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あーとだいありー 2003年12月
12月13日(土) デザインフェスタ2003 マイワーク展「融点」=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 北海道デザイン協議会年末恒例の会員展。 ことしは、各会員の出発点、あるいは転機になった仕事を、一堂に展示しています。 ファッション、建築、インテリア、イラスト、ポスターなど、多彩な分野で、どこかで見たことのあるものも多く、あらためて同協議会メンバーの活躍ぶりがわかります。 とても全員にふれることはできませんが、あえてひとり挙げると伊藤匡さん。こんなにたくさんの会社のロゴマークを手がけているんですね。びっくりです。 15日まで。 なお、スカイホールは来年1月4日までやすみです。 第1回ノルテの作家展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) ことし2月に閉廊になったギャラリーノルテで常設展をひらいていた作家(つまり、学校の教職員と退職者)たちの展覧会。ギャラリー大通美術館は、ノルテにいちばん近い会場なので、会場にはぴったりだと思います。 絵画、書、彫塑、工芸、写真の5分野。個人的には、書がおもしろかったです。 絵画も、ベテランの大作ぞろいですが、大半が既発表作です。 種市誠次郎さん「円のシリーズ(ホイール)」は、ことしの道展発表作と似ていますが、ちがう作品です。円(まる)をならべて画面でどういう効果がでてくるのか、種市さんは愚直ともいうべきまっすぐな姿勢で追求しています。 ほかに、浅野ナ、斎藤洪人、坂口清一(以上全道展会員)、今本哲夫、後藤和司(新道展会員)、鵜沼人士、香西富士夫、佐藤吉五郎、山崎亮(以上道展会員)、江川博、北山寛一の各氏。 書は、淡墨の作品が多かったです。羽毛蒼洲さん「風姿」、高橋祥雲さん「破眼」、佐々木信象さん「越」など。 島田青丘さん「器」も淡墨です。幾重にもかさなりあった線が、生き物のようにわさわさと自己主張しているかのようです。 大ベテラン中野北溟さん「光の柱が海を」は枯淡の境地。中野層翠さん「良寛詩」も、余分な力の入っていない、味わいがあります。 野中竹峰さん「絵馬の句」は、目録や、題名パネルでは「絵馬の旬」になっていました。「ラムネ飲むやすずしき音をガラス玉」。かなというより近代詩文のようです。 松山朴羊さん「玉響(たまゆら)」は力のこもった力作。矢橋寿心さん「昶 日の永きこと」は、タンチョウを一筆で描いたような、流麗な書です。 東志青邨さんはめずらしく臨書「灌頂記」。須田廣充さんは草野心平の詩です。 彫塑は、本多俊朗さん「頭像」、丸山恭子さん「叫ぶ声(川の前)」、山下嘉昭さん「譜〜53」の3点。 山下さんはこれまで樹脂製のようなシャープでモダンな造形が持ち味でしたが、今回は、木に白く塗ったことがはっきりわかる出来になっています。木の台があるのもめずらしいです。 14日まで。 オープン特別記念展 第4期=道新ぎゃらりー(中央区北2西2、札幌時計台ビル地下) 道新文化センターの講師陣の作品を紹介する第4弾。小比賀秋水(書)、石田壱城・信子(書と表装)、木村敏男(俳句)、高橋和子(ドライフラワー)、山田セツ・山根由美(グラスリッツェン)、中辻よし子(七宝)、林薫(彫金)の7講座。 この調子で来春までつづくということですから、道新文化センターの講座の数ってすごいですよね。 しかも、札幌以外にも、道内のおもな都市にあるのです。道内で何講座あるんですかね。 展覧会のうち、グラスリッツェンというのは、ガラスの皿などに、細かい線を刻んで絵を描き出す工芸の技術です。 15日まで。 WOOD CRAFT EXHIBITION=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B) 北海道教育大学札幌校木材研究室の恒例の展覧会。 3年生がふたり、2年生が8人です。 3年生の高橋佳子さん「ハナ」「木人」などは、素朴な感じの木彫です。 松本卓也さん「プレイ」は、自由なレイアウトが可能な、四角形のスツールです。 2年生は、全体的に、曲線をいかした丸っこいかたちの立体や、雑貨的なたのしい感覚の作品が目につきました。三谷祐美子さん「絆」は、シャープな曲線のかたちがかさなりがユニークです。 Po−to−bo 器と雑貨展=同 島田和子さんの個展。モノトーンのまるい食器、カラフルなキャンドル、カードスタンドなど、たのしい雑貨屋さんのような、センスのいい展覧会です。雑貨好きな女の子は必見。 □サイトはこちら グループ「札幌漫画塾」年末恒例マンガ展 マンガで見る2003年=同 北海道新聞などで活躍中のながせ義孝さん、シャープなCGの百合若さんなど、8人のグループ展。ただの似顔絵じゃなくて、きちんとニュースを消化してマンガにしてるところに好感がもてました。すけのぶやすのりさんの、のぞき箱作品もたのしい。 以上16日まで。 |
