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あーとだいありー 2003年7月前半
7月14日(月) 「展覧会の紹介」に「全道展」を追加しました。 非常におそくなって、もうしわけありません。 |
7月12日(土)・13日(日) 豊泉朝子展=アリアンスフランセーズギャラリー(中央区南2西6、南2西6ビル2階) 国内外で活躍中の版画家の個展。 道内では、2年前のPLATE MARK展で発表したことがあるくらいだそうです。 その展覧会は筆者も見ているのですが、ほとんど記憶にないです。すいません。 で、今回の個展の作品は…。説明するのが、すごく、むずかしいです。案内状の絵柄とは、まったく別です。書道に似た作品とも違うし…。 空想上の人間というか、動物というか。突拍子もない形をしていますが、陰翳がつけられていないせいか、グロテスクではありません。ひとつひとつが小さいので、むかし教科書の片隅に書いた落書きを思い出したりもしますが、さすがに子どもの絵よりは複雑です。画用紙ぐらいの大きさに100くらいの人間(?)が描かれているのもあり、ていねいに見ていくと時間がたつのもわすれてしまいます。 汲めども尽きぬイマジネーション、というところでしょうか。 強いて言うなら、このサイトの、左側の画像に似ているかもしれません。 19日まで。最終日、作家在廊 夏山亞貴王遺作展=ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL) 昨年亡くなった画家の夏山さん(全道展会員、札幌)の遺作展。 夏山さんは1975年から81年までパリに滞在していました。 今回は、その前後に描かれた洒脱な風景画が中心で、100号クラスの大作は3点だけ。晩年の、まばゆいばかりの色遣いの、シンプルな構図の人物画しか知らない筆者にとって、画家のもうひとつの側面を見たような気がしました。 ただし、こまかく見ていくと、画風にもうつりかわりがあるようです。 80年代後半に描かれた「冬の揚げ橋」(絵の中のサインには89年になっていますが、説明パネルには「88年」と記されています)や、「雪降るセーヌ」(86年)は、八木伸子さんの近作にもどこか通じる、ホワイトを基調とした薄塗りで、どこかあたたかみを感じる画風すが、それ以前のものと思われる「カフェテリア」「村の教会」は厚塗りで、上の白い絵の具の層をひっかいて下地の濃い色を出すという、独特の画法をとっています。 また、80年の「ニースの街角」は、後年の大作にも似た、ピンクなどの派手な色つかいが目立ちます。 出品作で最も古い「パピルスにて」は、ほとんど抽象画です。 画像は、ギャラリーどらーるのサイトで見られます。 出品作は次のとおり。 「パピルスから」(67年。変形100号) 「ボルドーの旅」(3号。絵の中には71年のサイン) 「波騒ぐカップドアンティヴ湾」(73年。4号) 「無題」(78年。15号) 「無題」(78年。4号) 「ノエルの花」(79年。6M) 「無題」(80年。3号。絵の中には75年とサイン) 「NICE」(8号。制作年不明だが、次の絵と画風よく似る) 「ニースの街角」(8号。80年) 「晩秋の白いメゾン」(6号。83年) 「アネモネ」(83年、3号) 「イヴリンにて」(85年。サムホール) 「雪降るセーヌ」(86年。20号) 「コンポージション」(86年。4号) 「パリの教会堂」(87年。15号) 「冬の揚げ橋(パリ)」(88年。20号。絵の中には89年のサイン) 「夕照のオンフール海」(8号。絵の中に93年のサイン) 「優しい楯−神話的」(95年。120号?) 「アラブ人のいる街角(スペイン)」(96年。50号) 以下の絵は制作年の記述なし 「カフェテリア」(4号)「晩秋のセーヌ」(8号)「セーヌにかかる橋と街道」「ルーブルとセーヌ」「セーヌの冬の情景」「村の教会」(以上10号)「オンフルール港・ヨット碇泊」(50号)「車椅子シリーズ(7)『うしろ姿の』」(昨年の全道展出品作) 31日まで。 第22回みちの会・作品展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階) 札幌のベテラン画家、八木保次・伸子夫妻の指導による絵画サークル。 保次さんは、紫色を大量に配した絵を出しています。絵の具の飛沫がとびちるパワフルな抽象はおなじですが、モノクロの世界からは完全に脱却しつつあります。 中井孝光さんは「遠望」など2点。欧州の街並みを白っぽく描いたものと、聖堂の正面を描いたものです。 ほかに、伸子さんと、内村久美子、大城その子、岡田綾子、高橋智子、中田やよひ、長谷川貴、南紀恵子、山下雅子、山根久美子、和田雄次の各氏が、油彩や水彩出品しています。全体的には、静物画が多いのが特徴です。 15日まで。 福岡幸一銅版画展=ほくでん料理情報館MADRE(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階) 古樹や採石場、札幌近郊の山などを丹念に描いた版画作品。 ざんねんながら新作はありません。 札幌在住、全道展会員。 19日まで。 喜多義憲写真展「アジアのまなざし」=ギャラリーユリイカ(中央区南3西1、和田ビル2階) 喜多さんは北海道新聞の特派員として(つまり、筆者の上司)、ソウルとシンガポールに赴任していたことがあり、今回発表した約60点(すべてカラー)の大半はそのときに撮影したものです。 ソウルの学生運動とか、緊張の38度線など、ジャーナリストらしい写真がたくさんありますが、見ていてほっとなごむのは子どもたちの笑顔ですね。 シンガポール時代は、インドネシア(まだスハルト政権)、タイ、ベトナム、東ティモールなど、ずいぶんあちこちに足を伸ばしています。 「ミャンマーにもういっぺん行きたかったな。べつに、軍事政権の悪口を書いたつもりはないんだが、むこうはそうは受け取らなかったんだろう、2回目はビザが下りなかったんだ」 すいません、13日で終了。 「展覧会の紹介」に「時の貌/時の旅 20世紀・北海道美術」を追加しました。 じぶんで言うのもなんですが、じつはそれなりにたいせつな問題提起をふくんでいると思うので、読んでください。 |
