函館市青柳町19つれづれ日録の題字

2002年10月前半

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 10月14日(月)
 印象派のあゆみ道立旭川美術館(常盤公園)
 最終日が20日なので、もうあと1週間しかありませんが、なかなか良い展覧会です。
 旭川としてはけっこう混雑しているほうだとおもいますが、それでも道立近代美術館のゴッホ展のことをおもえば、天国のような環境でセザンヌ、ピサロ、ルノワール、コロー、テオドール・ルソー、シスレーといった画家の一級品が見られます(展覧会のタイトルは「印象派のあゆみ」ですが、それに先立つバルビゾン派や、その後の後期印象派のゴーギャン、ボナールあたりも展示されています)。クールベやモネ、マネ、ドービニー、ファンタン=ラトゥールもあります。
 とりわけ、シニャックの「カポ・ディ・ノリ」は、彼の点描技法の効果が最大限に発揮された傑作といっていいのではないでしょうか。かがやかしい色彩の並置が、みごとな画面をうんでいます。
 その他、ゴッホやミレーもありますが、これは彼らの作品としてはかならずしも最良のものとはいえないようにおもわれます。
 ドイツ・ケルン市のヴァルラフ=リヒャルツ美術館コルプー財団の所蔵品をどさっと持ってきた展覧会なので、ドイツの印象派の画家がすくなからずまじっているのも特徴です。
 静岡県立美術館(10月27日−12月8日)、そごう美術館(来年1月3日−2月16日)、尾道市立美術館(2月22日−4月13日)、郡山市立美術館(4月19日−5月25日)に巡回します。

 あさひかわの彫刻家 関秋宏展=中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(4区1の1)
 旭川在住・ゆかりの彫刻家をとりあげるシリーズ。
 関さんは1940年東京・八王子生まれ。空襲で焼け出されて旭川に移住、道学芸大旭川分校で板津邦夫に彫刻をまなび、以降、道展や純生展(旭川地方の公募展)を舞台に活躍しています。いわゆる人体、オーソドックスな具象彫刻です。
 年譜を見ても、個展を開いたという記述がどこにもありません。絵画にくらべると、経費などの面で大変なのはたしかですが、1度も開いていないとすれば、めずらしいことではないかとおもいます。
 さて、作品はすべて人物で、石膏が1点、FRP(強化プラスチック)が26点、ほかに紙版画が数点。
 初期には、裸婦をうつぶせにし、尻を高く上げたポーズをとらせた「沈黙」(73年)、やはり裸婦が仰向けになって両手を高く挙げた「習作『落』」(77年)など、多様なかたちによって人体表現の幅を広げようとした作品が見られます。
 近作になると、首のほかは、ほとんどが着衣の、立像となります。しかも、腕を組んだり、腕を後ろにまわすなど、日常的なポーズの範囲内での表現が大部分です。首から上はあまり表情をはっきりあらわすことはなく、また胴体はプロポーションにそれほどメリハリをつけていません。とっぴなスタイルや表現を避けて、一見あたりまえなかたちのなかにささやかな美をさがしていこうとする作者の姿勢の現れのような気がします。
 入口に展示されていた「北の春風」にしても、表情や姿勢がことさらにモデルや作者の心理を反映していませんし、また、プロポーションやバランスをひたすらに追究する気迫を示しているわけでもないのですが、花束を手にしたさりげない立ち姿が、親しみやすさを感じさせるのです。こういう、「俺が俺が」ではない作品も、いいですね。
 27日まで。無料。

 旭川でもう1カ所。
 1st 琥珀の種 展=ヒラマ画廊(2の8)
 1999年から昨年にかけて全道展会員に推挙された板谷諭使さん、加藤博希さん、斉藤矢寸子さんの3人による同画廊開設10周年記念展。
 板谷さんは、三連画のスタイルを取る「鍵」など。左右に裸の男、中央のテーブルの上にさまざまな静物。背景は真っ黒で、金色の鍵が浮かぶ。その近くに、英語で「第七の鍵」の文字が…
 描写力にはますますみがきがかかってきたようですが、どうも90年代前半の森弘志さんを思わせるような感じがするなあ。
 加藤さんは「啓蟄」をはじめ「カタツムリ」と題した連作など。渦巻き型の貝殻に人が入っているというふしぎなイメージが加藤さんの絵の基本のようであります。
 斉藤さんは「分割される卵型都市」など。例によって、女性のバックに、卵を半分に切ったような大きな物体がうかび、断面には家や人物が配置されています。なんだか「星の王子さま」の挿絵みたいな感じもします。ほかに、ペンギンの絵も(筆者の子供が騒いでいたのでちゃんとメモしてない。すいません)。ヘッドフォンステレオをつけた裸の女性のエスキースがあり、なにやら変化の兆しもあります。
 14日で終了。

 くりさわ現代アート展=栗沢町民センター(東本町)
 町内6人、札幌・苫小牧からの招待6人によるグループ展。
 既発表作が多いので、札幌でマメにギャラリーを廻っている人はわざわざ行かなくてもいいかも。でも、栗沢に住んでいる人には見てほしいですね。
 野又圭司さんの立体造形「植物になりたい」は、10年ほど前の作品の由。透明なケースに収められた女性の像が、草に囲まれて、そういう希望を語っているようにもみえます。背後の釣鐘型の板は、野又さんの作品らしい、どこかキリスト教的な雰囲気を漂わせる小道具(?)です。
 林教司さんは「Satiation−飽食」シリーズの1品を発表しています。
 渡辺孝夫さんは「作品」「人物」。前者は、黒、オレンジ、銀のみによる抽象画です。
 ほかに、今荘義男さん、坂元英子さん、M.ババッチさんが出品。
 町外勢では、竹田博さんが60年代にかいた30枚余りの自画像をずらりとならべた「理美子のいる自画像」が目を引きます。3枚だけ、女性像がまじっているんですね。それにしても、20代の竹田さんって、目がぎょろっとしていて、なにか意志のつよさみたいなものを感じます。怖いくらい。
 横山隆さんは、灰色に着彩した段ボールの破片を組み合わせた「廃虚、人のかたち」を出品しています。
 ほかに、太田ひろさん(一見、鉄骨の組み合わせに見えるが、じつは楽器)、千葉有造さん、服部憲治さん、山岸誠二さんが出品しています。
 「北海道知的障がい者芸術祭」の受賞作品も同時に展示しています。
 15日まで。

