2002年6月前半
6月14日(金)
間瀬武 米寿記念日本画展を、さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)で見ました。
間瀬さんは車椅子に乗っていましたが、お元気そうでした。
最初は、椿と桜の絵だけで個展を開く予定だったそうですが、急にとなりの部屋がキャンセルになったため、ほかの絵もならべたとのこと。したがって、50点のうち10点ほどばかりをのぞけば、あとはここ1年ほどのうちに描いた新作の由です。
最大で30号という、小品展とはいえ、おどろくべきことです。
さて、間瀬さんの日本画は、ていねいなスケッチをもとにした、没骨の写実が基調です。
「消えゆく古い大和造の民家は、数百年たっていた古い家を描いたもので、絵をたのんだ建て主と何度もやり取りして描き直したと話していました。
写真の右の「乗鞍朝陽」も、雲海に浮かぶ山々が、うつくしく描かれています。
しかし、たんに現実をうつした作品ばかりではありません。要所要所で、大胆な省略と配置換えをしているのです。
中央の、秋の草を描いた作品などは、植物を自在に配置しています。
「しだれ桜」などは、実物よりもはるかに花びらを大きく描いていますが、それが不自然さを感じさせません。
椿がモティーフの作品は、西王母、岩根絞、太郎庵など多岐に亘ります。
「はて、北海道で椿は咲かないはずだが」
と思っていると、じつは数年前に札幌に転居してくる以前に住んでいた名古屋の自宅では、庭に、絵を描くために、幾種類もの椿を育てていて、スケッチしていたとのこと。
アルプスの風景画にしても、スケッチのストックがあるから、いつでもかけると話しておられました。
奥様は
「これが最後の個展」
とおっしゃっていましたが、そんなことを言わず、いつまでも健筆を振るい続けてほしいものだと思いました。
16日まで。
あとは駆け足で。
札幌市資料館(大通西13)では、この手の絵画グループ展としては、「KOPSC」油絵展がおもしろかったといえます。
磯谷洋子さん「残雪の羊蹄」は、風景を大づかみに捉えてしっかりした構図です。
江川竜子さん「雨あがり」は、全体的にやや建物などがかしいでいるのが、かえって動感をあたえています。濡れて建物を反射させる鋪道の描写も、よく練られています。
能川満子さん「神仙沼」などは、かわいたタッチで、光が自然の中でたわむれるさまを懸命にとらえようとしています。
石川肇地蔵展は、おなじ笑顔をした地蔵の陶のオブジェがおびただしくならんでいます。
美術的な価値はわかりませんが、なんとなくありがたい気持ちにさせられます。
ほかに、第14回グループ正展、第4回土の会油絵展、第2回朱の会展と、3つの油彩のグループ展が開かれています。
いずれも16日まで。
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)の現代の友禅二人展は、日本工芸会正会員の塩澤照彦さん(東京・三鷹)と塩澤啓成さん(札幌)の二人展。
ため息が出るような、みごとな和服地がならんでいます。自然をお手本に、大胆に文様としたものが多く、目を瞠らされますよ。
16日まで。
ほかに見たのは、おなじギャラリーの「渋谷幹男水彩画展」「Line 〜過去現在未来〜」
らいらっく・ぎゃらりい(大通西4、道銀本店ビル1階)の「岸辺の会展」(15日まで)
イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)「写真を楽しむ会写真展」(18日まで)
アートスペース201(南2西1、山口中央ビル5階)の「藍・草木染めあをの会8人展」「女性四人展それぞれの想いをのせて」(18日まで)などです。
最後の4人展は、陶芸など。うつわばかりですが、かなり安いです。
アクセスが3万件を突破しました。
2万件からは4カ月近くかかっており、どうも最近伸び悩みであります。
それはそうと、皆さんのおかげです。ありがとうございます。
6月13日(木)
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)で、道添宗敬油彩画展を見ました。
