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あーとだいありー2003年5月後半

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 5月31日(土)

 6月1日かぎりの展覧会をあわてて見てきました。

 居島春生洋画展三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3)
 今週ははからずも丸井今井と三越で“スーパーリアル対決”になってしまいましたが、居島さんは留萌出身の画家。卵黄テンペラという技法でおもに奥入瀬渓流や襟裳岬など日本の風景(一部静物画もあり)を描いています。
 テンペラ、というと、中世やルネサンスの雰囲気を出したがる画家につかわれることがありますが、居島さんはそんな狙いではなく、風景をありのままに描き出すための手段としてもちいているように見えます。じつにリアルに描かれた画面は、油彩や写真のような光沢がなく、おちついています。30号クラスになると、35ミリフィルムで撮った写真よりもほんものらしく見えます。
 とくに迫真なのは、水の描写です。透明感はおろか、水の粘性みたいな質感までも描き出しているかのようです。
 といって、ドイツなど北方のロマン派の写実主義とは異なります。自然を崇高なものに見せようという契機が欠落しているからです。じゃあ自然が偉大に見えないかというと、けっしてそんなことはない。むしろ構図も色彩も抑えたなかに、いわば「物言わぬ偉大さ」のような感情がひそんでいるかのようです。

 あとは簡単に。
 「イギリス」スケッチ紀行展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 毎年恒例、渡会純价さん(版画家、日本版画協会・全道展会員。札幌)を講師にした欧州スケッチ旅行の報告展。筆者も毎年
「いいなー、行きたいなあ」
とため息をつくのを恒例としております。ことしは、スケッチ以外にも、油彩、写真、押し花と手法が多彩なのが特徴。石田志津子さん、ずいぶんがんばってたくさんデッサン、淡彩をかきましたね。

 「KOPSC」油絵展札幌市資料館(中央区大通西13)
 能川満子さん「三階滝」は紅葉の滝を描いています。
 磯谷洋子さん、三木慶子さんはこまかいところにこだわらず、太い筆で元気に風景を描いているところに好感をもちました。
 一方、五十嵐祐子さんは水彩風で、きめ細かく公園の風景を描いています。
 ほかに、会沢節子、江川竜子、畠山節子、細田栄子、宮腰タケ子の各氏が出品。

 第6回フォトメイトやまぶき展札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
 福司重さん「オホーツク夕照」。水面と浅瀬がなんども繰り返されるふしぎな光景。そこに反射するオレンジの夕日。どこでこんな風景を見つけてきたのでしょう。
 目良廸哉さんが講師を務める道新文化センターやさしい写真教室初級・中級合同写真展も同時開催。笈川浩一さん「黎明」が、これまた複雑な形状の湖水を写してうつくしい。

 緋炎窯アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 緑の釉薬がたっぷりかかった信楽ふう花器がダイナミック。ほかに粉引のうつわなど。
 これは3日まで。

 「展覧会の紹介」に「春の院展」をアップしました。

 5月30日(金)

 斎藤周『細かい情感のイメージ』Free Space PRAHA(中央区南15西17)
 昨年にひきつづき、プラハの壁に直接絵をかくシリーズです。これまた昨年と同様、6月2日以降もとの白い壁にもどす作業がおこなわれます。なんか、もったいないなあ。
 仕事が終わって夜の9時から12時までといった時間、こつこつと描き続けてきたそうです。
「ふだんの仕事とは別に、夜中になるとペンの音までが聞こえてきたりして、たのしかったですよ」
 赤が一部につかわれていただけで大半がペンによる細かい線描だった昨年とことなり、今回は、明る斎藤周展の会場風景い黄緑と黄色の色面が大きく躍っています。
 斎藤さんといえば、タブローでも、赤系というイメージがありましたから、これは大変身といえるかも。
 画材は、ベネトンが出しているリフォーム用のペイントなのだそうです。
 これはすでに多くの人が指摘していることですが、もともと絵は、建築と一体のものでした。教会の壁とか、お寺のふすまに描かれていたんですね。壁から離れて自由に移動するようになったのは、じつはそれほど古いことではありません。斎藤さんの試みは、そういう絵画の原点を思い起こさせます。
 まあ、そんなむつかしいことを考えなくても、色とかたちのつながりを目でどんどん追っていくのはたのしい。絵巻物みたいに、線がどんどんつながっていくようなところがありますし、ストーブや石油タンク、部屋の中央の柱にまで絵が増殖しているのもおもしろい。案内状にあった後ろ向きの女の子もあちこちに登場します。壁のあちこちに、長方形の板が貼ってあり、微妙な変化を出しています。
「これはマティエールなんですよ」
と斎藤さん。
 6月1日まで。

 松原成樹展=美しが丘アートギャラリー(清田区美しが丘2の1)
 北広島の陶芸家の4年ぶりの個展です。
 会場に入ってまず目につくのが、鈍い灰色をした立体です。まるで、静物画のなかから、びんや果実がぬけだしてきたようです。
 焼き上げたあとで、表面をサンドペーパーや砥石などでごしごしと研磨しているということです。
 「じぶんで土をこねている間はそんなことないんだけど、窯に入れて焼き上げちゃうと、なんだかひとごとというか自分のものじゃなくなったみたいな気がするんですよね。磨いているとまた自分のものになったように思えます」
松原成樹展 会場には、ふつうのうつわや、うつわとしても使える半球型のオブジェもあります。後者はやはり表面をみがいています。黒っぽい色は、土の成分に鉄が多いためのようで、皿や茶碗には鉄のつぶつぶがたくさん入っています。
 松原さんからはおもしろい、というか筆者としては「目からうろこ」の話をお聞きしました。
 絵のお好きな松原さんは、セザンヌなどを見て、絵がひとつの空間をかたちづくってそこで完結していることをとてもうらやましいというのです。
 たしかに、びんや果実を単純に描いても、いちおう作品然とするのに、びんや果実を立体にしたらただの置物になっちゃいますね。
 もちろん、松原さんのびんや果実は、そうならないように、磨かれて、重厚な存在感をかもしだしているのだと思いますが。
 「以前ヘンリー・ムーアの展覧会を見に行ったら、彼はセザンヌの『水浴』を1点持っていて、マティスが所有していたのとちかい絵柄のなんだけど、その絵の世界を彫刻にしてるんだよね。裸婦3人ならべて。それを見たとき『ああ、わかるなあ』って思ったんですよ」
 絵画の側からするとたぶん、自分たちが2次元でしかないことのもどかしさというか限界みたいなものを感じていて、それでインスタレーションにはしっちゃったりする画家もいるとは思うんだけど、しかし、立体の側でも、平面のイリュージョンにあこがれるということがあるんですねえ。なるほどなるほど、フムフムって思いました。

 6月8日まで。金、土、日曜のみ。

 あやまって「スケジュール」の、31日終了分をいったん消してしまいました。送信直前に気がついて、最小限の事項だけ書いてアップしてあります。ご諒承ください。
 また、昨日のフォスコ・マライーニ写真展のなかで、構成の記述に誤りがありましたので、訂正しておきました。

 5月29日(木)

 森秀雄油彩展=丸井今井札幌本店一条館8階美術工芸ギャラリー(中央区南1西2)
 森さんはスーパーリアルな画風で、洋画壇でも人気の画家です。一陽会の屋台骨をささえる画家でもあります。
 今回は大半が売り絵の風景画。オンネトーから雌阿寒岳と阿寒富士を望んだ図や、羊蹄山ふもとのシバザクラなど、道内に材を得た絵も3点ほど。あとは、ナイアガラとか、ドイツの城とか。女性を描いた人物画も何点かあります。
 ただ、見逃せないのは、「偽りの青空 ヌード雲」など「偽りの青空」シリーズの3点です。アルカイックな石膏像と、背景に青い空を描いたこの連作のリアルさは、写真を超えているといっても過言ではありません。大理石のやわらかさ、なまめかしさまで表現しているようです。そして、生身の人間ではなくあえて石膏像を描くところに、作者のなんらかの意図があるのだと思うのです(意図がなにかわからないけど)。

