2002年12月後半
表紙へ 美術展のスケジュール 札幌の12月のギャラリー日程 12月前半へ 1月のだいありーへ
12月30日(月)
sapgreen cafeに行ったら「準備中」の札がかかっていてガッカリです。
あとは開いているギャラリーなどはありません。
みなさん、よいお年をお迎えください。
12月29日(日)
02→03展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)、つづき
印象に残った作品をアトランダムに。
高橋英生さん「天北」
和紙をひし形におき、墨でさっさっと冬の野を描いた、俳画のような小品。カラリストがこういう作品を出すと、むむっとおもいますよね。以前から、2003年になったら故郷の稚内にアトリエを持つと宣言していた英生さん。心はもう北の果てにとんでいるのかもしれません。
八木保次さん「作品 お正月」
寒色系が多い八木さんにしてはめずらしく、ワインレッドや黄緑などの色があざやかに飛散しています。抽象画ですが。
渡會純价さん「慕情」
洒脱な銅版画で人気のある渡会さんですが、今回はボックスアート。銅版画の断片と、ワインのコルクなどを組み合わせて作品にしています。おそらく、ことしのスイス・フランス紀行がテーマなのでしょう。毎年、旅行代理店主催のツアーで欧州にスケッチ講師として旅している渡会さんですが、筆者の目から見ると今回はとくべつ「幸福な旅だったんだなあ」という思いがつたわってきます。
西田陽二さん「果実」
いつもの裸婦像ではなく、メロンを花瓶がわりにして咲き誇る薔薇の花を描写した絵です。白いテーブル。背景には並木と水色の空が見えます。
村本千州子さん「お正月の想い出」
これは細かい! ちゃぶ台、かるたに興じる子供たち、福笑いをたのしむ別のグループ、「婦人の友」を読む女性、部屋にかざられた鏡餅、注連飾りなど、昔の北海道のお正月の様子が事細かに描写されています。ほんとに小さな画面なのに、おせち料理のお重の中の、かまぼこがそれと分かるくらいです。或る年齢以上の人には、ほんとになつかしいでしょうね。
松隈康夫さん「うずくまる日」
白いウレタン? を白い紐でぐるぐるまきにして、なまめかしい人の形に見えてくるのがふしぎです。
加藤宏子さん「improvisation V」
手漉きとおぼしき和紙を、青く塗った板にべちゃっと貼り付けた作品。かたまる前の紙が指と指のあいだからはみでたのでしょうか、放射状に突起がついています。平面と立体の区別を無化しているところは、ほかの作品と共通しています。
岡倉佐由美さん「電脳」
オブジェを組み合わせた岡倉ワールド。羽根、金色に光る脳の模型を中心に、ちいさなアンモナイト、電気回路、コイルなどを配して、独特の世界をつくっており、とくに今回はまとまりを感じさせました。
佐々木けいしさん「甜(てん)」
道展では「工芸」部門に出している佐々木さん。今作は、黒いお盆状に、金色のまだら模様が附着しており、伝統工芸といわれればそうかなとおもわせる雰囲気があります。
泉修次さん「open the door」
8つの黒い木のふたを開けると、なかにモノクロの写真が貼ってあるという趣向。写真はいずれも、西洋の何気ない、古びた街角を写したもので、しかも、建物の下をくぐる通路が多くうつってます。なつかしい感じ。
佐々木徹さん「Touch me!」
ギャラリー門馬のオープニング展あたりから、立体志向がはっきりとしてきたような佐々木さん。今回は、ハート型の容器? にコラージュをかましています。
川上りえさん「particle movement」
平べったい四角錘の四隅から、金属がとけだしているような形状の半立体作品。
守矢有里さん「アレルヤ!」
パステル画らしい。七色の光がふりそそぐなか、飛び立つ鳩。宗教的な空気の濃厚な一枚。
竹内豊さん「手稲山に蜃気楼(02年5月28日午後3時30分ごろ)」
こういう微妙な自然現象って、写真より絵のほうが、見たときの印象に近いことってあるんですよね。でも、あざやかなピンク色をした空のはるか上方に、手稲山山頂の平べったい青い山容が浮かんでいるこの絵は、現実というにはあまりに夢幻的にすぎます。下の住宅街が現実的に過ぎるくらいなので、いっそうふしぎな感じがします。
