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あーとだいありー2003年5月前半
5月14日(水)
まず、札幌の美術家・上遠野敏さんから、ベルリン滞在記の原稿がとどきましたので、アップしました。■
美術館からギャラリー、街角まで精力的に見てまわる姿勢にはびっくりです。写真も多数挿入されていますので、ぜひお読みください!
それでは、13日のギャラリーまわりから。
見た順番に書くので、最初は、すでに終わった展覧会について。
菅原朋子個展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
札教大を卒業して間もない若手の個展。板に描いた油彩8点を展示しています。
いずれも抽象画なのですが、菅原さんによれば、一種の風景なのだそうです。
風景を描くことによって、じぶんを表現しているのだと。
右の写真は「街並 風景散歩」。白い地は、いろいろな色をかさねて、表面に微妙な凹凸が生じています。黒い色はその凹凸のマティエールに注目してほしくて塗ったもので
「絵の具より溶き油のほうが多いかも」
と菅原さん。
ほかに「分岐」は、表面の絵の具をひっかいた細い線がY字状になっている絵。ほとんど、マティエールだけで見せる絵といってもいいくらいです。
額縁のある絵とない絵があります。それについて、額のない絵のほうが「絵」というよりも物質感のあるモノに見える、額があるモノはそこに色が塗られると「絵」にある−ということを話していました。うーん、さいきんの若手でこれほど「絵とはなにか」について考えている人っていないんじゃないでしょうか。エライッ!
ほかに「untitled」が3点、「小屋」「街並」「晴れた日」。
参考テキスト ■小林麻美さんとの二人展「ふくらめる湿度」
畠平諭個展=同
畠平さんは札幌学院大4年生。
写真部員として活動してきましたが、さいきんは「写真」のワクにとどまらない作品が目立ちます。
今回は、暗闇の中のインスタレーション。
大判カメラ(8×10)のフィルムに直接絵の具をぶちまけ、現像したものを何枚もつなげて、背後から灯りで照らしたものを、壁と床の上に1点ずつ設置しています。
いずれも、縦9.1メートル、横18.2メートル。ほぼ畳1畳分とのことです。
描かれた抽象的なイメージについて
「宇宙みたいなのを意識しました」
と畠平さん。
たしかに画面にはひろがりがありますが、展示方法が展示方法なだけに、荘厳な感じというか、ボルタンスキーみたいな宗教的雰囲気もただよわせます。
いずれも13日かぎり。
もうちょい早く行くべきであったと反省。
ギャラリーのあゆみ 10人の絵画展=ギャラリー紀(中央区南5西24)
これまで同ギャラリーで個展をひらいた10人の画家の小品展。旧作もあれば、新作を用意してきた人もあり。顔ぶれは、八木伸子、上野仁櫻、吉田英子、碓井良平、中橋るみ子、佐久間英夫、鹿士政春、小原光子、中野邦昭の各氏(順不同。あれっ、ひとり足りないぞ。メモをしわすれたようです。申し訳ありません)。
20日まで。
※ 追記 もうひとりは亀川巌さん(道展会員)でした。失礼しました
北の若手陶芸家 田中菜摘・工藤和彦展=青玄洞(中央区南1西24)
どうも工藤さんのうつわのほうが多いように見えます。釉薬を塗った刷毛の跡もあざやかな粉引系のうつわが目を引きます。
田中さんでおもしろいのは、笛やつぼ太鼓といった陶の楽器。花をいけてあるから花器かと思ったら、ぽんぽんといい音がしました。
16日まで。
風間健介 チャリティー写真展「劣化ウランに苦しむ子供達へ」=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階)
風間さんは夕張在住の写真家。昨年、東川賞を受けています。
今回は風間ファンならぜったい要チェック。炭坑遺産や夕張市内を撮った写真が有名ですが、それ以外にも、長崎県の軍艦島、夜景などの風景など、これまで撮った写真ほとんどすべてが展示されています。額入り1万円もやすいとおもいますが、壁にピン止めされているのは1000円。オリジナルプリントの値段としては安すぎです。うーん、デフレ時代の写真展ってとこでしょうか。
さらに若いころつくったフォークシンガーらの写真集、道新空知版に連載している炭坑遺産の連載のファイルも見ることができます(この連載は地方版でしか読めないのがもったいない。終わったら本にならないかなあ)。
風間さん本人はおじさんですが、意外と(失礼な言い方ですいません)写真はロマンチックなのです。モノクロで、これほど甘い写真を撮る人もめずらしいような気がします。
劣化ウラン弾については、14日の道新に出てました。米軍は核兵器に分類していませんが、弾頭にウランを用いていることには変わりありません。
25日まで。月曜休み。土、日は作家がいます。
青山由里子展=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)
札幌在住で、ボックスアートを作り続けている青山さん。
今回の個展でも、15個が壁に掛けられています。そのほか、壁のない平面が4点出品されています。
はっきりとレトロな感じではないのですが、そこはかとない懐かしさが漂います。
この箱は、一見廃物を利用したようにも見えますが、青山さんが一からつくっているもの。
人物や鳥、自転車などを写したコピーも、じぶんで撮った写真であり、雑誌などのコラージュではありません。