 小坂礼之木彫展=同
 しかし、筆者は、同時開催のこちらの展覧会にいたく感心しました。
 岐阜県高山の伝統的な木彫です。面のとり方など、西洋彫刻とはことなります。道内では、小林止良於さんというかたがいらっしゃいましたが、(たしか)97年に亡くなっています。
 いわば、芸術家の作品というよりは職人芸。仏像や大黒さま、あるいはぐいのみ、香合などがならびます。材はイチイですが、樹齢数百年をへたものを使っています。
 なによりも筆者が感心したのは、神代楡をつかった達磨大使の像です。こぶしを前に出した一瞬をとらえたこの像は、そでがふわりと風に翻っていて、ほんとに瞬間を表現しているのだな、と感心させられます。小さいながら存在感も十分です。
 東京美術学校ができたとき、高村光雲が教授に迎えられましたが、すでに日本にはかがやかしい彫刻の伝統がありました。通史的に見たとき、日本の彫刻は最初に頂点があってあとは落ちる一方だと思われており、まあそれはやむをえないのですが、それでもなお西洋彫刻に一方的にひれ伏すようなものではなかったことを、ここで再確認しておきたいのです。

 小坂さんは1969年生まれ。
 いずれも6月3日まで。

 フォスコ・マライーニ写真展〜東洋への道〜北海道立文学館(中央区中島公園)
 イタリア在住で、日本滞在通算十数年に及ぶという文化人類学者の写真展。
 南イタリア、チベット、ヒマラヤ、カラコルム・ヒンドゥークシ、北海道、イタリアと日本の庭の比較−の構成からなります。
 プロはだしの腕。むかしの重い機材をかかえてヒマラヤに上った根性はすごい。
 南イタリア、シチリアの人々をうつした作品は、表情がいいです。
 戦前にラバの背に揺られて入ったチベットでは、すでに文化大革命によって破壊された寺院など、貴重な写真もあります。
 北海道も、熊送りの儀式、口の周りに刺青をしている女性、威厳あるエカシ(アイヌ語で長老)など、すでに見られなくなっていることの写真が多い。
 ただ、文化人類学という学問の方法論が、「中央」から「周囲(辺境)」をながめ記述するという手続きにあるということは、自覚しておいたほうがよいかもしれません。イタリア人の目からは北海道は、人類学の対象に見えたわけです。日本人は「なんじゃい」と不快に思うかもしれませんし、それは思って当然です。

 藤木忠善「ふたつのすまい+α」展=北大遠友学舎(北区北18西7)
 筆者は建築の展覧会というのはどうも苦手なのですが、これはわりに楽しめました。実際に住んでいるようすがつたわってきたからかな。
 藤木さんというかたは東京藝大を退官になった建築の先生で、はやくから3階建て住宅を提唱していたようです。今回は、その図面と、じっさいに生活している場面の写真などを展示しています。やっぱり建築は、住んでナンボ、つかってナンボですよねえ。どうも能書きばかり多い人がいるので…。
 なにも説明がなかったのですが、ガラス窓にずらりとならんだスナップ写真がおもしろかったです。
 あす30日午後6時からシンポジウム。

 佐々木研介陶展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
 瀬戸で修行した札幌の佐々木さんのうつわ展。黄瀬戸や、ほのかな桜色を帯びた粉引、火だすき様の皿など、バラエティーに富んだ作風です。
 以上、6月1日まで。

 佐藤百恵の型絵染展=クルトゥーラ(北区北12西4)
 京都府在住の型絵染め作家、道内初の個展。
 暖簾、スカーフ、額入りの絵など。絵は「ブレーメンの音楽隊」「カチカチ山」など、昔話や童話に題材をとったものや、「サーカス」など、童心に満ちた、装飾的なものです。むかしの絵本の挿絵のようで、なんだかなつかしい気分になります。
 6月7日まで。

 

 5月28日(水)

 第11回池上啓一油絵個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 1月から早春にかけてスケッチした日高管内様似町とえりも町の風景を描いた油彩20点余りを展示しています。
 会場で、アマチュア画家であるOさんとも話したのですが、こういう「ふつうの絵」を「ふつうに描く人」って、いそうでいないんですよね。
 とくに若い人は、こういう穏当な風景画を描きませんから、じつは貴重な存在なのです。
 春先の光は、夏ほど強くないため、あまりはっきりとした陰翳を風景にあたえません。かといって、真冬のように、白一色の暗鬱な風景とも異なります。
 池上さん池上啓一「日高の春」の、影になっているところでも明度をそれほど落とさない描き方には、早春がぴったりなのだと思います。
 また、早春は、木々の緑がほとんどない代わりに、裸木や土の茶色と残雪の白が織り成すだんだら模様が、おもしろい効果を画面にあたえます。
 左の絵は「日高の春」。
 S字カーブをえがく道が緩やかに下っていき、絵に奥行き感をあたえています。水平線を基調に、対角線の補助線をおりこんでいく、みごとな構図です。
 影になる部分は、黒ではなくマリンブルー系の色で表されていますが、雪景色の影というのはたしかにこんな色です。
 ちょうど中央に、赤いトタン屋根の家などが配され、画面に求心力をもたらしています。
 手前左の枯れ草は、おそらくイタドリなどが生えているのでしょうが、池上さんは一本一本をこまかく描くようなことをせず、茶系の微妙な濃淡で空間の広がりを表現しています。
 右奥には、あたらしい住宅街の屋根がつらなっています。この三角形の連なりが、いちばん奥の日高山系の稜線と、リズムの交響をうんでいるようです。
 「中央の山の色には苦労しました」
とおっしゃっていましたが、微妙な色合いはたしかに空気遠近法を反映しています。
 「大地の広がりがぼくの絵のテーマなんですが、今回はその上に広がる空もちゃんと表現したくて、ちょっと紫がかった色にしたり、苦心しました」
 紫がかっているのは空だけではありません。裸木も、単なる茶色ではなく、紫を微妙ににはらんだ色になっています。
 というわけで、1点のわりあい写実的な絵ですが、これほどまでに「絵を読む」たのしみをもたらしてくれる作品なのです。
 このほか、「残雪」は、日高地方らしい海岸段丘のある地形をよく表現していますし、「春日」「岬の春」は、昨年の個展では見られなかった青い海が登場しています。
 池上さんは札幌在住、道展会員。

 関連テキスト:■昨年6月の個展(画像あり)

 古田瑩子個展=同
 水彩とは思えぬ堅牢なマティエールは健在です。
 ただし「春の夢」などでは、やや背景がすっきりと整理されたかな、という感じがします。白いビスクドールやフクロウのいる情景というのは、どこか幻想的ですが。
 ほかに小品「気になるドール」など。扱っているモティーフは、カルチャーセンター的ですが、処理の仕方にはさすがに古田さんの個性がにじみ出ています。また、純粋なボタニカルアートも数点出品されています。たしかに、古田さんの絵には草や花が登場しますからね。
 石狩在住。水彩連盟と新道展の会員。
 前回の個展はこちら(画像あり)

 第51回北彩展=同
 女子美大学の北海道同窓会。
 個人的には鎌田俳捺子さん(全道展会員)の出品がないのが残念です。
 88歳だの97歳だのすごい高齢の方の出品がめだち、すごいな〜と思ってしまいました。

 萌え黄の会展=同
 先日絵を拝見したばかりの山川真一さんの教室展。
 うまい人がいるなと思ったら、道展に毎年入選している谷藤茂行さんでした。

 いずれも31日まで。

 BLUE STONES=ギャラリーART-MAN(中央区南4東4)
 グループ展の題名の由来はよくわかりません。
 楢原武正さんの立体「大地の開墾」と神谷ふじ子さんの七宝による彫刻「刻」は旧作と思われます。
 山岸誠二さんの、縦1.1メートル、横4メートルにおよぶ平面「奥へ」は、新作かもしれません。青や銀などの大小の点が画面いっぱいに広がっている作品です。点しかないところが、ジャクソン・ポロックと大いにことなっています。白の地の部分はもうほとんどのこっていないのになおかつたくさんの点を点と認識できるのはふしぎです。見ていると、題のとおり、画面の奥へとすーっと吸い込まれそうな感じがします。
 唯一知らない人の鴻上歩さんは2点。「存在」は、白い布と赤いバラの造花によるインスタレーション。「遊」は天井から吊るしたモビールでした。
 31日まで。

