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あーとだいありー 2003年9月前半

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 9月13日(土)

 第8回 美工展会員展 「遊」=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 1973年に発足、工芸だけの公募展である「北海道美術工芸協会」が、毎年秋にテーマを決めてひらいている会員展。
 50人あまりのうち、押し花、織、金工、刺繍、染織、籐、陶芸、人形、布工芸、比較、木彫、木工、和紙の各分野の計42人が出品しています。分野が多岐にわたるので、たいへんバラエティーに富んだ作品展になっています。
 ことしのテーマは「遊」。よって、それぞれの題名はありません。材質であそぶのか、かたちであそぶのか、はたまたあそびを題材にするのかは、各自の自由にまかされています。
 高木晶子さん(事務局長)は、今回は着彩なしです。それでもバックスキンの帯によって微妙に色がことなるのは、経年変化によるものだそうです。
 土屋秀樹さんは木工のあかりを出品。たくさんあるスリットから電燈のあかりが漏れる作品ですが、フォルムのやわらかさはさすがです。
 橋本紀比古さんの人形はユニークなかたち。娘さんの結婚式の引き出物にするそうです。
 多比良桂子さんは、白樺の樹皮を多く用いており、一般的な押し花にくらべ色彩をかなり絞った、しぶい作品になっています。
 14日まで。

 関連ファイル:■4月の第30回展
 ■2002年の第29回展

 さらけだし exhibitiongallery Strawberry's (中央区南2西1ライズビル3階)
 フォトグラファーで、現代美術のフィールドでも活溌(かっぱつ)に発表活動をつづけている山岸誠二さん(札幌)が、「やまぎしせいじ」名義で、大きな写真作品を2点(「時ヲ待ツ」「ブクブク」)を出品しています。
 後者は、水の泡などをマクロ撮影したもの。大写しの迫力と、微細な描写が両立しています。
 ほかに、CHISHU(S.O.T.F)、Tadashi、Hiroto、anna、C.ヤマチコフスキーの各氏が出品。
 15日まで。

 第21回清池会書展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)全室
 札幌、滝川などの51人が1点ずつ出品。すべて漢字です。
 藤根凱風さんの指導する会の書展のためか、創作作品は、どこか肩の力がぬけた、自然体の作品が多いような気がします。
 森田翠葉さん(江別)の「聲心」など、淡墨ですが、余白のとり方など、「技あり」といった趣です。
 もっとも、半数以上が臨書です。金文から楷書まで、とてもていねいに書かれています。
 14日まで。

 蒼樹会北海道支部小作品展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 穏やかな写実の油彩(一部、水彩とペン画)がならびます。すべて4−10号の、したしみやすい絵です。
 会場でくばっているリストのほかに、齋藤義雄さん(江別)が「秋の彩り」「大夕張懐古」の2点を出品していますが、これがなかなか佳品です。
 下山康麿さん(札幌)「麓の想い」「浜の憩い」は、精緻な筆致が持ち味。それにたいし、川上清泰さん(同)「早春の羊蹄」「紫陽花」は、適度な省略によるおおまかなタッチが快いです。
 中山美津子さん「秋色」は、夕方の湖畔の風景がモティーフ。空や湖面を、オレンジではなく、ばら色にしたところが、きいています。
 江別の阿部信男、大谷木宏祐、大澤誠睦、札幌の安宅幸恵子、佐藤典彦、関根すず子、出邑勝之、舩腰とみ子、美濃川弘子、百島忠雄、森スズ子、横道実、山村哲雄、後志管内岩内町の岡田順之助、桜井寛、同寿都町の長内秋夫、美唄の小柴弘、空知管内新十津川町の田村隆の各氏も出品。

 油絵 備前焼展=同
 石狩在住の池畠史幸さんの油彩が中心。
 例によって、赤い馬の絵、コスモスの絵が多いですが、利尻富士を望む日本海の絵もあり、作風が多彩になってきています。

 以上、14日まで。

 山田澄子遺作展札幌市資料館(中央区大通西13)
 昨年87歳で亡くなった山田さんは生前、ピエロの絵などを、新道展に出品していたようです。油彩など50点あまりを展示していますが、遺作展ということで、題名や制作年代の不明なものが大半を占めています。
 題材も、風景、静物のほか、抽象画もありました。
 さらに、昭和初期、16歳のころ描いたという静物画もありましたが、褪色がまったくなく、またモティーフをおおづかみでとらえた腕も確かだと思いました。

 酵母展Exhibition 19=同
 女性によるグループ展。例年、たのしい作品が多いのですが、ことしは「お笑い系」は、福士幸子さんの「蛙男爵」など油彩4点のみで、いつになくシリアスな印象を受けました。
 立体イラストなどで活躍中の杉吉久美子さんが、これまたいつになく夫の杉吉篤さん(全道展会員)の絵と共通する感覚の立体を発表していたのも意外な感じです。「クカンタンカ」は、頭に羽根をつけ全身に刺青を入れた人体像で、アメリカインディアンの自然観などを色濃く反映しています。
 池田裕貴子、木下真佐江、菊田優子、高村昌代さんも出品。

