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あーとだいありー 2003年10月前半

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 10月14、15日(水、木)

 まず、終わってしまった展覧会から。

 北の写真家集団・DANNP写真展「北の貌」富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A
 前半の見に行ったのですが、書き落としていました。すいません。
 DANNP(ダンプ)は、雨竜沼湿原の写真で知られる写真家の岡本洋典さんを中心に結成したネイチャーフォトのグループ。今回はじめて知りましたが、
 Document and Appeal of Northern Nature by Photograph
の略なんだそうです。
 前半は、山本隆さん(砂川)「森に佇む」、小野寺由紀さん(江別)「エゾリス」の二人展。
 山本さんの写真では、超広角レンズで下から見上げるように撮影したものが印象的でした。「じぶんは森につつまれている」という安心感があるんですよね。
 小野寺さんはラブリー系です。森の中をちょこちょこと走り回るリスがとてもかわいらしかった。ほとんど超望遠をつかっているのは当然ですが、ひくい位置のカメラを、枝の上から
「やあ」
っていう感じで見下ろして、カメラ目線になっているものもありました。
 後半は、出口大芳(滝川)、西田俊明(同)、中島浩之(網走)、横田雅博(滝川)の4氏による展覧会でした。

 写真展、もうひとつ。

 「feel」 江口善通写真展=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル 地図A
 全紙大などの大型カラー作品22点。
 「Maple Leaves」「Still Life」などと英語の題がつけられた作品は、フィルターやピントのずれなどを利用して近接撮影した花や、長時間露光した風景などを撮った幻想的なもので、なにが被写体なのかすぐにはわからないようになっています。
 一種の心象風景といえそうです。
 なんだか、ニューエイジミュージックのCDジャケットに似あいそう。
 この手の写真が好きな方はぜひどうぞ。
 17日まで。
 仙台(11月4日−14日、福岡(12月1−12日)、名古屋(1月5−16日)、大阪梅田(1月29日−2月4日)の各キヤノンサロンを巡回。

 伏木田光夫油絵個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 ことしもABCの3室を借り切り、油彩80点あまり、デッサン数点を陳列する精力的な仕事ぶりです。以前は入院、手術などもあったのに、こんな個展を30年もつづけているのですから、ほんとうに頭が下がります。以前、ご本人に聞いたら
「ピカソや葛飾北斎は生涯数万点。べつにぼくがとくに多いわけではないよ」
とおっしゃっていましたが…。

 ことしの陳列の特徴は
「意図的にやってみた」
とご本人のお話しのとおり、似たような作品がならんでいること。たとえば、ラヴェルの曲名にヒントを得たとおぼしき、動物の頭骨を描いた静物画「死せる王女のための」は、おなじ題のものが4点、A室の正面にならんでいます。
 変な言い方かもしれませんが、これは作者の、いい意味での「しつこさ」がわかる陳列になっています。
 「きりがないんだよね。これをここに置いたら、空間がどう変わって、こんどはここに置いてみようとか…」
 あるいは、B室の左手の壁には風景画ばかりが掛けられ、しかも幌平橋駅附近の風景がたくさんあります。
 多くの画家は、このあたりに緑なすポプラの木々を画面に描くのですが、伏木田さんは早春にスケッチしたためか、緑の繁茂にあまり興味がないようで、枝のかたちとか配置に関心を集中させているようです。
 この画家をめぐる言説はともすれば人生的なそれからはじまってしまいがちですが、まずは造型主義的な画家なんだなという、あたりまえのことを、再確認しました。

 とはいえ、やはり伏木田さんの絵には、わたしたちの「生」と、わたしたちをとりまく「自然」とを見てしまうんだなあ。それはむりもないことだと思います。
伏木田光夫「浜辺のダンス」 たとえば「浜辺のダンス」。裸の、男女の別もさだかでない人間たちが、ばら色の海岸で、手を取り合ってゆるやかにダンスをおどっています。
 もう、題材的には、フリードリヒ、ムンクとつづく、北方ロマン派以外のなにものでもありませんね(ローゼンブラム著「近代絵画と北方ロマン主義の伝統」参照)。
 ただ、一昨年のおなじ題材の絵にくらべると、さらに色づかいははでになっているようです。
 この絵を見ていると、有限の人生を、おどりながら、あるいは、さけびながら過ごす人間というものについて、考えさせられます。
 このとなりには、ことしの全道展出品作「漁師(ペトロ)の家」がならんでいます。
 ひし形に人間を配置しているのは伏木田さんの絵のひとつのパタンですが、灰色を基調にしており、人物の頭部にはハロー(後光)を配し、宗教的で、荘厳な調子すら帯びています。

 昨年は、花を題材にした静物画などに、意外なほどすなおな写実が多く
「自然はそのままでも美しいということに気がついたんだよ」
と話していた画家ですが、ことしはそのような絵は影をひそめ、一昨年までのように、はやい筆つかいでモティーフをとらえた作品ばかりになっています。
 一方で、裸婦像や静物画などで、なにもないはずの背後に線を描きいれて、空間をかたちづくっていく或る種の豪腕さはすこしうすれてきているような気もします。あるいは、昨年の「リアリズム回帰」と通底する現象なのかもしれませんが。