「あまり新しい、流行の服装をしていない人を撮るんです」
いちばんたいへんそうなのは、ガラスの天窓に、コピー用のトナーで描いた木々や鳥の影絵でしょう。右の写真にも影がうつっています。
「なんだか結核で入院している人が病院の窓から見た風景みたいだね、ってだれかに言われました」
と苦笑していました。病院や学校の廊下を思わせる2色の壁や、天井へとのぼっていく外壁のはしごなどは、青山さんが幼少時すごしたという川崎市の工場地帯の風景が反映しているのかもしれません。
25日まで。月曜休み。
サイトウユキエ「ナカヨシ」=カフェエスキス(中央区北1西23)
筆者がこの喫茶店に出かけたのは、当サイトのTOPICSでも紹介していた「spMOVING!! & 水曜バー in PRAHA」というプロジェクトのため。
まずFree Space PRAHA(中央区南15西17)で、500円分のチケットをゲットし、お店に行くというもの。参加した7店のひとつがエスキスだったのです(店のリストは「過去のトピックス」参照)。
お店で500円払うのかなーと思ってたら、お金はいらないとのこと。えっ、そんなウソみたいなおいしい話があるの? でもお店の人がいらないというので、ありがたく珈琲を飲んできました。
で、展覧会のことですが、縦9センチ、横6.5センチというごく小さな額のなかに、鉛筆による子どもの落書きのようなシンプルなドローイングが書かれたもの27点が展示されていました。
或る意味でこの単純さはすごいと思いますが、あまりヴァリエーションはできないだろうなあ。
6月3日まで。
5月11日(日)
遠い旅・記憶のかけら 高橋シュウ銅板画展=丸井今井札幌本店(中央区南1西2)1条館8階美術工芸ギャラリー
北大卒で、埼玉県にアトリエのある版画家、高橋さん。昨年9月、カフェ・ルネで個展がありましたが、丸井今井では3年ぶりの個展です。1993年から5年ほど月刊誌「道新TODAY」の表紙絵を担当していたので、ご存知の方も多いと思います。
午後2時から版画の実演があるというので見に行きました。しかし、会場には数人しかいませんでした。貴重な機会なのにもったいない…。
紙をじゅうぶんに湿らすこと、プレス機のフェルトが硬くなったり砂粒が混じっていたりするだけで作品がうまく刷れないこと、コバルトブルーの絵の具も枚数を刷っているうちにインディゴっぽくなってしまうこと、銅版画は木版よりインクの乾きが遅いことなど、くわしく説明していました。ひゃー、こりゃあ、オレのようながさつな人間にはできそうもない、こまかい作業だぞ、と思いました。
茶色がかった和紙に、家の壁など白い部分のある作品は、ステンシル(型紙)をつかい、インクが紙の一部だけに刷られるようにしています。なるほど、これならたくさん版をつくらなくてもいいわけだ。でも、当然の話ですが、絵柄にあわせてあけた穴が1ミリでもずれたら大変です。
作品については、スケジュール表にも引用したご本人のメールを、ここでも引くのがいちばんわかりやすいでしょう。
作品のテーマと内容:時間の経過とともに風化してゆく記憶をテーマに、風化した石の中に時間をとじこめたように描いた多色刷り銅版画。 ヨーロッパの国々の建物シリーズ。クラシックな帆船、飛行機、機関車、楽器、植物などの博物誌シリーズ。草、花、鳥、などの和風シリーズ。抽象表現の現代美術シリーズなど
さて、ドイツやイタリアの町並みを題材にした作品がありますが、いわゆる風景画とはちょっとちがいます。
「ぼくの作品は、日記というより、標本なんですよ」
と高橋さん。
「だから、和風に見える(ススキや鳥、桜などをモティーフにした)作品も、じつはただ家のまわりを描写したもの。絵の中に、年表を織り込んだりしているんです」
今回の個展では、あまりありませんでしたが、抽象作品にも取り組んでいますし、インスタレーションを発表したこともあります。一度は見たいなーと思いました。
13日まで。
第3回佐渡谷安津雄油彩画展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
さどやさんは、函館在住、赤光社会員。第3回、というのは、札幌での個展の回数で、このほか地元・函館や東京などで活溌に作品を発表しています。
佐渡谷さんの絵は、函館やその近郊を題材にした風景画です。今回は油彩25点とリトグラフ10点をならべています。筆者には、どこか戦前の古い油絵のような独特の空気感があるように思えます。ちょっとくすんだ感じの色が、なつかしさをただよわせるのです。
「録園通り夏」などを、人気のない庭に、暑さと静けさが感じられます。
函館の隣町、七飯町から函館をのぞんだ「臥牛遠望」は、雲間から海にさす日光が神々しいです。
13日まで。
上のフロアでは、デッサン一筋の木下幾子さん主宰の「Kの会デッサン展」がひらかれています。
第5回母さんの道草写真展=札幌市資料館(中央区大通西13)
札幌の工藤瑠美子さんの写真展。毎年ひらかれていますが、ことしもキャプションいっさいなしです。潔いです。
花や鳥といったネイチャーフォトが24点。
シマリスが万歳をしている写真とか、白鳥が氷の上を一列になってあるいている写真は、ユーモラスで、かつ、めずらしいものだと思います。
18日まで。
以下、最終日になってしまった展覧会。
第9回さん美術会展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
風景画に定評のある道展のベテラン会員、越澤満さんの教室展。
