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あーとだいありー 2004年4月後半

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 4月30日(金)

 本日は大量にあります。ほとんどが絵画展です。

 高橋三加子展ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL) 地図D
  30日で終わってしまった個展です。油彩およそ20点を展示。
 関係者と作家のみなさん、早くから案内状をいただいていたのに、申し訳ないです。
 高橋さんは旭川在住。独特の、愁いを帯びた人物画には定評があります。安定した構図、中間色を多用した絶妙の配色など、とにかくウマイ。
 ただ、画面全体から受ける、筆者の個人的な感覚について言えば、昨年旭川で見たときと、ほとんど変わっていません。つまり、以前にくらべて、すこし悲しげになってきたような気がするのです。
 彩度の高い色で描かれている絵は「ふたりの少年」ぐらいしかなく、ほかの絵は背景と人物に、おなじようなベージュ系(?)が配されているせいかもしれません。
 高橋さん得意の群像画で、4人の男女を題材にした「鎖ざされた領域」や「待っている人たち」にしても同様です。無国籍風の表情やどこを凝視するでもないまなざし、とりたてて目立ったところのない洋服というとりあわせは、舟越桂さんの木彫とどこか共通するところがあるようにも思えます。
 一方、興味ふかいのは、「少年の記憶」と題された15号の2点。
 人物の手前に、風景を組み合わせた構図です。箱庭を思わせる丘や木が、なんともなつかしいものに見えてくるのがふしぎです。
 高橋さんは、行動展と全道展の会員。父親は、全道展の創立会員だった高橋北象さんです。
 ■03年10月の個展

 つづいて5月1日で終わる展覧会。

 近藤弘毅油絵個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 近藤さんは檜山管内今金町在住。札幌での個展はじつに13年ぶりとなります。
 もっとも、新道展の会員として、絵画「北の心象」シリーズを出品しており、深い青を配した独特の画風で知られています。
 今回は、初期作品もふくめた「北の心象」シリーズと、近年取り組み始めた「北の詩」3点を中心に展示しています。
 「北の心象」は、手前にシカあるいは裸婦、奥に山や湖、木などを配した一種の風景画です。ただ、一般の風景画と大きくちがうのは、水色や藍などほとんど青系の色しか使っていないこと、モティーフを大胆に簡略化していること、画面全体をシャープな直線や曲線が縦横に走っており、その線を境界として青の濃淡や彩度がちがう−ことなどです。
 世間の室内画ではよく、花を置いたテーブルの背後に斜めの線が入って、それを境目に色が変わっていることがありますが、それと似ていますが、もっと潔いというか、勢いのある線で、画面に躍動感をあたえています。そして、それぞれの、線にかこまれた領域の中では、陰影や濃淡はつけられておらず、非常に抽象画的というか、フラットな塗りで全体が統一されています。
 日本の洋画家のなかには、マティスやセザンヌのような塗りのこし、色のムラがあるのを良しとし、かっちりと構成されて塗られた絵を「デザイン的」などと言って見下す人がいないでもありません。しかし、そういう評価には筆者はくみしません。明快な描線と色彩は、ひろく受け入れられるものだと思います。近藤さんの絵には、ただの抽象画であれば絵の前を通りすぎていってしまうような人々をもひきつけるような、わかりやすい魅力があるのではないでしょうか。
 もっとも初期の絵にはかなり色ムラがあります。近藤さんの精進ぶりがうかがえる個展なのです。後年は、下地に朱色を使うなどして、さらに青の輝きが増しています。
 そして、なにより全体を覆う青が、題名のとおり、北方のロマンティシズムをたたえています。札幌では初の展示となる200号の「北の心象」など、へたな風景写真など足元にも及ばない、はるかな憧れをたたえています。
 青系だけの構成に飽き足らなくなったのか、近年は緑系も使用した「北の詩」シリーズを開始しました。
 この配色だと、へたをすればゴルフ場の絵になってしまいかねないので、今後の展開が注目されます。
 近藤さんは1942年今金生まれ。新道展のほか、現展の会員でもあります。
 5月21−23日、今金町民センターでも回顧展。


 松木眞智子個展=同
 木の枝をモティーフにした絵画を展示しています。
 しかし、現実の枝というよりは、もつれ、渦巻き、たわむ枝の束で、激しい心象の世界を描き出そうとしたような絵といえそうです。
 あるいは、生命のもつパワーの表現とも取れます。
 最新作の「鼓動」は、縦194センチ、横260センチもあります。背景で、白などの絵の具がだらだらと流れ落ち、激しいイメージを増しています。さらに、台所で使う透明なラップがあちこちに貼り付けられています。
 「蘇生」「深層の根」なども、絵の具のしたたり落ちの技法をつかっています。
 松木さんは札幌在住。2000年、02年に全道展の奨励賞を受け、昨年会友に推挙されました。


 松本信一・智惠子 ふたり展=同
 信一さんは陶芸、智恵子さんは絵画です。
 壁に絵が、その前のテーブルに陶器が置かれているので、面積の割には大量の作品が展示されています。
 絵は風景、静物などの小品。ときどき「偶成」などの抽象画がまじっています。
 「炎」は、ご主人がつかった穴窯のようすを描いたのでしょう。
 陶芸は、焼き締めの花器が多く、土の味をいかしたダイナミックさが強いです。自然釉でしょうか、長皿の底部に、織部とはちがう緑色がたまっているものもありました。


 つづいて2日までの展覧会。

 新田志津男画暦20年記念日本画展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図)
 1944年三笠生まれ。浅野天鐘さんに日本画を習い、現在は新興美術院展会員です。札幌在住。
 今回は、風景画を中心に、32点を展示しています。
 新田さんの特徴は、とにかく筆致が丹念で緻密なこと。北海道の自然をすみずみまで描きもらすまいという意欲が感じられます。
 「樹魂」は、緑の森を描いていますが、手前に2本の巨樹を配した斬新な構図の大作。
 「雨後」は、緑の木々と小川が題材ですが、コンクリート橋が大きく描かれているところはユニークだと思います。ほかにも「新緑の渓谷」など、みずみずしい緑が印象的な絵が多くあります。
 一方、「河原」は、白い石の川原をつがいになって飛ぶ赤とんぼの群れが題材です。めずらしく緑はいっさい登場しませんが、四季の自然のいとなみを感じさせる作品といえます。
 これら風景画がひたすら写実を追求しているのに対し、牡丹を描いた何点かは葉の描写に墨を用いるなど、いわゆる「日本画」的な味もあります。

■ホクレン広報誌表紙絵原画展(03年5月)
■02年12月の個展
■02年5月の個展(1日の項)
■01年10月の個展


 岩本紘子押し花展=同
 押し花絵だけでスカイホールの2室を埋めてしまうのだからすごい。
 作風も、先日の美工会展で目を引いた、バラの花束をイメージした「歓喜」、こびとが森で遊ぶメルヘン調のもの、ウツボカズラなどを使って夜の蝶を表現した幻想的作品など、多種多彩です。