12月12日(金) exposure=CAI現代芸術研究所(中央区北1西28 地図D) CAIアートスクールの卒業制作展。 CAIなので、いわゆる「現代美術」系の作品です。11人が出品。 なぜか植物を素材にしている人が多いです。高谷有紀子さん「闇の狭間で目を覚ます。」は、ドライフラワーに、緑青のような色を着色していますが、いっしょに色を塗ったワイヤーや粘土も、植物のように見えてくるから不思議です。 松下友さんは、ノートが素材で、アリの絵をコピーしてはったり、スライムみたいのをはったり、最後のページには、薬のカプセルをつかった超ミニ作品が取り付けられ、すでにノートの体をなしていないところがかえっておもしろいです。 國井真美さん「夏に梨を食す10の方法」は、先の「北海道映像の新世代」の上映作。今回は、ビデオモニターですが、やっぱり8ミリフィルムを投影したほうが「感じ」が出るな〜。 石田千華、金子千浪、木越しおり、杉谷由香、鈴木佑、西林直子、樋室伸顕、渡辺元子の各氏も出品。 14日まで。 木村初江陶展 注器いろいろ 和風モダンな陶と器たち=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 個展、グループ展と、とにかく精力的に発表活動をつづけている札幌の木村さん。 今回はうつわ展で、木村さんらしいグレーを基調にしたモダンな食器が多くならびます。 テーマになっている「注器」は、すずりに水を注ぐためのもの。でも、大きいものは急須にしたり、日本酒を注いだり、応用がききそうです。 レモンや石ころを石膏で固めて、かたどりした、ユニークな作品もありました。 須原重明写真展〜四季彩U〜=同 美瑛などを撮ったアマチュアカメラマンの写真展。 とくれば、よくある写真なのですが、ありきたりのものとはちょっとちがいます。 被写界深度を浅くし、わずかにアンダーぎみの露出でとらえた麦畑やひまわり畑は、どこか心象風景のように、ちょっと現実離れした魅力がただよっています。 いずれも14日まで。 第7回 北海印社篆刻年賀状展=札幌市民会館2階ギャラリー(中央区北1西1 地図A) 札幌の大柳東里さんの社中展。26人が出品しています。 なるほど新年らしく「日々是好日」「壽萬年」といった、おめでたいことばの篆刻が多いようです。年賀状も、こういう「手に職」のある人はいいですね。 気分はもう新しい年、といった感じの展覧会でした。 15日まで。 つぎの項で最後ですが、かなりの長文です。 第2回 具象の新世紀展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)全室 2001年に第10回で終了したグループ展「北の現代具象展」をひきつぐようなかたちで昨年から始まったグループ展。ことしは、伊達、千歳、根室、小樽、そして今回の札幌と、道内5カ所で開催。15人のメンバー(実行委員)のほか、各地の地元画家に「交流作家」として出品を仰ぎ、札幌では6人を「招待作家」として招きました。 まさに、札幌にとどまらない、全道的なひろがりを持った絵画展になったといえるのではないでしょうか。 実行委員は、道内を代表する、脂の乗り切った作家ばかりです。 委員のうち、阿部国利さんは昨年11月に亡くなりました。 3階の2室が、阿部さんの特陳になっており、1987年から最晩年までの18点が展示されていました。 灰色を基調に、ひそやかに解体していく人間像を、フラットかつ精緻なタッチで描いています。 未見と思われる作品もかなりあり、この画家が、最後の最後までじつに精力的に制作をつづけていたということがわかりました。 題の不明の作品には、顔をリベットで止めたような絵柄もありました。 それは、デュビュッフェなど表現主義的な画法のものとはちがった、現代人の不安の肖像のようにも見えましたが、どこかに安らいだ面影も感じました。 力作ぞろいではありますが、個展や公募展に多忙な画家が多いため、どこかで見た作品がけっこうあります。 その意味では、個人的には、あまり見る機会の多くない画家の作品に、鑑賞のヨロコビを感じてしまうのです。 越智紀久張さんは、公募展に所属せず、個展も西日本の百貨店などでひらくことが多いため、この「具象の新世紀展」が貴重な機会です。 会場に入ってすぐのところに「湖畔の村」がありました。 越智さんの風景画は、基本的には点描といってよいと思います。スーラの点よりずっと大きく、シニャックや初期マティスに近い。しかし、シニャックの絵が、見る者に「点描」技法を過剰なまでに意識させてしまうのに対し、越智さんの絵は、どこまでもおだやかで、清澄です。筆触の存在をそれほど感じさせません。 「湖畔の村」は、緑のうつくしい1点です。ただの緑と見えるところも、じつはいろんな色の点がまじっています。木々は単純なかたちにまとめられ、見る人の神経を刺戟したり、画面に破調をきたす要素は描かれていません。その意味で、じっさいの風景を相当加工しているはずなのですが、それも見る側に感じさせないほど、単純化がきまっています。 とにかく、これほど心をなごませてくれる絵を毎年着実に見せてくれることに対し、感謝したいです。 福井路可(るか)さんの「夜の雨、明日の海」も、似たような題の作品がこれまでたくさんあったので自信はないんですけど、新作だと思います。 一種の三連画のような構成で、十字架のようなフォルムが3つならんでいるのが見えます。そして、中央に、裸婦が描かれているように見えるので、おやっと思って近づくと、乳房と見えたものは、表面に張り付けられた板の節目なんですね。ただし、横顔はちゃんと筆で描かれていて、ほとんどマティエールだけで構築されている画面の中で、ほとんど唯一、具象画としての存在を主張しているかのように見えてきます。 羽山雅愉(まさよし)さんは、住んでいる小樽がテーマにしていますが、現実の小樽というよりは、実際のモティーフをいったんばらばらにして構成しなおしたような、幻想的な小樽を表現しているといえます。 今回の出品作「朝光」「黄昏」(同題2点)のうち「黄昏」は、レモンイエローの光に、運河周辺が充たされています。薄いかぶせ塗りが効果を挙げて、まるで夢の中の光景のようです。 川口浩さんの「矩形の静物」(F80)は、これまでにないアプローチです。 ひきだしを抜き去ったあとのたんすのような箱に裸婦が坐っているのですが、彼女は、あちこちがひびわれ、物のようにこわれているのです。左右のちいさな区分けの中には、まるで荒れた鳥の巣のようにわらがちらばっています。 崩壊感覚、ということでいえば、鈴木秀明さん、伊藤光悦さんも共通するものがあります。