さすがに17人とも具象画ばかりです。ひとり3-8点出品しています。
写実的な絵が多い中で、中村香都子さん「冬の丘」は、木々など対象をデフォルメしています。絵の具の重ね方にくふうが感じられました。
久光賢治さん「手稲山立秋の頃」は、遠景の手稲山の青みがかった灰色が絶妙です。
小林隆さん「惜別」は、張碓駅がモティーフ。この駅は、札幌と小樽の間の海沿いにあり海水浴客をはこんでいましたが、近年はすべての列車が通過し、駅としての使命を終えています。ただ、道路もないようなところなので解体工事は行われておらず、駅舎やプラットフォームなどはそのままです。
イメージ和紙絵画教室展=札幌市資料館(中央区大通西13)
失礼な言い方かもしれませんが、これは思わぬ拾いものでした。和紙ちぎり絵は「お稽古事」のイメージが強いですが、この作品展に出ている絵は、なかなかのもので、へたな油彩展よりも見ごたえがありました。沼田静子さんの桜の絵、山口友子さんの凍った川の風景など、情感がこもった佳作だと思います。
吉積すえ子水彩画展=同
ハイライトをうまくのこした処理など、どこかで見覚えが−と思っていたら、やはり国井しゅうめいさん(函館)の門下生です。ただし、セピア色だけを使った絵を描くなど、個性もあります。風景や静物など、達者なタッチです。
札幌在住。
5月10日(土)
'03国画会版画部札幌展記念版画集展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
全国規模の公募展はやまほどありますが、独立した版画部門をもっているところはそれほど多くありません。そのなかで、版画展(日本版画協会展)はべつにして、春にひらかれる春陽と国展の版画部は長い伝統と実績があります。
ただし、こと北海道にかんしていえば、北岡文雄さん、渋谷栄一さん、佐野志郎さんらゆかりの会員が大勢いる春陽会にくらべ、国展は、道展会員でもある木村多伎子さん(岩見沢)が孤軍奮闘という状態が長らくつづいていました。
ところが、この3、4年ほど、出品を志す人が道展出品者を中心に増え、ついに今年は三島英嗣さん(札幌)が「前田賞」を受けるまでになりました。「急に大所帯になってとまどってます」と木村さんが笑って言うほどです。
出品者は、このおふたりのほか、兼平浩一郎(上川管内美深町)、橘内美貴子(札幌)、内藤克人(北広島。道展会員)、竹田道代(札幌。全道展会友)、種村美穂(同。道展会員)、早川尚(同。道展会友)、宮口拓也(千歳)、吉田敏子(北広島。全道展会友)の計10人。
このうち、兼平、橘内、宮口といったあたりは、バリバリの若手で、これからの道内の版画をリードしていく作家です(と思う)。もっとも、宮口さんは大きいサイズのシルクスクリーンはすごく良いけれど、小さい画面だと構図などでまだのびる余地がありそうな気はします。
この10人の小品をあつめた版画集(70部)を、会場で展示し、1万円で販売しています。各1万円、ではなく、10枚で1万円ですから、これはお買い得です! デフレ時代の価格設定なんでしょうか。
なお、10月28日から11月2日、スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)で、本州の会員たちもまじえた国画会版画部札幌展記念展を開催するそうです。
「この季節は道展もあるし、銀座でグループ展もある。いそがしくて死にそう」
と言う三島さんですが、やっぱりうれしそうでした。
11日まで。
5月9日(金)
きのうの「風展」の文章を一部手直ししました。作品のタイトルをメモした紙が見つかったので、その要素を追記しています。
光と抒情の画家 富樫正雄展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
富樫は、小樽派の画家(1913−90年)。
ことしは、これをふくめ個展が3回もあり、ちかく共同文化社から画集も出版されます(1万円)。
なぜこのタイミングで富樫正雄再評価か?
と思う人もいらっしゃるでしょうが、じつは以前から、遺族が
「画家を知ってもらいたい」
と展覧会を希望していたのです。
昨年8月、13回忌を迎えるにあたり、関係者で会合をもったときは、会場などもぜんぜん決まっていなかったということですが、多くの協力者が現れ、このような回顧展に発展したとのことでした。
1913年(大正2年)に生まれ、東京美術学校(現東京芸大)に進学しますが、「官僚気質と肌が合わず」2年で中退。戦後は、日本美術会の創立に参加するとともに、一水会、北海道生活派美術集団などで活躍します。
展覧会で見るかぎり、画風は一水会風の穏当なリアリズム。
肖像画が多いのは、この画家がいろんな人から親しまれる人柄だったことをしめしているようです。
もっとも、意外なことに、風景画よりも肖像画のほうが、おおざっぱというか、筆跡がわかる描き方をしています。
所蔵先が、全動労札幌から、後志の書店主まできわめて多岐にわたるのも、今回の展覧会の特徴でしょう。
画家は、1959年に小樽から手稲町富丘(現札幌市手稲区富丘)に移住しました。
筆者の感慨は、なんといっても
「むかしの手稲にはこんなに緑があったのか」
ということです。
画像が小さくて見づらいですが、写真の右の絵「手稲の初夏」(65年)は、牧場を題材にしています。左奥から手前にかけて小川がながれ、柵の向こうには乳牛がいるのどかな風景は、手稲駅近くで描かれたものだということです。
ってことは、小川は軽川(がるがわ)か!?