 栗沢では道に迷いました。
 図書館などが集まったあたらしい「来夢21」という施設があり、それとはべつに「文化センター」というのがあり、さらに「町民センター」はまたべつの場所にあるのです。
 まあ、どれも徒歩圏内なんだけど、そんなに似たような建物をつくることになにか意味でもあるのかしらん。
 駅前には、古いれんが造りの建物がいくつもあり、びっくりしました。
 栗沢にこれほどふるい建物があつまっているということは、あまり知られていないんじゃないでしょうか。

 家族サービスのつもりが、けっこう自分の趣味を押し通してたりして。

 「アートな本棚」に「明治日本美術紀行」を追加しました。


 10月12日(土)
 夕べはねむってしまいまして、更新をさぼってしまいました。
 そりゃ、月曜から金曜まで朝5時半か6時に起き、帰りは11時半ないし1時(11日だけ午後8時)。つかれます。
 とはいえ、じぶんの体力と意欲のなさがつくづくいやになります。 

 札幌彫刻美術館からご丁寧なメールをいただきました。
 「展覧会の紹介」の「北の彫刻展」の内容の訂正です。 

 これまでの出品者の中で山本一也先生も故人となられました。
 
 菅原先生の作品は大理石ではなく花崗岩です。

 寺田先生は、第1回本郷新賞受賞作の共同制作者のお一人で、古い話ですが受賞記念展(1984年)に小品ですがご出品いただきました。

 とのことです。文章はなおしておきました。
 ご迷惑をおかけしました。

 今週見に行ったものから。
 Y.K.絵画サークル作品展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 熊谷邦子さん(二科と全道展の会友)の教室展で、第23回展。
 「Y.K.」というのは、1987年に亡くなられた熊谷善正さん(全道展会員)のイニシャルだとおもいます。
 邦子さんは「ぼたん」を出品質得ます。
 飯田由美子さん「夏呼ぶ鳥」、山田美代子さん「風の色」などが目を引きました。
 12日で終了。

 ほかに、墨花会習作画展、セピカ展を、同ギャラリーで見ました。前者は水墨、後者は油彩のグループ展です。

 サークル防風林水彩展札幌市資料館(大通西13)
 またまた森木偉雄さんの教室展。
 森木さんの「防風林」、佐藤昭平さん「公園通りの朝」、中島三郎さん「創生川」など、緑色の表現のシブイものが多い。なんだか、戦前の水彩画を見ているような、年月を経た落ち着きのようなものがかんじられるのです。

 秋風と妖精展=同
 鈴木敦子さんの色鉛筆によるメルヘンチックなイラスト展。
 ご本人のHPは、http://fairy-card.hoops.ne.jp/

 木の瀬木版画教室展=同
 木の瀬博美さん(札幌。全道展会員)の教室展。素朴な味わいのゆたかな作品が多いです。
 赤を点々と配した瀬尾揚子さん「落つばき」、雪の中の木造建築を題材にした落合幸三郎さん「春近し」などが印象に残りましたが、とくに興味を引かれたのが、石塚善朗さん「街の廃屋」です。
 廃屋、といっても、まだまだ人が住んでいそうな木造の家が、ポプラとともに描かれています。ただ、バックに、ホクレンの本社、全日空ホテル、ホテルモントレ・エーデレホフという、いずれも20階を超す札幌有数の高層ビルが描かれているのです。もっとうしろには、建設中のJRタワーも見えます。
 これらのビルから推理すると、家は北3東1あたりにありそうですが… 時間があったら探索してみたくなりました。

 第16回グラナダの会展=同
 富田幸衛さんの油絵教室展。
 絹川雅春さん「拓北通り」。奥のほうへと、自然に視線をみちびいていく構図。緑と紅葉にかこまれて、ゆるやかに散歩道がカーブしています。心のやすまる風景ですね。

 以上14日まで。
 同会場で開かれていた第12回遊陶展は、火炎窯の中島シズエさんの教室展で、これだけは13日で終了。

 第7回 藻臨会書展アートスペース201(南2西1、山口中央ビル)
 北海道書道展などで活躍中の書家がけっこう参加しています。代表は永澤楊舟さん。
 21人が漢字を、9人がかなを出品。漢字の部は、ほとんどが臨書と創作を1点ずつ出しているのですが、かなの部は1点のみで、どうしてそうなのかはわかりません。
 安保旭舟さん「観音」は、ただ力強さだけではない、独特の余韻をかんじます。
 長谷川北邦さん「川蝉」は、奔放そのもの。
 本間孤峯さん「啄」は、余白のとりかたの美しさをかんじました。

