 こんど行ってみようと思わせる展覧会でした。 

 さいきん、固有名詞の誤記が多くて、みなさまにごめいわくをおかけしております。
 8月15日の項、北海道版画協会展で、石川亨信さんの作品名が誤っておりました。また、同30日の項、PASSAGEに出品された岡本勧さんの作品名がまちがっていました。申し訳ございませんでした。
 すでに訂正してあります。

 あしたは更新しません。


 8月1日(木)
 1面の面坦でした。
 午前0時半すぎころ、速報が飛び込んできました。2004年度から2000円札をのぞく紙幣がいっせいに切り替わるというニュースです。
 レイアウトは、すべてやり直しです。
 というわけで、きょうはそうとう働いたので、ホームページを更新する余力がないんだよな。

 今週はなにをさておき、ACT5札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)A・B室=を挙げなくてはなりません。
 木村富秋、福井路可、森弘志、矢元政行、輪島進一という、道内を代表する5人の中堅画家による、グループ展です。
 ゴッホ展もいいけど、北海道の美術のある面をあざやかにあらわしていると思いますので、ぜひごらんください。
 くわしくは、「展覧会の紹介」で。

 C室は岩田ひとみ個展
 刷毛でひいたような太い、さまざまな色の線を、いくつもかさねた抽象画。

 3階では、「第1回白樺会展」と「礼文の仲間たち展」という絵画グループ展が開かれていました。「元木ミドリ藍染作品展」の部屋は閉まっていました。
 白樺会は、「北海道のバルビゾン派」とでもいうべき微妙な階調の緑の風景画で知られる名木野修さんの教室展です。
 名木野さんは「資料館」という、横長の変形キャンバスの小品を出していました。
 いずれも3日まで。

 野田恭吾個展スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 日本海の漁村風景をテーマに描いた油彩などを展示した、札幌でははじめての個展。
 漁村、というと、釧路の日本画家の羽生輝さんを思い出すけど、あちらが曲がりなりにも写実的に家々や岬などを描いているのに対し、野田さんはかなりデフォルメを進めています。
 それでも、97、98年の「静寂」シリーズは、中景に、低まった家並みを配していますが、99年以降の「北風景」シリーズでは、かなり省略と単純化が進んでいます。
 昨年の道展出品作「北風景01−U」になると、家並みは黒いシルエットになり、画面最上部には、記号化された太陽と三日月がならべられています。
 野田さんのもう一つの特徴は、色数が抑えられていること。
 大作は、ほとんど黒(こげ茶色?)、茶、黄色しかもちいられていません。
 それらを、ナイフをつかっているのでしょうか、かわいたタッチで塗っているので、下の層の色が顔をだします。
 マチエールが、日本海から吹き付ける激しい北風をおもわせます。
 最新作の「北風景02-T」は、家々が書割のように平面的に並べられ、太陽も抽象的な感じで描かれています。
 ともあれ、意欲的な風景画であります。なかなかおもしろいです。
 野田さんは小樽在住。道展会員。

 スカイホールでは、ボタニカル アート フロス展と第5回西内精一油絵個展も開かれています。
 また、さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)では、阿部美智子さんの、イラストの展覧会も開かれています。

 佐々木敏光さんから、先日の個展の紹介文について手紙がきました。
 どうも、わたしの文章が、ご自分の思っていらっしゃるのとちがっていたようです。
 私信を勝手に公開するのもまずいので、この件については、こんごフォローしたいとかんがえています。

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