十勝・更別の風景つれづれ日録の題字

2002年5月後半

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 5月31日(金)
 ブラウザの調子が悪くて、メールがとどかない状態が20時間ほど続いています。
 こちらから発信はできるみたいなんですが。
 どなたか、直しかたをおしえてください。
 といってもなー、メールがとどかないんじゃ、おそわれないよなー。

 第57回春の院展を、三越札幌店(中央区南1西3)で見てきました。
 見に行く前はあんまし興味なかったけど、さすが日本画にかんしては腕っこきが集まっているだけに、なかなか楽しめました。
 ま、あいかわらず保守的といえば保守的なんだけど。
 昨年まではタダ券をあちこちにばらまいていた三越ですが、ことしは入手に苦労しました。券の大きさも小さくなっているし、ここらへんも不況の影響かしらん。それとも、三越カードを持っている人は無料なので、カード入会促進なのかも。
 詳細は後日「展覧会の紹介」にアップします。

 ほかに、ハラペコ展(さいとうギャラリー)、ASAKA書展(スカイホール)、山岸みつこイラストレーション展(丸善札幌南1条店地下1階)を見ました。
 らいらっく・ぎゃらりい(大通西4、道銀本店ビル1階)の平岸高七宝焼校外展には、能登誠之助さんが「あじさい」を出品しています。


 5月30日(木)
 this is gallery(中央区南3東1)で開かれている3人展「ハーツ オブ ザ ヘッド02」。カッシーさんという人の写真がよかったです。
 サービス版100枚以上をピンでびっしりと留めてあります。
 筆者は、なぜか「辛口」とよくいわれるので、きょうは開き直って辛口なことを書きますが(^_^;)、だいたいにおいて、写真展で見たくないタイプはふたつあります。
 ひとつ。若いねーちゃんが日常をだらだらとなんのくふうもなく写しているもの。ときおり、食卓のアップと、自室での自画像が挿入されるのがパターンですね。写真の腕はからきしのくせに、じぶんが不特定多数に見られるに値するという自意識だけはあるっていうこまったちゃん。
 もうひとつは、海外に行ってきたから写真展を開きましたというパターン。これには、現地の人がカメラのほうを向いて人懐こそうな笑顔を見せているショットがかならずありますね。(たとえば菅弘志さんとか星野道夫さんみたいには)的が絞りきれてないから、たんに旅行のアルバムを見せられているみたいで、げんなりです。
 カッシーさんの写真は、上の二つにいっけんあてはまるようで、じつはあてはまらない。夕空。霧の飛行場。オルセー美術館の大時計。桜。食事する友人。西日を反射する波。波打ち際。列車から車窓の雪景色を眺める女性。アジサイ。ホワイトイルミネーション…。
 日常と風景。はっきりした物語があるわけじゃないのに、リズミカルに場面がかわっていきます。
 そして、カッシーさんの写真のいちばんの特徴は、逆光が多いことでしょう。露出はむずかしいですが、うまく撮れば、順光よりも被写体の存在感がましてくるのです。このへん、じょうずに撮れていることが、成功のポイントのように思われました。
 1日まで。

 札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)でさっぽろくろゆり第35回展
 黒百合会は、いわずとしれた、有島武郎が創設した北大の洋画サークルです。これは毎年開かれているOB展。
 道展創設会員で、道画壇の精神的支柱でもあった今田敬一さんの小品「花(れんぎょう)」が特別出品されています。
 田中盛夫さん(道展会員)の水彩「風景」は、むかし日本人が抱いていたイメージの通りの「花の都・パリ」。
 川倉宏一さんの油彩「小樽早春」の2作は、現実の小樽というより、想像上の町のようなおもむきです。
 山下脩馬さん(全道展会員)の油彩「小樽・錦町」、榊原彰さんの油彩「空隙の小迪」などは、でこぼこしたマティエールがおもしろい。
 小峰尚さん(茨城県在住)の陶芸「覚醒は始まった」は、薄い金属器のような質感がユニークです。
 坂元輝行さん、栃内信男さん、美阪美恵子さん、八鍬俊郎さんら常連も出品しています。
 2日まで。