 札幌在住、全道展会員。
 18日まで。
 ■02年の個展

 高橋英生展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1 地図A
 1階は、「野の花」のシリーズが中心で、油彩のほかに版画もあり、2階は、なつかしいパリの街角を描いたシリーズという陳列になっています。といっても、新作もあるようです。
 以前にも書いたかもしれませんが、エイセイさんの絵は、一見写実の通俗的な絵に見える人もいるかもしれませんが、20世紀の美術の冒険が踏まえられた絵であるということを強調しておきたいと思います(べつに作者にたのまれたわけじゃないけど)。
 「野の花」シリーズにしても、そう名づけられているからそう見えるのであって、もし「緑と白の飛沫」という題だったら、抽象画ですよね。透視図法にたよることなく、ほとんど色の配置だけで風景を構成するとどうなるのか−という、ひとつの実験でもあるのだと、筆者は思っています。
 パリの絵も、じっさいの風景というよりは、一種の心象風景なのでしょう。
 その証拠に(?)、モンマルトルの街角にしても、人物がほとんど描きいれられていません。
 でも、同時に、はかなげで、いいんですよね。名もない路傍の花。名もない風景。こういったものに心ひかれます。

 以前から話のあった、故郷・稚内への移住計画ですが、いよいよ今月中に実現のはこびとなりそうです。
 林さんによると、上勇知地区に離農した農家の家を見つけ、改造するのだそうです。先日、わざわざ稚内の市長が札幌のアトリエに足を運び、移転を歓迎したとか。
 地図で見ると、稚内の市街地から10キロ以上も離れた、豊富町との境界ちかくです。
 70歳になって転居するというのは、すごいですね。はやくもあたらしいことへのチャレンジにおっくうになっている筆者としては見習わなくては−と思いました。
 これでしばらく見納め−。でも、石の蔵ぎゃらりぃ はやしでの個展は来年以降もひらくそうです。
 19日まで。

 展覧会の紹介に「北海道の水彩画」(三岸好太郎美術館。−26日)を追加しました。
 とくに水彩画に興味のある人以外には、それほどおすすめ、という展覧会でもないな。ひとことで言って、美術館の展覧会としては「ぬるい」絵が多いです。

 10月13日(月)

 ギャラリーまわりはなし。
 アジアプリントアドベンチャーの「展覧会の紹介」をようやくアップしました。リンクも、5件ほど追加しました。
 10月12日(日)

 武田響陶展=美しが丘アートギャラリー(清田区美しが丘2の1)
 フラスコを変形させたような、首の細い、ユニークなかたちの花器がならんでいます。
 個展のサブタイトルにもなっている「記憶の花」は、正方形の陶片を組み合わせた置物。4歳の息子が
「パズルみたいだね」。
 ほかに、背もたれが三日月形になった椅子などもありました。
 札幌在住。
 13日まで。
 10月10日(金)11日(土)

 3日分につき、大量にあります。
 なるべく簡潔にいきたいと思います。

 いちばんはじめは、たのしいのから。

 イトウヒロミ展「庵でぴよぴよ自生」=茶室月菴(中央区南3西26の2の24)
イトウヒロミ展の会場風景 左の写真を見ると、日本的な情緒の世界かと思いますが、じつはかなり笑える個展です。
 東京での個展ですでに発表していて、札幌では未発表の立体と写真が展示してあります。
 写真の右手前は「スポンジアイス」。台所で使うアイスに木の棒を付けただけの、瞬間芸みたいな作品ですが(^_^;)、たしかにアイスキャンディーに似ています。
 左は「ぽかぽか日和」。茶柱が立ちすぎて、茶碗の蓋を押し上げているというものです。
 右奥は暗くて写っていませんが、もともと月菴にあった火鉢に、日の丸弁当のミニチュアをつきさした「秋桜」。
 左奥は、キングギドラみたいな怪獣の影が灯篭のようにうつる「鶴の恩返し」です。
 「まずじぶんがおもしろくないと、作ってもしかたないので」
と淡々と語るイトウさんですが、はっきり言って、かなりおもしろいです。なかなかいない、貴重なキャラクターだと思います。
 13日まで。

 月菴は、車1台なら止めれそう。
 地下鉄なら、東西線の円山公園駅を下り、メルパルクの横の「旧界川遊歩道」をてくてくあるいて、二つ目の角(裏参道の次の道)を右折し、30メートルほど行くと、右手に「茶房森彦」、左手のちょっとひっこんだところに「月菴」が見えてきます。
 地図Cの「森彦(離れ)」です。

 つづいて、会期終了間近のもの。

  第20回北海道テキスタイル協会作品展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 道展会員の西村久子さん、戸村恵美子さんら、道内の染色作家が多数出品する展覧会で、毎年ひらかれています。
 なんといっても種類の豊富なのが特徴で、絣、ろうけつ、枝をあしらったもの、古紙を入れて編みこんだもの、マフラー、タペストリー、ネクタイ、ジャケットなど、とにかくいろいろなものがあります。

 第18回グループ自分の絵=同
 油彩、水彩など、アマチュアの自由な集まり。佐藤信明さんの裸婦デッサン、近藤武義・幸子さんの水彩の風景画などは、あいかわらずみごと。

 鷲平真寿水彩画展(第2回) 『絵は我が心の詩』=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 小樽商大OBでつくる「丘美会」のアマチュア画家で、水彩の国内外の風景を中心に約40点がならびます。会社の社長をしりぞいて、会長になり、存分に筆をふるっており、腕はかなりのものだと思います(すくなくとも、案内状から想像してたのよりはるかにうまい)。
 一見したところ、国井しゅうめいさん的なのですが、絵は独学とのこと。たしかに、八紘学園(札幌・豊平区)のアヤメ群落などは、手前の花など一本一本ていねいで、わりあいラフで手早い筆つかいが特徴の国井さんとはちょっとことなります。
 また、鉛筆で下書きをせず、いきなり描き始めているので、鉛筆の跡がないぶん画面はきれいです。

 菊地輝子七宝焼作品展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 北海道七宝作家協会員の初個展。
 小品が多いですが、色使いはさすがに複雑で熟練しています。アクセサリーなども多数あります。