道添さんというと、人間の顔を中心にしたパワフルな絵という印象がありますが、今回の個展は「人間風景・解」という連作が中心。トルソ、それも、崩壊しかかったトルソを描いています。
「人間という有機質のものと、無機質のものとを描いてきたんですが、今回は、無機質なものの代表として、クレーターのような模様を背景などに入れました」
なるほど、影のついた楕円形が、背景だけでなく、手前にも描かれていて、字と図をつなぐ役目もはたしています。
右の写真は、「人間風景・解 4」という油彩の大作。
モノクロームに近い画面ですが、厚みを感じるのは、さまざまな色を基底部に塗っているからでしょう。ところどころに見られる鮮やかな緑などは、下地が露出しているのです。
「ずっと人間をかいていきたい」
と話す道添さんですが、この絵はすでに人間像がそうとう解体しているというべきでしょう。
一方、姫リンゴや梨などを描いた小品は、力強い大作とはことなり、古典的で静かなタッチ。泰西名画のような画面です。
「息抜きっていうんじゃないですが、こういうのをかくのも好きなんですよ」
と道添さん。
砂川市在住、全道展会友。
おなじ会場では、サッポロ・ブロニー・フォト・クラブ展と第10回木芽会日本画展も開かれています。
前者は、中判カメラによる高画質の写真が並びます。
ネイチャーフォトもよいのですが、今回目を引いたのは、建築中のJRタワーをとらえた牧野一美さんの一群の写真です。
あとで、建設中の写真って、貴重ですよね。いろいろな角度と距離から撮っているのがおもしろい。
てっぺんのクレーンに「そうせい号」「ていね号」という名前がついているなんて、知ってました?
16日まで。
this is gallery(南3東1)で「アートは春風に乗って」という、4人展が開かれています。異色の顔合わせです。
松木静香さんの「花ブレラ」は、透明のビニール傘に絵をかいたもので、目の付け所がおちゃめ。
廃品アーティストとして知られるM.ババッチさんは、めずらしくリトグラフとおぼしき版画を出品しています。犬の胴体が電球になっているところはババッチさんらしいんですけど。
14日まで。
ババッチさんのスクラップアート美術館のHPはこちら。
南円山歩きに追加。
ギャラリー紀(南5西24)で、スケヒロクスモト GLASS WORKS。
4月に美しが丘アートギャラリー(清田区美しが丘2の1)で行われた「9つの箱」展にも出品していた、北広島の作家。
花器やうつわは、肉厚なのが特徴。丈夫そうで、存在感があります。
18日まで。
札幌在住の現代美術家・上遠野敏さんから、東京めぐりの投稿が届きました。
ミーハーな筆者よりもずっと内容のある選択で、大竹伸朗、都築響一、内藤礼、リクリツト・ティラバーニャ、レイモンド・ペティボンなどの個展をみた感想をつづっています。
とくに大浦信行の、富山県立近代美術館事件を題材にした映画を見た話と、針生一郎との対談には興味を惹かれました。この事件については、あんがい知らない人がいますが、美術をある程度やっている人は「知らない」では済まされない事件ですので、一読をおすすめします。
6月12日(水)
今週の札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)は見ごたえたっぷりです。
いままでやってらした作家さんにたいへん失礼かもしれませんが、2階の個展3つがどれも、これだけ充実しているのは、今年初めてといっていいでしょう。
A室は森山誠個展。
油彩の、100号程度の大作と、小品を計17点出品しています。
森山さんの室内画は、抑えた色調と、ナイフを効果的に使ったすばやいタッチ、切れのいい描線が魅力です。かき込むところはさまざまな効果を重ね、そうでないところは平坦に塗るという、構図上のメリハリも利いているのも、さすがベテランといえます。
そして、相当くずしてかいているにもかかわらず、坐っている人間は、人間に見えます。しかも、森山さんの自画像に。ご本人は
「ぜんぜん意識してないんだよ」
と否定なさいますが。崩壊寸前までデフォルメされた人間像は、現代の不安や孤独を反映しているかのように、筆者には見えるのです。
