2002年6月後半
6月30日(日)
札幌彫刻美術館(中央区宮の森4の12)へ、小寺真知子彫刻展を見に行きました。
メールでしかお会いしたことのないご本人にお目にかかりましたが、来客のためあまりお話しできませんでした。
お知り合いという、小樽商大の先生とお話ししていたら、午後4時50分になっていました。
ビックリして、坂を駆け下り、山の手通に出たら、ちょうどバスが到着。西28丁目駅で地下鉄に乗り継ぎ、ナント5時15分には会社の前(=時計台の前)に着いていました!
きょうは朝刊1面。W杯決勝戦で、つかれました。
ということで、書くべきテキストがどんどんたまっていくのです。
6月29日(土)
銅版画の魅力 深澤幸雄Selection−版画コレクションのすすめ3=エルエテ・ギャラリースペース(中央区南1西24の1の11リードビル2階)
宮澤賢治の詩集「春と修羅」にインスパイアされた連作。
うーん、でも、相手が、近代詩の最高峰だからなあ。
筆者はけっして賢治を神格化するつもりはないのですが、詩のイメージが視覚化されてしまうのはつらいなあ。作品がわるいわけではないのですが。
松井繁写真展=コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
クマゲラ、シカなど、道内の野生動物に迫った写真。ナキウサギなど“ラブリー系”がけっこう多いです。
第20回 ふじ美術会展=札幌市資料館(大通西13)
道展会員の越澤満さんに指導を受けている21人が油彩、水彩を出品。
本間礼子さん「山の仲間」は、ていねいな描写です。
アール伏古作品展=同
おなじく道展会員の堂下拓美さんに教わっている人の油彩展ですが、この手の教室展にしてはなかなかみなさんお上手でたのしめました。
池上律子さん「冬のおとづれ」や、有馬喜美江さん「晩夏(モエレ沼)」などに共通している良さは
★ナマの色をなるべく使わない
★輪郭線に安易に頼らず、面で対象をとらえる
★固有色にこだわらず、明暗のめりはりをつける
といった点にあるとおもいます。
このほか、佐藤登代子さん「夜明けの使者」は、多彩な色を使いながらもたくみにまとめてフクロウの図像に仕立て、また中野和子さん「大地」も、ポプラ並木を落ち着いて描いていました。
堂下さんも小品を2点出しています。道展のときみたいな、構想画ではありません(^_^)
以上30日まで。
このほか、写真展「エリック ナンスのフィリピン」を、イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)で見ました。
全道展の評など、またまたテキスト執筆がおくれています。
もうしわけありませんが、しばしお待ちを。
ぜんぜん関係ない話ですが、英国のロックバンド、ザ・フーのベ−シストだったジョン・エントウッィスルが死んじゃいましたね。
60年代末、最も音のデカイバンドとして知られ、ステージ上で楽器を壊すハードさでも有名なザ・フーですが、彼はわりと冷静なほうだったという印象があります。
あー、これでザ・フーは、4人中2人が死んじゃったなあ。ロックもそういう、人が死んじゃう時代になったのかなあ。
6月28日(金)
27日は休み。
めずらしく自家用車でギャラリーまわり。
小林伸一郎写真展「廃墟漂流」=コニカプラザサッポロ(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
さいきん、ちょっとしたブームになっている廃墟めぐりの先駆けとなった写真家の個展の巡回展。とくに写真をやっている人は必見でしょう!
くわしくは展覧会の紹介をご一読ください。
昨秋、東京都写真美術館の「手探りのキッス」でも見ましたが、あのときよりずっとイイ感じ。どうしてだろう。ちなみに、おなじ作品は出ていないようです。
7月1日まで。
第22回北海道自然と花の写真総合展=札幌市写真ライブラリー(北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
こっちは平和です。
橋本一男さん「湖底の株」は、水面下に沈んだ木を撮影。
矢口勲さん「凛として」は、きりりと咲く梅の花。遠景の羊蹄山がうまい引き立て役になっています。
30日まで。
新作陶 花 6人展=レンガ館ギャラリー梅鳳堂(北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館2階)
岩井孝道、大野耕太郎、高井秀樹、田中静江、中村裕、南正剛と、道内で活躍する陶芸家6人の花器展。
ふだん、高井さんや南さんは、パワフルな造形ですので、小さい花器にどうやって自作のエッセンスをまとめるのかを見ることができたのは、おもしろかったです。
30日まで。
西村一夫展=札幌時計台ギャラリー(北1西3)A室
ご本人にたしかめたわけではないのであくまで推測ですが、西村さんが、いまやトレードマークとなりつつあるシンプルな女性坐像による表現をはじめたときは、図像の単純化など、表現技法上の理由からだったとおもうんです。
でも近年の個展では、社会派とまではいかなくても、シンプルな人間像を中心にすえて、人間とはなんなのかという深い問いにせまっているような気がします。
今回は、さまざまな種類の作品があって、ずいぶんとにぎやかです。