米谷雄平「さうすぽいんと」
エナメルの緑の曲線がびっしりと全面を覆い、ふたつの小さな立体がくっついています。
田村宏「女神」
さいきんの田村さんは、レモンイエローなど、やたらに彩度の高い色ばかりをつかって、画面をいくつかのブロックに区切ったような絵を描きます。
ほかの出品作家は次のとおり(敬称略)。
浅野天鐘、阿部典英、阿部美智子、荒井善則、伊藤和仁、巖信栄、岩本勝美、上野仁奥、江川博、大島龍、大滝憲二、折戸朱実、柿崎煕、片原早苗、加藤宏子、金子辰哉、金子直人、川上りえ、川口浩、川本ヤスヒロ、木嶋良治、岸本裕躬、北浦晃、工藤悦子、國松明日香、香西冨士夫、近藤健治、斉藤嗣火、櫻井マチ子、白鳥洋一、末武英一、鈴木涼子、関川敦子、高沢のり子、武石英孝、谷口一芳、田村佳津子、友野直美、内藤克人、中田やよひ、中野邦昭、中谷有逸、中吉功、野崎嘉男、畑野天秋、林亨、林田理榮子、府川誠、藤野千鶴子、藤本和彦、藤原守、前川アキ、丸藤信也、道川順也、森山誠、八木伸子、八子直子、矢崎勝美、吉田茂、米澤榮吉、渡邊慶子
表紙でもふれましたが、「札幌彫刻美術館友の会」の会報2号「いずみ」がとどきました。
どうもありがとうございます。
井上みどり学芸員のインタビューを読むと
収蔵品展の展示替えについてはだいたい4人の職員のみで行っているのが実状です。木の作品などは4人がかりでやっとというほど重いのです。今回は幸いにも「北の彫刻展2002」の撤収作業を頼んだ業者に重い石をついでに運んでもらい、久し振りに展示ができました。
展示作品については、本郷新のファンであればなおさら、「この作品を見たいんです」と名指しで訪れる方もいらっしゃいますが、展示してなくてがっかりされ、また代表作と言えるものばかり常設展示すると今度は「変わり映えがしない」とお叱りを頂きます。
などとあり、なんというか、小規模美術館の運営のむつかしさを痛感させられました。
「アートな本棚」に「現代アート入門の入門」を追加しました。
年末年始は、あす更新してから、1月5日ごろまで休む予定です。
12月27日(金)
02→03展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
小品展ではありますが、さすがに道内を代表する作家がそろっているだけに(もちろん、出品していない人もたくさんいますが)、いろんなタイプの作品がならび、見ていて飽きない高水準の作品展になっています。
詳細はあすにでも。
1月5日まで(30、31、元日休み)。2日午前11時から、ラ・ガレリア正面の元気地蔵前で、振舞い酒があるそうです。
堀田真作個展 In dreams begin the responsibilities=this is gallery(南3東1)
昨年(画像あり)とおなじく、アルミの細長い板をつらねた平面抽象作品。
色彩はなく、アルミの微妙な表面の変化でみせる絵画です。
研磨の具合などで、わずかに、おおまかな模様が浮き出て見えます。
透明な樹脂が一部に塗られ、まるで水がしたたっているかのように見えるのが、昨年との大きなちがいといえるでしょう。
28日まで。
「ことしのbest5」に、穂積利明さん(美術評論家、道立函館美術館主任学芸員)の選んだ5つの展覧会を追加しました。
これを読んでいるアナタも、ぜひメールください。
12月26日(木)
廣岡紀子展=ギャラリーどらーる(中央区北4西17 HOTEL DORAL)
廣岡さんの絵は、フランスなど欧州の、おもに田園風景を、穏当な写実によって描いたものばかりです。
いずれも、空は真っ青に、平坦なタッチで塗られ、人物は登場しません。色調はおだやかで、心がやすらぐ絵です。
ふつうの風景画とちがうのは、大作を中心に、風景の手前に、壷や林檎などの静物が置いてあることです。
壷や林檎が、風景を一望できる窓の枠やテラスに置かれてある―という見方もできますし、事実、以前は、窓や建物の存在を感じさせる絵が多かったようにおもいます。
ただし、今回の出品作は、窓の存在をうかがわせるものはなく、一種の構成画のようになっています。