もう3、4年も前から
「人物を入れないで画面をつくりたい」
と繰り返していましたが、静物だけで構図を決めるのはなかなかむつかしいようで、「卓上」と題された複数の作品が並ぶのは初めてではないかと思います。
テーブルの上には、びん、ナイフ、灰皿などが置かれています。それらは一部が写実的に描かれ、一部は大胆に省略されているため、やはり独特の不安感、欠落感のようなものをかもしだしています。
森山さんは札幌在住。自由美術協会会員。
B室は、小池暢子銅版画展。
国際展でも活躍する銅版画家。一版多色刷りという、めずらしい技法を駆使します。札幌での個展は7年ぶりだそうです。
個人的な話で恐縮ですが、筆者は1995年から96年にかけての冬に、士別にある小池さんのアトリエを取材で訪れたことがあります。大雪で列車が遅れたのもなつかしい思い出です。
そのとき、旧作も拝見したのですが、油彩の暗い画面が現実と作者との疎隔感のようなものを浮き彫りにしていたような記憶があります。したがって、いまの小池さんの版画の世界は、一見すると現実離れした童話の世界のように見受けられますが、作品のずっと底のほうに、現実世界も美しくあれという作者のねがいが折り畳まれているように思えるのです。筆者だけかなあ。
それにしても、ため息の出る美しさです。ふつうのエッチングであれば、単色の線が、途中でさまざまに変化していくのです。微妙な色調を、デジタルカメラでとらえきれているかどうか、ちょっと自信がありません。
右の写真の、いちばん手前にうつっているのは「雪冠の花束」。
冬の森。大きな黒い幹に、プレゼントのようなリボンが掛けられています。枝の尖端のほうには、さまざまな夢が開いています。
「白の楽章」「残秋の光に向って」「冬眠の隙間に」など、いずれも北海道(とくに北部)の風土をベースにしながら、メルヘンの要素をくわえ、まるで子どもの時に見た夢をふいに思い出したような幸福感におそわれるのです。
これほど会場を立ち去りがたい気持ちにさせられた展覧会もひさしぶりでした。
小池さんは日本版画協会会員。
C室は永野曜一個展。
サイズは小さいながら、スケール感のある絵が並びます。
いちばん大きい「寄港地」「赤の封印」でも40号。あとは、ほとんど10号以下です。
でも、小ささを感じさせないんだよなあ。抽象なんですが、風景画に見える。北海道の風土のエッセンスを凝縮したかのような、絶妙の配色です。
「雨と土」「美流渡」などは、茶が主体。これは、昨年、三岸好太郎賞を受けたときとおなじ傾向の世界といえます。
一方、「浄夜」「雨と星」などは、青系統で画面が占められています。この青の、なんともいえない深み。
おなじときに三岸節子賞を受けた盛本学史さんが活発に発表して、全道展でも会友になっているのにくらべ、永野さんの作品はあまり見る機会がありませんでしたが、着実に自分の画業を深めているのだなあ、と思いました。
札幌在住。
いずれも、15日まで。
11日は南円山界隈に行きました。
ギャラリーミヤシタ(南5西20)の林亨展は、絵画にあたらしい可能性を開く個展。近く「展覧会の紹介」にアップします。23日まで。お時間のある方はぜひ。
カフェ・ルネ(南4西22)の江上里香 スペインタイル展。あざやかな色遣いが、ピカソの陶板などを思い出させます。
このお店はことしになって、なにも注文をしなくても、ゆっくり作品が見られるようになりました。
円山公園入り口にある太陽リバティホール(大通西28)に初めて行きました。こんな貸し会場があったとは知りませんでした。
「長谷川雅志 ゆっくりとしずかに」は、染織家の長谷川さんの個展。自由で素朴な模様の布がたくさんならんでいました。
いずれも11日で終了。
6月11日(火)
12日の北海道新聞朝刊によると、第57回全道展の協会賞は、「サッポロ未来展」の仕掛け人として活躍した北星女子高教諭の波田(はた)浩司さんに決まりました。
受賞作の「風評」は、写真を見る限りでは、昨年とよく似た軽妙なタッチの絵です。
つづく道新賞には、角谷武史(絵画)、鈴木なを(版画)、井上加奈(彫刻)の3氏が選ばれました。