 金婚記念 上高信夫・和子歩み展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 書の展覧会でした。臨書と近代詩文が中心で、生徒さんの作品もあります。
 ほかに、絵手紙、写真、水墨画。

 以上、12日まで。

 札幌市資料館は、変則日程で、13日まで。いつもの週よりは見ごたえがあります。

 創土会−素象人形展−=札幌市資料館(中央区大通西13)
 元道展会員の故・小林止良於さんのながれを汲むグループ展だと思われます。先日、札幌時計台ギャラリーで初個展をひらいた浅井富士子さん、道展の常連の堀江登美子さん、それに、岡部節子さん、穴沢美加子さん、屋中厚子さんの計5人が出品しています。
 特徴は、「素象」をうたっているせいか、ほとんど着彩がないこと。したがって、大きさはたしかに人形なのですが、かたちだけで勝負のため、受ける印象は彫刻に非常に似ています。
 堀江さんの「朧情」など、二人の女性がモティーフなのですが、ごくおおまかにかたちをとらえています。
 もうひとつ興味深かったのは、現代の若者を、美化するのでもなく見下すのでもなく、ありのままにとらえて造型化した作品が多かったこと。屋中さんの「希う」、浅井さんの「爽風」、ボーカリストが題材の岡部さん「LIVE」など、きもちのよい作品でした。穴沢さんの「静寂」は、柔道着を着て正座している女性というユニークな題材ですが、これも若い人かなあ。

 書花三人展=同
 立石桂華さんと栗田玉芳さんの書と、信行美雅さんの青山御流の花による三人展。
 ふたりの書は、近代詩文というジャンルになるのだと思いますが、「うまい書」をめざすのではなく「気持ちの入った書」を書こうとしているのだということがつたわってきて、好感が持てました。立石さんのホイットマンにしろ、原田さんの蘇東玻にしろ、好きでえらんで書いているという感じがします。

 第6回サークル防風林水彩展=同
 またまた森木偉雄さんが講師を務める水彩グループ展。14人が出品。
 田中芳明さんの人物画の目、久野省司さんの「紫陽花」などが印象に残りました。


 第29回グループパステル展=同
 道展会員の秋田武蔵さんが講師を勤めるグループ展。
 工藤基さんの風景画が、パステルとは思えないほど厚塗りで、山の存在感を表現していました。

 アール木彫同好会展=同
 洋服掛け、手鏡、ティッシュペーパー入れ、写真たてなど、日常的につかうものを中心に、ひまわりの文様を浮き彫りにしたり、ふくろうをかたどったりして、作品化しています。すごくたくさんあります。
 正直なところ、すごい作品があるわけではありませんが、すごくたのしんでつくっているというきもちはつたわってきます。
 そして、むつかしい現代美術とか、造形主義的な絵画なんかよりも、こういうありふれた「日常用具」のほうが、わたしたちのくらしをゆたかにしてくれるのではないかという気がします。
 出品作の中に、故・伊藤隆一さん(道教大名誉教授)の意匠を借りたものが何点かあり、在りし日のスナップも飾られていました。「本職」は漆芸作家でありながら、デザインや国際交流など多くの分野に功績のあった伊藤さんは、木工の入門書も書いています。大上段に構えた芸術よりも、日常をいきいきと、ゆたかにさせるささやかなもの、しかも北海道の風土にねざしたものを愛した人でした。彼を北海道の美術史に位置づけるこころみはいまだなされてはいませんが、精神はひきつがれているのだなと感じることができました。

 4人展=MOIWA三荘(南区北の沢1819の160)
 佐藤勝芳(陶工房微笑)、桐生明子(陶工房桐生)、毛利史長(むろらん高砂窯)、朝野顕子(アトリエ土−夢)の4氏が出品。いずれも、皿などの生活雑器です。
 佐藤さんは、リアルな絵画のような絵付けが特徴。モティーフは魚群など。
 毛利さんは抽象的な文様が味を出しています。
 桐生さん、朝野さんも、あまり主張をしない、さりげなく食卓でつかえる器が多いと思いました。
 13日まで。

 「三荘」となっているのは、ジンギスカン店など三つのお店の集合体だからで、4人の作品は、喫茶店の中にならんでいます。
 地下鉄南北線真駒内駅からじょうてつバス「藻岩山手線」で、終点「道路管理事務所前」下車、徒歩2分。1時間に2本くらいしかないです。
 おなじく真駒内駅からじょうてつバス「北の沢線」で「北の沢小学校前」で下りても10分弱で行けます。
 駐車場あり。

 第16回アトリエせせらき展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 油彩と水彩のグループ展。
 小堀清純さんは「ランプのある静物」など3点。水彩ですが、しっかりとした塗りで、質感を出しています。
 森明さんは「然別湖」「十勝の秋」の油彩2点。おだやかな写実ですが、色のメリハリが効いています。
 川村正男さん(白日会会員)は、濁りのない写実の風景を描いた油彩「アムステルダム」「白い林(中札内)」のほか、めずらしく水彩の大作を出品しています。
 ほかに、高橋芳夫、宮崎君子、新井田小夜子、渡部弘子、内田富三の各氏が出品。
 14日まで。

 日本を代表する鉄の彫刻家の若林奮さんが亡くなりました。67歳でした。
 晩年は、東京都日の出町のごみ処分場建設反対運動へのコミットでも知られました。
 中原悌二郎賞優秀賞も受賞しています(したがって、旭川市彫刻美術館に所蔵品があります。いま、タイトルがわかりません。申し訳ありません)。
 芸術の森美術館には「「所有 雰囲気 振動」の為のマケット1」など2点があります。
 ヴェネチアビエンナーレに2回出品、神奈川県立近代美術館や、東京、京都の国立美術館で個展をひらいている、まさに現代を代表する彫刻家でした。ご冥福をお祈りいたします。
 10月9日(木)