  一水会道展・水光会展札幌市資料館(中央区大通西13、地図C
 22人が油彩、水彩を出品しています。一水会なので、すべて具象です。
 まず油彩。
 山川義夫さん「白銀ユングフラウ」。遠景にアルプスを、中ほどに針葉樹林を配し、手前には右肩上がりの斜面や木々を描いた構図が、画面を印象的なものにしています。冬山のきびしさに対し、斜面を覆う筆のタッチと色調はやわらかく、大自然のもつ幅の広さというものを感じさせてくれる絵です。
 細貝信子さん「新緑の候」。写実派が大半を占めるなかで、薄い緑の点を、画面いっぱいに散らして、一見なにが描かれているのかわからない、白っぽい絵です。小樽の古屋五男さんは「小樽運河」を出品しています。
 三笠の杉田秋夫さんは新顔だと思います。「ウトナイ湖晩秋」は、ひたすら原野が広がる茫漠とした大地を、茶の濃淡を生かしてたくみにまとめあげています。遠景の紫がかった色合いも効果的です。
 ほかに、美阪恵美子さんが北大第二農場の冬景色を描いた「農場の見える道」などが大作です。
 水彩は昨年よりも増えたように思います。晩冬の北大第二農場らしき風景にやわらかい光がさしこむ伊藤俊輔さん「春の日差し」、白い線がシャープな金子恵子さん「三階の滝」など。
 それにしても、北見の勝谷明男さんの作品が見当たらないのはどうしたわけでしょう。

 ■03年の展覧会


 田江岑子・笠原勝子 短歌有情二人展=同
 田江さんは盛岡在住、笠原さんは札幌の歌人。田江さんが、自作や、笠原さんの歌を題材に、写真の上に書で書いたり、色紙にしたり、ビジュアル化しています。
 おふたりとも短歌は本格的です。

 平山明裕油絵展=同
 元気のあるタッチの風景画。雑になる一歩手前でうまくまとめています。
 題材はハリストス正教会や、会場の札幌市資料館など。夕方の川べりを描いた絵など、忘れがたいものがあります。


 油彩5人展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)
 札幌の近江茂子さん、佐藤寛子さん、長島しず子さん、船越とみ子さん、石狩の福士靖子さん。10号ぐらいの静物画、風景画が中心。
 それにしても船越さんは今週、一水会道展・水光会展や、陽春企画展(ギャラリー大通美術館=中央区大通西5、大五ビル)にも出品しており、精力的です。


 2004 金工展 北海道教育大学札幌校 芸術文化課程美術コース 金属造形研究室展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C
 佐々木けいしさんの研究室です。佐々木さん自身も立体2点(それぞれ鉄と真鍮)を出品しています。
 学部の2−4年生のほか、OBや「科目等履修生」「研究生」「院生」なども多く、大学のしくみにうとい筆者はなんだかこんがらかってしまいます。
 それはともかく、銅による花器から大きなインスタレーションまで、多彩な作品がならんで、楽しい展覧会になっています。
 高橋知佳さんは「くうかんドローイング」で、鉄の棒をぐねぐねと曲げて狐と兎をつくっています。いずれ、動物園でもつくるのでしょうか。
 春藤聡子さん「やまなみ」は、ブロンズの立体3つからなりますが、陶のオブジェみたいなたたずまいです。
 佐藤まゆみさん「檀の水」は大作。鉄製の太い弧(蚊取り線香の破片みたいなかたち)が、いくつもの層をなして空中に固定されています。床にじか置きされている部材もあって、インスタレーションといえると思います。
 個人的にいちばんすきだったのが東方悠平さん「衝動」。いやー、ロックな作品です、これは。大きな口をあけている男の顔を、鉄をつなぎあわせてつくり、頭には、古いパイプや鉄の棒、板など、太さも長さも違う20本あまりのものが突き刺さっているのです。まるで、髪をギンギンに逆だてた男がなにか叫んでいるように見えます。なんだか、「アナーキー・イン・ザ・UK」とか歌ってそうです。楽しいなあ。


 4月29日(木)

 まず、30日まで札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)で開催中の「北海道抽象派作家協会展」について「展覧会の紹介」で書きましたので、ご覧くだされば幸いです。

 きのうまでのつづき。

 佐藤泰子さくらさくら展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
佐藤泰子「finish D」。左は「finish F」 昨年、自由美術賞を受けた札幌の画家。
 毎年交互に、油彩を中心とした個展と、パステル画をならべた「さくらさくら展」をひらく、旺盛な制作ぶりを見せていますが、さすがに「そろそろ休もうかしら」と話してらっしゃいました。
 今回は11点を展示。うち、比較的サイズの小さな正方形の作品が「さくらさくら finish」、のこりが「finish」と名づけられています。
 このうち2点が、自由美術賞の受賞作です。
 一瞬、網膜の裏にうつる光跡のような、鮮烈な色彩の斑点が、佐藤さんの絵の特徴といえるかと思いますが、近年は、鮮烈さのみならず、灰色やベージュといった地味な色と組み合わせています。また、色と色の境界も、直線的なものが入ってきました。そのためか、作品を見ると、或る一瞬のフラッシュバックを再現したかのようなふしぎな感覚にとらわれます。
 はらはらと花弁を落とす満開の桜を脳裡に思い出すと、その映像は一瞬のものでありつつ、永遠性を漂わせているようです(これは、人によって大いに感覚がことなるとは思いますが)。うまくいえないのですが、佐藤さんの絵は、桜を対象的に描いているのではないにもかかわらず、そのような桜の刹那性と無時間性といったものの共存を、はらんでいるかのようです。
 そして、それは、生と死の感覚、とでもいえるのではないでしょうか。

 このように、多くのことを考えさせてくれる絵画なのですが、札幌時計台ギャラリーに来る人って、抽象画だとぱっと見てすぐ出てっちゃうことがすごく多いんだよな。
 じっくり見ていくと、なにかを思ってしまう、そういう絵じゃないかと思うんですが。モッタイナイ。

 佐藤さんの家と隣家の間に、開拓期の農家が植えた桜の古木があるそうです。
 学校につとめていたあいだは気がつかなかったけれど、退職してその木のすばらしさを知ったとのこと。
「だって、枝1本で、2階のアトリエの窓が花でいっぱいになるのよ」
始めは何も手がつかず、ながめているだけ。次の年ぐらいにやっと毎日デッサンをするようになり、つぼみが花になり、散っていくスピーディーな過程をよく知るようになったのだそうです。

■03年12月の個展(画像あり)
■自由美術北海道グループ展(03年8月)
■02年の自由美術北海道展
■さくらさくら展(02年4月。画像あり
■佐藤泰子展(01年11月)
■自由美術北海道グループ展(01年8月)