 岡敦哉作陶展=同
 粉引、焼締などもありますが、印象に残ったのが、渋い銀彩や黒釉によるうつわです。手びねりらしく、ごつごつしたフォルムに力強さと剛直さのようなものを感じました。

 このほか、国井周明さん門下の水彩展「十人十色展」と、「和紙による印半纏 其の参 町火消し四十八組 他 フィッシュカービング 其の拾 木から魚は誕生(うま)れるか!!」という長い題の個展もひらかれています。
 以上、14日まで。

 今井トゥーンズ 展覧会「RESPONSE WAR」SOSO CAFE (ソーソー・カフェ)(札幌市中央区南1西13 三誠ビル)
 山口裕美さん「tokyo trush」(美術出版社)の表紙イラストなど、第一線で活躍するアーティストの、札幌では1年ぶりの個展。
 会場中央を飾る巨大なイラストは、オープニング(8月30日)のとき、あらかた描いて持ってきた作品にスプレーなどで、ライブで着色したものだそう。
 各作品に共通するモティーフは、地面を突き破って出てきたゴツゴツした手がスプレー缶を手に持っているというもの。すごく動感がある。
 リーボックと組んで、スニーカーに着彩したレアな作品もあります。
 30日まで。

 9月12日(金)

 道立近代美術館(中央区北1西17)で開催中の「北海道立体表現展」に行ってきました。
 おもしろい展覧会でした!
 15日までの開催です。
 「展覧会の紹介」は執筆中です。いましばらくお待ちください。

 精霊の島タスマニア 相原正明写真展富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館)
 オーストラリアの南に浮かぶ、北海道よりちょっと小さいくらいの島、タスマニア。
 オーストラリア大陸とはことなる自然があるそうです。
 そこの湖や森、海辺などを写した写真展ですが、もう、ため息が出そうなくらいのうつくしさ!
 これほどうつくしいネイチャーフォトを見たのは、ほんとうにひさしぶりです。すくなくとも筆者の、すごく好みです。
 「晩秋の夜明け ドーバー」などを見ていると、茜色に染め上げられた空が、この世のものとは思えません。
 一方で「霧の朝 セントラルハイランド」は、神秘的な美をたたえています。
 ユーカリの森を、広角レンズ、仰角でとらえた1枚には、森に対する畏敬の念がこめられています。
 50枚近くのカラー写真がならんでいますが、人間はまったくうつっていません。ただ、雄大な光景や、凍った木などがうつされているだけです。
 それぞれの写真もすばらしいのですが、デッドツリーという枯れた木の写真を、展示の流れの節目に配置し、全体に物語性を持たせているのも、おもしろい試みです。
 さらに、荘厳な作品世界に対し、それぞれにつけられているキャプションが、酒を飲みたくなったとか、人間くさいことばで、その対比もユニークだと思いました。デッドツリーの前で、じぶんが以前落としたニコンのレンズキャップをひろった話なんて、おもしろいなーと思いました。
 中判カメラも駆使しており、それぞれのプリントの質の高さはさすがプロという感じです。
 17日まで。

 解良泰生染色展=工芸ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28)
 ろうけつ染めの作品展。ですが、「ろうけつ染め」と聞いてイメージしていたものよりも、ずっと渋い感じでした。「きれいで、渋い」という形容があいそうです。
 それは、タペストリーなどの布が粗いためでもあるようです。「花鳥風月」「楽」などと題した作品は、自由な文字が躍ります。また、「アグルイエロー」「アグル紫」などは、色のうつろいがうつくしく、テーブルセンターなどにするには惜しい気がします。
 ほかに、シンプルなデザインのパーティションや、格安のフリーマットなど。
 ギャラリーの佐藤睦子さんは
「柄がきれいなので型染めとまちがえる方がいらっしゃるのですが、ひとつひとつ手で描いているんです」
と、デザイン力、絵画力を強調していました。
 解良さんは京都在住。
 14日まで。

 陸人(ろくにん)展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
 道内から国展の工芸部に出品している片岸法恵(室蘭)、堂間葉子(札幌)、水嶋幸(同)、染の竹田園子(同)、陶芸の七尾佳洋(檜山管内厚沢部町)、木工の府川晃(胆振管内大滝村)の6氏がはじめてひらいているグループ展です。
 府川さんはギャラリー紀などの個展でおなじみ、木目を生かしたシンプルなうつわを出品しています。美術、というより、木地師とか職人ということばが似合う作品群です。
 片岸さんの「秋の声」は、玉ネギ、ゲンノショウコ、栗などで染めた和服。しぶいっす。
 しぶいといえば、七尾さんのうつわもしぶい。飴釉の練りこみのほか、藁白釉の皿の灰色は、なんともいえないしぶさと温かみをかもしだしています。
 堂間さんのテーブルセンターはリバーシブルで、ていねいな仕事ぶりが光ります。絹をつかっていますが、素朴な風合いです。
 水嶋さんは厚手のタペストリー。赤など、色合いが独特です。
 異色なのが竹田さんの帯や布です。ポップというのか、ひとむかし前の少女趣味というのか、ソーダ水でも入ってそうな色とりどりのガラス器の文様の型染めは、和服の固定観念を打破したユニークな作品。こういう着物が出てくると楽しいですね。
 14日まで。