いわゆる版画は、入り口附近にモノタイプの抽象(カラーフィールドペインティング的な)作品が数点あるだけ。
「遠望」と題された、頭と胴体だけの細長い人物の木彫が18体ほどならんでいます。似たような背格好ですが、それぞれ模様は異なります。
「Show the flag」は、昨秋のテロ事件にひっかけた作品。星条旗のパロディー3点組です。星印がハートマークや日の丸になっているのがいいですね。
「世界と私」と題した連作は、さまざまな文様の布を支持体に、例の単純な人間坐像をアクリル絵の具で描き、その周囲に、幾何学的な立体の輪郭を明るい色で配しています。つめたい現実に囲まれた「私」といった印象です。
さらに、目の粗い布を支持体にした「進化の先」は、ジャンプした人間が着地する先に、大きな黒い穴があいているという、シンプルな絵柄です。
西村さんは道展会員(版画)。札幌在住。
尾澤和子個展=札幌時計台ギャラリーB室
尾澤さんはアクリル絵の具で特異な抽象画をかいています。
どこがユニークかというと、支持体にベニヤ板を使い、「不意に吹く風」などではコンクリート壁もかくやという重厚なマチエールを表現していること。
また、「病の月」では、黒い曲線がいくつも画面を横断しているのが美しいです。
「二つの刻」で、表面に、木片を張り付けたような突起がたくさんついていますが、これはモデリングペーストによるものだそうです。ただ、これは、ほとんどマチエールだけでひとつの世界を表そうとしているのですから、ちょっとむずかしい。
「『病の月』みたいに、どこかで読んだことばから発想することもあれば、画面に描かれた○と×から思いついて『善と悪の解釈』という題をつけることもあります」
と尾澤さん。
全道展会友、旭川在住。
佐野雅子個展=札幌時計台ギャラリーC室
かつて石狩と札幌のPTAの仲間から発展した「Grouping水彩5人展(のち4人展)」というグループがあり、一昨年に解散しました。元メンバーは、それぞれ新道展に出品しています。なかでも古田瑩子さんが活躍していますが、このたび佐野さんが初個展にこぎつけました。
佐野さんの水彩は「刻のたわむれ」などいろんな題がついていますが、ほとんどが、赤と白の縞模様の布と、ロープがモティーフの核になっています。
背景は、深みのある真紅。でも、以前は、青っぽいバックが多かったせいか、赤にもかかわらず、海をかんじさせます。いわば、海底のしずけさのたたずまいのある作品といえるでしょう。
ほおずきなどの植物を描いたペンによる素描は、たしかな腕をかんじさせます。
新道展会員、石狩在住。
いずれも29日まで。
藤窯 中村照子作陶展=三越札幌店(南1西3)9階ギャラリー
北海道陶芸会の代表を務め、道内女性陶芸家の草分け的存在として活躍する中村さん。筆者がおとずれたときは、たいへんな混雑でした。
植物の素朴な文をあしらった茶器が中心。食器類はかなり売れてしまっていました。
筆者が感銘を受けたのは、「刷毛目茶〓(わん)」。うつくしい曲線のかたちもさることながら、朝鮮白磁とも唐津とも萩ともことなる、独特のあたたかみある乳白色にひかれました。
で、この白、ほかの作品とも微妙にちがうんですね。「やちぶき文壷」は鉄分のある土の白だし。
30日まで。
創作うつわ 米倉幸子展=ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)
こちらは「おしゃれなカフェプレート」という副題のとおり、洋食にあいそうなシンプルでしぶい食器類がたくさんあります。
米倉さんは札幌市内に「逍遥窯」をひらいています。
30日まで。
第3回“グループ環”油彩展=スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)
所属公募展のわくを超えてあつまったベテラン画家が、スカイホール全室を借りて開く展覧会もことしで3年目。
昨年のメンバーのうち、佐藤道雄さん(道展、旭川)と萬谷藤男さん(同、札幌)がぬけ、今野隆二さん(同、稚内)がくわわりました。
ひとり3点ずつ(20〜50号)を出品しているのですが、なんと全点が風景画なのです。
正確には、中村哲泰さん(新道展、恵庭)が、「黄昏」「ヒマラヤの草たち」「野草のうた」で、花束をモティーフにしており、唯一の例外です。ただし、それらは荒地の上に置かれているので、風景画のように見えるのです。
あとは、写実を基調とした平明な風景画が多いです。
もちろん、個人差はあります。なかでも、中吉功さん(道展、札幌)の「北の風景湿原」の連作や、斎藤洪人さん(全道展、同)の「残雪の富良野」などは、題がなかったら抽象画といってもいいくらい、風景の構成要素を単純化しています。「残雪…」は、山肌にのこった雪を白と灰色のまだら模様で表現しているのです(ほかに「ニセコの秋」「五月の森」)。
冨澤謙さん(道展、小樽)といえば、やわらかい色調で小樽やイタリアを描く―という印象がつよいのですが、今回は「羊蹄」「仁山高原にて」「駒ケ岳」と、いずれも巨大な山塊をモティーフにしています。といって、圧迫感はありません。「仁山…」は、駒ケ岳へといたる丘の起伏が画面に広がりをもたらし、「駒ケ岳」は手前の家々をごく小さく描くことで山の大きさを表現しています。
今野さんの「礼文の漁家」は、ジグザグの狭い道を生かした、奥行き感のある構図になっています。(ほかに「宗谷待春<富磯>」「宗谷の浜で」を出品)