7月11日(金) 原田直樹写真展「I was here...#4」=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階) このサイトを見ている札幌の人で原田さんの写真をいちども見たことのない人はいないはず。 というのも、札幌でひらかれる演劇やライブコンサートの写真のうち、かなりの部分を原田さんが撮っているからです。アナタの手元にたまたまある芝居のちらしやタウン誌に載った写真。それももしかしたら原田さんの撮影かもしれない。 今回も、いろんなアーティストの舞台や、劇団イナダ組、チームナックスといった地元の人気劇団の公演が、とらえられています。まさに臨場感バッチリです。とくに、流し撮りの写真なんて、うまい。 で、筆者はもともと根が失礼な人間なので 「原田さん、うまくなりましたねえ」 と言ってしまいました。いや、べつにこれまでがヘタだったわけでは決してありませんが、今回のを見ると、迫真の度合いが格段にアップしているのはまちがいありません。 原田さんも 「いやあ、3年前のネガを見ると、フレームに(被写体を)入れるのが精いっぱいって感じでしたもんね。今回の出来には、満足しています」 とにこやかに答えてくれました(ホッ)。 昨秋ロンドンで撮った風景も6枚だけありました。 「ライブなど夜の仕事が多いから、風景はふだんあまり撮らない」 という原田さんですが、いかにもロンドンに行ってきました的な感じのない、飾り気のなさが魅力になっています。 全作品カラー。7、8割がデジタルだそうです。デジタル・銀塩の区別にはあまりこだわらないそうです。 13日まで(以下同じ)。 名木野修油彩展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階) 名木野(なぎの)さんは、おもに札幌近郊を題材とした風景画を描きます。 会場には30点の油彩がならんでいますが、すずしい風をあびているようなさわやかさを感じます。 以前も述べたと思うんですが、色が生っぽくない。緑ひとつとっても、白などと周到に混ぜ合わせて、さまざまな諧調の緑を配しています。 そのため、たとえば能勢眞美などとくらべると、彩度が低く、いくらか渋い感じになりますが、そのぶん、ホワイトの点を置けば、ハイライトを強調することができます。 以前、バルビゾン派がお好きだという話をお聞きしましたが、おちついた色調は、アカデミスムにも通じるところがあると思います。 「ぜんぶで7色ぐらいしか使ってないんですよ」 というからおどろきです。 上の絵は「四月のせせらぎ」。雪解け時期の雰囲気がよく出ていると思います。 ほかに、円山公園をモティーフに乳牛をかきいれた「九月の牧場」、新雪のつもったタイミングをねらって描いた清新な「時計台」や、植物園、北大第二農場などを描いています。 名木野さんは札幌在住。道展などには出品していません。 第4回北海道示現会展=札幌市民ギャラリー(中央区南2東6) 示現会は、ルーツをたどれば最も歴史の古い公募展「太平洋画会」から1947年に分裂して発足した日展系の公募展だそうです。 上野の本展がどういうものか筆者は知りませんが、すくなくとも道内の出品者は、穏当な風景画、静物画ばかりです。「いかにも絵」という感じで、心をおだやかにして見ることができました。全体的には、冬の風景が多いようです。 筆者は、草刈喜一郎さんの絵がわりと好きです。今回は、ここ2、3年取り上げていなかった炭鉱施設に再び目を向けた「閉山」(F80)と、おそらく昨年の欧州(スイスなど)旅行のスケッチを元にした「黄色い窓」(同)、小品の「日高路紀行」(P8)(P4)の計4点を出品しています。いちばん小さい作品は、なんの変哲もない風景にそそぐやわらかい光にも目を凝らす草刈さんの面目躍如たる絵だと思います。 下田敏泰さんも画力のある方です。以前から渓流を題材にしていましたが、色数を抑えたリアルな処理にだんだん飽き足らなくなってきたのか、今回の「春の川辺」(F80)などは、よく見るとオレンジや紫などずいぶんいろんな色を画面にちりばめているようです。ほかに「早春の漁川(いざりがわ)」(F30)。 杉本雅子さん「装う」(F60)は、おどろくべき細密さで和服を描いています。 深田博司さん、新矢清さん、米澤榮吉さんは、ベテランらしく風景をまとめています。米澤さんの「K嬢」(F4)は、飄々とした味わいがあります。 ほかの出品作は次のとおり。 石川孝司「雑貨店T」(F80)「雑貨店U」(F6) 岩佐邦夫「大河悠々」「晩秋の河」(P60)「樺戸山遠望」(F20) 工藤栄三「ひととき」(F60) 清水良洋「楽器のある静物」(F80)「明治の牧舎」(F10)(F12) 新矢清「北の渓流」(F100)」「夏の奥入瀬」(F50)「豊平川」(F10)「秋の尻別川」(F10)「北の渓流」(F8) 末永時雄「アトリエの一隅」(F80)「苺」(F4) 深田博司「待春」(F100)「ハロン湾遠望」(F80) 藤田敏次「山麓入冬」(F80) 米澤榮吉「白い樹々」(F100)「冬の山麓」(P60)「唐黍畑ニセコアンヌプリを望む」(F4)「春の林道」(F4)「ライラック」(F3) 関連テキスト ■草刈喜一郎 炭鉱の記憶展 ■示現会小品展・下田敏泰風景画回顧展 (12月20日の項) ■昨年の示現会北海道展 ■2001年の示現会北海道展 第25回三創会油絵展=同 道展会員のベテラン橋本禮三さん(札幌)が講師を務めるグループ油彩展。ほかに女性ばかり11人が出品しています。 橋本さん自身は「忍路湾」(12号)を出品しています。 もともと陰翳をあまりつけない絵を描かれる方ですから、いきおい生徒さんの絵も、固有色を生かしたおだやかな感じの絵になります。 西沢笑子さん「人形」(30号)が、丹念なタッチで二体の西洋人形と、籠に入ったリンゴを描き、好感を持ちました。 祭り・FEST展パートU=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階) 夏と、年末年始恒例の、さいとうギャラリー企画小品展。 今回も、絵画、彫刻、工芸、版画など多彩な分野から、大ベテランから若手まで、道内63人が出品しています。 公募展をやめて、個展もあまりひらいていない人の作品を見る貴重な機会でもあります。 その意味で、全道展を脱退した北浦晃さんの「山開きの日(大千軒岳)」や、竹内豊さん「教会の灯」といった清澄な絵を見るのは、楽しみだったりします。竹内さんの絵は、明るい青空に、レモンイエローの星々がまたたいているというものです。 高橋英生さん「草・花・華」は、シンプルさを増す近年の風景画が、ますます単純素朴な味わいになっているなー、という感じ。 楢原武正さん「大地ノ開墾」は、さびた釘のおびただしい集積。正方形に釘だけが集められているあたりから、廃品を積み上げるだけではない、意外とスタイリッシュな楢原さんの側面がうかんできます。 鈴木涼子さん「untitled」は、アニコラシリーズ(■2002札幌の美術 参照)のうち4枚をえらんで加工したもの。表面がなんとなく白っぽいですね〜。 もともと無所属の人もけっこういます。 岡倉佐由美さん「月涙」。脳みそのようなオブジェ。左半分に、クレーターのような模様がついています。造型的に、かなりかっちりまとまっています。 府川誠さんは、版画の前に、みこしをかつぐ人びとの人形を置きました。 佐々木徹さん「聖なる鉄(Fe−St)」は、コラージュですが、題は、元素記号にひっかけたシャレだと思います。 半数以上は、なんらかの公募展に所属している人たち。ただ、公募展などとちがった一面を見せてくれることもあります。 