目次 | 掲示板 | つれづれ日録 | あーとだいありー | 展覧会の紹介 | ギャラリーマップ |
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あーとだいありー 2003年1月末から2月前半
2月15日(土)
具象から抽象へ 林教司 1970年〜2001年作品自選展=ギャラリーART−MAN(中央区南4東4)
はやし・のりつぐさんは、空知管内栗山町美流渡在住。
シュルレアリスム的な色彩の強い絵画から、90年代半ば以降の抽象平面作品を経て、最近作のアクリル抽象画まで、9点によるコンパクトな回顧展。いちばん古いのは、75年の「見えなくなった目」です。
近年は、新道展や北海道抽象派作家協会などにインスタレーションを発表していますが、今回は平面だけです。
昨年6月に、地元・美流渡でひらいた回顧展のダイジェスト版といったおもむきですが、作品にはかなり出入りがあります。
そのうち、85年の「異郷にて」は、作家にとって思い入れのある絵なのか、いずれにも陳列されていました。
岩のテーブルの上に、フォークで止められた蝶の羽がおかれています。フォークの上からはさらにガラス板が押し付けられているのだけれど、ふしぎなことに、フォークの柄の部分はガラスのほうが下になっています。背景は真っ青。岩の上には、卵や、オンコの実のような小さな赤い玉が散乱しています。
わたしたちの「自由」を圧迫しているものは、なかなか見えにくいのだ−ということに、思い至りました。
このほか、黒鉛を前面に塗りこめた「霊訓」を、96年に札幌時計台ギャラリーで見たことを、なつかしく思い出しました。
また「棺(浮)」(97−01年)は、昨年のギャラリーたぴおでの個展「FGOPPE」の際にもインスタレーションの一部のようにして発表されていました。
22日まで。
他の出品作は次のとおり。
「肖像のある日」(75年)
「呪陀羅」(90−95年)
「形式(かたしろ)」)(92年)
「作品」(02年)。おなじ題の作品が3点
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)で、絵画グループ「芳」展(2)も見ました。
坂井芳元さんの絵画教室展の、後半です。
油彩と水彩がならんでいますが、とりわけ水彩は
「これぐらいかけたら、たのしいだろうなあ」
と思わせる、構図も色彩もまとまった風景画がならんでいます。まるで、絵はがきですが、絵はがきもいいもんだと思いました。
16日まで。
大和画材のサイトに、出品作品の画像が大量にあります。
2月14日(金)
見て、まだ書いてない展覧会が多数。会期末の早い順からいきます。
藤井高志・西村潤 平面と立体の対話=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
藤井さんは北広島在住、全道展と蒼騎会の会員で、描写力の高い画風で以前から知っていましたが、西村さんの名は初耳。じつは、いまは東京在住ですが、十勝出身の彫刻家で、帯広では何度も個展やグループ展をひらいていらっしゃるようです。
それぞれ17点を展示。
藤井さんは、昨年の全道展出品作「遠い記憶」など。小品は、これまで見る機会がなかったので新鮮です。荒涼とした風景などが、抑制された色調と丹念な筆致で描かれています。
西村さんは、鳥や馬からインスパイアされた石彫。シンプルですらっとしたフォルムには、胃にもたれない軽妙さとやさしさがただよっています。
中田ゆう子バティック展=同
バティックは、インドネシア・ジャワ島につたわるろうけつ染めです。
札幌でイラストレーターとして活躍している中田さんは、以前からバリ島が大好きで、毎年のように通っていましたが、数年前からこの伝統的な技法に興味をもち、習得をはじめました。
パイプのような道具で、すこしずつ染料を布にしみこませていく手間のかかる手法です。
約40点の、おもに花を題材に、自由に染め上げた平面作品が展示されています。ろうけつ染め特有の、あざやかな色合いです。つかっている布は木綿。シルクをもちいたろうけつ染めにくらべると、やや落ち着いた色調になっているという印象を受けました。木綿だと、エプロンなど実用的なものにも転用できるということです。
中田さんは
「ほかのろうけつ染めや日本の伝統的な染めのことはよく知りません。でも、そういうものの絵柄にしばられず、自由にやりたいので」
と話していました。また昨年バリ島で起きた爆弾テロ事件については
「インドネシア各地でイスラム教徒とヒンドゥー教徒の対立抗争が起きるなど、空気がピリピリしていて、いつ何がおきてもおかしくないとは思っていたんです。でも、ざんねんです!」
とかなしそうな表情をしていました。
中田さんのウェブサイトはこちら。
いずれも、16日まで。
秋山久美子油絵個展「冬・ばら」=はーぜん・ろっほ(中央区南4西9)
秋山さんは札幌在住。一昨年から2年つづけて道展で佳作賞を受賞しています。
油彩の小品12点。うち1点が「鏡の上の貝殻」という絵で、ほかはすべて花を描いた静物画です。
比較的大きめの「バラの水差しのある静物」などは、道展の受賞作と同様に、水色とばら色をちりばめたまばゆい色調です。外界が雪景色のいまだからこそ、見ていてなごむ絵といえるように思えます。
はーぜん・ろっほは、大正期の蔵を改造した、雰囲気のあるお店。ランチは700円で、小生はハヤシライスを食べましたが、スープ、豆やサラダ、珈琲がついて、おすすめです(といって、土日は午後2時開店だからやってないかも)。ただし、子供連れ不可。南4条通の1本南にあるほそい仲通にあります。
16日まで。