ほかに、萩原勇雄(無所属)「エンルム岬」「赤い崖」「「秋の山湖」
西澤宏生(新道展)「北大早春」「浜益秋景」「厚岸の春」
櫻井由紀子(同)「石造りの教会」「函館風景」「薫風」
横田章(日洋展会員)「明るい街景(オビドス)」「時化去りし浜」「早春」
越澤満(道展)「最果ての番屋」「ニセコの山残雪」「雌阿寒岳遠望」
香取正人(新道展)「秋T(牧場)」「秋U」「夕景(石狩河口)」
橋本禮三(道展)「富良野・七月」「雪の街」「えぞ富士遠望」
青塚誠爾(同)「春近き漁港」「漁港祭りの日」「港内の一隅」
の各氏が出品しています(青塚さんは後志管内岩内町在住、ほかは札幌)。
30日まで。
盛本学史・サトシ・モーリシャス展=ギャラリーユリイカ(南3西1、和田ビル2階)
2000年に三岸節子賞、今春のVOCA展出品、そして道立旭川美術館に作品収蔵と、飛ぶ鳥を落す勢いで活躍中の盛本さんですが、なんだかみょうなタイトルがついています。
「インド洋に行ったんですか」
「いや、まあ、自由にやろうや、ってことで」
(念のために書いておくと、VOCAは現代絵画の登龍門といわれる推薦制の展覧会、モーリシャスはインド洋のマダガスカル沖の島国です)
ますますわかんなくなってきた…
写真にうつっているのは、「光源人」と題された連作です。12枚からなる平面インスタレーションのようですが、そういう意図ではなくて、各キャンバスに、例によって、想像上の動物みたいなふしぎな名前がついているのだそうです。
手前は、ほとんど青一色で海の底みたいな世界が描かれていますが、その上にピンクの絵の具が散らされ、ものすごく前にあるように見えます。前進色と後退色のふしぎをこれほど味わえる絵もめずらしいでしょう。
「天井にも飾れたらおもしろいよねー」
筆者が見に行ったとき、かつての教え子(いまはかわいい女子高生)が見に来ていて、盛本さんはそんなことを言っていました。盛本さんは以前、中学で社会科をおしえていたのです。
ほかに「遊具ドラゴ」「ルーラクヌモニュメント」など、想像上の動物が遊具になったりモニュメントになったり、なかなかフクザツなことになっているようです。
30日まで。
池上啓一展=ギャラリーどらーる(北4西17 HOTEL DORAL)
おだやかな画風の池上さん。
風景画の特徴は「早春」です。
長く厳しい北国の冬が終わりかけ、雪が解け出し、春がくるころの風景がモティーフになっています。
現場で、油彩のエスキースを書いて、アトリエで大作に仕上げるという手続きを踏んでおり、どの絵からも、あの季節独特の空気感がたちのぼってきます。
北海道の冬が終わるころのよろこびは、本州の人にはなかなか想像もつかないとはおもいますが。
「おまえの書く場所は、ほかのだれも書かないよって、よくほかのえかきに言われるんですよ」
と池上さんが言う通り、いわゆる名勝ではない、平凡な風景をえらんで描くのも、この人らしいところです。
上の写真は「丘への道」(F80)。胆振管内壮瞥町の、耕されるのを待っている畑をモティーフにしています。
札幌在住、道展会員。
30日まで。
このあと、全道展=札幌市民ギャラリー(南2東6)を見に行きました。
まあ、行く人は、筆者に言われなくても見に行っているとは思うんですけど。30日までです。
後日、くわしく書きます。
江別アーティスティック・ギルド展=えぽあホール(江別市大麻中町26の7)
江別市の野幌駅近くにあるれんが工場跡を、芸術の拠点(工房や保管場所)として使わせてほしい−ということで結成されたグループ展の第1回展覧会。
出品者は、林田嶺一、毛内康二、高橋靖子、波田浩司、古賀和子、田崎謙一、原田ミドー、平松和芳、小西純二、笹岡素子、山下脩馬、工藤悦子、毛内やすはるの各氏。
こうやって名前を挙げると
「へえー、こんなにいろんな人が江別に住んでるんだあ」
という意外なかんじがします。
作風も、平面、立体などバラバラで、そこがおもしろいといえるでしょう。
ただし、出品作の大半はどこかで発表済みのものばかりです。
筆者がはじめて見たのは、小西純二さん。シャープな金属の立体小品を6点ならべています。
30日まで。
なお、えぽあホールは、大麻駅からすぐ。車で行っても、米里からほぼ一本道で行ける、わかりやすさです。
ほかに、ハラカツトシノコテン「毒の目薬展」(セックスを題材にしたイラスト)=マクロギャラリー(南2西1、アポロシティービル2階)、石田絹子塑像個展=大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)、野村美和子水彩(人物)個展=同、浅野明子個展=ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)、セキ・トシ展(南2西26、オリジナル画廊)を見ました。
あー、すごい分量だった。
ここまで読んでくださった方、おつかれさまです。
どうせですから? 上砂川で30日まで開かれている野外展のようすものぞいていってください。
それにしても、「30日まで」という展覧会が多いなー。29、30の2日間で、スケジュール表からは20もの展覧会が消えるのです。
6月27日(木)
とかなんとかいって、パソコンの電源を入れたまま寝てしまったので、つづきはあす。
6月26日(水)
狩野立子個展=this is gallery(中央区南3東1)=。