 5月1日まで。
 おなじギャラリーの他の部屋は、追って書きます。


 大滝憲二展アルテピアッツァ美唄
 絵の具の膜を支持体や液体などから剥がして作品化している札幌の大滝さんが、ひっそりと(?)、安田侃作品の常設で知られる会場で個展をひらいていました。(29日終了)
 ほとんど厚みゼロの作品は、あざやかな色を発しています。意のままに剥がれるわけではないので、作品化にさいしては偶然性も介在しています。
 今回は、ご本人が「遊びでつけた」という題名がなかなかおもしろい。「スターチャイルドへの時間」「分裂としての文学」「アポリネールの窓」「アンモナイトの投影」などなど。36枚からなる大作は「記憶からの重奏」と名づけられています。


 多面的空間展 VOL.6=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A
 空知管内栗沢町の林教司さんは、新道展、北海道抽象派作家協会展のほかに、たぴおで開催されるグループ展にもたびたび出品しており、発表回数はこの3年間でも30回は超えているのではないかと思われますが、今回また新作「触れてはならない 識ってはならない 2004年4月19日」と題したインスタレーションを出品しています。
 壁の部分と、床置きの部分のふたつからなり、いずれも茶色に塗られています。
 壁には、縦およそ160センチ、横17センチほどの板が掛けられ、さびかけた針金で十字型に巻かれています。
 床の直径約1メートルのひらべったい円盤の外周にも、針金が巻かれています。そして、円盤の中心からは高さ40センチほどのとがった塔がそびえています。
 日付は、たんに、展覧会の始まった日だと思われます。
 作者の意図はわかりませんが、シンプルな形は、なにかを寓意しているようでもあります。
 星こず枝さんは、ダンボールに黒などを塗った平面2点。支持体と画面の関係について考え続けているようです。
 ほかに、漆山豊、中森秀一、藤川弘毅、渡辺英四郎の各氏が出品。
 5月1日まで。
 4月28日(水)

 よねたゆみこシルクアートペインティング展=ガレリア・エ・リストランテ・ボーノ(豊平区美園3の2の2の21)
 よねたさんは、かつて札幌でシルクアートペインティング作家として活躍し数年前、オーストラリアに帰国したエスター・ショエットさんのだったと記憶しています。現在は、札幌で、シルクアートのほか、造園デザインなども手がけているそうです。
 今回は、23点を展示。シルクアートペインティングというと、目の覚めるようなあざやかな色彩というイメージがありますが、よねたさんの場合は、あえて色数をしぼり、派手すぎないような画面にしている作品もあるようです。
 いちばん大きな「裸婦 sorrowful」は、ひざを立てて、うつむいて悲しむ裸婦を中心に、ワインレッドのシーツや水色のカーテンが画面をひきたてています。裸婦のつややかな皮膚の感覚もよく表現されています。
 ほかに、得意のお庭のデザインや、くま牧場を題材にしたかわいらしいものもありました。
 田村由美子陶芸展、土門美和子ニット個展も同時開催。
 5月1日まで。

 ガレリア・エ・リストランテ・ボーノは、集合住宅の1階にあるイタリア料理店です。玄関はふつうのマンションの部屋みたいなので、初めてはいるのはちょっと勇気がいるかもしれませんが。
 地下鉄東豊線豊平公園駅徒歩7分、市民会館前から中央バス(平岸駅経由便以外どれでも)に乗り「美園3の2」下車徒歩3分。
 国道36号のすぐ南西側を平行している裏道にあります。地下鉄で来る場合は、いったん36号まで出て右に曲がり、出光ガソリンスタンドと「リブウェル豊平」の間の道に入り、すぐの道を左に入っていったほうがわかりやすいかもしれません。


 ところで、昨日のこの欄で
北処画廊の入口「見つからない」
とさわいでいた「北処画廊」ですが、なんというタイミングの良さ、きょうメールがとどき、場所が判明しました。
 中央区南2西3、パレードビルの2階。パルコや大丸藤井の裏通りにある石造りのビルです。ホールステアーズカフェのあるビルだといえば、わかる人も多いはず。
 30日まで開催中の「碓井良平新作展」は、クレヨンをひっかいたり、いかにも碓井さんらしい、即興性に富んだ抽象画がならんでいます。
 鎌倉滞在を終えた後のこの2年ほどは、喫茶店でグループ展をひらいて名前の札をつけなかったり、精神障碍者とのグループ展を組織するなど、一般的な美術のありかたをあえて逸脱するような活発な発表活動をつづけてきた碓井さんですが、今回のように、額縁に入れた絵を画廊にならべるのは、めずらしいともいえるでしょう。

 北処画廊は、ことしに入ってからオープンしたそうで、札幌の貸し画廊よりも、銀座の企画画廊のたたずまいを、どことなく感じさせます。
 年中無休で、午前11時から午後7時まであいています。
 ところで、北海道新聞も読売新聞も、碓井さんの住所と画廊の住所をとりちがえていたようです。ふたつの新聞がおなじ間違いをするとは、めずらしい。

 きのうの約束に反しますが、これでいったんアップします。
 もうしわけありません。


 4月27日(火)

 さいきん、こんなのばかりでもうしわけないのですが、28日で終了の展覧会をふたつ見ました。

 守谷隆一写真展 襲色目 KASANE IROME富士フォトサロン(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A)
 中判カメラと、おもにベルビア(フジのリバーサルフィルム)で撮った、うつくしい日本の風景写真がならびます。
 さすがベルビア、色彩はドラマティックです。
 筆者が気に入ったのは「奈良県 長谷寺」と題された1枚。
 満開の桜。一陣の風がふいたのか、あたりの空間を、びっしりと桜吹雪がうめつくします。粉雪のように。
 夢のように甘く、うつくしい光景です。
 かと思うと、「名古屋城の夜桜」は、一帯が神秘的なマリンブルーに浸って、これまた幻想的な、ひそやかさに満ちた場面です。
 長野県の諏訪湖をのぞむ高台からの1枚では、流れる霧の中に夜景が見え隠れし、遠景には、茜色の空に富士山のシルエットが浮かぶという、これまたため息をつくしかないうつくしさです。
 28日に中心街に出る方には、おすすめしたい写真展です。


