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あーとだいありー 2004年6月
6月15日(火) 地下街オーロラタウンの紀伊國屋書店札幌本店になにげなく立ち寄ったら、道立近代美術館の図録コーナーなるものが設けられており、過去の図録が何点かならんでいました。 しかも安い。筆者は、ほんらい3600円ぐらいしたはずの「コレクション100選展」を、税込み2100円で買いました。 ほかに、「The Glass Skin」「パサージュ−新しいフランスの美術」「砂田友治展」などが格安で売られていました。 何日までやっているかわかりませんので、札幌の方は立ちよってみてはいかがでしょう。 16日の北海道新聞朝刊の地方版に、来月ひらかれる「絵画の場合」展のレンタルプロジェクトについて大きく載ります。 詳細は後日、このサイトでも紹介します。 |
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6月14日(月) Constellation of Modern=THE PRESTIGE GALLERY(中央区北7西22、中村税理士ビル2階) ダム・ダン・ライさんだけが札幌在住のヴェトナム出身アーティスト。 あとの、石原輝雄、瓜生由記子、加藤勝久、川鍋和子、坂本京子、立花多美子、中角洋子、伴庵、本多榮子、松原裕美の10氏はいずれも道外在住で、モダンアート協会の会員や入選者です。 モダンアート協会は戦後、自由美術からわかれた全国公募展のひとつですが、道内に関係者が少ないため巡回展や支部展などはひらかれず、なじみのうすい公募展といえます。したがって、100号クラスの絵画が並ぶ今回の展覧会は貴重な機会だと思います。 加藤さん(高知)「白い影−悠久の彼方から 命」は、動物の骨や縄をモティーフとし、トロンプ・ルイユ(だまし絵)のように高い描写力を発揮した作品。 石原さん(東京)「04−FACE−T」も、エアブラシをつかったスーパーリアリズムを思わせる1点。女性の顔が、りんごを剥くようにはがれている、ふしぎな絵です。背景が白一色なのも、ふしぎさを強調しています。 たまたまリアルな画風の絵から先に書きましたが、全体としては抽象が多いです。 会友の本多さん(東京)「TRANS」は、73センチ四方のリトグラフで、版画としては相当に大きい作。モノトーンによる、黒と白のせめぎあいがスリリングです。 伴さん「誕降焉」は、金属の表面をグラインダーのようなもので削って模様を浮かび上がらせたものを平面にした異色作で、金属の切断面のくみあわせと、マティエールだけで勝負した作品です。 ライさんは、立体によるインスタレーション「森」と、抽象の平面2点。前者は、絃楽器をおもわせる頭頂部を持つ木の柱がたちならび、素朴で土俗的な印象をただよわせています。 22日まで、会期中無休。 □DAM DANG LAIさんのサイト 香月人美セレクション1980−2000 まなざしの夢みる頃に=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館) 福岡市でポエトリー・リーディング(どうして「詩の朗読」といわないんだろう)などの活動をおこなっている香月さんは、ギャラリーの運営にもたずさわっているらしく、今回はようするに、そこでとりあつかっている売り絵の展示販売ということのようです。 会場の壁には、10人中8人が道内初公開というようなことが書いてありましたが、すくなくとも河村悟、小林裕児、安元亮祐の3氏は、この1、2年に札幌で個展をひらいていますから、なにかの誤りでしょう。二科の長老、織田廣喜の絵が、札幌でまったく発表されたことがないというのも、にわかに信じられませんが。 元村正さんの油彩は、案内状にもつかわれていたもので、丁寧な塗りが、あたたかみと幻想性をかもしだしています。 19日まで。 |
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6月11日(金) これを書いているのは14日の早朝。 すでに終わってしまった展覧会多数。もうしわけありません。 藤根凱風個展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 1933年夕張生まれ、札幌在住の書家。70年、北海道書道展で大賞を受賞し、会員に推挙されています。父は、道内を代表する書家だった故藤根星洲さんです。 スカイホール全室をつかった個展で、臨書1点のほかは、漢字の創作が20点あまりならんでいます(すべて額装)。 まるみを帯びた、ゆったりした筆致。すべて濃墨。大きくとられた余白。みていると、心がふうわりと落ち着いてくるような書です。 「大巧如拙」という作品がありましたが、この4文字のなかに、作者の心情がこめられているような気がしました。 「幻夢」はやわらかい曲線のみで書かれた一作。いっぽう「回心」は、心の第二画が右上から左下にすっとまっすぐひかれており、すなおな心持を反映しているようです。 ほかに「夢邊」「無遠」「春霞」「幽庭」「通覧」「処知」「暢適」「輪廻」「古佛心」「心身一如」など。 13日で終了。 辻徹・漆芸 浦口雅行・青瓷 二人展=三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3 地図B) 辻さんは1963年札幌生まれ。東京藝大を卒業後、茨城県に工房を構えています。同窓で、おなじく茨城に窯をかまえる浦口さんとの二人展。 辻さんは、漆の器です。あまりぴかぴかに塗りたてず、素朴な味わいをのこした茶器などがならびます。また、朱にも、オレンジに近いものと緋色のものがあり、奥が深いです。 「ぐいのみ錫」など、漆芸っぽくない作品もあります。また、木製の机などもありました。 一方、浦口さんは「青瓷」ということで、水色のおちついた色合いとくっきりとした貫入が特徴です。 14日まで。 □ウェアウッドワーク(辻さんのサイト) ■辻徹個展(03年) 大井戸百合子「マレーシアの街角」原画展=道新ぎゃらりー(中央区北1西2、札幌時計台ビル地下 地図A) 北海道新聞生活面に連載しているエッセー「マレーシアの街角」の、じぶんでかいている挿絵の原画展。 