抽象画6点によるシンプルな個展。
縦長の色斑が、折り重なるように画面を覆い尽くしています。
個展のタイトルにもなっている「FOREST OF LIGHT」では、黄色やオレンジなど。ところどころに濃い藍色が配されています。
それらの色斑は、左の辺は直線で、右の辺は不定形で、隣り合った色の斑とあいまいに接しています。ナイフをつかって、太く短いストロークを繰り返しているように見えます。
どの作品も、色と色が交響し合って、絵画独特の空間感をうんでいます。その意味では、まさに抽象画らしい抽象画です。
作品ごとに、つかわれている色の傾向がわりとはっきりしているのも、各作品に統一感をもたせる意味で、うまくいっているとおもいました。
29日まで。
あすは大量に更新する予定です。
6月25日(火)
アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)に行ったら、どの会場も撤収作業にとりかかっていました。
すいません、akaさん、こんどはもうちょい早く来ますね。
しかし、筆者よりも遅く来た人がいました。さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)のご一行です。
成り行きで? 同ギャラリーへ行き、旅すがらに写楽展と渡部佳文作陶展を見ました。
前者は、もともと建築関係で働いていた早川敏文さんの写真展。仕事柄、大沼などのいわゆる風景写真よりも、古い民家などを写したほうに生彩があります。
後者は、うつわが中心。黄瀬戸に、あたたかみがあります。
いずれも30日まで。
6月24日(月)
石北峠や、網走と弟子屈の境にある藻琴山では雪が降ったそうです。やれやれ。
ゴッホ展のチケットの受け渡しで、会社(北海道新聞社)の前にいましたが、あまりの肌寒さにロビーに入っていました。
そのせいで、筆者に気付かずに帰ってしまった方がいらしたようで、ご迷惑をおかけしました。
べつにのぼりのようなものは立ててませんので、よろしくお願いいたします。
郵送で申し込まれた方にも早急に送ります。ほんとうにお待たせしました。
6月23日(日)
ここ数日、札幌ははだざむい日がつづいています。
けさは、すこしですが、ストーブをたきました。
寒さとは関係なく目立つのは、ポプラの綿毛と、ニセアカシアの花が、風に乗って散る姿です。
「つれづれ日録」の題字の横に載せてある写真は、道立近代美術館の前庭ですが、ニセアカシアの花びらがまるで雪のように見えます。
三越札幌店(中央区南1西3)で、絹谷幸二展を見ました。
とにかくハデな色合いの洋画ですが、マチエールなどはちょっとほかでは見られない独特のものです。構図も、たとえば雪舟の「天橋立図」を思わせるような(あるいは鳥瞰図)、おもしろい角度からのものです。
長嶋茂雄・前ジャイアンツ監督と共同制作したという版画も販売されていました。950部って、ふつうの刷り数じゃないですね。どこを長嶋さんが担当したのかはよくわかりません。
絹谷さんといえば、美術界ではたいへんな有名人ですが、なにかを売り出すときには長嶋茂雄のネームバリューにはぜんぜんかなわないという現実をしみじみかんじたのでありました。
本日で終了。
札幌のギャラリー日程「7月」、まだ工事中ですが、とりあえずアップしておきます。
6月22日(土)
21日午後から22日夜にかけて、温泉旅行と美術館めぐりと「道の駅」めぐりに出かけてきました。
以下、その報告。
まず、林教司・具象から抽象へ/平面と立体。
空知管内栗沢町の美流渡(みると)工芸館(美流渡東町48の1)で開かれています。
新道展会員、北海道抽象派作家協会同人として、あるいは、さまざまなグループ展などでは、重厚な抽象の平面やインスタレーションを発表している林さんですが、10年ほど前までは絵画にとりくんでいました。
筆者はその時代のことを知らなかったのですが、今回の個展では、1975年の全道展で奨励賞を受けた「見えなくなった日」から、最後の具象作品になった92年の「型代(かたしろ)」までの絵画7点が展示されています。
絵画はどれも、いまの道内ではほとんどかく人のいない、シュールレアリスムの作品です。たとえば、写真中央の「途上にて」は、赤い旗を押し立てて歩く人々や、白い卵などが配され、奇妙な感覚を演出しています。作者によると
「人間(私自身)の孤独感と手さぐりで歩かねばならぬ道をイメージ」
ということです。また、写真右の「足音」(88年)は、まさに「炭鉱閉山の足音」
をイメージしています。
もちろん、近作の抽象やインスタレーションも7点ほどあります。
下の写真の中央に並ぶ「water drop」は、たしか99年に札幌のラ・ガレリア3階(さいとうギャラリーの2フロア下)で開いた個展で発表されたもの。規則正しく並ぶ列柱が墓標を連想させ、それらの頂上に溜まった水は涙やかなしみを表現しています。個展のときは荘厳な感じすらしましたが、今回は会場がやや明るいのと、列柱の間隔も、会場の広さの関係でいくぶん詰まっており、受ける印象はすこしことなりますが、重みのあるインスタレーションであることは間違いありません。
また、左側の壁に掛けられた「霊訓」は、黒鉛を根気強く板に塗り重ねたもの。96年の、札幌時計台ギャラリーでの個展で、これらの作品を見たときのふかい感動は忘れられません。