 ほかに、第14回陶友会展(藻岩窯・谷内丞さんの教室)、深田武男個展〜アンコール遺跡の歴史を描く〜を見ました。
 15日まで。

 浅井力也の世界展=NHKギャラリー(大通西1)
 浅井さんはハワイ在住の16歳。
 生まれつきの脳性まひだそうですが、そんな事情をまったく感じさせません。「天才画家」とまで言い切ってしまっていいものかどうかはわかりませんが、この年齢の抽象画としては、かなりの水準であることはまちがいないでしょう。
 世界の善玉と悪玉が戦い、善玉が勝利するという「僕のスター・ウォーズ」、ロマンチックさと力強さの同居した「月夜の海」「天地創造」などがおもしろかった。
 17日まで。

 CARAMEL FIRST=宮田屋カフェ豊平店(豊平区平岸4の1)
 パーチメントアート・藤部志穂さん、シャドウボックス・米澤光恵さん、イラスト・才桃あつこさん、カリグラフィー・天竺桂靖子さんの4人によるグループ展。
 パーチメントアートというのは「紙の彫刻」ともいわれる、透明感あるうつくしいクラフト。羊皮紙に似た紙に、さきの円いペンなどでエンボスや穴あけ加工をほどこし、レース編みのような作品に仕上げています。
 シャドウ・ボックスというのは、同じ絵柄・大きさの切り抜きを4〜10枚かさねて、奥行きのある空間をつくりだすクラフト。もちろん、かさなる枚数が多いと、手前に来ているように見えるし、すくないと奥にあるように見えます。立体物をこしらえるより、平面を、すこし間隔をあけてかさねると、厚みをもって見えるのです。
 絵柄はメルヘン調のものがおおかったです。
 4人の合作による大作もありました。動物たちが合奏している絵柄です。

 それにしても、ここは蔵のような大きい喫茶店です。「蔵」というと、平岸の沢田珈琲店や、JR琴似駅北口の「レンガの館」を思い出しますが、あれの倍はありそう。ただ、パーティーションがくふうされ、おちつかないということはありません。中央は吹き抜けのようになっていますが、2階もあります。珈琲もけっこうおいしいです。
 ギャラリーは店の端に、独立したコーナーがありますが、ギャラリーたぴおよりもひろいくらいです。
 東豊線・豊平公園駅から徒歩3分。
 31日まで。

 möte テキスタイル・ウッド・ガラス日瑞作家14人展=スウェーデン交流センター(石狩管内当別町スウェーデンヒルズ・ビレッジ2の3の1)
 「möte」とは、スウェーデン語で「出会い」という意味だそうです。
 20センチ×20センチ×20センチの小品という制約のなかでの作品を、17人が3点ずつ。とりわけ、テキスタイルの作家には、ちょっとたいへんな“足かせ”だったようです。
 このなかでは、クリスティアン・フォン・スィードゥさんの「TRANSFORMER」の3作が圧巻でした。
 蓑虫のような複雑なフォルム。中央に透明度の高い部分があり、覗くと、青や黄色などの鮮烈な色が躍ります。小品ながら、スケール感のある、奥の深い作品でした。
 家具作家・島田晶夫さんの「MASU T01」は、すっきりした抽象彫刻のよう。木工作家の酒井浩慶さんも「WORKS2002」で、木の特性をいかしたシンプルな作品を出していました。
 テキスタイルでは、札幌在住の下村好子さんが健闘。「SEED」は、植物を思わせる有機的なかたちにおもしろさを感じました。
 ほかに、オーサ・ペック、ボエル・エーランソン、伊藤光恵、ヨンソンえり子、大澤由夏、小池万里子、篠宮和美(以上テキスタイル)、大西隆善、鎌田美樹、甲斐裕士(以上ガラス)の各氏も出品しています。
 学園都市線・石狩太美駅から徒歩45分。
 列車は昼間、1時間に1本。路線バスはないようです。車のない人はこなくて結構、あるいは、「スウェーデンヒルズ」在住者以外には見てほしくない、ということでしょうか。せめて1週間でいいから、札幌の都心でひらいてほしかった。
 14日まで。

 すでにお読みになった方もいらっしゃると思いますが、札幌アーティスト・イン・レジデンス実行委の事務局長・柴田尚さんからいただいたメールを、ご本人の承諾を得て、転載させていただきました。
 9月に札幌・CIAで個展を開いたアレクサンダー・ディミトリエヴィックさんについての話で、美術作品の背景が一読わかるとおもいます。
 柴田さん、どうもありがとうございました。

 あすは家族サービスにつき、更新しません。


 10月10日(木)
 3日間連続で、翌朝出勤前の更新です。
 見に行ったのにまだ書いていない(ふかい理由はありません)展覧会からふたつ。

 齋藤周 NEXT STEP=ギャラリー門馬anex(中央区旭ヶ丘2)
 夏にFree Space PRAHA(中央区南15西17)で、壁をドローイングで埋め尽くす個展を開いた齋藤周さん。
 こんどは、タブローが中心です。
 と思ったら、壁の反対側の窓にもドローイングがかいてありました。
 どうやって消すんだろう。
 斎藤さんのドローイングって、書いている人がいそうで、いないですよね。
 タブローのほうは、単純な色面構成による抽象画の上に、黒いインクによるドローイングを重ねたもの。
 たとえば、下のほうが赤く塗りつぶされていると、それを地面に見立てて人間が立っているとか、そういう趣向であります。
 西洋流の考え方では、ドローイングとペインティングはかなり厳格に区分されるようで、ドローイングや版画は美術館ではなく図書館で収集する−という発想もあったりして、日本人にはびっくりですが、逆に、そういう区別をあっさり乗り越えた平面作品を創出する可能性があるかもしれません。
 11日まで。
 書くのがおそくなってすいません。