鈴木さんって、昨年までは「なを子」さんだったんじゃないかと思うんですけど。猫がカップヌードルの周りをあるきまわっている、ある意味ですごく分かりやすい木版画でした、昨年は。
新会員には、門馬よ宇子(絵画)、境進(同)、三浦総造(工芸)、高橋政之(同)の4氏。
人間がうじゃうじゃと積み重なっているような絵をかく境さんは函館在住。会友になったのが1965年(!)ですから、じつに37年間、会員になるのをあきらめずに出品していた計算になります。
また、門馬さんは、このHPにたびたび登場しています(昨夏の個展はこちら)。が、90年代後半からは、いわゆる「現代美術」のフィールドでの活躍が目立っていただけに、この昇格には意外感もあります。
筆者はべつに全道展の肩を持つわけではないですが、人が思うよりも、全道展って現代美術に意外と寛容なのかもしれません(そうであってほしい)。
19日から30日まで、札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)で。月曜休館。
明朝、事情があって早起きしなくてはならないので、とりあえずここまで。
きょう見てきた「林亨展」「江上里香 スペインタイル展」などは、あす書く予定。
なお、展覧会の紹介で、道立函館美術館で開催中の岩橋英遠展をアップしました。
6月10日(月)
アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル5階)のGroup盤作陶展は、札幌の盤渓地区に窯を持つ岡澤弦、川西ひとみ、小泉満恵、細川恵子、笠春日、渡部久子の各氏のグループ展。展示されているのは、ほとんどが手ごろな食器です。
30年近く前からすごいなー、と思うのは、盤渓って、札幌の中心部からは峠を越えて行くのですが、行政区画でいうと「中央区」なんですよね。
原生林と、複数のスキー場がある「中央区」って、ほかにあんまりないと思うんですけど。
「展覧会の紹介」に、「スカンディナビア風景画展」と「春の院展」をアップしましたので、ご一読くだされば幸いです。
また「スケジュールのコーナー」で、富士フォトサロンの7月の写真展などの画像をアップしました。
6月9日(日)
大寝坊。ShiRdiのteruさんの写真展など行かずじまいで、もうしわけないです。
それにしても、北海道は、とくにことしは見たい美術展が夏季に集中して、これからタイヘンです。
たとえば、美術ファンがあんがい気が付いていなさそうなのが、7月12日(金)−8月27日(火)に道開拓記念館で開かれる「描かれた北海道 18・19世紀の絵画が伝えた北のイメージ」。
広い大地、豊かな自然…という北海道のイメージがどのように形成されてきたか、江戸・明治期の日本画などにさぐろうという意欲的な企画のようです。
筆者としては、これまでの「例外的に早い蠣崎波響とアイヌ文化→中原悌二郎・黒百合会・林竹治郎→道展の結成」という「北海道美術史」の定番的見方を根本から覆す可能性を感じます(といって、べつに今田敬一さんと吉田豪介さんに敵意があるわけではないんですけど)。
7月26日午後6時半からは木下直之東大助教授による講演「『日本美術』の中の北海道」があります。
6月8日(土)
突発的に道立函館美術館(五稜郭町37の6)に行き、岩橋英遠展を見てきました。
中味についてはいずれ書くとして(って、こういうのが宿題でたまっています。ごめんなさい。とりあえず、あなたが北海道在住で絵が好きなら、ぜひ行きなさい! と言っておきます。はい)、朝7時前の札幌駅でびっくり。7時発の「スーパー北斗2号」は、イングランド・サポーターであふれかえっているのです。
うーむ、ワールドカップがJRにまで影響を及ぼすとは。
筆者は潔くあきらめて、次の「北斗4号」に乗ってぶじ坐って函館まで行ったのですが、やっぱり車内は英国人がいっぱい。聞こえるのは英語ばかりです。
みな、函館で「快速海峡」に乗り換えていました。
ちなみに帰りの「北斗11号」は、台湾人とおぼしき観光客がいっぱい。なんだか、国内の列車に乗っている気がしなかった…
6月7日(金)
会社休み。
さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)へ行く方へ。
