2001年9月
9月30日(日) きのう、せっかくこのページを更新したのに、表紙に「9月29日更新」と書くのを忘れていました。失礼しました。 きょうは、ギャラリー市田(中央区北1西18)で、高橋英生小品展を見ました。 高橋さんといえば、黒を基調とした、パリを思わせるしゃれた静物画がまず思い出されます。一見、しゃれているだけの仕事に見えて実は、あえて奥行きを排除した平面的な処理、色数の抑制、パピエ・コレに似て非なる文字の導入…といった実験的要素を盛り込んだ絵でした。 以前からきざしはありましたが、今回作風が一変しました。 題材は、どこにでもある素朴な野の花です。まばゆい黄色や赤の花、心地よい細部の省略、背景への黒の導入―といった要素は、高橋さんらしいですが、どこまでも静謐な画面が胸に染み入ります。 30日で終わり。近く札幌の三越で個展があるはずですが… 今月は、更新ができなかった日が9日もありました。 この「つれづれ日録」も、「つれづれウィークリー」かなにかに看板を掛けかえなくてはいけないかもしれませんね。 しばらくこのような状態が続きそうですが、今後ともご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします(あれ、きのうのしめくくりと似てるな)。 以下、ヨタ話。 きのうの日経に、あるスポーツライターが 「われわれはミスターを甘やかしすぎたのではないか」 と、自戒の念をこめて書いていました。 「巨人」の大量補強については批判できても、さすがにあの天真爛漫の長嶋さんを批判できた人はほとんどいなかった。作戦、とりわけ投手起用については「一流」とまではいかなかった長嶋監督でしたが、責任を取らされるのはいつもピッチングコーチでした。堀内ら多くの人材が巨人を去っています。 まあ、ピッチングコーチの人選に問題がなかったとはいえないと思いますが… 歴史的に見ると、戦後の巨人はほとんどが打撃優位のチームでした。唯一の例外は、今シーズン限りで引退する斎藤や槙原らを擁した藤田監督時代でしょう。長嶋の現役時代もじつは、毎年のように、打線に比べて投手陣の貧弱さが指摘されていたのです。 「巨人の星」「ちかいの魔球」「侍ジャイアンツ」といった実名野球漫画がみな投手を主人公としていたのは、実在の選手のポジションを奪えないという現実的な問題のほかに、巨人投手陣の弱さも理由だったのではないでしょうか。 そういう現役時代の記憶に加え、長嶋監督は第一期の就任直後、張本を日本ハムからトレードしてくることで、王と「OH砲」を組ませ最下位のチームを優勝させたという「成功体験」があり、その後なかなか「巨艦主義」から抜け出せなかったものと思われます。 西武・東尾、中日・星野、オリックス・仰木の各監督もチームを去ります。とりわけ、仰木監督は、大リーグで活躍中の野茂とイチローの「育ての親」であり、長嶋監督と同時に球場を去るのには、なにか因縁めいたものを感じます。 |
9月29日(土) 今週初めてきょうギャラリーに行くことができました。akaさんのおっしゃるとおり、仕事がいそがしいんです。 まとめて見たので、すごい分量になりました。 まず、あした30日までの展覧会から。 北海道教育大学札幌校 視覚・映像デザイン研究室展は、コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)で。さすが学生、若々しい作品が並んでいます。 河原大「偶像行列」は、縦長の土佐派ふうの絵をデジタル処理したもの。遠近法が採用されてなく、あちこちに雲が浮かんでる、昔の日本の絵です。タイガー立石あたりがもうやってそうな気もするけど、面白いアイデア。 伊藤幸恵「人中花」は、自分用ソファーとのことですが、真っ赤な色とフォルムがちょっとエッチじゃないですかあ? 及川嘉代子「ドッチモ。ドッチモ。」は、ヤマアラシみたいな立体。1匹だけ群れから離れているのは、金子光晴のおっとせいを思い出すし、ヤマアラシといえばエヴァだし…(何を書いてるんだろう)。 大島慶太郎「EXPERIMENTAL FLIP BOOK」は、写真を一筆箋に印刷したパラパラマンガ。映像の原点に戻ってみよう、ということでしょうか。 横浜志織「ローテンション」は、写真による平面インスタレーション。題名の通り(笑い)、テンションの低いモノクロの風景写真が並んでいます。木造家屋とかだれもいない海辺とか、こういうの好きだなー。4つの映像が1枚のカラープリントにおさまっている写真のファイルもあったけど、ちょっとの時間差で4枚撮れる特殊カメラを使ったのかな? 映像では、7月展でも抜群のキレを見せていた佐竹真紀は「ふうせんあそび」を発表。こんどは、紙風船が、白い紙の上でぽんぽんとはねる写真をつないだアニメーション。またしても「やられた」と叫びたくなる快作です。 小川陽「融」は、抽象的な模様が浮遊する、気持ちのいいアニメーションでした。 札幌市資料館(中央区大通西13)は、ほとんどが絵のアマチュアサークルで占められていました。 そんな中で、フォトプロジェクト遊なる写真のグループ展が目を引きました。 今西広美、倉田みき、矢上由香、今村正美の女性4人が出品しています。被写体は、本州の街並み、雪のカッパドキア(とおぼしき光景)、夕日に映える海外の寺院、夜店でカニを売るおじさん、夕空などです。ふつー旅から帰ってきて写真展なんかやると 「こういうところに行ってきたんだよ」 と、本人だけが盛り上がっている、たんなる報告写真展になりがちなんですが、この写真展には、その種の昂揚感がいっさい感じられません。海外でも道外でも、非常に沈んだ空気の写真を撮っています。まさにローテンション(笑い)。そこがおもしろいと思いました。キャプションなどが一切ないのも、不思議さを強めています。 this is gallery(南3東1)の境理絵個展。 これは面白かった。作家は、札教大に在学中ですが、学生でこれだけ平面とは何かを考えている人は少ないと思います。 詳しくはこちら。 ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)へ。 