 阿部典英《貝と遊ぶ》TEMPORARY SPACE(中央区北4西27)
 ご自身が組織する「北海道立体表現展」もふくめると、なんといま4つもの展覧会がひらかれているアベテンさん。そのタフネスさには、おどろくばかりです。
 この展覧会は、コラージュによるボックスアート9点を展示しています。シリアスな作品を制作しつつも、こういうわりと軽めの作品もつくれるところが阿部さんの美質だと筆者は思っていますが、ただ軽いだけじゃなくて、疎開先の後志管内島牧村で羽を伸ばした日々の記憶が、普遍的ななつかしさに昇華されているのです。
 題名は「貝に遊ぶ」ですが、貝がつかわれている比率はわりあい少なく、素材は流木やカラスの羽根、小石など多彩。なかでも、マーブルチョコの箱やハチの模型をあしらった箱は
「どうしてこんな安っぽい素材でこんなにかっこいい作品が出来るんだろう」
と思ってしまいます。
 14日まで。

 佐藤けい陶芸展(「けい」の字は火へんに「圭」)器のギャラリー中森(中央区北4西27)
 北大在学中、札幌・円山で売られていた楽焼を見て陶芸の道を志し、京都工芸繊維大に入学、いまは群馬県に窯を開いています。
 おもにとりくんでいるのは須恵器(すえき)。奈良から平安にかけて造られた無釉のうつわで、還元のために微妙な青みが出ます。うつわのなかからにじみ出てきたようなかすかな青みが、なんともいえない深みを感じさせます。
 作品は食器や花器が中心です。
 14日まで。

 ハーブ・リッツ写真展大丸札幌店(中央区北5西4)
 歿後、世界初の回顧展といううたい文句は、うそではないらしい。
 札幌のあとで、東京、京都、大阪の大丸各店を巡回するとのことです。
 「セレブリティに最も愛された写真家」
というコピーも、たしかにそのとおり。
 彼の出世作となったリチャード・ギアや無名時代から複数のカットがあるマドンナをはじめ、メル・ギブソン、トランペットを手にせずにほおをふくらませたディジー・ガレスピー、作品で顔を隠したデイヴィッド・ホックニー、ニューエキスプレッショニズムの画家クレメンテ、ポップアートのロバート・ラウシェンバーグ、キース・ヘリング、おなじくロイ・リキテンシュタイン、カール・ラガーフェルド、バーブラ・ストライザント、仰向けになって寝そべるシニード・オコナーの横顔、ショーン・コネリー、アレサ・フランクリン、アントニオ・バンデラス、後ろ向きのマイケル・ジョーダン、ハリソン・フォード、ジョディ・フォスター、ドリュー・バリモア、ジャック・ニコルソン、トム・ハンクス、彫刻家のルイーズ・ブルジョワ、ヌードのシンディ・クロフォード、U2のボノ、アーノルド・シュワルツェネッガー、ゴルバチョフ元大統領、ネルソン・マンデラ、ブルース・スプリングスティーン、物理学者スティーブン・ホーキング、立ち小便をする後ろ向きのショーン・ペン(これがほんとの立ちショーン・ペン。くだらん…)、なかば顔を隠したプリンス…。
 きりがないのでそろそろやめます。
 すべてモノクロ。しかも、本人が
「(抽象彫刻の巨匠)ブランクーシが好き」
と公言しているように、シンプルなかたちへの嗜好(しこう)があります。ですから、どこかメイプルソープを思わせないでもありません。もっとも、あそこまでストイックに裸体の美を追い求めているわけではない。また、裸婦に泥を塗ったり、黒くしたりしているのは、マン・レイみたいです。
 ただし、いろんなことをこころみているにせよ商業写真家としての立ち位置はわすれてないという感じはします(これは褒め言葉)。もちろん、凡庸な肖像を撮りつづけているわけではない。日常的に押し寄せる、スターを撮るという仕事の枠組みで最大の冒険心を発揮するという職人魂ってやつを感じました。
 筆者は、ハーブ・リッツという名を聞いて思い出すのが、じつはカズ、つまりサッカーの三浦知良選手であります。彼の肉体美をとらえた写真集が90年代なかばに出版されていますが、この写真展では略歴に1行「KAZU」とあるだけで、作品はまったく黙殺されています。たしかにねー、こういう場に日本人が出てくると、ハリウッドのゴージャスな雰囲気が台無しかも。
 15日まで。