今月末まで、エスカレーターの各階の上り口、下り口に、神谷ふじ子さんのオブジェが展示されています。先月、丸井今井で開いた個展で発表した作品です。今月は、エレベーターでなく、エスカレーターで昇りましょう。まあ、場所柄あんまりゆっくりは見られませんが。
昨日に追記。
らいらっく・ぎゃらりい(中央区大通西4、道銀本店ビル1階)の坂元恵子水彩画習作展、スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)のふたば会展も見ました。
6月6日(木)
札幌市資料館(中央区大通西13)では写真展が三つ。
「山からのメッセージ」は、全林野が主催する写真展。
わりあい毎年楽しみにしています。
道内はもとより全国の国有林の現場ではたらく人たちが撮っただけに、写真の技術がどうのこうのというよりも、森に対する愛情のようなものが作品からつたわってくるのです。
また、一般にはあまり知られていないポイントで撮影された写真もよく出品されます(ことしはあんまりなかったかな)。
植樹で豊かになったえりもの海の、昆布干しの風景など、例年とはちがった視点からの写真が多かったです。
フォトメイト北の写道写真展は力作ぞろいでした。
素材に頼らず、構図をきちっと考えている出品者が多い(あたりまえといえばあたりまえなんだけど)のに好感をもちました。
三浦喜八郎さんの連作「石狩点描」のうちの「暮れ行く」は、前景の舟の入れ方がさすが。
猪俣靖子さん「銀泉台」。大雪山系にかかる朝靄がまるで綿のようです。
夏堀健司さん「百合が原」は、画面いっぱいのチューリップがじつに色鮮やか。色がにじむぎりぎりのところで寸止め、という感じですね。
大西勉さん「豊浦町」は、羊蹄山とシラカバだけならよくある風景ですが、シラカバの列の手前に木々の影を配したところが斬新。
笠田隆明さんの連作「魚を食べヨー」は、干した魚介類を逆光で透かして撮っているのがユニーク。
柏倉くに子さん「美瑛町」は雲が神々しく、本間寛之助さんはただひとりモノクロで冬の幌平橋(札幌)をとらえています。
おっと、全員に言及しました。
ほかに、第12回グループフォトQ作品展と、イーゼル’92展(油彩)、第2回彩のなかま展(水彩)が開かれています。
彩(いろどり)のなかま展は、函館の水彩画家、国井しゅうめいさんの札幌の教室展。国井さんは「暮れゆく」という、水田に夕陽が反射した、めずらしく日本的な情緒のただよう風景画を描いています。一級品の透明感はあいかわらずですが。
ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)では、小野美穂子・斉藤眞子二人展。
ふたりとも油絵です。
斉藤さんは抽象が主。小野さんは風景や静物を描いています。
それにしても、ふたりの絵に共通する独特のさびしさは、いったいどこからくるんでしょう。
ふたりとも、とくに絵の技術がすごいというほどではないのですが、このさびしさは、ほかにちょっとない個性だとおもいます。
斉藤さんは「そら」と名付けた赤い絵や、青や黄の面を組み合わせた絵など。一種の心象風景なのだとおもいます。
一方の小野さん。「冬至」は灰色の空と雪原をぼんやりとした満月が照らすさまをラフな筆致で描いています。「新興地」は、遠くに市街地が見える空き地を黄色を主体に描いています。そもそもこんな題材をえらぶというのがめずらしいですよねえ。
興味のある方は、ギャラリーのホームページを見てください。
谷拓夫・恵美子 緋炎窯作陶展も見ました(コンチネンタルギャラリー=南1西11、コンチネンタルビル地下1階)。なかなか多彩な作品。ビアカップは素焼きにちかい感触です。
以上、すべて9日まで。
ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)に平松和芳展を見に行ったら、「平松和芳と5人展」になっていて、内容もどうやら竹田さん(たぴお主宰)のコレクション展みたいな感じ。そりゃないゼ。
平松さんどうしたんだろう。
ところで、筆者は、直接案内状などが来たもの以外はスケジュール欄などでの告知はしていないのですが、今回は例外。