 「The Forms of Lighting −ひかりのかたち−」展CAI 現代芸術研究所(中央区北1西28 地図D
 LED(発光ダイオード)と透明アクリル板を利用したあかりの展示。
 ふだんは無機質なCAIの会場ですが、見た目にうるさい配線類をきちっと隠し、統一感のあるインテリア空間にしあげているのには感心しました。
 で、出品者は、筆者の存じ上げない方ばかりで、たぶん建築畑の方ばかりだと思います。建築やインテリアという分野は近年、一般の関心が高まっていますが、札幌では、いわゆる美術の人との交流は、とりたてて活発というほどではないと思います。
 個々のあかりを見ていると、けっこう「工芸」を連想させます。ただ、日本で工芸というと、まず思い出すのは、容器、つまりうつわなんですね。大皿などは飾ったりしますから、今回のあかりは、室内の置かれ方を見ると工芸に近い。でも、いわゆる工芸畑の人は、あまり「あかり」はつくりません。
 室内を美しくする−という点ではおなじなのに、ふしぎだなと思いました。


 新聞に、碓井良平さんの個展が北1西21の「北処画廊」であるというお知らせが出ていましたが、聞いたことのない画廊。けっきょく、探し当てることができませんでした。


 北海道抽象派作家協会展については、あす記します。
 ことしも充実した展覧になっています。


 4月26日(月)

 27日で終了の展覧会をふたつ見ました。

 星野恒隆個展道新ぎゃらりー(中央区北1西2、札幌時計台ビル地下 地図A
 苫小牧在住の画家で、道新文化センターの講師もしていらっしゃる星野さん。札幌での個展は4年ぶりとなる星野さん。
 31点のうち、油彩が15点、のこりが水彩。いずれも、穏当な写実の画風で、風景画が中心です。
 水彩は、彩度が高く、明るい調子なのが、好感が持てます。
 油彩は、晩冬から早春にかけての風景が目に付きました。50号の「春へのプロローグ」は、苫小牧にあるオートキャンプ場で見た風景がもとになっています。残雪の間から顔を出す落ち葉、複雑な色調の幹など、長い冬を終えてようやく春を迎える道産子の喜びが投影されているかのようです。
 会場の外側のコーナーにも展示されていますので、お見逃しなく。

 柴崎康男・亀井由利 二人展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A
 柴崎さんは室蘭在住の二科展会友。亀井さんは札幌在住の新道展会員ですが、二科展にも長く入選を重ねてきていて、室蘭出身ということで、はじめての二人展が実現しました。
 柴崎さんは「船のある風景」の連作が目を引きます。直線的で強い描線が画面を覆い、ほとんど抽象のような作品もあります。
 二科展などでは見られない、有珠山やウトロを題材にした風景画もあります。「船のある風景」にくらべると写生に近いとはいえ、ナイフを駆使した動感みなぎる画面は柴崎さんならではのものだと思います。
 亀井さんは、これまでの受賞作などと、小品の静物画などをならべています。
 二科に出品した「標」は、暗い野に、金色の巨大な満月が浮かび、鳥がざわめきながら飛んでいく情景を描いたもので、月の真下に背中を向けたトルソがぼうっと浮かんでいます。地上には色あせた花が咲き誇り、その間には、猫と、人間の手がおびただしく中空をつかんでいます。色数を抑え、不気味な光景の描写に成功しています。
 「リバース」など、3つのキャンバスからなる近作も、ほとんどモノクロで描いた裸婦が中心。
「無機質さを出すよう心がけていますが、これ以上厚く塗ると有機的になってしまい、むつかしいですね」
と話していらっしゃいました。


 4月25日(日)

 きのうのつづき。

 伊藤仁展=三越札幌店(中央区南1西3、地図
 札幌のマチを愛した画家(1915−96年)の、札幌の風景を描いた油彩だけによる個展。およそ40点。
 先日の北海道新聞地方版で、カラーで大きく紹介されていたので、ご覧になった方も多いでしょう。新聞印刷には限界があるので、興味をもたれた向きはぜひ会場に足を運んでいただきたいと思います。なにせ、伊藤さんが描いたときはリアルタイムだった絵も、現在では、かなりの部分が「なつかしい風景」になってしまっているのです。もちろん、道庁赤レンガや北大第二農場、大通公園、南大通西3丁目(北海道新聞−拓銀=当時=)など、現在もそれほど変わっていない風景もかなりありますが。
 画風的には、いわゆるリアリズムの時代と、印象派ふうの晩年に、大きくふたつに分かれます。後者は、白の絵の具を多用しているので、写真で言えばハイキーの画面になります。
 昨年出版された伊藤さんの評伝「微光のソノリテ」(富田幸衛著)によると、画風が転換したのは、70年代初頭に欧州を旅したことがきっかけのひとつになっているそうです。偶然ですが、この時期は、冬季オリンピックの開催で札幌の町並み(とくに中心部)が劇的に変化した時代でもあります。
 筆者は1964年生まれなので、やはりオリンピック直前のころの風景がいちばんなつかしく感じられます。たとえば「北5条西7丁目の電停」。このあたりは、北大植物園と伊藤邸にはさまれ、電車がまるで緑のトンネルの中を抜けていくかのようだったことをおぼえています(この路線は71年廃止)。
 また、「冬の豊平川」では、パークホテルとロイヤルホテル(当時はローヤルホテル)のふたつの建物がはっきり描かれていますが、それ以外に高層建築がまったくありません。現在の川沿いは、ビルやマンションがびっしりとたっており、隔世の感は否めません。
 札幌駅前を描いた作品は、北5条通から東側を見て描いたものと思われますが、もちろんESTAビルもなく、屋上に地球儀のような看板を載せた日本通運の建物がめだっています。北5条通の市電も描かれています。
 26日まで。


 光・風・匂い 朝田千佳子−染織アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図
 曲線を生かしたシンプルなデザインの朝田さんの染織。
 目の粗い織りは、作品に浮遊感をあたえています。
 月と植物という組み合わせは昨年と変わらないのですが、左の写真のように、あかる朝田千佳子個展の会場風景い雰囲気の作品があったので、撮ってみました。
 左は、キノコを切っているときに思いついた造形だそうです。
 右は「さくら」。
 下部の桃色は、めずらしく人工の染料をつかっています。
 ゆるやかにカーブした薄緑色の雲がいい味を出していますが、写真ではなかなか見づらいかもしれません。
 都会の上空を青い鳥がはばたく「青い鳥」という作品もありました。幸福と平和を願う作者のきもちがつたわってきます。
 3枚組みの「long long ago」は、子供のときに着ていたワンピースを題材につくった壁掛け。中央のものは、朝田さんがじっさいに着ていたものだそうです。
「だれにでもこんな時代があったということを思い出してほしくて」
 会場ではショールなども販売しています。