 下澤土泡遺作展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)全室
 昨年亡くなった陶芸家の下澤さん(札幌)の1周忌を記念した展覧会。
 北海道陶芸協会の会長、「北海荒磯焼(ありそやき)」の窯元など、知名度は高い人でしたが、意外と、このようなかたちでの個展はひらかれていなかったかもしれません。白い釉薬をかけたダイナミックな花器などがならび、北海道の風土を意識しつつもパワフルな作品を作り続けた故人の業績がしのばれます。
 そういえば、まず陶芸にはムリだといわれていた北海道の土を焼いて作品にしたあたり、負けず嫌いの性格がしのばれます。後進の育成にも力をそそぎ、全道各地、とりわけ留萌地方とオホーツク地方には多くの後継者が育っています。
 なお、どういう関係なのかわかりませんが、写真家の綿引幸造さんと画家の故・国松登さんの作品も「友情出演」ということで展示されています。
 国松さんのほうは「伝説」(35年)「帝王苑」(39年)「カナリアと少女」(40年)「黒い魚」(47年)「海底の華」(50年)の5点。「帝王苑」は、同名の作のエスキスではないかと思われます。
 綿引さんは道内の風景を感動的にとらえています。茫漠たる湿原と蛇行する大河の向こうに日がしずむ「天塩川夕景」、やや暗い時間帯に浮かび上がる白い花が幻想的な「雪どけの小川に咲き競う水芭蕉」(新山梨、豊浦町)、山あいにかかる七色のアーチをとらえた「虹架かる峡谷」(豊平峡、札幌市)など、わすれがたい写真です。
 6月1日まで。

 山崎幸治小品展画廊喫茶レ・ノール(中央区大通東1、中央バスターミナル地下)
 ちょっと古風な喫茶店での、ほんとの小品展です。照明が暗く、絵を見る環境らしくはありません。
 いずれも無題ですが、格子のある牢獄のような部屋に女性がすわっている絵などが心に残りました。山崎さんの絵に登場する鳥も人も、どこか孤独に耐えているような顔つきをしています。
 31日まで。

 5月27日(火)

 藤野千鶴子個展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 藤野さんは毎年秋に、札幌時計台ギャラリーで個展をひらいていますが、今回藤野千鶴子「宙−オーケストラ 2」はイレギュラーの個展です。お話があってから3週間しかなかったのにもかかわらず、大半を新作でそろえてきていたそうで、そのドタンバの集中力には脱帽です。
 ご本人は、絵にさわりながら
「きのうできたんですよ。あれ、アンバーは乾きが早いわねえ」
などと、ケロッとして、おっしゃってましたが。
 抽象画ですが、宇宙−それも単なるSF的なイメージではなく、大宇宙と、わたしたちの内部に広がる精神的な宇宙とを同時に、しかもたのしく自由に表現しているかのようです。すーっと、深い深いところへと、引き込まれていくかのような。
 右の写真は「宙 オーケストラ 2」。
 これほどまでホワイトの部分の多い藤野さんの絵はめずらしいんじゃないかな。
 それにしても、ううむ。ひさびさにデジカメの限界をさとりました。
 もともとの絵は、もっと深みのある色調なのに。
 左の赤い丸は、ここ数日見えていた、異様に赤い太陽の反映だそうです。
 ほかに、紙に油彩やパステルなどさまざまな画材で描いた「宙−イポス」「天使のイーグアムA」など。淡彩の、縦に細長い小品はいずれも天使を題材にしています。最近は、天使に凝っているようです。
 藤野さんは札幌在住。美術文化協会と新道展の会員。

 佐野昌治 100歳の油絵展=同
 絵はふつうですが、いやー、100歳っていうだけで、すごいっす。
 会場には98歳で海外旅行(東南アジア)へ行き、象の背中に乗っている写真などもはられていました。いやー、わたしも(おれも)がんばろう、っていう気になっただけでも、見に行ったかいがあるというものです。

 スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)にも行きました。
 鎌倉彫 第10回彫雅会山田教室展では、自称「写真おじいちゃん」の宮内英而さんが、かわいらしいリスのついた置物「枯れ木とリス」を発表していました。
 宮内さんのサイトはこちら
 ペンの会書道展は、ボールペンのほか、フェルトペンの力づよい漢字作品や、筆ペンによる、そうだといわれなければ気づかない流麗な作品もあり、意外とバラエティーに富んでいました。

 アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)に行くの、わすれてた。akaさん、ごめん。

 「展覧会の紹介」に「ユトリロ展」を追加しました。
 ユトリロが有名なのは、絵がいいからではないという内容なので、ファンの方はよまないでください。

 5月25日(日)

 大橋郁夫個展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 「パリもどき」と題した2点の大作が目を引きました。
 4丁目通(駅前通)の北1條附近と、南1條通の西2−3丁目あたりの都市風景がモティーフなのですが、写実にこだわらず、流れるような筆致でデフォルメしています。色は青系統が中心です。対象を描くよりも、感覚的なものを主に描いたようです。
 ほかに、凾館の風景画、人形などを描いた静物画などです。

 おなじギャラリーでは、伴百合野さんが講師を勤めるNHK文化センター日本画教室の第9回道草展も開催中。
 日本画の教室展としては花鳥画がすくなく、山田保男さん、本城和臣さんの都市風景は、ふしぎな感じがしました。
 いずれも27日まで。

 「展覧会の紹介」に、道立帯広美術館で開催中の「ひがし北海道:美の回廊」を追加しました。


 5月24日(土)

 佐藤潤子展ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL)
 かっちりとした、しかもダイナミックな構成の抽象画に取り組んでいた佐藤さんは、一昨年あたりから、線が自由に走る作風の抽象画に転換しました。
 すでに或る程度の完成をみた画風を、いったん壊して、もう一度あたらしいものをつくりだすというのは、たいへんなことだと思います。
 今回の作品で言えば、「海へ−U」(F100)に以前のなごりがあるようです。
 そして、前回の個展で見た絵のイメージが「海へ−V」(同)など。
 筆者が注目したのは「海 T」(F50)「海 U」(同)などです。これは模様の緑、ピンクなどの発色があざやかで、地の青も、うつくしい深みを感じさせます。
 また「海」(S10)は、輪郭線と、多彩な色の面とのくみあわせで、色の配置の効果を追究しています。
 ほかに作品は次のとおり。
 F100「海へ−T」
 F50「海」「海 U」
 S50「夕日へ」
 F30「波−U」「浜辺−T」「浜辺−U」「海へ−U」
 S20「漁場−W」「黄色の海」「魚−U」
 M20「漁場−V」
 F10「漁村−T」「魚−V」
 F8「ふたつ」
 F6「波間T」
 F4「夕日」
 F3「海への道」「魚」
 31日まで。佐藤さんは札幌在住、道展会員。

 関連テキスト・・・■2001年10月の個展(画像あり)

 第23回北海道創玄展市民ギャラリー(中央区南2東6)全室
 かなりの豪華メンバーが「参事」の肩書で作品をならべています。中野北溟さんの大きな作品も久しぶりに見ました。
 会員では、鈴木大有さんの作品が「東京都知事賞」の金色の札をつけていましたが、なんで東京なんでしょう。大高蒼龍さんが槙原敬之の歌詞を近代詩文書にしていました。
 25日まで。

 ほかに、札幌市資料館(中央区大通西13)での「メタモリックアニマル」を興味深く見ました。木彫と写真の組み合わせという基本パターンはこれまでとおなじです。
 25日まで。

 5月23日(金)

 第5回伊藤和仁展ギャラリー・パレ・ロワイヤル(豊平区月寒中央通9)
 十勝管内中札内村の風景画コンクール「北の大地ビエンナーレ」でグランプリを獲得した札幌の画家。第1回三岸好太郎・節子賞でも入賞を果たしており、アカデミスムに近いリアルな画風には定評があります。公募展には所属していません。
 ところが、今回は油彩も十数点あるのですが、写真が100点余りもありました。
 絵は「戦の花」など緻密なマティエールで見せるものや、ほとんど同一とおぼしき場所(それも平凡な)のことなる時刻を描いた「月寒・三月の雪(明)」「月寒・三月の雪(暗)」など。
 写真は、羊蹄山のカラーがとにかくたくさんあります。
 24日まで。秋にもおなじ会場で、個展をひらきます。