 本城義雄油絵展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 古びた静物を、静的な構図で描く本城さんの、札幌では3年半ぶりとなる個展。
 そのリアルな筆致には定評があります。あるいは、実際人間の目で見るよりも明暗が強調されてしまう写真にくらべて、掛け時計や消火器や木の椅子やレンガの壁や薬の瓶などの「もの」ひとつひとつが、たしかな存在感をもってそこにある−という感じすらしてきます。ただのフォトリアリズムとは一線を劃(かく)しているのです。
 本城さんの歌志内のアトリエにおじゃましたことがありますが、「大正館」という2階建ての蔵になっていて、古い物がどっさりと置いてあります。その数は10000点を超え、全体が資料館のようなありさまです。
 歌志内はかつて炭鉱で栄えたマチですが、いまは人口7000人の日本一小さな市です。建物のとりこわしも多く、そのたびにいろいろなものを運び込んだり、ゆずってもらったりしたそうです。
 最近も、炭鉱幹部のりっぱな住宅がとりこわしになったそうで
「歌志内の人は古いものをのこそうとしない。もうすこしのこしておけば、観光資源になったのに」
と惜しんでいました。
 今回は、全道展出品作「蔵にて『眠れる人形』」などのほか、近傍・江部乙(滝川)の田園風景などの小品もかなりありました。また、版画や裸婦デッサンも展示されています。
 国展準会員、全道展会員。

 大島龍木版画展「帰還」=同
 大島龍「帰還」およそ2.4×5.4メートルにおよぶ青一色の木版画「帰還」が圧巻です。
 写真もアップしておきますが、その微妙な色合いは、とうてい表せるものではありません。
 バーネット・ニューマンのような平坦な塗りではなく、6版を10回重ねたという、気の遠くなるような作業の末に生まれた、微妙な画面です。青の上に青がかさなり、版にきざまれたストロークが縦横に走り…。
 そういう、深くて、見ていると吸い込まれそうな、でも色合いはやや薄い、青の世界なのです。
 走る線は、一見でたらめのようでいて、きちんと計算されています。どれもデッサンを経て刻まれています。
 和紙は、鹿の子50%、みつまた50%の特注品。作品は、9枚からなりますが、1枚につき、ばけつ3分の2の絵の具(日本画用)のものを使うそうです。
 この青には、ピレネー山脈(フランス・スペイン国境)で作者が見た空、あるいは、ヒマラヤやインドで見た青空の残響があるのでしょう。そして、タイトルのとおり、北海道の空も。
 ほかに「大地交響」など30点。こちらは、こうぞの和紙(もちろん特注)なので、やや絵の具を吸い込み、青も重たい感じになっています。
「雲のすきまから太陽が一筋の光になって海面を照らしたりするでしょ。あのときの、光があたっている海の部分をはぎとってきたというつもりなんだ」
と、深い青や藍について話す大島さんです。
 石狩在住。

 第14回友彩会展=同
 金山当子さん「街も花も風も」は、桜の花びらが画面に散るユニークな半抽象画。

 奥山幸子水彩展〜視感する風景〜=同
 登別生まれ、札幌育ちで、現在は横浜在住の奥山さん(旺現会会員)の、道内初個展。3階の4室をつかっています。
 作品はほとんど、植物を描いた水彩。G室の小品に、風景などがありますが。
 変形200号をふたつつらねた「忘れられた刻、ところ」をはじめ、200号「想い」など、いずれも繁茂する植物がモティーフ。壁面を埋め尽くす作品を見ていると、じぶんがまるで植物の中にいるようで、あの湿り気や温気すらつたわってくるようです。
 リアルな画風がボタニカルアートと一見似ていますが、植物をそのまま描くのではなく、けっこう大胆に筆を走らせています。いずれも、実在の風景ではなく、空想でくみたてた光景のようです。

 いずれも11日まで。

 西城民治個展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)
 案内状には「インスタレーション」とあったが、なんだかホームレスの住まいみたいだった。段ボールや樹脂の板が床に敷かれ、古びた自転車や長靴、ラジオなどが配置されている。
 11日まで。

(以下翌日)

 10月8日(水)

