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あーとだいありー 2003年11月後半

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 11月30日(日)

 以下は宿題です。

 北方圏アートプロジェクト 国際美術展2003
 レジーナ・フランク「沈黙の共有」

 11月29日(土)

 ウィリアム・デニスク展=ふるさと物産館ビューロー(空知管内南幌町中央1の3の2)
 米国生まれ、フィンランド在住の環境アート作家が、10月南幌に滞在していました。毎日新聞によると、町内に残る駅逓に泊まっていたそうです。
 作品は、4階の窓10個の下方、縦1.2メートル、横およそ60センチに、すりガラスをぴたりとはめ込み、さらにその一部に、景色が歪んで見える5センチの正方形のレンズを格子状に設置しただけの、いたってシンプルなものです。
 ただし、窓によっては、そのレンズがなく、すりガラスだけだったり、レンズが一部抜けていたり、微妙にことなります。
 ちょうど目の高さにそのレンズがあるので、窓越しに外を見ようとすると、景色が二重に見えたり、曲がって見えたりします。
 会場の建物は、5階が展望台になっているくらいで、4階からでも町内が一望に見渡せるのです。
 それは、見る人に、そもそも視覚とはなんだろうという、美術作品にとって根源的な疑問を突きつけずにはおれません。
 わたしたちがふだん疑ってみることもない、風景の見えかたというのも、あるいは、或る特定の条件下における、特殊なものではないのか、という疑問です。
 もちろん、その問いは、容易に答えが出るものではないのですが…。
 もうひとつ、格子状のレンズの配置に、南幌の町の形状が反映されている−と見ることもできるでしょう。
 南幌の町は、街路が規則的に走り、各ブロックが正方形になっています。この人工的な町の様相は、札幌など、明治以降に開拓がはじまった道内多くの町に共通しています。
 コロニアル的な町のかたちが人間の認識をひずませる−といったら、言いすぎかな。
 30日まで。

 
 11月28日(金)

 北海道フォトコンベンション2003=札幌コンベンションセンター(白石区東札幌6の1)
北海道フォトコンベンションの会場で来場者に説明する廣島さん 北海道の写真の振興をはかる目的(だと思う)で、ことし初めてひらかれた催し。
 もう、なんでもありの感じ。だれかが
「学園祭みたい」
って言ってました。大ホールには、各市町村や市町村の観光協会などによる風景などの紹介ブースが43あるほか、カメラメーカーなどによる最新機器の展示、ステージではスライドショーやトークショーなどなど・・・。
 「みんなに見せたいお気に入りの北海道『1000人の写真展』」と銘打った巨大な写真展のコーナーもあります。これがまた、みなさんうまいんだよな。実際は複数出品している人がけっこういるから「1000人」とはいえそうもないけど。1点1点じっくり見ていくヒマがありません。
 ただ、このサイトを見に来ている人にとっていちばん関係のあるのは、「写真のフリーマーケット」と銘打っておこなわれている「ふぉとま」のコーナーでしょう。
 直接、間接の知り合いや、小樽の鉄路写真展などで見たことのある人の写真が、所狭しと展示され、ポストカードやプリントなどが売られています。
 54のブースがありますが(ただし、1団体や個人で複数使用している場合もあり)、いちばん見てよかったのは、仙北慎次さんのブースでした。
 道内を代表する中堅写真家のひとりと言ってさしつかえないと筆者は思いますが、今回もネガカラーによる廃墟や風景の写真は、感傷の一歩手前で的確にその場所特有の空気感をとらえきっていたと思います。
 めだっていたのは、Satoshi Matsuyamaさん(松山敏)で、6つのブースを借り切っていました。“軒先”を知り合いに貸すというやさしいところを見せていました。ハワイの風景をもとにコンピュータグラフィクスであざやかな着彩をほどこした大作は、だんとつの迫フォトコンベンションの「ふぉとま」会場力でした。
 3D View Boxの発明で知られる廣島経明さんも、ただプリントやポストカードを売るだけではなく、ポジフィルムを1枚ずつ切って試験管やガラスの小びんに入れておしゃれな小物に仕立てるなどのくふうがきいていました。
 「ORIENTAL NOUVEAU」なる聞きなれないグループが4ブースを占めていましたが、これは、藤倉翼、佐々木郁夫、森美千代、真野朋子、宮澤修一、松下芳真、神田泰行の6氏によるグループ。みなさんうまいですが、とりわけ神田さんの焼きのうまさには舌を巻きました。
 うかつにも知りませんでしたが、焼きのうまさでは、札幌ビジュアルアーツ専門学校の1年生諸君も負けてはいません。筆者は彼らの存在を知りませんでしたが、技術という点でも、写真そのものの出来でも、大学の写真部のみなさんにひけをとらない水準だと思います。
 ほかに、北海学園大学U部写真部が健在ぶりを示していたほか、北大、北海道教育大、札大の写真部、加藤D輔さんと加藤美奈さんの共同ブース「加藤写真商店」、浅野久男さんらのグループ「passage」と、札幌平岡高校写真部など、おなじみの顔ぶれもかなりありました。
 あと、通路で、露口啓二さんの、インクジェットプリントによる「地名」シリーズの展示がおこなわれていたことにも触れておきます。会場内には、北海道の風景のうつくしさをとらえた膨大な数の写真がならんでいますが、無造作にレンズを向けると、これほどまでに北海道の風景が醜くなっていることについて、わたしたちは考え直さなくてはならないようです。アイヌ語地名の起源となった地形がはたしてのこっているのかどうか…。
 30日まで。詳細はこちら