 原田ミドー展千歳鶴 酒ミュージアム(中央区南3東5)
 江別在住で、この夏からバルセロナに滞在している彫刻家の原田さんの個展。
 近年精力的に取り組んでいる「竜の舌」や、崇高ということばがふさわしい傑作「祈り」といった彫刻もありますが、意外なことに? 展示の中心は「かぎろひ」と題された絵画の連作。
 世界各地で見た夕焼けの感動をそのまま画面に定着させた作品で、20点ちかくあります。
 まあ、いわれなければ、赤系の抽象画にも見えますが。
 原田さんは、じぶんの感動に素直なのだな、と思いました。
 25日まで。

 
 9月9、10日(火、水)

 今週の札幌時計台ギャラリーは、全室とも見ごたえある展覧会になっています。

 川畑盛邦展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西2)
 川畑さんは画家一家として知られ、奥様の和江さんと交互に、隔年で個展をひらいています。
 アクリル絵の具による約20点を展示しています。
川畑盛邦さんの作品 微妙な中間色を活用し、風景の中にたたずむ人間を描きます。デフォルメのしかたは、川畑さん独特のものがありますが、高い描写力が基盤になっています。
 しばらく、南米に旅行した際に見た、マヤ文明のピラミッドなどのモティーフが背景に描き込まれていましたが、さすがに旅行から年月がたち、背後にあらわれるかたちも抽象的なものにかわってきたようです。
 今回は、画面中央の女性が球の上に立っている絵が数点あり、一見安定した人間の土台もじつは不安であることを象徴しています。
 全体として、おつゆがきが若干減り、平坦に色を重ね塗りする背景が多くなったような気がしますが、絵の具の飛沫(ひまつ)をパッととばしているのが、画面のアクセントになっています。
 さて、今回の個展であたらしいのは、人間ではなく樹木をメーンのモティーフとした、小さめの絵が2点あること。次への展開かもしれません。
 道展会員。札幌在住。
 関連テキスト:■2001年の個展

 福岡幸一版画展=同
 どういうわけか、南区・石山の「ぽすとかん」とか、サッポロファクトリーのMADREとか、一線の作家があまりつかわない会場での個展が多かった福岡さん。時計台ギャラリーは十数年ぶりだそうです。
 近年ずっととりくんでいる、古い巨樹を写実的に描いた銅版画やシルクスクリーンがならびます。シルクは、銅版画をもとにしたもののようですが、あえて色を1色にしぼっています。この地味さがいいんだと思います。木の生命に対するオマージュが、ものすごくすなおに、シンプルに表現されているという感じがするんです。
 南区・小金井の桂など旧作が多いですが、後志管内仁木町のリンゴの木を描いた新作が3点。リンゴの場合、年輪を重ねると、巨木になるというよりは、横に広がっていく枝ぶりがおもしろいです。
 「このちかくにある樹齢100年の木はたぶん道内でいちばん古いリンゴ。下絵はあるんだけど、まだ作品にしてなくて…」
 福岡さんは、春陽会、全道展などの会員。札幌在住。アンモナイトの専門家でもあります。
 福岡さんのウェブサイトはこちら。
 関連テキスト:■2001年2月の個展

 坂田雅義陶俑展 私家版読書日記=同
 いつものフクロウなどにくわえ、坂田さんがわかいころ親しんだ小説家・詩人などの半坂田雅義陶俑展の会場風景身像がずらり。シェークスピア、ドストエフスキー(写真右)、シャーロット・ブロンテ、サガン、パール・バック、日本人では夏目漱石(写真右から3人目)、芥川龍之介、森鴎外、宮沢賢治、太宰治、松尾芭蕉など、ざっと50人。現役の作家もいます。
 じっさいの肖像ににていることよりも、雰囲気を重視。清少納言などは、坂田さんとしてはめずらしく着彩され、宮中を走り回る姿でつくられています。和服姿の樋口一葉や与謝野晶子も、気分が出てますし、石川啄木はいかにもなまいきそうです。
 時計台ギャラリーのオーナーで、仮想戦記のシリーズで知られるSF作家、荒巻義雄さん(写真右から2人目)もいます。
 それにしても、坂田さんの読書家ぶりには恐れいります。「トシをとるとなかなか本が読めなくてね。老眼にもなってくるし。でも、いま再読すると、若いころとまた違った感想を抱くよね」
 坂田さんは帯広在住。毎秋、このギャラリーで個展をひらいています。