 林教司個展 Satiation-飽食-ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
林教司個展 林さんは、崇高さを帯びたドローイングやインスタレーションを精力的に制作、発表していますが、今回は、いつになく人間社会への批判にみちたインスタレーションになっています。
 中央にしつらえられたいすやテーブルなどは、すべて石膏で固められたもの。テーブルの上では、ギプス製の右手のナイフが、フォークをにぎった左手に切り込んでいます。
 これは、新道展に出品したインスタレーションの縮小版です(新道展の作品は、現在、帯広の移動展に出品されているそうです)。両手は、一組だけですが、壁に鏡を張ることによって、作品空間にひろがりをあたえています。
 となりの壁には、ナイフとフォークがささったアスファルト片も展示されています。
 いろんなものを消費して飽きたらず、ついには自分の手や、道路まで食いものにしてしまう人間。現代人への痛烈な皮肉を内包しています。
 林さんは空知管内栗沢町在住、新道展会員。12-15日に開かれる「くりさわ現代アート展」にも出品しています。
 12日まで。

 豊島輝彦作品展−線と色面によるあそび−スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 穏当なタッチの風景などの具象画を描いていた豊島さんが1998年、抽象画の個展をおなじ会場で開いたときはびっくりしたものですが、抽象の個展もこれで3回目になるようです。
 今回の出品作は、筆者から見ると、ホワイトを大量にまぜた淡い色あいにあります。それが、ロスコともカンディンスキーともだれともちがう色の構成による、ユニークな作品にしているとおもいます。作品によっては、ほんとに薄い色しかキャンバスに塗っていないものもありました。

 第17回グループ「自分の絵」=同
 風景、人物などの油彩、水彩、スケッチなど。
 いずれも13日まで。


 10月9日(水)
 またも帰りがおそくなってしまい、出勤前の更新となっております。

 伏木田光夫油絵個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 札幌で34回目となる個展。
 ことしも、時計台ギャラリーの3室を使い、90点を超す新作を発表しています。精力的な仕事ぶりには頭が下がります。
 さて、作品ですが、人物画、静物画、風景画とあるうち、人物をモティーフにした作品はそれほど昨年までと画風が変わらないような気がします。ただ、幼児と母親など、親子をモデルにした絵が目立つということはあります。
 「うむむ、なんか違うぞ」
と思ったのは静物画。その違いをうまく言うことは、とてもむずかしいのですが。
 伏木田さんは、テーブルの上に食器や卵を配した静物画を毎年たくさん描いています。
 これは、自分なりの空間を把握するという重要な役割を持った絵であることは言うまでもありません。ただ、昨年までは、その空間の構成と把捉のために、ともすれば性急に筆をうごかして、その空間を成り立たせている瞬間をとらえようとする傾向があったように思えます(とくに背景の処理)。
 それが、ことしは、どっしり構えているというか、あまりいろいろモティーフを動かしたりしてないというか、なかなか上手にいえませんが、或る種の落ち着きのようなものが漂っているのです(67歳の画家に向かって伏木田光夫「朝の食卓」「薔薇色の食卓」失礼な物言いであることは承知しています)。
 写真の左は「朝の食卓」、右は「薔薇色の食卓」です。
 写真では分かりづらいと思いますが、左はとりわけ、卵の存在感、パンの耳の物質感、水差し、コップ、牛乳パックにさっと塗られた青といったものが、とても迫真性をもってきます。リアルさ、といっても、通り一遍の写実ではないことは言うまでもありません。
 おっと、バスの時間だ。つづきはあしたに。
 12日まで。

 佐藤幸子日本画展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 戦後、故・本間莞彩(道内の戦後を代表する日本画家)に絵を習い、また最近筆を執りはじめている札幌の女性。
 展覧会には、本間氏の娘さんをモデルにした「待春」という、北海道日本画協会が発足した1948年ごろ、協会の展覧会に出品した作品も並んでいます。
 作風は、半世紀前と変わらず、写実的で穏当なもの。おおむね、花などの静物は没線で、人物は輪郭線を用いて描かれているようです。
 ただ、写実的といっても、「セーターのある風景」のカーペットの模様などは、透視図法になっておらず、手前も奥も同じ大きさで描かれています。これは、いかにも日本人らしい空間処理。漫画で、人物の大小に関係なく、おなじスクリーントーンを衣服の部分に張っているのとおなじですね。
 もうひとつ好みなのは、イスラム教徒をモデルにした人物画が何点かありますが、エキゾチシズムを強調するのでも、やたらと造形を押し出してデフォルメするのでもなく、自然体で淡々と、偏見無しで描いていることです。
 13日まで。

 石田美彩子展=this is gallery(南3東1)
 ネルの染色作品。赤、青、茶などさまざまな色に大小の白い円がたくさん浮かんだ布10枚を、天井からつり下げています。
 12日まで。

 伊藤光悦展ギャラリーどらーる(北4西17 HOTEL DORAL)
 つい先日、回顧展的な個展を札幌時計台ギャラリーで開いたばかりの伊藤さん。
 さっそく、あたらしいモティーフにとりくんでいます。
 全体の半数は、これまでの「廃墟」路線の延長ですが、もう半数は欧州などの風景がモティーフ。平坦な塗りと画面全体を覆う静けさは、たしかに伊藤さんの画風なのですが、題材が伊藤さんらしくありません。まあ、個人的なこのみでいえば、廃墟のほうが伊藤さんの画風にあっているとおもうのですが、60歳にしてあらたな画題にいどむ心意気はすごいとおもうのです。
 「修道院の丘」「カンパーニャの村」など、人はだれもおらず、空に雲はうかばず、一見つめたいけれど、じつは穏やかで、人いきれが感じられる作品になっています。
 「廃墟」系にも新作があります。「AIRPORT(TOWER)」は管制塔がモティーフ。コンクリートの感触が冷ややかです。「RUNWAY」は滑走路を上空からの視点で描いた作品。ほとんど目立った構築物などがないのに、ちゃんと絵画空間に仕立てているのはさすが。「STATION」は、駅の待合室らしき室内を描いています。無人ですが、背後に、英語でないアルファベットの表示板がかかっているのがめずらしいところです。
 31日まで。