コンスタブルの絵に出てきそうなこの小川は、いまコンクリート護岸で固められ、一部は高架道路の下を流れています。
この絵について、作者は
自分の住んでいる所を良く理解できないで、街頭のモチーフの作品を作っても人間の生活の芸術の発展はないのではないでしょうか。
という意味のことをいっています。
もっとも、長男の富樫耕さん(札幌交響楽団のヴァイオリニスト)は
「親父は、気に入らないものはけっこう絵から省いていました」
と回想します。
なお、会場に耕さんを描いた絵がありますが、これは確証がないとのこと。富樫さんの夫人が、国松登さんの妹で、何年か前に国松家から返してもらった絵の中にあり
「これはたぶん耕ちゃんだネ、などと話していたので」
という感じで同定したんだそうです。
全動労が所蔵していたという絵は、戦後すぐの48年に描かれた「狩勝のたたかい」(F60)。
道内屈指の難所・狩勝峠を越えようと、蒸気機関車の運転に奮闘する労働者の姿を、運転席に同乗させてもらって描いた絵です。
むかしの汽車は、石炭を釜に投げ入れるのが重労働でした。
また、同年の「あきよ」は、市立小樽美術館で見たなつかしい絵です。
11日まで。
8月5−10日、手稲アトリエ展(富丘2の7)が、10月25日から翌年2月1日まで市立小樽美術館での回顧展が開かれます。
「北海道・現代写真家たちの眼'03 彩(いろどり)」 七人の写真家による彩の流星群=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
このシリーズは、いろんな作風の写真家をピックアップして、特集している企画展です。
まず指摘しておきたいことがあります。
会場に、出品者のプロフィルを書いたパネルの横に、金子みすヾの詩だの新美南吉の言葉だのが引用されていますが、無意味であり、写真の鑑賞をさまたげるだけだと思います。
各作家と、これらの詩はまったく関係ありません。キュレーションをする人がこういうところにじぶんの趣味をもちこまないでほしい。
さて、7人ですが、
下河原正さん(上川管内東川町)…四季折々の利尻島をとらえています。山のふもとにかかる虹を望遠レンズでとらえた「虹」、初冬、山頂にはじめて雪をかむった利尻富士をうつした「初冠雪」、夕映えがうつくしい「漁火(沓形港)」など、ネイチャーフォトらしい作品がならびます。
高橋真澄さん(同上富良野町)…「写真集『光の旋律』などより」。上富良野や美瑛の丘にくっきりとうかぶ虹は美しいもの。サンピラーやダイヤモンドダストは北海道のきびしい冬をつたえます。
杣田美野里さん(宗谷管内礼文町)…「絵本図鑑北の国だより」などより。レブンアツモリソウなどめずらしい野草のほか、子供たちがあそぶ姿も。
藤倉孝幸さん(札幌)…カラーとモノクロが混在。岩石と羽根、石とにぼし、石とホオヅキといったぐあいに、石の横に静物(生物)をならべて、異種のものが同時にうつる効果を狙ったユニークな連作。
石崎幹男さん(同)…冬、スズメが何羽も雪の上にとまっている図。じつは合成です。せっかくの機会なのに、この手のトリッキーなかるい写真ばかりで、1998年の個展のような重量級の作品がないのはちょっと残念で、もったいない感じも。
基敦さん(上川管内鷹栖町)…「同窓の肖像」。98年に廃校になった北成小の卒業生たちを、同小の校舎を再利用したスタジオで撮ったシリーズ。老人の顔ってやっぱり味があっていいなあ、とは思うけど、途中に挿入されている抽象画のような何点かの写真の意図がよくわからない。
岡倉佐由美さん(札幌)…「現代美術」に活動の場を置いている彼女が、写真家としてエントリーされているのは、見る側もちょっと違和感あり。展示で目立っていたのは、写真ではなく、マネキンや活字ケース、脳や三日月などのかたちをしたオブジェなどによるインスタレーションでした。
11日まで。
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)は今週、7部屋すべてが借り手がことなるというめずらしい週。
佐藤洋子日本画展は、院展の院友、道展の会友の佐藤さん(札幌)の個展。
旭川の日本画家で院展に出品していた小浜亀角に師事していました。
女性像を正面からとらえた作品が多いです。「印度更紗を着た女」は、日本画の装飾性を生かした絵で、女性は裸婦。春の院展に出品しているやや小さい絵は着衣の女性が中心。輪郭線、陰翳のすくなさなど、いまの院展調だなという感じ。風景画もあります。
畠山定男とんぼ玉展。直径数センチの小さなガラス玉が400−500個はありそう。色彩も模様も透明度もバラエティーに富んでおり、見ていて飽きません。なかには、白い花が埋め込まれているように見えるものも。ビー玉とちがって球形ではなく、中央に穴が貫通しており、紐などがかんたんにとおせるようになっています。
作者は岩手県岩手郡松尾村在住。
ほかは、みずすまし会展は、日本画家で道展のベテラン川井坦さんの教室展。
第3回リラの会展は、道展会員で、上品でおだやかな人物画を得意とする鵜沼人士さん(札幌)の教室展。
渡辺あつ子初個展は、夕空などをおおまかなタッチで描いた油彩が中心。札幌在住。
R.おおた色えんぴつのせかいは、非常に薄い色合いで街角や静物を描いています。
いずれも10日まで。
伝統工芸新作展についてはあすにでも書きます。11日までなのでお見逃しなく!