「美瑛」と題し、湊征一郎絵画展が開かれています。 その名の通り、美瑛周辺の風景画がたくさん出品されています。 これは決してけなしているのではなく、むしろいい意味で言うのですが、いかにもアマチュアの絵だなという気がします。 ぱっぱっとおおづかみに風景をとらえる器用さはありません。その代わり、細い筆でどこまでも丹念に、見たとおりに色を置いていきます。どちらかというと、点描に近い手法です。画面は隅々まで明るく、静的に景色が広がります。 この人は絵が好きなんだなー、ということがひしひしと伝わってきます。それだけではなく、日曜画家ゆえに夕方になればイーゼルをたたんで札幌に帰らなくてはならないその残念さまで、伝わってくるようなのです。 とくに「布礼別の秋」などは、ひんやりとした空気感まで表現されていて、いいなーと思いました。 蒼樹会北海道支部小作品展も開かれています。 定例の支部展は毎年5月に開いており、今回は20号以下の小品のみ。 中山美津子さんが「洞爺の秋」など、なかなかまとまった作品を出しています。また、廃屋などの写実的な描写で知られる田村隆さんが「風景(ふるさと公園)」でラフなタッチに挑戦しているのが目を引きました。 三越札幌店(南1西3)9階ギャラリーでは、大野耕太郎作陶展。 滝川在住の、日本工芸会正会員の大野さんは、「黄瓷」と題した、さわやかな色合いの器が有名ですが、今回の個展ではむしろ、青白磁の作品が目立ちます。やっぱりさわやかなんですが。 フォルムでは、水の波紋や、ドレスのドレープを想起させる波模様がついたかめや皿などが出品されていました。 まだ会期のある展覧会。 板橋美喜子作陶展は、丸井今井札幌本店(南1西2)大通館8階で。 板橋さんは北広島在住の若手陶芸家。わりとあっさりした、作者の思いを押し付けない器が多いので、洋食にも合うと思います。そんなに高くないし、いわば道内陶芸界のコムサ・デ・モードか?(ちょっと違うか) これまで白や灰色の釉薬が多かった板橋さんですが、今回は色のバリエーションがぐっと増えました。黄色見を帯びた秋らしい「伊羅保(いらぼ)釉」は、高麗茶碗に使われている釉薬だそうです。ほかに、赤絵などもありますが、やっぱり押し付けがましくないのは板橋さんの良さでしょうか。 3日まで。 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)では、堀部江一作陶展。 作陶展といっても、インスタレーションです。 堀部さんは苫小牧在住で、今年の新道展で協会賞に輝きました。 今回の個展の作品は、その時のものとは違い、足が付いています。 丸っこいフォルムは、かわいらしい宇宙人のようです。が、よく見ると、表面には、渦巻きなどの複雑な模様や亀裂があしらわれ、どこか不気味な面も持ち合わせているようです。 大きな形の影に、小さな”子供宇宙人”もいるので、会場内を歩いて、場所によって作品全体の見え方がいろいろと変わって見えるのを確かめるのも、楽しい鑑賞の方法でしょう。 上のフロアでは、高山洋夫展が開かれています。 高山さんは、札幌在住の抽象画家です。なにが特徴といって、砂を使って長時間掛けてこしらえた支持体が面白い。 砂のキャンバスは、長い時間の流れを宿しているかのように、黒く重く光っています。 その上から、鮮やかな赤や金の絵の具の飛沫が飛び散るのが、高山さんの世界といえます。 いずれも2日まで。 最後に、きょう29日で会期が終わりの展覧会。 ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)で一原有徳・北海道の山3。 一原さんといえば、独自の抽象世界で知られる現代版画の奇才で、90歳になったいまも小樽で創作に励んでいます。しかし、今回の個展は、ふだんの抽象とはすこし異なった、具象的な作品もいくつか見られます。刷ってから 「これは赤岩に似てる」 と、題をつけたような作品もありますが、風不死岳、ニセコアンヌプリなどのように、風景画をかこうとして出来上がったものもけっこうあるのが意外です。 札幌時計台ギャラリー(北1西3)。 A室は、小林繁美個展。 金属の壁掛け立体を並べています。いずれも、抽象か、半具象で、レリーフ的ではありますが、向こう側が透けて見えるような造型がほとんどです。 小林さんの作品は、土俗的な感じがします。といって、アフリカの仮面をそのまま作品化してあるとか、既成の意匠を安易に用いているのではなく、もっと、人間の心の深いところからなにかを取り出してきているように思えます。「陵」など、人間の精神がほの見えるようです。なぜ、そう思うのかは、分からないけど。 もっとも、筆者は「或る風景」など、岩石地帯の中で女性が一人立っているような、寂しげな作品が好きです。 B室は、矢崎勝美展。 例によって、COSMOSシリーズです。オフセット印刷とシルクスクリーンの混合技法によるモノタイプで、宇宙を思わせる深い色の空間に、白い光や線が躍るといった構成です。 白い光の部分が年々増えてきているようで、今年は波型のような曲線も登場しました。矢崎さんのHPはこちら。 今週、中国の美術展に招待され、とんぼ返りでパリでグループ展、さらにその後、インドの国際版画展で審査員を担当するなど、大忙しのようです。 D、E、F室は友彩会展。 故・砂田友治さん(画家、札幌)の生徒さんたちの展覧会。 あまり細かいことを言わず、各自の個性を伸ばそうとした砂田さんらしく、さまざまなタイプの油彩が並んでいます。 金山当子さんの「黄色い原野」が、広がりを感じさせる抽象の力作。 梶原佳鶴子さん「木の魚と空間」は、静物画。夢幻的な深い色合いの組み合わせが、どこかクレーを思わせました。 高橋英生さんの個展にはあす行く予定です。 おかげさまで、アクセスが10000を突破しました。 該当者にプレゼントはありませんが、今後とも皆さんよろしくお願いいたします。 |