■03年4月の個展(画像あり)
■Visual Poetry in Sapporo 2002 +
■02年1月の個展


 遊油会展=同
 油彩のグループ展。
 20日に見た「全日本美術協会道央支部展」に出品していた堀内寿与さんが、ここでも活躍。リストには5点がしるされていますが、「手稲山遠望」(F20)という絵が2点あるようです。片方は秋の風景。もう一方は、おなじ位置から描いた冬景色です。
 ほかに「新緑の合掌造り」(F50)、「篠路川」(F30)、「真冬の或る日」(F4)、「初頭のペケレット湖園」(F6)。
 ペケレット湖園は、札幌市の北のはずれ、茨戸(ばらと)川のほとりにある行楽地。篠路(しのろ)川は、その近くにある古い川で、昔のままの蛇行をのこしている川です。「篠路川」は、太古の石狩の野のおもかげが感じられます。
 いったいに堀内さんの絵は、ナイフで塗ったように色調が明快で、明暗のメリハリがついているのが特長だと思います。
 佐藤弘次さんは、丁寧な描写の「初夏の有珠岳」など4点。
 鳥海清子さんは、絵画、銅板、陶芸と、多彩な分野に挑戦しています。
 ほかに清水邦子、石塚幸子、北島章子、本間清治郎の各氏が出品しています。

 PHOTO PICNIC CLUB 合同同人展=同
 それにしても札幌ではたくさんの若い人が写真にとりくんでいるのだなーと、あらためて感心させられました。
 案内状のはがきにしるされているのは、HIRO、工藤孝生廣江貴彦横山弘之、ナカモトサトコ/H.Kumano、LOMO組(chiba+libsaika)、西丸雅之、and more...
 筆者はこのうち、西丸さんのゼラチンプリントに興味を持ちました。古いプリントのようなふしぎな味わいがあります。

 いずれも27日まで。


 上田隆之作陶展千歳鶴酒ミュージアム(中央区南3東5 地図G
 小樽の山中の廃屋に住んで「隆香窯」をひらいている陶芸家。手びねりとおもわれる片口やおちょこ、ちょっと小さめの茶碗など、いずれもひとつひとつ微妙に形や大きさが異なります。野趣−といっても一部の備前焼にみられるような大げさなものではなく−が、そこはかとなく漂います。長皿などは、釉薬が底までたまりきらず、素焼きの部分が顔を出しているものもあり、おもしろいアクセントになっています。
 29日まで。無休


 PICTOREAL 11 -Pictures for Interior-SOSO CAFE(中央区南1西12 地図C
 札幌で活躍中の若手クリエイターによるポスター11点。すべてB2サイズです。
 このサイトからもリンクさせてもらっている石田美紀さん(サイトはm i k i)をはじめ、m‐designの蒲原みどり、岡野康弘、rocketdesignの菊池信悟と渡部伸子、CAD.、佐藤麻美、水口令、prototype designの西川賢治、aerostichの三浦誠、noncategoryの五十嵐かおるのみなさんが1点ずつ出品しています。
 展覧会タイトルは、気に入ったものは気軽に買って自室にはってもらおうという主催者側のねがいがこもっています。
 このうち、rocketdesignは、全国でふつうに流通している雑誌のイラストなどを幅広く手がけている大活躍中のユニットですが、ふたりの作品が別名義で出されるのはめずらしいことじゃないんでしょうか。よくわかりませんが。菊池さんは、黄色い雲をバックに黒の風船がおびただしく浮かんでいる図柄。空に風船という、甘くなりそうなアイテムなのに、そうなっていないのが配色の妙。渡部さんは鳥を題材にしており、どこか60年代風な、なつかしい感じです。
 30日まで。29日午後8時からクロージングイベント。


 4月23日(金)・24日(土)

 毎度おそくなってもうしわけありません。
 まず日曜夕方で終わる展覧会から。

 笠原昌子 彫刻展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C
 昨年の道展で協会賞を受けた、1980年生まれの新進彫刻家。道教大岩見沢校の修士課程2年に在籍中です。
 昨夏にインスタレーションの個展をひらいたことがありますが、彫刻の個展はこれがはじめて。
 ひろい会場に大作4点のみ。
笠原昌子彫刻展の会場風景。手前は「器としての人間2」   笠原昌子「蛹」
 協会賞受賞作の「器としての身体」、03年12月の院生展で出品した「器としての身体2」(左の写真手前)、新作の「影法師」「蛹」。
 いずれも石膏に着彩しています。
 「蛹」以外は、ふたつの人体が組になっています。
 笠原さんによると「抜け殻」がテーマ。
 写真で見るとわかりやすいと思うのですが、「器としての身体2」の横たわっているほうの人物は、左の人体の上に石膏をぺたぺたと塗ってふたたび石膏取りしたもの。
 いわば、実物と影というか、リアルな人物像と、かたちがややデフォルメされた人物像とが、ふたつで一組になっているのです。
(ちなみにこの題名は、土方巽について書かれた書名に由来しています)
 「これからは、1体で抜け殻に見えるような作品をつくっていきたい」
と話す笠原さんの最新作が、右の写真の「蛹」。
 ギャラリーの入口から、斜めになった表情がわかるように−と、わざわざコーナーに斜めの壁をつくって設置しました。
「これがいちばんつかれました」
と笠原さんは笑います。
 脚の部分はわりあいリアルで、胴の部分は、絵でいえば輪郭をぼかしたような造形になっています。笠原さんの作品はどれもそうですが、これはとりわけ、線に力のある作品になっていると思います。

 もう1点指摘しておくと、昔の具象彫刻とちがって、笠原さんの作品は、重々しい台座をなくしています。台座が、彫刻と現実空間を隔てるものであることはいうまでもありませんが、縦に細長く不安定な人物のかたちを底部で固定するという機能も重要だったと思われ、笠原さんが、重厚な人物を空間にしっかり固定することは、相当に難儀なハードルを超えていることになるでしょう。
 ここではくわしく書く余裕がありませんが、モダニスムに対する反省とともに彫刻から台座が放逐される傾向がありました(絵画から額縁が廃棄されてきたのと軌を一にしています)。現代彫刻はいわば、現実から屹立したものというより、現実のなかにあって現実とむきあおうとしているといえるのですが、笠原さんは、そういう状況にあってなお人体の彫刻が存在しえるのかという、理念的にもかなり困難な課題をかかえつつ制作しているのではないかと筆者には思われます。
 笠原さんは、8月27日−10月11日に札幌彫刻美術館でひらかれる「北の彫刻展」に出品します。

■道教大院生展(03年12月)
■個展(03年7月。インスタレーション。画像あり
■道教大卒業展(02年3月)
■2人展(同)


 第31回 美工展札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)
 道内でただひとつ、工芸だけの公募展です(道展、全道展には工芸部門があります)。
 ことしの傾向としては、染や織の力作が多かったことが挙げられます。
 また、多比良桂子さん(会員、滝川)に触発されたのかどうかはわかりませんが、押花の出品数が増加しています。