出品作はほかに、絵画がつぎのとおり。かっこ内は、会場にあるプリントの、作者のことばです。
「とべない鳥」(76年=老齢の父を題材に描く)
「棺(浮)」(77年=核廃絶をイメージ)
「異郷にて」(86年=85年に、40年住み慣れた室蘭から三笠へ移住。故郷の風景、空と海を思い、新しい地での心の揺らぎを描く)
「足音」(88年)
「型代」(92年=従軍慰安婦だった老婆と知り合い夜半まで酒酌み交わし歌なども出てその時聞いた彼女たちの当時とその後の悲惨さを基に描いた作品)
抽象作品は
「啓示」「呪陀羅(syudara)」「ゴッホの左手」「哭」「漂白」
23日まで。
なお、会場から車で数分の、毛陽交流センターにも、97年の新道展で協会賞(最高賞)を受けたインスタレーションが展示されています。
中原悌二郎素描展(第U期)を、旭川市彫刻美術館(旭川市4区1の1)で見ました。
昨年、井原市立田中(でんちゅう)美術館に寄贈された貴重なデッサンを、2期に分けて展示しているものです。
中原は1888年に旭川に生まれ、日本の近代彫刻の夜明けをかざる名作といわれる「若きカフカス人」などをのこして、1921年に亡くなっています。32歳の若さの死ということもあり、素描などの資料はすくなく、大半が行方不明だったので、今回の発見はたいへん貴重なものだそうです。
「エスキース」という題がついている一連の素描などは、赤子を抱いた女性を描いていますが、これをもとにじっさいに彫刻ができていたら、どんなだっただろうと想像するのも楽しいです。
2本のつえを持った老人の姿みたいのもありました。
むかしから、彫刻家のデッサンはうまい、という説がありますが、中原もその例に漏れないようです。
30日まで。
つづいて、ギャラリーシーズ(旭川市旭町2の3)で、高橋英生展。
高橋さんは、札幌のベテラン画家。黒を生かした洒脱な静物画やパリ風景を得意としていましたが、近年は、なにげない野の花や草を見つめた、滋味ふかい作品を制作しています。
今回の個展は、100号の「静物・野の華」をはじめ油彩20点、版画2点を展示。いま述べた「野の花」シリーズも8点あります。ただし、近作ばかりではなく、「ベネチア」「壁のある白い建物」など、英生さんにはめずらしい、奥行きのあるふつうの(?)風景画もあり、ここ数年の傾向をたどることができます。
30日まで。翌7月1日からは、ギャラリーどらーる(中央区北4西17 HOTEL DORAL)でも個展があります。
ところで、ギャラリーシーズのすぐ横の道が、すっかり様相を新たにしていました。
国道40号に「旭町通」が合流する交叉点の分離帯がポケットパークになっていて、山谷圭司さんの彫刻が設置されているのです。
じつは、昨年秋に旭川に寄った際、「旭川彫刻フェスタ2000」で制作された、この作品をふくむ3点が、旭川駅近くの空き地に放置されているのを見て、このHPで批判したことがあったので、なんだかほっとしました。
美深の長岐和彦さんから、ほかの2点も、道新のあたらしい旭川工場と、上川支庁に移設したとの情報をいただいていました。どうもありがとうございます。
道立旭川美術館(常磐公園内)で、奈良美智展 I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.。
昨年8−10月に横浜美術館で開かれて美術界におおきな反響を呼んだ展覧会が、広島、芦屋を経て、北海道へと巡回してきました。
筆者はべつに奈良美智がすきだというわけではなく、たんにウチの娘(1歳9カ月)に似ている、という理由で見ました。
感想。やっぱり似ていました。
常設展示室に行ったら、新収蔵品展をやっていて、盛本学史さんの「チグリス」が展示されていたのでびっくりしました。31歳で美術館収蔵。ちょっと早すぎるような気もしないでもないですが。
木彫が何点か。大平實「起源」は、1996年に同館で行われた木彫のコンペティション(けっきょく1回かぎりでおわってしまいました)のグランプリ受賞作。なんだか、ずっとロビーに置いてあったような気がするけどなあ、気のせいかなあ。
舟越桂は、めずらしい全身像。
神山明さん「たしか、このあたりだと思う」。妙なタイトルだけど、いいなあ。どうして、なつかしいんだろうなあ。
いずれも7月28日まで。
「水脈の肖像2002−日本と韓国、二つの今日」展・小品展が、北海道東海大学芸術工学館ギャラリー(旭川市神居町忠和224)で開かれています。
おおむね、23日まで札幌の道立近代美術館で行われている展示のミニ版です。
ただし、川上りえさんは、木の実のようでこしらえた二つの獣の像です。
この会場で、最終日の29日午後1時からワークショップが、同3時からギャラリートークがおこなわれる予定です。
ところで、このギャラリーの奥にあるスペースが気になりました。暖炉あり、小さな台所あり。貴賓をまねいてくつろいで交流するスペースなんでしょうか。インテリアも高品質で、なんだか、よさそうなところです。
ただし、筆者のメンタリティーは、こういうところで歓待される身分にはなく、どちらかというと、身なりの汚い学生のほうにちかいのです。いまもって。
つづいて、〜現代美術への誘いin上砂川〜 アヴァンギャルドの台頭展&梟の森作品展という、長いタイトルの野外展が、空知管内上砂川町の旧上砂川駅とその周辺で開かれていますが、これは30日まで開かれているので、また後日ということにします。