この2、3年、人気のない空港を描いてきた伊藤さんは今回、「3号棟」(S80)「3番地4号棟」(F100)で、廃墟のような集合住宅のモティーフに帰っています(うーん、綾波レイが住んでそうだな)。 招待作家は、奥野候子(苫小牧。道展会員)、長内さゆみ(渡島管内大野町、道展会友)、斉藤矢寸子(旭川。行動展会友、全道展会員、純生展会員)、高橋芳子(帯広。新道展会員)、久野志乃(日高管内様似町)、洞内麻希(函館。道展会友)の6氏です。 実行委員が全員男性で、招待作家が全員女性というのは、偶然でしょうが、おもしろいですね。 斉藤さんはこれまでしばらく、半球形の上に、大小の関係をわざと狂わせた都市や人々などを配置した絵を描いてきましたが、今回の「波動領域」は、画風が一変しました。 これまた三連画のかたちをとり、ヘッドフォンをした男と、女3人、それにヤギ2匹がモティーフになっています。 男は頭の後ろに、横向きに傘を持っています。意図するところは筆者にはいまひとつ明確にはつたわってきませんが、スピーディーでシャープな画風です。 久野(ひさの)さんは一昨年の全道展で「道新賞」を得る一方で、現代美術ユニット「LOPPACO(ロッパコ)」の一員としても活動するなど、この世代(20代なかば)の作家では筆者がもっとも注目しているひとりです。ただ、札幌から離れた学校で教壇に立つことになり、ことしは全道展の出品もなく、動静があまりつたわってこないので、もどかしい思いをしておりました(7月のカルチャーナイトフィーバーでは8ミリ映画を出品していましたが)。 今回の2点のうち「共通光」は新作のようです。ビルの屋上のようなところで、ひとりの人物が画面奥へとむかってあるいています。白い地面(?)に、青や緑の影が交錯し、人物の影も長く左へとのびています。目の悪い人が眼鏡を外したときに見えるような、独特の画風はあまりかわっていませんが、これも久野さんなりの「記憶」の表現なのでしょうか。 洞内(ほらない)さんは、久野さんとほぼ同世代。 「この人、ピエロ・デッラ・フランチェスカとか、ルネサンス絵画が好きなんだろうなあ」 と、見ていて思うのですが、こういう嗜好の人が往々にして有元利夫の二番煎じになってしまいがちなのに、洞内さんはしっかり自分の画風をうちたてているところが立派だと思います。 今回も「夜風」「記憶」のF100号2点は、ふしぎな帽子をかぶった、西洋人とも東洋人ともつかぬ二人の人物をメーンに据えていますが、背景では、家が水没していたり、中空におわん型の舟がうかんでいたり、幻想性をつよめています。あるいは、画家の、漠然とした危機意識の反映なのかもしれません。レオナルドが洪水のスケッチを描いたように。 長内さんは、ことしの道展ではがらりと画風を変えましたが、今回は、昨年まで長年とりくんできたハスのモティーフにもどっています。たしかにすごいリアリズムですが、どうしたものか道展では毎年上の段に掛けられていたので、今回初めて、リアルな中にもラフなタッチのあることを発見できました。 実行委員と、上で述べなかった作品名はつぎのとおり。
このうち、輪島さんは今回出品がありません。 また、招待作家の出品作は次のとおり。 奥野「鏡」(F100。同題2点)「渡る風」(F8) 高橋「秘密」(F100)「秘」(同)「むばたまの」(F6) 洞内「夜明け前の行進」(M20) 斉藤「波動領域M2003」(M20) 久野「記憶周辺」(130×210) 長内「秋の水辺」(F100)「晩秋」(同)「睡蓮−花−」(F8) また、世代的には、1960年代生まれがひとりもいません。 実行委員は福井さんの59年生まれが最年少。招待作家は、久野さんが78年、洞内さんが77年で、このふたりだけがとびぬけて若い顔ぶれとなっています。 なお、図録によると、各会場の交流作家はつぎのとおり。
■02年「具象の新世紀」 |
12月11日(木) 早川純子版画展=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階 地図D) 東京在住の若手版画家、道内では初の個展。 銅版画、木口木版のほか、立体の小品などもあって、理屈抜きでたのしい展覧会になっています。 モティーフになっているのは、シカなどの動物。といっても、写実的なものではなくて、ムーミンに出てくるスニフの親戚みたいなもんです。 木口木版というと、細かさコンテストみたいな展開になる場合が多いんですが、早川さんの場合は、技術で見せるとか、癒やし系というよりも、元気な線のうごきとキャラクターの楽しさがかぎになっているんだと思います。 「不眠症」の連作、羊が主人公の「ねむれぬ森」など、くすっとわらってしまう作品です。 14日まで。 北海道教育大学大学院 院生展=Art Warm(石狩市花畔1の1) いやー、すっかりかんちがいしておったです。 Capybara Cafeでひらかれているのは、若手画家の吉田直樹さんの個展。院生展のほうは、奥のArt Warm本体でひらかれてるんですよ。 ということで、大規模な展覧会になっています。 とくに健闘がめだつのが、藤田尚宏さん。御影石の大作「一つのシグナル」など、おもに石を用いた抽象彫刻を5点も出品しています。 ことしの道展でみごと協会賞を得た笠原昌子さんは、受賞作につながる人体彫刻「器としての身体U」を出品。直立している裸の男性と、その像の足下に脚をのばすトルソ的な人物の対比。後者は、腕や脚がなく、顔も不分明で、裸の男とふしぎな対称をみせています。 映像では、先の「北海道映像の新世代」で大活躍した大島慶太郎さんが18日の搬入ということで、見られませんでしたが、佐竹真紀さんが新作(だと思う。すくなくても筆者は未見)「ひととき−2002年5月15日−」を出品しています。卒業制作などと同様の方法論による作品で、がらんとした和室のなか、カメラの前にさしだされた写真は、おなじ部屋のなかでおこなわれた友人どうしの宴会のもようを、つぎつぎと映し出します。