 10月8日(火)
 8日は帰りがおそいうえ、体調もわるかったので、スケジュール表など一部を更新だけして、出勤前にアップしました。
 本日夜にあらためて「日録」などを書くつもりですが、8日見たなかでは、やはり伏木田光夫さんの個展(札幌時計台ギャラリー)が印象深かったです。
 また、7日の鈴木涼子さんの個展に写真をアップしました。


 10月7日(月)
 あすで会期が終わる展覧会にあわてて行きました。
 鈴木涼子挿絵展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 昨年7月からことし2月にかけて「北海道新聞」日曜版に連載された小説「家なんか建てなきゃよかった」(見延典子作)のさし絵(一部、夕刊文化面のさし絵含む)を展示しています。
 さいきんは、写真をつかった意欲的な作品や、ユーモラスな立体などを制作している鈴木さんですが、今回は、いわゆる絵画が中心。
 鈴木涼子さんの作品の一部手を動かして描いたのって久しぶり。だからたのしかった」
とわらう鈴木さんです。
 でも、それはわかるんですが
「かわいらしいでしょ」
というのは、どうなんでしょう(^_^;)。一部、具象的な絵もありますが、大半は抽象で、ペイズリー模様が奔放に走ったような線は、けっこうグロテスクなところもあるとおもうんですけど…。
「今回は、小説の内容と関係なく描いていいってことだったから、いろいろ実験もさせてもらった」
 じぶんのまつげの写真と絵をコラージュしたもの、シリコンをつかったものなど、そこらへんはやっぱりふつうのさし絵展とはことなります。

 アトリエせせらぎ会展=同
 森明さん「牧歌」。一面緑の風景。遠景で乳牛たちが草をはんでいます。丁寧な塗りがなんとも心地よい諧調(かいちょう)をうんでいます。

 HANPA LIFEアートスペース201(南2西1、山口中央ビル)
 4人によるグループ展。5回目のようです。
 福井博輝「世界の中心にあるメロディ」。
 暗い色彩の絵の横に、人形がぶら下がってます。
 丸山賢俊「NOISY CITY」
 24枚の長方形のパネルを規則正しくならべた作品。デザインの範疇(ちゅう)に入るのかなあ。「四角い空」とか「この電話番号は現在使われておりません」などのみじかいテキストが、いろんなフォントでちりばめられている。
 文章を作品に導入するなら、こういうのがいいよね。余韻があって。生き方を指南されるようなのは、筆者はあまりすきでないので。
 佐々木和香子「ばばのひざ」など、素朴な味わいの切り絵4点。
 長谷川亜紀「なにかいいことないかな」は、案内状に印刷されていた、のんびりしたカットです。  

 Ann Choi's Chinese Calligraphy & Painting 蔡麗芬中国書画展「水墨の美」=同
 といっても、水墨画はバナナ(中国語で「芭蕉」)、蓮の花(おなじく「荷」)など4点だけで、のこりはすべて書。金文、草書、隷書などいろいろありましたが、どうやら臨書のようです。
 作家の生徒さんがいろいろ英語で話しかけてきました。作家は、北海道の景色が好きで、もう5度目だということ、シンガポールと韓国でも個展を開くということ、生徒さんをこれまで計何千人も指導してきたことなどです。
 ところで、アートスペース201のakaさんが、英語の会話に難渋しているようすが、HPにしるされていましたが、これはあながちakaさんのせいだけではないようです。
 この生徒さんの英語は、thousand は「タウザンド」だし、brokeは「ブォーク」だし、なかなか通じません。まあ、こっちの英語も通じてないかもしれないけど。北海道にはsightseeingで来ているのかと訊いたら、nature seeingだと言われました。いや、そうじゃなくて…
 「学生さんですか」
ともきかれました。そんなに若く見えるかなあ。べつにうれしくないけど。

 ほかに、陶芸展がふたつ。
 米田隆さんは、釉薬のたまりと、渦巻き模様がいっぱいついた、ごつごつした花器が特徴です。

 Paint Box No.4 Exhibition=CAFÈ ZINC(中央区南1西1丸美ビル)
 札幌出身の画家、碓井良平さんら3人による絵画展。
 例によって、でたらめに色を塗りたくっているようでいて、じつは統一感のある絵。
 おもに縦長の板? 8枚が、喫茶店の入口のスペースに立てかけてあり(ただし1枚は床の上)、ふしぎな空間をつくっていました。
 以上、いずれも8日まで。

 小林さと枝展=東急画廊(北4西2、東急百貨店5階)
 二科の吉井淳二に師事した札幌の画家。
 花を描いたガッシュ作品が中心。アクリル、油彩、版画もあります。
 「赤い羊蹄」など羊蹄山をモティーフにした風景画をのぞけば、ほとんどが、やさしい色彩の静物の小品です。
「体力がなくなってきたから、大きいのが描けないのよ」
なんてさびしいこと言わないでくださいよう。
 9日まで。


 10月6日(日)
 今月に入って微熱の日がつづいています。
 「展覧会の紹介」に「北の彫刻展2002」を追加しました。

 しばらくほったらかしだった「アートな本棚」に、ひさしぶりで森山大道写真集「新宿」を追加しました。
 読んでそのままになっている本もけっこうあるので、折を見て追加していきたいとおもいます。