北海道浅井学園大学生涯学習システム学部芸術メディア学部絵画ゼミ2003年度展=北方圏学術情報センター ポルトギャラリー(中央区南1西22)B室
学科第1期生(3年生)で、野崎嘉男さんのゼミに所属している11人の展覧会。
アクリルが目立つ中で、松柳麻路美さん「ム-2」はユニーク。5枚のベニヤ板ほぼいっぱいに(たぶん)ペンで、迷路とも都市の地図ともつかぬ線模様をくりひろげています。
大泉隼人さんの全道展入選作「北海道一周」も展示されています。
19日まで。
最後に、11日発売のウィズユーカードのおしらせ。
これは「広告付きカード」あつかいになるので、地下鉄各駅の自動券売機でカード(1DAYカードふくむ)を買うと出てきます。
デザインは、札幌芸術の森の野外美術館にある、ダニ・カラヴァンさん(イスラエルの世界的彫刻家)「隠された庭への道」です。
何円のカードを買っても出てきますが、売り切れ次第なくなります。
ギャラリーまわりのおともにどうぞ。
2月13日(木)
中嶋貴将彫刻展 “熱変”=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)
なかじま・よしゆきさんは、69年生まれの、札幌の彫刻家。昨年につづく個展です。
ブロンズなどでつくられたラグビーボール状の作品が、金属の棒の上にのせられ、空中にういているように陳列されています。
ほかに、アルミ板の上にかいたスケッチ、地金の棒なども置かれています。
いま、ラグビーボール、と書きましたが、抽象的な形状でありながら、見る人の想像力をかきたてる動的なフォルムをしています。いちばん一般的には、いまにもはじけそうな種子に見えそうですが、飛ぶ鳥のように見えるという人もいます。筆者は、むかしの絵に出てくるほうき星の尖端をおもいだしました。
いずれにせよ、強力なエネルギーを噴出しているような感じがしました。
中嶋さんは
「発想のみなもとが植物なのはたしか。そこから発想して『熱と冷却の作用』みたいなものに発展していった。動植物だけじゃなく、人と人との出会いや別れみたいなものもふくまれるとおもう。でも、見る人には自由に見てほしいですね」
みたいなことを話していました。
「寒別グラウンドアート展」(98、99年。後志管内倶知安町)や「地上インスタレーション計画」(00、01年。札幌)など、野外展にも精力的に参加しています。会場には、01年の「地上…」に出した作品のモケットのような、スツールをひっくり返したような形の小品がありました。01年の「北海道立体表現展」(道立近代美術館)にも出品しています。昨年の「夕張リレーション展」には、廃校になった小学校のグラウンドを掘って、穴のてっぺんを透明な板で密閉したユニークな作品も出していました。
なんと、CDのプロデュースも手がけています。
15日まで。
きょうはタイムアウトで、とりあえずここまで。
2月12日(水)
佐々木要・十勝の木のうつわ展=カメラ懐館・喫茶クラシック(白石区平和通2南)
佐々木さんは、十勝管内幕別町の廃校跡のアトリエで木工に取り組んでいる人だそうです。
十勝にある25種の広葉樹をつかって、皿などを制作、出品しました。
シンプルで自然な風合いです。セン、ナラなど、木によってそれぞれ色や木目がことなるのはもちろんですが、いちばんおどろいたのは、軽いこと。
おやつ入れなどには重宝しそうです。
14日まで。
佐々木さんのウェブサイトはこちら。
この北海道美術ネットが2000年暮れに始まって以来、白石区は初登場です。
この会場は、古いカメラが600台以上置いてある私設博物館のような店です。それ以外にもふるいテレホンカードとか、トカゲの剥製とか…。
筆者も似たところがあるので想像がつきます。たぶんここのご主人は
「ものが捨てられない」
性格なのでしょう。
というわけでおよそしゃれた雰囲気ではないのですが、珈琲は昔ながらの喫茶店の味で、なかなかのものでした。
札幌駅か、北1西1(本間ゴルフのショールーム前)のバス停から、JRバスに乗り「白石中央」下車、徒歩3分。バスは1時間に5、6本あります。
JR白石駅からは徒歩10分余りです。 ←地図はこちら。「白石小」という文字のあるあたりです。車は1、2台ならとめられそうですが…。
このあと、札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)に「札幌大学写真展」を見に行ったら、まだ展示作業をしていた。
つづいて、ウェブ上のおはなし。
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)のウェブサイトが昨年秋から更新されていません。
cafe&gallery marble(中央区界川2)のウェブサイトは工事中になっています。
以下、ウラを完全にはとってない情報。
this is gallery(中央区南3東1)が、3月の堀田真作さんの個展を最後に閉まるそうです。
赤瀬川原平写真展でオープン。たしか3年ほどの短い命でした。
わかい作家の紹介に功績がありましたが、いつ行っても作家本人がおらず、画廊主だけがいるという点は変わった画廊でした。
1980年代終わりから札幌に滞在し、CAIキュレーターをはじめ、作家やDJなどとしても活躍した米国人トラスト・ハワードさんが、帰国するそうです。
札幌の若手現代美術グループ「LOPPACO(ロッパコ)」は、2月末から3月にかけて、またも函館の民家を舞台に、「民宿美術」を展開するそうです。
おーい、メールでいいから早く詳細を教えてくれえ。
2月11日(火)
北海道教育大学岩見沢校第書道研究室展 39回水茎会書作展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