9月26日(水) 一部に誤解があるようですが、筆者は異動はしていません。ただ、勤務時間の異なる仕事をしているというだけです。9時半すぎに出社して、だいたい午後6時か7時まで働いています。 これがこの「日録」には困りもので、平日はほとんどギャラリーに行けません。 24日に書いたMAGまちこ展なども、見ることができませんでした。 24日に見た「本郷新とゆかりの作家展」について、もうすこし。 本郷の手になる、本田明二と山内壮夫の立派な頭部像がありました。 筆者は、首の良し悪しがなかなか分からないのですが、この二つは堂々としていると思いました。 近年は、彫刻でも抽象が多く、首自体を見る機会があまり多くありません。 ちなみに、筆者が好きな首の作り手は、道内では石河真理子さんです。 山内壮夫の「ソンミの慟哭」という作品がありました。 ベトナム戦争での米軍による虐殺事件に抗議した作品です。 今回のテロ事件について、米国では「真珠湾以来」という言い回しで奇襲を報道する例が目立ったようです。 しかし、民間人の大量虐殺は、アメリカもやっているわけです。 殺されたことはよく憶えているけれども、殺した方はわりとすぐ忘れてしまうもんですね。 歴史を語るときには注意しなくてはいけないと思いました。 毎日以外の新聞はほとんど黙殺してますが、毎日書道展がきょうからスカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)と市民ギャラリーで30日まで開かれています。書道ファンはチェック! |
9月24日(月) 久しぶりの家族サービスで円山動物園へ行きました。筆者がこの動物園に行くのは20年ぶりです。 昔、中島公園にあった遊園地が移設されて営業していましたが、なんだかちょっと古くて、1970年ごろの日本映画に出てきそうな遊園地でした。 ただ、その帰途に、札幌彫刻美術館(中央区宮の森4の12)に立ち寄って「本郷新とゆかりの作家展」を見ました。 本郷のほか、佐藤忠良、舟越保武、柳原義達、山内壮夫、本田明二の彫刻とデッサン計49点が出品されています。本郷の作品以外は、旭川市彫刻美術館や優佳良織工芸館などの所蔵品です。 大物の彫刻家の作品をまとめて見ることのできる、いい機会でした。 いまさら筆者が付け加えることはあまりありませんが、造形性もさることながら、作品の底に人間への賛歌みたいなものが流れているのを感じました(これをきちんと筋道たてて論じるのは非常に難しいのですが)。 残念ながらきょうでおしまい。 30日からは、澄川喜一彫刻展が始まります。 あす25日でおしまいの展覧会のうち、アートスペース201での「MAGまちこ展」、ぜひ見てくださいと、Yさんからメールがありましたが、行けるかどうかあやしいです。 あと、大同ギャラリーのふたつの版画展も、見に行けるかなあ… |
9月23日(日) めずらしく自家用車でギャラリー巡り。 うーん、車は速い(当たり前か)。いつも公共交通機関を使っているので、この速さは魅力的。でもとめる場所がないところでは困る(これも当たり前か)。 まずギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)で大島潤也展「殻」。 壁掛けの立体が20点ほど。切り株が内側から浸蝕されたような、独特の造形。ただし、大きさのわりには動感がすごくあります。 「カオスとかフラクタルに興味があるんですけど、うまくそれを言葉にできなくて」と作者。 23日で終了。 札幌市資料館(大通西13)。 第17回酵母展。女性5人のグループ展。 あれ、たしか毎年ギャラリーユリイカ(南3西1)でやってましたよね。 立体イラストで知られる杉吉久美子さんは、布を張り合わせて風景画にしています。パッチワークキルトとはちょっと違う。 高村昌代さんは、枯れ葉がほとんど葉脈だけになってしまったものなどをたくみに使って作品に仕立てています。 池田裕貴子さんは金や銀の箔を用いた平面。 木下真佐江さん、福士幸子さんも出品しています。 第6回木もれび会展は、岸本裕躬さん(札幌。行動展会員)の教室展で、11人が油彩、水彩、アクリルを出品。山本守さん「秋の散策路」など、筆の向きや調子を一定にしているのに、好感を持ちました。斎藤由美子さんの水彩「知事公館西側通り」は、丁寧に、何気ない冬景色を描いています。 西川芋山書作展は、漢字(創作・臨書)、かな、近代詩文と、なんでもあり。「はつなつのかぜになりたや」は、のほほんとして良いと思いました。 いずれも24日まで。 道立近代美術館(北1西17)で、平山郁夫展と、人間賛歌。 平山郁夫展は、後で書くかもしれませんが、正直なところ、以前同じ会場で見た東山魁夷や加山又造に比べると、感動はしませんでした。 人間賛歌は、「これくしょん・ぎゃらりい」と称して開かれている常設展で、人間をモティーフにした絵画、ガラス工芸、彫刻を展示しています。 絵画は、同館のひそかな人気作品である「朝の祈り」(林竹治郎)など、以前見たことのある作品がほとんどでした。 ガラスはさすが近代美術館の得意分野だけあって、約50点によるバラエティーに富んだ構成になっています。戦前の作品は、西洋美術らしい「理想化」が働きすぎて筋肉隆々の男女ばかりが目につきますが、戦後は人体といっても自由な表現がなされるようになっています。長―い足をしたイジー・シュハーイェク「座るn.2」なんて、まさにガラスの工法を生かした作品ではないでしょうか。 最後は、自由に手を触れることができる彫刻のコーナー。選りすぐりの10点が陳列されていますので、ここだけでも見る価値はあると思います。 加藤顕清、高田博厚、峯田敏郎、中原悌二郎、荻原守衛、中野五一、坂担道、山内壮夫、本郷新、三木富雄です。 いずれも10月21日まで。 三箇みどり個展 あなたに似た人は、GALLERY PUKU(北区北12西1パークマンション1階)で。彫刻、というより、人形の個展。 ここは、インテリアのショールーム兼事務所で、この夏以降はときどきギャラリーとしても使われているということです。 そのため会場の端に洋便器が3つ置いてありました。ふつうなら布などで隠すのでしょうが、便器に頭を突っ込んだ人物や、腰を掛けた人魚など、展示に有効に使っていました。 9月25日まで。 閉館まぎわのギャラリー大通美術館(中央区大通西5大五ビル)に飛び込み、赤間晃展を見ました。 