 10月5日(土)
 きのうのつづき。

 第70回記念 版画展 北海道巡回展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 1931年に結成された日本版画協会の巡回展。
 現代の日本の版画を、かなりの程度まで俯瞰できる貴重な機会であります。
 5年おきだそうですが、1997年の巡回展って、ぜんぜん記憶にないなあ。
 会員の作品から81点と、道内関係出品者の12点が出品されています。
 81点のなかにも、道内の版画家がけっこういます。
尾崎志郎「昔しの旅館」(木版)
大本靖「垂桜 B」(木版・モノタイプ)
金沢一彦「赤い疾走」(銅版サンドブラスト・リトグラフ)
小池暢子「白の楽章」(エッチング・アクアチント)
更科e「バーニング、マーク415」(バーナー・鉄板・スタンピング)
渋谷栄一「PARIS(ある街角)」(エッチング・シュガーアクアチント)
渋谷正巳「カラコルム紀行−K2に雲」(銅版・メゾチント)
手島圭三郎「月の湖」(木版=板目多色)
浜西勝則「Division-work 98」(メゾチント)
府川誠「白い大地 歩」(リトグラフ)
渡會純价「私の回転木馬」(銅版)

 ほかには、坂爪厚生「K氏の食卓上の出来事」がふしぎな作品。円いテーブルの上に巨大なカリフラワーが乗っていて、6つのフォークがそれを狙っているのですが、カリフラワーに人の顔がかいているように見えてくるのです。
 小川正明「孤影の回想」。廃墟のような、木馬のようなふしぎな物の上に、近代的な都市が乗っかっている。現代文明の基盤のもろさをえぐったような一作。
 山口博一「Work '02-3」は、赤や茶の色の重なり具合がしぶい、抽象作品です。

 それにしても、輸送の都合もあるんでしょうけど、パネルの大きさwがすべておなじというのも妙な感じがします。マットの大きさはもちろんすべて異なりますが。
 6日まで。

 片原早苗個展=さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)
 油彩の小品。緑や青を多用した風景など。
 枯淡の境地です。ポプラのある風景も、どこかさびしげ。
 
 今川和男 午(馬)の作品展=同
 八戸在住の画家の、道内初個展。写実的な油彩。どちらかというと、デパートの画廊なんかで売っていそうな、縁起の良さそうな絵です。
 いずれも6日まで。

 北方圏アートプロジェクト<美術展2002年>は、展覧会の紹介にアップしました。

 3日の朝日新聞・社会面の広告。
 高橋幸宏と細野晴臣のユニット、WILD SKETCH SHOWのコンサートの予告が出ています。
 うわさだと、坂本龍一も参加するという話もあるらしい。って、それって、まんまYMOじゃないか(^_^;)。
 その横には、70年代の伝説的なロックバンド、四人囃子と頭脳警察の合同ライブ。
 さらにその横には、21st century SHIZOID BANDなるバンドが11月5、6日に東京の厚生年金で来日ライブを開くとのこと。これ、初期キング・クリムゾンに在籍していたジャイルス兄弟やイアン・マクドナルド、メル・コリンズら5人のバンドなんですね。クリムゾンのデビュー盤(1969年)でドラムをたたいていたマイケル・ジャイルスの超絶技巧は、いま聴いても鳥肌もんですが、そうか、まだやっていたのか。でも、みんないい年なんだろうな。
 さらに、その下をよく見ると、80年代にもっとも海外で成功した日本のハードロックバンド、ラウドネスや、往年のアイドルバンド、レイジーの、ライブ告知もあります。
 ううむ。いったいいまは、何年なんだあ!?


 10月3日(木)&4日(金)
 きのうは更新をさぼりました。
 パソコンの不調で9月8日に更新できなかったのをのぞくと、8月17・18日以来のことなので、カンベンしてください。

 見ごたえのある展覧会が3つありました。
 輔仁会(札幌西高)、版画展(日本版画協会)、北方圏アートプロジェクトです。

 その前に、5日かぎりの展覧会。
 穂井田日出麿 油絵個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 漁港で、魚を網からはずす「はずし娘(こ)」と呼ばれる女性たちが主なるテーマ。
 多くは、冬の絵です。
 色は、煙草の火などに赤がアクセント的に使われているだけで、ほとんどがモノクロ調。緑などもかすかに見えますが、色遣いは禁欲的といっていいでしょう。
 人物と網などの道具以外は、ほとんど描かれません。地面は白く処理され、海すらもそれほど明瞭には描かれていないのです。港湾施設や防波堤といったものも、まったく登場しません。
 作者の関心が、人物に集中していることがうかがえます。
 穂井田さんの構図でおもしろいのは、近景と中景の人物とのあいだに交渉が見られないことです。
 いいかえると、手前にこちらを向いて立っている人物がいて、その奥に作業している群像が描かれているという構図が多いのですが、手前と奥の人物は、会話したり、視線を交わしたりしている様子はありません。
 ちがう場所でデッサンした人物を、キャンバスの上で構成しているような印象を受けます。
 それは、たんに漁村の労働をルポルタージュやスナップふうに写し取るのが目的なのではなく、力強い構図をもとめた絵画であるということの裏返し、といえるかもしれません。
 1938年江丹別村(現旭川市江丹別町)生まれ。自宅は後志管内古平町、アトリエはとなりの余市町。一陽会・全道展会員。

 佐々木真紀個展=同
 旭川に実家があり、フランス・ヴィルヌーヴ在住30年。
 武蔵野美大卒というわりには、素朴派ふうのタッチ。フランスの風景の中で、子供や老人たちが平和に暮らしています。

 土曜会グループ展=同
 札幌の画家、豊島輝彦さんの教室展のようです。
 岩崎實さん「サキソフォンを持つ人」、藤原豊さん「秋の風景」などのたしかな描写力にひかれました。