まずは 「こんなにデカイものだったのか」 とびっくりします。 「フードコート」「ツインタワー」など、70×140センチもあるのです。 墨とパステルを使い、墨彩画を思わせる独特のタッチです。 南画にも通ずる勢いのよさが、明るい色の衣裳であるく南国の人々や町を描くのにぴったりなのでしょう。 大井戸さんは札幌在住の版画家。全道展などの会員です。 以前からクアラルンプールなどをたびたび訪れてきました。さまざまな人種の人々がごったがえしている活気にひかれたといいます。 会場には、原画のほか、道内の市場に題材を得た銅版画、過去の新聞の切り抜きもあります。ミニ額つきの小品、絵はがきなど、安価で買えるものもそろっています。 また、ゼェフィナ・アンザニさんというマレーシアの画家の小品も同時に展示しています。目の覚めるような原色で、海中の情景などを描いています。 15日まで。 国井しゅうめい・江利香水彩画展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) 函館在住の水彩画家夫婦展。画家のほか、武道家、音楽家と多彩な顔をお持ちです。 透明感あふれる画風で、とくに美術に関心のない人でも、この絵キライ! という人はいないのではないでしょうか。札幌にもたくさんの生徒さんがいらっしゃいます。 下のフロアは、1975年生まれの江利香さんの個展(筆者は、むかし「えり・かおる」さんだと思っていました)。「木陰のスケッチ」は、北大第二農場に材を得たものだと思いますが、透明感と幸福感は師匠(というか夫君)譲りです。 上のフロアは、しゅうめいさんの作品。 一般の水彩画、色紙、来年のカレンダーの原画(予約受付中です)、人物デッサン、絵はがき販売など、もりだくさんです。 国井さんの絵は、全体的に明度が高く、日陰の部分でもはっきり色がわかるのが特徴だと思います。今回、あらためて感じたのは、とくに風景画は、どれもなんだかなつかしいんですね。「ポプラ」「二輪草の咲く公園」など、遠い日の思い出のようです。あまり奇抜な構図、特徴のありすぎる風景を描くのではなく、どこにでもありそうな風景をモティーフにしているからだと思いました。 □国井さんのサイト「夢道場」 15日まで。 21日午後6時半からは京王プラザホテルでピアノ弾き歌いコンサートもひらきます(前売り3000円、当日3500円。軽食・ワインつき) アグラ+モグラ「WOOD CRAFT」展=SOSO CAFE (ソーソーカフェ)(中央区南1西13、三誠ビル 地図C 札幌を拠点に活動するファニチャーデザインの「AGRA」と、グラフィック/映像集団「MOGRA」による「WOOD CRAFT」をテーマにしたコラボレーション。 アグラ、といえば家具で有名ですが、今回は流木などをつかったインスタレーションです。 木の枝に電球を取り付けたり、素朴な作品がならんでいます。 17日まで。 以下、13日でおわった展覧会について、かんたんに書きます。 小堀清純個展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 白日会会員、道彩展創立会員の初個展。 1980年代初頭の小樽の風景から、近作まで、水彩画37点を展示していました。 いずれも丹念なタッチの、写実的な作風。静物画が多いです。 白日会の会員推挙作となった「ランプのある静物」(04年)は、静物の落ち着いたたたずまいと、背景に打たれた緑色の点が特徴です。 札幌市資料館(中央区大通西13)では、水彩の「彩(いろどり)のなかま展」が、みなさんお上手でした。 第16回グループ正展は油彩。個性的な作品が多かったです。 豊平館を題材にした一ノ関恵美子さん「風景」、斜めの光線をとらえた永井清美さん「静物」、佐々木ゆう子さん「大通り公園」、木原文代さん「静物」などが印象にのこりました。 第6回土の会油彩展と朱の会展は、道新文化センターの土屋千鶴子教室で油絵をならっている人たちの展覧会なのですが、男性と女性がべつのグループをつくっているのがおもしろい。 |
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6月10日(木) 森山誠個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) |
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人物が登場する「memory」のシリーズが4点、静物だけで構成した「卓上」のシリーズが小品も含めて13点出品されています。 うち、2点は昨年の、道内の有力具象洋画家によるグループ展「具象の新世紀」に出品されましたが、のこりは新作です。 「ものは、はっきり描かないほうがリアルに見える」 そう、森山さんは話します。 森山さんの絵に登場する人物も、皿や瓶といった静物も、一見きわめてリアルに描かれているようで、同時に、荒っぽい筆触の感じられる描写だったり、細部がぼかされていたりします。 とりわけ人物の場合、どこか風貌が作家本人を連想させる上、周囲の空間の空虚感(とはいえ森山さんは、なにも描かれていない空間を「持たせる」のがばつぐんに巧い人でもありますが)もてつだって、絵の中に「現代人の孤独」というような、いわば「文学的」な要素を読み取る人は多かったようです。 しかし、森山さんは、そういう読み取られ方が本意ではなかったようで、あくまでじぶんの絵は造形を追究していることを述べていました。 「卓上」は、人物を排して、静物とテーブルだけで絵画空間を構築しており、比ゆ的な読みをいっさい拒絶する強さにみちています。 右上の「卓上03−3」にしても、或る程度リアルな筆致で描かれているのは、皿と緑色の瓶だけです。 右上の緑は、もともと観葉植物だそうですが、完全にかたちは崩れ、もはや瓶の緑とひびきあっているという存在でしかありません。 テーブルとおぼしき白い平面には、するどい線が縦横に走っています。 そして背景は、白い平面の粗さと対照的に、ごくフラットに塗られています。これは、おなじ絵の具を何度も塗ることで得られる効果なんだそうです。 そのふたつの空間がつくる対比は、鮮やかです。 そして、白い平面などの上に走る線は、すべて一点に集中するようにひかれているそうです。