油彩、パステルの小品ばかりでしたが、油彩はなかなか筆者の好みでした。 bRなど、ポプラが右端に描かれた寂しい風景画ですが、空の部分が広く、そこにさまざまな色彩が茫漠と塗られています。しみじみとした情感が迫ってきます。19は、白っぽい風景を描き、ほとんど抽象画といってもいいほどでした。 23日で終了。 村上正次写真展は、村上さんのスタジオ(北3東4、岩佐ビル地下)で開かれているため、ちょっと変わった雰囲気です。 風景、ヌードなどが、ばらばらに並んでいる村上さんの写真の魅力を、言葉にするのはとても難しいのですが、すごく個人的な視線でとらえているのにウエットなところがないというか、しかもありきたりでないというか…。 25日まで。 北1条の駐車場に車をとめて、「地上インスタレーション計画」の作品を見て回りました。けっこう疲れたけど、面白い体験でした。見慣れた札幌の街がいつもとちょっと違って見えました。 24日まで。詳しくはこちら。 高橋靖子展の紹介をアップしました。 |
9月22日(土) 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)、きょう(22日)で会期が終わるので、駆け足ですが見に行きました。 2階は3人の画家が競演です。 野本醇さんは、茶と黒の色合いが深く美しい。「黒い箱舟」などは、右上に球体、左上に鳥が描かれています。抑えた色調の中にも暗さはなく、むしろ希望のようなものを感じさせました。 平間文子さんは、「レクイエム」と題した連作が中心。 風に舞い散る枯れ葉と、人間や魚といったモティーフが渾然一体となって丸い形をなすさまは、とてもユニークだと思います。ただ、背景の色がまぶしすぎて、効果を減殺しているような気がしないでもありません。 阿部国利さんは、小品が中心ながら、新作ばかりを並べています。大きいのはアクリル絵の具、小品はグワッシュ。いつもながらの、壊れた人物像がモティーフですが、ますます画面は簡素になっています。それでも貧乏くさくはなく、深淵をのぞきこむような冷え冷えとしたふしぎな感触があります。 ちなみに野本さんは登別、主体展と全道展会員。平間さんは旭川、全道展会友。阿部さんは札幌、新道展会員。 3階はいけなかった。ゴメン。 あんまり期待していなかったわりによかったのが、三越(南1西3)の榊莫山展。テレビCMを見ての印象だと 「なんや、このおっさん」 っていう感じだけど、書家としてはなかなかのものではないでしょうか。 あえて当てはめれば、近代詩文、それに漢字。でも、この人はほとんど、細かいことは気にしてないと思う。自由闊達な書体だけじゃない。興が乗れば水墨画を書く。賛みたいに文字を書く。句点(文の最後のマルです)やルビまで入れる書家は、たぶんほかにあまりいないと思う。 「読みやすければええんやないか」 くらいに、かまえているんでしょうね、きっと。 この人らしいナー、と思ったのが、寒山拾得(かんざんじっとく)をモティーフにした書画。あの、融通無碍の境地というのは、東洋人の理想ですよね。良寛をテーマにした作品も、「らしい」と思いました。 ただ、展覧会ぜんたいでは、水墨の割合が多い。もうちょっと書の作品を見たかった。 島田章三展。わたし、こないだ「二科」って書いたけど、「国展」の大家でした。スンマセン、お恥ずかしい。 この人、フォルムか色彩かっていうと、じつにフォルムの人だと思う。 「休息室内景」「秋色湖畔景」など大作は4点(1000万円以上の値札が張ってありました)。斜めの線が、画面をすっすっと横切って、構図がばしっと決まっています。 ただ、あまりの決まり具合に、そして、その構図の探求の熱心さに、ちょっと疲れてしまいます。 むしろ、同時に展示してあった絵皿のほうが、肩の力が抜けていて、見ててほっとします。 岩井孝道作陶展。 岩井さんは空知管内長沼町在住。メロン灰の釉薬を使った作品で知られます。 メロン灰は、とにかく色調がさわやか。明るい薄緑が、いかにも初夏の北海道らしいすがすがしさを漂わせます。いくつかの向付や皿に「水の歌」という題がついていましたが、まさにそんな感じ。 今年から、練上げの器も登場しました。よく見る練上にくらべると、線がはっきりしていない感じですが、あるいはこういうほうがおもしろいかもしれない。 いずれも24日まで。 第18回北海道女流工芸「一の会」展も、なかなか見ごたえのある、バラエティーに富んだ展覧会でした。 今年のテーマは「響(ひびき)」。道内28人がそのテーマによる創作に取り組んでいます。 染色では、岩山テル子さん(札幌)が、丸い文様を繰り返した目の粗い屏風と、繊細な(たぶん、型染)和服という、対照的な作品を展示。篠原弘美さん(空知管内栗山町)は、陶片を織り込んだ実験的作品です。 織では、寺岡和子さん(小樽)が、縞模様のすっきりした作品で、目を引きました。 陶芸は、武田律子さん(札幌)の花器が渋い! 黒と金が沈んだ美しさです。田中静江さん(帯広)は、緩やかな曲線の美しいオブジェです。 人形の野口恭子さん(岩見沢)は、顔の比率が小さいのが珍しい。 漆芸では村上晴香さん(札幌)が箱を、山田萩山さん(同)が皿を、高橋美絵さん(同)が壁掛けを出しています。ほかに、七宝、ガラス、皮革、竹芸、刺繍の出品もあります。 23日まで。 きのうからぐっと寒くなりました。先週までベアトップの女の子が街を歩いていたのに、近郊の山では雪が降りました。 あすは大量書き込みの予定。 |
9月21日(金) いやー、まいった。札幌時計台ギャラリーの野本醇展、平間文子個展、阿部国利展など、あしたで会期が終わりなのに、全然見に行く暇ない。どうしよう。 まいったといえば、新手のコンピューターウィルス・ニムダが、共同通信や東京新聞のシステムにも参入するなど猛威を振るっています。インターネットエクスプローラーを使っている人はどうぞお気をつけください(とりあえず、エクスプローラー使用者、マックの人は大丈夫のようです)。 まあ、ウィルス問題がなくても、更新する内容はとくにないんだけど。 「新道展」と「わたしの小樽論」のページに、会場写真を追加しました。 「掲示板」で笠井さんが書いていた、札幌ドームの問題は、今後波及するのでしょうか。 アートの世界でも、100万とか800万というのはかなり破格の値段であって、週あたり十数万の貸しギャラリー代を自腹切ってる「兼業アーティスト」が道内では大部分のようですが。 そのへんは、同人誌や自費出版の費用にひいひい言ってる詩人とあまり事情は変わらないのではないでしょうか。 |