渡會純价さん「Memoire 祭典」は、外国の町の空に踊る人々を軽快に描いた銅版画。わりあい、平面的な構図に人などのモティーフを配することの多い渡會さんとしてはめずらしく、奥行き感のある作品といえるのではないでしょうか。 波田浩司さん「祭の神」。ことし全道展で会友賞を受けるなど活躍めざましい波田さんですが、今回の小品は、全道展出品作のようなユーモアのあるタッチではなく、ひたすらリアルに人物を描いています。でも、やっぱりおもしろい。 永井美智子さん「赤の祭り」は、抽象画。画面を横切る線がいつになく荒々しいです。 八木保次さん「七夕」を見ると、長いことほぼモノクロだった八木さんの絵のなかに、色彩が完全にもどってきたことを感じさせます。それほど、ワイン色の点が全面に躍っています。奥様の伸子さんは「花フェスタ」を出品。 北山寛明さん「水の境界」は、しぶきなどの表現によって水を描いてみようという試みのようでした。 表現することはすばらしいアート展 vol.3=ギャラリーART-MAN(中央区南4東4) 海外に気軽に出かけていくイマドキの若い世代らしい展覧会。 ニューヨーク滞在経験の豊富なペインティングの津田アヤさん、雑誌などの細かい図像をコラージュしたHIROさん、バリ絵画のCok Asさん、バリに住んで絵を描いているKADEK ADNYANAさん、バティック(ろうけつぞめ)の麻生クミさんの5人が出品、なかなか夏らしい雰囲気になっています。 麻生さんは、キノコがトレードマークなのかな。60年代後半をおもわせるサイケな色使い。 一方で、モノトーンの抽象的な作品もありました。ろうけつって、色がきれいなのに、あえてモノクロで勝負するのは 「ニューヨークにいたとき、こういう作品のほうが評判が良かったので」 ということでしたが、めずらしいかも。 「どうしても、お稽古事ってイメージがあるので、それにおさまらない活動をしていきたいんです」 と麻生さんは力説していました。 読む人のこともあるので、14日以降終了の展覧会については、あす以降。 安田侃展や、これくしょんぎゃらりいのテキストもいそいで書かなくちゃ。 |
7月10日(木) 斉藤富男・斉藤嗣火二人展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3) 3回目となる親子展。 伊達在住の富男さんは、おだやかなタッチの風景画が魅力です。 大潮会会員。 嗣火(つぐほ)さんは、毎年開いている個展では、独立展や全道展に出している100号クラスの作品が中心ですが、今回は最大で15号どまり。シシャモや花などの静物画が多いです。アンバー、イエローオーカーなど、渋めの系統の色を主に、まとめられています。 ただ、裸婦のトルソをモティーフにした「偶」のシリーズは、裸体の左右がことなる色で塗られていて、現代の人間性の分裂という事態に対する画家の関心をうかがうことができるように思えました。 嗣火さんは全道展会員、札幌在住。 (第15回)梅木陽一展=同 梅木さんは、書の指導者でもありまして、先日スカイホール(大丸藤井セントラル7階)でグループ展「ASAKA展」をひらいたばかり。 そのときも感じたのですが 「書と絵の接線みたいなとこを進んでるなあ」 と思いました。 ASAKA展のときもあった、トンパ文字の作品もそうだし、「森」を題材にした墨彩画の作品もそうです。シンプルな木の絵は、漢字につながっています。 西川孝展=同 西川さんは、根室管内中標津町在住、新道展会員。 退職後は風景画の制作に没頭しています。 根釧台地の風景は、スケールが大きく、たいした考えもなしに写生すると、方向感覚というか大小の感覚を失った、とらえどころのない画面になりかねませんが、西川さんはそこらへんに自覚的で、なんとかして広漠とした感じを出そうと苦闘しています(中村哲泰展のときとおんなじこと書いてるみたいですが)。 つかわれている緑も、青緑っぽい色、紫がかった色などさまざまで、素朴なリアリズムを超えて独特の風景画をつくろうとする画家の意欲を感じさせます。 私好作娯展=同 真光律、脇山修一、高岡幸代、千葉佐和子、溝淵裕美、今野由美子、木村浩美の7氏によるグループ展。 版画、日本画、油彩などバラエティーに富んでいます。 脇山さんの木版画「悲しみの連鎖」などが、変化に富んだ構図でおもしろかったです。 パステル遊二人展−島田美保子・山下晶子−=同 山下さんは、中橋修さんの教室展で何度も拝見しており、シュレリアリスムということばがぴったりのふしぎな絵を描く人として記憶しておりました。今回も、森の中に卵が浮かんだり、ナスやナシ、トマトが森を散歩する「森林浴」など、ふしぎで幻想的な絵をたくさんならべています。 島田さんは、やわらかいタッチの茫漠とした静物画が大半を占めます。「冬の光」など、それぞれの季節に、台所に並ぶ物の微妙な表情がつたわってきます。 いずれも12日まで。 白紙の楽譜 山岡俊二写真展=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル) モノクロの風景写真40点。 水たまりの落ち葉などをとらえた写真は、モノクロなのに、つめたい水の中でかさなりあう赤や黄の葉のこごえた色が感じられます。 さらに、なんの変哲もない雪原をうつした作品では、焼きのすばらしさを堪能できます。 雪が白いからといって、白く焼いたら、いわゆる「ハイライトが飛んだ」メリハリのない画面になってしまいます。だからといって、明暗を付けすぎると、こんどは黒っぽくなって、雪に見えなくなってしまう。 雪が積もったところの微妙な曲線が見え、なおかつ銀世界だとわからせるためには、絶妙の焼きの技術が必要になるわけです。 さいきん学生の写真展がさかんになって、筆者も良いと思ったものは評価しているわけですが、実をいうとモノクロ写真の半数以上は、ピントがあまかったり、フィルムにほこりが大量についていたり、焼きが眠かったりするわけです。 この写真展のようなハーフトーンでなきゃダメよ、というつもりはありませんが、プロの技というのがどういうものかをたしかめるために、モノクロ写真に取り組んでいる人は、見に行くことをおすすめします。 18日まで。 北海道新聞によると書家の小比賀秋嶺(おびか・しゅうれい)さんが亡くなりました。76歳でした。 小比賀さんは北海道書道展会員。かな文字のほか、生活書道の普及にも尽くしました。 また、8日夕刊の北海道新聞によると、函館の高井静子さんがスーリコフの油彩「女子修道院を訪れりう王女」を道立凾館美術館に寄贈したそうです。 記事によるとスーリコフ(1848−1916年)はロシアの巨匠で、日本国内には所蔵作品がないそうです。 1990年に道立近代美術館でひらかれた「19世紀ロシア絵画展」には、「シベリアの美人」など3点が出品されています。 |