 協会賞は、織の三浦千津子さん(千歳)の「杼」がえらばれました。伝統的な織で、渋さと落ち着きを感じさせます。
 また、佳作賞に粟井裕子さん(札幌)の染・織「にこにこ絣と柿渋染」、新人賞に桐山久美子さん(後志管内蘭越町)の織「ソーラン、ソーラン、リハーさる」がえらばれ、受賞4人のうち3人を、「織、染色、染・織」で独占しました。
 ほかにも、祐川まち子さん(染色会友、札幌)「実り」は、ブドウを染めたものですが、背景のぼかしの色彩がすばらしい。一方、小竹由紀さん(染色。北広島)「突風」は、黒地に、青や緑、紫といった鮮烈な色彩が走る現代的なデザインで目を引きました。
 さらに、鍋島俊子さん(染・織会員、室蘭)「藍染木綿・北限の碧(あお)」は、インディゴのうつくしい諧調が見ていて飽きさせません。畠山祐子さん(染色、札幌)「幻遊花」は、オーガンジーやフェルトなどことなった素材が複雑に組み合っていて、アナーキーな迫力があります。
 このほか、東川恵美さん(札幌)が会友に推挙されました。

 皮革もパワフルでした。
 事務局長の高木晶子さん(同)「組曲〔砂−記憶−風〕」は、3つのパートからなる大作。細い紐を縦にならべたところと、曲線からなる部分の対比がはっきりしているので、構図にメリハリがあるのだと思います。めずらしく、いっさいの色がありません。
 また、塙知津子さん(会員、胆振管内白老町)「月光の響」は、波模様を、革のかさなりをたくみに使って表現した作品ですし、佐藤美津子さん(会員、札幌)「冬ソナ・シンドローム」は冬の林を抒情的に描写しています(ただ、この題名は、作品そのもののシリアスさを、わざわざなくしているように思えます)。

 木工では、土屋秀樹さん(会員、札幌)「leaf of pain」は大きなあかり。何百枚もの小さな葉が円錐状に組み合わさり、その透き間から光が漏れる、労作です。
 若手の金子佳宏さん(会員、旭川)「Penta」はスマートな家具。羽賀隆さん(会員、札幌)「無題」は簡素な机です。
 会友の加藤一義さん(日高管内静内町)は毎年、1本の木をくりぬいてつくった丸いつぼを出品しており、ことしの「黒点」も、節や木目の変化、木の存在感に、感服させられました。
 籐工芸もつぶがそろっています。会員は4人で、そのうち、新海きよ子さん(北広島)「そよ風」は、白樺などの枝とくみあわせたのがユニークだと思います。会友の織田幸子さん(札幌)が「COSMOS」で会員に推挙されましたが、一般入選がゼロなのはさびしいところです。
 塗では、以前札幌にいた山崎友典さん(石川県輪島)が会員に推挙されました。
 組紐では、北川美香さん(札幌)が会友に推挙されました。「松葉と松毬」で、赤と緑は補色どうしで、むずかしい組み合わせですが、それを破綻なくまとめています。
 和紙。会員の宮森恵子さん(同)「雨の日の詩」は、薄紫や水色の傘がかさなりあう、楽しい大作でした。
 いちばん出品数が多いのは陶芸ですが、会員の佐久間弘子さん(同)「象嵌 旅の思い出(桂林)」の景色、会員・中村由起子さん(同)「想」のユニークなフォルムが目を引いたくらいで、傑出した作品は少なかったような気がします。
 ほかに、ガラス、金工、クレーアート、人形、ボビンレース、木彫、ワイヤークラフト、アコール工芸というジャンルからも出品がありました。

■第8回会員展(03年)
■03年
■02年
■01年


 松本宣親日本画展 風の香りを彩としてU=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)
 知床にアトリエのある日本画家。風景は、現場に紙を持ち出して描いているそうです。「静かな時」は、雪の中の川がモティーフで、ほとんど墨だけでひろがりのある風景を描いていますが、水墨画とはよほどちがっています。

 門崎幸子 水彩画展=同
 道彩展によくあるタイプの、ラフな筆つかいの水彩画28点。静物、風景、人物など。ほかに、鉛筆デッサン2点。
 こういうタイプの絵は、たとえば道展などの人から見ると、ただきたない絵に見えるかもしれない。
 筆者は、ときどき、この種の絵にあって、ものとはなんだろうかということを考えさせられます。
 たとえば、「マメ科の花」で、卓上に、茶色で縁取りされた四角形がありますが、それはなぜトーストに見えるのか。そして、トーストが背景の色と溶け合っているように見えるのは、いったいどういう事態であるのか。

 4月22日(木)

 海も森も星も只 −30°N,130°E Wonder Island- テラウチ マサト写真展=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル 地図A)
 「リゾート系の写真かな」と、題名から勝手に判断していましたが、じっさいは、それほど奇抜ではない自然を、しかし深いまなざしでとらえた写真でした。すべて同じ大きさのカラー18枚。題はありません。
 そこにうつっているのは、なんの変哲もない波打ち際だったり、シダが雨にぬれる森林だったり、星の光に照らされる滝だったりします。名勝、奇観というよりも、大自然の原型とでもいうべき、或る種の普遍性がそこには感じられ、見ているとなぜか、やすらぐ写真です。
 1枚、舗装道路がかすかに見えている写真があるので、無人島ではないのでしょう。しかし人や動物はまったく写っていません。時を超越した自然が、そこにあるだけです。
 テラウチさんは東京在住。「BE PHat」編集長などとしても活躍中。
 23日まで。
 5月6−14日に仙台、5月31日−6月4日に福岡、6月17日−23日に大阪梅田、7月5日−9日に名古屋の、各キヤノンサロンに巡回。

 北大写真部 新入生歓迎写真展(新歓展)=北大クラーク会館2階(北区北8西7)
 総じて、モノクロの焼きの技術が向上してきたような印象を受けます。
 大高小夜さんの、ラッシュアワーの市電や地下鉄駅を撮った写真、好きです。組写真の中に1枚、警察の立ち入り禁止のテープが貼ってある情景があって、全体の緊迫感を高めるのに役立っています。
 宮本朋美さんの「なぎさドライブウェー」は、あかるい題名とは裏腹の、乾いた感覚が特徴。「茶屋街の夕暮れ」は日本的な情緒も加味した3枚組みで、1枚だけカラー。
 大塚一世さん「縦街」は、焼きがややねむく、しかもアンダー気味ですが、街角を無機質にとらえる視線に個性があると思いました。
 齊藤市輔さん、原田玄輝さんは院生になっても出品しています。
 28日まで。

 □北大写真部のサイト

 4月21日(水)

 自販機芸術いやー、朝日新聞道内版に大きく出てましたねえ。
 アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B)の「自販機芸術」と、akaさんの雄姿。
 たばこの自動販売機をリサイクルして、芸術作品をもっときがるに買ってもらおうという、ナイスな発想だと思います。
 ミニ彫刻とか、万華鏡とか、いろいろそろっていますが、まだ半分くらいはあいているみたいなので、そこの若い人、参加してみませんか?
 公式サイトはこちら