9月18日(火) 夕方、駆け足でいくつか展覧会を見てきました。 まずバスで真駒内へ行き、南区民センター(真駒内幸町2)で坂野コレクション巡回展 北海道―花、人、自然。 1997年、芸術の森美術館で開かれて話題を呼んだ「坂野守コレクション展」の後、坂野さんが札幌市に寄贈した絵画の一部を、市内5カ所を巡回して紹介するものです。 小品ばかりでしたが、50人の50点があり、なかなか見ごたえたっぷりです。 ゆっくり見るなら1時間はみておいたほうがいいでしょう。詳細はこちら。 南区民センターは19日までで、その後、 ▼北区民センター(北24西6)=21日(金)〜23日(日) ▼豊平区民センター(平岸6の10)=25日(火)〜27日(木) ▼市役所1階ロビー(北1西2)=10月1日(月)〜3日(水) を巡回します。いずれも午後9時から午後5時まで、無料です。西区民センターでの展示がすでに終わっています(13日〜15日)。 「西28丁目」まで地下鉄に乗り、テンポラリースペース(北4西27)へ。首藤晃展が開かれています。 筆者が知らないのも道理、生まれこそ江別(1969年)ですが、弘前大に入学後ずっと弘前住まいだそうです。道内での発表は初めてとのこと。 作品は「潜水棺と67の漂流する記憶」と題したインスタレーション。 中央には、長さ3・2メートルの小舟のようなひつぎが、周囲よりやや高く、斜めに沈んでいく格好ですえつけられています。 そのまわりの床には、円筒形に近い形のオブジェ67個がばらばらに配置されています。これは、丸太を半球状にしたものに、鉄の笠のようなものをかぶせて錆を付かせ、その上から、2、3日で固まるウレタンを流し込んだもの。大きさ、形状とも微妙に異なります。 これらは、灯篭流しというには丸っこすぎ、墓標というには背が低すぎます。作者がいうように「漂流する記憶」そのものなのかもしれません。どこか、海の底を思わせるインスタレーションです。 ちなみに、67という数字自体には意味はないそうです。 24日まで。 隣接した「器のギャラリー中森」では、朝野顕子展が開かれています。陶芸です。 器が中心で、壁掛けの花器が多いです。 大きな花器「雲海」「みやび」の連作は、波型の雄大な造形が目を引きます。よーく見ると、表面はひび割れが生じてたりするんだけど、そういうのをふっとばすパワーがあります。 中でもおもしろいのは、だいたい同じ大きさの陶片をひもでいくつも結わえ付けたタペストリー。のれん代わりにつるしておくと、風が通るたびに揺れそうです。 朝野さんの住所は、札幌市中央区の双子山です。ちょうど、南9条通りをまっすぐ西に上がっていって、円山の裏手の通りにつながる手前で、新しい道と旧道の二手に道が分かれているあたりのようです。いいなあ。筆者は昔からあのへんが好きなんですよ。 22日まで。 そこから歩いて、ギャラリーどらーる(北4西17 HOTEL DORAL)へ。高橋靖子展が開かれています。 新しい展開を垣間見せる良い個展でした。詳しくは、近日中に書きます。 さらに徒歩で、道立近代美術館のバス停から中央バスに乗り、北1西4で下車し、丸井今井札幌本店へ。8階ギャラリーで安倍安人作陶展を見ました。 安倍さんといえば、1998年に札幌彫刻美術館で開いた個展では、キューピーで型取りしたオブジェや、環境破壊に警鐘を鳴らした陶の彫刻「地球儀」など、ユニークな立体作品を展示していた記憶が今も新鮮ですが、その一方で、古備前を現代によみがえらせた陶芸家でもあります。 今回はデパートの個展なので、展示されているのは茶道具とうつわばかりです。備前らしい野性味と風格を漂わせた景色は、さすがと思わせますが、なにせぐいのみで10万円…。にもかかわらず、会場にだれも係員がいなくていいのかなあ。 19日まで。 |
9月17日(月) スケジュール表に大量の追加があります。 ギャラリーに行っている時間はありませんでした。 さいきん、メールなどで感想を寄せてくださる方がけっこういらして、うれしい限りです。かなり勝手なことを書いていますが、なにとぞご容赦のほどを。ご意見、ご感想などは、ご遠慮なくお寄せください。 米国でアラブ系へのいやがらせが続出しているというのはいやなニュースです。一部の狂信派は別にして、イスラム教は、すくなくてもキリスト教なんかよりよっぽど他の宗教に寛容な教えなのに… それにしても、あの米国で、軍事報復に反対する市民が6%もいるというのは、すこし勇気付けられます。すこし頭を冷やして考えないと… なんだか、アフガニスタンの一般市民がかわいそうだなあ。先日暗殺されたマスード将軍(反タリバンの指導者)も、無念の死でしょう。 |
9月15、16日(土、日) 15日、駆け足でギャラリーを回ってきました。 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)では、第29回美術文化北海道支部展を見ました。3階のD、E、F、G室を借り切って絵画の力作が並んでいます。詳細はこちら。 15日で終了。 サッポロファクトリー・レンガ館(北2東4)にある札幌市写真ライブラリーでは、札幌学院大学の写真部展が開かれていました。 正直なところ玉石混淆で、モノクロ写真の焼き方すらよく分かってないようなのもありましたが、森田さん「AFTER COLONY」は、無機的な風景の捉え方に好感が持てました。 竹田さん「いつもの路地」などのカラー写真も好きです。そんなに大した作品じゃないのかもしれないけど(ごめんなさい、さりげない、ふつうの写真っていう意味です)、なんか、自分と同じタイミングでスナップのシャッターを切ってるなー、って感じがした。感性が合ってるような気がする。 16日まで。 お隣のコニカプラザ・サッポロでは、ネイチャーフォトのグループ展(ごめん、会の名前と会期をメモしてくるのを忘れてた。二十日すぎまでやってます)。これはけっこうオススメ。長南寿志さんの森の写真には、自然に対する素直な畏敬の念が感じられますし、八木橋さんのスズメバチの連作は、ただただ昆虫の生態の不思議さに感心させられます。 札幌市資料館(大通西13)では、石田邦夫・工藤直子二人展が目を引きました。 親子とのことですが、石田さんはほのぼのとした淡彩。工藤さんは、青や藍を中心に、かわいらしい模様や小人が躍る童画です。人によっては装飾的すぎる、と思う人もあるかもしれませんが、なかなか楽しいと思いました。 16日まで。 ほかに、ギャラリーたぴおも行きました。 今週は、意外なところでは三越が面白いかな。岩井孝道さんの作陶展に行ったら、島田章三さんをごらんになってはいかがでしょう。 |