学生の作品は臨書が大半なので、ここにはとくに書きません。
賛助出品で、青木空豁、阿部和加子、中野層雲、羽毛蒼洲の4氏が出品しています。
16日まで。
EXHIBITION CULT MOVIES Vol.2!=古書ザリガニヤ(中央区大通西12)
「いまさらイスラエル」というバンドを、札幌を拠点にやっているミカミさんの個展。CGに着彩した平面が10点ほど。人間のようであって、そうではない抽象画、といえばいいのかな。
手前に壊れたバスドラムがごろんと置いてあるのが妙といえば妙。
28日まで。
2月10日(月)
きょうは、すでにおわった展覧会の特集です。
なんだか、在庫一掃セールみたいですが、パソコンの不調というアクシデントがあったゆえのこと、ご容赦を。
にじいろ 北海道教育大学札幌校日本画研究室3年目=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
これは、「1月30日−2月4日」と案内状にはあったのに、11日まで延長してひらかれているグループ展です。
駒澤千波さんは、横に細長い絵を2枚平行にならべ、その間に小品を4枚挟むように陳列しています。これが4組あるという、ユニークな展示です。
中島涼砂さんも、48枚のちいさな作品を規則正しく陳列して、1枚の大きな抽象画にしたてていました。
いっぽう、昨年暮れ「あおいいろ」と題した個展をひらいた富樫はるかさんは、こんども複数作からなる「ながれる V」を出品しています。
タブローという「制度」に懐疑的な人があつまった学年なのかも。
ほかに、熊崎みどり、三浦仁美、野口絹代の3氏が出品。
第13回 新孔版画札幌展 プリントゴッコ新技法=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
毎年この時期にギャラリー企画でひらかれている、プリントゴッコをつかった版画の展覧会。といっても、本格的な版画展といってさしつかえありません。
ただ、ことしは作品が小さめだなあ。
道内勢は、なにせ地元に渡会純价(全道展、日本版画協会などの会員)さんという指導者がいるためか、なかなか充実しています。なお、渡会さんも出品していますが、なぜか会場でくばられている作品一覧には書いてありません。
常連の佐野千尋さんも、作品サイズが小さいぶん迫力は欠きますが、淡い水色を基調にした「駒ケ岳遠望」と、樹陰の黒と光との明度の差が印象的な「晩夏−トラピスト」の2点が、心にくい好対照を見せています。
藤原守さんは、チェコやパリの風景を淡彩ふうに描写(そういえば、全体的に、海外の風景がなぜか多いです)。小品ながら、旅のふんいきが出ています。
湊征一郎さんは「丘のイメージ(麦秋)」「丘のイメージ(花咲く頃)」で、大丸藤井セントラル賞を受賞。丁寧さ一辺倒から、適度な省略がほどこされるようになってきたように感じました。明るくて好感の持てる作品です。
このほか、道外、海外からの作品も多数展示しています。
第93回どんぐり会展=同
北海高校美術部の校外展。それにしても、たぶん年2回やってた時代があるんでしょうが「第93回」はすごい。
ただ、ことしは、昨年までのようなわかいパワーの爆発という印象がややうすれ、全体的にややおとなしめな感じ。100号クラスも9点だけ。油彩のほかに銅版画も展示されています。
案内状にも印刷されていた宮内ちひろさんの「寂び」は、細部にこだわらず堂々とした筆使いで、教室のなかの机や跳び箱などをえがき、学生美術全道展で協会賞を受けています。これは、わりあい、従来の「どんぐり会」っぽい画風。
一方、西脇佑美子さん「異國風景」、柿崎彩美さん「過疎」など、どちらかというと写実的なおとなしい絵もめだちました。
稲實愛子さん「シュート」。昨年、W杯サッカーの試合が札幌でもひらかれ、学生の絵にもサッカーを題材にしたものがずいぶんありましたが、これまで見てきたなかで(大学生もふくめ)、この絵がいちばん迫力がありました。
それにしても、北海高が明治以来の男子校から共学になったのは、ほんの数年前のはず。あっという間に女性上位(とくに1、2年生は大半が女子)になってしまったことにあらためて感慨をおぼえます。
今村紀子作品展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
道彩展の大半を占める、フォービズム的なタッチの水彩。
「エトランジェ」「What's Wrong?」など肖像画は、荒いタッチのなかに、モデルの人となりがうかんできます。
札幌在住、道彩展会員。
同じ会場で、やはり道彩展に出品している沖野弘恵・中井久美子水彩二人展も開催。
以上、2月4−9日。
「凹みstudy」 Kenichiro Taniguchi Solo Exhibition=TEMPORARY SPACE(中央区北4西27)
ビルの壁の塗料のはがれや、ちいさな割れ目など、あちこちの「へこみ」をうつしとり、黄色いプラスチック板をおなじかたちに切り抜いて作品にしている、札幌の若手・谷口顕一郎さん(いわゆるけんちゃん)の個展。
今回は、これまで発表した世界各地の「へこみ」のかたちに、何カ所かちょうつがいをつけ、折りたためるようにしています。
ただでさえ数センチという小品なのに、折りたたんだらますます小さくなってしまいました。
見にきた人が、自由に折りたたんで、いろんなかたちをたのしめるのですが、筆者としては、「へこみ」の成立した「背景」がおもしろいのであって、けんちゃんがフォルムにばかり目を向けていることには、あまり賛成できません。「おもしろいかたち」「良い線」の追求は、画家や彫刻家にまかせましょう。現代美術としてはもっとおもしろいことがあるんじゃないですか?