 札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)では、第49回写真道展第20回学生写真道展の入賞・入選者展が開かれています。
 さすが、道内最大の写真公募展とあって、佳作がならんでいます。応募総数4302点のうち入賞・入選は221点にすぎません。ただ、八つ切りの2段がけがえんえんと続くのは、ちょっとツライものがありますし、1点だけというのも、選ばれるほうは大変でしょう。
 山本康雄さん(網走管内遠軽町)のように3部すべてで入賞している人もいます。毎年の常連で、もう審査する側にまわったほうがいいんじゃないかと思うくらい、高い技量を発揮しています。
 個人的には、小瀧健二さん(日高管内三石町)「語らい」の北海道らしいあったかさ、坂上隆敏さん(恵庭市)「路地裏」の猫のおもしろさ、田中克彦さん(岩見沢市)「回る落葉」の不思議さなどに惹かれました。
 荒木憲幸さん(函館市)「山頂にて」は、団体写真を撮られる人たちと函館山からの夜景を1枚のフレームにいれた写真で、視点をちょっと変えるとおもしろい写真になるお手本だと思いました。
 第3部ネイチャー・フォトは、さすがすぐれた被写体がどっさりある道内らしい高水準の写真がならんでいます。ただ、どこかで見たような作品が多いのも事実です。
 学生写真道展のほうは、常連・札幌静修高のほかに、苫小牧西高と道芸術デザイン専門学校勢の健闘がめだちます。本間佳織さん(伊達高)「下校」、すきだな。
 2日まで。
 帯広、網走管内湧別町、室蘭、岩見沢、名寄、日高管内浦河町、釧路、小樽、根室管内別海町、北見、苫小牧、砂川、夕張、滝川、旭川、函館、網走を巡回します。詳細はスケジュール参照。

 おなじくサッポロファクトリーの1条館にあるほくでん料理情報館MADREでは、森美千代展「時・空間 食空間」が開かれています。
 これは、テーブルセッティングの写真展です。写されたテーブルの上には、まだ料理はひとつも運ばれてきていないのですが、ゴージャスなフラワーアレンジメントや、皿の配置、インテリアなどから
「あー、どんな食卓になるんだろう」
と想像するのは、かなりぜいたくなひとときでした。
 ただ、手ぶれの写真が散見されるのはちょっとざんねんです。
 3日まで。

 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)では、内藤克人個展
 リトグラフです。鋭い直線と、影のついた緩やかな曲線が画面の上を走ります。
 連作「飛ぶかたち」では、古代ギリシャの神殿の柱頭がモティーフとなり、「Show time」のシリーズでは、デフォルメされた裸婦が画面に躍ります。
 画面全体からほとばしる、スピーディーで清潔な感じ、躍動感が、持ち味といえるかもしれません。
 北広島市在住、道展会員。
 鳴海伸一建築版画展も同時開催。
 4日まで。


 5月29日(水
 CAIでの阿部典英個展は、展覧会の紹介にアップしました。
 98年の個展のときの評もおまけで附けました。

 ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28)にひさしぶりに行き、吉川満ガラス工芸展を見ました。
 これからの季節にふさわしい、すずしげなうつわがいっぱい並んでいます。
 「トライアングルビアグラス」は、三角形の台がおしゃれです。
 「ウインドウプレート」という皿は、一筆走っている黄緑色がじつにあざやか。
 吉川さんは岩見沢在住。6月9日まで。 

 そこからギャラリーミヤシタ(南5西20)まで歩きました。けっこういい運動。
 伊賀信個展です。
 木の細い板を平面の上に付けて、幾何学的な模様を強調した“絵画”を制作しています。
 もし、木が付いていなかったら、モンドリアン的なというか、ミニマルアート的な抽象絵画です。表面に凹凸があるため、独特のおもしろさが出ています。
 作者は
「線を強調したかった。むかしは糸でやっていたんです。自分の試行錯誤を見せているようなもんですね」
と話しており、「絵画の二次元性に対する批評」というような意識は、とりあえずないようでした。
 6月2日まで。

 ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)では、SAIBER WORK SHOPと題されたグループ展が開かれています。
 フライヤー(ちらし)から推察するに、「存在派」展を主宰する金子辰哉さんが、東京都小金井市にあるフリースペースART LANDと同時平行というかたちで開いているようで、金子さんはサックス奏者として、あちらでコンサートにも乗り出しています。
 ただ、タウン誌「poroco」にあったような、ウェブサイトで同時進行ってなかんじではないみたい。金子さんのギャラリーアートマンのサイト、ほとんど更新されてないよ。
 出品者は、金子さんのほか、星野修三、宮尾雄二、谷口圭詩、樋爪俊二、金田ユキ、山岸誠二、太田ひろ、川村雅之、野口耕太郎、椿宗親のみなさん。