「北海道抽象派作家協会」展のもようを、展覧会の紹介にようやくアップしました。■
5月8日(木)
6日ののこりと、7、8日に見た分をまとめて書きます。
風展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
札幌の実力派の日本画家、笹山峻弘さん、伴百合野さん、北山寛明さんによる第1回グループ展。
若手の北山さんは、すべて新作。意欲的なところをみせています。
写真の、まるいキャンバス6点からなる連作「水の境界」はいずれも、海の渦など、水のようすを描いたもの。
その左にある絵「解晶
も、水面にしずくが落ち、波紋が広がる一瞬を大きい画面でとらえています。
水の表情を詳細に描いていると同時に、ほとんど抽象画のようでもあるのが、おもしろいです。
火山の爆発を鳥瞰的に描いた「天の庭」という作品もありました。噴煙が上がり、カルデラから熔岩が流れ落ちています。これも、一見写実的でありながら、空想であるという点に、おもしろさを感じます(上からの視点で、大火山をながめることは不可能)。
伴さんはベテランです。道内在住の年長の女性日本画家は、大半が花鳥画などを手がけていた中で、日本画の可能性をひろげる作品にいどんできました。
写真の左側に見えている、十字架をおもわせる「鎮魂の構図−ゴルゴダV−」もそんな作品。三角形のキャンバス4点をくみあわせています。金具を貼り付けるなどのコラージュ技法を駆使し、アクリル絵の具なども併用しています。
「ほんとうは、垂直に立てて、キャンバスの間隔を25センチあけて展示するつもりだったんですが、天井が低くて、斜めにせざるを得なかったんです」
と、伴さん。
また「ピラミッドの追想」は、三角形の作品。白っぽい地のなかに、細い線で描かれた船や、遺跡? などが見え隠れしています。
3人展の言い出しっぺは笹山さんだそうです。
今回展示した、インド、チベットに取材した作品は、曼荼羅と風景を組み合わせ、はるかな時空の感覚をただよわせた力作ですが、どの絵も、前回の個展で見たことあるような気がするなあ。
道内では、全道展や新道展には日本画部門がないため、日本画を描く人の多くは道展に所属しています。
ただし、道展に出していない人で力のある作家も、もちろんいます。この3人はその代表的存在といえると思います。(ほかに、中央の公募展だけに出品している人も、少数ですが、います)
中尾雅義 水彩 テンペラ作品展=同
これまで、北2条ギャラリー(昨年閉廊)で個展をひらいてきたそうですが、筆者は見た記憶がありません。今回風景画などを見て、「コスモス」など、なかなかの技量に感服しました。
初心者がよくやることですが、油彩で輪郭線を強調して平坦に色を塗ると、子どもの絵のようになります。水彩では、陰翳をきっちりつけたうえで輪郭線をひくと、むしろ淡彩デッサンのようで、いきいきした画面になることが多いです。中尾さんは、輪郭線にたよるのではなく、木々の枝や草、電線など、細い線を画面内で有効に配して、画面をきっちり引き締め、軽快な感じを出しているようです。
いずれも11日まで。
鈴木昭個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
鈴木さんの絵は、モノクロームの世界です。ごく一部に、クレパスなどでわずかに色を補っているものもありますが。
画用紙(ワトソン)に墨で描き、白い部分は墨をひっかいて紙の地を出して表現します。それを何度も繰り返します。したがって、時には紙がやぶれることもあるそうです。白い絵の具などをくわえることはほとんどなく、塗り残しの部分もありません。
「かいたりけずったり、やりかたとしてはむしろ油絵にちかいんじゃないかと思ってます」
と鈴木さんは言います。
だから、おなじモノクロームでも、水墨画や文人画のようなさらりとした東洋的な画面ではなく、抵抗感というか重量感というか、独特の画面になるのです。
作品は、小品に人物画がありますが、半分以上は風景画です。
それも、大半は冬の風景です。
写真は「ふぶき」。ほかに、「丸加高原」や、木造家屋をメーンに描いた「雪が降る」などがあります。
「なんだか、冬以外は風景をかく気が起こらなくて」
そりゃ、冬の北海道(とくに日本海側)は、そもそもモノクロの世界だからなー。エゾマツやトドマツが濃い緑色をしているくらいで、ほかの木や、大地も空も海もモノクロです。
ただし、毎日1点ずつのスケッチはいまもつづけているそうです。個展にも、スケッチブックからとりはずしてきた滝川公園のスケッチなどがありました。技法は大作とおなじ、墨とスクラッチです。2000年に、滝川市自然美術史館でひらいた「1日1枚展」で6000枚を展示したあとも欠かさず、いまはおよそ7000枚。
「目標は1万点。それまではがんばります」
とお元気そうでした。
鈴木さんは滝川在住。全道展会友。
10日まで。
時計台ギャラリーの、B−G室はあす見ます。
神田日勝記念館で、帯広の池田緑さんに偶然お会いしました。
マスクをつかった現代美術に取り組んでいるだけに、昨今の新型肺炎の蔓延でマスク姿の人が急増していることに、おどろいているようです。
ことしは、東京と相模原(神奈川)でのグループ展に出品するそうです。
池田さんの作品は、昨年8月の「つれづれ日録」、および、「十勝日誌」(昨年の道立帯広美術館の個展)をごらんください。また、「てんぴょう」誌に書いた、2000年の札幌での個展についての拙文が、てんぴょうのウェブサイトでも読めます。
5月7日(水)
更新がおくれていますm(__)m 以下、6日に見た分です。
うつわ作家5人展=青玄洞(中央区南2西24)
青玄洞が、家具や陶芸をあつかう青楓舎の南側に移転オープン。青楓舎と同様、ふるい民家を生かした、すてきな建物です(なんかタウン誌ふうの文体だな)。
1階には、いろんな作家の茶碗や湯呑などがならび、食器やプレゼントなどをえらぶのにいいです。