 北浦晃 自選による版画100選=美唄市民会館(美唄市西4南1)
 筆者は、近年のわりあいおだやかな風景画しか知らないものですから、このような多彩な画風の版画を作っていらしたことを(すこしは知っていましたが)、あまり知らず、おどろきの展覧会でした。
 北浦さんは1936年栃木県生まれ。39年に赤平、41年に美唄に移り住みました。北海道学芸大(現道教大)を卒業後、67年に室蘭に移るまで美唄中学校の教壇に立ちました。
 パンフレットにはつぎのように書いています。
美唄市教育委員会の主催で今年は版画の回顧展をすることになり、すでに市に収蔵されている30点に加え、70点を自選して「版画100選」と名付けていただきました。
木版画をしていた初期の頃は、展覧会に出品した作品でも2〜3枚しか刷っていないものが多く、手元からはなくなっているのですが、今回は他所からお借りするといったことはせず、アトリエの隅を発掘して出てきた出土品の中から選びましたので、小さなものが多くなりました。友人の結婚式のお祝いや子供の誕生や入学の内祝といったプライベートなものや、本の装丁、新聞のカットなど依頼されて作ったものもあり、その時々のことを思い出して個人的には面白いコレクションができたと思っているのですが、ご覧になる方にはいかがでしょうか。雑多な印象が強いかもしれません。
学生時代に「版画」の授業でつくった作品も今回いれてありますが、当時から版画に興味をもっていて、今日までずっと油絵と併行して制作してきています。’58年から’70年にかけて全道展や個展で版画を発表していた時期にも、アトリエでは油彩の仕事も続けていました。いわゆる「版画家」になるつもりはなくて、自分の絵画を展開させていくために、まったく工程の異なるふたつの制作方法が必要だったということだと思います。
 ざっと見ると、おおむね4つの時期にわけられるように感じました。
 まず、学生時代から美唄にいたころ(1957−67年)。
 太い縞模様を大胆に使った人間などの木版画。パンフレットの表紙につかわれた「凝視」(60年)など、パワーがあります。
 「墓標」(64年)は、横たわる男の周りに西洋の巨匠画家の名前が記されているのですが、マティスやヴィンセントはともかく、シャガールはまだ存命だったはず。既存の美術なんぞ埋葬してしまえ、ということなのかな。
 「美唄市立病院」(63年)「冬のポプラ」(67年)といった、穏当な写実による作品もあります。
 室蘭に移ってからの1968−70年は、この3年間だけで23点が展示され、サイズもいちばん大きいです。
 目つきの鋭い女性がなにごとかを叫び、そのまわりに波模様などがうねっている図柄がめだちます。学生運動の激化など、揺れる時代を反映しているのでしょうか。「番号人間」(68年)「もうなにも見えない」(70年)といった作品に、とりわけ、人間疎外への怒りのような感情がこめられているようです。
 その後、71年には1点もなく、72−78年は、プライベートな作品や、1色の風景が多くなります。これまでの作品がほとんど複数の版をつかっていることを思うと、しずかな印象です。作品サイズも小さくなっています。「壊れかかった家」は、室蘭生まれの作家八木義徳の小説本の装丁でしょうか。
 79−82年、84−85年も空白で、寺山修司の肖像をフィーチャーした83年の「田園に死す」以降は、銅版画になり、それをうけて緻密でリアルな画風になります。
 「少女のピエロ」(89年)は、思春期の揺れる思いを、ひざを抱えてすわる少女像に描いた佳品。
 90年代になってからの「日勝峠」(92年)などは、当時の油彩とおなじく、枯れ木の配置だけで画面を構成しようという試みのようです。
 最新作は、2003年の「大千軒岳へ行く道」で、これも油彩と同様、山をモティーフにしています。
 一見、何の変哲もない、明るく澄んだ風景画に見えますが、作者の胸の底にある、はるかなものへのあこがれを感じるのは、筆者だけでしょうか。
 文化女子大室蘭短大の教授。新作家美術協会委員。
 13日まで。
 会場は美唄駅から徒歩10分。

 関連テキスト:■8月の北浦さんの個展

 十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地十勝千年の森
(清水町羽帯南10線)
 会場の「十勝千年の森」は、農業生産法人「ランタン・ファーム」が農業と森づくりにとりくんでいる、200ヘクタールの広大な敷地です。
石に聴く その中で、十勝在住の4人が作品を設置、ひとりがパフォーマンスをおこないました(8月31日)。
 まずは、ニューヨーク留学や、本州でのグループ展など、近年めざましい活動を見せている池田緑さん。
 芝生の中の岩にジーンズをまきつけているのが「石を聴く」。
 ジーンズは池田さんが1990年代によくもちいていた素材で、ひさびさの登場です。
 つぎの写真は「マスクツリー/Mask Tree」。
 SARS(サーズ、新型肺炎)の大流行で、ことしはやたらとニュース映像などでお目にかかることの多かったマスクですが、もともと池田さんはマスクをインスタレーションや版画の素材にもちいており、木などに長い年月かけておいて、大気の汚染を表象させる−といった使いかたをしています。
マスクツリー パンフレットには、こうあります。
新型肺炎の発生、イラク戦争の勃発、自爆テロ……いまここにきて、世界的に命の源としての呼吸の大切さが見直されている。きれいな酸素の重要性をいま一度確かめあい、人間が人間の呼吸を停止に至らしめるおぞましい戦争行為なども含め、呼吸にとっての不健全な環境を排除し、未来に向けてできるだけ快適な環境を保持し続けていくこと。そうした意思の表示を、国境を越えて大人も子供もその使用目的は周知の医療用マスクに託して表現したい。
なお、マスクツリーという命名はクリスマスツリーからきており、人間の英知と良心の象徴であるマスクをたくさん枝に吊りさげた希望の木という意味あいを持っている。
 関連ファイル:■02年、道立帯広美術館での個展
 個展のさいに設置された、美術館の前のマスクツリー
 ■02年の「とかち環境アート」
 なお、「てんぴょう」のサイトに、筆者が書いた「池田緑展」の評が掲載されています。

 ほかの作品の写真もアップしておきました。
 まず、入口にある高橋英双「phe nom enon」と、芝生の中に設置された佐野まさの「呼吸のためのプロジェクト 酸素に触れる」。
 円形の遺跡のようですが、バクテリアの培養でもしているのでしょうか。
    

 つづいて、鈴木隆「赤い馬」。
 展望台の上にあります。マスクツリーから坂道をえっちらおっちらのぼって筆者の足で8分。
 マスクツリーのあたりからだと、逆光の中にシルエットがうつくしく見えました。なんだか、神々しさすら感じました。
鈴木隆「赤い馬」 ちかづくと、わりと即物的というか、そのまんま馬やないけ〜って感じですね。
 展望台というだけあって、十勝の大平原が雄大にひろがって望めます。
 以上の作品の位置関係を文章で説明するのはむつかしいので、十勝千年の森の入口のマンサードハウスで、パンフレットの地図を見ると良いでしょう。