 このほか、オリジナル画廊(南1西26)の原真知子シルクスクリーン展を見ました。


 5月28日(火)
 大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)に行くのを忘れてて、最終日にすべりこみセーフ。
 下のフロアは、高橋博昭個展
 大小17点の作品すべてが「生存−2002」と題されています。
 基本は、漆喰のような厚いライトグレーの地肌から、赤やピンクの紙や、布、紐などのコラージュが顔をのぞかせ、また地肌の表面を鉛筆やチョークとおぼしき細い線が走るというものです。
 作品によってはところどころに孔がうがたれています。
 どうやら支持体は、住宅用の建材かなにかのようです。
 とりわけ、小品で使われている段ボールは、独房の窓のように見えて、迫力があります。
 厚い壁に塗り込められてもなお底から湧き上がってくる人間の生−を作品に見るのは、文学的にすぎるでしょうか。
 高橋さんは岩見沢在住、道展会員。84年から90年まで北海道抽象派作家協会の同人でもありました。

 上のフロアは、高橋さんと、高橋佳乃子さん、奥野侯子さん、後藤和司さんによる第3回4人展です。
 佳乃子さんは、抽象画を3点。黒などの濃い色の上にミントグリーンやピンクなどの明るい色を塗り重ねることによって、色の重なり具合による表現をめざしているようです。とりわけ、キャンバス5枚からなる作品は、黒を下に塗ったり、ピンクの上から塗ったり、いろんなことをしています。
 博昭さんと同住所、道展会員。
 奥野さんは、同じ人物を3ないし5人、並列して描いていますが、うち1人は、胴体だけ空模様、もう1人は輪郭だけ残してすべて青空が描かれています。マグリット的なシュルレアリズムとか、池田満寿夫的なユーモアではなく、人間存在の根底への問い掛けがあるように思われます。
 さらに、女性の服を、漫画でスクリーントーンを塗るみたいに、装飾的に描くことで、絵画の二次元性をも強調しているようです。
 苫小牧在住、道展会員。
 後藤さんは抽象画。細い斜め線で、びっしりと画面を覆っています。線のパターンのせいで、キャンバスはまるで織物のように見えます。
 札幌在住、新道展会員。北海道抽象派作家協会の同人でもあります。

 富士フォトサロン札幌(北2西4、札幌三井ビル別館)のサラブレッド燦燦 内藤律子写真展も、あすが最終日。いかんなー、ぎりぎりが多くって。
 内藤さんは、馬を愛するあまり、5年前に浦和市から日高の浦河に移り住んだという筋金入りの人です。
 サラブレッドの写真集も何冊も出版しています。
田辺隆吉個展「団欒」 さすがにたしかな腕で、四季折々の馬たちの、多彩な表情ををとらえています。シンザンやトウショウボーイなどの横顔もあります。
 個人的には、競走馬という存在にはなんの関心もないのですが、お好きな方はぜひどうぞ。

 札幌時計台ギャラリー(北1西3)、A室は田辺隆吉個展 Weathering Time 時の譜
 田辺さんはベテランの金工作家で、一昨年の個展までは金属板を辛抱強く打ち付けて風土性を滲ませた作品をつくっていました。
 ただ、会場の片隅に、古道具などを鉛板ですっぽり包んだ一群の作品があり、けっこうご本人もおもしろがっていたのですが…
 なんと、今回は、すべてがそのタイプの作品になってしまったのです!
 左の写真は「団欒」と呼ばれる一種のインスタレーション。ちゃぶ台、茶碗、バケツ、踏み台、精米するための一升瓶、竹ばし、スコップ…。
 高度成長前の日本のなつかしい食卓がそっくり再現されているのです。 
 このほかにも、半分に切った林檎(じつは模型)を包んだものや、卓上ラジオ、ざる、シングルレコード、和だんすなど、おびただしい古道具が、田辺隆吉個展「HIGH SCHOOL」鉛のにぶい光沢を放って、息づいています。
 もうひとつ、壁の一方を占めるのが「HIGH SCHOOL」なる連作。
 これは、或る私立高校で古くなって不用になった机の天板10個を、やはりすっぽりと鉛板でつつみ、磨いたものです。
 磨くと、長い年月のあいだに書かれた(削られた?)落書きがあらわれてくるのです。「ヨーコ/レノン」って、書いてあるの、読めますか?
 生徒の側の角だけが丸くなり、反対側が角張ったままなのもわかります。
 この個展で田辺さんは、フリーマーケットなどあちこちで古い物を探してきたうえ、長い時間をかけて鉛の板でそれらを覆うという作業をした「HIGH SCHOOL」の部分わけです。けれど、自身で造形するということは、すっかり放棄しちゃったわけです。このことを、筆者はどうのこうの言うつもりはありません。むしろ、おもしろいと思います。いわば、年月が作者になっているわけですから。田辺さんご自身も、自分があれこれこねくり回すより、名もない人の行為の積み重ねが芸術作品になってしまうことを、楽しんでいるのではないでしょうか。
 まあ、あまりむつかしいことをかんがえなくても、或る年代より上の方には、じゅうぶんなつかしい展覧会です。
 ただ、あえて興ざめなことを言うと、いくらなつかしがっても「貧しかったけれど輝いていた時代」は2度ともどってはこないでしょう。たえざる生産と消費を人間に強いるのが資本制生産様式だからです。 