深い精神性を宿した作風の平面、立体を手がける空知管内栗沢町美流渡(みると)在住の林教司さんの作品展が、栗沢町工芸館(美流渡東町48)で23日まで開かれています(月、火曜休み。午前9時から午後4時まで)。
車がないとツライ場所ではありますが、筆者はぜひ行きたいと思っています。
あと、いま札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)で「写真道展会員・会友展」が9日まで開かれているんですが、見に行けるかなあ。
6月5日(水)
阿部敏子個展 KUCHIBUSAが、スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)で開かれています。
阿部さんは恵庭在住。毎年札幌で個展を開いていましたが、一昨年、昨年は東京での個展のためにお休みしていました。
いやー、阿部さんの作品はわかりやすいですよね。単純に言うと、性的なイメージです。
くちびるが乳房に見え、乳房がくちびるに見えてくる、ユニークな壁掛けの造形です。作品によっては、女性器をかたどっているものもあります。
粘土にスプレーをかけて着彩していますが、金属的な輝きがあります。
9日まで。
隣室では、遊佐福寿日本画展が開かれています。
副題に「石狩川の詩情」とあるとおり、河口のハマナスの群生から、マクンベツのミズバショウ、深川の夕景、神居古潭、銀河の瀧、大雪山系にいたる風景を15枚にわたって描いた大小の作品が、個展の中軸をなしています。
また、羽根を広げた孔雀の大作が、鮮やかさな色彩と丹念な筆使いで、目を引きます。
遊佐さんの日本画は、没骨で、リアルですが、陰影もほとんどないのが特徴です。構図はいっけん平凡に見えますが、「松風」などに見られるように、画面のどこかに断絶というか破調の個所をあえて配しているようです。そういえば孔雀も、左は羽根のすべてが画面に入っているのに、右側はわずかに切れています。
案内はがきによると、遊佐さんは札幌在住。新興美術院会員。
昨年11月にスペインで開かれた「バトリヨ邸芸術大展」で「アントニオ・ガウデイ芸術大賞」を受賞したそうです。
9日まで。
なお、次の会場に巡回します。
7月1日(月)〜6日(土) 岩見沢・ギャラリーやま和(1の4)
9月24日(火)〜30日(月) 旭川・ヒラマ画廊(2の8)
10月15日(火)〜20日(日) 北広島市芸術文化ホール・ギャラリー
アトリエ&ギャラリーHerbal(はーばる)=中央区南1西24、カーニバルビル2階=にはじめて行ってきました。
きょう5日で終わってしまいましたが、むろらん高砂窯・毛利史長さんの陶器を展示していました。
ほとんどが食器。粉引の線文ですが、その線というのが英語でして、なんだかグラフィティのような現代性がかんじられます。
経歴を見ると、愛知県立芸大で鯉江良二氏に師事したとあり、なるほどという気もしました。
このお店は、裏参道にあり、以前spプロジェクトが入居していたところです。エルエテ・デ・ミュゼのとなりのビルになります。2月に開店したばかりとのことでした。
URLはhttp://www.whitecity.ne.jp/~herbal
6月4日(火)
2日は大寝坊。
とうぜん眠れなくなり、寝酒をがばがば飲んだら、翌日は、なかば二日酔い状態で仕事。締め切り間際に原稿が殺到し、なかなかスリリングで、しかもながーい1日でした。
その日は帰って寝てしまい、更新をサボってしまいました。関係者のみなさん、もうしわけありません。
まず、まだ会期がのこってる展覧会から。
中高年にカメラがブームで、この手の展覧会はたくさんあるんだけど、そのなかではわりといいですねって評価したいのがフォトクラブひかり第2回写真展(NHKギャラリー=中央区大通西1)。
13人がカラー3点ずつを出品。
あちこちすきな風景を探して出かけるのが楽しみ−ってかんじが写真からつたわってきます。
佐野栄司さん「雷電の派景」は、岩場と波頭を撮った1枚だけど、波頭のかたちが背景の岩と響き合ってよい構図を生んでいます。
斎藤格さん「熱い夕景」は、おそらく石狩燈台の、目にも鮮やかな赤い夕映え。中央の点景の二人のシルエットがきいています。