1月18日〜2月6日。
第2回 森崎修太油絵展 −色彩のメッセージ−=三越札幌店(中央区南1西3)9階ギャラリー
千葉県在住の画家。昨年2月につづき札幌では2度目の個展です。50点あまり、ほとんどすべて新作です。
おもに南仏やパリの風景に題材を得ています。女性の絵や静物画もありますが。
特徴はなんといっても、色彩のかがやかしさと、簡潔なフォルム。細部をそぎおとして、大胆なまでの省略化をほどこしています。
「油絵の具はあんがい透明ですから、いろいろな色を塗り重ねています」
という言葉どおり、薄く平坦に塗られた絵の具は、何層も重ねられています。水色の空の下にピンクが塗られている絵もありました(ここらへんは、印刷やウェブではなかなか確認できないところです)。シンプルなのに画面が平板にならないのは、この、明るいが生っぽくない色調を生み出す地道な努力にあるのだなー、とおもいました。
おだやかな風景画を見ながら、マティスのつぎのようなことばを思い出しました。
「私が夢見ているのは、不安な、あるいは気がかりな主題のない、均衡のとれた純粋で晴朗な芸術である。それは、すべての精神労働者にとって、気をしずめ、鎮静剤となるような、肉体的な疲れをいやす良い肘掛け椅子に相当するような何かである」
1月28日(火)〜2月2日。
千葉朋子作品展=SAPGREEN
cafe(中央区南1西21)
おもにフェルトでつくった数センチのクラゲや車、人、飛行機など、100を超す作品が、店内の壁に不規則に貼り付けられています。
一つ一つは、子どもの工作を思わせる単純でちいさなものですが、どこか「ぶきみなもの」の雰囲気もただよわせ、これだけあつまると壮観です。
それにしても、店に入ったら犬にほえられたのにはおどろきました。盲導犬のたぐいは別にして、食品をあつかう店にペットがいるのは、いかがなものでしょう。
1月16〜31日。
西村和のひとり器《うつわ・はじめ》=GALLERIA CAFFEクルトゥーラ(北区北12西4)
昨年から活溌(かっぱつ)に発表活動にとりくんでいる札幌の若手陶芸家、西村さん。
クルトゥーラで展示されていたのは、シンプルなデザインで使い勝手の良いお茶碗が中心でした。
1月7日(火)〜2月1日。
第20回記念 大洋会道支部展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
絵画の公募展。ことしは20人が出品。
鈴木ナオさん(札幌)「ふるさとの春」。左に沼、右に田、中間に細いあぜ道−というむつかしい構図を、きちんと破綻なくまとめているのに感心しました。
江頭洋志さん(室蘭)「冬の新山」。昭和新山がモティーフ。以前はベネツィアなど欧州の風景を描いていましたが、近年は道内に戻ってきました。あいかわらず、手堅いです。
山崎和歌子さん(札幌)「湿原地帯」は、色にメリハリが出てきたようです。
そのほかの作品はつぎのとおり。
秋野隆「湿原予感14」
高橋ミエ「とねっ仔」(案内状では「みえ」さんです)
瀬川裕子「庭に立つ婦人」
中村香都子「嫁ぐ日の前日」「時空の中の私」
岡田和子「四片の風」
大浪靜江「木漏れ日」
鈴木ナオ「街の一隅」「早春」
植野徳子「歌う静物」
豊岡猛「アーティストたち」
綿谷憲昭「落日(T)」「落日(U」)」
松平靜枝「ひだまりの詩」
山崎まり子「しずく降る杜のうた」
原田富弥「鉱石船のいる港」「ウトナイ湖」
岸巌「夕暮れ」
増田雅恵「秋宴」
江川龍子「マリオネットの想」
箕島キミ「樹(T)」「樹(U)」
1月27日(月)〜2月1日。
couleur 金子佳宏個展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
一昨年、教育大在学中に「美工展」で協会賞を得た、若手の木工作家。
シンプルな家具などがならんでいます。木をとおして赤い光が漏れるあかりもあります。これは、電球はふつうの色なので、木の特性なのでしょう。ふしぎです。
ご本人のサイトはこちら。
1月30日−2月4日
渋谷勝裸婦素描展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)
1920年、札幌生まれ。東京芸大で安井曾太郎に絵をならい、戦後はながく札幌の中学校で教壇に立っていた人です。「青美デッサン会」の会長も務めていたとのことです。
素描は、デッサンというよりはクロッキーで、とにかくすばやい筆致でした。
1月27日−2月1日
藤山由香展「記憶」=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)
青や白を基調に、色がまだらに塗られた抽象画。
額はないのですが、キャンバスのふちにはすべて白いテープが貼られていました。なんで?
1月15日−2月2日
2月9日(日)
SNOW PROJECT 03=さっぽろ雪まつり大通会場HBC広場(中央区大通西7)
ことしで7回目(たしか)になるスノー・プロジェクト。
ライトアップの終わったあと、大雪像に映像作品を投影するというものです。
ことしの出品者は、古幡靖さん(埼玉)と小池晋さん(札幌)のふたり。
古幡さんは90年代後半から札幌に住み、2000年暮れから01年3月にかけて芸術の森美術館でひらかれた美術館企画のグループ展「北の創造者たち展」などに怒涛の勢いで作品を発表したあと、埼玉に移りました。
彼の映像作品は、シンプルだけど、それゆえに、見る人に思索をうながす性質を持っています。
今回の「The Way of Roots」(12分)は、東京の夜景のスローモーションが延々とつづいたあと、最後に、函館の海がしずかに光る映像でしめくくります。
東京の夜景、といっても、観光絵はがき的なものではなく、車のヘッドライトがゆっくりと往還したり、あるいは、街燈が規則的にとおりすぎていくという、リアルだけど抽象的な映像です。マチの特徴は捨象され、大都会ということだけがわかります。
海の映像は、彼が98年にCAIで発表した作品を想起させます。
ちなみに、題は、英国の王(女王)が戴冠式の際に通る道−という意味もあるそうです。