 谷口一芳展ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL 地図D
 84歳のベテラン画家。イマジネーションの飛翔に、あらためて舌を巻きました。
 たとえば、「湿原秋霜」という絵があって、茶色の湿原に、フクロウの文様がきざまれた巨大なモニュメントがそびえたっているのですが、これは何かといわれても、答えようがないんですね。もちろん、現実の風景ではない。といって、超現実主義の絵のように想像力をどこまでもふくらませた絵というわけでもない。いわば、谷口さんの、鳥を愛する精神が、絵のなかに無理なく結実してしまったとしか言いようがないように思えます。
 これは、1999年の「白日夢(刻)」にも言えることでしょう。同じ年の全道展出品作と同様、石山緑地に着想を得ていることは明らかですが、谷口さんの画面は、現実の石山緑地をはるかに超えて、フクロウの意匠を画面に配置し、遠くにはピラミッドまで描いています。さきほど「鳥を愛する精神」などと書きましたが、そんなことばで割り切れる絵では、とうていないのです。
 今回の展覧会には、80年前後の、鳥を描いた作品もありますが、近作のほうが充実しているように感じました。
 さらに、初めてキャンバスに描いたという、1949年の「蔵」、まだレンガつくりだったころの「五番舘」(52年)など、なかなかお目にかかれない作品もありました。
 他のおもな出品作は次のとおり。
 2003年「対話」「共生の神々」「昴」「ある肖像」「共生の道標」
 2002年「DANCE」「Come Back Forest」「仮面A」
 2000年「円らな目差」
 1999年「梟の館」
 97年「共生」
 90年「早春賦」
 82年「春をまつ」
 79年「凍土の春」
 版画「FACE(コミミズク)」「LOVE」「学鑑」「OWL(A)」「OWL(B)」「書票」

 谷口さんは春陽会、全道展の会員。札幌在住。
 30日まで。

 11月27日(木)

 きのうの続き。

 Christian von Sydow&Co. ガラス作品展 vol.2スウェーデン交流センター
(石狩管内当別町スウェーデンヒルズ・ビレッジ2の3の1)
 クリスティアン・フォン・スィードゥさんは1950年スウェーデンのルンド生まれ。陶芸家として出発したあと、ガラスの工房をひらき、昨年からは同センターの20代目インストラクターとして活動しているそうです。スィードゥさんと、工房に所属する日本人3人のグループ展であります。
 スィードゥさんは、黄色や緑など発色のあざやかなうつわ「スピン」「スポット」、どこか日本の工芸品のようなたたずまいを感じさせる「エド」「ギンザ」、サンドキャストなど多彩な技法をもちいた「コヤ」など、いろいろな種類のオブジェやうつわを出品しています。「コヤ」は、題のとおり家の形をしています。ガラスで家のかたちをつくる人はほかにもいますが、「コヤU」は、中央に見える青いコイル状のものがうつくしいです。
 甲斐裕士さんは1970年、熊本県出身。「マリーム」は、グラスですが、底部のまるいかたちがユーモラスです。
 大西隆善さんは73年愛媛県生まれ。「紅葉のためのうつわ」は、秋にふさわしい花器です。
 鎌田美樹さんは77年埼玉生まれ。「つるくさのうつわ」などを出品しています。
 30日まで。

 スウェーデンヒルズとは、札幌の郊外にあり、スウェーデンふうの家が緑のなかに建つ、ユニークな宅地です。家と家の間隔がふつうの住宅地の5倍はありそうで、景観のうつくしさもきびしく保たれています。
 ただし、札幌の都心から車で1時間ちかくかかります。石狩太美駅から連絡バスがあるそうですが、筆者は乗ったことがありません。