7月8日(火) コンチネンタルギャラリー開廊10周年記念 −水の渉 森の音−、初日なのでのぞいてきました。 なかなかおもしろい展覧会になっています。 全体として、肯定的なパワーをはらんでいるので、見ると元気をもらえるかもしれません。 詳細は後日。 青森・むつ・津軽 「化粧地蔵」と「賽の河原」「地獄」めぐりをアップしました。 ユニークな美術家の上遠野敏さんからの投稿です。一読ください。 |
7月7日(月) a gallrey 閉鎖>安堵=Gallery Cafe marble(中央区界川2) 阿部ナナ、梅津衣、岡崎真哉、樫見菜々子、菅原由香、高木佳奈子、高幹雄、竹田浩志、田中祥世、徳田直之、武藤有貴の11氏によるグループ展。知らない人も何人かいるけど、たぶん若手。 高さんの作品がリストに3点あったけど、実際に見ることができたのは「夢ではないのか〜ミロのヴィーナスが泣いた夢」のみ。5−6月の個展と同様、表面が厚い透明の膜で覆われていました。 武田さんは今回、マーブルの中に家をつくったりはしておらず、金箔を全面に貼って馬のイラスト(?)をかき加えた平面「plain」。彼が個展のときに言っていた 「かっこ悪くてダサイものとしての日本的なもの」 ということを思い出しました。 2階の窓際にならべてあった写真は、表示がなかったけど、阿部さんの「untitled」でしょうか。妊婦が写ってたり、題材はいいのですが、いかんせん焼きやピントが甘すぎ。同時に、ファイルにも何枚か風景などの写真が入っていますが、こちらのほうが良いです。 19日まで。 高橋俊司展 「水辺 みずのほとり 2003/7」=ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ヶ丘2) 高橋さんは、江別に住み、医療現場で働くかたわら毎年のように個展をひらいています。 1990年代には、印刷された紙を、大量に巻き散らしならべるインスタレーションを展開。96年には、芸術の森美術館のグループ展「平面の断章V」にも出品しました。その後、にょろにょろした塔のような小さな立体を排列したこともありましたが、2000年以降は、水槽を用いたインスタレーションの発表をつづけています。 今回は、縦に細長いギャラリーのつくりを生かした構成になっています。入口附近に白い革の一人がけソファを配置し、そこから奥へと向かって、縦42センチ、横120センチ(高さは測ってくるのをわすれましたがだいたい70センチほどでしょうか)の水槽が三つ並んでいます。手前の二つの水槽が、どういうわけか、ソファとおなじ材質の白い革で両側を挟まれています。 水槽には水がたたえられていますが、機械による浄化の度合いが異なるのか、手前の二つのほうがやや濁って見えます。そして、いずれの水槽にも、縦長の牛乳瓶よりも細い、金色の蓋のついた透明な瓶が置かれ、その中に4−6匹ほどのちいさな魚が泳いでいるのです。 「わー、こんなせまいところに! よく生きているなあ」 とびっくりする反面、 「魚のいる外側の空間を浄化してどうするんだ」 という疑問もわいてきます。水槽のうち、大半の部分には、魚もなにもいないわけですから。 いや、筆者にわからないだけで、びんの中の水も浄化されるしくみになっているのかもしれません。あるいは、毎晩、水を取り替えてえさをあたえているのかもしれないですし。 いずれにせよ、或る限定された生態系の危うさ、もろさのようなものを、切実に考えさせられます。 入口には、つぎのように書かれた紙が貼ってありました。 生きる水13日まで。 ご本人のサイトはこちら。 中尾峰作品展 麻生ゴルフ(後編)=Free Space PRAHA(中央区南15西17) 5月に開かれた「前編」がイマイチ分かりづらかったのは、現実の麻生地区の風景を、どういうやりかたで変換したらああいうタブローになったのかが見る側につたわらなかったからだと思うのですが(中尾くんには分かっていても、こっちには分からない)、今回は、じつにシンプルな展覧会になっています。 ことし2月22日から7月1日のあいだ、午前5時に撮影したポラロイド写真を各日5枚、計200枚(かならずしも毎日撮影しているわけではない)陳列しているのです。 時間が時間、ということもあるのですが、人間がうつっているコマがひとつもありません。 総合スーパーがあり、住宅があり、道路や公園があり…という、ごくありふれた街並みが、ほんのすこし変わって見えます。 ただ、すごく変容して見えるんじゃなくて、ちょっとだけ変わって見えるというのがミソなんじゃないでしょうか。 札幌市北区麻生は、ごく凡庸な地区です。渋谷やモンマルトルのように、見る者に何か神話的な記憶を呼び覚ますような地名ではなく、ニュータウンや東京郊外のように、不毛さのきわみからなにかが出てくるような場所でもありません。そういう、凡庸すぎるまでに凡庸な風景をあらためて見直してみようという作者の試みは、ようやく緒についたばかりといえるかもしれません。 なお、予告されていた模型などは見当たりませんでした。 その代わりなのか、見に来た人が、じぶんの幼時に住んでいたあたりの地図をノートに書いていくためのノートが置いてありました。こういうのは、筆者はけっこう好きです。 13日まで。 参考までに、作者自筆のちらしから引用しておきます。 本展は風景の再検証の試みである。私がここで考える風景には二通りある。ひとつには私達が普段目にしている風景〔可視の風景〕、もうひとつは見ることができないものである〔不可視の風景〕。例えば、住宅街のなかの空き地、ビルに挟まれた細道、高架下のような場所を通り過ぎるとき、風景の持つ波長が大きく変化するのを感じる。このような波長の変化が〔不可視の風景〕を形成していると考える。 関連ファイル 百合若さんはコンピュータを駆使して漫画やイラスト、ウェブデザインなどを手がける札幌の人(男性です)。 会場には、色がクリアなイラストがずらりとならび(パネル約100枚)、なかには見る人をクスリと笑わせるもの、ちょっと風刺のきいたものもあります。 なかでも「玄米生活」は、ベタなギャグでおもわずわらってしまいました。 Tシャツもあります。 百合若さんのサイトはこちら。 13日まで。 なお、隣接したオットマンカフェでは、アフガンの子供たちの絵をデザインした反戦ポスター展がひらかれています。お時間のある方はどうぞ! SUMMER WAVE展8=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館) 太田ひろ、木口(こぐち)悦子、後藤顕、笹岡素子、鈴木功一、煤谷吉人(すすや・よしひと)、高坂(たかさか)史彦、竹田博、名畑美由紀、長谷川雅志、林教司、藤川弘毅、星こず枝、丸瀬文現、渡辺英四郎の各氏による、「たぴお」らしいグループ展。案内状にはM・ババッチさんの名もあるけど、作品は見つかりませんでした。 太田さんの立体は、さびかかった鉄の円筒形だけに見えるけど、きっと楽器にしたらいい音がでるんだろうなあ。 林さんの「A soldier’s rest」は、青いパネルに、頭部像を組みあわせた壁掛け型の立体。ただし、石膏像じゃなくて、網状のちいさな板を何枚もはりあわせてつくっています。 後藤さんは、アルファベットの絵文字を、女性で描いていますが、なんとなく「レイクエンジェル」を思い出してしまいます。 19日まで。 |