 C室の高橋洋子日本画個展、3階の萌え黄会展、NHK絵画教室X展も見ました。
 萌え黄会は、道展の山川真一さんの、X展は全道展のデュボア康子さんの教室展です。
 いずれも6月1日まで。


 5月27日(月)
 昨日アップした「東京発熱日記」のなかで、作家の名前と展覧会名に誤りがありましたので、訂正しておきました。岡美里さん、ごめいわくをおかけしました。この場を借りておわびします。

 アリアンスフランセ−ズギャラリー(中央区南2西5、南2西5ビル2階)で、三箇みどり個展
 着彩した、胸像の彫刻や、壁掛け式の胸像(つまり後半分がない)が、うまいぐあいに展示空間に散っています。
 この会場は、ギャラリーという名前はついていますが、ようするにアリアンスフランセーズの書架と、その反対側の壁。ふつうのタブロー作家は壁しかつかわないんだけど、昨年の川上りえさんの個展みたいに、全体を利用するとなかなかほかではできない展示ができます。
 書棚の片隅にそっと置かれた女性像を見て、びっくりしたりね。
 ここの書棚は初めて中味をみたけど、フランス語の本のほか、日本語の訳本もかなりあります。また、映画のビデオもけっこうあって、「インディア・ソング」「アトランタ号」などの名前も(後者は筆者未見)。ここでフランス語を学んだら、ただで借りられるのかなあ。それだけでもアリアンスフランセーズに学ぶ意味ってあるかも。
 6月1日まで。

 工藤悦子「燦(生)」札幌時計台ギャラリー(北1西3)は、きょうはB室のみ見ました。
 工藤悦子個展が2年ぶりに開かれています。
 工藤さんは、ずっと、生命の原形質を思わせる、青く不思議な物質が浮かぶ光景を描いています。
 今回の連作「燦(生)」も、それは変わりません。ですが、色彩はずいぶんと明るくなってきたようにかんじます。
 一見、青系統の色だけを塗っているように見えますが、じつは赤や黄色などたくさんの色が下の層に薄く何回も塗り重ねられています。
 「10回目くらいまでは何を塗ったか書き留めておくんだけど、それ以降はめんどうくさくなって」
と笑う工藤さん。重ね塗りの回数は20回ではききません。これが、作品ぜんたいに、えもいえぬ透明感をあたえているのでしょう。
 右の写真は「燦(生)」の1作。130号キャンバスを2枚つなげた大作です(大作5点はすべて新作)。しかし、デジタルカメラでは、なかなか微妙な色の深みまでは出ないようです。
 「さいきん家を増築したので、けっこう大きな絵もかけるんですよ」
 ほかに、オレンジ系統の色を基調に描いた小品が2点ありましたが、これはまだ試行段階のようです。
 工藤さんは江別在住。主体展と新道展の会員。
 1日まで。