「回想・ギリシャ」で、白い家が斜面に立ち並ぶ街景の手前に置かれているのは、緑のいす、青い花がさしてある花瓶、それに、林檎とおぼしき果実がふたつです。いすなどの色は、ある程度風景からうかびあがっていないといけませんが、かといって絵全体と反撥しあうようなまぶしい色にするわけにもゆかず、選択には苦心したものとおもわれます。
油彩22点を展示しています。
札幌在住、道展会員。
30日まで。
ギャラリーどらーるは、(たしか1998年から)毎年、月替わりで道内の画家の個展をひらいてきています。
ただし、途中の年から、1・2月は、3月以降に個展をひらく画家の小品展です。
来年のラインアップがきまったようなので、ここでお知らせしておきます。
平向さんが日本画なのをのぞけば、ほかは油彩の具象です。
12月25日(水)
小寺智行展=TOM’S CAFE(北区北6西2、札幌駅東口パセオ地下一階)
なぐりがきのような線と色に、文字がくわわった、一風かわった絵画12点。
案内状には「協同 あいのさとアクティビティー・サポートセンター」とあるので、障碍者かもしれませんが、そんなことは関係なく、これまでおなじ会場(喫茶店)でおこなわれてきたPaint Boxの人たちの抽象画とおなじような傾向のように見えます。
ただし、絵に登場する文字が「STVラジオ」とか「さんま」とか、放送関係ばかりなのが、気にならないでもありません。
以前、知的障碍者の展覧会を見たときも、とにかく内容がテレビがらみばかりだったのに辟易したことがあったのを、おもいだしました。
31日まで。
きのうの磯崎道佳展のくだりに、磯崎さん自身のことばを追記しました。
ちょっと古い話ですが、ブティックなどが入っているビル「プリヴィ」(中央区南2西2)のショーウィンドウに、端聡さんのインスタレーションが飾られています。鉄の台に、ちいさなモニターを並べたものです。
HIGHTIDE展のときよりも、映像の速度がはやいような気がします。
街角に現代美術がさりげなくあるというのも、いいですね。
リンク集への追加が相次いでいます(やまだ乃理子、キリヒトツウシン、百合若、久保AB−ST元宏の『共犯新聞』)。北海道に関係があって、視覚に関するものならどしどし付け加えていきたいと考えていますので、自薦・他薦よろしくどうぞ。
12月24日(火)
磯崎道佳展「のぞいて見れば」=SOSO CAFE(中央区南1西13)
一昨年の1−3月、札幌にアーティスト・イン・レジデンスで滞在したり、プラハ・プロジェクト主催で一昨年から昨春まで断続的に行われた「リレーレクチャー40000キロ」に参加するなど、なにかと北海道と縁の深い現代美術家の個展。
縁がふかい、といえば、先日この会場で、道内の美術館学芸員と結婚披露宴パーティーをひらいたんですよ(筆者はれいによって仕事で行けませんでしたが(T_T)
昨秋、渡米直前にテロが起こったりしたので、某artscapeでは、まこちゃんこと村田真さんに「疫病神」のごとく書かれていましたが、これを機にシアワセになってほしい・・・
話を個展にもどします。
「のぞいて見れば」のタイトルどおり、会場内のふたつの柱に、計九つの双眼鏡(ひとつは望遠鏡)がぶらさがっています。
のぞいてみると、おもちゃの自動車が見えたり、灰皿が見えたり…。
会場の窓の外側に、おもちゃの車がならべてあったり、写真パネルにうつった灰皿にピントが合わせてあったりするのですね。これは、たのしい。というか、展示されているもの自体はごく小さいので、双眼鏡をもちいて初めてスケール感が出てくるという、けっしてひろくはない会場を逆手に取ったみごとな展覧会です。
「双眼鏡をのぞく」という、見る側の行為によって初めてなりたつ作品は、コミュニケーションをテーマのひとつにしており、そこが磯崎さんらしいのではないかとおもいました。
ちなみに、入り口のパネルには、こんなことが書いてありました。
私は自分の創造活動において、「コミュニケーション・ツール」としての芸術の力を試したいと考えています。そのために、誰もが心に持つ「子供っぽさ」に焦点を当ててきました。
「子供っぽさ」が含む他人への依存性をコミュニケーションを開く鍵として使い、これを通じて聴衆を巻き込むことによって、引き込まれた人全員の創造性を刺激する事を目的としています。