音声の入れ方にくふうがあり、宴はにぎやかなのに、「祭りの後」のようなさびしさを感じさせるのがふしぎなところです。背景になっている和室が、がらんとしてさびしげなせいかもしれません。 小林麻美さんは「circus garden」「room」の油彩2点。後者は、部屋のカーテンと、馬とをくみあわせたふしぎな作品です。ものを接近して見つめるまなざし。 船越りえさんは「go west-ward」など油彩4点。子供のころのぴんぼけのスナップ写真を強拡大したような茫漠(ぼうばく)とした画風がおもしろいと思いました。 金工の佐藤まゆみさん「生き物の機構」は、回転台の上にキノコみたいな突起物が11個ぐるりと取り付けられている妙な立体。取っ手をまわすとぐるぐる回りそうな感じですが、壊れるといけないのでさわりませんでした。 他の出品作はつぎのとおり。 松本ゆかり「回想」(エッチング) 船越「cloudy yellow silder」「a lost child」「cotton candy night drop」 中川浩「Won Wonderful World〜Nの翼〜」「Won Wonderful World〜希望の天使〜」「Won Wonderful World〜ピエタ〜」(油彩) 浅沼さゆり「doze off」「revive」(ミクストメディア=絵画) 松田彩「独」「永遠に」(和紙・箔・岩絵の具) 高橋郁子「歩」(油彩) 中田拓哉「楓のサイドテーブル」 佐藤「虫取地蔵」「バームクーヘン」 藤田「同化気流」「動いた軌跡」「circulate」「protective coloring」 吉田さんの個展「nature」は、キャンバスの大作3点、小品4点、ドローイング11点。にぎやかな感じの抽象画です。それぞれに作品タイトルはついていませんが、線や色斑に有機的なものがただよいます。 いずれも28日まで。 HAKONIWA=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G) 若手6人によるグループ展。メンバーはかなりいれかわっているようです。作風も、昨年あたりとくらべると、若々しいエネルギーの発露というよりもおとなしめになっているような気がします(そのことじたいは、いいとか、わるいとかはいえないと思うけど)。 鈴木あゆ美さんは全点カラー。彼女の写真の魅力をことばで語るのは、とてもむつかしい。乱暴にカテゴリー化すると「ブレ・ボケ系」ということになるんでしょうか。前回まではテーマらしいものがありましたが、今回は身のまわりの風景や人物を撮っています。…と書くと、つまらなそうですが、そんなことはなくて、なにがうつっているのかも判然としない画面は、ふしぎな焦燥感やいらだちが感じられます。 ブレ・ボケといえば、本田さんはモノクロのブレ・ボケ写真が混在。雪山の上でペットボトルの飲料を飲む人物、夜の看板、日劇(映画館)の解体など、一貫性はありませんが、視線には独特のものがあります。 大沢亜実(つぐみ)さんは一貫してじぶんや友人などの人物をカラーで撮っている人です。 おもしろいと思ったのは、じぶんをモデルに、たくさんのリンゴとともに撮った一連の作品で、とくにキャプションなどはないのに、軽快な物語性を感じました。ただし、モエレ沼公園で撮るのは、個人的には、おじさんの撮影会くさい感じで、どんなものかと思ったりもします。 クスミエリカさんは、体の一部をラップでくるんだ写真などをくみあわせた組写真「蛹」など、モノクロを多数出品。ただ、焼きが一部あまいのが惜しまれます。 ほかに、mizさん、金森昌子さんが出品しています。 14日まで。 ■昨年のHAKONIWA □大沢さんのサイト |
12月9日(火) 9日の日本経済新聞の文化面に、札幌の美術家、椎名勇仁さんの原稿「火山が窯 溶岩で焼き物 キラウエアで第一号、北海道を主な拠点に」が大きく掲載されていて、ビックリです。 ハワイの火山の熔岩で焼いた粘土の作品と、それを収録したビデオは、以前TEMPORARY SPACEでの個展で発表されたので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。この素焼き作品とビデオが、群馬青年ビエンナーレで大賞、キリンアートアワードで優秀賞を受賞したという話は、この原稿を読むまで、うかつにも知りませんでした。おめでとうございます。 椎名さんは、東京藝大で彫刻をまなび、現在は札幌を拠点にユニークな活動をしています。下に挙げたほかにも、昨年のグループ展「リレーション夕張」では、会場を訪れた人に自分の死ぬときのことを想像して画用紙に描いてもらうというワークショップをおこなっていました。 ■椎名勇仁「粘泥亭」(03年4月) ■椎名さんが出品していた都心部の野外展「地上インスタレーション計画」(01年秋。写真有) よりみち、さんぽみち 桂充子・寺腰由佳二人展=ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館 地図A) 若手彫刻家で、道展では裸婦を発表している桂さんと、服やバッグを手づくりしている友人の寺腰さんが、初の二人展をひらいています。 桂さんは、木の枝などを思わせる、有機的な抽象彫刻の小品をならべています。壁には、おそろいの布地を使って仕立てたコートとバッグや、おしゃれな帽子などが掛かっています。互いの作品が、融合するのでも反撥しあうのでもない、独特の空間をかたちづくっています。タイトルも、服などと彫刻数点でまとめて「1℃の風」などとついているのがユニーク。といって、インスタレーションじゃないんですけどね。 「よりみち」という題でくくられた作品の衣服には、今回展示されている彫刻の写真がプリントされているのもおもしろい。彫刻と衣服がひびきあっているのです。 13日まで。 かなりおそくなりましたが、白江正夫展を「展覧会の紹介」に追加しました。 |