 きのうかきわすれてましたが、6月の札幌のギャラリースケジュール欄をいちおうつくりました。


 5月26日(日)
 ようやく、先週の東京行きの感想を書きました。
 もうおわってしまった展覧会が多くて、あまり参考にならないと思いますが。

 このほか、「アートな本棚」に1冊追加しました。


 5月25日(土)
 ひさしぶりにたくさん見たので、更新も大量です。ごかんべんを。

 きょう終わってしまったのですが、札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)の徳丸滋展、ほんとによかったです。
 以前の徳丸さんの絵は、風景画のほかに、昆虫や草花をミクロの目でとらえた作品があって、リアルすぎてちょっとぶきみなところもありました(それが魅力といえば魅力だったんですが)。ここ1、2年は、画面からよけいなものがどんどんと削ぎ落とされて、風景画なのに抽象画の域に達しているといってもいいほどです。
 でも、筆致はリアル。配色もシンプル。ニセコの地で、じっと自然を観照してきたすえに達成した境地といえるのではないでしょうか。
 今回は、「ほうき星」「高原」など、ニセコアンヌプリを背景にした作品も目立ちました。
 徳丸さんは全道展会員。ホームページST-galleryはこちら。

 昨年はじまった絵画グループ展「北の群展」(コンチネン北の群れ展の会場風景タルギャラリー=南1西11、コンチネンタルビル地下1階)。
 第1回の直後に、リーダー格で、道内を代表する抽象画家だった菊地又男さんが亡くなられましたが、遺作の「早春」が、昨年会場で撮ったスナップとともに陳列されていました。
 ことしも、斉藤勝行・邦彦兄弟の作品が見ごたえありました。
 勝行さんは「赤いマウンテン」「被爆」など7点を出品。「ヒロシマはじぶんにとって永遠のテーマ」と語るだけ斉藤勝行「シャロンの蛮行」に、気合が入っています。
 右の写真は「シャロンの蛮行」。木片をちらしたような模様のパネルの、表面の模様そのままに白、赤、黒のアクリル絵の具を塗り分けました。一部に、銀を焼いて定着させる日本画の手法ももちいています。重々しい画面が、しずかにイスラエルの残虐行為を非難しています。
 筆者は、美術は政治的であるべきだとか、あってはいけないとかという意見はありません。また、ふだん政治や海外情勢に関心のない人が、おおきな事件にインスパイアされてそれらを主題に作品をつくることについて否定はしません。ただ、そういう人の作品は、勝行さんのように、ふだんからニュースに関心をいだいている作家のものにくらべると、どうしても「付け焼刃」的な印象はいなめません。
 勝行さんは、良い意味でジャーナリスティックな感性があり、しかもプロパガンダのために画面を犠牲にはしていないのが、見て感動する理由だと思います。
 このほか具象画の小品「岩内港風景」も出しています。
 邦彦さんも「壁に刻まれた愛」「紛争の壁」と、パレスティナ紛争に材を得た抽象画を出品しています。
 ほかに、岡崎正義さんの抽象画も色の配置におもしろさがありますが、全体的には、菊地さんを意識しすぎているようなところがないでもありません。
 95年ごろに撮影した、菊地さんのしゃべっているビデオもちょっと見せてもらいました。
 「木田金次郎? 美術館の建物はいいけど、あれはダメ」
と言下に否定しているのがおもしろかった。最晩年に野口弥太郎の影響を受けているのは別にして「あとは米屋に金が払えなくてそのかたに押し付けたような絵でしょ」。わはは。それはそのとおりかもしらんが。
 26日まで。

 あとは駆け足で。
 素材の対話展vol.3ギャラリーたぴお=北2西2、道特会館)
 今荘義男さん「古里」5点、あいかわらずイイ。抹茶色や薄茶色の快感。
 林教司さんは「WATERDROP」などシンプルな作品。
 D.HISAKOさんの猫の絵に、青木崇さんが詩をつけるのもいつものパターン。青木さんの詩はちょっと重い。D.HISAKOさんの絵はますます薄塗りになって、ちょっと坂本繁二郎を思い出す。あっちは馬だけど。
 こないだザリガニヤで女性像を出していた瀬野雅寛さんも抽象。西条民治さんがインスタレーションを出品。 

 晴展♯3(this is gallery=南3東1)
 洞内麻希さんがめずらしく人物のない絵を出しています。家々が垂直に、細く高い二本の塔のかたちに積みあがった不思議な、ちょっとシュールレアリスティックな風景です。
 以上、25日で終了。

 第2回方彩会展スカイホール=中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 萩原勇雄さんの教室展のようですが、わりあいみなさん達者です。
 吉田二郎さん「雷電海岸」など、大まかな個所と細かく筆を入れる個所のめりはりがついていて、見ていてきもちがよいです。
 細野小夜子さん「春待つ流氷」は、さまざまな色の塊が効果的に配置され、塗り残された格好の輪郭線もユニークです。