この作品から、都会と自然の対比などを読み取るのは簡単です。もうすこし踏み込んでいうと、欧米の文化的植民地になってすっかり特色を喪失した日本の都会への批判があるようにおもいます。もちろん、函館の海はその弊からのがれているわけですが、しかし、北海道じたいが、もともと日本の植民地なのですから、事態は複雑です。
「北海道が植民地である」と認識することは、素朴なロマン主義がもはや捏造であることを暴露しているのであり…というふうに、話は筆者のあたまのなかでどんどんひろがっていくのですが、きょうはこれくらいにしておきます。
なお、音声には、チベット仏教の読経などももちいられています。雪像は、日中友好25周年を記念した天安門広場を模したものであり、北京政府がチベットを占領していることへの抗議がさりげなくこめられています。
さて、小池さんは3分ほどの無題の作品です。
例年の、コンピュータを駆使したものではなく、裸の女性にガーゼをぐるぐる巻きにして、近接撮影した映像に、ローアングルから撮った草地や森のショットが挿入される−というものです。
と書くと、エロティックな画面を想像する人もいるかもしれませんが、じつはなにが映っているのか、はっきりとはわかりません(^.^) ただ、女性がなんかしてるなー、というのはわかります。
「じぶんの作品は以前から女性がテーマ。小さいころからの憧れでもあるし」
と作者。
10日も午後10時からスタートします。
昨年2月のファイルと、一昨年2月のファイルには、投影した画像もあります。ご参考に。
武田浩志「A(&m).s.h.」 タケダsystem vol.02=Free Space PRAHA(中央区南15西17)
この春、道教育大を卒業する若手の個展。
ギャラリー空間内に小屋をこしらえ、さらにその中にじぶんと他人の作品を展示する−という、ねじれたことをやっています。
今回も、小屋がふたつ。入り口近くの「♯31 タケダsystem」には、友人の仙庭宣之さんの絵画と大島慶太郎さんの写真もあります。これは、はじめに武田さんがこしらえた家の模型を、大島さんがぼやけた写真に撮り、それをもとに仙庭さんが絵にしたというややこしい手順で制作されています。
大島さんは、家の模型の写真と、実物の家を撮った写真とを、まぜて陳列するということもしています。
もうひとつの小屋「♯30」は、会場の中央にで〜んと建っています。高床式になっており、階段を4段上がると、1.3畳ほどある中に入れます。
部屋のなかは、畳が敷いてあり、壁は金色に塗られています。天井からはミラーボールが吊られ、片隅にはキーボードと卓が置いてあります。会期中は寝泊りしているというわりには、生活感はほとんどありません。川俣正さんが98年に東京でおこなったプロジェクトの小屋をおもわせる狭さですが、生活感の有無という点で、ぜんぜんちがいます。
「日本文化のダサさ、みたいなものも出したかった」
と作者は言います。
さらに、床板をはずして、地下空間に「自動バイオリン弾き器」が設置されており、上から覗き込むことができます。玄関のセンサーが入場者を感知すると、自動的にモーターがまわって弦をこすって音を奏でるという風変わりな器械ですが、サウンドという要素も武田さんの作品には重要なようです。
このほか、油彩1点も展示されています。
16日まで。無休。最終日には映像上映などもあります。
小山田慶次 木版画展=札幌市民会館(中央区北1西1)
道新文化センターで玉村拓也さん(全道展会員)に木版画を習っている50代男性による初個展。
62点が陳列されています。半数以上は、モロッコ、スペイン、ポルトガル、イタリア、チェコ・オーストリアと、1年おきに一人旅をして得たモティーフ。モロッコの「ハッサンU世モスク」なんて、なかなかめずらしいものもあります。
なんでも、往復の航空機の切符だけ買って、あとは現地で宿をとり、時には四輪駆動車をチャーターして砂漠を見に行くなどするそうです。その行動力には脱帽してしまいます。
作品は、木版画らしい素朴な風合いと、明度の高い色彩が特徴です。比較的、建物を題材にしたものが多いですが、正面からストレートにえがくのではなく、手前に花などを配して、画面に奥行き感を出しています。
北広島在住とのことで、市内大曲の旧坂井牧場をモティーフにした「冬のサイロ」などの作品もありました。これは、6版10色で、じっさいに使った版木とともに制作方法を説明した紙が張られています。
小山田さんはまったく面識のなかった方で、このサイトを見て案内状をくださいました。そういう出会いがあると、筆者はうれしいです。ありがとうございます。
11日まで。
第16回 十九(とく)の会展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル5階)
毎年ひらかれている絵画のグループ展。メンバーには、道展の入選者もいます。
リーダー格だった一水会会員の石川雅敏さん(札幌)が昨年4月亡くなり、油彩8点を「思い出のコーナー」として特陳しています。
「塩谷の海」(F6)
「シリパ岬」(同)
「創成川の並木」(F10)
「樽前山を眺む」(同)
「自画像」(F6)
「送り毛漁場(浜益)」(F8。「送り毛」は表記のまま)
「古河講堂(北大)」(F6)
「北大理学部」(F8)
です。官展系の穏当な写実で、緑のゆたかさが印象的です。
ほかに
黒をつかって全体をうまく引き締めている北芳樹さん「静物」
中間色の重ね方がたくみで、ほおずきの質感が出ている坂田紀久恵さん「静物」
重い塗りで風景をすばやく描く阿部政毅さん「晩秋の手稲山連峰」
太い幹を存在感豊かに描写した美坂啓次さん「ポプラ」
ぼわーっともやのかかったような空気感で山あいの田と桜をえがいた幅田昇一さん「山麓花ぐもり」
といったあたりが印象にのこりました。
なお、これらの絵の画像は、大和画材のサイトにたくさんありますので、ごらんください。
11日まで。
Atsuko 妖精たちの夢=NHKギャラリー(中央区南1西1)
京都の人形劇団で活動後、札幌にもどり、色鉛筆で描いたイラスト絵はがきの制作にとりくんでいるAtsukoさんの個展。