それは、この過程そのものが完成された芸術作品よりもずっと強く私を魅了するからです。
26日まで。
美術とは関係ありませんが、パンクロックを代表するバンド「クラッシュ」のボーカルだったジョー・ストラマーが亡くなりました。50歳でした。
合掌。
12月23日(月)
家人はどんどん大掃除をすすめているのに、筆者はプチ鬱状態で、ごろ寝ばかりです。
来年3月5−16日にひらかれる「札幌の美術2003 19+1の試み展」の出品作家が決まったようです。会場は、札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)。
今回も、かなり現代美術にシフトした人選になっています。
次のとおり(敬称略)。ことしと重複する人はひとりもいません。
右側の説明は、筆者がかってにつけたもので、主催者がつけたものではありません。また「現代美術」というのは、コンセプチュアルな性質のつよい作品をつくる人に対し、仮につけたもので、「現代美術」と書かれていない人が「現代美術」でない−ということでは、けっしてありません。あくまで、おおよその目安とご理解ください。
真砂さんは、CAIのスクールを卒業する1999年ころはさかんに映像作品を発表していましたが、最近はあまり見かけません。ただし、北海道をふくむ国内外の現代美術作家を英語で紹介する貴重なサイト、ART CORE JAPANは、彼がやっているはずです。
後藤さんも、道内ではこの4年ほど作品を見ていない気がします。抽象画の中堅では、昨年の札幌の美術でつよい印象をのこした杉山留美子さんのライバル的存在であります。
露口さんは、筆者は一時期仕事をたのんでいたのでよく知っていますが、あまり札幌で個展をひらいたりはしていません。「風景論」を発表したグループ展を、札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)でひらいたのって、いつでしたっけ。
また、住所が札幌でないため、これまで「札幌の美術」とは縁がなかった人が多いのも今回の特徴で、川上さんと佐々木さん夫妻、竹居田さん、高橋さんは初登場だとおもいます。
それにしても、このなかで須田さんという方とSPARKさん、筆者はまったく知りません。
ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)での、辻けいさんの展覧会はいいです。近いうちにかならずアップしますので。
12月22日(日)
更新がまたもおくれてます。すいません。
第34回道都大学中島ゼミ展〜版と型をめぐって=札幌市民ギャラリー(南2東6)のつづき。
今回は、染織はすくなめで、東川恵美さんら4人だけ。シルクスクリーンが多いです。シルクは、ほとんどが抽象系の作品で、若さが感じられます。
よーく見ると、ことしの道展に入選している人もいますね。
以下、簡単にいくつか紹介。
宮口拓也さん「シオマネキ」など5点。神田さんの「次」の注目株はこの人か? 電気回路図をコラージュし、林立するテレビアンテナと組み合わせたこの作品など、現代的なセンスを感じます。
橘内美貴子さん「私雨(わたくしあめ)」など3点。抽象なのに、空気感のただようしずかな作品。
関谷修平さん「素顔A」など4点。垂直線のみで構成。
山口加南子さん「威嚇」など6点。曲線と色の塊がひょろひょろーんとした感じ。
24日まで。
市民ギャラリーでは、ほかに、東海大学第四高等学校美術部・中等部美術部校外展、リボンハウス絵画教室クリスマス展示発表会、札幌西高等学校美術・書道展が、22日までひらかれていました。
「リボンハウス」は、入り口に巨大なクリスマスのインスタレーション。
東海大四は、「保守反動」という題の、巨大な絵がみょうに印象にのこりました。青と黒の塊で、何がかいてあるのかよくわかんないけど、でもパワフル。
西高は、山本有希さんの絵「切れ端の空」が、見ててほっとしました。
Tsé&Tsé with marble *=Gallery・Cafe marble(中央区界川2の5の6)
パリ発の大人気のデザインユニット「ツェツェ」の展示会。日本でも本が出ているので、知ってる人、多いのでは?