 蒼友展(さいとうギャラリー=同住所、ラ・ガレリア5階)も、絵画グループ展ですが、みなさんお上手でした。
 森スズ子さん「白蕪」は明るい色彩の心地よい静物画。「街角」は西武百貨店がモチーフですが、人があまり取り上げない題材の風景というのは、興味深いものです。
 百島忠雄さんは、「農村風物詩」など手慣れた筆致。
 ほかに、阿部信男さん、斉藤義雄さん、佐藤典彦さん、中山美津子さん、小柴弘さんが出品しています。

 メタモリックアニマル札幌市資料館=大通西13)
 北広島の人形作家、山本祐蔵さんが以前から取り組んでいるもので、人間みたいに衣服を着けた犬や猫などの動物の木彫と、その木彫を書割の中に立たせて撮影した写真とを組み合わせて展示しています。
 一見すると、写真は、モノクロということもあって、ほんとうに動物がタキシードやドレスを着て街角にたたずんだり、キャンパスを歩いているように見えるのがおもしろく、軽い風刺になっています。
 隣室は、パステル画展「正方形」。マンボウなど、海を泳ぐ魚介類の絵が大量にあって、なんかヘンな個展でした。

 篠路天然藍染サークルあいの会藍染展(同)
 篠路(しのろ)は、札幌市北区の地名です。明治時代には藍が栽培されていたという歴史があり、近年「あいの里」という地名ができたほか、藍によってまちおこしを図ろうという動きもあります。
 筆者は染織のことはよくわかりませんが、藍の葉は、藍色だけではなく、季節などによって薄いワインレッドや茶色にも染めることができると知っておどろきました。

 湧玄社書展ギャラリー大通美術館=大通西5、大五ビル)
 塩谷哲朗さんのグループの、意外にも初の展覧会。
 12人が、臨書と、一字書創作を、1点ずつ出品しています。
 後者は、筒浦綵舟さん「燕」が、ほんとうにツバメが待っているかのような軽やかな仕上がり。上野虹扇さん「慟」は重量感があり、田荷素雪さん「驂」は呼吸の流れのようなものが感じられました。

 以上、26日で終了。

 ヴェガの会Uアートスペース201=南2西1、山口中央ビル5階)
 染織のサークルです。染めから取り組んでいる人が多く、しかも明るい色彩、たわみの少ない仕上げで、見ていて気持ちがいいです。
 28日まで。

 ほかに、潟沼弘二・安住芳雄油絵二人展(市資料館)、第7回遠藤都世佛画展(スカイホール)、野口秀子個展(同)、小野礼子水彩画展(札幌時計台ギャラリー)、じゃがいもの花油彩展(同)を見ました。


鋪道に積もった雹 5月24日(金)
 仕事は休み。
 雷が何度も鳴って、雹(ひょう)が降ってつもりました。
 雹を見るのははじめてです。
 札幌では、小学校の給食室に落雷があったりして、なかなか大変だったようです。

 先週の「北の日本画展」を、ようやっと「展覧会の紹介」にアップしました。


 5月23日(木)
 まず訃報から。
 米国出身で、現代美術のニキ・ド・サンファールさんが亡くなりました。
 彼女は若いとき精神病院に入れられていましたが、キャンバスをピストルで撃つ「射撃絵画」で美術界に劇的なデビューを果たします。その後は、原色を使った、毒々しくもポップで明るい、女性の肉体を思わせる立体作品を数多く作り、とくに、パリのポンピドゥーセンター前の噴水の中にある作品が有名です(ティンゲリーとの合作)。
 日本にも熱心なコレクターがいて、栃木県には「ニキ美術館」があります。
 道内でいえば、小林重予さんの作品は(彼女がどういおうと)ニキの影響を確実に感じさせます。

 お休みしていたギャラリーまわりをちょびっとだけ再鈴木吾郎「少女半迦」開。
 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)のA室は、鈴木吾郎テラコッタ新作展
 少女の裸婦像が中心です。なのに、どこか、飛鳥や天平時代の仏像を思わせます。
 あの時代の仏像って、とても素直で伸びやか。ひねこびたところがありません。日本的でいて、中国やギリシャにまで通じるインターナショナルなところもあります。
 右の写真は「少女半迦」です。髪の毛が羽根みたいになっているのは、以前からの特色ですね。
 小品は、寝そべる姿が多く、人物彫刻にありがちな「立つ・坐る」という姿勢から解放されているため、鳥のような自由さが感じられます。一方で、どの少女たちも過剰な理想化がなく、なんだか親しみやすいのです。
 「内なる仏へのオマージュ」は立像です。広げた両手が
 「釈迦三尊像を、どっかで意識しながら作りました」と鈴木さんは話していました。
 「頭像・縄文」は、火炎土器を思わせる髪型をした首です。
 「飛天・アフガン」と題した少女像もありました。