 第31回美術文化北海道支部展=同
 シュルレアリスムなどの絵画が多い全国公募展。メンバーが、先日終わった新道展とかなりかさなるのですが、新道展よりも力が入っている人が多いような気がするなあ。
 新道展に作品を出していなかった金子賢義さん(夕張)なんて、「化石」「海底」のほか、木版画を含めて小品を大量に出品しているし、藤野千鶴子さん(札幌)「宙 天使たちのイーヴァム04」も、新道展より大きいぞ。
 金子さんは、文明の終末を予見したような絵をよく描きますが、「化石」は、夕焼けのひろがる海のような砂漠に、1組のしゃれこうべがいつくしみあっているという図柄、
 藤野さんはふつう、紺や黒などのくらい画面に白い光や線がおどる画面が多いのですが、この絵はめずらしく、全体が薄いベージュ系の色で覆われ、明るめな大作に仕上がっています。
 モティーフに変化が見られたのが柳川育子さん(同)。いままでは、風にはためく布に覆われた樹木や花を描いていました。「空より(1)」「空より(2)」のいずれも横長の構図。布のようなものが中空に浮かんでいるのは、これまでの作品とにていますが、それにたくさんの球がからみ、下方には海や、草の生えた岸辺が見え、奥行きのある風景がひろがっています。
 「最初、下地を塗り終わったときはなにを描くかぜんぜんきまってなかったんだけど、空を描きはじめたらなんとかなった」
と柳川さん。おびただしい球は、自宅のとなりにある保育園から或る日とんできたシャボン玉がヒントになったそうですが、薄い茶色に塗られ、シャボン玉とはことなる重みがあります。
 永井唄子さん(函館)「衝動」は、1本の腕がぐんと突き出た周囲に、線や細い直方体がびっしりと走り、動感でいっぱい。ロックの初期衝動ということばを思い出しました。
 鈴木秀明さん(同)は「王朝の谷」「ド・セノンヌ夫人の肖像」。いずれも、崩壊と終末の感覚に満ちています。後者は、朽ちかけた石彫が精緻(せいち)な人形のようにも見えてきます。
 ほかのおもな出品作はつぎのとおり。
 三浦恭三(小樽)「カプセル」「循環5」
 宮沢克忠(帯広)「ブダペスト旅情」「祭りの後で」
 細野弥恵(札幌)「黙示録」
 大林雅(同)「なかよし」「不安」
 西田靖郎(檜山管内熊石町)「eclipse」
 青山清輝(岩見沢)「存在−オブジェ的発想による空間思考’03−1」「存在−オブジェ的発想による空間思考’03−2」

 関連ファイル:■昨年はこちら  ■2001年

 展覧会の紹介に「THE ドラえもん展」を追加しました。「美術ペン」110号の文章と基本的におなじものです。

 9月8日(月)

 炎・彩 −北の大地で出会って−=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 備前焼作家の榊原學(岡山県)、キルトアーティスト平澤由美子(横浜)、創作洋服の樋口有紀(札幌)の各氏らによる展覧会。
 榊原さんは、親子で、スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)で展覧会をよくひらいています。また、平澤さんは昨秋、札幌市資料館で道内初個展をひらきました。
 もともと北海道に関係ない人たちが、北海道で出会ってしまって展覧会をひらいているというのは、なかなかおもしろい現象です。
 榊原さんの、火だすきなどもみごとですが、ともすればお稽古事のイメージが強いパッチワークキルトの世界で、独創性のある仕事をしている平澤さんの作品に感心しました。今回は、竹林をモティーフにするなど、日本的なものをたいせつにしています。
 9日まで。

 第10回香墨会展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 廣瀬香雲さん(札幌)が事務局をつとめるグループ。
 大半がかな作品で、わりあい有名な短歌が多いので、暗記している人は読解にチャレンジするのもいいかも。
 9日まで。

 のこりはあした更新。
 なお、展覧会の紹介に「THE ドラえもん展」を追加しました。「美術ペン」110号の原稿と基本的に同一です。
 9月7日(日)

 2003 小樽・鉄路・写真展=旧手宮線跡(小樽市色内2)
 毎年恒例、屋外での写真展。
 30人以上は出品してたでしょうか。ことしは、モノクロが多くて、見せ方に凝ったインスタレーション的な作品がすくなかったような印象です。
 たくさんあるので、気になった人の写真についてひとことずつ。
 川真田健さん カラー。がらんとした家の中に、テレビやストーブが置かれている1枚がよかったです。
 北側恵世さん「道行」 息苦しささえ感じさせる植物の繁茂をとらえてユニーク。
 齋藤市輔さん「オタル」 夜景のうつくしさはあいかわらずです。
 湯山美里さん、大滝恵さん、岡島貴衣さん、生田紗苗さん ひとまとめにしちゃうのもどうかと思うけど、みなさん藤女子大っぽい。モノクロの、ひくい視線で、身のまわりをとらえた写真群。この地味なしずけさがいいんですよね。このなかでは、岡島さんがちょっと明るめな感じかな。
 紅露亜希子さん 彼女は藤女子大です(^_^;)。すごい枚数を出しています。小樽市花園を撮った一群は、ころがっている酒瓶などに目が行くところがおもしろい。お祭りを撮ったほうも、猥雑な活気が感じられます。
 斉藤雅克さん カラーを布にプリントした大作。娘さん、大きくなりましたね。
 杉坂真由美さん 夜のクレーンや港湾施設などをとらえた連作。テーマが絞りきれているのがヨイです。
 瓜生裕樹さん「my bookmark」 手製の看板に写真を貼り、見やすくしています。小樽の風景でも、画面に路面が占める割合が高いのが、この人らしさのようです。
 細谷京さん カラー。やはり風景をたくさん撮っていますが、人工的な色彩に興味があるようです。
 大友俊治さん 16枚のモノクロ写真をつなげて1枚の、波打ち際とおぼしき被写体の作品とした労作。
 大瀬歩さん ことしのライジングサンロックフェスティバルを、アーティストをまったく撮らずに、テントや空などの写真だけで構成。カラー。
 石川ひとさん 本の形式による出品。アラーキーの影響は明白だけど、でも、アラーキーよりピュアで、せつない。もし、写真に附されたことばがなかったとしても、ただの道路の写真でも、せつないのだ。これはどうしてだろう?