 益村信子展 THE DANCING GALAXY 3=ギャラリー山の手(西区山の手7の6)
 インスタレーションの基本的なアイテムは、前回の個展とほぼおなじ。
 青く塗ったキャンバス枠や筒、白いうちわの骨、中空に大きくひろがるネットなどです。
 いちばんつきあたりの壁には、天使の羽がひらかれています。
 ただ、受ける印象が前回と相当異なるのは、ライティングが暗いせいでしょう。
 「桜の季節にまにあえば、窓を開けても良かったんだけど、まだ早いし…。これまでやってた大同ギャラリーさんだとわりと外光が入って開放的な感じだったので、ギャラリーの舟型の空間を生かしつつ、前回とはちがったスタイルにして、このかたちは今回でいちおう一区切りということにしたかったんです」
 ちょっとちがうのは、S100号ほどの絵の前に、小さな四角形が12個、半円形におかれていたことでしょうか。この12個は、赤、黄色、黄緑、青と、レインボーカラーを思わせる配色で、ならんでいます。
 益村さんにいわれてはじめて気がついたのですが、天井からあれこれ吊るすという作業が可能なギャラリーは、ありそうで意外とすくないとのこと。たしかに、天井が格子状になっているのは大同とコンチネンタルくらいしかおもいつきません。
 今回は、ギャラリー側の同意を得て、天井にフックを埋め込んで木枠などをつりさげています。
「けっこう、満足できる仕上がりになりました」
と益村さん。これまでもすこしずつ構成をくみかえてきましたが、22日に大々的に展示替えをおこなう予定だそうです。
益村信子展の会場風景。左下に、12個の四角が見える
■ことし3月の個展 画像あり
■第2回野外オブジェ展イン栗沢(03年8月) 画像なし
■2003年3月の個展 画像あり
■2002年4月の個展 画像あり
■野外オブジェ展イン栗沢(01年11月)画像あり

 5月1日まで。日曜、祝日休み。
 ギャラリー山の手への行き方は、スケジュール表を参照してください。

 宮嶋宏美個展 饒舌な静寂TEMPORARY SPACE(中央区北4西27 地図D
 宮嶋さんがどういう作家なのか、ひとことで説明するのは、とてもむつかしいのです。
 道教大出身者でつくる現代美術グループ「ロッパコ」のリーダーとして「民宿芸術」などのプロジェクトを仕切る一方、先日道立近代美術館でおこなわれたS−AIR展の「アートセンター」ではマンガの力作を発表。さらに、青森市と函館市が企画した現代美術のプログラムで版画を制作もしています。
 ようするに、札幌の若手作家としては、ひじょうに精力的に活動しています。
 ただ
「作品はどんなの?
ってきかれると、なんていったらいいんでしょう。
 これまでの発表が、函館とか、北九州などでおこなわれてきたことも、説明につまる一因かもしれません。
地平線のような緑色が描かれているほかは、小さな写真と、短いテキスト3つが張ってあるだけの会場  隣接のcafeのほうには、人間が描かれた紙の筒が置かれている
 テンポラリースペースのほうは、左の写真のようにほとんどなにもありません。
 よく見ると、海を写したとおぼしきスナップ写真が1枚貼ってあって
強烈な風景の記憶

1998年 人生2度目の海外
というみじかいキャプションがついています。
 ほかにも、みじかいテキストが2カ所ほどあって、それにみちびかれるように壁の下のほうに視線を移すと、緑と灰色の帯がぐるっとつづいています。
 見渡すかぎりの地平線、それが一面の畑だったという、鮮烈な印象をかたちにしたかったということです。
 そもそも当初は、ギャラリーを訪ねてきた人から体験を聞き書きしてそれをマンガにしようとしていたとのこと。2、3点制作して、それはいま、書斎(控え室)に展示してあるのですが
「初めて会った人からそうそううまく話など聞けないので、やめたんです」。
 となりのカフェには、たくさんの小品がならんでいます。ほとんど、紙の筒に、ビールの瓶や、人物を描いたものです。
 いちばん上部には、紙工作のような横断歩道があって、20人以上の人物は、スクランブル交差点をあるいている人という設定のようです。
 さらに目を凝らすと、本をまねたものなども置かれています。
 これも最初は、大きな紙をはって棚をふさいでいたとのこと。
 正直なところ、作者の個人的な嗜好(スクランブル交差点がすきなど)が、外部とどのような回路をつくっていくのか、現段階では見えづらいのは確かです。ただ、完成された作品を会期初日に設営するのではなく、個展が始まってから自分の思いの変化を見ていくというスタイルは、かつて「成長型アート」にとりくんだ人にふさわしいのかもしれません。

 23日まで。
 最終日にクロージングパーティー。


 最後の項目ですが、個展で風景画などを発表している札幌の真鍋敏忠さんが、トヨタハートフルプラザ(西区二十四軒1の7)「心いっぱいギャラリー」で小品を展示しています。
 「シクラメン」「ゲンペイカズラ」「サクランボ」といった、花や果実の水彩画10点ほどで、ボタニカルアートよりはラフなタッチです。
 真鍋さんが挿絵を担当した、11月末から12月はじめにかけて北海道新聞の札幌市内版に連載された「まちかど探見 白石本通かいわい」のスクラップも展示されています。
 会期末は未定とのことです。

 会場は、旧国道5号の、札幌から行くと右側で、フォルクスワーゲンのディーラーときたぐに銀行の間です。
 トヨタ自動車の、福祉対応車両を展示しているお店です。もちろん駐車場完備です。
 地下鉄東西線の二十四軒駅からあるいても7分ほどです。

(後記。本来は20点あまりの展示でしたが、会場の忍gんが無断で作品の一部をはずしていたことがわかり、のちに元に戻したそうです)

 □真鍋敏忠アートギャラリー

 4月20日(火)

 きょうも会期末寸前の展覧会めぐりが中心です。

 山口斌写真展「銀色に輝くヒマラヤとヒマラヤに抱かれた人々」富士フォトサロン(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A
 いわゆる山岳写真。エヴェレスト、ダウラギリ、アンナプルナといった高峰が真っ青な空にそびえるさまは、とりたてて登山の趣味のない筆者にもうつくしく感じられます。
 また、シェルパや、バザールのようすなど、現地の人々もとらえられています。ただ、塩をはこぶ馬たちの写真に、電柱の列があるのを見ると、ネパールなどの国も文明化してきているのだなと思いました。
 ところで、会場のパネルによると、山口さんはけっして仕事そっちのけで山登りしていたのではなく、90年代にはネパールの医療などにたずさわっていたそうです。そういわれてみると、通りすがりの旅人のものではないたしかな視線が感じ取れるようです。
 21日まで。