長尾年彦さん「星夜」は、冬の夜空にカメラを向けています。この手の写真は数分から数十分シャッターを開放することが多いのですが、長尾さんは明るいレンズと高感度フィルムでたぶん数十秒から1分程度で撮影しているため、星がほとんど点に見えます。教会の尖塔のほぼ真上にすばるが位置しているのも、ポイント高いです。
6日まで。最終日は午後3時まで。
多津美克也素描展を見に、ひさしぶりにギャラリー山の手(西区山の手7の6)に行きました。
多津美さんは、札幌在住。ムサビを出て道教大大学院を修了しているそうです。1994年以降、大同ギャラリーでの「a
gogo」展に毎年出品しているとのことですが、ぜんぜん記憶がないのはなぜだろう(^_^;)
さすがに素描の腕はたしかです。ただ、何点かは、サイズがでかいので
「わー、ただの林檎をここまで大きく書くかなー」
というおもしろさみたいのはありますね。ライラックや、魚のハッカクにしてもしかり。馬は、鼻づらだけ描いているし。
25点のうち4点は軸装してあります。鉛筆の素描を軸装するのも、どっかヘンですよね。
15日(土)まで、日曜休み。
ギャラリー山の手は、地下鉄東西線西28丁目から市営バスに乗り「ふもと橋」で下車。道路を渡って住宅地に入り、琴似発寒川に突き当たったところにあります。
北1西4のNTTの前から中央バスかJRバスの、来たバスにどれでもいいから乗って(市営バスは不可。真駒内に連れて行かれます)「琴似本通」で下り、琴似発寒川沿いを散歩がてら行くのもいいですよ。本数は多いし、200円と安いし。
さて、ギャラリー山の手の所さんが気にしていたのが、クレセール・アートバーグ(中央区大通西9、札幌デザイナー学院)で開催中の「交差する座標軸−具象の眼差し・抽象の眼差し−」です。
これは、同学院の教壇に立つ松村繁さんと渋谷俊彦さんが、同じ題名で競作した各5点を陳列しているものです。
松村さんは、スーパーリアルな人物画をかきます。とりわけ、水滴の表現はものすごく、思わず
「あれ、絵が濡れてる」
と表面をぬぐいたくなるほど(大げさではなく、ホントです)。
96年にさいとうギャラリーで個展を開いているので、ご存知の方もいらっしゃるかも。
一方、渋谷さんは、どこか和の空気感を残した抽象のモノタイプ版画。まさに、正反対の世界です。
「朝霧」では、松村さんが魅力的な女性像を、背景をぼかして描いているのに対し、渋谷さんは、まるで金の雲のなかの時の流れを止めてしまったような、静謐で豪奢な世界の一瞬を表現しているかのようです。
このユニークな試みは14日まで。日曜休み。
札幌デザイナー学院は、北大通側で、公園に面しています。イサム・ノグチの「ブラックスライドマントラ」の北北西60メートルといったあたりでしょうか。
なお、渋谷さんはことし個展を開くそうです。HPはこちら。
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)。
A室は廣岡紀子個展。
前景に椅子や花などを配し、背景に欧州の街並みを描く画風は、道展でもおなじみ。
街並みの描き方も、現実をそのまま写し取るというより、面と面をいかに組み合わせるかといったことに主眼がおかれているように思えます。
手前の静物は、画面に奥行き感をあたえています。
廣岡さんは札幌在住、道展会員。12月には、ギャラリーどらーる(北4西17 HOTEL DORAL)でも1カ月間個展を開きます。
B室は瀬戸節子版画展。
木版の素朴さと、抽象のシャープさが同居した「回想」シリーズが中心。
昨年、ラスベガスの美術展「Asian Art Now」に出品した際に取材したとおぼしき作品もありました。でも、筆者は、入り口にあった「水中散歩」がいちばんすきだな。
札幌在住、全道展会員。
C室のでんそん展は、田村宏さん(岩見沢在住、道展会員)の教室展です。
田村さんの苗字を音読みすると「でんそん」というわけです。
鉄による抽象の立体「鯨の時」を出している松井茂樹さんは、昨秋の「北海道立体作家展」にも出品した実力派です。
田村さんはここ数年取り組んでいる、レモンイエローやオレンジなどの彩度の高い色の組み合わせによる抽象画を出品しています。