食器、文房具、器など、センスのいい小物がたくさんあります。
可笑しかったのは「ハンドマフラー」。マフラーの両端が、5本指になってます。
「キュービストライト」は、豆腐を半分にしたくらいの四角形が30個も連なったあかり。天井から吊るすと、2.8メートルもあるそうです。
28日まで。
商品は、オーダーして、あとでパリから送ることになります。
コーヒーを頼むと、550円。おお、値下げしている。今度は、マイルドブレンドを飲みましたが、前回のときの感動は、ざんねんながらありませんでした。普通の味。
ところで、今回発見したことですが、marbleに行くには、市バス「旭山公園線」に乗るのですが、「界川2丁目」で下りるより、終点の「旭山公園前」で下りたほうがラクです。
バス下り場のすぐ上に駐車場があり、そこの公衆電話ボックスの傍らの階段を上って、林の中の小道をぬけてひたすら住宅街の中をまっすぐ歩いて行くと、着きます。ほとんど平らなのがうれしい。
ただ、この「旭山公園線」というヤツが、1時間に1本くらいしかなくて…。しかも、毎時●分、と決まっていない、不便きわまりないダイヤです。
前回も書いたように、円山公園駅から「ロープウエイ線」に乗って「界川」で下りても、行けないことはありませんが、冬道の上りはけっこうかかります。
大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)でのクリスマスCRAFT展、きれいでした。ブランド物のプレゼントに飽きた人はぜひ。きれいな置物など、いっぱいあります。
24日まで。
12月20日(金)
更新がおくれています。すいません。
第3回北海道示現会小品展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
サムホールから20号まで、11人、43点の小品展。大半が油彩ですが、一部に淡彩もあります。
やはり多いのが風景画。草刈喜一郎さんは、いつも外光の微妙な調子を表現しているので感心してしまいます。今回の「開拓者の家」(F8)は、マンサードルーフ(落雪をうながす五角形の屋根)の農家と、そのそばに立つ松や裸木、ふるいサイロなどがおもなモティーフ。手前には、青いビニールシートと古タイヤなどが置かれていますが、画面全体にしっくり溶け込んでいます。ほかに、欧州の家を描いた「とある街角」(P12)。
藤田敏次さんは風景画の油彩3点と淡彩1点。風景画は手堅く、「厚田港」(F8)は空気遠近法にもとづき、緑が遠方にいくにしたがって微妙に青に変わっていくのが美しいです。
清水良洋さんはパリを題材にした油彩2点と淡彩1点。「サンマルタン運河」(F3)は、ほとんど茶色の絵の具だけで描かれた、グリザイユのようなおしゃれな1点です。
米澤栄吉さんは、やはり冬景色が得意のようで、油彩5点と淡彩5点のなかでは、「川端から見える工場」(F12)が、凍えた空気感をよく表現しています。
ほかに、岩佐邦夫、河越幸子、工藤栄三、下田敏泰、新矢清、末永時雄、深田博司の各氏が出品しています。
下田敏泰風景画回顧展=同
示現会の下田さんが、油彩10点による個展を開催中。1990年以降の、公募展で賞を得た作品が中心です。
下田さんといえば、冬の渓流を、やや低い位置から写実的なタッチで描いた絵を思い出します。「早春の漁川」(2000年)は、示現会で佳作になりました。近年は、山道に咲くリンドウなどの野草を題材にした「夏の日の木陰で」など、モティーフの幅をひろげています。
いずれも、22日まで。
芸術の森クラフト工房4人展=アートスペース201(南2西1、山口中央ビル)
札幌芸術の森のクラフト工房で講師を務める4人によるグループ展。
染織の石田美彩子さん「winter」T〜Yが、色の重なり具合などが微妙で、おもしろかったです。
おなじく染織の矢野由貴恵さんは、葉を落とした木々がモティーフになっています。