7月6日(日) 北海道FCC会員作品展=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館) 道内の、おもにアマチュアによるリバーサルフィルムの写真展。フィルムの特性を生かそうとしたためか、花の写真がかなりのわりあいを占めています。また、ほとんど横位置の写真ばかりです。 べつに富士フイルムの宣伝をするわけではないですが、新発売のベルビアが話題を呼ぶなど、まだまだ再現性ではデジタルにまけてはいないとの思いを強くしました。 9日まで。 北海道版画協会展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階) おもに道展、全道展の会員、会友、一般入選者からなる大グループです。 もちろん、一定以上の水準の作品ばかりで、見ごたえがあります(一部、先日の全道展と同一の作品もありますが)。 吉田敏子さん「旅のページから」 台形と不定形の模様の組み合わせに過ぎないのに、室内と室外の風景がかさなりあって雰囲気をかもし出しているように見えるふしぎさ。全道展会友 早川尚さん「飛ぶ魚」 暗い空間を泳ぐ魚は、空間恐怖のようにびっしりと文様がうがたれています。精神性をただよわせる作品。道展会友 西村一夫さん「12方位の風 bQ」「12方位の風 bR」 こんどはエンボス処理の抽象モノタイプ作品。道展会員 瀬戸節子さん「大地」 ことしの全道展出品作「大地の力」とよく似た、緑系とイエローオーカー系のまじった抽象的な作品です。昨年までのトランプを題材にしたものより、こちらのほうがいいのでは? 全道展会員 佐野敏夫さん「幻花(今は昔)」「花の間」 和風の意匠にチャレンジしています。全道展会員 兼平浩一郎さん「対話の森」 力作です。二人の男が向かい合ったまま石化したような絵柄は、キュビスムにも通じます。 他の出品作はつぎのとおり(敬称略)。 渡邊慶子「July C-1」 吉村博幸「甦りし時」 更科e「燃やせない過去」「限られた沼地」 丸山郁代「波」 細見浩「黎明摩周湖」 宮井保郎「FOAM」 福岡幸一「早春のギンドロ」 平塚昭夫「チューリップが咲いた」 萩原常良「谷間の月」 村田由紀子「H-O」 竹田道代「女神たちへの賛歌 V」 内藤克人「双塔、相当」 清水淑枝「HEROINE OVERTURE」(同題2点) 田崎敦子「風」 鳴海伸一「都市彷徨〜CITY SWIMMER〜」 木の瀬博美「Breath」 石川亨信「Someone's pulse (leaf)」 三島英嗣「時のはざま(T)」 山内敦子「海辺の家」 ナカムラアリ「The daily hope(日々の希望)」「The tiny hope(ささやかな希望)」 菅間慧一「レンガの街並(アッシジ)」 大井戸百合子「生地屋の娘」 種村美穂「flowing」 渋谷正巳「ヒマラヤ紀行−ダウラギリ」「ヒマラヤ紀行−アンナプルナ」 木村多伎子「ベルイの女」 清野知子「マウイ島にて」 大野重夫「雪の尻別岳」 手島圭三郎「しまふくろう、たそがれ(2)」 金沢一彦「夜明けまで」 木戸しづ子「カワリダマ〓」(〓は○の中に!) 尾崎淳子「水明」 尾崎志郎「昔しの長屋」 武田輝子「Le croissement des êclairs(2)」 大本靖「creak 3」 井上明男「環(リング)」 石井千晶「宙へ−はるかなる旅立ち」 浅野ナ「誕生以前(夢港)」 浅野武彦「東尋坊」 岩崎弘道「風紋03−6」 8日まで。 |
7月5日(土) 「展覧会の紹介」に「森山大道」と「矢元政行展」を、ようやく追加しました。 |
7月4日(金) きょうは、サッポロファクトリー特集です? 李禹煥新作版画展=レンガ館ギャラリー梅鳳堂(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館2階) 「もの派」の理論的支柱であり、戦後日本を代表する美術家のひとり、リ・ウファンさん(神奈川県在住)のリトグラフ展。 道内では、98年に芸術の森美術館でひらかれた全版画展以来、ひさしぶりの展覧会です。 ことしの新作は「ある黙示録より」と題されたシリーズの6点。 例によって、これ以上簡略にできないような作品。白い紙の上に、墨による大きな点(というか四角)が二つ打たれているだけです。 6点のうち2点は、かぎりなく黒に近い濃い灰色と、ごく薄い灰色のふたつが、ならんでいるもの。あとの4点は、ほぼおなじ濃さのふたつの点のうち、片方の下に、筆から垂れ落ちた墨のしずくの跡が3つほどついているのが特徴です。 墨象や前衛書とよばれる分野の作品に、似ていないこともありません。ただし、李さんの場合は、まったく文字から切り離された地点で発想されているところが、書とはちがいます。 とはいえ、やはり書と共通する東洋的なものは感じられます。ふたつの点がでたらめに打たれていないのはもちろんなのですが、それは、ひとりの作家が画面全体を単一の視点から神のように統括する西洋的なありかたとはちがった、いわば半ば即興的な、呼吸の結果打たれた点ともいえるでしょう。東洋的、というのは、意匠のことではありません。意識的でないから無意識的である、という割り切りとはちがった精神のはたらきによって打たれた点といえるように、筆者には思われます。 旧作は「照応」と題された小品2点(これは銅版画)、「寄港地」シリーズの3点などが展示されています。 13日まで。 三大学合同写真展 CLARITY=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階) 北星学園大(札幌市厚別区)、酪農学園大(江別市)、札幌学院大(同)の3写真部合同の展覧会。 前にも書きましたが、近年は入部希望者が多いそうで、今回はあわせて50人ほどが出品しています。そのため、半数以上の人が、ひとり1点になってしまったのがざんねんです。 テーマ展示「VIVID」というコーナーをつくっていましたが、参加した人はあまり多くありません。先日、2人展をひらいたばかりの加藤D輔さん(北星学園大)が「THESE DAYS」と題してカラーのスナップをならべています。 畠平諭さん(札幌学院大)は、4枚組みのモナリザを加工した作品。 宮下摩衣子さん(北星学園大)は1年生ですが、光のさしこむ静謐な世界を、カラーとモノクロ計8枚で表現しており、今後がたのしみです。 6日まで。 dido05=SAGATIK(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階) didoとは、Digital Illustration Discovery Organizationの略。