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12月8日(月) 100の皿展 若手作家6人=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B) 工藤和彦、清水しおり、七尾佳洋、西村和、前田育子の5氏によるグループ展。当初出品予定だった田中菜摘さんは参加していません。太鼓のたたきすぎでしょうか?? たくさんの皿がならんで、たのしい展覧会になっています。 旭川の工藤さんはことし、カリスマ主婦栗原はるみさんのえらぶ「栗原はるみ大賞」にえらばれるなど、道内外で多忙の1年。やさしい発色の黄粉引は、上川管内剣淵町で取れる粘土で焼いたものとのことです。 清水さんは、表面におどる自由な線のうつわなどが特徴。七尾さんは渡島管内厚沢部町在住。とにかくいろんな種類がありますが、写真中央の大皿など、変化に富んだ景色が見られます。 西村さんは、先日の三越札幌店での個展で出品した端正なうつわのほか、木のもち手のついた和風の容器など。前田さんも、純白の皿や、茶系の粘土をくみあわせてつくったアクセサリーなどがしゃれています。 会場の棚も、作家が会場でこしらえたものだそうです。 この展覧会は、昨年の「100の茶碗展」につづくものですが、とりあえずことしでいったん終了とのこと。「毎年だとおもわれると、ちょっと大変なので」と西村さん。 9日まで。 ■昨年の「100の茶碗展」 ■工藤さん、西村さんが出品の「素−そのやわらかなもの」展 □西村さんのサイト NPM会員展「都市のやすらぎ−札幌の水辺」=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A) 雨龍沼湿原の湿原で知られる岡本洋典さんが主宰する自然写真講座NPM(北海道・Nature Photo Masters)のテーマ展。 会期は、前半が春・夏、後半が秋・冬となっており、筆者が見に行ったのは秋・冬です。 空沼岳中腹の沼のあざやかな紅葉をとらえた「万計沼秋彩」のキャプションで岡本さんが感嘆していたように、札幌もまだまだ捨てたものではないと思いました。185万人の大都市近傍にまだまだゆたかな自然がのこされているのです。 被写体としてわりあい多かったのが、豊平区の西岡公園。岡本代表の「黎明」で、紫色を帯びて静まり返る水面を見ていると、ここが住宅地のほど近くであることをわすれてしまいそうです。 ほかにも、空沼岳を水源とする真駒内川や、十五島公園で見かけた雪原のキタキツネの足跡など。さすがに、ネイチャーフォトの団体なので、水辺と人のくらしをテーマにした写真はあまりありません。 10日まで。 □MPNのサイト |
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12月6・7日(土・日) 1日おきの更新が常態化してしまって、もうしわけございません。 初日に見に行っておきながら、つい書くのをおこたってしまった展覧会もいくつかあります。 こんどこそ、早めに見て早めに更新−というスタンスをまもっていきたいと思っています。 齊藤博之油絵展=三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3 地図B) 函館生まれ、現在は後志管内余市町にアトリエを構える齊藤さん。 道展など公募展をしりぞき、道内外での個展を中心に活動しています。昨年は、十勝管内中札内村が主催する風景画コンクール「北の大地ビエンナーレ展」で知事賞を受賞しています。 あいかわらず、ものすごい描写力です。白木の棒の上にレース編みとイチゴが載っている「白樺の苺」や、案内状に載っている「グラスの葡萄と桧」など、よほど近づかないと写真と間違えてしまいそうなほどで、果実のみずみずしさや木、ガラスといったものの質感がみごとに表現されています。これほどの写実力を持っている作家は、すくなくても道内にはほとんどいないと思います。 ただ、トロンプルイユ的に細密さをほこるのではなく、南瓜の絵などは、全体的にソフトフォーカスを思わせるタッチです。そして、縦70センチ、横1.4メートルの大作「蕗」で、葉の上でカタツムリが這った跡さえも見逃さない、生命への観察眼と、或る種の尊崇の念が、これらの絵画の根っこのところをささえているのではないか、という気がします。 ご本人は 「いやー、なんとかやってます」 と話していましたが、すでに十数点が「売約済み」になっていました。 8日午後5時まで。 ■02年12月の個展 第48回新道展「受賞作家展」=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) 毎年この時期、「紙によるインスタレーション」といった会員たちによるコラボレーションや、功績のあった会員の追悼展などをひらいていた新道展ですが、ことしはちょっと地味というか、ふつうの企画です。 それと、妙なことに、最高賞である「協会賞」を受けた堀部江一さん(苫小牧)の作品が見当たりません。 インスタレーションで佳作賞を受けた若手の合田尚美さん(札幌)は「和やかな心のための部屋」を出品しています。白い発泡スチロール製の、衣装ケースほどの大きさの部屋で、靴をぬいで内部に入れるしくみになっています。中にはプロジェクターが置かれ、そのすぐ手前に赤いスライムを入れた透明な箱が吊り下げられており、それを揺らすと、プロジェクターから発した光もゆらぐというものです。 見ていると、来場者の多くが、入り口から手を伸ばして箱をゆらしていくだけで、中に入ろうとしないようです。うーん、これは足の裏で、床に敷き詰められたビニール袋入りのスライムの感触をたのしんでほしい作品なんだけどな。 また、新道展では壁や窓をごく平面的に、建築パースのように処理していた須藤恵美さん(同)が、「玻瑠」という女性像を出品していたのも意外でした。