 山川真一展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 油彩21点を展示。すべて、紅葉の山をモティーフにした作品です。赤、黄、緑…。まばゆい色が画面いっぱいに躍ります。
 故郷やその周辺の、空知管内栗沢町美流渡や夕張市滝の上などを描いています。
 以前も書きましたが、山川さんの近年の絵は、ほとんど色彩の配置だけで画面がつくられています。も山川真一展の会場風景ちろん、線や陰翳といった要素が皆無ではありませんし、あえて青系の色で木の輪郭を強調している絵もあります。ただ、写真右端の「秋(タキノウエ)」など、木の幹や山の稜線などが線を感じさせるぐらいで、あざやかな色が主軸となっています。
 この方向で徹底していけば抽象画になるでしょうが、そこまではいっていません。ただの色の氾濫にならずに、風景画として成立させるか−というむつかしい課題を、山川さんはクリアしているようです。
 「北海道で風景、というと、冬や早春が多くて、秋をかく人はあんまりいない。へたにかくと、下品になっちゃうからね。といって、抽象画なら、やってきた人はいくらもいるわけでしょう」
 今回の個展で大きく変わったのは、これまでキャンバスの地が見えるくらいに薄塗りだったのが、一転、厚塗りになったことです。しばらく使っていた日本画の顔料をやめて、油絵絵の具にしたためだということです。写真中央の「秋色(タキノウエ)」の中央に盛られた赤のあざやかなこと!
 「ほかの季節ならつかえる色はかぎられてくるけど、秋ならどんな色でもつかえますから。しばらくは、色をつかっていきたい」
 ただの写実ではない山川さんの絵は、まぶたの裏にうかぶ遠い日の紅葉を描いているといえるのかもしれません。
 山川さんは札幌在住。道展会員。

 関連ファイル 2001年11月の個展 同5月の個展

 第8回 片桐三晴個展 ギリシャ 青と白の軌跡=同
 片桐さんは、2、3年に1度のペースで、海外に出かけ、その印象を絵にして個展をひらく―というサイクルをつづけています(うらやましい)。前回までのテーマに、バリ島、トルコがありました。
 片桐三晴個展。左「サントリーニ島の夕陽」。右「海王(ポセイドン)への貢物」今回のテーマはギリシャ。行ったのは一昨年の秋です。
 片桐さんの絵は、透明感ある明快な色使いが持ち味。とりわけ青がきれいです。ちょっと生っぽさものこりますが、ひろい面積を単調に塗ることはしていないので、それほど気になりません。
 形態はフォーブというほどではないですが、軽快かつ力づよくデフォルメされています。
 左は「サントリーニ島の夕陽」。
 2泊3日滞在した島のレストランから見た、地中海に日のしずむ情景です。散乱する色彩が、片桐さんの感動を率直につたえています。手前の白い家も、夕陽を浴びて黄色やオレンジにかがやいています。
 右は「海王(ポセイドン)への貢物」。
 左の女性は、頭部や、あらわになった胸が、迷宮で名高いクノッソス宮殿(クレタ島)にのこされた壁画から採ったもの。胸から下は、地元の博物館にあった想像図をもとにしたものだそうです。文様の色彩は片桐さんが考えて描いたものですが、違和感がないですね。
 この絵に見られるように、ただ行った先の風景をモティーフにするだけではなくて、古代ギリシャの壺絵などの図柄をアレンジして構成した「古代競技」「戦士」といった絵があるのがたのしいです。
 「こんどはどこに行きましょうか。沖縄の海に行って大きなマンタ(エイ)の絵でも描こうかしら」
と話す片桐さんのサイト「HAREBARE GALLERY」はこちら■

 米澤栄吉油絵展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 江別市の米澤さんは1919年生まれの大ベテラン。現在は示現会会員です。
 現場でイーゼルを立てたり、スケッチをして描いた風景画が25点。「雪の樹林」は、おそらく野幌森林公園を描いたものでしょう。ほかに、小樽運河、神威岬、北大のポプラ並木などが、おだやかなタッチでまとめられています。
 あまり描く人のいない江別の風景も数点あります。

 いずれも25日まで。

 5月22日(木)

 新 素材の対話展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)

 林教司、畑俊明、西城民治、瀬野雅寛、児島英亀の5氏によるグループ展。
 この戦争の時代への痛烈な批判となっていたのが林さん(空知管内栗沢町在住、新道展会員)の「私の目はこの青空の深い平和を」です。題は、ノーベル賞を受けたインドの詩人タゴールのことばから採られています。
 作品は、壁掛けのインスタレーション。クラインブルーのような深い青に塗られたコンクリート片と、ギリシャ彫刻の頭部がならびます。しかし、その頭部は目隠しをされたまま青く塗られているのです。平和を見ることのできない−ということなのでしょう。
 畑さんは「黄泉の国から」と題したインスタレーションです。花などを写した大きなモノクロ写真を壁に貼り、手前に古い窓枠などを配置しています。
 24日まで。

 南正剛作陶展=ギャラリー山の手(西区山の手7の6)
 上川管内美瑛町、白金温泉の近くに穴窯「皆空窯(かいくうがま)」を構える南さんの個展。
 土味の良く出た、しぶさとダイナミックさの同居したうつわが中心ですが、花器がおもしろい。焼き締めだと思いますが、備前とはちがう、もっとクールな感じの景色と、独特のスマートなフォルムです。
 ほかに、顔のかたちをレリーフにした壁掛け作品、陶皿に時計を組み合わせたものなど、多彩な作品展です。
 31日まで。

 5月21日(水)

 今週の札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)は、すべて絵画です。見ごたえがあります。

 まず、富田知子展
 札幌の富田さんは、札幌では3年ぶりの個展となります。
 前回の個展からの間、2000年に、全道展の会員に推挙されました。また、行動美術の会友でもあります。
 90年代後半、天使を描くことが多かった富田さん。近年は、モティーフが明確なかたちをとらず、抽象画的になってきているようです。
 抑えた色数と、パワフルな筆の勢いはあいかわらず。といって、やみくもに力が入りまくっているというのでもない。マティエールともども、周到に計算されています。
 以前は半分程度まで偶然にたよってきたマティエールのつくりかたも近年はだいぶコントロールできる富田知子「渇いた伝言 2002」ようになってきたとのこと。ただ分厚いだけではなく、漆喰のようなものでもない、独特の力を感じます。
 「以前は希望というか天使をかきたい、というのがあったんですけど、最近は『何を描きたい』というのがないですね。ただ、人間不在の時代みたいな風潮は感じています。わたしの描くトルソで、頭部がなくなっていたりするのも、そういうものの反映だと思うんです」
 右の絵は「渇いた伝言2002」。F150号の大作です。頭部を十字架で置き換えられたトルソの上から黒い巨大な星が覆い被さるかのようです。黒い半円に、ひっかくように描かれた筆跡もおもしろい効果をあげています。
 こうして見ると、富田さんも、神田一明さんとか伏木田光夫さんといった、人間存在の追究というモメントを秘めた全道展の絵画の系譜につらなる画家であるということができるかもしれません。

 また、「黒い雲」(F100)「渇いた伝言 炸裂」(F130。昨年の全道展出品作)には、やはりトルソ(人物)の上から黒い雲のようなものがたれ、落ちようとしています。
 さらに「混沌」(F130)は、黒や灰色、赤茶色の層を、白い絵の具が覆い隠し、まさに混沌のさまを表現しています。
 小品でユニークなのは「Dream Box」。12の画面が1枚の紙の中にならんでいますが、これは使用済み紙パレットをならべたものとのこと。抽象画のように見えます。 