 B室は木下幾子展
 素描一筋の木下さんですが、今回は墨でかいています。
 2年前、肩を痛め、ためしに墨と筆をつかったところ、コンテよりもずっと楽だったので書いているとのこと。
 陰影がなく、線の引きなおしもできませんが「そこがおもしろい」と木下さん。裸婦だけでなく、着衣の女性像もけっこうあります。
 「やっぱりモデルを前にしたほうがいいわね。想像でかくと、漫画みたいになっちゃう」
 小品には、絵手紙ふうのもありますが、昨年から小樽の道新文化センターで絵手紙の講師もさせられているとのこと。「やめさせてくれないんです」とうかぬ口ぶりでした。
 いずれも25日まで。 


 5月22日(水)
 熱はひいたものの、喉の調子がわるい。
 チェーンスモーカーならぬ、チェーンのどあめ状態です。会社では「人間ボイスチェンジャー」と呼ばれてます。ううう(T_T)

 富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館)さんから、7月以降の写真展の資料をどっさりいただきました。折を見て、画像などを、スケジュール欄から見ることができるようにしていくつもりです。


 5月20日(月)
 訃報です。
 陶芸家の下沢土泡(どほう)さんが亡くなりました。76歳でした。
 下沢さんは、雪や流氷を思わせるダイナミックな釉薬を、陶芸に向かないといわれている道内でとれた土で焼いた陶器に施す「北海荒磯(ありそ)焼」で知られます。
 また、北海道陶芸協会(狸小路8丁目のファブカフェのすぐ近く。北海道陶芸会とは別)をつくり、道内各地で後進の育成に努めました。とりわけ留萌、オホーツク地方にはたくさんのお弟子さんがいて、土泡流の陶芸を広げています。
 筆者は一度だけお会いしたことがありますが、だれもやってないことをやろうという気持ちの強いかただなあというのが印象でした。

 中吉和子写真展=イーストウエストフォトギャラリー(中央区南3西8、大洋ビル2階)。
 ふつう撮影のじゃまになる窓ガラスを、あえて写真のテーマにした作品群。反射する風景や光、付着する水滴などが、つつましやかな抒情性を奏でています。
 筆者の記憶では、ご主人が道展会員の画家、功さんで、何度か二人展を開いていました。やっぱり個展のほうがあずましい(北海道弁)感じがしました。
 21日まで。 

 それにしても、なにがかなしくて、37度の熱をおして深夜労働をせねばならんのだ。
 のどが痛くて、声も出ません。
 まあ、妻子を置いて東京に遊びに行ったバチがあたったのかもしれませんな。
 書かなくてはならないテキストがたまっていますが、しばしお待ちを。


 5月19日(日)
 東京のことを書く前に、札幌の展覧会についてすこし。
 Tom's Cafe(北区北6西2 札幌駅パセオ地下)で開かれている碓井良平さんら3人のグループPaint Boxの展覧会「Face Exhibition」をようやく見てきました。
 こういうタイトルなので、すこし具象になってるのかナーと思ってたら、前回と同様、抽象でした。米国の抽象表現主義の絵画を思わせる13点はすっかり店になじんでいました。
 20日まで。 

 一色一成写真展「咲いた咲いたチューリップの花が」。キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)。
 前半は屋外で撮影したたくさんのチューリップ。
 明るい花をにじみなしで撮っています。これは、じつはあんがいむずかしい。
 後半は、室内でモノクロで撮ったチューリップ。
 こっちのほうがなまめかしくて、花の存在感をアピールしています。
 17日で終了。30日から6月5日まで大阪・梅田のキヤノンサロンに巡回。

 病み上がりなので、きょうはこのへんでごかんべんを。


 5月18日(土)
 突発的に東京に行ってきました。
 雪舟展の、あまりの人の多さにびっくりし、「プラド美術館展」「カンディンスキー展」を見ている間はひじょうに体調が悪く、家に帰って熱をはかったら、38度ありました。
 というわけで、詳しくはあす以降。


