8月に、ギャラリーどらーる(中央区北4西17 HOTEL DORAL)で個展を終えたばかりの香取さん。今回は、おどろくべきことに、その後に描いた新作ばかり29点(ただし1点は新道展で発表済み)を陳列しています。
「いや、(2回個展がつづいたのは)はじめての体験で、大変でした」
とこぼしていましたが、たいへんなものです。
香取さんの風景画の魅力は、前回の個展のときにあらかた書きましたが
- 明るくフラットな色彩
- 陰翳を示すグラデーションをほとんど使わない
- 輪郭線にたよらず、色のことなる面と面をきちんと並置することで画面をつくる。といって、つくりものめいた印象はまったくない
- 太い筆ですばやいタッチ
といった点に要約できると思います。
左の絵は「石狩河口遠望」。
今回の個展のなかでも、わりと多いタイプの絵だと思います。
ほかにも、余市漁港や忍路(オショロ=小樽市)漁港などがありました。
香取さんは、現場でたくさんスケッチはしますが、油絵の具はつかいません。写真も撮らないそうです。
つまり、空の色などは、全体のトーンを見てからきめているので、実際このとおりだというわけではありません。
この絵のように、空の面積がひろく、雲の織りなす表情がおもしろいのも、香取さんの絵の特徴ですね。空の、微妙な青紫も、良い味を出しています。
近景には、ススキが揺れ、中景には、スウェーデンヒルズ(石狩管内当別町)の赤茶色の家並みが見えます。
遠景の、札幌市や、石狩川河口附近に、陽光があたって明るくなっています。といって、近景や中景がそれほど暗くにごっていないのが、香取さんの絵らしいです。
右上のすこし小さい絵は、紅葉の雌阿寒岳を描いています。
もう1枚紹介しましょう。
ポピーの丘です。
今回の個展でのなかでも、もっとも輝かしい色彩を持った絵です。
写真では、色がにじんだり、人がふつうに見ているときには気付かない影が、どうしても写ってしまいます。写実一辺倒でない絵が、じつは写真よりリアルであることを実感させられる1枚だと思いました。
それにしても、色彩は、あざやかなのに生っぽさがないのが不思議です。ご本人に秘訣を聞くと
「よーく練って混ぜるんです。良い色が出るまで、ペインティングナイフが折れるくらい混ぜる。失敗したら、それは捨てます」。
なるほど。チューブから出した絵の具をそのまま使っていないので、色に薄っぺらさがないのだと思いました。
このほか、小樽の街並み、丸加高原(深川)、富良野の夜景など、さまざまな道内の風景がモティーフになっています。
香取さんは札幌在住、新道展会員。
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