9月14日(金) お察しのこととは思いますが、11日夜以降、ふだんの倍の忙しさで、ギャラリーどころではない日々が続いています。 米国のテロに加えて、きょうの夕刊締め切り間際に「マイカル経営破綻」のニュース速報がありました。恐慌の跫音(あしおと)が聞こえてくるようです。 とりあえず、掲示板にも速報したとおり、帯広の池田緑さん(美術を学ぶためニューヨーク留学中)は無事のようです。 あしたは長女のお誕生会(1歳)なのですが、時間が許せば、美術文化協会展など見てくる予定です。 |
9月11日(火) 20分だけ空き時間ができたので、川畑盛邦展を時計台ギャラリー(中央区北1西3)A室に見に行きました。 川畑さんは、奥様の和江さんも画家で、交互に1年おきに個展を開いています。 川畑さんがメキシコを旅したのは1994年。その際に得たモティーフをヒントにして、数人の背景に描き続けてきました。 といっても、直接にメキシコの景物を描くというより、画家の中でそのときの印象が咀嚼され、じわじわと発酵して、絵になっていくという感があります。 97年の個展に出されていた作品には、古代メキシコの、頂点が平らになっているピラミッドがかかれていましたが、今回の個展では、エジプトのピラミッドのような三角錐が随所に描かれ、アクセントになっています。 しかし全体としては、霧で包まれたような微妙な中間色が人物の周囲にたちこめ、画面上部の空にあたるところは、これまた微妙なミントグリーンやベージュで塗られており、以前よりも抽象性がいささか増したような印象を受けました。 1点だけ、91年の作品、「眠りの風景」が陳列されていました。その後の変化をたしかめるのも興味深いかもしれません。 15日まで。 同僚が病欠したため残業していたところ、午後10時、共同通信のニュース速報のチャイムが鳴りました(これは、よほどの大ニュースでなければ鳴らない)。 「ニューヨークのワールドトレードセンタービルに航空機が衝突した模様です」 ほとんど作業も終わっていたので、驚いて職場のテレビを見ていたら、突然ビルの真ん中から火の柱が噴きあがりました。2機目の激突でした。 筆者は12日は、これまた欠席の同僚の代役で夕刊にあたっているため、ごった返す会社を後にして帰宅しましたが、その後テレビを見ていると、世界貿易センタービルのツインタワーは、2棟ともあとかたもなく倒壊しました。 そしてペンタゴンで爆発テロが起き、ピッツバーク近郊では飛行機が墜落しました。 標的が「国際貿易ビル」なので、パレスチナゲリラではなく、狂信的な反グローバリズムなどの団体による犯行ではないかと思いましたが、いまのところは分かりません。アラファト議長は、呆然とした表情で記者団に向かい "completly shock." を繰り返しています。 筆者は、最近ほど末世的な気分になっているときはありません。以前も書きましたが、最近の日本の経済情勢は1930年代にそっくりだからです。その後、IT不況は、急速に深化しつつあります。しかも世界的に。 CNNのライブで見る摩天楼のビル群が、筆者には、墓碑に見えて仕方ありません。あるいは、この事件は、パクス・アメリカーナへの、そして20世紀的な世界への弔鐘になるのでしょうか。 |
9月10日(月) 颱風(たいふう)が接近して強い雨が降っています。 鵜沼人士さんからメールをいただき、先日の個展を紹介したテキストの中の絵の題を訂正しました。ご迷惑をおかけしました。 「横尾忠則展」のテキストをアップしました。 |
9月9日(日) 雨の小樽へ。 市立小樽美術館と市立小樽文学館(色内1)へ。 文学館は「小樽論」というユニークな展覧会。前半がいつもの常設展ですが、これさえも「小樽論」の中に組み込むことによって、いつもと異なった角度からみることができました。 後半は、私情をいっさい挟まずに小樽をデジタルカメラで撮影してプリントアウトした1000点。金村勝もびっくり、ほとんどインスタレーションです。 小樽というと運河、ガラス―といった、観光用につくられたステレオタイプなイメージを、いったん白紙に戻して、あらためてこの街を考えてみようという試みだと、筆者は受け取りました。 地下では、「まじ怖え」と題した、中学生がつくりあげた展覧会。 うーん、これって、中学生もさることながら、会場が怖いんだよな。狭くて汚い廊下。もう何十年も埃がそのままになってるみたいな。 夜の学校って、気味悪いでしょ。あれとおんなじ。 じつは、会場となった地下通路とは別に、もう一つ長い廊下があったので、こっそり端っこまで歩いてみたんですが、真っ暗で、もっと怖かった。こっちは部屋が並んでいてもっと学校みたい。美術館・文学館の建物じたいが市庁舎の分庁舎だから、市の物置として使われてきたようです。 一番奥の部屋に「小樽合唱連盟」などの看板がかかっていましたが、もちろん無人。小樽合唱連盟さん! いまでもここを練習に使ってるんですか? いずれもきょう9日まで。 「わたしの「小樽論」」なる駄文を書いたので、興味のある方はこちらへ。 美術館の「拝見! 市民愛蔵の美術品」展は、なんだか某テレビ局の「お宝!なんでも鑑定団」みたいなタイトルですが、たんに「総花的に集めてみました」っていう展覧会に終わっていないのはさすがです。 こちらは16日まで。 