今回おもしろいのは、半数が「カクテル」をテーマにした絵になっていること。レシピもはってあります。アクリル絵の具でえがいたとおぼしき「妖精バーへようこそ」という大きめの作品も。
13日まで。ご本人のウェブサイトはこちら。
きょう9日が最終日だった展覧会については、あす以降にあらためて書くつもりです。
2月8日(土)
屋中秋谷「木の中の小宇宙」展=ギャラリー軸(中央区北3西29)
やなか・しゅうこくさんは、札幌の木工作家。
直径わずか1ないし5センチほどのちいさな円のなかに、10種を超す木を組み合わせてさまざまな色模様をつくりだす独特のボタンづくりを手がけています。今回のインスタレーションふうの作品は、そのボタンから発展したものです。
1尺5寸(1尺は約30センチ)×3寸の板に、1から4カ所の穴をあけ、そこにボタンとおなじようにつくった厚さ約7ミリの円形の作品を埋め込んでいくのです。
板は計81枚。円形の作品が193個です。その板を、黒い布で覆った画廊の壁に、縦にしたり横にしたり斜めにしたりして、排列しています。
あらためて、木のもつ色の多彩さにおどろかされます。
赤っぽいのはアメリカンサクラ。
緑のはナラの埋もれ木とのこと。
ひとつひとつは、ごくごく小さい作品なのに、ギャラリー全体でもひとつの作品をなしているというところが、おもしろいとおもいました。
10日まで。
昨秋の個展はこちら
2月7日(金)
楢原武正展〜大地ノ開墾「墨」による=ギャラリーART-MAN(中央区南4東4)
楢原さんといえば、廃材を使った巨大なインスタレーション「大地開墾」で知られる、道内の現代美術でもっとも重要な作家のひとりといってさしつかえないとおもいますが、今回は「間奏曲」的なおもむきの作品。墨をもちいた、前衛書のような平面が9点展示されています。楢原さんのことですから、気合の入った作品ではありますが。
8日まで。
第七回 道都大学美術学部デザイン学科卒業制作展=札幌市民ギャラリー(中央区南2東6) G
立体、油彩、デザイン、シルクスクリーン、染色、コンピュータをつかったショートムーヴィー、家具、金工の平面など多彩。
個人的におもしろかったのは、シルクスクリーン・染色と、立体。
まあ、前者は、卒業展以外にもけっこう展覧会をひらいてるし、やる気のかんじられるゼミです。卒業してからも、道展に入選するなど、地道に表現活動をつづけている人もいるし。
というか、ほかの分野では、道都大卒の作家って、ほとんど聞かないんです。もし筆者の勉強不足だったらすいませんが。
染色では、山口可南子さん「梅雨の朝顔」。クリアなフォルムと色彩が、いわゆる染色作品とはことなるおもむき。小竹由紀さん「サボテン」も、おなじ意味でおもしろい。
「コブタチャンネル」は、作者がすぐわかってしまうので、わらってしまいました。そうです、漫画「ワラビモ」の三上いずみさんです。
道都大のシルクスクリーンは、クリアでポップな、センスのよい作品が多いのですが、橘内美貴子さんの「金風」など10点は、風景写真を反転させたような、抽象と自然の交錯したようなふしぎな作風です。
宮口拓也さんの名作「シケモク」は、額縁が変わりましたね。
さて、立体。宮口さんは、一見軽自動車のような、しかし足こぎでうごく「空宙セダン」も出品しています。ふるいブリキ板みたいなのを継ぎ合わせた外観もユニークです。後部座席は畳。トランクのあけ口は郵便受けを流用していて、1997年の朝日新聞がはさまってました。たのしそう。じっさいに走っているところを見たかった。
ロビーにあったのは、ガウディのサグラダファミリア教会の尖塔のような有機的なフォルムをした白い塔がならぶ秋葉幸子さん「The Towers」、さまざまな表情をした首による神島愛さん「伯爵家の人々」、あたかも砂澤ビッキの木彫に金属や電子回路を大胆に導入したかのような上野太恵雄さん「樹械UT-2003」の3つ。いずれも、複数の立体からなるインスタレーション的作品です。
いわゆる近代の彫刻の評価水準からいったら、3つともあまりたかい点数をつけられないかもしれませんが、でも、個人的にはおもしろいんだよな。物語、というか、なにかの意味を宿しているような気がするのです。
H-O+M+E 第4回写真展=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
コンサート、タウン誌など、札幌のさまざまなシーンで活躍する若手写真家、原田直樹さんをとりまくサークル展。
このグループの特徴は、アマ写真家がどうしてもおちいってしまう“一転豪華主義”から、わりあい自由なことです。カメラ雑誌のうしろを見ると、投稿欄があって、力作がならんでいますが、1枚ですべて言いたいことを言おうとしてかえって「ありがちな」写真になってしまっていることがすくなくありません。その点ここでは、日常見た、さりげない一瞬がきりとられています。
たとえばパソコンの壁紙なんかには、こういう写真のほうがいいんじゃないかとおもいます。
筆者が個人的に好きなのは、夕暮れの写真。栗橋尚子さん「夜が静かに近づいて」は、夕映えと稜線や、暗い海面の美しさもありますが、やや斜めになっているところがスナップ的でいいとおもいました。茅野梓さん「水鏡」もきれい。
吉川頴子さん「砂紋の向こう」は、砂漠の砂粒の質感がよくとらえられています。カーッと乾いて暑い感じがつたわります。
高橋洋子さん「時」は、ややうつむきがちな女性の一瞬の表情。こういう人物写真って、撮れそうで撮れないとおもいます。
原田さんは「The Sunlight streams in a pavement」など。「いかにも外国で撮りました」的でない、さりげなさが素敵です。
9日まで。
日本一の夕陽フォトコンテスト写真展=コニカフォトプラザ(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
こちらは“一転豪華主義”の写真です(笑い)。まあ、これはこれで、見ていてたのしいです。