 ほかに「見えない音」(80F) 「壊れた声」(80S) 「渇いた伝言(翼)」(100F)
 小品は「作品」と題したものが8点。うち「作品bX」と「作品10」には「化学物質が誘発して一種の狂気」という妙な副題がついています。「9」の支持体は紙で、額の代わりにふすまをつかっています。
 ほかに「女(ひと)」「少女」「ため息する天使」「葡萄のある静物」「青い花びら」。
 1点だけ「オブジェ 蝕花」という小さな立体がありました。

 高橋芳子個展
 高橋さんは帯広在住の新道展会員。新制作展にも出品しています。
 札幌での個展はこれが初めてとのこと。
 高橋さんのモティーフは一貫して、和服を着た童女です。エロティシズムみたいなものはあまり感じませんが、一種の怖さというか、なまめかしさというか、華やかさとつめたさの同居というか、うまくいえませんが独特の雰囲気はあります。
 タッチはリアルで、モティーフが和服ですから装飾性も兼ね備えています。こういう絵を描く人は道内にはほとんどいないと思います。
 登場する女の子は、高橋さんのふたりの娘さんとのこと。
高橋芳子「触角」 「女の子って5、6歳くらいになると、やはり女にしかわからない感覚っていうのが出てくるんです」
 はあ。ウチの2歳の娘はひたすらおてんばですが。
「どこか子ども特有の残酷さと、女らしさと、いろんなものを持ち合わせているんですね。そういうものを描きたかった。それに、娘を描くというのは、どこかじぶんを描くということでもあったんです」
 左の作品は「触角」。日本的で古風なものと、歯車という文明の象徴とを対比させています。
 ほかに、巨大な仏壇の上に童女がすわっている図を描いた「空(くう)」、人形をあやつる童女を、緋の背景に描いた「雛遊び」など、未見の作品も多く、興味深かったです。
 他の作品はつぎのとおり。
 「うつろひ」「いにしへ」「寂寞」「寂」「微睡」「万華鏡」「夢幻抱影」「万華鏡」「触手」「雛の闇」「空」「風たつ」「戯れ」「かぎろひ」
 こうして作品タイトルをみているだけでも、なにか雅な感じですねえ。

 徳丸滋展
 筆者は、徳丸さんの絵が好きです。
 自然を凝視して、そのいちばん根源的な部分を掬い取って、シンプルな画面に仕上げているからです。
 「北方ロマン」ということばがありますが、あるいはこの精神を、声高にではなく、ひそやかに、しかしもっともよく実現している画家ではないか、とも思っています。
 さっき「シンプル」と書きました。しかし、絵画において、これほど「言うは易く行うは難し」というものはありますまい。ただ平坦に塗れば、画面は単調に陥るだけです。すくないモティーフに限定すれば、構図は徳丸滋「羊蹄山」貧相になります。しかし、徳丸さんの絵は、そうなっていません。
 これは、筆者にとって長年のなぞでしたが、このたび徳丸さんとお話しして、その疑問がいくらか氷解しました。
 たとえば、会場を入ってすぐのところに、「羊蹄山」という、青を基調とする絵があります。
 一見、なんでもなく描かれた空のように見えますが、これは細い線をたくさん描いたため微妙な色の違いが出ているのです。
 右の絵も「羊蹄山」。
 なんとも味わい深い月夜の絵ですが、たぶんネットの写真画像ではその魅力はつたわりにくいのではないかと思います。茶色が、じつに小刻みに色を変えながら、空を覆っているからです。
 この空を描く際は、筆を使わず、カレンダーやポスターといった水や絵の具をしみこまない紙に絵の具をつけて、キャンバスに押してゆくのだそうです。
 そのならびにある「老樹」は、なんとピンクの背景に、年老いた木が1本描かれています。この背景は、下地に黒っぽい色が塗られているので、ピンクが浮いた感じにならずに済んでいるのです。徳丸滋展の会場風景。中央が「老樹」
 それにしても、「岸辺」という絵などを見ていると、ものすごく写実的でありながら、同時にたいへんな引き算の上に成り立っている絵画であることがわかります。リアルな描写と簡素化という、ともすれば矛盾することをしずかになしとげているために、徳丸さんの絵は、或る特定の場所を描いていながら普遍性を持ちえているのだと思うのです。
 「どれも実際にある風景。ただ、いろいろある中から一部分だけをすぽんと抜いてきて、描いたのが多いね」
 ことしは、ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL)でも個展があります。たのしみです。
 徳丸さんは、後志管内倶知安町、ニセコアンヌプリのふもとにアトリエがあります。全道展会員。
 作家のサイトはこちら■

 ほかの作品は次のとおり。
 「木」「ニセコアンヌプリ」「ツツドリ」「ハハコグサ」「キジバト」「森」「川」「エゾアジサイ」「トドマツ」「山湖」「カラマツ」「樺の林」「新緑」「木」「ヘラオオバコ」「木」「くさむら」「雪の林」

 宮川悦子展は、昨年の道展入選作「H・A・R・U」など、人物群像やアトリエ内を描いた油彩。札幌在住。
 山本實水彩画展は、海外、国内(上高地など)の風景画が中心。あまり陰翳をつけずに、淡すぎず濃すぎない、やや明るめというちょうどいい明度の色でたんたんと描いています。
 かわばたまさこ展は、昨年の道展佳作賞「森・私の向こう側T」など、森の緑と人物を組み合わせた油彩が中心。「札幌タイムス」によると、道展会員の川畑盛邦・和江さん夫妻の娘さんとのこと。いわれてみれば、葉っぱの翳を青で塗るあたり、お母さんにそっくりですね。
 1977年生まれ、倉敷芸術科学大学卒。札幌在住。

 5月20日(火)

 尹東天展 長い間かれきった川底=TEMPORARY SPACE(中央区北4西27)
 Yoon Dong-Chunさんは韓国の美術家。ソウル国立大学美術学部で教えています。昨年、道内と韓国の美術家によって道立近代美術館で開かれた「水脈の肖像2002」では、光州事件をテーマにした硬質のビデオ作品「記憶(80年代式)」を出品しました。
 映画の中の殺人シーンをつなぎあわせた映像や、暗い空、軍靴の音…といったモティーフが強烈だっただけに、今回はどんな作品だろう−と思ってオープニングパーティに出かけたら、意外にもhaertwarmingでsoftな、北海道との出会いをことほぐような平面作品とテキストによるものでした。
 9つの、赤や水色など単色のアクリルパネルの下には、「1990年の夏だった、私が北海道に来たのは」「みんなが心を開いて接してくれた。私の心も解き放たれた」といったテキストが附せられています。
 その間には、「反響」「胚胎」「遭遇」などと名づけられたドローイングや、インクジェットで出力した写真が貼られています。
 最初に貼られた雪などの写真は、尹東天さんのふたりの娘さんがインターネットをつうじて日本各地の人に「北海道のイメージは?」とアンケートをとり、4番目までに多かった回答をイメージ化したもの。やはり「寒い」「牧場」という答えが多かったのですが、なかには「北の国から」「ラベンダー」というものもあったそうです。
 中央には、16点のモノクロ写真と、コップからあふれるミルクのカラー写真からなる「長い間かれきった川底」という題の作品があります。この題は、「サッポロ」の語源となったアイヌ語に由来しています。ミルクの写真は、作家が札幌にたいしていだいた「豊かさ」のイメージを象徴しているのだそうです。
 北海道人は、根が単純なので
「こいつが言っていることはお世辞だろう」
などややこしいことは考えません。すなおにうれしがります。筆者も、北海道や日本へのあたたかいまなざしがあふれた今回の個展をうれしく思います。
 6月1日まで。月曜休み。


 5月18日(日)

 訂正から。
 「あーとだいありー」5月14日の菅原朋子個展のくだりで、「小屋」という作品名が「小径」と誤っていました。訂正しておきました。菅原さん、申し訳ありませんでした。