作家集団「連」展を、古屋ギャラリー(花園4の20の16)で見ました。 小樽派ここに健在、とでも言うべき、写実的な油彩の大作9点と小品2点が並んでいます。 自分が見出しをつけた8月15日の新聞を支持体に使った絵「北の海峡」(F10号)があったので、おおっと思って見入っていたら、ちょうどギャラリーにいた作者の松田孝康さんがつくりかたを教えてくださいました。 新聞紙のさまざまなページを、見出しが見えるように板に張り、表面をろうそくの炎で焦がした後、絵の具で薄く色を塗り、中央部分に薄い和紙を水張りして、その上からアクリル絵の具で海峡の絵を描いたそうです。 新聞には、57回目の終戦記念日、2島先行返還訴える新団体、などの見出しが並び、先の戦争について思いを新たにせざるを得ません。 松田さんは「オタモイ地蔵尊讃仰」という、地蔵を正面からリアルに描いた100号の大作も出品しています。最近ニュースの多い幼児虐待事件などへの思いを込めているとのことでした。 松田さんは道展会員。それなのに、筆者は存じ上げず「道展に出してらっしゃるんですか」などと尋ねてしまい、失礼いたしました。 そのほか、古屋五男さんと野田恭吾さんが道展会員。ほかの6人が一般入選クラスです。 小林達夫さん「街角」は、「オタルパン」の看板がなければ西洋と見まごうほどハイカラな小樽の一角を描いています。明暗のメリハリがついた、かっちりした構成です。 工藤英雄さん「スクラップ」は、題名の通り、錆びた鉄板や鎖を入念に描きこんでいます。 佐藤順一さん「漁船」は、震えるような線が特徴です。 上嶋俊夫さん、小川智さん、高橋晟さんも出品しています。 9日まで。 古屋ギャラリーは、「花園十字街」から坂を上り、公園通教会の裏手を左に曲がるとあります。 文学館・美術館の坂を2分ほど上がると左手にある「GEエジソン生命ビル」の地下に画廊喫茶の櫻倶楽部(稲穂2)があります。たまたま珈琲を飲みに入ったら、今月はたまたま通常の展示ではなく、風間健二さんの写真が張られているのでした。 風間さんは夕張に住んで「グループ炭鉱夫」を組織し、炭鉱遺跡の意義を訴え続けています。 展示されているのは、炭住のほか、全国各地の風景です。 九十九里浜の波打ち際。三重の並木。夕張の煙突や、雪に埋もれた炭住。夜の石神井公園(東京)。 うーん、風間さんって、けっこうロマンティストなんだと思う。茶化してるんじゃなくて、国木田独歩がそうだったように、風景を見ることが好きなんだろうと思いました。 八つ切りを1000円で、絵はがきを100円で売っています。 |
9月8日(土) 早起きするつもりが寝坊。午後から新道展(新北海道美術協会主催。札幌市民ギャラリー=中央区南2東6)、北海道立体表現展(道立近代美術館=北1西17)、横尾忠則展(コンチネンタルギャラリー=南1西11、コンチネンタルビル地下1階)などをハシゴしました。 詳しくは別項に譲りますが、新道展は会員が見ごたえのある抽象、半抽象の力作を出品しています。 北海道立体表現展は楽しかったです。とくに統一的なコンセプトとかはないんですけど、28人がそれぞれ持てる力を発揮して作品を発表していて、あまりむずかしいことを考えなくても楽しめる展覧会だと思いました。 札幌市資料館(大通西13)のサークル「もりの木」水彩展は、道展会員の森木偉雄さんの指導する教室。バラエティーに富んでいます。 三村克彦さん「エンジン」(80号)は、蒸気をじっくりと表現しています。湯浅恵美さん「何時かどこかで」(60号)は、人形などの静物や空を描く筆遣いに確かな筆力を感じました。 同じ会場で北星学園はしどいOG展が開かれていました。まあ、いまのはしどい会とはぜんぜん違って、穏やかな絵画や、モラなどの工芸が並びます。おっ、七宝の飯沢能布子さん、イラストレーターの岩川亜矢さん、絵画の野田四郎さんも出品しています。あれッ、野田さんって、女性だったっけ!? いずれも9日まで。横尾忠則展のみ13日まで。 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)では、麻生扶希展。あたたかい色彩の人物画です。油彩ですが、癒し系のイラストに近いものがあり、見ていてほっとします。 上のフロアは中山美代子展。1973年生まれ、千葉県市川市の作家さんです。水彩などで色を塗った紙を細長く切って、縦糸と横糸のように編んでいくという手法で作品をつくります。当然のことながら、どの作品も、市松模様になっています。 いずれも11日まで。 このほか、this is gallery、オリジナル画廊にも行きました。 |
9月7日(金) カフェダール(中央区南9西3)のたかはしゆきこ作品展 夢のおくりものは、イラスト展でした。 ほとんど青や緑だけを使って、寂しい草原などの光景を描いています。 ただ、サイズがサムホールくらいより小さいものばかりなので、評価は差し控えたいと思います。 カフェダール(フランス語で、芸術カフェの意味)は、初めて入りました。あまり大きくない喫茶店で、店の奥が少し高くなっていて、絵を飾る小ぢんまりとしたスペースになっています。ただ、絵だけ見て帰るのは難しそうな感じです。珈琲は普通でした。 きょうの北海道新聞の夕刊「金曜らしんばん」の「編集後記」は、こんな書き出しです。 ひっきりなしに電話が鳴り、入れ替わり人が訪ねて来る−。そのストレスを思い起こし、「確かにな」と動物たちの”はた迷惑さ”に思いを重ねてみました。 会社に電話がかかってきたり、人が訪ねてくるのを「はた迷惑」に思うような人は、会社を辞めればいいのではないでしょうか。 少なくても、自分のつくっている商品で、そんなことを表明しないでほしい。「こんなヘンな電話があってさー」と、仕事の後に居酒屋でグチるのとはまったく話が違うのだから。 新聞社にかかってくる電話は、読者からの大事な情報提供です。 いや、新聞社だけじゃなくて、会社への意見や苦情を「迷惑」と公言する神経は、筆者にはまったく理解できません。 こんなのが文化部にいるんだからさー。 さて、明日はがんばってまわる(だけの体力が残されているだろうか?) |