ギャラリーは2階。オープン記念の5人展には、吉川千香子、蔦井乃理子、藤井敬之、野村亜矢、平川鐵雄の5氏が出品。
蔦井さん以外はよく知らないなー、と思っていたら、みなさん道外の方でした。
ゆかいなのが吉川さん。1948年小樽に生まれ、武蔵野美大の彫刻科を卒業後、74年に愛知県常滑に移り、陶芸活動をしているそうです。
ウサギなど動物があお向けになった形の皿「ひっくりかえる」や、とっての部分が山羊などの頭のかたちをしている「アニマルカップ」など、遊び心がいっぱいです。
蔦井さん(札幌)は、銀彩をもちいたうつわが多かったです。内側全体に塗ったものもあれば、さらっとあしらったうつわもあり、軽快な感じがします。
藤井さんは岐阜、野村さんは愛知、平川さんは茨城です。
9日まで。
北海道大学写真部・水産学部写真部 新歓合同展=遠友学舎(北区北18西7)
北大写真部というと、しずかなモノクロのイメージがあるんですが、今回はカラーもあります。函館にある水産学部の学生もふくめ、150点はあるようです。
ただし、やはり筆者の目に付いたのは、内省的なモノクロ作品でした。
原田玄輝さんは2点のみ。札幌の公園の中では景観が独特の、石山緑地と前田森林公園を、きっちりまとめています。
齊藤市輔さんは夜のタクシーをテーマにした写真をたくさん陳列しています。以前にも書きましたが、夜景もこの人の手になると、どこかさみしげで、でもそれがウェットな感じではない、独特の世界になります。
ほかにも、さまざまな石や、タバコを吸う老人を撮った田丸修さん、街路が直線的な札幌の町にたんたんとレンズを向けた安房貴子さん、古い博物館の内部などを題材にした宮本朋美さん、人物などをとらえた庭亜子さんなど、いずれも北大写真部らしさが感じられます。
大高小夜さんは、夜の街や、人気の少ないパチンコ屋などをとらえたセンスの良さを感じましたが、惜しむらくはフィルムにほこりが着いていて、せっかくのたしかな焼きを台なしにしています。次に期待したいところです。
9日まで。
地下鉄南北線の北18条駅から徒歩5分。駐車場(6台分)があります。ただし、エルムトンネルの入り口なので、東側(西5丁目通)から来て右折で入るのはむつかしいかもしれません。
第5回 大谷泰久・孝子染色展=工芸ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28)
旭川で染色工房「あとりえ草創(そうそう)」(旭岡2)をひらき、全国各地で展覧会をひらいている大谷夫妻。工芸ギャラリー愛海詩での展覧会は恒例です。
「さすがプロ」という感じの仕事ぶりです。
発色の明るい、色とりどりのシルクストール。
織の地紋と、色の微妙なぼかし、にじみ、うつろいが響きあっているネクタイ。
ざっくりと粗い布に北国の風土に題材を得たタピストリー。「霞」「渓流」「クレッセント」などがあります。
オーガンジーふうの布を染めたショールはふわふわです。
お菓子や湯飲みを敷くのによさそうなマットは900円から。ミズバショウ、羊の群れなど、四季折々の絵柄があり、たのしめます。
11日まで。
Atsuko 食いんしぼうの妖精展=SAGATIK(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階)
色鉛筆を駆使してかわいらしいイラストを描く札幌のあつこさん。
ポストカードの販売などにがんばっています。
今回の新作は、野菜や果物をテーマにした絵が中心。「スカイダイビングほうれんそう」「アスパラクライミング」「すいかカーニバル」など、いずれもちいさな妖精たちがおどっています。
また、額はほとんどが自作。ダンボールなどを使い、手づくり感があります。
11日まで。
作者のサイトはこちら。
SATSUKI それぞれのメッセージ=器のギャラリー中森(中央区北4西27)
吉兆窯(坂田眞理子)・納屋工房(佐藤倬甫)・浮浪工房(内海眞治)の3氏による陶芸展。それぞれに個性的です。
坂田さんはこの半年で、筆者の知る限り3度目の発表です。
黒と白のモノトーンのうつわが主体ですが、今回はしぶいモスグリーンをつかった皿などが目を引きます。
「これは織部(の釉薬)ですか」
「いや、マット系なの」
透明感があり、下の土の黒い色と響きあっています。
佐藤さんは砂川在住。土味をいかした大胆なうつわが多いようです。
藁灰のなかで焼いたという、焦げ目がおもしろい動物の置物もあります。ほかに版画などもありました。
「この2月から始めた木工にこっている」
と言うのが旭川の内海さん。
正方形の木枠(額)にセメントを流し込んで陶板を取り付けたものとか、木の椅子と陶を組み合わせた作品とか、既製品のガラスの置物などを配列したオブジェとか、じつにいろいろなものがあります。
一見、金属製に見えて、陶でできている人形もありました。
「木も陶もガラスもみんなおんなじだよねえ」
と内海さんはしみじみ話していました。
11日まで。
道内美術館の年間スケジュールに、神田日勝記念館などを追加しました。
5月5日(月)
戦没画学生「いのちの詩絵」展=鹿追町民ホール(十勝管内鹿追町東町3)
作家・窪島誠一郎さんが長野県上田市の郊外に1997年開設した「無言館」は、筆者はまだ行ったことがないけれど、先の大戦で戦歿した画学生の絵をあつめ、展示する施設です。
第二次世界大戦では、東京美術学校(いまの東京芸大)などからも、多くの学生や、卒業したばかりの若者が出征し、死んでいきました。
窪島さんはかつて、鹿追の神田日勝記念館に講演に来たこともあります。おそらくそんな縁で実現したと思われる今回の展覧会では、約30人の80点余りの絵(油彩、日本画、デッサン)が展示されているほか、彼らが入隊前や入営後に遺した多くの文章もパネルとしてならべられており、それを読むだけでも相当の時間がたってしまいます。
もちろん、画学生ですから、技術的にはまだ完成の域に達していないものが多いです。だが、そのことがかえって、未完のまま人生を終わらせてしまった彼らの無念と戦争の悲惨さをつよく物語っているといえそうです。