6月21日(金)
19、20日は朝6時半起床、夜9時半帰宅。
おかげで、パソコンの前でうとうと居眠り。
2日とも更新しないまま床についてしまいました。
やっぱり、筆者は体力がないのです(-_-;)
おかげで、スケジュール表に大量の更新があります。やっぱり、夏は展覧会が多いんですねえ。
では、取り急ぎ、18日に見た分のうち、あす22日で終わる展覧会から。
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)。
A室は佐々木俊二個展。
佐々木さんは室蘭在住。昨年、室蘭では大きな個展を開いたようですが、札幌では(たしか)5年ぶりになります。
「疑影」と題した油彩の大作13点を展示しています。
ご本人は照れて(?)はっきりとはおっしゃらないのですが、佐々木さんの絵は、崩壊した人間を描いているように見受けられます。
それも、たとえばホラー映画に登場する怪物や、ギーガーの絵のように、くずれてもどこが頭でどこが手で…と判別できるような代物ではなく、もう正常な位置関係なんかもばらばらにこわれてしまった人間という感じです。
右の写真をごらんになってもわかると思いますが、しゃれこうべや、骨だけになった片手、はみ出た内臓などが、断片的に確認できるものの、全体像ははっきりしない「なにか」が、微細に描きこまれています。いささか不気味ではあります。
いま「微細」と書きましたが、この描法が、想像上の物体に、おおきなリアリティーをあたえているのではないでしょうか。
人間をこわしていく現代への批判−と、ことばで書けば、おもしろくもなんともないですが、そういうありきたりのことばを乗り越えていく力があるとおもいます。
佐々木さんは1枚仕上げるのに半年くらいはかかるそうで
「もっと早く仕上げる方法はないかなあ。こないだ福井路可にどうやって描いているのか聞いたんだけど、教えてくれないんだよなあ」
と言っていました。
自由美術会員、全道展会友。
B室は阿部国利個展。
こわれた人間像、という点では、阿部さんも共通しています。
画面はぜんぜん違います。
そこにうかんでいるのは、仮面をつけたなぞの物体だったり、異様に手足の長い人間だったりします。筆者は、何か不安のようなものを感じます。
しかし、モノクロームに近い画面には、静けささえ、ただよっているのです。
その静けさと深さは、何層にもわたるていねいなアクリル絵の具の塗り重ねからきているのでしょう。
今回は、黒鉛(鉛筆の芯とおなじ材料)をまぜて使っているところもあります。
黒鉛の線がさっとひかれている作品もあります(「残象」など)。この線がまたうまいんだよなあ。
いっぽう、小品は女性像が多いのですが、ふだんの阿部さんの絵とはことなり、穏やかな笑みをたたえています。
阿部さんとおなじく新道展会員の坂本順子さんが
「なんだか、聖母像みたいね」
と呟いてらっしゃいました。
阿部さんは、内臓疾患で入院中で、病院から抜け出してギャラリーに来ているとのこと。
病室でも絵筆を執っているそうです。
新道展の仲間たちが、今回の個展のホームページをつくりました。
作品写真はもちろん、美術評論家の吉田豪介さん(市立小樽美術館長)の評論も読めます。筆者は「展覧会の紹介」を書こうとおもったのですが、豪介さんが堂々たる評を書いているので、これ以上駄文を加えてもしかたないとかんがえてやめましたです。
ぜひごらんください。
阿部さんは1938年、後志管内岩内町生まれ。札幌在住。
C室は大畑和子個展。
水色と黄緑を主に、フクロウなどのいるメルヘン調の世界を描きます。
そのフクロウや鳥が、格子模様をしているのも特徴です。
題名をメモした紙をなくしてしまったのですがm(__)m、右の絵(120号)を小さくした絵が、いまスウェーデンのなんとかという賞になって、むこうで展示されているそうです。
ほかにも、ことし奈良の「東大寺無限展オリエンタル・アート・アワード」で大賞を得たほか、イタリアのコンクールにも入賞しているとかで、大畑さんはいつのまにか国内外の賞あらし(?)になっているのでした。
「わたし、中央の公募展に出してないし、そういうところで自分を出していかないとね」
と大畑さん。
札幌在住の新道展会員。
7月1日から8日まで、旭川の千繪莉(宮下通7)でも個展。
福岡幸一個展は、ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)で。
冬の大木、厚田や小平などの海岸に立つ木造の家など、これまでの代表的な作品がならんでいます。
対象をじっと見据えて制作した、リアリズムの銅版画です。
7月からは、小金湯温泉の旅館でも個展を開くそうです。
前回の個展はこちら。
画像は福岡さんのホームページでごらんください。
「展覧会の紹介」の林亨展で「アクリル絵の具」とあるのは「エナメル」の誤りでしたので、訂正しておきます。林さん、ご迷惑をおかけしました。
6月21日(金)続き
18、19日には、なぜか水彩画の展覧会が多かったです。
「セーヌの風に吹かれて 守矢猛水彩画展」(さいとうギャラリー=中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)は、パリやフランス各地の風景を写実的に描いていますが、じつにウマイです。