顔の部分は細密描写なのに、背景などがラフなタッチになっているのがおもしろいところです。 おなじく一般から佳作賞にえらばれた杉本昌晴さん(同)は「椅子のある風景」。佳作賞受賞作よりもやや低い目線で、窓の外が望める室内を描いています。透視図法をていねいに用いていますが 「実際にある風景ではありません。スペインとかイタリアとかなんとなくイメージしているものはありますが」 とのこと。 ほかに、笹嶋スミ子(石狩)「太古の囁き」、大塚富雄「焼却炉」、後藤哲「墨と紙」、片野美佐子(以上函館)「テラス」、牧輝子(伊達)「メディナ」、土田裕子(苫小牧)「古代からの通信」、西尾栄司「ひこうき雲」、鴇田由紀子「バルカロ−レ・想」、山口京子「懐古」、浜地彩(以上札幌)「常識」、大西亜希(滝川)「追憶にふれる」、永井唱子(渡島管内上磯町)「デコレーションV」、渡辺恵子(恵庭)「mementoU」、森田明志(小樽)「確と立つ」。合田さん以外はすべて絵画。 ■合田尚美展(03年9月) 以下あした。 |
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12月5日(金) 訃報です。 美術家の木路毛五郎(きじ・けごろう)さんが亡くなられたそうです。 「木路毛五郎」というのはペンネームなので、気がつきませんでした。 昨年の「第6回小磯良平大賞展」で全国2席に相当する佳作賞を受賞。独特のかるみとエロティシズムを感じさせる絵でした。日本人が洋画を描くとは−という点にきわめて自覚的であった人だと思います。札幌デザイナー学院では多くの卒業生を送り出しています。 かつては、美術批評誌「THAN」を発刊、評論でも活躍しました。 筆者は、木路さんの全体像をとうてい語りえませんが、来年夏に札幌時計台ギャラリーを予約していたはずで、ご本人も志半ばのはず。 葬儀は関係者のみとのこと。ご冥福をお祈りします。 井上まさじ展、7日までです。 まだの方は、ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)までどうぞ。 もうひとつ。絵画をやる方におすすめの個展。 渡辺貞之個展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) デッサンを中心とした展示。だいたい半数が、若い人のデッサンで、のこる半分がパリの街角のスケッチです。 いやー、でもあらためておどろきました。デッサン、ウマイのです。 グレーの諧調が微妙で、陰翳がよく表現されているってことなんでしょうけど、そういう技法論にとどまらない、するどい観察の目のなせる結果なんでしょうね。 「恋」「嫉妬」「挫折」などなどの題がついた作品からは、速いが、けっして雑ではない線で描かれた人物が、話しかけてくるよう。へたな風刺画家が足元にも及ばないほど、感情が露出しています。 パリの連作のほうは、日本人独特のパリへのあこがれが充溢していて、肩のこらないスケッチになっています。 渡辺さんは深川在住、全道展会員。 7日まで。 札幌学院大学写真部学外展=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G) 宮本沙紀さんが大活躍。とくにすごい1枚があるわけでもないような気がするけれど、「量も才能のうち」だと思いました。女性を深い陰翳でとらえた連作「F」、夫婦漫才の連続写真のような軽いノリがたのしい「in the box」、カラーのサービス判約90枚をびっしりと会場の柱にならべた「私をとおしてつながっていく風景」など。とにかくいっぱい撮れちゃうんでしょうね。そういう時期をだいじにしてほしいと思いました。 ほか、大谷剛矢さん「Gloomy“no”Round」は展示の仕方にくふうあり。モノクロ。 山本早奈恵さん「no yourself no myself 4-powell」もモノクロ。無人の電車(バス?)のなかを撮っているだけなんだけど、なぜか心がひかれます。 竹田歩さんのカラーの夜景も、無機質なさびしさがただよっていて、おもしろいと思いました。 1、2年生はモノクロの焼きにまだ向上の余地があるようです。 7日まで。 第18回グループ「游」書展=札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G) 上戸抱山、栗村一山、小林〓〓(1文字目はさんずいに「邑」、2文字目は「愁」の下半分が「山」、佐々木信象、須田廣充、高谷義仁、綱渕真由美、長澤玄來、星野壮風、松尾大山、村上弘江、茂垣孝之、吉野祥琴の13氏によるグループ展。かなはなく、漢字、近代詩文が中心です。 ことしの「札幌の美術」にも出品した須田さん。「ああ傷ついた精霊よ」など5点は、5点で1組。アメリカインディアンの聖なる教え−と末尾にあります。臨書「灌頂記」は、巻紙がインスタレーションのように展示されているのがユニークです。 佐々木さんの「一衣帯水」は、薄すぎとも思えるほどの淡墨と、筆致の強さのミスマッチがおもしろいです。 高谷さんの「原爆小景」(原民喜の詩)も淡墨。たどたどしい感じすらありますが「水ヲ下サイ アア水ヲ下サイ」という詩行には流麗な文字はかえって不自然かも。 綱渕さんは、目録のほかに「ぜんまいののの字ばかりの寂光土」(川端茅舎句)も出品しています。 7日まで。 第1回村上碧舟書作展=同 これまたユニークな書展。色の着いた紙などもつかって、見た目にたのしい個展になっています。 「學」は鳥虫篆という字体で、まるで絵文字のよう。モダンな美しさもありながら、筆致は力強いです。 「菜根譚」は、中国の名高い人生訓の書物ですが、これを2尺×8尺10枚の黄色い紙に書き、リズム感にとんでいます。 特記しておきたいのが、最澄の「空海請来目録」の臨書。