主催は留萌市。同市の、とくに黄金岬(おうごんみさき)から見る夕日は、日本で一番うつくしいといわれてます(どこで見てもたいして変わらないという気もしないでもありませんが、こういうことは最初に言った人の勝ちですよね)。
第一部は、国内で撮影した夕日・夕焼け、第二部は、留萌市内で撮影した写真です。
筆者は、第一部では、銀賞だった久保田律子さん「暮れゆく松林」が好き。霧の中、うかぶ木々が幻想的です。
第二部は、飛内美由紀さん「夕陽色の港」が、どうして第一部ではないのかとおもえるほどあざやかな留萌の夕映えをとらえています。グランプリの塩谷一さん「水と遊ぶ」は、どこの公園か知りませんが、しぶきと子どもの、まさに“決定的瞬間”がとらえられています。
18日まで。
DETO AKIYO Photo Exhibition=Cafe Rosso(中央区北3東5)
札幌の美術集団「Paint Box」の出戸明代さんによる写真展。
前回のTOM'S CAFEのときよりさらに、しずかな画面になったかんじです。1907年築というふるいカフェのなかに、しっかりとけこんでいます。
「Paint Box」の面々は、ここ1年ほど活溌(かっぱつ)に抽象画やモノクロ写真の展覧会をひらいていますが、会場はすべて喫茶店で、額にはいった写真はひとつもありません。「これは作品だ」と声高に主張するのではなく、知らない人は知らなくてよく、気がついた人だけがひそやかに味わう、そんなインテリアのようなアートのあり方を模索しているのではないかとおもいます。さいきん代表の碓井良平さんとしゃべってないからわかんないけど。
10日まで。会場は、北3条通沿いの、ファクトリーホールのはす向かいです。
現展 第32回北海道支部展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)全室 A
公募展の「現代美術家協会」の支部展。現代美術家、といっても、いわゆる現代美術ではなく、絵画がほとんどです(って、毎年書いてるような気がするな)。
ことしは、札幌タイムスの記事によると初出品という革工芸作家、亀島ヒサ子さん(江別)の「赤い大地」が目を引きました。この作品は、左に、壁掛け型の横長の平面を上下2段にならべ、右側にはレンガと、革を巻いたりしたものが、インスタレーションふうに配されています。革による抽象表現は重厚さがあり、また、江別の特産であるレンガと組み合わせることで意外な効果を生んでいるようにおもえました。
阿部国良さん(旭川)「記憶の箱03 風が透き通った日」。テープ状のものをキャンバスに張ることによって凹凸をつける技法は変わっていませんが、暗いなかにうかぶ色彩はかなりあざやかさを失い、茶系のおちついた色の帯になってきています。
土門和子さん(札幌)「風の残像」。わりとよくあるタイプの花の絵を描いていたという印象がありますが、今回はまたずいぶんと筆をはぶいた抽象画です。
北浜仁さん(函館)「鎖」。題のとおり、地面にうずたかく積みあがった鎖を、丹念に描いていて好感がもてました。
3階は小品展。廃品を粘り強く描く工藤英雄さん(小樽)が、フォーブふうの「昭和新山」、抽象の「争いの土地」など多彩な画風にいどんでいるのが、目を引きました。
8日まで。
その他の出品作はつぎのとおり。註記のないものは絵画。
亀島ヒサ子 「碧」
池畠史幸(石狩)「北辺共生」「北辺に生きる」。小品「北辺に生きる(エゾシカ)」「北辺に生きる(シマフクロウ)」「北辺に生きる(タンチョウヅル)」
小林広勝(後志管内余市町)「微妙な関係T」「微妙な関係U」。小品「神威岬」「滞船」「岬を望む」
堀内洋子(同)「奈津子の午後」。小品「二月の花」「待ちぼうけ」「追憶」「冬果実」「花言葉」
盛カツヱ(同)「大地」。小品「古墳への道すがら(飛鳥)」「回想」「遭遇」「おどる」
村上豊(同)「野外レストラン」「カルカータの麓にて」。小品「やすらぎ」「ゴンドラ」「花」「ピエロ」「婦女」「婦女」「ピエロ」
横山恭子(同)「しらかばの詩」「しらかばの四季」。小品「しらかばの四季」「ペンションの秋」
崎野雄一郎(小樽)「メテオラ」。小品「渚」「白い塔」「残照」「寄港」
工藤英雄(同)「鳥」「鉄屑」。小品「マシン」「鉄くず」「海」
荒井武(同)「漁港一隅」。小品「雨上がりの教会」「小樽運河」「さんま」「人形」「牧場」
細川久美子(札幌)「飛翔−(彼方へ)」「燦」。小品「Dream」「ある日」「秋桜」
菊地道之(同)「遠い記憶」
木村節子(同)「サマータイム」。小品「そよかぜ」「窓辺」
土門和子 小品「花」「花」「花」
近藤弘毅(檜山管内今金町)「北の心象」。小品「風景」「白い花」
服部静子(帯広)「春の十勝川」「春の札内川」「北の花サビタ」「湿原T」
服部正(同)「マンダラ マハーカーラ」
鈴木義夫(北見)「幻凍からの眺め…融合され行く気体」(立体)
黒崎和夫(室蘭)「ブッシュに贈るうた」「巌(いざない)」。小品「崖岸」「崖谷」「灯台のある崖」
このほか、道外からの賛助出品が7点。
2月6日(木)
パソコン不調中に見て、まだ終わっていない展覧会から紹介します。
この間のてんまつについては「つれづれ日録」に近々アップする予定です。。
川口英高(陶芸)・蓑嶋一成(磁器)・岩間隆(木) グループ展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)A
川口さんは、火だすきのような模様に青緑の飛沫のついた皿など、さまざまなうつわがあります。
蓑嶋さんは、真っ白な磁器。北海道の石をもちいているようですが…。カニや鮭をあしらった伊万里調の絵付け皿、くじら、獏の置物などもあります。
ブルドッグの木彫などのイメージがある岩間さんですが、今回は壁掛けレリーフや、アロマキャンドル用スタンドなど、おしゃれで実用品が作品が中心。蓑嶋さんとの合作の皿もあります。
9日まで。
桝野正博写真展「しずか」=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)A
石川県は、両白山脈のふもとにある鳥越村に住む写真家の個展。