やたらと細かくリアルに筆を置いていくのでも、大ざっぱに風景を省略するのでもない、ちょうどいい太さの筆で、色が小気味良く置かれているのは、見ていてきもちがよいものです。
また、構図の上でも、都市の風景なので直線が多いのは当然ですが、そのなかに必ずといっていいほど、緩やかなカーブが配されて、画面にやわらかみをあたえています。
守矢さんは札幌在住。
23日まで。
スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、白江正夫展が開催中。
20−60号が約20点。売り絵っぽい、サムホールなどの小品はまったくありません。
白江さんは、水彩画家にはめずらしく、黒く太い輪郭線が特徴。線のスピード感が画面に精彩をあたえているといっていいでしょう。
「高い建物」「光と陰」などは、高層マンションのある風景を、黒の直線をいかして描いています。
小樽在住なので、いつもは小樽運河などの絵が多いのですが、なぜか今回は釧路の絵が半数以上を占めています。
「悼む」は、フィッシャーマンズワーフ・MOO(ムー)を正面から描写。設計者の毛綱毅こうさんが昨年急死したので、制作したのでしょう。
なお、会場出口のあたりに展示された2、3点のみが、輪郭線がなく、ふつうの写実的な画法で描かれています。「浸蝕(ナラワラ)」「風化(トドワラ)」などです。ナラワラとトドワラは、道東の野付半島にあり、海水のため針葉樹が立ち枯れている奇観として有名です。いずれも、地平線以外には直線のない茫漠たる風景なので、画法を変えたのかもしれません。
白江さんは道展会員。23日まで。
らいらっく・ぎゃらりい(大通西4、道銀本店ビル1階)の小西淑子個展は、3−20号の小品が24点。
海外を描いた「路地裏」「プリンセス スクエア」などがおもしろかったです。
というのは、写実的な水彩画は、たいてい明るい色遣いですが、小西さんはあえて彩度を下げたしぶい色調にし、色数もしぼっているのです。でも、くすんだ感じはなく、モノクロームに近い画面になっています。
22日まで。
札幌市資料館(大通西13)で開かれている第11回水の会作品展は、NHK文化センターの、八木伸子さんの教室展です。
小池清さん「開拓小屋」は、絵の具のにじみ具合が独特。貞廣純江さん「鯉」は、ただの緑色が広がっているだけなのに、柳の木に囲まれた池の風景に見えるのがふしぎです。
高橋律子作品展も水彩でした。
正直言ってあまりじょうずな人とは思えませんでしたが、「大地」などの風景画には、なんともいえぬさびしさがただよっていて、印象にのこりました。
たぶん、風景を見るのが、すごく好きな人なんだとおもいます。
しかし、同館でいちばんおもしろかったのは、ニードル展’02です。
版画教室展だろうとおもって入っていくと、NHK文化センター講師の更科eさん(日本版画協会・道展会員)のほか、兼平浩一郎、田崎敦子、種村美穂、内藤克人、早川尚、三島英嗣、吉田敏子ら、道展で活躍中(吉田さんは全道展会友)の面々が、小品を出しているのです。
内藤さんの「春の一隅」は、花を題材にしたしっとりした作品だし、三島さんの「ワインのある部屋」も、肩に力の入っていない洒脱さがかんじられます。
ほかに、同館では、サークルあい藍染作品展、初夏を彩るおんな三人展(水彩、油彩、かな書道)、飯田鈴子油絵個展が開かれています。
また、さいとうギャラリーでは第1回中村美也子展。スカイホールでは、大谷短大「谷の会」展。ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)では、奥山啓三個展(油彩)。キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)では、2002年冬季オリンピック速報報道写真展と月寒フォトクラブ展を見ました。
奥山さんは60点ほど。半数以上が海岸の風景です。
キヤノンサロンは、どこが「速報」なのかわかりません。月寒勢は、村山恵子さんの「晩秋(大沼公園)」が、単純にきれいだなー。
キヤノンサロンは21日まで、ほかは23日まで。
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)の小寺真知子彫刻小品展(21日まで)は、なかなか良かったです。近日中に、札幌彫刻美術館での展覧と併せて書きます。
6月18日(火)
きょうは日記ふうに書いてみます。
朝5時40分起床。
夕刊にあたった日は、出勤前に新聞各紙に目を通していきます。
7時51分に家を出、56分発のバスに乗ります。
バスは混雑していましたが、ちょっと早めに着いたので、大通西3丁目のドトールでエスプレッソを1杯。
8時55分出勤。きょうは1面です。予想通り、鈴木宗男議員をめぐる問題がトップ。
夕刊は、作業時間が短いので、いつも苦労しますが、きょうはわりと原稿の到着が早かったので、早版、遅版とも、時間内に降版できました。イエイ。
午後2時すぎ、外に出てざるそばを食い、札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)へ。
佐々木俊二さん、阿部国利さん、大畑和子さんの個展を見ました。
あすも夕刊なので、詳細はあした書きます。すいません。
3時45分ごろ会社に戻ると、すでに日本はトルコに0−1とリードされていました(W杯サッカー)。