七宝の加藤幸恵さん、木工の阿部吉伸さんも出品しています。
マンガで見る2002年=同
グループ「札幌漫画塾」結成記念の展覧会だそうです。6人が1こま漫画を展示しています。
北海道新聞「おふたいむ」の大型イラストなど各方面で活躍中のながせ義孝さんが、タマちゃん騒動や「ムネオハウス」など、この1年をふりかえった大量の風刺漫画を出品。さすが、プロだけに手慣れています。
若手(?)では、百合若さんが、タイムリーな作品を手がけています。「将軍様ご立腹」は、007映画の舞台が北朝鮮であることを、北朝鮮の当局が怒っているというニュースを取り上げています。
えんどう眞也、佐藤達臣、梅木修、紫藤霄子の各氏も出品しています。
いずれも24日まで。
ばば のり子 個展〜「elle noel〜彼女のクリスマス」=エルエテ・ギャラリースペース(南1西24、リードビル2階)
油彩、自筆の絵本、淡彩、新聞小説の挿絵、木版画など、バラエティーに富んだ小品展。動物を描いたイラストふうの絵は、女性に人気がありそう。
ギャラリー中央には「ことばのツリー」と題した大きな緑色の円錐様の立体が据えられています。小さなガラス瓶やコルク栓を使った、ユニークなクリスマスツリーです。
25日まで。
杉吉篤個展=ギャラリーユリイカ(南3西1、和田ビル2階)
年末恒例の、ユニークな絵による個展です。
大作のタブローが2点。オベリスク型の、表面に絵を描いた立体が1点。ほかは小品です。
大作のうち1点は、ことし自由美術で入賞した「心」。乳牛の頭に石が乗っかっています。頭部や石がリアルな筆致なのに、牛の腹や乳がラフなタッチで描かれているのも妙です。
もう1点は、ことしの全道展出品作「植民」の左側におなじ大きさの新作をつなげて、「救済と植民」という200号相当の作品にしたもの。左半分が新作の「救済」部分です。石でできたような人物像や、光におおわれた山などが描かれた、ふしぎな絵です。
もっとも、ご本人に聞いても
「(洞窟の上の腕から出てくる)水は小便なんだ」
など、まじめな顔でふざけたことしか言いません。
オベリスク型作品は、RELATION夕張に出品された「記憶」で、ギャラリーの天井が低いので、台をはずすなどして、今回は「つぶれた記憶」と題しています。火山の爆発などが側面に描かれ、いろいろな民族の世界創世神話を思わせます。
小品は、胴体が格子になった乳牛を描いた「絶滅」をはじめ、「歓喜の歌」「マヤ」「発芽」「まどろみ」「闘う王国」「カッパ」「山猫」「進化論」「おりの中」。
27日まで。
第34回道都大学中島ゼミ展〜版と型をめぐって=札幌市民ギャラリー(南2東6)
染織とシルクスクリーンを中心とした、学生と卒業生のグループ展。
このゼミも、けっこういろんな人材を輩出しています。
道展に毎年入選している兼平浩一郎さん(今回の出品作「害虫」は、ことしの道展の「道しるべの空」に似ているんですけど…)
ポップなイラストの森迫暁夫さん(今回は、白黒のかなり大きな作品「モリノコ」)
人物の写真をコラージュしてスピード感あふれるシルクスクリーンをつくる神田真俊さん(今回は「scope」「sadism」など4点)。ギルバート&ジョージにちょっと似てるかもしんない。
は、筆者でも知っています。もうみんなOBだとおもいますが。
しかし、なんといっても、筆者が毎年注目しているのは、ミカミイズミさんです。
ビルの屋上にパンダがずらりとならんで向かい側の熊と糸電話しているとか(ディテールはちがっているかもしれません)、常人の想像力をはるかに超えた愉快なイラストを毎年出品していました。
ことしは、「2・26」「エントロピ→」の2点のイラストのほか、なんと、本になった漫画が3冊。その名も「ワラビモ」です。
意外にも?ちゃんとしたストーリーがあります。でも、主人公のワラビモは、ゲル状物質でできており、ちぎると小さくなる−といった設定は、やはりフツーは思いつかないよなあ。