「卓上03-3」であれば、画面の中心をなす緑色の瓶です。 この「一転集中」は、他の絵でもおなじだそうです。 20世紀の絵画はキュビスムをはじめとして、視点を1ヵ所に固定することへの反省から展開していったということも可能ですが、そんななかで森山さんは、逆をいくというか、視点は固定した上で、モティーフをほとんど筆触の中にとけこませるようなやりかたで絵をつくっていくのです。ほとんど抽象画になりそうな地点で、ストロークは走っているといえましょう。 今回の個展ぐらい、森山さんのいわば造形至上主義というか、空間をつくるという意思が貫徹されていることはないと思います。 「要素がすくなくなって、むしろ自由に描けます」 引き算のすえの、ぎりぎりの努力の上に、森山さんの絵画世界はなりたっているといえるのではないでしょうか。 札幌在住、自由美術会員。 ■あひる会絵画展(04年2月) ■03−04展 ■森山誠個展(02年8月。画像あり) ■01年4月の個展 木下幾子展=同 裸婦デッサン一筋の木下さん。 近年は、ほとんど筆1本で描いています。「一発勝負のおもしろさ」があるとのことで、鉛筆やコンテはつかわなくなりました。 それにしても、筆と墨では、やり直しがきかないことももちろんですが、陰影をつけてモデリングができないため、ほうっておくと一種の南画や漫画のような絵になってしまうと思います。線に肥痩があることも、絵柄を日本的なものにしてしまう危険性があります。そういうきびしい条件下で木下さんのデッサンは、陰影もなにもなしで、なお洋画でありつづけているというのがふしぎというかおもしろいものだと思うのです。 石川寿彦漫画展4th=同 北海道新聞などでおなじみの、札幌在住の漫画家。 世相を諷刺したカラーのカトゥーンや、新聞マンガの原画などがならぶ楽しい展覧会です。 第19回イーゼル会展=同 3階全室は、豊田満さん(道展会員)の教室展です。 24人が、裸婦、風景、静物などひとり3点の油絵を(ひとりだけ2点)出品しています。 力量が安定しているように見えるのはF室の出品者で、入江遠さん「冬の雑木林」、佐々木恒美さん「オンフルール港」などは、じっくり描かれた佳作だと思います。 以上すべて12日まで。 ほかに「春の院展」などを見ました。あいかわらずですが。 詳細はおって。 |
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6月9日(水) 訃報です。 掲示板にも書きましたが札幌在住のイラストレーター杉吉久美子さんが亡くなりました。41歳という若さでした。 ご主人は、全道展会員の画家、杉吉篤さんです。 杉吉さんの作品で印象が強いのは、立体イラストレーションです。模型を実際につくって写真に撮るという手法で、雑誌の表紙などをかざっていました。 また、仲間たちと「酵母展」と題したグループ展をつくり、毎年札幌市資料館などで発表していました。こちらは、ユーモアのセンスに富んだ作品が多かったと記憶しています。 とにかく急なことで信じられません。ご冥福をお祈りいたします。 また、昨年、道立美術館で写真展がひらかれたイタリアの文化人類学者フォスコ・マラニーニさんの亡くなった記事が新聞各紙に出ています。 北海道新聞によると、ことしの全道展・協会賞は、小笠原緑さん(東京)がえらばれたそうです。 小笠原さんは江別出身で、毎年、ドリッピング技法を生かした巨大な水彩の抽象画を発表しており、筆者も(いまこんなことを書くと、さえない野球解説者みたいでいやですが)、いずれ上位入賞はまちがいないと思っていました。 おめでとうございます。 ちなみに、17−27日に十勝管内鹿追町でひらかれる絵画グループ展「超克の標」展に、小笠原さんの作品が出品されます。 全道展は、16−27日(月曜休み)、札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)でひらかれます。 高橋三太郎 木の家具展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1 地図A) 昨年、東京国立近代美術館工芸館でひらかれた「現代の木工家具」9人展にえらばれるなど、日本を代表する家具作家のひとりとして活躍中の高橋さん(札幌在住)の企画展。 札幌コンサートホールKitaraのいすなど、公共空間の仕事も数多くこなしています。 いすを得意とする作家だけに、今回も大半がいす。 ゆるやかな曲線と、木の質感が、ほっと心を和ませます。 あまり作為を感じさせない、自然なフォルムが特徴です。 13日まで。 □家具工房SANTAROのサイト THIS HERE IS photo Graphix at cafe ESQUISSE=カフェ・エスキス(中央区北1西23、地図D) コンピュータで画像加工をほどこした「photo Graphix」作家を名乗り、道内外で精力的に活躍中のSatoshi Matsuyamaさん(札幌)の個展。 「THE SMILE OF THE BEYOND」「CAST THE NET ON THE RIGHT SIDE OF THE BOAT」など計7点が展示されています。 いずれも、ハワイの風景を撮影して、色彩を変えるなどしたもの。強調されたエッジがいかにもデジタルという感じです。鳥が飛び、空が雄大な色に変わり、海が月光に光る−。その風景は、一種のユートピアというか、あまねく神の恩恵と福音がいきわたった世界といえそうです。 ところで、Matsuyamaさんの巨大な作品がエスキスの壁面におさまるのかどうか心配でしたが、考えてみればデジタル作品というのは、オリジナルの大きさってあってなきがごとしなんですね。 15日まで。 作品の画像は、下記のサイトでごらんください。 □S.Matsuyama Art Gallery 長澤満 川辺肢満 二人展=オリジナル画廊(中央区南2西26 地図D) ペーパースクリーン、シルクスクリーンによる版画展。 2月の二人展で展示済みの作品が半数以上を占めます。 長澤さんがたくさんの蔵書票を、川辺さんは「カラー」など花の小品を出品しています。シルクらしく色彩がきれいです。 12日まで。 ■04年2月の2人展 狩野立子展 −響−=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20 地図D) 「かの・りゅうこ」さんは、札幌の若手抽象画家。 今回は、はじめて岩絵の具や箔をつかった制作にいどみました。 30センチ四方の小品が27点(うち9点は1セットとして展示)、90センチ四方のものが2点です。 会場にはこんなパネルがはってあります。 太古の昔から人々が求めて止まない水色を主調として、いろいろな色のストロークが横切る絵です。 油絵の具もつかっており、いわゆる日本画にくらべると、表面はざらついています。箔が剥がれてかたまりになったものが付着しているのかもしれません。 また、支持体の側面にも着彩されています。9個の小品を縦横3つずつならべて1個の大作とおなじサイズの作品のように展示していますが、それぞれの小品の厚さが異なるため、表面に凹凸が生じています。 あまり奥行きを感じさせない画面のため、あえてこんな技巧をこらしたのか、それとも絵画におけるイリュージョンがしょせん幻影でしかなく、絵画の物質性を強調しようとしてやったことなのか、そこらへんははっきりしません。 個人的には、春の北海道抽象派作家協会における「river」のほうが、画面に広がりが感じられて、好きです。 13日まで。 ■04年抽象派展 ■03年6月の個展 ■03年抽象派展 ■02年6月の個展 |
6月7日(月) きのう書けなかったぶんです。 田村健太朗写真展「オホーツク」=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A) 田村さんは旭川在住、道写協の会員です。 北は宗谷、猿払(サルフツ)から南は野付半島まで、流氷を中心に、オホーツク沿岸の大自然をいきいきととらえたカラー写真49枚が展示されています。 ほかの人も撮っているようなワンパターンなショットはあまりないので、好感がもてます。 きのこ型をした夕日の前を渡り鳥が列をなして飛んでいく情景をとらえた「北帰行」。 なにげない漁村のショットですが、春をむかえるよろこびがあふれている「蕗の薹(枝幸)」。 灰色にわずかにレモンイエローをくわえたような空に、朝日、鳥、舟などが配され、まるで墨絵を見ているかのような幻想的な「海霧の朝(野付半島)」。 さざなみがそのまま凍り付いてしまったふしぎな光景の「結氷の湖(サロマ湖)」。 こういった、劇的な風景もいいのですが、たとえば「雪来る沖(東浦)」といった、一見なんでもないショットにも捨てがたいものがあります。漁港を高台からとらえたこの写真は、鉛色のみだれた帯となって空を覆い始める雪雲がうつっています。西の空におなじ雲を見て「ああ、雪だ」と思った北海道人はたくさんいるはずです。また「雪の牧場(興部)」も、どこにでもある酪農家の風景ですが、なおさら北海道の人間にとってなつかしい光景です。 筆者は以前、「掛川源一郎展」についての文章の中で、外部の視線と内部の視線ということについて書きました。その観点でいえば、田村さんの視線は、オホーツク海の外部からのものといえますし、また北海道の中ということで、内部のものともいえます。 ただし、筆者は、外部の視点がダメだと言っているわけではありません。外部の視点がなければロマン主義的な思想の契機はついに成立しないのです。 というわけで、田村さんの写真は、札幌に住んでいる筆者にとってはちょうどよい視点のものだったのです。 9日まで。 淡彩4人展(杉山宏二・坂元輝行・真鍋敏忠・中川幸浩)=北海道銀行 札幌駅前支店ギャラリー(中央区北4西3 地図A) ひとり5点ずつ、かんたんに色を着けたスケッチを出品しています。 杉山さんは京都のシリーズ。「竜安寺の桜」は、名庭に咲く花。ここは、なにせ観光名所なので、ふだんは修学旅行などの人出が多いところですが、絵の世界は閑寂です。 坂元さんは九州旅行のシリーズ。太い筆による勢いのある線で対象をとらえています。 のこるふたりは道内のスケッチ。真鍋さんは、サイトでも見たことがあるような、富良野の「北の国からの家」などを安定した筆致で、中川さんは、北広島の輪厚(わっつ)の風景を描いています。 11日まで。 □真鍋さんのサイト |
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6月6日(日) 6日の北海道新聞朝刊の1面に、草間彌生ファッションショーの記事と写真が出てましたね。 草間さんはご高齢でもあるし、たぶんいらっしゃらないだろうと思ってたのですが(森美術館のオープニングには来てなかったというウワサもあったし)、見ることができた方、よかったですね。 筆者は、5日も6日も仕事でした。 芸術の森美術館(南区芸術の森2)の草間彌生展は、8月22日までです。 さて、オープンしたばかりのあたらしいスポットの紹介です。 ギャラリー&カフェめーぷるりーふ(中央区宮の森1の18の1の23)です。 オープン記念として、画家・高橋哲夫さんと彫刻家・浅井憲一さんの展覧会をひらいています。いちおう、今月いっぱいの予定です。 左の写真でわかるでしょうか。左の山の中腹に「宮の森シャンツェ」が見えます。 札幌冬季オリンピックで、笠谷幸生選手をはじめ3人がメダルを独占したジャンプ台です。 お店の人によると、冬は豆粒ぐらいに選手が飛んでいるのが見えるそう。 アナウンスなどははっきり聞こえるとのことです。 地下鉄東西線の円山公園駅からジェイアール北海道バス「西14 荒井山線」に乗りつぎ、終点「宮の森シャンツェ前」下車、ちょっと下っていくと左手に公園が見えるので、階段を上がって公園を突っ切っていくと、すぐにあります。 緑に囲まれた、すてきなロケーションです。 コーヒーは550円ですが、しばらく開店記念セールで2割引きのはずです。 第9回てんか展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) 知的障碍のある人のための美術公募展。 筆者が見るのは、7年ぶりです。 前回見たときにちょっとショックだったので、ついごぶさたしてしまいました。 というのは、展示作品のほとんどがテレビを題材にしていたからです。 養護学校の生徒というのはテレビ漬けになっているのだろうか−そう思いました。 7年ぶりに見て、いろいろな題材があるので、ほっとしました。 特別賞を得た齊藤毅さん「香港の街並」は、作者の旅行の喜びがつたわってくるような作品。おなじ人の「さようなら市営バス」も素朴な力作で、札幌市交通局はぜひウィズユーカードのデザインにつかってほしいと思います。 山鼻美和子さん「2004.5.10」のような、ロスコを思わせる抽象画もありました。 8日まで。 |
