展覧会の紹介

〜現代美術への誘いin上砂川〜 アヴァンギャルドの台頭展&梟の森作品展 2002年6月22日(土)〜30日(日)
空知管内上砂川町

 札幌でのん気に過ごしているとなかなかわからないんだけど、大都市をちょっと離れたマチで
「まちおこし」
とか
「地域活性化」
ということばにかける情熱には、悲壮感さえただようものがある。
 どこも、過疎化に歯止めがかからないのだ。
 北海道に212ある市町村のうち、人口減少の心配をしていないところは1割もないだろう。
 あとのマチでは、第1次産業が、二百海里だ、農業自由化だ、ということで、なかなか産業として立ち行かなくなってきている。商業も、都会の大型店に車で行く人が増え、現状はきびしい。
畑野さんの作品 地元の高校を出た人は札幌や東京で就職してしまい、それっきり戻ってこない。高齢者ばかりが残り、人口は減っていく。
 これまであてにしていた国からの補助金が減らされそうだ、という危機感から、合併への論議が全国的にすすんではいるが、なにせだだっぴろい北海道のこと、隣町まで、まっすぐで信号のほとんどない道を車でぶっとばしても30分、45分は当たり前という土地柄ゆえ、そうかんたんには進展しない。
 たいていのマチで取り組んでいる活性化のネタは
「観光」
早川季良「炭壁」である。そりゃそうだ。北海道はたいていどこでも、景色はいいし、食いものはうまい。
 ただし、それだけじゃ限界はある。
 ってことで、「美」を売り物にすることに気が付いた町村もある。小さな公立美術館がいくつもある後志地方なんて、先見の明があったんだろうな。でも、まだ少数派だ。
 前置きが長くなった。
 上砂川は、かつて石炭で栄えたマチだった。これも道外の人には想像しづらいだろうけど、戦後になってから、砂川町(現砂川市)から分村して独立している。しかし、炭鉱は閉山、鉄道も1994年に廃止になった。救いは、のこされた立て坑が、無重力の実験施橘井裕「新 上砂川の王様ダイ」設として使われていることだが、これも近く廃止がきまっている。
 たぶん、上砂川の人たちも
「何かやらなきゃ」
という危機感に駆られたんだとおもう。
 会場は、旧上砂川駅の中と、その前の空き地。案内状のはがきには7000坪とある。やたらと広大だが、かつては石炭を満載した貨車が並んでいたのだろう。
 で、展覧会のほうは、一言で言うと、玉石混淆であった。
 呼びかけにこたえ、札幌方面から出品した作家は、さすがに見られる作品を出している。
 では、筆者が名前も聞いたことのない、おそらく地元のふつうの人々の作品がダメかというと、いちがいにそうも言い切れないところがおもしろい。
 野外展というのは、室内の展示とはことなる、野放図さというか、ダイナミックさで廃品を組み立ててしまえばとりあえずマル、みたいなところがあるのかもしれない。
 いちばん上の写真は、「畑野」とだけあって、名前も作品名もわからないが、たぶん彫刻家の畑野天秋さんではないかとおもう。自転車を使った、軽やかな作品だ。
 中央の写真は、今回18点も独自の「石炭画」を並べていた早川季良さんの作品。
 その下は、橘井裕さん(全道展会員)の「新 上砂川の王様ダイ」である。鉄が存在感と軽やかさを同居させているのが楽しい。
吉田秀範「つぎはぎおじさん」 ほかに、新道展会員で、丸太の断面を組み合わせた風変わりな作品で知られる伊藤武義さんが、つるはしや木の根を組み合わせたインスタレーションを出していて、印象に残った。
 また、「北の群展」でおなじみの斉藤邦彦&カッチ兄弟も出品している。
 未知の作家では、和田ヨシヤさん「森のカムイ」が、しっかりした造形のフクロウを木で制作。また、吉田秀範さんの「つぎはぎおじさん」は、おじさんの顔がかわいらしい木彫であった。谷川よしみさんのつくる顔に似てるようだなあ。
 というわけで、はたしてこの展覧会が、現代美術なのか、アヴァンギャルドなのかは、わからないし、まちおこしになるかどうかもわからないのだが、これを機に、それまであんまり美術にふれたことのない人がそのおもしろさに触発されたとしたら、わるくない試みなんじゃないかとおもう。

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