会場で、販売はできないので、予約を受け付けています。
(つづきは後日)
12月18日(水)
新田志津男展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
山の風景や花を題材にした日本画の小品が20点余り。
もともと細密な描写で山の木々などを描く方でしたが、「山桜」「秋崖」など、ますますこまかくなっているようです。
ただこまかいだけではなく、「秋崖」など、手前に紅葉した黄やオレンジの葉があり、中景に針葉樹の濃い緑、さらに遠くは枯れ木の灰色を中心に配するなど、細心の目配りによって構図が決定されています。
新田さんは札幌在住。新興美術院会員。
なお、このギャラリーは、入って右側が2階建ての画廊、左側が喫茶店になっていて、おちついた雰囲気で休めます。80年代に入ってビル化のすすんだ札幌駅北口界隈で、わずかにむかしのおもかげをのこしている一角といえましょう。
22日まで。
ヒグマ子育て奮戦記 広木忠雄写真展=キヤノンサロン(北7西1、SE山京ビル)
題名のとおりの写真展。すべてカラー。
母子の愛情が感じられるつくりになっています。また、夕闇の中でマス取りにいそしむ姿や、2匹の小熊がひょいと直立しているさまは、なかなか見られない貴重な瞬間をとらえているといえそうです。
ただし、月明かりの中、親子が家路をいそぐようすを写した最後の1枚などは、ストロボのとどく距離に熊がおり、この野生生物の生活圏に入り込んでいるのではないかとちょっと心配。「野生生物をまもろう」とうったえるはずの写真が、野生生物の安寧をさまたげることになっていなければよいのですが。
25日まで。
大野耕太郎作陶展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
衣服のひだや、波を思わせるかたちに特徴のある大野さんのうつわ。
釉薬は、清潔感と優美さのあるレモンイエローと水色が中心です。
メーンは、ことし1月、国際芸術センター青森でひらかれた「北方都市美術展」に出品した「高原の池塘群−雨竜沼」という、10個の大小の陶器を配置した作品。一種のインスタレーションでしょうか。
湖面をすずしい風がわたるさまが、まぶたの裏にうかんでくるようです。
22日まで。
Design Festa 2002=スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)
設立20周年とあって、催しの多い北海道デザイン協議会。
芸術の森工芸館ホールでも現在展覧会がひらかれていますが、現物が多い芸森にたいし、こちらはパネルが中心です。ほかに、会員のコレクション(というかお宝)など。
22日まで。
油展=コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
札教大の油彩研究室によるグループ展。
火の鳥の飛び立つ一瞬を、東洋的な画面処理を意識しつつ描いた阿部安伸さん「鳳凰飛翔図」、スナップ写真などをコラージュした山本雄基さん「変」、ことしの道展で最高賞に当たる協会賞を受賞しすでに画風を確立している山川彩子さん「quietude」など、いろんな絵がありました。
しかし、今回いちばんめだっているのは、とっくに卒業したとおもっていた、ロッパコのメンバーでもある武田浩志さんの「タケダ’s System vol.1」。
巨大な木製の箱で、1カ所に扉のない戸口があって、中にはいれます。中には、えんえん7曲14双も連なるミニ屏風風の絵や、どうみても谷口顕一郎さんの「凹みアート」としか思えない作品、さらにはウサギのぬいぐるみなどが無造作に陳列され、「展覧会内展覧会」の様相を呈しています。
これも22日まで。
「ことしのベスト5」 のページをアップしました。みなさんの投稿、お待ちしております!!
