展覧会の紹介

第29回 美術文化北海道支部展 9月10日(月)〜15日(土)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)

 美術文化協会は1939年、独立美術を脱退した福沢一郎(日本におけるシュルレアリスムの第一人者)を中心に、二科や独立の前衛的な画家を中心に結成された公募展です。いまも、抽象や、幻想的な画風の作家が大半を占めています。
 北海道のからみで言うと、全道展の創立会員である小川原脩さんも創立会員でしたが、戦争中の軍部協力などの問題で脱退し、戦後は郷里の倶知安に引っ込んで中央の団体には属していません。
 今回は、会員、出品者人と、賛助出品として小出昭三(胆振管内白老町)と吉田隆一(苫小牧)の二人が出品しているほか、物故会員として亀浦忠夫の名が見えます。ご冥福をお祈りします。
 道内の会員は、新道展の会員が比較的多いようです。

 会場でひときわ光を放っているのが、藤野千鶴子の「宙」シリーズの2点です。これまでととりたててかわったところはありませんが、宇宙的なモティーフのない抽象画にもかかわらず、爆発し明滅するさまざまな形の模様がはるかな時空の広がりを感じさせるあたりはさすがといわざるを得ません。
 金子賢義さん(夕張)は「京浜炎上」などで、先の戦争の記憶を、ビュッフェばりの黒い線による群像で、描こうとしています。ただ、個人的には、G室に並んでいた小品「黒い太陽」の連作のほうが、面白かったです。「黒い太陽T」は、黄色と黒の二つの太陽が空に浮かび、遠景には砂漠の中に二つのピラミッドが聳えています。前景にはどことも知れぬ都市のシルエットが描かれている、幻想的な作品です。

 小品のほうが面白いという意味では、鈴木秀明さん(函館)の「断層」は40号程度で、人物は登場せず、地味な作品です。それよりも、背景に大胆に金箔を張った人物画「憧憬」や、塀に映った影を主モティーフにした「追想」といった小品に、意欲的な作者の姿勢を感じました。

 宮沢克忠さん(帯広)は、作風が変わってきて面白いなーと、思います。一昔前のモダンさを残した雰囲気は同じですが、おしゃれな風景画や室内画の域を脱して、「パラパラシンドローム」では、どことなく現代人を風刺したような構成画になっています。
 三浦恭三さん(小樽)「スペース」は、寒色を中心に、模様の繰り返しによる抽象画ですが、直線主体のハードさが影をひそめ、曲線が増えてやわらかさが増してきたようです。
 西田靖郎さん(檜山管内熊石町)「ARHATA」は新道展出品作。二つの丸キャンバスからなる大作です。抜群の描写力を持つ西田さんもあまり変わらないナー、と思っていましたが、よく考えると、建物が画面からほとんど消えて暗い空の占める部分が増え、はるかで不思議な広がりがますます出てきたのかなーという感じがします。 

 ほかに、和紙の組み合わせによる絵画をつくる青山清輝さん(岩見沢)、不気味な生物のようなモティーフが画面をあふれさす大林雅さん(札幌)や、永井唱子さん(函館)、柳川育子さん(札幌)が出品しています。