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6月5日(土) きょうも大量です。すいません。 第3回 森崎修太 油絵展=三越札幌店9階三越ギャラリー(中央区南1西3 地図B) 余計なものをそぎ落としたシンプルな構図と、あざやかな発色。美しいのに、生っぽくない色は、何度見ても感嘆させられます。 欧州には毎年取材旅行に出かけているそうで、いずれも、その土地の空気感が感じられる作品になっています。 たとえば、白い家並みで名高いギリシャの島の風景を題材にした「サントリーニ島」。 海も空も、目の覚めるような青です。 海に2艘のヨットがうかんでいるために、構図がぐっと安定しています。 「オアシスへの道」は、モロッコで取材したもの。写真の左手にうつっています。影の部分のグリーンと、レモンイエローの雲はフィクションだそうですが 「これがないと味気ない。砂漠の黄色と大地のオレンジ、茶色が生きてこないんです」 と森崎さん。 写真の右手は「よろこび」。ほとんど海と空だけからなるシンプルで荘厳な世界。朝日が、紫の海から昇ってきます。ピンクに染まった空。なんだか満月が沈む情景にも見えます。まさに、作家の考える「生きる喜び」が凝縮したような1点です。 「妥協したらダメですね。頭の中には完成した絵がありますから、それにいかに近づけていくか、なんです。それと、偶然性にはいっさいたよらない。パレットで色を混ぜていて、おもしろい色ができても、それはつぎに使うことにして、いま使うことはしない。偶然できた色を使うと、絵がバラバラになってしまいます」 ほかにも、鮮烈なオレンジが空を染める「カプリの風景」、透明で落ち着いた大気の感じがたくみに表現されている「南仏のレストラン」、カーブした道とあかるい緑の丘がなつかしい「緑の大地」、海のミントグリーンが絶妙な「コートダジュール」など、美しい色の油絵がならんでいます。ネットや印刷ではなかなか微妙なところまでは表現しづらいので、足を運んでほしいと思います。 6日まで。 7月に神戸大丸、9月に広島そごう、11月ごろに仙台三越、12月に銀座でも個展が予定されています。 □森崎さんのサイト「ボンジュール修太通信」 ■03年の個展(画像あり) ■02年の個展 三越では、「久郷剛司作陶展−備前に魅せられて−」も同時開催。 札幌出身の陶芸家によるうつわ展です。 備前というと、時として荒っぽい作品を量産する人もいますが、この作家の場合は、手びねりによる微妙なかたちも、焼成も、とてもていねいだという印象を持ちました。面取りも独特のものがあります。 写真家 掛川源一郎の20世紀=北海道立文学館(中央区中島公園 地図F) 1913年生まれの写真家の回顧展。 近年は札幌に移りましたが、戦後ほぼ一貫して伊達に住み、もっぱらその周辺の子ども、人々、自然現象を撮ってきました。今回は、1946−86年のモノクロ作品が150点以上ある、ひじょうに見ごたえある展覧会になっています。 結論から言うと、圧巻のひとことです。 ただ、その「圧巻」が、なぜなのか、筆者はいまだうまく表現できることばをさがしあぐねています。 ことばの水準線を下げてしまえばそれは簡単な話で、まずは、なつかしい。 木造の住宅。ほこりっぽい路地や、どぶの続く道。店の手がきの看板。どこででも、げんきに遊ぶ子どもたち。(ほこりっぽい道といえば、今回の出品作で舗道が登場しているのは、60年の「にわか雨の社宅街」1点のみだと思います) えりも(当時は幌泉村)でバスを待つ人々の姿を撮った写真がありましたが 「そうそう、みんなこんな格好をしていたんだよ。お店はこんなだったよ」 と、ひさしぶりに思い出した感じでした。 ちなみに、マイカー時代のずっと前で、ついに鉄道が敷かれなかったえりも町の人々にとって、バスを待つというのは、いまよりもっと切実な行為だったのではないかと推察されます。 子どもたちは、じつによく遊んでいるけれど、またずいぶん働いてもいます。子守をしたり、流木をひろったり、牛乳缶を運んだり、古雑誌を売ったり。 流木ひろいや石炭ひろいの写真が何枚かありますが、おのずと当時の貧しさを物語っています。 これらの写真は、べつに懐旧的な視点から撮られたものではありません。 しかし、いま見るとなつかしいのは、そのときそのときの「現実」が、しっかりととらえられているためではないかと思います。 もうひとつは、人間の存在感。 戦後、写真の発表スタイルの本道とされていたのは組写真でしたが、たとえば、歌人のバチェラー八重子を写した「聖書を抱くバチラー八重子」、「往診に出かける高橋房次医師」、両脚を切断しながら腕扱きの漁師として生きた「逞しい面魂の陶さん」など、1枚で、雄弁に人となりを物語っています。 さらに、ローカルに徹しながら、或る種の普遍性に通じているという点も見逃せません。 先ほども書きましたが、題材のほとんどは地元の胆振・日高地方と、後志南部です。 しかし、日常的なことだけではなく、アイヌ民族、伊達火力発電所反対闘争、有珠山噴火なども、粘り強く追っています。 その視線は、ジャーナリスティックであると同時に、よそから来てふらっと撮って行ったものではない、当事者的なものというか、一種のたしかさを感じさせます。 べつに掛川の地元だけに大きなニュースが集中したわけではないでしょう。 ただ、身のまわりのできごとにレンズを向けていた結果、そこに戦後という時の厚みを体現したかのような集積を生んだのだと思います。 と、こう書いてきても、なーんか、本質に迫れていないような気がするんだよな。 客観的であると同時に、作者の思いが写ってしまうという、写真というメディアの持つ両面性というのか…。 そうだ(と思いつく)。 最後のローカルのことでいえば、サイード的な視点を導入すると、「北海道」というのは、常に「外部」の視線で語られてきたんだよな。 しかし、掛川さんの視線は、内側からのものだ。 