 中尾峰作品展 麻生ゴルフ(前編)アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 札教大の大学院を2001年修了した若手です。
 う〜ん、でも、今回はちょっと、正直言ってわかりづらかったっす。
 都市の中心部でもなく、ホンマタカシさんが取り上げているような“郊外”でもない、凡庸な町としての麻生。そこにも歴史があり、不意打ちのように現前する風景があり…っていうのは、よく分かるんだけどね。
 でも、その麻生を描いた絵が、ビルや建物を捨象したものになっていて、捨象したがる気持ちはわかるんだけど、どういう過程で麻生が広漠とした風景に見えるようになったのかっていうのが、筆者にはあまり伝わってきませんでした。
 「都市風景のもうひとつの見方」みたいなアプローチだったら、大学院修了時の、住宅雑誌から家の写真を転写したシリーズのほうが、すとんと胸に落ちたぞ。
 −という主旨のことは作家本人にも言ってきました。ので、「後編」(7月5−13日、Free Space PRAHA=中央区南15西17)に期待です。

 関連ファイル 
 ■札教大大学院修了展(2001年3月)=画像アリ
 ■リレーション夕張2002(2002年8月)

 “allô?” offline exhibition02;Life. 変わっていく日々、変わらない毎日.=同
 ウェブサイト上で、ポラロイド写真や、パソコン用のグラフィックス素材などを発表している札幌のキタガワ・マユミさん。
 昨年10月、月寒の画廊喫茶で開いた初個展では注文をつけた筆者ですが、今回展示しているポラロイド写真約150枚は良いですよ〜。
 空、犬、食卓、街角など、日常の何気ない一瞬を切り取ったスナップです(もちろん、友人がピースサインを出しているような写真はありません)。ありふれた光景なんですが、切り取り方にセンスのよさを感じます。日常を写した写真というのはよくありますが、彼女の場合は、とくべつ個性的でないけど、凡庸でもない。
 このセンスのよさがなにに由来するのかわかりませんが、とりあえず言えることは、あまり欲張ってフレーミングしてないなー、ということです。
 ご本人のサイトもおしゃれです。

 市根井光悦の世界−カムイの山 北海道の名峰たち=五番舘赤れんがホール(中央区北4西3、西武ロフト7階)
 函館在住で、道内の山岳写真の第一人者、市根井さんが、三部作の写真集の三冊目「カムイの山」(山と渓谷社)を出版したのを記念して、おもにこの写真集に収められている作品を展示した個展。
 すばらしい写真です。とりたてて奇抜な地形やめずらしい光景がおさめられているのではなく、登山の過程で出合った山々の自然をすなおにフィルムにおさめた写真です。でも、見ていると、山巓の冷たい空気や、風の音、花のかすかな香りなどが、すぐ身近にあるかのように思えてくる、すてきな写真なのです。
 たとえば、9月下旬の大雪山系の紅葉を写した1枚があります。おどろくほどにあざやかな赤や黄色が、常緑樹や白樺の幹にまじって模様をつくっています。まさに色彩の饗宴です。
 見ていると、きわめて複雑な色の配置も、ごく必然的なもののように感じられて、これ以上の配置はないように思えてきます。とすると、画家が、色のバランスがどうのこうのと、色をおいたり削ったりする行為というのは、いったいなんなんでしょう。人間は、あれこれ考えたところで、神のつくる美には追いつけないのではないか。そう思えてくるのです。
 もうひとつ。たしかに、北海道といえど、どの山も古代の面影をそのまま残しているとはいえません。かなり人の手が加わっていることは事実です。
 しかし、本州以南にくらべると、人為的な改変ははるかに小さい。今回の写真展で見たスケールの大きな自然が、いま自分がいる島のなかにあるということを、筆者はとても誇りに思いました。とりわけ、「秋色の豊平川源頭の樹林帯」などの写真は、札幌市内で撮られたものです。行政区分に固執するのは意味がないかもしれませんが、185万都市の市内にゆたかな自然がのこされているという事実は、筆者にとっては痛快です。
 入場無料。20日まで。毎日2回、作者による作品説明があります。
 また、写真集(1冊3800円)を会場で買うと、限定ポストカードセットがついてきます。

 ユトリロ展大丸札幌店7階ホール(中央区北5西4)
 市根井さんの感動的な写真にくらべると、このフランスの有名な画家のどこがいいのか、筆者にはさっぱり分かりませんでした。
 ユトリロがなぜエライのか、ということについて、近日中に「展覧会の紹介」として別稿で書く予定でいます。
 展覧会は、26日まで。その後、釧路と函館に巡回。


 5月17日(土)

 昨日の続き。
 会期が終わる順番で書きます。まず、18日終了分から。

 第18回北の日本画展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 道展の会員、会友、出品者計50人が1点ずつ出品。
 道内(と出身者)で日本画に取り組む人で、道展に出してない人もすくなからずいるわけですが、半分以上の作家が一堂に会しているわけで、壮観であります。道展よりは作品サイズが小さいので、迫力はちょっととぼしい人もいないではありませんが、一方で、これまでにない試みをする人もいます。
 気になった作品について…。
 北口さつきさん(札幌)「対話」。裸婦は絵画の基本、などとウマイことを言って、じつは男のスケベ心から描かれた裸婦が相当あるのではないかと筆者はにらんでいるけど(で、べつにそれが悪いことだと一刀両断できないとも思っているけれど)、北口さんの裸婦は、いっさいの虚飾とか夾雑物をぬぎすてた一個の自立した女性っていう感じがすごく強い。この絵の女性も、目がきつくて、しっかり何かを見据えてるようです。
 羽生輝さん(釧路)「北辺」。冬の漁村といういつものモティーフですが、空は真っ黒、海は群青で、ドキュメンタリータッチのモノクロ写真のような、鮮烈な作品です。
 吉川聡子さん(札幌)「休日」。あいかわらずの高い描写力です。部屋の中には、いすが置かれ、その上に数冊の本が載っているというシンプルな構図。本は、山本容子のイラストとか、四谷シモンとか、American Folk Paintingとか(つい読んでしまう…)。ヘタな字は絵に入れると興ざめなんですが、彼女はうまいですからねー。窓辺に飛行機模型が置いてあるあたり、空とか飛ぶことへのさりげないこだわりが持続しています。
 陳曦さん(同)「刻(とき)」。一貫して中国の少数民族の人物像を描いてきた陳さんですが、めずらしく流氷の海をモティーフにしています。
 千葉晃世さん(同)「ポプラ」。レッドオーカーのような色の地に黒い幹。なかば抽象的な異色の作品です。
 益山育子さん(同)「習作−芽吹き」。早春のスケッチ的な一点。手前の雪の部分が多く、水墨画などに通じる大胆な構図といえましょう。
 朝地信介さん(留萌)「たつ」。ひどく細長い画面に、これまた細くて高い建物を描いています。これまで朝地さんは無人の町並みと、どこか幻想的なたたずまいのビルをたしかな描写力で描き、道展の日本画に新風を吹き込んできた若手ですが、この作品で、登場するビルが空想のものであることがはっきりしたと思います。
 佐藤弘美子さん(愛媛県)「咲いた 咲いた」。桜の絵。地が黒く、手前には花びらが大きく描かれている構図は明快。上から黄緑と白がさっと塗られ、さわやかな一枚です。
 古瀬真弓さん(札幌)「LOTUS」。古瀬さんはこれまで、南国の風景と女性像を組み合わせた旅行会社のポスターみたいな絵が多かったのですが、今回は蓮の花を描いています。しっかりとした写実ですが、背景の青紫はちょっと風変わりです。
 駒澤千波さん(同)「籠る」。題のとおり、狭い空間でひざを抱えてうずくまる若い女性の姿です。床から、鍾乳石のように、青や紫の物体がにょきにょき生えていて、なんともいえない閉塞感を高めています。
 千葉繁さん(岩見沢)「刻」。空を飛ぶツルというモティーフは変わらず。ただし支持体に木の板を一部用いて凹凸をつけるなど、興味深い試みをしています。
 佐久間敏夫さん(札幌)「しだれ桜」。地味ながら対象をしっかりと見つめています。
 中野邦昭さん(同)、白崎幸子さん(同)、川井坦さん(同)、本間聖丈さん(小樽)らベテラン勢もきっちりと風景を観察し、まとめています。
 ほかの出品者はつぎのとおり。