伊藤昌弥さんが代表を務めるイラストレーターたち10人が、オリジナルのTシャツ計50点を展示販売する、夏にふさわしい催しです。 アートスペース201のakaさんのサイトの掲示板でおなじみの? ドラクエ企画のヤマグチさんも、プラグを題材にしたユニークなデザインのTシャツを出していました。 Jimnyitoさんの、現実には存在しない携帯電話型の製品のリアルなイラストを描いたTシャツがユニーク。蛇腹式カメラのついた木製のケータイ型カメラには、ニヤリとさせられました。 ただ、全体的には、人物のイラストなどが多く、社会との接点は稀薄で、メッセージ性のあるものは皆無でした。まあ、べつにいいんだけど。 6日まで。 暮らしの陶器迷器(ときめき)=ほくでん料理情報館MADRE(同) 「いそじ陶房」(札幌市。水林春巳さん)と「しろくま陶遊舎」(同。水林直巳・瑞絵さん)の合同展。 いい意味で、陶芸の伝統にこだわりを持たない、自由な楽しさのある作品が多いです。 「いそじ陶房」は、お地蔵様の置物や陶片、籐のかごをかたどった入れ物など。「しろくま陶遊舎」のほうは、アスパラガスをあしらったビアマグや、ひとり燗酒セットなど。これは、旅館で夕食をとるさいによく出てくる、固形燃料を使ったひとり用なべのスタイルを応用したものです。 10日まで。 山下康一作品展=札幌市資料館(中央区大通西13) 長野県大町市の画家。すべて水彩です。 「雪の林」「雪の川」といったハイキーの絵が気に入りました。降る雪片をかかずに、全体を白っぽくして、雪の日の視界のわるい風景を描いています。 12月第1週、札幌時計台ギャラリーでも個展の予定。 コケット会展=同 油彩のグループ展。安齋洋子、佐藤ヒロ、渋谷良子、武井信子、武田京子、成澤節子、平井エク、古川貞子、帆足昭子、増子芙美子、百井千鶴子の各氏。帆足さんの「夏の終わり」、増子さんの「あじさい」など、静物画が多く、みなさん一定のレベルにたっしています。 以上、10日まで。 |
7月3日(木) 第35回道都大学中島ゼミ展 版と型をめぐって=道都大学研究センター1階ギャラリー(北区北9西4) フレッシュなシルクスクリーンの作家をたくさん輩出している同ゼミのOBと在校生による作品展。 いつも会場につかっている札幌市民ギャラリーに比べるとせまいので、ひとり1点ずつです。OBでは、若手作家として活動している森迫暁夫さん、ミカミイズミさん(「ワラビモ」でおなじみ)、道展入選の常連の兼平浩一郎さんといった顔ぶれが見えます。 神田真俊さんはなんだか横尾忠則っぽくなってきました。今回は、海パン? の男が登場して、“濃い”作品だなあ。 西村浩一さんは線をたくさんひくのにこだわっているようです。 印象に残ったのは、三田寛明さんです。今回の作品は原爆投下がテーマになっています。重い主題をきっちりあつかい、問題提起になっていると思います。 柴田睦子「月」=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1) まんまるいかたちに、クレーターを連想させる表面が特徴です。 遊星爆弾の落ちた地球みたいですねと言うとあまりにオタクっぽいだろうと思ったので 「月みたいですね」 と作者に話し掛けたら 「月です」 という答えが返ってきました。 そのとおりです。 でも、おもしろい作家だと思います。酒入れは2升ちかくはいるというすぐれもの。 札幌在住。初めての個展だそうです。 |
7月2日(水) きのうのつづき。 LOVE LETTER 笠原昌子作品展=道教大岩見沢校彫刻室ギャラリー(岩見沢市緑ヶ丘2) まあ、ありがちな個展タイトルだな、なーんて思ってたら、ほんとにラブレターを展示したインスタレーションでした。 一昨年から昨年5月までのおよそ1年2カ月間、彼女が、遠距離恋愛の相手とかわした手紙の封筒が、壁に貼られているのです。 その彼氏というのがちょっとかわった宗教を信仰していて、遠距離恋愛の相手とは年に2度しか電話をすることができず、あとは文通しかゆるされていない、書く曜日も決められている、というのです。正直なところ、ほんまかいな、と思ったのですが。 彼から来た手紙やはがきが左の壁に54通、彼女が発信した手紙が右の壁に50通、透明なシートにおさめられ、きれいにならんでいます。相手の名前のところだけは、黒く塗りつぶされています。笠原さんがずっとおなじ札幌の住所なのに、彼のほうは東京、尾道、新居浜、高知県と、転居をくりかえしています。また、彼から来た封筒やはがきはほとんどおなじサイズですが、笠原さんが出したほうは、いろいろな封筒や切手をつかって変化があります。 笠原さんは、人体の彫塑「同芯」で昨年の道展に入選しています。造型がしっかりしていることにくわえ、裸婦像にしてはめずらしく作者の感情がこめられた佳作でした。で、どうしてインスタレーションを? 「教官に、いまやっていることからいちばんとおい作品をつくれと、課題が出まして…」 ソフィ・カル(フランスの現代美術作家)に触発されたものだという。 「彫塑のほうはこれからもしっかりやっていくつもりです」 そりゃ、このネタは、たぶんもう二度とつかえないもんなあ。 それにしても、手紙っておもしろいのは、Eメールやファクスが発信後もじぶんの手元にのこるのに、手紙はのこらない。つまり、ふたりの手紙がおなじ空間に存在するということはありえないわけで、作者は、最後の手紙のやり取りのあとで、相手の手元にあったじぶんの手紙をまとめて借りてきたのです。ほんらい、ひとつの部屋にあるはずのない手紙が、左右の壁にわかれてならんで展示されているというふしぎ。 これが文学なら、まちがいなく、封筒の中に入っている便箋になにが書かれているかが、焦点になるのでしょう。書簡体小説になるのかもしれないし、有島武郎「宣言」のような遠距離恋愛小説もこれまで多く書かれてきました。 今回の個展では、手紙になにが記されているのか、まったくわかりません。それは、或る意味でもどかしいのだけれど、反対に、じぶんの身に引き合わせて、想像の翼をひろげることができます。そう考えると、中味がいっさいわからない封筒の集積というのも、おもしろいものだと思いました。 この世では、アベラールとエロイーズの往復書簡のように世界的に有名なものから、ほとんどまったく外部の人が知ることなく歴史のなかにうもれていくもの(こちらが大多数)まで、おびただしいラブレターのやりとりがなされてきているはずです。笠原さんの文通については、こうして個展がひらかれたりして、多少はいくらかの人が知ることができましたが、無名なやりとりと有名なやりとりとで、恋愛の重要性に軽重があるわけでないのはもちろんです。ラブレターの往還は、当人たちにとっては、人生の中で重大な出来事のはずで、ほかとくらべて重要性がどうのこうのという話ではないでしょう。 北海道の地方都市の片隅に、一連の切迫した往来がひっそりと展示され、それを見に行くということは、なんとふしぎな行為なんだろう−。 