けさの朝日新聞に、名古屋のヒマラヤ美術館から、三岸好太郎や節子の絵が、担保となって流出しているという記事が載っていました。
菓子店の経営するこの美術館は、好太郎はともかく、「三岸節子展」のさいに、所蔵先として名の挙がらないことはないほど有名です。
12月17日(火)
福司重 楽写展=ギャラリーノルテ(中央区北1西6、損保ジャパンビル3階)
カラー37点。
羊蹄山と洞爺湖をバックに咲く桜、網走管内女満別町の防風林など、だれしもがきれいと思うような風景写真。
21日まで。
会場が半分しかつかわれていないので、例によって「ノルテ・コレクション展」なるものがひらかれています。
斎藤洪人さん「オビトス」、青野勝昌さん「光る朝、オホーツクから」、今本昭夫さん「ノサップ岬」、香取正人さん「夕景」など、しぶい風景画がならんでいます。
さて、ノルテに行くたびに気になっているのですが、むかいのNTTのビル、どうやら引き払って、近々解体されそうな気配であります。
このビルは、戦前に建てられたもので、南側の窓が大きいのが特徴です。モダニスム建築の名作だと思うのですが、さて、どこからも反対の声など出てないのでしょうか?
丸井今井の地下で、妙な袋菓子を見つけました。
その名も「美術菓子」。
下に小さく「ART COOKIE」と英語が併記されています。
片側に、白、黄色、ピンクなど色をつけた砂糖をぬった、よくある種類のビスケットです。
もう片側に絵が描いてあるのですが、型が磨耗しているのか、いったいなにがかいてあるのかわからない(^_^;) 「紋付をきたサル」「こま犬」は確認できたので、動物ビスケットだとはおもうのですが。
それにしても、どこが「美術」なんでしょう。
しかも、袋の裏側には
品名 動物ヨーチ
って書いてあるし。
「ヨーチ」ってなんだ。
製造者は東京・足立区の黒川製菓。200グラム入りで200円でした。
12月16日(月)
北海道版画協会 小品展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
一原有徳さんが新作「VA」「CYI」を出しています。
しばらく体調がすぐれないといううわさを聞いてましたので(そりゃ、明治生まれだからなあ。むりもない)、とりあえずホッとしました。
作風はいつもながらの、摩訶不思議な抽象世界。題が意味不明なのも、いつもとおなじです。
旧作を、シート1万円か8千円で販売しています。戦後日本の版画史に欠かせぬ作家で、すべてモノタイプであることを考えれば、これはやすい。
小品展なので、いつもと異なる作風にチャレンジしている人が多いのも見どころ。
絵本の絵、マレーシアの街路など、風俗画(ちょっとふるい言い方?)の多い大井戸百合子さんは「中央アジアの模様から」と題し、布の模様をデザインしています。
大野重夫さん「羊蹄山眺望」は、青い山塊をどっしりととらえています。
尾崎淳子さん「水澄む」「雪のたより」は、寒色を効果的につかった抽象画で、清冽な色彩感覚です。寒色の使い方のうまさでは、吉田敏子さんの連作「凍土」も同様。こちらはもっと深い青ですが。
大本靖さん「北の湖」は、魚と抽象模様を組み合わせて画面を構築しています。相撲がモティーフではありません。
白山久美子さん「萌(KIZASHI)」は、大きな色塊のあるいつもの作風とことなり、C字型の模様が浮遊する作品。ビリジヤン、黄色、黒という取り合わせは白山さんらしいです。
早川尚さん「夜の魚」は、ほとんど抽象作品になっています。深い空気感があります。
古代の遺跡などをモティーフにすることが多い三島英嗣さんは、「雨がやんだら」など、バーを題材に都会的な作風の3点を陳列しました。
17日まで。