声援もむなしく、そのまま敗れ去ってしまいました。
5時半ごろ、ふたたび外に出て、ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)で福岡幸一展を見て、さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)にも寄って、6時にさらに会社へ。また仕事です。こんどは札幌圏版。
弁当を食べながら原稿を読んで、見出しを考えます。
ほぼ時間通り9時40分ごろ降版できました。しかし、となりに坐っている、整理部に来たばかりの2人の手伝いを、10時40分までばたばたとしていました。
2人の作業が終わらないうちに退社し、地下鉄南北線に大通駅から乗って、澄川で下車。11時10分発の最終バスに乗って家へ帰りました。
家で、夕刊を読み、メールを読んで、これを書きました。
それではおやすみなさい。
6月17日(月)
今週はしばらく朝6時起き、夜11時帰宅が続きそうです。
その合間を縫って、札幌にいらしていた「とかち国際現代アート展・デメーテル」事務局のオダイさんにお会いして、いろいろお話をお聞きしました。
オノ・ヨーコさんは多忙のためどうやら来日はむずかしそうですが、そのかわりとはいってはなんですが、たくさんのテレビモニターに十勝の青空を映すプロジェクト「Sky
TV」で、中古テレビ拠出のかたちで一般の参加を呼びかけることになりました。ところが、意外にも申し込みが少ないそうなので、家に不要のテレビのある人は応募してみてください。あなたの名前が恒久的に作品の一部としてのこるかもしれません。
もうひとつのオダイさんのお願いは、作品搬入・設置がピークとなる6月末から7月11日までの間、ボランティアの人手が必要とのこと。
えー、じつは、作家の方は、展覧会期間中はあまり帯広にはいらっしゃいません。ですから、作家とお近づきになりたいミーハ-な若者は、会期前が狙い目です。とくに、川俣正さんあたりは人手をほしがっているようですよ(なーんて、書いていいのかな)。
もう1点。
7月5日から、会場入り口、帯広駅前などに、インフォメーションセンターを設置して、デメーテル以外に道内で開かれている展覧会などのDMやフライヤーなども積極的に紹介していきたいとのことです。
海外、本州からのお客さんがみんな帯広だけ見て帰るとは思えません。ほっかいどうあーとだいありーも、情報提供には積極的に協力することになりましたが、興味のある方はDMなど送ってみてはいかがでしょうか。
6月16日(日)
訃報です。
戦後道内を代表する画家の小谷博貞さんが亡くなったそうです。
小谷さんは1915年(大正4年)8月、札幌生まれ。
札幌一中(現札幌南高)を経て、多摩帝国美術学校(現多摩美大)を卒業。戦前から戦後にかけては、教育映画の制作、脚本などにたずさわります。
57年に帰郷。「北海道博覧会」のパビリオンデザインなどをしたあと、67年に大谷短大教授となり、93年の退職まで多くの後進をそだてます。
一方、38年の第2回から出品(47年会員)していた自由美術協会を退会、64年の主体美術協会の旗揚げに参画しています。また、65−77年には道展会員でもありました。
さらに、62年に「北海道美術ペンクラブ」の発足に参加。絵筆のほかに、評論にも健筆をふるいました(「美術ペン」は現在も年3回出ています)。道立美術館建設の運動などにもかかわっています。96年に共同文化社から豪華画集が出版された際、画集と文集の2分冊という異例のかたちになったのは、そういう事情によります。
小谷さんは戦後はほぼ一貫して抽象画を描いています。
代表作は、田村隆一の詩に触発された70年前後のシリーズ、「立棺」です。
人間の存在や死についての深い思索と、北の風土へのまなざしが一体になった名作です。基調となっている茶色は、帰郷の折車窓から見た、駒ヶ岳の土の色だという話を聞きました。
いっぽう、80年代にはいってからは、白や青といった寒色を主に北国の精神的な風景を描いた作品系列もあります。
近年は、線や帯など要素が増えてにぎやかな構成の画面になってきていましたが、昨年春に「さっぽろ美術展」で「雪の碑」を発表。茶や黒の系統の作品と、白が中心の作品との統合を図っているかのように見えました。
重厚な作品を制作する一方で、さいとうギャラリーの小品展や、大谷短大OB展に招かれた際は、じつにしゃれたコラージュなどを発表していて、なにか大正アバンギャルドの息吹のようなものをかんじたものです。
昨年3月に札幌で主体美術北海道展が開かれた際、会場にいらしていて
「どの作品も、1点でかき終えたという気持ちになるということはなくて、何点かかき続けるんだ」
とおっしゃっていました。
その意味では、86歳というご高齢ではありましたが、画業なかばということもいえましょう。
また、以前、三岸好太郎が帰省中、中島公園でものすごいスピードで写生していた話などを、なつかしそうにしてくださったのを思い出します。
まさに道内美術界の精神的支柱のひとりとでもいうべき存在だっただけに惜しまれてなりません。ご冥福をお祈りいたします。
15日は「水脈の肖像2002」展を道立近代美術館(中央区北1西17)に見に行きました。
日韓の美術家が参加して、見ごたえのある展覧会になっています。
近いうちに紹介するつもりです。