ごくシンプルなのに、いろいろなことを考えさせられた、ふしぎな展示でした。 6日まで。 会場には、大学の看板のかかっている玄関から入り、銀行のCDコーナーから道なりに右に曲がり、階段を上がって中二階にあがると、たどりつきます。 まあ、北大工学部などとちがい、それほど大きな校舎ではないので、迷ってもなんとかなりますが…。 岩見沢までは、「Sきっぷ」(自由席特急券付き往復きっぷ。1760円)を買ってJRの特急で行き、駅から市内バスに乗る人が多いでしょうが、筆者は今回、札幌駅ターミナルから中央バスの「高速あしべつ号」「高速いわみざわ号」で往復しました。往復1400円。 「駒園8丁目」(高速を下りて最初のバス停)で降車し、徒歩15分くらいです。 だてまこと展=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20) エナメル状の塗料で表面を覆った、厚さ数センチの壁掛けの立体というのは昨年までと変わりませんが、表面に板や粗い布を張ったり、アクリル絵の具を塗り重ねたりして、表面に凹凸があり、十字の模様も斜めに切れ込んでいるなど、かなり「動的」な印象があります。色も均質ではなく、朱に塗られた表面に白っぽいしぶきが飛ぶ作品もあります。 「これまで静と動ということでいえば、静のほうがつよくて、シェイプもすっきりつくっていたんですけど、それでおさまらないところが出てきて…。ただ塗っているだけというのも、もともとそういう作業はすきなんですが、だんだんつまんなくなってきたというか」 つやつやした表面など、マスプロダクト(工業製品)的なところがかえって魅力だったと思うんですが。 「それをねらってたところもちょっとはありましたけどね」 もうひとつ昨年までとことなる点は、支持体を発泡スチロールから木に変えたこと。もっとも、見た目はまったくわかりません。 木の塊ではなく、板をつなげているので、見た目よりはかるそうですが、加工は発泡スチロールにくらべて骨がおれそうです。十字のスリットの奥にまで塗料がぬられています。 というわけで、作品が自己をいくらか主張する感じになってきているのでした。 6日まで。 関連テキスト:■昨年の個展 赤穴宏新作札幌展=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階) 昨年秋の釧路芸術館でひらかれた回顧展の感動の記憶も新しい、根室出身、東京在住の洋画家・赤穴宏さん。80歳を超したいまも健筆をふるっています。 今回は、すべて静物画。リトグラフが何点かありますが、大半は油彩の小品です。いちばん大きいのが15Pの「紅い背景の薔薇」。題の通り、バックにながれるような筆致で抽象的な模様が描かれており、昨秋釧路で見た近作を思い出させます。 「ばら」は6号。かっちりとしたリアルさ。といって、ごてごてと描きすぎているのでもない。清楚(せいそ)、ということばがぴったりだと思います。 以下は、4号、3号、サムホール、0号など。洋なし、壺、貝などが、おだやかなタッチでとらえられています。 号8万円くらいで、オーナーの渡辺さんは 「相当お安くしております」 と話しております。 13日まで。 あとはかんたんにいきます。 箔と書による華幻の世界 橋本智水展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階) いわゆる書の展覧会とはだいぶちがいます。金や銀の箔をちらした紙や屏風に書を書いていますが、なにも書かれていないものもあり、書はかなりひかえめ。しかも、軸装のうしろの壁に黒いシートをはったり、床につるを置いたりして、いけ花の草月の展示会場にも似ているところがあります。 どのジャンルにもおさまらない、ふしぎな会場空間でした。 釧路在住。 第6回白月会かな書展=同 こちらは、いわゆる書展。 北海道書道展会員で札幌在住の滑志田方〓(くさかんむりに「必」)さんが主宰するグループ展です。 橋本さんも滑志田さんも、師匠が、かなの大家・宮本竹逕というのがおもしろい。 こちらは、宮本竹逕が昭和25年に書いた帖も展示されています。 メンバーが協力して「古筆手鑑」を書いています。題材は、源氏物語などです。 個々の作品には、スマップのヒット曲「世界にたったひとつの花」を書いたものもありました。流行歌と近代詩文というくみあわせはわりあいよく見かけますが、かなで書いたのはめずらしいですね。 本山和泉親子作陶展=同 典型的な備前、といううつわがたくさんあります。 実際に花をいけてあるのもありました。備前は土の色ですから、花器として使うと、意外にあいますね。自己を主張しすぎない、というか。 いずれも6日まで。 第27回全道勤労者総合文化祭〜2003豊かなくらしを創る作品展〜=札幌市民ギャラリー(中央区南2東6) 戦後しばらくは絵にしろ演劇にしろコーラスにしろ、職域でとりくむことがあたりまえでしたが、いま考えると、午後5時以降も職場の枠組みにこだわっていたのがなんともふしぎですね。 この、大規模な展覧会も、はじまった当初はたぶん各労働組合のサークルの文化祭という位置付けだったのでしょうが、いま図録を見ると、所属先に組合の名をしるしているひとは、道教互、全道庁退職者といったOBもふくめて少数派で、情報労連と全開発がめだつくらいです。 絵画は旧作が多いのがざんねん。そのなかでは、加藤清人さん「群衆」、原田勢津子さん「月光に飛ぶ」が独自の世界を現出させているのが新作で、目立ちます。 陶芸では、神山京子さん「青銅の風」が、ふるい土器に似た味わいで連合北海道賞。野澤紀子さん「氷点」が、雪の結晶のようなうつくしい文様を出した大皿で、目を引きました。 ほかに、書、工芸、彫塑、写真など。 6日まで。 |
7月1日(火) きのうのつづき。 今週は、7室ある札幌時計台ギャラリー全室の借り主が異なるという、めずらしい週です。 新出リヱ子個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3) 15年ほど前から一貫してヒマワリをモティーフにして、エネルギッシュな絵を描いている新出さん。 以前はイエローオーカーを主にした絵が多かったように記憶していますが、近年は色彩の自由度がたかまり、ピンクや青が主体だったり、茶系の花々が暗い空間に浮かび上がったり、一見してヒマワリとはわからないような、多様な作品がならんでいます。 しかも、これらは、1点ををのぞけば、すべて年が明けてから描いたというからおどろき。そのうえ、持ってはきたけれど陳列できなかった絵が20点以上あるというのですから、そのエネルギーには感嘆させられます。 多様な色調のものがあるのは、画風がかたまっていないことを示しています。 「まだまだやりたいことがいっぱいあって、いろいろ試してみたいんです」 と新出さん。 ヒマワリを描き始めるときは、ほかにも取り組んでいる人がおおぜいいるという理由で、大半の先輩に反対されたそうですが、ここまで描法が多彩になると、まさに新出流のヒマワリが開花しているといえそうです。 