 7日で終了。
 昨年の鉄路展はこちら

 「展覧会の紹介」に「レームブルック展」を追加しました。

 9月6日(土)

 わー、これでは「あーとだいありー」じゃなくて「あーとうぃーくりー」だ!
 1日に見に行った展覧会もあるのに、書く時間がなくて、こんな事態になってしまい、おわびいたします。

 木村富秋展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 木村さんは全道展会員。いまは事務局長の職にあり、うちあわせなどでいそがしい日々をおくっています。独立美術でもこの数年入賞をつづけている実力派の画家です。
 全道展の中堅画家が2年に1度展覧会をひらいている「ACT5」のメンバーでもあります。
 ここ数年取り組んでいる「鳥唄」のシリーズ木村富秋「鳥唄」は、人物と小さな鳥をモティーフに、背景には色の塊や線が躍る絵です。
 抽象画ではないのですが、背景の色や線、さまざまなかたちは、ノンフィギュラティブで、その配置の巧みさには、舌をまかざるをえません。じつにうまいです。とりわけ、輪郭線ではない黒の線がぱしぱしと画面を走っているのは、動感をあたえるのに効果をあげているようです。また、色も、微妙な中間色をもちいています。
 「公募展に出す絵は、そうもいかないところがあるけれど、それ以外の絵はなるべくシンプルに、シンプルに−と心がけてます」
 ところで、筆者が気になっていたのは、ACT5ののこる4人がいずれも、造形以外の要素を画面に取り入れようと試みているのに、木村さんだけがそういう志向から一線を画しているように見えることです。
 「そうだね。ぼくは、絵の中に思想みたいのを入れるのがあまり好きじゃないんだな。ACTのなかでは異質かもしれない」
 でも、全道展のなかでは、栃内忠男さんはじめ、遠藤ミマンさんとかデュボア康子さんとか外山ムツ子さんとか、むしろ造形第一の人が主流なんじゃないかなあ。ごく乱暴にいうと、デュシャンじゃなくて、マティスなんだよね。
 「形にしても色にしても、まだまだやることはいっぱいあると思ってる」
と木村さんは話していました。
 札幌在住。個展は3年ぶり。

 矢崎勝美展 Cosmosシリーズ=同
 矢崎さんは、18−28日に道立近代美術館(中央区北1西17)でひらかれる国際版画展「アジアプリントアドベンチャー」の事務局もつとめています。こんな時期に個展をやってて、だいじょうぶなんですか?
 「個展は毎年この時期なんだ。それにしてもいそがしくて、まいったよ」
 矢崎さんの版画は、シルクスクリーンをベースにしたモノタイプです。フラットな黒や赤、青を背景矢崎勝美「cosmos」シリーズに、星雲や星をおもわせる白い点や、輪郭のあいまいなかたちが明滅し、宇宙の広がりを表現した、シャープかつスマートな作品です。
 ときには、おなじ作品をつなげて、まるで壁紙のようにギャラリー空間に展開したこともありましたが、今回は、1−3点ずつを額装しています。
 近年の特徴は、デカルコマニーを背景にとりいれたこと。油が水面にうかんだときのような模様です。
 そのぶん、手前の白い光は、いくぶんひかえめになっています。
 「白のかたちもおもしろいでしょ。どっかエロティックなところもあるし」
 札幌在住。