佐久間修の描いた妻の肖像を見ると、このわかい夫婦をおそった運命の酷薄さを思いますし、山之井龍朗・俊朗兄弟の合作を見ると、前途有為な兄弟二人までも戦争の犠牲になったということに対し、のこされた家族の無念さに思いをはせずにはおれません。
そして、もうひとつ筆者が思ったのは、彼らの死地についてです。日本国内(沖縄をふくむ)で死んだ者は3人ほどでした。あとは、中国やニューギニアなどです。当時の日本がどのような大義をかかげていたにせよ、外に出ていって戦争をしたという事実には変わりありません。それは、やはり現地の人にしてみれば、迷惑なことだったでしょう。また、彼らに殺された若者もいるのだな−というところまで想像すると、戦争のむごたらしさ、無意味さがよけいに感じられるようでした。
7日まで。
新世紀の顔・貌・KAO 30人の自画像−2003=神田日勝記念館(同)
企画は美術評論家、中野中さん。画壇、彫刻界で活躍中の中堅、ベテラン30人に自画像を1点ずつ出品してもらいました。ただし、道内在住の作家はひとりもいません。
同館の菅さんによると、1970年、独立展を見に行くよう詩人の宗左近さんに勧めたのは中野さんだそうです。宗さんがこの独立展で見た日勝の遺作「室内風景」を激賞したことが、日勝を全国区の画家にしたひとつの要因でしたから、鹿追にもゆかりのある人だということになります。
さて、30人というのは、阿部知暁、井上雅之、海老塚市太郎、小原義也、笠原幸生、加藤正嘉、木村圭吾、黒田邦裕、小澤基弘、佐々木憲章、佐々木良三、佐藤多持、佐藤照代、下田悌三郎、田井淳、玉川信一、長島美勝、畑中光享、日野宏紀、福島瑞穂、細野稔人、細谷玉江、町田泰宣、三浦泉、三木俊治、森脇正人、山田千代一の各氏です。彫刻が4点。絵は、6−8号クラスの小品です。
このうち、道内でもわりあいなじみの深い人といえば、福島さんと三木さんではないかと思います。福島さんは独立美術の会員としてパッションにあふれる絵を出品していますが、今回の「The
Red Cross」は、裸の自分の半身像で、胸の上に大きく赤いバツ印が描かれ、右上には赤く塗られた電球が点されている−という、なにか切迫感にみちた作品です。
三木さんは、道立旭川美術館のすぐ前に、「行列」という野外彫刻があるので、ご覧になった方も多いでしょう。1997年には札幌で個展も開いています。今回は、意外にも写真を出品。「2人の師とともにあるポートレート」という題で、右に、22歳のときの三木さんをモデルにした佐藤忠良さん作の首が、中央には、33歳の三木さんをモデルにした岩野勇三さん作の首、そして左に57歳の三木さんご本人がならんで写っているという、時の流れをふまえた「セルフポートレート」になっています。
おもしろいのは額で(これは図録でははぶかれています)、三木さん得意の行列がレリーフしてあります。
道内在住はいませんが、出身がふたりいました。不勉強にして知りませんでしたが。
ひとりは日野さん。二紀会の委員です。このひとのテラコッタ「私の風景」はユニークです。建物の壁が人の顔に見えるようになっているのです。
もうひとりは黒田さん。春陽の会員です。「自画像」は、ふつうの自画像です。こういう作品ばかりだと、なんだかエラソーな展覧会になるところでしたが、いわゆる自画像は半数ぐらいで、あとはゴリラの顔を描いたり、人の顔に見えないものを描いたりで、バラエティーに富んでいるのがおもしろかったです。
戯画的な処理をして、見せる画面にしていたのが二紀会委員の玉川信一さん。コメントがふるっています。
現代の絵画は、画面上に何が描かれていようと、すべて自画像である。特に私にとっては。
国展でいつもシャープな絵を発表している佐々木良三さん「生成」は、黒い線がなんだかよくわからない形を描いている向こうに自画像が浮かんでくるという図。小澤基弘さん「現象としての・私」は、黒い空間に白の縦横の線が走り、その中に顔の下半分が見える、内省的な絵でした。
8日まで。
5月3日(土)
きょうは、いろいろ見たなかで、書道の展覧会が良かったです。
北海道書道展については、いずれ稿を改めて書きたいと思います。
第44回札幌墨象会展=市民ギャラリー(中央区南2東6)
ことしもパワフルな作品があつまりました。
おなじ市民ギャラリーで開催中の「北海道書道展」と若干メンバーがダブっていますが、作品の大きさではこちらがはるかにでかいです。
佐藤放心さん「山と塔」は、金文ふうの「山」の右に、もうひとつ三角形が書かれ、さらにそのてっぺんからアンテナみたいに線が伸びているユニークな大作。
東志青邨さんは「○陀」「陀地」というふたつの作品をいっきに仕上げ、筆に勢いがあります。
三上山骨さんの「土」は、にかわか何かを淡墨にまぜたもので書いてます。紙の下半分が塗りつぶされ、その水平線(?)の上に丸っこい筆致が乗っかっている、前衛的な作品。
墨量の多い作品のそろった中で、寺島春代さん「一城花」は、それほど太くない筆で、文字の配列にも気を配った作品でした。
島田青丘さん、安藤小芳さんも、スケール感をただよわせる大作を展示しています。
4日まで。
関連テキスト ■01年
日本書芸社創立20周年記念 墨華展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)全館
ろうけつ染めをつかった書作品で知られる石川錦京さん(札幌。北海道書道展会員)の社中展。
67人が、多彩な作品を発表しています。
石川さんは
「酔へばすぐ 鰊来る唄 風に乗す」
という俳句を、まるみのある軽快な筆使いで書いています。
原田示峰さんは、陶淵明の詩にじっくり取り組んでいました。
4日まで。
北の漆器・女流2人展=千歳鶴 酒ミュージアム(中央区南3東5)
村上晴香さん(札幌)と堀内亜理子さん(旭川)の2人展。伝統的ななかにも、現代風なテイストを感じさせます。