 SCCパステル画展=同
 札幌の美術作家・中橋修さんの教室展。
 パステルのうつくしい発色を生かした抽象画が多く、意外とおもしろかったです。
 辻信子さん、梅本晴子さんなどがそうです。
 山下晶子さんは、卵をモティーフにしたシュルレアリスムふうの風景。
 中村とき子さん「憬れ」(あこがれ、と読むのでしょう)は、シクラメンと星を描いた、ロマンティックな一品です。

 パーフェクト レインボウ7ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)
 会木康二、高坂史彦、西岡秀徳、能登健一の4氏によるイラストレーション展。
 イラストといっても、高坂さんはほとんど抽象画の世界。
 会木さんは、男(ただし頭は画面の外にあって見えない)のビキニブリーフにはいって、カンガルーの子供のように上半身を出しているおばさん、おじさん−という、みょうな絵です。

 以上、5日まで。

 輔仁会美術展(札幌西高等学校創立90周年 定時制80周年記念美術展)ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)
 よくある同窓会展だろうと思ってたら大間違い。とんでもない豪華メンバーなのです。
 全員にはコメントできないので、かいつまんで書きます。
 まず、近代日本の代表的な具象彫刻家、故・山内壮夫(二中9期)と佐藤忠良さん(二中14期)、それに戦後の道内彫刻界の代表的存在だった故・本田明二(二中21期)の彫刻小品。
 いちばんびっくりしたのは、日本を代表する静物画家といえる笠井誠一さんが西高の1期生なんですね。知りませんでした。「花(リューカデンドロンとヘリコニア)」は、キュビスムを通過しつつも、それを自分のものとし、静謐で、しかもリズム感ある、笠井さんらしい世界になっています。
 また、室内画を描き続ける紺野修司さん(2期。主体美術会員)が「Parisの宿」を出品。室内の情景で、空間を描いていますが、いつもの青系ではなく、茶が主体の絵です。瀟洒ながら、強固な構築性をたたえています。
 3期には、全道展会員の嵐玲子さん「小さき命−天翔ける」。
 5期は3人とも活躍中。山下嘉昭さん(道展会員)「譜〜37」は、表面にシンプルなきざみを入れた抽象彫刻。池上啓一さん(同)「丘への道」は、6月にギャラリーどらーるでの個展で発表していました。画像はこちら岸本裕躬さん(行動美術会員)「浜辺のバッタ」も、前回の時計台ギャラリーでの個展で見ました。バッタの老夫婦が夕日を見ながらしみじみ話し合っているような? おかしみとかなしさが入り混じった絵です。
 7期は、皮肉のきいた人間像で知られる香西冨士夫さん(主体美術、道展会員)「貌」。
 8期。鈴木吾郎さん(道展会員)「飛天・8月」は、テラコッタによる軽快な人物彫刻。大口芳子さん(新道展会友)「刻は流れて」は、オカリナを吹く女性とさびしげな岸辺の風景を組み合わせた絵で、先日の新道展出品作です。
輔仁会展の会場風景 11期。夫婦作家の寺井暢彦さん(道展会員)の木工芸「心象X」と、宣子さん(道展会友)の水彩「うつりゆく」。高校の同級生だったんですね。
 13期。スーパーリアルながら、技術にとどまらない深みを見せる人物画の白鳥信之さんが「真昼の農夫」を出品。大橋郁夫さんも13期。
 16期では、緑色のシンプルな陶芸オブジェをつくる相馬康宏さん(道展会員)「陶象」、リズミカルな抽象画の永井美智子さん(新道展会員)の「天空の調べ」。
 つづく17期は、数多くの野外彫刻で知られる札幌高専教授の國松明日香さん「北北東の風U」。おなじく「彫刻家集団CINQ」のメンバーとしては、23期に永野光一さん(二紀展委員、道展会員)「眼の時」がいらっしゃいます。同期に、宮城県の版画家、尾崎行彦さんも(「25cm²との出会い」シリーズ16点)。
 21期には、メロン灰釉を使った陶芸に取り組む岩井孝道さん。
 29期は、伊藤明彦さん。ユニークな彫刻「unity」を出品しています。
 さらに下ると、蜜蝋をつかった深みのある抽象の平面作品をつくる上條千裕さん(31期)の「哀歓」。東洋の音楽をモティーフに日本画をかく高橋明子さん(40期)の「サウン」、細長いフォルムの首なのにジャコメッティとはちがう森大輔さん(43期)の木彫「発芽」、夭折し、画集が話題を呼んだ故・奥井理さん(45期)の若いエネルギーがあふれる油彩120号「テレビと死」、折内大輔さん(48期)「ギャザリン」はシャープなフォルムの金工(どっかで見たなあ。道教大の卒業制作展かなあ)、小林麻美さん(49期)「十字結び」は、背中から胸にかけて白い布をまいてむすんだ後向きの裸婦……。
 旧職員として、宮前三春さんら3人(いずれも故人)。現教職員の飯田信幸さん「サンタクローチェの広場」、鵜沼人士さん(道展会員)「viora」もあります(鵜沼さんの個展についてはこちら)。
 というわけで、名前の出なかった方、ごめんなさい。さすがに、既発表作が多いのはいなめませんが、とにかくこれだけのメンバーが一堂に会するのは壮観でした。
 6日まで。

 とりあえず、夜があけるので、ここでいったんアップします。 


 10月2日(水)
 訃報です。
 札幌の抽象画家で、全道展会員の坂原チヱさんが9月30日なくなりました。81歳でした。
 以前、芸術の森美術館で開かれ好評を博した「中根邸の画家たち」展でお見かけしたのが、筆者にとっては最後になりました。坂原さんも戦争直後、八木伸子さんや谷口一芳さんたちと一緒に、中島公園の近くにあった中根邸に通い、疎開してきていた松島正幸さんや三雲祥之助さんらに絵を見てもらっていたのです。
 戦後の道内画壇の活気を知る人がまたひとり世を去ったのはさびしいことです。