 関連ファイル:■矢崎さんのサイト
 ■02年の個展
 ■01年の個展

 以上、6日で終了しています。
 以下は、7日までの展覧会。

 中橋修展『内包』 −包み込まれた記憶−ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ヶ丘2)
 昨年オープンしたギャラリー門馬アネックスは、そのつくりからして、作家に
「この空間にマッチした作品をつくってやろう」
という気をおこさせるようです。
 幅1.5ないし1.6メートルほどの細長い、純白に塗られた空間。途中までは左側に窓があり、午前は直射日光がさしこみます。そして、つきあたりにもガラスのドアがあり、そこは、緑の中のテラスになっているのです。
 中橋さんは、白い空間に、白と透明なアクリル板による立体作品をならべました。やさしい、乳白色のひかりが、空間全体をみたしています。
 あまりに合っているので、そのまますっと通り過ぎてしまう人もいるそうです。
 いずれも、正方形か長方形の正面をもつ直方体。
 写中橋修展の会場風景真の手前の作品は、段ボールをおりまげてらせん状にして、アクリル板に挟みこんだもの。アンモナイトのようです。
 中央の作品は、全体を、おなじ大きさの30の「部屋」に仕切り、細いガラスの棒と球をひとつずつ配したもの。棒は、それぞれの「部屋」の床から天井までをつらぬき、球は床にころがっているのですが、場所が微妙にことなるので、おもしろいリズムをうんでいます。
 奥の作品は、窓側の板のちょうど中央に、縦に幅0.2ミリほどの細いスリットを入れただけの、シンプルなもの。バーネット・ニューマンの絵のzipをまん中に持ってきたような作品です。
 このほかにも、白いフィルムケースを54個(作者の年の数)だけ箱の中に陳列したものなどもありました。
 中橋さんのアプローチは、どこかミニマルアート的なところがあるのですが、たとえばドナルド・ジャッドの作品がひとことで言って「取り付く島がない」のにくらべると、どこか人間的なあたたかみを感じさせます。また、どちらも絵画から出発しているのですが、1点1点が自立したジャッドにたいし、サイトスペシフィックな(発表空間に合致した)、空間全体に配慮しています。ただし、それぞれは相対的に独立しているので、インスタレーションになっているわけでもありません。
 「アクリル板は、切るのはそれほどでもないけど、きちんと張り合わせるのがむつかしい。接着剤がはみだしてもいけないし」
と言う中橋さんは札幌在住。ほぼ毎日更新のウェブサイトはこちら

 関連ファイル:■奏でる音と立体の響き−音楽家と美術作家のコラボレーション(2002年10月20日)
 ■2002年の個展
 ■2001年の個展

 田崎敦子版画展 〜The microcosm〜=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 5センチ×5センチのモノクローム、あるいは2色の銅版画を、白い台紙に貼って、ビニール袋に入れて壁から吊り下げたものを、70点ほどならべた、カジュアルな雰囲気の個展。
 1点500円という破格の値段で販売しています。
 「東京の画廊とかじゃいろいろ横槍もあるだろうし、こんなことはできないと思うんですよ。ワンコインで売るっていうのも1回やってみたくて」
 もちろん、5センチ四方の版をつくったのではなく、もともとあった作品を切断したものです。会場内には、おなじ作品を、向きを変えて展示してあったり、あるいはおなじ版で色を変えて刷った作品を展示したりしているものもあります。
 にもかかわらず、それぞれが、いかにも破片といった感じではなく、自立した小宇宙をつくりだしているのは、田崎さんの作品が元来、明快なフォルムをもたない抽象的な作品だからでしょう。
 このままS50号ぐらいのタブローにブローアップしても画面がもつ感じです。
 作品は売れると、つぎつぎと補充していくそうです。

 『布もの・土のもの』千葉尚・博子、二人の仕事展=同
 芦別に「一尚窯」をひらいている千葉さん。ほとんどが生活のうつわの展覧会です。地元でとれる灰で焼いた皿やカップは、なんともいえないあたたかみのある灰色をしています。
 博子さんの染織作品も、自然な風合いです。

 新悦男 喜寿記念油絵個展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 1927年(昭和2年)、後志管内黒松内町生まれ。仕事を辞めてから本格的に絵筆をとり、越澤満さん(道展会員)の指導のもと、10年間「しん美術会」でやすまず黙々と描き続けてきた新(しん)さんの初個展。
 50点を超す作品には、道内やベネチア、信州などの風景を描いた油彩をはじめ、毎年の年賀状イラスト、室蘭工専(現室蘭工大)時代に描いた「寮雨」などもあります。
 いずれも、丁寧かつおだやかなタッチ。しかも、いかにもたのしく描いている心持がつたわってきます。

 第6回しん美術会展(油彩)=札幌市資料館(中央区大通西13)
 新悦男さんもメンバーの、越澤満さん指導の絵画グループ。今回は、新さんは同時開催の個展のため、こちらには1点も出していません。
 越澤さんが5点を賛助出品しているほか、岩田洋子、久保隆、田中紀美子、飯田優子、藤田光子、伊藤冲、稲垣綾子、根本昌介の各氏が、3、4点ずつ油彩を出しています。みなさん、なかなか手堅いです。
 岩田さんの「秋の気配(能取)」は、網走の能取(のとろ)湖の秋を真っ赤に染めるサンゴ草(アッケシソウ)を描いたものですが、空の色合いにも気を配っているところに好感が持てますし、久保さんの「阿寒川」は白鳥が入ろうとしている冬の川がなんとも冷たそうです。
 伊藤さんの「北彩(旭岳)」は、いつものように迫力ある山塊。稲垣さん「霧の羅臼岳」などもモティーフが絞り込まれていて、構図に力があります。
 越澤さんは「安曇野の里」など、いずれも信州に材を得たものです。