 なお、パンフレットなどにはしるされていませんが、マンサードハウスを出たところにあるサイロの内部に、インゴ・ギュンター作「時折、形を成す中小210の断片」が設置されています。
 昨年のデメーテルで発表していた作品によく似ています。
 池田さんの発表は19日まで。

 十勝千年の森は、札幌から車で3時間半。
 十勝管内清水町の市街地を過ぎ、羽帯の集落の信号から右折、点滅信号のある交叉点を直進し、あとは看板にしたがってすすむと着きます。
 羽帯の信号はひとつしかありませんので、「御影」の看板が出てきたら、それはすでに行きすぎです。戻ってください。

 10月6日(月)

 全道展企画・第58回展受賞者展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 昨年までは全道展の最高賞にあたる「協会賞」の受賞者が個展をひらくというスタイルをとっていましたが、作品をそろえる受賞者の負担がきついうえ、また札幌圏以外の受賞者の場合は見に来るお客さんがすくないという事情があったようで、ことしから、協会賞や道新賞、佳作賞のすべての受賞者が1点ずつ出品するというスタイルに変わりました。観覧者も、すこしはふえているのかな。
 会場でもっとも目立っているのは、原田保さんの彫刻「虚無」でしょう。題名とはうらはらに、球を中央に配し、その周囲をシャープなかたちがとりかこんでいます。台座は大理石のようで、いったい材料費だけでいくらかかっているのか、見当がつきません。グループ展のわりにはずいぶん花が会場にとどいていますが、ほとんどが原田さんあてのようです。
 吉川孝さんは、前回筆者が「不吉な印象」と書いたばっかりに「不吉、不吉」とはやしたてられたそうで、失礼しました。今回の「翳の夜 記憶の海」は、ほぼ全面をブルーブラックが覆い、人間の姿がほの見えます。吉川さんによると、海なんだそうです。
 阿部芳子さんは、ステンシルのような、あるいは千代紙のような装飾的な版画ですが、今回初めて色をつけた作品を出しています。
 澤田弘子さんも、「流れ」で木の人形が、顔だけになってしまい、背後には広大な平原が続くだけという光景を描いており、ふだんとやや変わった感じがします。
 山本恒二さん「風人」は、しゃがみこむ人はあいかわらずですが、周囲の色の塗り方がいかにも激しくなってきました。
 それにしても、彫刻の川上加奈さん(「たまご」)、絵画の波田浩司さん(「風評」)は、こうして見るとさすがにうまく、これからの全道展をせおっていく人材だなあと思いました。
 7日まで。

 10月5日(日)

 青木紀子作陶展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
青木紀子作陶展の会場風景 十勝管内本別町に「順心窯」をひらいている青木さん。
 昨年に続き、ネイチャーフォトの展示もかねています。
 「はじめは、青がやりたかった。十勝の空みたいな」
と話す青木さんですが、陶芸をはじめてしばらくして、灰をもらうようになり、いまはそれを活用したうつわづくりがおもしろくなっているそうです。藁灰の色は微妙にことなり、貫入もきれいに入っています。
 また、最近備前に勉強に行ったので、焼き締めのうつわもあります。
 ただ
「生活の場できがるにつかえる雑器をつくっていきたい」
という気持ちはかわらないということでした。

 風の彫痕 真野朋子写真展=同
 家の近くの建設現場を追ったカラーとモノクロ計91点を、大小さまざまのプリントで展示しています。モティーフは、ほとんどこれだけです。
 といっても、夕方の光が布を白く染めたショットや、群青の空が美しい写真、近接撮影、風で布がふくらんだりひっこんだりするさまを連続でとらえたものなど、バラエティーがあります。
 現場を覆う布が風にはためくさまが、真野(まの)さんにはとてもうつくしく感じられたこと真野朋子さんの写真が、レンズを向けたきっかけだそうです。
 もともと自作のオブジェの記録用のためカメラを手に入れたという真野さん。この日行われたギャラリートークでは、
「対象と自分が等価に存在していたい、建物の皮膜は何も語らないけれど、でも、存在しているだけでじゅうぶんで、わたしが近づいても拒まない、そういうものと風を共有できているだけで幸せだし、そこに光がさしているというだけで美しい、そういう思いを伝えたかった」
みたいなことを話していました。
 モノクロの焼きが甘いのが気になりますが、言いたいことのちゃんとある人だということは痛いほどつたわってきます。
 1978年、札幌生まれ。

 フォトいっち2 第4回作品展=同
 鈴木啓子さんが指導する写真講座。札幌市内の滝野すずらん公園や、奥入瀬渓流などに取材した、緑のみずみずしい、みごとなネイチャーフォトがたくさんならんでいます。
 藤村稔彦さん「霧降る高原」は、スローシャッターで手前の葉が揺れているのが、雰囲気出てます。

 いずれも7日まで。

 
 10月4日(土)

 5日で終わる展覧会について、駆け足で紹介しておきます。

 北野啓子展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 ひとことで言うと、「野趣」ということばがぴったりの花器、皿がたくさんの個展。
 壁に掛ける花入れが多数。ダイナミックに灰をかぶった作品がめだちます。古い木の板と組み合わせたものもあります。
 ネックレスなどのアクセサリーもあるのが特徴でしょうか。
 会場中央には、「花三季」と題した、3個で1組の大きな花器。こちらも荒々しい景色が魅力です。

 金澤巌個展−北の自然を描く−ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 穏当な写実による油彩が、風景画を中心に50点近くもあります。さらに水彩の静物画、裸婦デッサンもあり、精力的です。
 十勝岳など、登山のさいの構図が力強いと思いました。札幌在住。