道展と春陽展に毎年出品しています。 おもな出品作はつぎのとおり。 「瞬(1)」「瞬(2)」「群(1)」「群(2)」「舞う」「培う」「絡」「愁」「感」「援」「無」「繁」 船木ゆずか個展 自然のカケラカラ=同 新進のジュエリーデザイナーとして活躍中の、江別の船木さん。この会場でははじめての個展だと思います。 メーンは、シルバーのネックレスやチョーカー、ピアスなど。 男性の筆者があまりじろじろ見ているとどうも場の雰囲気に合わないような気がしますが、女性であればじっくり見たくなる作品ばかりだと思います。 とりわけ、立方体のかたちをしたネックレスや、木の枝を模したジュエリーなどは、船木さんならではの世界です。 田中秀逸油絵展=同 道南方面の方らしく、渡島大島などに題材を得た写実的な風景画がならびます。うまいです。道南の風景画、というのは、たしかにそれで1ジャンルをなしているような気がします。 また、アッシジの夕景を描いた作品は、アンダーぎみの光線がその場の荘厳な雰囲気を再現していて、感動的でした。 武内千鶴子大安展=同 サッカーの絵があったり、歌う徳永英明の絵があったり、ふしぎな展覧会。 第7回木耀会展=同 太田利子、斉藤よね、高橋瑠美子、民門幸子、福家久美子、松岡とも子の女性6氏による絵画展。 斉藤さんの、つぼや花を描いた作品が印象に残りました。ものの本質を見ようとする、いい意味でのしつこさがあると思います。 以上すべて5日まで。 |
6月30日(月) まず7月1日終了のものから。 第17回 北海印社篆刻展=札幌市民会館(中央北1西1) 大柳東里日本篆刻家協会理事が指導するSTV文化教室の篆刻(てんこく)教室会員、東里篆刻教室(道特会館教室)会員および北海印社会友による篆刻作品と書作品の展示。大半が篆刻−ようするにハンコ−ですが、ごめんなさい、筆者はよく見方がわかりませんので、コメントはさしひかえさせていただきます。ただし、ずいぶんたくさんの生徒さんがいらっしゃるのにおどろいたのと、篆刻をじょうずにデザインしたTシャツがあるのに感心しました。 出品者がサイトをひらいています ■ 国井しゅうめい・江利香水彩画展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階) 「江利香」さんは、筆者はずっと「えり・かおる」さんだと思っていました。国井さんの奥様です。夫君のお弟子さんなので、画風はよく似ています。 おふたりは函館在住ですが、国井しゅうめいさんは札幌でもたくさんの生徒さんを教えてらっしゃいます。 透明感があり、ややハイキーぎみの色調、かきこみすぎないさわやかなタッチに持ち味があり、筆者が行ったときは、絵はがきの一部がすでに売り切れ、多くのお客さんがギャラリーにいて、人気があるようでした。 今回の個展では、いなかの風景を、重たくない色合いで描いた大作が目を引きました。 ご本人のサイトはこちら 岩井孝道夏の器展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル) 岩井さんは空知管内長沼町の陶芸家。 岩井さんといえば、なんといってもメロン灰を駆使した作品です。さわやかな、ミントグリーンとも水色とも見える色合い、薄手でシンプルなデザインは、夏の食卓にぴったりです。 茶碗など、ぼうっとした感じの絵付けがしてあります。火だすきみたいに見えないこともありませんが、これは「だみ」とよばれる技法で、メロン灰釉が窯のなかでにじんで独特の表情になるとのこと。 「釉薬がとけてながれるので、縦線より横線のほうがにじむんです」 このほか、ことなる色合いのメロン灰をつかった練り上げの容器、木の壁掛けと組み合わせた一輪挿しなど、さまざまなことにも取り組んでいます。 ひきつづき、1日スタートの展覧会。 香西富士夫個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3) 香西(こうざい)さんは、「貌」をテーマに、独特の絵を描いています。 鬼がわらにも、古代の仮面にも、見えないこともありませんが、ユーモラスな顔つきは、香西さんの絵ならではといえるでしょう。そこには、 背景は、赤、青、灰色の三色があり、いずれも平滑に塗られています。 また、一般的な輪郭線の代わりに、きわめて細い線が幾筋も人物を取り囲んでいます。これは、絵の具のチューブを直接カンバスにこすりつけてひいた線だと、以前お聞きしたことがあります。 2年ぶりとなる今回の個展の展示作では、どれも、人物の目のあたりに、ブルーブラックのしぶきが飛び散っています。 また、一部の絵では、表情にくらべてリアルなタッチの腕がかきいれられているのも、目新しいところです。 「下のほうがどうもさびしい感じがして…。手も表情になりますから」 と香西さん。 出品作はつぎのとおり。いずれも「貌=●●」の●●のところに入ることばです。「貌=おつに」など。 「おつに」「おそらく」「あえて」「いまにも」「さだめし」「おおきに」「きっぱり」「ちょうど」「くしくも」「きっと」「くまなく」「あたかも」「こもごも」「あたら」 写真は「貌=さだめし」。 香西さんは札幌在住。主体美術と道展の会員 橋本礼奈展 2003=同 ハイパーリアルな描写と、青みがかった独特の色彩、毎年のように変わるモティーフなど、若手画家として評価の高かった橋本さん。数年前、札幌から東京へと転居しました。 札幌銀行のカレンダーの原画「美瑛町、麦秋」が、昨年1年間、本店のショーウィンドウにかざられていた(個展にもならんでいます)のをべつにすれば、道内での発表はひさしぶりです。 おもしろいと思ったのが、左の「歌舞伎町一丁目」です。こんな風俗店のある一角を、写真に撮ろうと思う人はいそうですが、絵にする人はあまりいないのではないでしょうか。 秋と春の2回、現地を見たので、左側のビルにうつる光線と、右側の光とが微妙にことなっています。 「看板のアニメ絵の女の子と、その前で客引きにたっている女性とがあまりに違っていておもしろかった。でも、2度目に行ったとき、もうお店はつぶれていました」 このほか、小品で、新宿の想い出横丁を題材にした「米田家」「園」、有楽町のガード下を描いた「街の体内」があります。 右の絵は「南国の朝ごはん」。 リアルないつもの画風にくらべると、いくぶんラフなタッチのように見えますが…。 「いかにも油彩! っていう作品をかきたかったんで。いつも薄塗りの絵をかいていると、こんな画家だと思われちゃうのがおもしろくないし、なにか制約を課してかいたほうがおもしろいかなって。油っぽい、大家の先生みたいな感じでかいてみたんですが、むずかしいですね」 このほか、絵本の表紙の原画、ふしぎなフグが登場する小品、人体デッサンなど、バラエティーに富んだ個展になっています。 主体美術会員。ご本人のサイトはこちら。 時間切れにつき、のこりは翌日。 ▲ |