それは、「オレは舞台裏を知ってるぜ」というような楽屋落ち的なもんじゃなくて、なかなか「語る主体」たりえない、「外地」に「ふつうに生きる人々」とおなじ目線っていうこと。 だから、ここにあるアイヌ民族の写真は、けっしてアイヌ民族みずからが撮った写真にはなり得ないんだけど、かといって、人類学者の視線で撮った写真でもないんだ。お隣さんの目線なんだと思う。 20日まで。 小野州一作品展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C) 小野さんは1927年千歳生まれ、手稲(現札幌市)育ち。札幌一中(現札幌南高)の卒業です。 戦後は、パリと神奈川を拠点に制作。奔放な線と、あたたかく「場」を包み込む色彩で、独特の絵画空間をつくってきました。1980年の「北海道現代美術展」で最高賞を得て現在は道立近代美術館が所蔵している「青い浴室」などが代表作でしょうか。95年に富良野郊外のアトリエに移転しましたが、2000年に急逝しました。全道展会員でもありました。 今回は67点のうち、リトグラフを中心とした版画が21点、水彩が5点で、のこりは墨や水彩で描いたものです。 野菜や花などの小品は、ラフですが、ほんとうに楽しそうに描いています。おなじような題材でも、武者小路実篤のようにはならず、どこかハイカラなのはお人柄でしょうか。 楽器や、管楽器を弾く人などをテーマにした「アダージョ」の連作を見ると、札幌一中の先輩・三岸好太郎を思い出してしまうのは筆者だけでしょうか。洒脱さ、筆の速さ、細かい仕上げよりも全体のムードを大事にする画風などは、共通しているような気がするんですが…。 個人的には、アトリエの窓辺を題材にした版画が、なつかしかったです。正方形のガラスが連なり、ロフトのあったアトリエを訪ねたときのことが思い出されました。 12日まで。 |
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6月3日(木)・4日(金) きのうの続き。 松浦武四郎−時代と人々−=北海道開拓記念館(札幌市厚別区小野幌) 松浦武四郎(1818−88年)は、幕末に6度にわたって蝦夷地をひろく踏査し、「北海道」の名付け親にもなった探検家です。 今回は、これまでも道内では知られてきたアイヌ民族との交流や、道内の足跡よりもむしろ、生地の三重県で大切に保管されてきた資料をもとに、彼をめぐる交友関係や彼自身のコレクションに焦点を当てた展覧会になっています。 幕末維新期を代表する天才絵師・河鍋暁斎が描いたユニークな「武四郎涅槃図」、吉田松陰からの書簡など、興味深い展示品があります。 ただ、全体的に、美術資料は半分くらい。また、資料保存のため会場がかなり暗いので、じっくり鑑賞するとかなり目が疲れます。 北海道以外の部分が主体といっても、第1部は、一昨年発見されて話題になった「北海道国郡検討図」が中心です。 北海道の旧国名と郡名、および区画を決定するよう仰せつかった武四郎の、あれこれ迷った跡ののこった地図です。 240×360センチの大きな図ですが、近寄ることができないため、一部の端っこをのぞき小さい文字などはとても読めません。 旧国名といっても、現行の中学、高校用の地図帳などにはたしかに記載されてはいますが、数年後に開拓使が置かれたため、道民にはほとんどなじみのない存在です。現行の14支庁と線引きがおなじなのは、胆振、日高、根室など一部に限られています。 郡名は、郵便を出すさい、町村部の人は記すでしょうが、地域割りの手段としてはあまりつかわれていません。北海道は市町村の面積が大きいわりに、郡の広さは本州とそれほど変わらないので、それぞれの郡にひとつ、あるいはふたつしか町村がないところが多いのです。 それにしても、疑問に思うのが、どうして後志だけにあれほど郡を多く設定したのか、ということ。 たとえば、現在の小樽市は、「小樽郡」「高島郡」「忍路(おしょろ)郡」と、3つの郡からなっています。もちろん、全域が市となっているので、郡としては現在実体はありません。小樽は、それほど広い市でもないのに、なんで? 当時はニシン漁などで、ここらへんがいちばん景気よかったんでしょうなあ。きっと。 引き続き、武四郎がじつは、尊王攘夷運動や、江戸の文人、絵描きの人脈と深いつながりがあった−というセクション。 ここには、明治の南画を代表する富岡鉄斎の巻物などもありました。 武四郎自身が描いた絵も展示されており、彼の多才ぶりがしのばれます。 晩年、郷里にもどった際によく登った大台ケ原山からの眺望を描いた「大台山頂眺望図」の画賛に「北海道人」とあります。 この4文字を見ると、武四郎が北の地に寄せる思いの強さを感じます。 また、当時の歌舞伎役者らにたのんで描いてもらったうちわ絵もならんでいます。シーボルトはサインのみ。モースは貝殻を描いていて、これはわらってしまった(モースは大森貝塚の発見者)。 なんでも武四郎はいつもうちわを持ち歩いていて、これはという人に会うと、差し出して絵や字をかいてもらったのだそうです。 最後が、河鍋暁斎「武四郎涅槃図」をめぐるコーナー。 「涅槃図」というのは、言うまでもなく、ブッダの臨終の絵です。木の下にやすらかに横たわるお釈迦さまの周囲に、門人や動物たちがあつまってかなしんでいるというのがお決まりの絵柄ですが、この絵の中央に横たわっているのは武四郎です。彼は生前、親しかった暁斎にたのんで、じぶんの死んだときの絵を描いてもらっていたのです。周囲には、妻のほかは、お気に入りのコレクションをまわりにならべています。死の図だけど、そこらへんはなんだか幸せそうだったりします。 ここでのいちばんのお宝は、狩野探幽「白衣観音図」でしょう。スムーズな線は天衣無縫です。 参考図として、暁斎の絵日記もあります。これは、やはりくすりと笑ってしまいます。 13日まで。 7月23日−8月22日、道立帯広美術館に巡回。 廣島経明写真展 Sence of Direction(方向感覚)=THE PRESTIGE GALLERY(中央区北7西22、中村税理士ビル2階) 廣島さんはもともと写真のラボで焼きつけなどを担当する人です。さいきん、色ガラスなどで、抽象画のような写真にとりくんでいますが、今回は銀塩写真をスキャナーでとりこみデジタルプリントした作品を展示。