 第4回 銀遊展=同
 カルチャーセンター講師を務めるなどしている10人の作品展。ネックレス、チョーカー、ピアス、ブレスレット、ブローチ、指輪、香合などたくさんあり、デザインの種類も豊富、しかも安いです。
 秋元静恵、五十嵐よう子、宇高貞子、江口典子、大西由紀、小松陽子、坂本由佳、関根久子、晴山優子、日當頼子の10氏。

 第1回 森木偉雄水彩教室作品展札幌市資料館(中央区大通西13)
 なんと65人という大所帯のグループ展。
 宇高瓔子さん「岬(神威)付近」はにじみがきれいです。

 パッチワーク作品展〜ノースフレンズ=同
 ブーケ、バスケットなど、基本に忠実なパターンが多い中で、テレビジョンというパターンはおもしろいですね。一昔前の、チャンネルを回すタイプのテレビがたくさんならんでいます。

 橋本篁丘日本画個展=パークギャラリー(中央区南10西3、パークホテル)
 石狩管内当別町在住、無所属の日本画家。
 海外のいろいろなアワードで賞を得ているようです。
 作風は、おだやかな写実。風景画などは、引き算をかさねてできた、簡潔なものです。26点を展示。
 なかでも目を引くのは、チョコレートメーカーとして実績を伸ばしているロイズコンフェクトの工場にふだん展示されている「望春」という大作でしょう。若芽をふくから松林のむこうに雄大な景色がひろがります。
 「山湖遥か」は、先ごろのフランスかどこかの賞をえたもので、これも静謐な風景を、誇張することなくおだやかにとらえています。
 これは7日までです。

 10月2日(木)3日(金)

 また、ずいぶんたまってしまった…
 きょう見た土屋公雄彫刻展については、後日くわしく書きます。
 が、どうも若い人があんまり見に来てないみたいなんだよなあ。
 さいきんは、日本の現代美術というと、村上隆とか奈良美智が「現代美術」というイメージが強いようですが、まだまだ新興勢力であって、やはり太い軸をなしているのは、土屋公雄とか遠藤利克、戸谷茂雄、村岡三郎、李禹煥、宮島達雄といった、モノにしっかりと向き合っている作家たちだと思います。
 現代美術に関心のある札幌の人で、これを見にこないのは、ダメだと思う。マジです。
 13日までですよ。

 第二十七回北海道抽象派作家協会秋季展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 同協会は、毎年春に、招待作家を交えた大規模な本展を札幌市民ギャラリーで、秋に同人のみによる小品展をひらいており、なかなか忙しいのです。
 今荘義男さん(空知管内栗沢町)は、題はこれまでとおなじく「古里」で、3点を出品しています。マーク・ロスコが東洋に来たかのような、独特の深い色彩にさらにみがきがかかっています。いちばん大きい「古里 ロ」は、字と図の区別がなくなり、左半分が青系統、右半分が茶系統の色があるだけのシンプルな作品。しかし、色には神秘的な深さがあるのです。
 立体表現で知られる林教司さん(同)は、めずらしくタブローを出品。ほとんどモノクロームによる、白と黒が明滅する作品です。
 近宮彦禰さん(旭川)「咲いた」は、イエローオーカー系の黄色い花が、のんびりした味わいです。
 毎年アルファベットによる絵画にとりくんでいる外山欽平さん(函館)は、「G」に突入。レモンイエローや緑のほか、オレンジやバーミリオンなど、これまでにあまりなかった色がつかわれています。
 三浦恭三さん(小樽)はあいかわらず軽快な色と線による世界をつくりだしています。
 そのほか、あべくによし(旭川)、神谷ふじ子、後藤和司、佐々木美枝子(以上札幌)、、服部憲治(苫小牧)の各氏が出品しています。

 関連ファイル:■01年春
 ■同秋
 ■02年春
 ■同秋
 ■03年春
 ■外山欽平さんのことしの個展
 ■林教司さんの昨年の個展
 ■佐々木美枝子さんが出品した自由美術北海道の展覧会

 川井紘子個展=同
 「思い出の風景」など、油彩の小品19点。
 まいとしこの時期に個展を開いていますが、しだいにイマジネーションがゆたかになってきているようです。真夜中に童話を読んでいるような、そんなふしぎな気分にさせられます。
 札幌在住。

 ゆう・ゆうパステル画展=同
 またまた中橋修さんが指導するパステル画教室の作品展。
 中橋さんは、ほとんど抽象に近い「オウル」を出品。さいきん中橋さんが好きなような白で構成しています。
 生徒さん18人は数点。山下晶子さんは、ピラミッドの一部が欠けている「水鏡」、大きな石がごろごろころがっている「UFO」などユニークな作品ぞろい。山崎千穂子さんも、4枚とも作風がまったく異なるのがおもしろいです。

 いずれも4日まで。

 羽毛蒼洲 書の個展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 スカイホール全室ぶち抜きの個展。
 個展は10年ぶりで、そのときはスカイホールの3分の2だったそうです。
 その大スペースに22点の展示。とにかく、会場がゆったりして見えます。
 しかもすべて淡墨の漢字の創作。「個展で、ぜんぶ淡墨というのは、本州でもほとんどないって、表具屋さんが言ってました」
と羽毛さんはわらいます。
 よくある少字数書のようにパワーがみなぎる作品ではない。むだな力をそぎおとしてふわっと書いたような、心がなごむ作品です。でも、よくわかんないけど、力をぶつけるより、適度に抜いてしかも作品として成立させるほうがむつかしいんだろうなー、という気はします。「一木一草」は、ふたつの「一」の場所も筆勢もちがっており、作者の苦心の構成がうかがえます。「青山白雲人」なども、軽々と踊るような筆勢が魅力的だと思いました。
 羽毛さんは札幌在住、北海道書道展会員。中央の公募展には出品していません。思うところあって、20代でやめたそうです。
 「いまも、何年出品したら(会員や会友に)入れてやる、みたいなことを言われることもあるけど、そういうもんでもないでしょう。北海道書道展は、ぜんぜん後ろ盾などがなくても大賞に選んでくれたので、まだ信じられるって思って、出品しています」
 5日まで。