 今橋香奈子、大田原義幸、大塚博子、岡恵子、笠嶋咲好、加藤拓、唐牛朝子、河内厚子、小林文夫、斎藤美佳、佐藤綾子、朱音、中井緋紗子、中島涼沙、袴田睦美、樋口雪子、平野久美子、平向功一、舟山敦子、松田彩、山内郁子、横川優(以上札幌)、大塚さつき(東京)、小原英子(旭川)、久保詠美子(上川管内東川町)、櫻井明子(恵庭)、鈴木恭子、馬場静子、山本孝子(以上苫小牧)、竹澤桂子(稚内)、田村直子(小樽)、富山真祐(宗谷管内利尻町)、中澤昌世(空知管内新十津川町)、馬場智絵(釧路)、谷地元麗子(江別)、山本永子(十勝管内幕別町)

 中吉功・和子展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 中吉さんの絵は、茫漠とした色合いの風景画が中心。花を描いた小品もあります。
 題材になっているのは、サロマ湖とか、十勝の生花苗(オイカマナイ)湖、ホロカヤントーといった、あまりひとけのない汽水湖が中心。いやー、筆者もこういう湖、大好きなんですよねー。
 技法のことを言うと、中吉さんの絵は、ほとんどが横のストロークで描かれていて、縦の線は補助的に、木々を描くときにつかわれているくらい。それが、それほど大きくない絵でも、広がりを感じさせているのだと思います。
 奥様の和子さんは、錆びた鉄板などの表面をカラー写真に撮ってならべています。

 元木弘子・長瀬貴子 陶いろいろ=同
 うつわの展覧会。元木さんは空知管内長沼町。灰色っぽい色が中心。江別の長瀬さんは、白と黒がはっきりした色調で、こちらは洋食に合いそう。

 第50回写真道展第21回学生写真道展札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
 北海道新聞社が主催する写真展。ことしの審査委員長は、大西みつぐさんです。
 さすがにレベルは高いです。写真雑誌の投稿欄で入選しそうな作品ばかりがならんでいます。言い換えれば、ありきたりなイメージではとても入選はおぼつかないでしょう。
 とても1点ずつには言及できないのですが、全体的なことで言うと、モノクロがすごく少ないです。
 また、子ども、老人、若者、家族、ペットという被写体がどうしても多くなっています。まあ、ほほえましいから、そうなっちゃうんでしょうけど。
 筆者が好きな作品。
 佐藤寿美子さん(札幌)「午睡の夢」。車の中で居眠りする老人と、車窓に大きく見える飛行機との組み合わせがユニーク。
 辻栄子さん(札幌)「盛夏」。魚眼レンズを効果的に使って噴水(とそこであそぶ子供たち)をとらえている。
 北宏保さん(小樽)「初雪の日」。緩やかな下り坂を、傘をさして歩く女性二人。うっすらと路面に積もった雪。なにげないけれど、どこかすてきな光景。
 佐藤精一さん(苫小牧)「口」。水面から口を出してえさをほしがる鯉がすごい。
 塚田信孝さん(函館)「古里は緑なりき」。かやぶき屋根の民家と、整然とした緑の対比。
 室崎義信さん(十勝管内浦幌町)「凍裂」。ワカサギ釣り客が訪れた湖面の模様のおもしろさ。でも、でっかいRVを乗り入れて、氷が割れないんだろうか。
 飯田淑子さん(札幌)「雨の遊園地」。きれいなシバザクラならだれでも撮るでしょうが、雨の日なので、しっとりとした美しさが映えます。
 田澤康史さん(空知管内奈井江町)「灯爛漫」。乱反射する大きなクリスマスツリー。
 山家正一さん(根室管内中標津町)「SLと騎馬隊」。騎馬隊といってもポニーに乗って雪原をぽくぽく歩いている人たちなんだけど、なんだか米国西部みたいに見えてくるからおもしろい。やっぱり北海道って外国なのか?
 応募総数4070点。入賞・入選は計216点でした。
 学生写真道展も同時開催。
 苫小牧西高が「女の子写真」で、最高賞(協会賞)の早川彰憲さん「宇宙人現る」をはじめ、大量入選しています。銅像とのツーショット(遠藤章平さん「ブラザー」)というオバカな(もちろんほめ言葉)写真もあり、わらっちゃいました。
 北川泉さん(札幌厚別高)「おもいっきり18歳!!」は、表情がとにかくおもしろい。
 北大勢も、原田玄輝さんら4人が入選しています。
 それにしても、応募452点のうち、入賞・入選が34点だから、これはとんでもない厳選だな。

 写真道展は、名寄、帯広、網走管内湧別町、室蘭、日高管内浦河町、旭川、根室管内別海町、釧路、岩見沢、北見、苫小牧、砂川、夕張、小樽、函館、網走を巡回します。日程はスケジュールをごらんください。

 第25回記念北釉会展札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
 七宝サークルの合同発表会。
 銀線を使ったもの、地の金属を生かしたものなど、いろいろな作品があります。
 釧釉会のメンバーは、いつもながら道東の雄大な自然や風景に材を得たうつくしい作品が多いです。土田弘子さん「秋景」、萩原キミエさん「サンゴ草」など。飛岡和子さん「てっせん」、松平久美子さん「りんどう」といった、ボタニカルアート的な落ち着いた作品もいいですね。
 能登誠之助さん「秋色」は、細い線を生かした抽象作品です。

 第36回さっぽろくろゆり会展=同
 道内美術団体の中で屈指の歴史を誇る北大黒百合会ですが(なにせ創設メンバーが有島武郎)、これはたぶんOB会なのでまだ36回なのでしょう。
 どうしたわけか海外旅行の風景画が多いです。
 山下脩馬さん(全道展会員)「小樽駅前」は、拡幅される前の駅前通だと思われます。おそらく画面のいちばん手前の右側にあるのが、いまはないパチンコ屋です。舗道がイエローオーカーのような黄土色というのはユニークですが、下地にいろいろな色が重ねられているのがわかります。
 八鍬秋郎さん「知床残雪」はベテランらしい穏当な風景画。
 小峰尚さんは、生物的なものを感じさせる陶のオブジェを出品しています。
 ほかに、田中盛夫さん(道展会員)、坂本輝行さん、美坂美恵子さんといった名前も見えます。

 第6回宮田カツミとフレンドリークラブ展=同
 和紙絵画ですが、へたな油彩よりも色彩の美しさではるかにまさっていると思います。
 個人的には、尾形和子さんの作品が良かった。「ふきのとう」は、伸びる力がみなぎっています。
 久津間ハルさん「バラ」もむつかしい題材をよくこなしていると思いました。

 第5回蒼樹会北海道支部展=同
 穏当な写実の油彩(1点のみ水彩)が並びます。21人が1、2点ずつ出品しています。
 桜井寛さん「蝦夷富士冬姿」は、きりっとした山容が魅力的です。ただし「待春」は、つめたい風のふきわたる雪原の雰囲気がよく描かれていると思うのですが、中央を流れる川の中継部分の描写が、桜井さんの実力からすると、どうにも中途半端のように思えます。
 田村隆さん「北国の詩」。道展に、廃屋の絵で入選を重ねている人です。ただし、時たま、アレっと思うような絵を出すんですよね。今回の作品も、海辺の廃屋、廃船といったモティーフはともかく、それらが遠近法を無視して排列されているのが、どうにもふしぎな作品。犬や浮き球がいいアクセントになっているのですが…。「神恵内」は、荒々しい冬の海を、スナップ写真のようにとらえて、臨場感にあふれています。
 大澤誠睦さん「五月のニペソツ山眺望」。なんていうことはないのだけれど、シンプルな風景画。
 川上清泰さん「サイロのある風景」。サイロのレンガを一枚ずつ丁寧に描いた、リアルな作品。
 齋藤義雄さん「運河懐古」。これはなつかしい。いまは道路になっているところに古い倉庫が立ち並び、よく見るとオート三輪も駐車してあります。
 百島忠雄さん「恵の大地」。おだやかな色彩で丘陵の畑を描いた作品。「道庁西門から」は、赤れんがよりもはるかに大きく手前の紅葉を描いています。
 ほかに、阿部信男、安宅幸恵子、岡田順之助、大谷木宏祐、長内秋夫、小柴弘、佐藤典彦、下山康麿、関根すず子、山村哲雄、出邑勝之、中山美津子、船越とみ子、美濃川弘子、森スズ子の各氏が出品しています。