 第2回はしどいOG展〜北星学園女子高校美術部OG〜=同
 例年、学生全道展などに入選者を出している北星女子高美術部ですが、今回は、6−17回卒業生34人と野田四郎さん(顧問の先生)が作品を持ち寄りました。これだけの人がいまも美術にしたしんでいるんですね。これはすごいことだと思います。
 もちろん、絵だけではなく、書、陶芸、刺繍、ガラス絵、写真などもあります。
 なかには、プロのイラストレーターとして活動している岩川亜矢さん、バティック(インドネシアのろうけつ染め)の中田ゆう子さん、道展会員の七宝作家・飯沢能布子さんといった顔ぶれもいます。

 サークルもりの木水彩展=同
 道展に例年入賞者を輩出している、森木偉雄さんの朝日カルチャー教室展。なかなかみなさんテクニシャンぞろいです。
 湯淺恵美さん「何時かどこかで」(60号)は、西洋人形と、レンガのアーチをモティーフにした、昨年の道点入選作の延長線上にある作品。2体の人形が、カラーとモノクロに塗られているのが、いわくありげです。小品「メモリー」も人形が題材。背景の、地図のパピエコレは、ぜんぜん違和感がありません。
 昨年の道展で佳作賞の三村克彦さん「エンジン」(80号)。毎年、迫力あるエンジンを描いています。
 橘田君代さん「これでもかと力強く」(40号)。巨樹の根元を描いています。幹の存在感もさることながら、明るい林間とのコントラストが見事です。
 甲斐野弘幸さん「壁」(30号)は、水彩とは思えない分厚いマティエールで、灰色の路地を描いています。太い輪郭線も独特の味があります。
 高橋悦子さん「裸婦立像」(20号)、中村悦子さん「裸婦」(10号)は、デッサンがしっかりしていますし、小路七穂子さん「八紘学園 夏」(サムホール)、西村恭子さん「秋(釧路市山花)」(6号)、西村美紀子さん「橋(伏篭川)」(3号)といった風景画の小品も、なにげない一角を描いていますが、余韻が感じられます。
 昨年はこちら

 藤田敏次油彩展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 初個展。おだやかな写実による風景画が中心です。
 海景が得意らしく、厚田の海岸を描いた作品など、ナイフをつかってシャープにしあげています。
 海以外でも、「晩秋の川辺」は、末枯れた岸辺が情感ゆたかに描かれています。「山麓入冬」も、初冬のさびしい林などが、たんねんに描写されています。
 札幌在住、示現会会友。

 9月1日(月)

 とりあえず、2日で終了のものから。

 金沢一彦銅版画展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 うつくしいメルヘンの世界をつむぎだす金沢さんの銅版画。見ていて、心がなごむというか、ほんとになつかしい気分になります。
 ここ数年は、いろんな技法をこころみていましたが、今回は「本職」?というべきサンド金沢一彦銅版画展の会場風景ブラストによる作品ばかり29点をならべています。
 「北へ向かう」「幻野」は、馬のようなふしぎな生物が、家族の乗った車やそりを曳くようすを真横からとらえた構図。
 「夕べの散策」では、空飛ぶじゅうたんに乗った男女がいます。
 「家族旅行」は、飛行船型の気球に乗って旅をする家族連れが描かれています。
 今回の特徴をもうひとつ挙げると、作品のエディションとサインの部分に、エンボス加工がほどこされていること。左下のエディションのエンボスは、恐竜のトリケラトプスをかたどっています。これは、版と版をあわせるための目印になっています。
 金沢さんは札幌在住、日本版画協会や道展などの会員。
 関連ファイル:■1月の個展 ■昨年9月の個展

 塚本竜玄陶展=同
 塚本さんは、空知管内栗沢町美流渡に「玄窯」をひらいています。
 陶芸展では、わりあいオーソドックスな壺や茶碗などをならべています。黒釉で、表面を天目のような模様が覆っているものが多く、にぶい光沢が独特のうつくしさを感じさせます。
 おちょこや箸置きといった小物は、数百円で販売しています。破格の安さです。
 道展会員です。

 宮本朋美・佐藤睦美・福光友美 朋睦友写真展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル6階)
 学生など3人による写真展。
 佐藤さんは、わりあいオーソドックスな人物スナップ。「背中」など、子どもなどの表情がいきいきととらえられています。
 宮本さんは、筆者がなづけた「Sスクール」の作風に近いと思います。「Plants」では、木々をモノクロでたんたんととらえています。「Night Works」は夜景。手前に農地、奥は都会という、なんともふしぎな光景もあります。「kanazawa」は、路地をとらえる視線が、路地がめずらしくてついカメラを向けてしまう道産子らしくて、共感しました。
 福光さんは3人中ただひとりカラー。「みち」となづけられたシリーズは、湿原の中をまっすぐにのびる木道とか、青い空だけの写真まであり、その思い切りのよさが小気味良いです。「ここに立つ」も、あえて透視図法を強調した作品が多く、ユニークだと思います。最後の、逆光でとらえた坂道は、西岡ですね。こないだの中野潤子さんの写真展のときも近くの坂が題材になっていました。