いずれも8日まで。
さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)では、南正剛作陶展がはじまりました。
南さんは上川管内美瑛町白金という、大雪山系のふもとに「皆空(かいくう)窯」を開いています。
個展は、瀟洒なうつわ、豪快な花器、焼き締めの壷など、バラエティーに富んだ構成です。でも、いちばんめずらしいのは、焼き締めの掛け時計じゃないでしょうか。備前の皿ふうの、30センチほどの円板に針が取り付けてあるのです。和室に合いそうです。
9日まで。
南さんのHPはhttp://www.biei.ne.jp/kaikuugama。
4日で終わってしまった展覧会についても書いておきます。
アートスペース201(南2西1、山口中央ビル)では、陶芸展がふたつ。
木村初江 うつわ&陶板画展については、とにかく木村さんの精力的な制作ぶりにおどろくばかり。うつわも、安くておしゃれなものがそろっています。今回見のがした人も、またそのうち展覧会がありますから、どうぞ。
木村さんは札幌在住、北海道陶芸会の会員。
HPはこちら。
別の部屋では、第20回陶の会作品展が開かれていました。
谷内丞さんの門下生4人による展覧会だそうです。
向キヨさんは、ビーズのような鮮やかな色の粒の装飾が特徴。石原辰夫さんは備前風の焼き締めが得意。宮部則子さんは天使の形をした一輪ざしがかわいらしく、大原弘通さんは粉引の線文の花器がなかなかのもの―といったふうに、4人それぞれの個性がかんじられました。
札幌APSフォトクラブ第五回写真展は、イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)で。
APSねえ…。デジカメの出現で、昨年あたりからにわかに旗色がわるくなってきてますが、どうなんでしょう。
以前は、メンバーの方が
「途中でフィルム交換も自由だし、画質は35ミリとくらべて遜色ないし、カメラも軽くてわれわれシルバー世代にはぴったりですよ」
なんて話してらっしゃいましたけど。
個人的には、若山治郎さんの樹氷を写した連作や、萩原和夫さんのナナカマドが好きです。
すでにたいへんな分量になっているので、きょうはとりあえずこれで。
6月1日(土)
二部黎テラコッタ彫刻展が美しが丘アートギャラリー(清田区美しが丘2の1)で開かれています。
二部さんは、全道展「北の彫刻展」(隔年で札幌彫刻美術館で開かれる選抜展)では、木彫が中心で、ときに石の彫刻も出品しているという印象だったので、新制作展には毎年テラコッタを出しているというのは意外でした。
ギャラリーの庭には、写真のように、新制作展に出してきた大きな人物彫刻が並んでいます。写真手前は「土の少女」、奥は「土の女」。
工芸の多いギャラリーなので、屋外にこんなにならんでいるのはめずらしい。
室内は、小品がたくさん陳列されています。馬に子どもが乗った「仲良し」がかわいらしいです。
焦げ目があるなど、スマートというよりは、荒っぽくて、細かいところに拘泥しないつくりになっています。素朴で、原初的な「生」のエネルギーを、どっしりした女たちが発散しているようです。
二部さんによると、すべて江別など道内の土で焼いているそう。
「大和朝廷からいちばん遠いところで作ってるから。洗練されたものを−と思っても無理なんだよね」
はやくもことし5回目(道外ふくむ)となる個展を、厚田村望来のログハウス「アートギャラリーチニタ」で開いているそうです(ドローイング展)。
ギャラリーでは、エングレービング(銅版画)も見せていただきました。創作意欲はますます盛んなようです。
二部さんは全道展会員。空知管内長沼町在住。
彫刻展は、2、7−9日。
このあと札幌芸術の森に行き、工芸館で「さっぽろユニバーサルアート展 Peace Life 」を、美術館で「現代<版>展」を見ました。
後者はいずれ「展覧会の紹介」で書くとして、前者。けっこうおもしろいですよ。
10月に札幌で開かれる「2002年第6回DPI世界会議」。ハンディキャップを持った人が世界中から集まる催しを支援しようと行われているグループ展です。
(つづく)