 分量が多くなったので、ここでいったんアップします。

 なお、展覧会の紹介に「マン・レイ写真展」をアップしてあります。おちゃらけた文章ですのであまり期待しないでください。

 5月16日(金)

 絵画グループ・第5回白い夢展=らいらっく・ぎゃらりぃ(中央区大通西4 北海道銀行本店)
 油彩のグループ展。女性12人が1点ずつ、風景画や静物画を出品しています。穏当な写実が中心です。
 この手のグループ展としてはなかなかみなさんお上手です。森元智恵子さんの雪景色は、翳の部分を青っぽく処理しているので、感じがよく出ています。ほかに、紅葉の公園、ウィスキー工場などが題材です。
 17日まで。

 松尾憙道水彩画個展〜北国の旅情〜札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 北区新琴似の獣医さんが仕事の合間に、札幌近郊や市内で筆を執った淡彩スケッチを展示した初個展。
 先日の道新札幌市内版にも、新琴似の名所の絵はがきを自作したという記事が出ていました。
 道外の方はご存じないでしょうが札幌は人口185万人の大都市で、筆者のように、南端の地区に住んでいると、北のほうの住宅街である新琴似には10年に1度くらいしか行きません。筆者が幼少のころは新興住宅地でしたが、いまでも新興住宅地っぽいイメージを漠然と抱いています。ともあれ、一見凡庸な地区をじっと観察してまわり、自分なりの景勝地を見出すというのは、おもしろいことだと思います。
 もっとも、細かいことをいえば、あくまで“新琴似周辺”であって、安春川やグリーン公園、札幌医大グラウンドはたしかに新琴似ですが、近藤牧場は新川だし、百合が原公園はかなり遠いし、やはり新琴似だけで10カ所にするのはやはりちょっとつらかったかもしれません。
 17日まで。

 吉田昇包作陶展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 関西在住の陶芸家。ご夫人が札幌出身という縁で、道内では初の展覧会です。
 うまくいえないけれど、本格的な陶芸−という印象が強いです。
 会場に入って左側にある白磁がとくにすごい。白磁は、じっと見ていると青みがかって見えるかと思えば、また薄い灰色を帯びているようでもあり、すべての色を拒みながらもすべての色を包含しているかのようなひろがりを持っています。
 右サイドには、粉引などのうつわを展示。伝統のわざをきっちり引き継いでいます。道内にはこういう作家は意外とすくないだけに、興味深く見ました。

 5月15日(木)

 谷口雅子展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
谷口雅子「lifting my house」 空知管内長沼町出身、岩見沢、名古屋を経て、鹿児島県大口市のアーティスト・イン・レジデンスに滞在し、子供たちとのコラボレーションなどに取り組みながら、3年前に札幌に戻ってきて初の個展。ただし、R-BOXの最後のグループ展には出品していたそうです。
 今回は、この10年間の乾漆の作品を発表しています。乾漆は、これまで発表する機会がなかったということです。
 さすがに初期のころは首にしても硬さがすこしのこっていますが、後半の作品は特徴があります。乾漆といっても、木目がはっきりしており、着色を施した木彫と外観はそれほど差がありません。
 左は「lifting my wife」。家を持ち上げようとしている女性です。台座は木で自作しました。ギャラリーにある金属製の台座よりも雰囲気が出ています。
 このとなりにあったのが、「あかりとり」と題した人物像。腹の前にまわした手と手の間に火が浮かんでいるのがユニーク。やはり自作の木製台座がついていて、かなり高く、人物は視線より上に存在します。
 なんとなく古くてなつかしいのは、「ジオットなどの絵が好きだから」かもしれません。
 いま二人目のお子さんを妊娠中。彫刻を本格的に再開するのはしばらく先になるかもしれませんが、あせらずがんばってほしいものです。
 ご本人のサイトはこちら

 第67回方究會展=同
 昭和11年に始まり、現在も年1回つづいている、おそらく道内最古のグループ展。20人が出品しています。
 木版は尾崎志郎さん(全道展会員)の「レンガの倉庫」のみ。手彩色だそうです。
 「グループ環」のメンバーでもある横田章さんの、ベテランらしく手堅くまとめた風景画4点が目を引きました。「セントアンドリュース」は、北海道といわれればそうかなと思ってしまうような、麦畑などの広い世界(手元の図録には水彩とありますが、油彩の誤りでしょうか)。「初冬の空」は、ぽつんぽつんとならんだつみわらが効果的です。
 堀昭さん「定山渓温泉を流れる渓流」は色の散らし方に勢いがあります。それに比べると「荷揚場で働く人達」は、あるいは溶き油が多すぎるのでしょうか?
 渡辺弘子さん「栄華痕跡(フオロ・ロマーノ)」は、廃墟を、水彩とはおもえぬ重厚な筆で描いています。
 ほかの作品は次のとおり。
 ■川村正男「十勝の秋」「旧滝之上発電所」■小林耀子「トラバーニの水車小屋」■笹谷圭子「長江を行くT」長江を行くU」■杉本セツ「椅子の上の静物」「銅の水差し」■関建治「草萌える頃」■高橋芳夫「オリエンタルポピー」「ドライフラワー」■千葉久信「朝霧」「渓流」「渓流」■南里葉子「カサブランカ」■平野俊昌「みつめて」■福家久美子「喜びの花束を…」「旅の思い出」■増田正子「初夏の風」■松永節子「譜面台のある静物」「卓上」■村岡治夫「運河」「ドロミテの山並み」■宮崎君子「刈花」「故郷を思う」■安河内太郎「作品A」「作品B」■渡辺弘子「寡黙」■横田「春の池畔」「早春の川」■吉岡良子「春の窓辺」「早春」
 18日まで
 関連テキスト:2001年 2002年

 小笠原み蔵 木彫三昧X=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
 ゴリラの木彫で有名な札幌の小笠原さん。
 今回は、ギャラリーの1階にゴリラ100頭を陳列しています。透明なケースを重ねてその中にならべているので、まるでサル山! (ゴリラはサル山にはいないけれど) かなりの迫力です。
 でも、いつものゴリラとは、よくみるとちょっとちがいます。
 これまで筆者が目にした小笠原さん作のゴリラは、四本の手足までつくってあり、服を着せたり、特定のポーズをとらせたりして、人間社会のはっきりした諷刺になっていました。ゴルフをやったり、二宮金次郎の銅像のまねをしたりしていて、マンガチックなイメージがつよかったのです。
 ところが今回は、顔こそしっかり彫っていますが、手足はおおまかに表現され、全体にまるっこくなっています。ポーズもとくにとっていないものが多く、立体マンガというより、いわゆる木彫の雰囲気がつよくなっているのでした。
 どちらが良いとは、なかなかむつかしい問題ですが。
 ギャラリー2階は、都市風景をデフォルメした木彫レリーフなど。
 18日まで。

 小林義明「花・鳥・風・月」展〜EOS10Dによる日本の自然〜=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)
 タンチョウ、冬の林のシカ、まぶしく咲く菜の花、凍った水の上を一列に飛んでいく渡り鳥、梅に鶯、ネコヤナギのある川岸、ミズバショウ…。
 身近な−といっては言い過ぎかもしれないけれど、わりあいよくある風景のカラー写真38点。
 もう何度も書いてますが、さいきんのデジタル写真は、色の自然な諧調や、にじみの無さ、ラティチュードという点では35ミリフィルムを完全に凌駕したといっていいくらいの進歩をとげています。
 16日まで。
 東京での展示は終わり、6月5−11日・大阪梅田、23−27日・福岡、7月7−11日・名古屋、28日−8月1日・仙台の各地のキヤノンサロンを巡回します。

 非・連結展 vol.4=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)
 たぶん若手のグループ展なのですが、ギャラリーオーナーの竹田博さんも、例の抽象に近い風景画を出品しています。
 丸勢文現さんの作品は、細いテープのような支持体に色を塗り、それらを互い違いに壁に貼ったもの。色の帯の斜めと、支持体の斜めが交錯しあい、ふしぎな絵画空間を生んでいます。
 17日まで。

 つづきはあす。