じつは筆者、ふだん臨書なんてあんまりまじめに鑑賞しないんですが、そういう素人の筆者にもわかるほどみごとな臨書です。あとで図録を見たら師匠の小原道城さんが 「王羲之を学び尽くした筆者の精神的な背景までも、書法と共に再現して圧巻である」 と書いておられました。 村上さんは札幌在住、北海道書道展会員。 創立20周年臨川書道会会員展を併催。 7日まで。 書展がつづきますが、スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)では、第27回北玄12人展がひらかれています。 在田佳子、斉藤昭宴、東海林淳子、田中真奈美、津山和惠、宮沢爽光、吉田美紀子(以上札幌)、大川宣子(岩見沢)、鈴木大有(函館)、滝野喜星、矢野鴻洞(以上旭川)、増子壽蓉(千歳)の12氏。漢字小字数書、臨書、かな、近代詩文と、多彩です。個人的には、津山さん(北海道書道展会友)がじぶんのスタイルをもっているなという感じがしました。 7日まで。 つづきはあす以降。 |
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12月4日(木) 今週の札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)は、見ごたえたっぷりです。 すべて6日まで。 A室は、北山寛一展 筆者の感想は、「『内なる風景、自然』を十全に表現しえた、美しい絵が多いなあ」というもの。 ロマン派好きの筆者としては、ひじょうに堪能しました。 風景などがリアルなタッチで描かれていますが、ありのままをうつしたものではありません。 左の画像は「海の見える野」と題された100号クラスの1点。 筆者には名もよくわからない(たぶんヒメジョオンとかアザミのたぐいだと思いますが)野の花がいっせいにさきみだれています。相当に小さくですが、人物が2人います。日が、まさに水平線にしずもうとしているところで、雲は薄紫色にかがやいています。 これは、20年も30年も前に北山さんが小規模校の教員として赴任していた石狩管内厚田村聚富(シュップ。シップとも)の丘の風景なのだそうです。ただ、植物は遷移します。 「いまはこんな眺めではありません。時が経って、心象風景になりました」 それにしても、なんとなつかしい風景なのでしょう。 小品では、シラカバの林を題材にした「知床の森」「樹影」などがあります。明るいグリーンのくさむらに点在する野の花がうつくしいです。「知床の森」では、むこうを白馬がよこぎります。 以前の作品では、川辺で虫取り網を持った少年があそんでいたりしたものですが 「子どもたちも大きくなりましたからねえ」 と北山さん。 また、少女のうつむいた顔を描いた小品「追憶」は、デカルコマニーのような技法を駆使し、幻想的な雰囲気が、つよく脳裡に残ります。 ほか、エッチング、デッサンなど、盛りだくさんの個展です。 B室は、佐藤泰子展。 佐藤さんは、ことしの自由美術協会展で「finish」2点が、協会賞に輝きました。 自由美術協会賞は、会員と一般出品者を区別せずにえらぶ最高賞で、年ひとりです。 おめでとうございます。 右は、その1点です(あとの1点は巡回中)。 佐藤さんといえば、鮮烈な朱、赤系の抽象画という印象がありますが、今回の個展は、受賞作をふくめ、色彩のバリエーションがかなり広がってきたという印象を受けました。 「9月に体調をくずして、一時はどうなることかと思いましたが、春先にフェルマータ(札幌芸術の森にあった画廊喫茶。昨年暮れ閉廊)でひらく個展のために用意してあったパステル画が何点かあったのでたすかりました」 受賞作もパステルなのですが、ほかの油彩とくらべても、なんら遜色のない出来です。 佐藤さんの絵は、まぶたを閉じたときに網膜に見える残像のようです。重ねた色の下地が、透けて見えるのは、絵画ならではのおもしろさだと思います。 右の画像の、朱色の絵は 「finish STOP THE WAR」。 題に佐藤さんの思いがこめられています。 来年4月、おなじギャラリーで、「さくらさくら」と題した恒例のパステル画展をひらきます。 C室は勘野悦子展。 ご主人の転勤先だった北見に住んでいたとき、故・松田陽一郎さんの手ほどきをうけたのがきっかけで水彩画を描き始めた勘野さん。石狩・札幌のPTAの知り合いたち5人ではじめたあつまり「Grouping」で、新道展に新風をふきこみ、現在は新道展の会員です。 これが意外にも初の個展。「初めて描いた」という花の静物小品をふくめ、16点を展示しています。 いわゆる水彩絵の具だけではなく、アクリルなども併用しているとのことで、堅牢なマティエールと、緻密な筆遣いで、独特の世界をかたちづくっています。 左の絵は「飛ぶことを止めた時」。下のほうの升目には、数字を書いたカードがちらばっていて、なにやらなぞめいた雰囲気を感じさせます。 最新作「感覚の選択」は、うねる縞模様を背景に、3人の人物が仮面をかぶったり外したりしているさまを描いたもの。アクセントとしてつかわれている道路工事用のコーンなどはひろってくるとのこと。コミュニケーションに齟齬(そご)をきたしている現代人をさりげなく諷刺しているようでもあります。 水彩連盟展準会員でもあり、11月には同展の新鋭グループ展(東京・銀座)にも参加してきました。 D室は山下康一作品展。 山下さんは長野県大町市在住。水彩画26点を出品しています。およそ半数が、しずかな風景画。のこる半分はドイツに旅した際のスケッチです。 どうして長野の人が札幌で個展を−と思いましたが、彼の絵を自宅に掛けていた人がおり、友人たちにファンが増えて、山下さんをまねいての個展ということになったそうです。これはめずらしいですね。 筆者が目をとめたのは、冬の景色でした。 「冬の林」など、雪が降りだしてきて、全体が薄明るくなってきたころあいの空気感をたくまずに描いていますし、「冬の川」と題された絵は、昼でも薄暗い冬の景色を、しずかな筆遣いで描写しています。 