 豊田直之 The Underwater-Cosmos in Fiji 〜EOS‐1Dsによる世界初の水中写真展〜キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)
 1100万画素のデジタルカメラによるB0版のどでかいプリントが13点。
 もう何度も書いていますが、カメラの画素数をフルにつかえば、もはやデジタルカメラがフィルムに劣るところはまったくないと思います。むしろ色彩はデジカメのほうが自然な気さえします。
 シャンデリアのようなクラゲ、何万匹と花火のように海中に散るキンメモドキ、透き通ったアオリイカなど、南太平洋フィジーの海中のユーモラスな生き物たちがとらえられています。実際の動物のサイズが模型で、キャプションのところに張ってあるのもおもしろい。写真が、実際のサイズよりもずいぶん拡大しているんだな、とわかります。
 3日でおしまい。

 聖なる世界・美の心 舟越保武展=中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(旭川市4区1の1)
 わざわざ旭川まで行ってよかった。
 日本を代表する具象彫刻家の彫刻とデッサン計33点を展示しています。
 その気高さ、清楚さには、心があらわれる思いでした。感動しました。
 5日まで。週末あいている人はぜひ。
 ちかいうちに、ちゃんとしたテキストを書きます。

 盛本学史展=Gallery 多夢座(旭川市神居4の1、旭川トヨタタムザ2階)
 富良野市山部の廃校跡でこつこつ絵にとりくんでいる若手の個展。
 いろんな作品を描くのですが、今回は、ほとんど抽象画です。
 作者としては、一種の風景画らしいのですが。
 なかには「議会」のように、人々が議論している姿に見えなくもない絵もありますが、全体的には、中央部分が明るめで、周囲が暗く、おなじ系統の色が多くつかわれています。
 「世界」「景色」といった題の絵が多いのは、盛本さんの目に、こんなふうに世界が見えているのかなあ。
 5日まで。

 関連ファイル:■2001年の個展
 ■ことし4月の個展

 高橋三加子個展冨貴堂ギャラリー(旭川市3の8、冨貴堂文具館4階)
 行動展、全道展会員の実力派画家。旭川在住です。
 中間色をたくみに用いた群像画に取り組んでいます。
 今回は19点。
 全道展のときにも書いたような気がしますが、この1、2年、絵になんともいえない不安感のような気配が漂っているように思えてなりません。
 以前はわりあい整然とならんでいた人物も、近作「鎖された領域」では、男女が二人ずつ、ばらばらに立ち、表情も暗いのです。
 1ないし2人を描いている小品も、「立つ少女」など、なにか心配事でもありそうな顔つきです。
 12日まで。

 阿部守展TEMPORARY SPACE(中央区北4西27)
 福岡在住の彫刻家。
 並行ドクメンタへの出品、バングラデシュでの作品発表など、国内外で活発に活動をつづけています。札幌での個展はおよそ10年ぶり。
 近年は、インスタレーション的な展開やアースワークが多かったのですが、スペース主宰の中森さんによると
「鉄をたたく原点に戻る」
と話していらしたそうで、会場中央に、鉄の板をばらばらに重ねて、熔接してつくった彫刻が1点と、デッサンが1点だけです。
 阿部さんにとっては、鉄をたたくという鍛冶屋的な行為こそが、みずからの原点にあるのでしょう。その重みのようなものをしずかにたたえている作品でした。
 4日まで。


 10月1日(水)

 鉢呂光恵展 −遺伝子BOX−ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ヶ丘2)
 遺伝子を顕微鏡で見たときの感動を作品に定着させようとがんばっている女性作家の、3度めの個展。
 会場には、標本のような、ガラスの蓋のついた箱が10個、ほぼ等間隔に、台座の上に載せられてならんでいます。箱の中は、正方形のちいさなコーナーに仕切られており、それぞれに、鉛の板がひだのように折りたたまれています。
 壁には、赤いアクリルで描いた、細胞の断面図のような丸い絵4点が、透明なアクリル板に挟んで展示されてありました。
 いずれも、鉢呂さんなりに、生命というもののイメージを表現しようとしているのでしょう。これまでの2度の個展にくらべると、DNAの図式的な説明という感じがうすれてきたのは、よかったと思います。
 5日まで。

 高田匡個展『Land Ho!』(島が見えたぞ)=CAFE and GALLERY ShiRdi(中央区南6西23)
 わははははははははははははは。
 美術展でこんなにわらったのは初めてです。
 ネタバレになるからなあ、くわしく書くと。
 ちょっとだけ紹介すると、Tシャツや家具、オブジェ、妙なことばや絵を描いたポストカードなどが展示されているんですけど、「magnify」は、会場のシルディ附近の地図を拡大したデザインの整理棚。「転がる本棚」は、円筒形の本棚で、「すきまができず、転がしていけば自分のとりたい本がすぐ取れる」というものです。
 脱力系の笑いが好きな人には、ぜったいおすすめします。
 5日まで。

 以上、9月31日に見た分です。
 10月1日に見た分はあす更新します。