和紙や版画用コットン紙、さらにはふすまや障子といった多彩な支持体が、ますます絵画っぽい味わいをふかめています。 左は「syabon」シリーズ。 これで偏光フィルターなどはつかっておらず、画像加工もしていないというのですから、驚きの世界です。 会場で一番大きいのは「Golden Rose」。ふつうの35ミリフィルムで撮ったものを強拡大したものですが、粗さなどは感じません。 「じぶんとしては版画のイメージなんです。こういうふうにプリントすれば、気軽に家の壁などにも飾ってもらえると思うし、日本の家庭にそういう習慣がひろまってほしい。写真にはセラピーの要素もありますしね」 と廣島さん。 手軽に立体写真が見られる「3-D View Box」のコーナーもあります。 8日まで。 □廣島経明さんのサイト ■廣島さんの個展(03年7月) 品川等個展 【ユラギノウツワ】=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A) 漆のうつわの展覧会。 あえてピカピカにひからない、素朴な風合いの食器がならんでいます。 フォルムも、きれいに成形したのではない、手びねりの陶器のようなお椀もあります。 丸太をたくさん立て、その上に載せた展示方法もユニークです。 5日まで。 第4回 青青社書展 −書を楽しみながら自分らしさを大切に−=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) 道内を代表する前衛書家の竹下青蘭さん(札幌。毎日書道展審査会員)が指導するグループですが、けっして竹下さんとおなじ書風ではありません。むしろ太い筆で大きい紙に構成した作品が目に付きます。 6日まで。 すみちゃんの絵=同 昨年星置高等養護学校(札幌)を卒業した大川澄見子さんの絵画展。 寝たきりですが、口にくわえたマーカーでデッサンしたあと着彩した静物画など18点が展示されています。 人間はこのような環境にあっても絵を描くのだ−ということに、あらためて感動し、考えさせられます。 6日まで。 第26回想展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 函館の明本モト子さん(道展会員)らのグループ展。革工芸だけではなく、染色など多彩なジャンルの工芸作品がならんでいます。 スカイホールでは、中野層翠さんらの書のグループ「普門書会展」と、白日会会員の南里葉子さんの指導する絵画サークル第24回ふたば会展もひらかれています。 前者は漢字の臨書が多いです。 いずれも6日まで。 |
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6月2日(水) 今週の時計台ギャラリーはすべて油彩です。 工藤悦子個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 1年おきに時計台ギャラリーで個展をひらいている江別の工藤さん。 ことしは、大作4点と小品10点を展示しています。すべて、工藤さんならではの青い独特のフォルムが浮かぶ絵です。 大作は、「妖生」と題したものが2点。ひとつは、S120号。もう1点はF120号のキャンバス3点を横につなげた巨大なものです。 さらに「夜の鼓動」が2点。ひとつは、130号キャンバスを2つつなげた作品。もうひとつも、S120号とF120号をつなげており、圧倒される思いです。 いずれも、地の部分は、青以外の色も含めて薄塗りを重ねています。 図の部分は、「生命の原形質のようだ」と以前書いたことがありましたが、工藤さんは 「ここにこういう線を引きたいとか、引いてみたらどうだろうとか、そういう思いでかいている」 というのが出発点で、そうとう入念にエスキスをつくっているとのことでした。もちろん、実際にキャンバスに向かったときには変わることもあるようですが。 「やっぱり、大きいのを描いてるほうが楽しいわね」 と工藤さん。 主体美術と新道展の会員。 ■個展(02年5月 画像あり) ■主体美術8人展(01年5月 画像あり) ■祭り・Fest(02年7月) ■夏祭り展(01年7月) ■00−01展(2000年12月。画像あり) 廣岡紀子個展=同 廣岡さんは、背景に海外の風景を、手前にいすや花といった室内風景・静物をくみあわせた絵で知られますが、今回は、50号以下の、風景だけを描いた絵がならんでいます。 モティーフは、英国、ギリシャなど欧州の、村の町並みや田園の家。 どれも、青空のもとにありながら、色彩は明るく、意外なほどに影が描かれていません。そのため、写実的な筆致ながら、どこか超現実的な雰囲気をたたえています。 道展会員、二紀展同人。 ■北海道二紀展(03年8月) ■02年12月の個展 ■02年6月の個展 ■第12回北海道二紀展(01年) 第21回 土筆の会展=同 道展会員で、おだやかな風景画で知られる池上啓一さんの教室展。 11人が出品していますが、ひとり5−10点と、みなさん精力的な描きっぷりです。しかも、人物(裸婦も)、静物、風景と、題材も多岐にわたっています。 長嶋正俊さん「初秋の神威岬」は、手馴れた筆づかい。 佐藤光也さん「屋久島、縄文杉」は、大きな木の幹を迫力たっぷりに描いています。 遠藤節子さん「花菖蒲」は一面の花があざやか。 松本宰子さん「休憩」「裸婦」は、堅牢な画面構成です。 ほかに、菊地悦子、中村フミエ、平林良登、鈴木恭子、中澤嘉男、川合堯夫、山内拓治の各氏も出品しています。 池上さんは「盛夏漁港」を賛助出品しています。 ほかに、同ギャラリーでは、松屋史子個展もひらかれています。 田部隼夫金属造形展=ギャラリー山の手(西区山の手7の6) 札幌のベテラン金工作家「たなべ・はやお」さんは、「札幌タイムス」によると意外にも初の個展だそうです。 会場の外に「作品1」「作品2」と題したインスタレーションがころがっているのにおどろきます。錆びた鉄片や色紙、白樺の太い枝を組み合わせた作品は、ふだんの重厚な田部さんの作品からはちょっと想像できません。 もっとも、会場に入ると、高さ数十センチの直方体に矩形の板をリベットや溶接で着けたもの5つからなる「層層」や、台形に似たかたちの立体3個がならぶ「奏楽」など、重厚な布陣。