「或る風景を見てぱっと描くんじゃなくて、いったいどこなのかわからなくなるまで心に沈潜してから描くのが理想です。僕の絵は、引き算の絵なんです」 と話すとおり、構図などはごくシンプル。とりたててスーパーリアルというわけでもありませんし、絶景をモティーフにしているわけでもありません。でも、冬らしさの最大公約数のようなものが、表現できているのだと思いました。 E、F室は、杉浦篤子キャンドルクラフト「増燭U」。 会場を暗くしておびただしいキャンドルを床にならべたインスタレーション。 うーん、なごみます。炎がゆらめているのは、一部なんですけど。 第5回グループ「櫂」日本画展 15人による恒例のグループ展。 植物を写実的に描いた作品が多い中で、竹澤桂子さん「World」は携帯電話をモティーフにした2枚組み小品。現代につながる−という意図を感じさせます。 あと、6日限りの展覧会をもうふたつ。 高橋靖子展 グワッシュ・紙・コラージュ=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A) こまかい線の集積によって日常の営みをつむいでいく抽象画「記」シリーズを描いている高橋さん。 近年は、単純な線の反復から、それぞれの線が文字になるなど、規則的なくりかえしの性格がうすれてきていましたが、今回の、22点の絵からなる個展では、それがさらに加速しています。 「記’03 ]T」にいたっては、すべてが文字になっています。ほとんどが英文です。 たねをあかせば、猫について書いた洋書からの抜き書きとのこと。英語が堪能な人に読まれてもいけないので、ばらばらにピックアップしています。キャンバスにあるのは、色彩と文字だけ。それでもなお、絵画であるということのおもしろさ。 「猫が好きなんです。でも家族のつごうで飼えないんですよ。以前は、宇宙につきつめていくというか、そんな絵を描いていましたが、だんだん堅苦しく感じられて」 と高橋さん。英文の中に、フランスの俳優の名前がまじっていたり、単純な日付が描かれていたり、漢字などもまじっています。つい読んでしまうのですが、ここにならんでいるのは、意味を離れたフォルムとしての文字なのです。 同時に、以前は目が痛くなるような、補色どうしの組み合わせが多かったのですが、今回は紺に白など、だいたいおちついた色彩配置となっています。 高橋さんは江別在住。自由美術と全道展の会員。 6日まで。 ■札幌の美術03(画像あり) ■03年8月の自由美術北海道展(画像あり) ■02年の自由美術北海道展 Photo Flavor#1展=ギャラリーART−MAN(中央区南4東4 地図G) 札幌の若手女性5人による初顔合わせのグループ展。 すでにファッションフォトの分野で活躍している岩田英美さん。壁に貼ってある和服の女の子の連作はそれほどでもないけど、ファイルに入っている写真や、手作りの写真集がおもしろい。少女の焦燥、叫びというか、若いときでしか撮れない写真がつまっていました。 本庄友美さんはモノクロの裸婦3枚。ボディーに黒いラインがひかれているのがユニークです。これはまったく個人的な好みなのですが、焼きがちょっと濃いような気がするんですけど、女性が女性を撮るとこんな感じになるのかもしれません。 ほかに、梅谷由紀子さん、杉山梨奈さん、鴻上歩さんが出品。 6日まで。 |
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12月2日(火) 筆者の怠慢で、紹介が遅れてしまって申し訳ありません。 いずれも2日で終了しました。 大谷泰久・孝子染色展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B) 旭川に工房・ショップをひらいている大谷さんご夫妻の二人展。 「いっしょに仕事していると、色づかいなどは似てくるかもしれませんね」 とのことでしたが、魚群などのモティーフをすっきりと見せる泰久さんと、ひな祭りや北海道の自然などをシンプルなかたちで作品にとりいれるる孝子さんとは、やはりよーく見るとちがいます。いちばん大きな「桜」は、孝子さんの作品。天井からつりさげて、床につかないようにするのがやっとという大作ですが、とうてい1枚の型では染められないので、何枚かの型をつなげているのでしょう。 かわいらしい、クリスマスにぴったりのコースター(600円)から、のれん、ストールなど。 可窯・岩井孝道の器展=同 空知管内長沼町に「可窯」をひらいている岩井さんは、メロン灰をつかった清新なうつわで知られています。今回もたくさん出品されていましたが、トマト灰をもちいたうつわにチャレンジしています。 写真の奥にある、おちついた色合いの平皿や丸皿、花瓶などがそれです。 岩井さんのご近所にトマトを、土をつかわずに、セラミックスと水で栽培している農家があり、そこからもらってきた茎を、10月から半年かけて乾燥させるのだそうです。 「土を使っていないということは、焼くときに不純物がないということなので、都合がいいんです」 ということでした。 もうひとつのこころみは、やはり町内の木工作家、木下肇さん、村木昭夫さんとの合作で、壁掛け型の花器をつくったこと。あまりごてごてしない、シンプルさが、岩井さんらしいと思いました。 □作者のサイト トピックスに大量の情報を追加しました。 伊藤隆介さんの映像個展も見逃せませんが、「おー」と思ったのは、いまメディアへの露出がものすごい森美術館の館長エリオット氏が帯広で講演するというニュース。 筆者は芸術の森美術館アーティストトークに行くことになっているのですが、だれか聴きに行って、当サイトにリポートしません? 筆者としてはインタビューしたいくらいですが、なにせ当の森美術館、まだ見てないので、ダメでしょうね。 |