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展覧会の紹介
ひがし北海道:美の回廊 | 2003年4月4日−8月5日 道立帯広美術館(帯広市緑ヶ丘公園) |
筆者がここで指摘したいのは、展覧会タイトルのことだけといっても過言ではありません。 タイトルだけを見ると、漠然と、北海道の東、つまり道東地域の美術家の作品を集めて陳列しているのだなと思います。 しかし、実際にここで見られる11人はいずれも十勝ゆかりの人々です。釧路、網走、根室地方の関係者はひとりもいません。 この内容で「ひがし北海道」と称することは、かなり無理があるようです。 「十勝」と展覧会のタイトルにうたうことになにか支障があるのでしょうか。 道立釧路芸術館は毎年の所蔵品展ではっきりと、「釧路・根室の美術家」とうたっています。 であれば、帯広にある美術館が 「十勝の美術を紹介する」 と言ったところで、べつだんさしさわりはないのではありませんか。 ここでちょっとむつかしい問題がおきてきます。 網走地方の美術をどこで収集、研究するかということです。 もちろん、網走には網走市立美術館が、北見には北網圏北見文化センターがあります。 前者は居串佳一のコレクションで有名ですし、後者は北見の美術家を中心に毎年意欲的に展覧会をひらいています。 ただ、いずれも市の施設であり、道が、すっかりまかせてしまっていいものか−という問題はのこるようにおもわれます。 あるいは、筆者の知らないところでなんらかの予算措置を講じているのかもしれませんが。 さて、今回の展覧会で、作品を展示しているのはつぎの人たちです。 物故者が、伊藤隆二、神田日勝、小林満枝、武田伸一、寺島春雄、富谷道信、長尾栄三、能勢眞美。 十勝に生まれ現在札幌に移って活躍中なのが楢原武正と森健二。 現在も十勝在住なのは岡沼淳一ただひとりです。 神田日勝についてはいまさら説明するまでもないでしょう。今回は、彼が平原社展で初入選を果たした事実上のデビュー作「痩馬」(56年)と、あざやかな色彩をとりいれた67年の「画室D」「画室E」の計3点が展示されています。パワフルな画面は、展示室内でも圧倒的な力を持っており、あらためて彼の天才ぶりを感じさせます。 道展会員の能勢(1897−1982年)が胆振管内白老町生まれだということは知りませんでした。今回の「木々」(58年)「門のある風景」(62年)も緑の諧調豊かな風景画です。彼の作品は、帯広市内の北海道ホテルにたくさん常時陳列されています。 ほかの6人の作品は、道立近代美術館などで見た記憶はありません。 伊藤隆二(1904−71年)は、27年の十勝の公募展「平原社」創立メンバー。32年には道展初入選をはたしているとのことです。「裏門」(33年)「初秋」(35年)の2点。 武田伸一(1932−85年)は「凍土」(66年)。北方の風土を感じさせるはげしい絵です。 長尾栄三(1931−93年)は「山脈の見える風景」(77年)と「晩秋の高原」(79年)の2点。47年から平原社に出品を続け、道展会員にもなった画家で、2点とも穏当な画風の風景画です。 富谷道信(1935−84年)は抽象彫刻の分野ではまさに十勝の先駆者といえそうです。木のやわらかさが感じられる「アデラの記憶」(80年)を展示。また、企画展示室からロビーに戻る通路から見える中庭に「マントル対流」(76年)が置かれ、ガラス窓越しに見ることができます。 十勝の日本画家の走りである小林満枝(「水辺」77年)、結核と闘いながら抽象画にとりくんだ寺島春雄(「柵と人」57年)については以前述べましたので、そちらを参照してください。 楢原の「日の出」(75年)「子供」(76年)は、立体に取り組む前の時代の絵画です。絵の具をものすごい厚塗りに盛り上げ、激烈なタッチで描いており、神田日勝晩年の「馬と人」につうじるものがあります。開館して日も浅い時期に彼の個展をひらいている美術館のコレクションとしては、もうちょいなんとかならんのか、というか、近作を見たいという気がしないでもありません。 森健二は「光年のメロディーbR」(68年)「光年の導「道」」(83年)。宇宙的なひろがりのある抽象画ですが、スケールの大きさと深さにおいてはやはり近作のほうがはるかにまさっているようにおもわれました。 さて、岡沼淳一は「溯行」(86年)と「MONSOON」(88年)。前者はめずらしいブロンズ製。後者は例の埋もれ木で、円と不定形とを組み合わせた、洗練されてスケール感のある作品です。 |
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関連テキスト ■小林満枝展(2002年夏。百年記念館) ■寺島春雄展(同年秋。道立帯広美術館) ■遠藤ミマン・岡沼淳一二人展(同年10月。札幌時計台ギャラリー)画像あり ■北の彫刻展(同年秋。岡沼が出品。札幌彫刻美術館) ■楢原武正個展(2001年) |
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