霧に浮かぶ木立、白い背景に透き通る葉の群れ、紫の空、群青の海…。抽象画とも見える、自然の美を、切り取っています。シンプルで、うつくしいカラー写真約50点。
ただ、印画紙が額のなかでたわんでいる場合があり、光沢が気にならないでもありません。
8日まで。
すでに終わった展覧会から。
記憶がさだかでなくなっているものも多く、誤記などあるかもしれません。ご指摘よろしくおねがいします。
写真展 aeroscape=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル) B
札幌とそのちかくに住む、渡辺可緒理、中村仁美、南敦子、結城亮史の若手4氏による写真展。
結城亮史さんは、澄んだ心象風景ともいうべき、落ち着いたモノクロームの写真をならべました。
題のつけかたもおもしろく、夕張の冬の、なんていうことはない小高い山と野をうつしたた1枚は「カヴァレリア・ルティスカーナとサイレン」と名づけられています。これを撮影したとき、ちいさい町に行くとよく正午などに鳴り渡っているサイレンと、名曲の有線放送だかが、かさなって聞こえたのだそうです。手前にある手押しポンプがよいアクセントになっています。
また、「preparation of DADA」は、古い橋のたもとにいる女性の、首から上が切れているという構図。ただし、手前の水たまりに、彼女がカメラを構えているのがわかるという、凝った作品です。
「まずじぶんのなかでイメージをつくりあげないと、とれないんですよ」
と言う結城さん。完成したイメージに見合った風景をさがすというのは、なかなかたいへんなことのようにおもえます。
中村さんは、まだ北星学園大に在学中なのかな。
自宅近くの丘の上で空を撮った「new territory」(モノクロ)が好きです。開放感のなかに、撮影者の心性がおりたたまれているような気がしました。カラーもあり。
南さんは、舌を出しながら飛び跳ねた瞬間の男女の表情をとらえたモノクロの連作。髪を逆上がらせた(ただしひとりは坊主あたま)肖像は、ふだんとはことなるやんちゃな側面をさらけだしているようです。
なお、ことし東京都写真美術館でひらかれるグループ展に出品するそうです。
渡辺さんは全点がカラーです。せみの抜け殻をメーンのモティーフに、花などをあしらった、色とりどりの幻想的な作品です。フィルターをつかったのではなく、さまざまな色のライトを、位置にくふうしながら当てて、撮影したものだそうです。
1月23−28日。
三州鬼瓦 若鬼士展=工芸ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28)D
愛知県で、伝統の鬼瓦をつくる中堅・若手のグループ。工芸ギャラリー愛海詩では“常連”の人たちです。
一般の鬼瓦のほか、ミニチュアやキーホルダー、さらにはメルヘン調のデザインの傘立て、遊び心のあるランプシェイドなど、多彩な作品がならびます。鍾馗(しょうき)もあります。
つくりは、あまり微細な点にこだわらず、おおまかに形をとらえています。
鬼瓦の面相をみていると、これを屋根の端に取り付けたいにしえの人のきもちがわかるような気がします。悪霊とかがこわがって、入ってこられなさそうな感じがたしかにしますから。
12月27日−1月31日。
北海道浅井学園大学 北方圏アートプロジェクト <美術展2002> −北方(きた)からのメッセージ−=北方圏学術情報センター3階 ポルトギャラリーB(中央区南1西22)D
阿部典英、佐々木けいし、永野光一、野崎嘉男、林亨の5氏の作品に、会期後半から、奥岡茂雄、佐藤友哉、中村聖司、古川俊英の4氏がテキストのパネルを添えるというこころみ。それだけではなく、会場をおとずれた一般の人の感想も壁に張り出していくというユニークな展覧会。
案内状には
「展覧会全体を作品を介しての対話の場とし、その交信を公開しながら、美術と地域との新たな関わり方を追求する機会としたい」
とあります。
作品でいちばん注目したのは、阿部さんの「ネェ ダンナサン あるいは否・非・悲」です。
白っぽい木の、トルソをおもわせる彫刻が3体、鏡張りの凾(はこ)の中におかれています。
いま、トルソと書きましたが、チェスのこまをおもわせるところもあります。あるいは、キリコの代表作「ヘクトルとアンドロマケ」に登場する人物の上半分を連想もさせます。線のつけかたで、うつむいているように見えたり、顔を上げているように見えたりするのは、さすがです。
彼女たちは、おそらくいまの世界にむけて、否定の身振りをし、あるいはかなしんでいるのであろうとおもいます。そういう、人間の気持ちの原形質のようなものが、かっちりと表現されているようにかんじられました。
永野さんは、小品「眼の時」1点だけですが、これまでもっぱらとりくんできた、まがった針金の束と石とをくみあわせた彫刻の系列とはことなる作品です。金属をくみあわせてつくった重厚な直方体の周囲に石を三つ配し、どこか東洋的な−という語をもちいると、なにやら思考停止したみたいですが−たたずまいのある小宇宙をかたちづくっています。
佐々木けいしさんは2種。
壁に掛けられた円形の連作「蠱(こ)」がスタイリッシュな工芸作家としての佐々木さんを、床に置かれた、クレーターのうがたれた巨大な球体「郭(かく)」が力強い造形作家の面を、それぞれあらわしているようにも見えます。
平面の林さんと野崎さんはこれまでの仕事の延長線上にあります。
テキストでは、奥岡さんがさすがキャリアの長さを感じさせる味わいふかいエッセーふうの評を寄せています。ただし「北方性」を、阿部さんの作品について言うのはともかく、現在の野崎さんについて言うのはどんなものでしょう。これだと、道内でうまれるほとんどすべての美術作品が「北方的」であることになってしまうようにおもえるのですが。
筆者には、野崎さんの仕事は、いわばミニマルと即興性との融合、共同といった側面がつよいようにおもえます。ただ、現在のシリーズが始まって、6、7年になるので、そろそろつぎの展開に期待したいというきもちがあるのも否定できませんが。
11月22日−1月31日。