村上さんの「プレート」は、螺鈿の使い方がとってもおしゃれ。堀内さんは、手鏡や、携帯電話のストラップがあります。
22日まで。
筆者が行ったときには、ちょうど「山本俊自ライブ」のリハーサル中。田村誠次館長のピアノとデュエットで、チック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」をノリノリで演奏していました。ブラヴォー! と言いたくなるごきげんな演奏でした。
5月2日(金)
七尾佳洋 器々展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
「飴釉練込楕円組鉢」が、いま上野の東京都美術館でひらかれている国展の奨励賞を受賞した七尾さん。1967年生まれ、いまは檜山管内厚沢部町に住んでいます。
飴釉の練込のうつわは、ここでも展示されています。まるで木目のような、ふしぎな景色をもっています。
灰釉の皿もあり、鈍い輝きとしぶさが魅力です。ほかに、土鍋などが人気のようです。
4日まで。
法邑美智子日本画展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
先週の北海道新聞(地方版)には「絵手紙展」とありましたが、どうしてどうして、なかなか本格的な日本画展とお見受けしました。
写実的な風景や静物の絵はもちろんですが、「風光る」といった作品には、手前に木を配して奥行き感を出すくふうがありますし、「浅春」は、裸木を薄紫で表現して、上方に銀箔を散らすなど、早春ならではの抒情をたたえています。
「オタモイ残雨」は、険しい崖をしっかりとデッサンしながらも、めりはりをつけたデフォルメで、剛直な画面づくりの意思を感じさせます。
札幌のベテラン画家、浅野天鐘さんの教室の生徒さんです。
4日まで。
麻賀進写真展 風景との出会い「幻想の木立」=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館)
カラー57点。撮影地、撮影データなどのキャプションはいっさいなく(まあ、明らかに大沼だというのもありますが)、ただ幻想的な木々の風景が広がるばかり。霧が出ていたり、薄暮だったりすることが多く、ピクチャレスクということばが似合います。
癒やされます。
7日まで。
God Scapes 熊野−神々の大地 石橋睦美写真展=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)
これまた美しい風景の数々。カラー30点。
さすが、ことしのキヤノンのカレンダーに採用されただけのことはあります。
広い河原。マンジュシャゲとキアゲハ。柱状摂理。杉林に降り注ぐ日光。滝。奇岩と、その向こうに晧晧と照る満月。毒々しいまでに赤いキノコ…。
なにか、スピリチュアルなものすら感じさせる写真です。
むつかしい桜の露出も、ベストではないでしょうか。
9日まで(土、日、祝日休み)。
第7回アート・リラ油彩展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
平山幹昌さんの教室展で、まいとし開かれています。
高木秀夫さんの「森への道」にひかれました。というか、どうして筆者がこの手の絵にひかれるのか、自分でもわからないのです。
6日まで。
5月1日(木)
休みだったので、これまで書いていなかった展覧会からふたつ。
新田志津男 ホクレン広報誌表紙絵 原画日本画展=ふうど館(小樽市堺町3)
昨年1年間、新田さんが描いてきた、ホクレン(道内の農協の経済団体)の広報紙の表紙の原画11枚(ぜんぶで12枚ありますが、1枚は個人蔵のため出品なし)を中心にした個展。
画風は、穏当な写実です。
四季折々の北海道を描いています。これが、いかにも北海道らしいんですよね。
2月の「斜陽」。雪をかぶった牧舎とサイロ。木の柵。落葉松の林の向こうに沈もうとする太陽…。まさに冷え切った厳冬期、という情景です。
また、夏の景色も、緑の色が明るい黄緑で、関西の寺社などを題材にした日本画の濃い緑とはぜんぜんちがいます。
題を順番に記すと
12月 「凍夜」
1月 「羊蹄新春」
2月 「斜陽」
3月 「山頂への道」
4月 「丘陵地浅春」
5月 「春爛漫」
6月 「初夏山嶺」
7月 「峠道」
8月 「深山流音」
9月 「秋渓」
10月 「惜秋」
11月 「残照」
「秋渓」は、作家のふるさとに近い、幾春別川の風景。黄色の葉の競演は、新田さんの得意とするところでしょう。
11月は空知平野の落日。赤ワイン色の夕空がきれいです。
ほかに、小品16点が展示されています。
8日まで。
9月8−27日には、岩見沢のギャラリーやま和でも開催(1西4)。
新田さんは札幌在住、新興美術院会員。
ところで、恥ずかしながら「ふうど館」というところに初めて入ったのですが、ここはあなどれません。
2階は陶芸ギャラリーになっており、道内の陶芸家のうつわなどが大量に展示即売されています。札幌の百貨店などでもあつかっているところはありますが、桁が違う充実ぶりです。
ほかに、輪島進一さんの絵や南正剛さんの陶による掛け時計なども展示されていました。
道外からの観光客が大勢押し寄せる場所で、道内の陶芸家の仕事を紹介しているホクレンの姿勢には敬意を表したいと思います。
北海道・Nature Photo Masters 第1回MPN滝川教室展 空知野点描=クリエイトフォトギャラリー(中央区南1西9 札幌トラストビル)
雨龍沼湿原の写真で知られる岡本洋典さんの教室展。14人が出品しています。
札幌に比べ、ゆたかな自然が残っているところなので、みなさんなかなかの作品を出品しています。
岡本さんは、暑寒別連峰を背景に平凡な農村の風景を撮影しています。左側の木の下に転がっている廃車なんぞは、ふつうならフレームから排除するところでしょうが、農村の現実ということであえて写したのでしょうか。
17日まで。3−5、10、11日は休み。