 “allô?” office exhibition vol.1 はじめまして=ギャラリー喫茶パレ・ロワイヤル(豊平区月寒中央通9の3の36)
 札幌で、ポストカードの制作・販売や、ホームページの委託制作などに携わっているキタガワマユミさん初の個展。自分で撮った何気ない風景などの写真をコンピュータで加工し、文字などを入れたものを並べています。
 デザインはさすがにしゃれています。
 ただ、これはごく個人的な意見なのですが、どうしてメッセージを入れるのかなあ。展覧会のときぐらい、よくある言葉が絵や写真に入ってきて励ましたり説教したりするのは、カンベンしてほしいなあ−と筆者はおもいます。すいません。
 12日まで。
 地下鉄東豊線・月寒中央駅から徒歩4分。都心から見て、左側の歩道に面しています。

 真鍋敏忠 水彩・油彩画展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 英語の教師を退職してから本格的に絵にとりくみ−というお話でしたが、ご本人のHPを拝見すると、相当以前から教職員美術展に出品して腕をふるっていらしたことがわかります。
 もっとも、利尻富士を描くために、十日も利尻の宿に泊まったり、富良野へ通い詰めたりしているようですから、まさに絵画三昧の定年後生活をおくっているのでしょう。
 今回の、2年ぶりの個展には、水彩約60点と、油彩15点ほどを展示。
 油彩は、大半が風景画です。
 真鍋さんの持ち味ともいえる明るい黄緑が効果的につかわれています。
 一部、静物画もありますが、真鍋さんはジャンセンがお好きで、わざわざ埼玉のジャンセン美術館まで見に行ってきたそうです。
 水彩も、ハイキーぎみの明るい色彩が特徴。ブドウや花などの静物・植物は手慣れたもの。風景も、富良野岳や石狩の灯台などが、あくまでさわやかに、モティーフの形を損なうことなく描かれています。
 6日まで。

 第18回酵母展札幌市資料館(大通西13)
 杉吉久美子、池田裕貴子、菊田優子、木下真佐江、高村昌代、福士幸子さんの6人によるグループ展。
 絵やオブジェなんだけど、ちょっと変わってます。
 菊田さんは「動物仁義」と題したイラストで、動物がサイコロ振ったり、股旅のかっこうしてるし、福士さんの油彩は、食べかけの南瓜や芋がかいてあったり…

 第7回木もれび会展=同
 岸本裕躬さんの教室展から独立したグループです。岸本さん(行動展会員。札幌)は「夕映え」という、心象風景的な水彩を賛助出品しています。
 鶴田美保子さん「夕暮れ」(4号)が、夕刻の明るい空と暗い地上を対照的に描き、深い余韻をのこします。
 斎藤由美子さんの水彩はうまいです。明度の差を効かせてドラマチックに画面をつくるのではなくて、あまり明度に差をつけずに丹念に緑などを塗っているのですが、その塗りの丁寧さのおかげで、しっとりと落ち着いた感じが画面全体を支配しています。「風待月の候」は、三岸好太郎美術館の前庭でしょうか。

 第32回新梢会油絵展も開かれています。
 井口富美子さんの「春の駒ヶ岳」に、色彩への探究心を感じました。
 いずれも、6日まで。

 きょうは「総合(じぶんの面を持たずに、ほかの人のフォローや調整をする)」という仕事で、楽勝のつもりで会社に来たら、
「おう、ヤナイ、きょうは全段だ」
「……」。
 下に広告のまったくない、ひろーい面を組まされました。
 疲れたので、後藤純男展は、後日。なかなかよかったですよ!


 10月1日(火)
 宮原寧子写真展「ヒマラヤンブルー」富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館)
 上富良野だったか中富良野在住の女性が、毎年ヒマラヤに出かけて、先住民族から生きるパワーをもらってくるという。
 いきなり凡庸な感想ですいませんが、さいきんの女性はたくましいなあ、というのが実感です。
WITH YOU CARD 10000YEN どこまでも青い空と、堂々たる山容は、すごくピントが“きて”いて、目にまばゆいくらいです。
 あす2日で終了。 

 体調がいまひとつでしたが、あすにはたぶん快復するでしょう。
 ここで、きょう発売のウィズユーカードを紹介します。
 札幌の人以外はあまり関係ない話題ですいません。これは、札幌市内の公共交通機関のプリペイドカードです(東京でいえば、メトロカードみたいなもん)。夕鉄バスなどの例外をのぞき、市内の地下鉄・市電全線と、市営、中央、JR、じょうてつバスの全線に乗れます。
WITH YOU CARD 5000YEN 1000円(1000円で1100円分乗れる。以下同様)、3000円(3300円)、5000円(5500円)、10000円(11500円)の4種類がありますが、このホームページに関係ありそうなのは、高額の2種類でしょう。
 11500円のは、札幌芸術の森の野外美術館にある砂澤ビッキの代表作「四つの風」をデザインしています。雪の中に木彫が、威厳をもって立っています。
 5500円は、彫刻家集団CINQ(サンク)がかかわった、石山緑地のちょっと幻想的な写真が使われています。
 11500円は、以前、大通公園にある「ブラックスライドマントラ」(イサム・ノグチ作)がデザインされていたし、「美術枠」みたいなもんでしょうか。
 なくなりしだい、売り切れです。ギャラリーめぐりのおともにどうぞ(って、すっかり札幌市交通局のまわし者になってしまった)。

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