 全日本美術協会道央支部展NHKギャラリー(中央区大通西1 地図A
 うーん、ずいぶん大きく出た団体名だな(笑い)
 出品者は6人で、いずれも油彩を3−5点ずつ。アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)でのグループ展でよく見る名前がちらほら。
 堀昭さん「大樹」「渇水期の豊平川」などは、ナイフをたくみにつかった、切れのある風景画。
 堀内寿与さん「陽春の頃」は、あかるい黄緑をたくさんつかった、さわやかな風景画。もっとも、昨年4月の「遊油会展」で見た絵のような気がするな。
 工藤安雄さんは冬山を細密に描写した絵が中心。夕張のマウントレースイスキー場から見た雪山などもあります。
 ほかに、堀内力男さん、今崎幸雄さん、山形貞雄さんが出品しています。
 21日まで。


 古川糸央人形展=茶室月菴(中央区南3西26、茶房森彦離れ 地図D
 粘土にガーゼをはってつくる関節人形の作家。コンスタントに制作と個展をつづけています。
 今回は、裸婦などのなまめかしい作はなく、「黄砂」などの題がつけられた人形はみな着衣です。
 一体だけ人魚のような作品がありました。
 ガーゼなので、肌に冷ややかさはないのですが、東洋的な顔つきなどはどこかなぞめいています。
 22日まで。
 ■02年9月の個展


 高橋ゆり個展オリジナル画廊(中央区南2西26) 地図D
 絵画とアクセサリーの個展。
 絵は、「笑う風」「心身隆起」「深海の鳥」など14点ほど。
 細胞や微生物の顕微鏡写真をおもわせる、ふしぎな曲線がうごめき、水彩らしき画材で着彩されています。
 21日まで。


 つづいて、まだ終了まですこし間のある展覧会。
 漕人展 X札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 札幌の画家岸本裕躬さん(行動展会員)にかつて絵を習っていた8人による、油彩と水彩のグループ展。
 隔年の開催で、当初から、5回目の今回で終わりときめていたそうです。
 「漕人展」の会場風景青木和子、上田和子、加藤恵美子、川越和子、金指亮子、坂井和子、戸村蓉子、西幸夫の各氏のほか、岸本さんご自身も出品しています。
 岸本さんはたいていの関連グループ展に新作の小品を出すのですが、今回はめずらしく旧作を出品。「フエ(ベトナム)の住民」など、1960年代末期の半抽象的な大作4点です。
 若い人のために説明しておくと、フエはベトナム戦争の激戦地で、岸本さんの若いころの社会的関心をうかがうことができます。それにしても、米国って昔から戦争ばっかしてるよなあ。
 B室にわりあいデフォルメのつよい、C室に写実的な絵が集まっていますが、これは偶然とのこと。赤のまばゆい上田さんの「いずこえ」は山登りをたのしむ人々がモデル。白の輪郭線がユニークです。


 第7回萌え黄会油絵展=同
 カラリストとして知られる山川真一さん(道展会員)の教室展。人物、風景など多様な油彩がならんでいます。人が2−4点ずつ出品。
 道展で入選をかさね進境いちじるしい谷藤茂行さん「炭鉱施設跡」が目を引きます。特徴は、非常に緻密な描写にだけではありません。非常にフラットな光の状態のときの風景を描いているようなので、奥行き感にとぼしい独特の調子になっているのです。夏のつよい光の下では、陰影がきつくなりますが、日のあたっている部分についてはむしろ平坦な感じに見えるのではないかと思います。谷藤さんの絵がどこか超現実的な感覚をただよわせているのは、そのためではないかと筆者には感じられます。
 田中由紀枝さん「大きな山があったとさ」は、まばゆい色彩の点が風景全体にちらばっています。また、本田佐代子さん「秋の色」は、黄緑の空、紫の山など、風変わりで
派手な色づかいの風景画です。いずれも、かならずしも成功しているとはいいがたい面もありますが、挑戦する意欲は買いたいと思います。
 ほかに、山崎元栄さん「石ころのある山道」、平野公司さん「中島公園」は、おちついた筆致で、秋山久美子さんは明るい色の配置で、宮島京子さん「冠岬」は存在感ある岩塊にばら色の点を置いて全体を明るくしたことで目を引きました。
 また、白土善蔵さん「木漏れ陽」の2作は、林の中のおなじ場所を、季節を変えて描いたものです。
 指導者・山川さんの「秋色」は、紅葉の風景。あかるい色を配置した抽象画のような画面なのに、錦秋の山に見えるふしぎ。

 いずれも24日まで。


 20日かぎりで終わった展覧会。
 ポケット会展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図
 絵画の6人展。
 岡部静子さんは、ガクアジサイを描いた「6月の思い」など、こなれた静物画を出品。
 森河靖さんは、風景画「雨の洞爺」「恵庭岳」、人物画「婦人像」、「卓上静物」の4点を出し、意欲的です。緑と茶を主体とした色づかいにはセザンヌの影響がかんじられますが、筆触はもっと細かく、震えるような空気感が表現されています。


 最後に訃報です。
 フランスの画家ベルナール・カトランさんが亡くなりました。
 あかるい色づかいで、日本にもファンが多かったということです。
 札幌三越で1998年ごろに個展をひらいた際に来札、筆者もインタビューしました。気さくなおじさんでした。ご冥福をお祈りします。


 4月18日(日)

 堤恭子展 第22回北国抒情詩=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A
 「七宝」というと一般的にはお稽古事のイメージがつよいのですが、堤さんのつくる世界は、北国のロマンを、ふかい精神的なところまで表現していて、胸を打たれます。
 ただ、表層的に、北海道らしいモティーフを写実的に描写しているのではありません。
 もっとも多いのは、葉を落とした冬の木々で、会場入口の小品は、青い空と枝だけというシンプルなもの。大きな屏風型の作品にも頻出しますが、堤さんは
「わたしの心象風景なんでしょうか」
と、あまり多くをかたりません。
 左の「Time on Time」は、熱で貼り付けた金箔が、はなやかなさをかもし出して、青を主体にしたきびしい自然を表現した左側と、対照を見せています。ひものようなものが貼り付けてあるのは、金箔や銀箔をよったものだということです。
 屏風につかっているのは木に漆やカシューを塗ったもので、黒が画面をひきしめています。
 作品によっては、おなじ平面のなかに鮮やかな赤と、灰色など、まったくちがう色が同居していますが、これを七宝でやるのはたいへんだと思います。初心者の七宝は、ひたすら色があざやかなことが多いですが、堤さんともなると、おちついた色合いが多くなります。ただし、澄んだ透明な発色は、さすが七宝ならではと思わせます。
 上のフロアでは、堤さんの生徒さんたちによる「Group Ten」展もひらかれています。
 20日まで。

■工芸三人展(01年4月)
■グループTen展(02年4月)
■グループTen展(03年4月 画像あり)