ペーパーウエイトなど小さいのもありますが、金属の存在感を生かした立体が多いです。レリーフはありません。 田部さんは日展会友、日本現代工芸美術協会正会員。 5日まで。 片桐三春 イコン=STV北2条ビル(中央区北2西2 地図A) 片桐さんは、2、3年に1度海外旅行に出かけ、その際の印象を絵にまとめて、隔年で個展に発表するという、筆者の目からはじつにうらやましく見える方です。絵は、あざやかな色が特徴で、モティーフになったのはトルコ、バリ島、ギリシャなどです。 ことしは、個展のないほうの年。しかも「イコン」とは…。いぶかしく思って見に行ったら、イコンは、ちぎり絵でした。 銀紙やギリシャの新聞紙などをちぎって貼り、天使の顔などを表現しています。 これが、ビザンチンのモザイクに似てるんです。8点ありました。なかなか雰囲気が出てます。 ほかに油彩「教会」が展示されていました。 □片桐さんのサイト「HAREBARE GALLERY」 ■第8回個展(03年5月。画像あり) 6日まで。 2日に見た、のこりのぶんはあす更新します。 |
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6月1日(火) きのうのつづき(最近、こればっかりだけど)。 草間彌生 版画セレクション展=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階 地図D) 5日から芸術の森美術館(南区芸術の森2)ではじまる「草間彌生展」(〜8月22日)にあわせた版画展。新作の「A Pumpkin(BT)」は、藍色の地の上で、ラメ入りできらきら光るかぼちゃです。 ほかに「灰皿」「考えるかぼちゃ」、派手な色彩の「揚子江」など。 また、牛尾篤、早川純子、池田良二の版画も展示しています。早川さんはモノタイプ。また、新作絵本「不眠症」のサイン入りも販売しています。これは、昨年の版画展で展示されたものにみじかい文章を附したものです。 13日まで。 パルコ札幌店のアート・ロゴス無きあと、美術書や輸入写真集の販売先としてエルエテはますます貴重な存在になっています。 店主の渡辺さんも 「どうせ売れないですよ」 などと言いつつ、売れ行き良好書の表を店内に掲げるなどして、がんばっています。 ということで、筆者も奮発して、ロバート・フランクとエグルストンの写真集を買ってきました。奮発とはいっても、一般の洋書店より割安な価格設定になっていると思います。 多田昌代 U・TSU・WA 展=うつわや釉(豊平区西岡2の11の7の1) 多田さんはこれまで、師匠の陶芸家・下澤敏也さん(札幌)と毎年、器のギャラリー中森で二人展をひらいてきましたが、ことしは、それぞれが個展をひらくことになりました。 白を基調としたかわいらしい食器や、雲のような曲線がユーモラスな花器がならびます。 今回はじめてとりくんだのが「青い空 雲流ルルbowl」というちいさなボウル。水色の線と乳白色の地が組み合わさり、縁のかたちがひとつひとつ微妙にちがいます。サラダなどを盛り付けると、とても似合いそうです。 ところで、今回の会場は、筆者ははじめて行きましたが、ふるい民家を改造したギャラリーで、ふだんは店主がえらんだガラス器などをならべているそうです。 今回も、店主みずからの手になる裂き織が、古箪笥の引き出しに入っていました. 縁側が入口になっていて、庭先に出されたテーブルの上にも、白い食器がならべてあります。 写真の左上、木の枝からも焼き締めの花器がぶらさがっているのがわかるでしょうか。 ■下澤敏也・多田昌代二人展 (03年4月) ■下澤敏也・多田昌代二人展(02年5月) ■下澤敏也・多田昌代二人展(01年5月) うつわや釉への行きかたは多彩です。中央バスは西岡に力を入れているんでしょうか? 地下鉄東豊線月寒中央駅から「82 西岡月寒線」で「西岡3条10丁目」下車、北洋銀行とスーパー「オレンジハウス」の間の道を西にまっすぐあるき、徒歩4分。 このバスは日中、1時間に4本あり、いちばん便利だと思います。 地下鉄南北線澄川駅(バス停は札幌フードセンターの正面)から「澄73 西岡環状線」でも「西岡3条10丁目」下車。「西岡3条先回り」のほうが早く着きます。「澄川6条先回り」だと、「澄川6条6丁目」で下りて、たむら内科クリニックの左横の坂道を上がっていくと、徒歩6分ほどで着きます。 澄川駅からは「81 西岡線」でも「西岡3条10丁目」に行けます。このバスは、澄川駅と真駒内駅をむすぶ路線なので、真駒内駅からでも乗れます。 真駒内駅からは「真104 真駒内線」「真105 真駒内線」でも、「西岡3条10丁目」を通ります。 この路線は、真駒内駅と、地下鉄東豊線福住駅とをむすんでいるので、福住駅からも乗れます。さらに1時間に1本ですが、東西線大谷地駅−福住駅−真駒内駅の長大区間を走るバージョンもあります。 都心から直通のバスもあります。札幌駅前(バス停は札幌東急デパートの南口)から「83 西岡美園線」「79 西岡平岸線」で「西岡3条10丁目」下車。札幌駅前の次は、「北1条」(札幌市民会館の西側)、「南1条」(丸井今井札幌本店南館の南側)を通ります。日中は1時間に計4本あり、意外と便利です。しかも片道230円と安いです。ただし、35分はかかります。なお、「西岡美園線」は東豊線美園駅で、「西岡平岸線」で南北線平岸駅で、乗り継ぎができます。 おさらい。すべて、西岡3条10丁目で下りて、北洋銀行とオレンジハウスの間の道を直進。 ▽さっぽろ駅 「83 西岡美園線」「79 西岡平岸線」(乗り継ぎ運賃は不適用) ▽大通駅 「83 西岡美園線」「79 西岡平岸線」(乗り継ぎ運賃は不適用) ▽月寒中央駅 「82 西岡月寒線」 ▽澄川駅 「81 西岡線」「澄73 西岡環状線」(澄川6条先回りのときに限り、澄川6条6丁目下車のほうが早い) ▽真駒内駅 「81 西岡線」「真104 真駒内線」「真105 真駒内線」 ▽幌平橋駅 「79 西岡平岸線」(乗り継ぎ運賃は不適用) ▽中の島駅 「79 西岡平岸線」(乗り継ぎ運賃は不適用) ▽平岸駅 「79 西岡平岸線」 ▽美園駅 「83 西岡美園線」 ▽福住駅 「真104 真駒内線」「真105 真駒内線」 ▽大谷地駅 「真105 真駒内線」 |