9月6日(木) 終了間際の時計台ギャラリー(中央区北1西3)に駆け込み、鵜沼人士個展、萩原英雄個展、野呂一夫個展を見てきました。 筆者は鵜沼さんの絵がわりと好きなので、ちょっと詳しく個展の紹介を書きました。こちらをごらんください。 今週は、穏やかな風景画に取り組む人の個展が多いようです。 萩原さんはニセコや積丹の海など。一部、ヨーロッパも。 輪郭線に見えて、実は影だったり、随所にアクセント的に濃い色(けっして黒ではない!)を置くことで、画面が引き締まっています。 構図的にはわりあい、奥行きよりも広がりを強調しています。 野呂さんは、ライラック咲く札幌の街角や、藻南(もなみ)公園など。 屋外にイーゼルを立てて、絵筆をふるう楽しさが伝わってきます。 以上8日まで。 画像は時計台ギャラリーのHPをごらんください。 スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)の金丸雄司油絵個展も、現場の雰囲気の伝わる小品が並んでいます。十勝岳、ホロカメットクといった山の風景から、神威岬、祝津などの海岸、北大第二農場など札幌市内…と多彩です。 金丸さんの特徴は、色が明るくハイキーというところでしょうか。 道展会員。札幌在住。 9日まで。 書峰社書道展は見ませんでした。ご諒承を。 さて、更科e近作版画展(さいとうギャラリー、南1西3、ラ・ガレリア5階)ですが、更科さんの作品は大胆に変貌していました。焼いた鉄板を紙に押し付けてるのです。 昨年の道展で見たときは、あまり感心もしなかったのですが、今回は、紙の下にアルミホイルや旧作「ウオーターマーク」を敷いて、紙が焼け焦げた穴から顔をのぞかせていたり、軽く鉄板を押し付けて薄い陰のように見せたり、といった新たな工夫がみられます。 もちろん全作品がモノタイプ。鉄はバーナーで熱しているそうです。 「前は水で、今度は火。最近はこれがおもしろくてたまらない。いずれ、煙を紙に固定できたらおもしろいと思うんですけどね」 と、更科さんの実験精神はとどまるところを知らないようです。 同ギャラリーでは、千葉尚・博子 二人の仕事展も開催中。 陶芸と染織です。尚さんの陶芸は、灰釉などの器が中心。青磁のものは貫入がきれいにはいっています。 いずれも9日まで。 横浜トリエンナーレが始まり、5、6日夕刊で毎日が大きく取り上げたほか、ネットでは、本来月イチ更新のartscapeがほぼ毎日最新情報をアップしています。変わったところでは、批評空間のHPで浅田彰がけっこう詳しい評を書いていました。 11月11日までだけど、行けるかな〜。 |
9月4日(火) 3日は何も書くことがなく、更新をさぼってしまいました。 4日は、大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル)で金沢一彦版画展を見ました。きょうで会期終わり(あーあ、さいきんこんなのばっか)。 銅版画(サンドブラストという珍しい技法)の作品は、せいぜい黒、赤、青の3色くらいしか使われていないのですが、逆にそこが、メルヘンの世界を純化しているように思えます。色鮮やかな世界よりある程度不鮮明な要素のあるほうが、遠い夢の世界に似ているというか…。 リトグラフの、色数の多い作品もけっこうあって、それもいいんだけど、銅版画のほうがより金沢さんらしい世界になっていると思いました。 また、メルヘン調といっても、どこかで見た紋切り型のイメージではなく、いろんなイメージがあって、引き出しの多い人だなー、と思いました。 金沢さんは札幌在住。道展、日本版画協会の会員。 大同ギャラリーの上のフロアでは、空知管内栗沢町の陶芸家、塚本竜玄さんの個展。 塚本さん独特の黒釉が、ずしりとした重みを、大皿や壷にもたらしているようです。 天目の大きな皿もありました。 仕事が忙しくなり今後しばらくは、更新が不定期になる恐れがあります。 ご諒承ください。 と言いつつ、「展覧会の紹介」欄のさくいんページを新設しました。余裕があれば、「つれづれ日録」に登場する主な人名・展覧会名も加えて、一発で探せるようにしたいのですが。 |
9月2日(日) きょうも仕事だー。 急いで、きょうで会期が終わる「こことそこ」安住公美子展を、ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)に見に行きました。 濃いピンクや緑などをぶちまけた抽象画なのですが、よーく見るとキャンバスが微妙に傾いていました。よこからみると、台形になっています。キャンバスが変形しているわけですが、といって毛内康二さんのようにでこぼこしているわけではありません。 4つのキャンバスからなる組作品は、ちょうど中央がくぼむように、斜めになっています。 いったん斜めだということに気がつくと、キャンバスの物質性が気になって仕方ありません。 平面とは何か、ということについて、たいへん考えさせられる個展でした。 近くのカフェ・ルネ(南4西22)にも足をのばしました。 関川敦子リトグラフ小品展が開かれているのです。 うかつにも、7月のPLATE-MARK展のときには気がつかなかったのですが、作品を茶などの色がすっぽり覆っていて、画面全体がおちついた色調になっています。 ちょうどご本人がいらして、 「最終版には、すごく手をかけるんですよ」 と話していました。 旧作が多いのですが、クマさんや猫がめんこい(かわいい)です。パリの地図の形をしたかたつむりとか。 ここの喫茶店は、明るい色調のインテリアで、すごく和める感じです。珈琲も、マンデリンを飲んだけど、おいしかった。見るだけの人もどうぞ、と張り紙がしてあります。 18日まで。水曜休み。 それにしても、まだ新道展も北海道立体展も見てないし、見なきゃならないのに見てないものが多くて、かなり今週はキツそうです。 |
9月1日(土) 自由美術協会北海道グループ展のコーナーで、高橋靖子さんと書くべきところが佐藤泰子さんになっていたので訂正しました。たいへん失礼しました。 冒頭のモノクロ画像は4.4キロバイトで、先月の75キロバイトに比べるとかなり軽くなりました。まだフォトデザイナーの使い方がよくわかっていないのですが…。 |