 5月17日(金)
 道立釧路芸術館で「コロー、ミレー、バルビゾンの巨匠たち 中村コレクション秘蔵の名品」展が、25日から7月10日まで開かれます。
 兵庫県姫路市の企業経営者の所蔵品が展示されます。これまで、地元・姫路で1度公開されただけというものですが、国内のバルビゾン派コレクションでは1,2を争う優品がそろっているそうです。
 この展覧会を監修した美術評論家で東京純心女子大教授の井出洋一郎さんの講演会が25日、同館であります。
 また、井出さんのサイト、ミレーとバルビゾン芸術は、この展覧会をふくむバルビゾン派についてわかりやすく書いてあるおもしろいサイトです。一度のぞいてみてください。


 5月16日(木)
 まず、コニカプラザサッポロ(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)で見た大八木茂写真展「北の憧憬−悠久の季を感じて−」
 感動しました。
 ふるい言葉で恐縮ですが(^'^)シンクロ率90%超えたっていう感じで、心の琴線をはげしく突き動かしました。筆者のむちゃくちゃ好みです!
 20日まで。
 詳しくは「展覧会の紹介」へ。まだ推敲してないけど。

 札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)。
 第4回蒼樹会北海道支部展
 これって、以前は札幌時計台ギャラリーでやってた展覧会じゃないかなー。
 道内各地の22人が出品。陶芸の1人をのぞき、ほとんどの作品が油彩の具象画で、80〜100号クラスと10〜20号クラスを1点ずつ出しています。
 ぜんたいに、絵の具をあまり混ぜていない、明るい絵がならんでいます。こういうフツーの絵の展覧会って、けっこうホッとするんだよなー。
 しかも、おなじみ桜井寛さん(後志管内岩内町)以外にも、期待の新顔? がちらほら。
 堂々とした山容が題材の大澤誠睦さん(江別)「10月のカミホロトカメトック山」。
 齋藤義雄さん(同)「忘れ去られた日々」は、藁葺き屋根(一部トタン)の廃屋がモティーフです。
 出邑勝之さん(札幌)「春ふたたび」は、山あいの川を、この会としては激しいタッチで描いています。
 ベテラン百島忠雄さん(同)の「山間の秋」は、夕張市の名勝滝ノ上を落ち着いた筆致で描写してます。生じゃないけど濁ってない色って、いいですねー。20号の「大沼公園」もきれい。
 廃屋の絵に取り組み続ける田村隆さん(空知管内新十津川町)は、100号の「北国の詩」よりも、10号の「神威岬」のほうが、キレがあっていいですね。ナイフを使っているんでしょうか。

 六五(むつい)会春展
 1965年結成の絵画サークル。長谷川喜代治さんら男女12人がが出品。
 入江遠さんがうまい。とくに「用水池」は、こんな池の畔に行けたらステキだろうな、と思わせます。

 水墨画紫苑会第三回作品展
 川口聡子さん「南天に雀」がうまい。
 ただ、違う人がほとんどおんなじ絵をかいてる場合がけっこうあるんだよなー。つまり、実際の風景じゃなくて粉本(お手本)を見てかいてるわけです。だから、この絵も、お手本のまね方がうまいという可能性は否定できません。かといって、西岡水源池を描いた水墨画もあるので、油断ならん。
 粉本の問題については以前ふれたので、ここではくりかえしません。

 以上19日まで。午後4時55分になると入り口が閉まるという、お役所的スケジュールであります。

 コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)のさん美術会展は、道展会員で風景画に定評のある越澤満さんが指導するグループ。
 みなさん、それぞれ自分の好きな風景を描いているたのしさが、絵から伝わってきます。
 雪道の描写が光る小林隆さん「春の足音」、紫の用い方がうまくて雰囲気が伝わってくる藤田幸子さん「十勝 新内池」、オレンジと緑の階調が美しい幅田昇一さん「高原晩秋」、断橋という珍しい題材を確実な筆致で描いた中田由美子さん「たたずむ橋」などが目を引きました。
 19日まで。

 このほか、札幌市資料館(大通西13)の、千葉留美子 山本邦苑二人展、コナ・オーカラハン写真展一人のアイルランド人が見た北海道、花明かり展、えぬぶんパステル三人展 オリジナル画廊(南1西26)のまつむらりょうこ写真展「桜、春」 を見ました。

 申し訳ないです。「北の日本画展」の「展覧会紹介」は、もうちょっとお待ちください。

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