 水明窯 尾形修一陶展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A
 札幌在住の陶芸家。これぞ備前といった、土味のよく出た壺や皿、うつわなどがならんでいます。

 第6回アートグループ月ノ舟展=同
 奥にかざってある抽象画が目を引きました。おそらく浅野美英子さんの作品と思われますが、表示がなかったのでわかりません

 いずれも30日まで。

 自我の形象展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A
 オーナーの竹田博さんの絵「80歳の青年八木保次と62歳の少年竹田博」がおもしろい。オレンジのグリザイユといった感じの描法ですが、二人の雰囲気はよく出ています。八木さんはほんとうにお若いですからねえ。永遠の画学生のようです。
 脇坂淳さんの木彫もユニーク。「鼠小僧現る」など4点ですが、枝のかたちなどをそのまま生かしています。
 岩佐淑子さんは、鉛筆デッサン2点。本領の水彩画を思わせる丁寧な筆致です。
 ほかに、天谷ちづ子、井村郁子、工藤弘恵、笹岡素子、進藤英俊、竹内はるみ、高坂史彦、野口耕太郎、林教司、平原郁子、横山隆の各氏が出品。進藤さんのように、マッキントッシュによる実験的なアニメーションもありますが、たぴおのグループ展としては平面が多いです。
 29日まで。

 本間弘子リトグラフ作品展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 小さめのカットはとてもかわいらしい、まるっこい絵柄。北海道新聞生活面の「こどもクリニック」のさし絵を毎週担当しているのでご存じの方もいらっしゃるでしょう。で、やや大きい絵のほうはいくぶんシリアスな雰囲気。ことしの全道展入選作「海の帽子」もこの系列です。
 両者から受ける印象はだいぶちがいます。黒に紫をまぜているという、独特の輪郭線や、ところどころに墨をこぼしたような図柄は共通していますが…。どっちがほんとの本間さんなんでしょう?
 「そりゃ、小さい方ですよ。でもマンガみたいだって言われて、そうじゃないのもかいているんです」
 個人的には「マンガみたい」というのは、褒め言葉じゃないかって気もするんですけど。でも、ギャラリーに入るなり「マンガか」と言って出ていく人もいるということですから、心中穏やかじゃないかもしれませんね。
 大きいサイズの作品も、人物がおもなモティーフ。少年は元気さを、青年男性はどことなくアンニュイな雰囲気をただよわせています。ともあれ、見たらすぐ本間さんの作品だって分かるってことは、たいしたものだと思います。
 会場ではポストカードも発売中。
 □サイトはこちら

 伊藤幸子展=同
 全道展、行動展に出品している苫小牧の女性の個展。ことしの全道展入賞作「夢幻」など、100号クラスの大作がならびます。計16点。
 絵に登場する女性が独特の雰囲気をもっています。古代ギリシャの彫像と共通する典雅さがあります。というか、石膏デッサンの面取りの仕方と、描法が似てるんですよね。よく見たら、頭部と首がおんなじ幅です。つまり、首が太い。
 大作は「兆(きざし)のある風景」など。茶系・青・白を中心に、色数を抑えて画面に統一感を出しているのは、好感が持てます。
 個人的に好きなのは、やや小さめの作品「過ぎ去りし刻」。女性の頭部像です。ルネッサンス期を思わせる優雅さがただようのは、とりわけこの絵でもちいられている絵の具の発色がうつくしいからだと思います。とりわけ青。ラピスラズリのようです。

 以下、簡単に。
 「光と陶の和」は、高柳滋美さん(渡島管内七飯町)のステンドグラスと、山田敦さんの陶芸の二人展。
 サークルげん展は、中野頼子、田中恵子、横山真佐子、塚原宏平の4氏が油彩などを出品。横山さんの「KIrei」「あかい空とあかい屋根」などに幻想性がただよいます。
 セピカ展は、村本千洲子さん(全道展会友、札幌)の教室展。村本さんは「花を持つ女」を出品。
 キャンバス会展は、斉藤章恵、佐々木千寿子、加藤清人、二又直子、館村楠緒子の5氏。加藤さんは物語性を感じさせる、やや暗めの絵が多いです。描きたいものがあって描いているんだなあという感じがします。

 いずれも29日まで。

 ところで、業界(?)で話題になっているのが、時計台ギャラリーのA室です。
 こんなことを書くと、A室の作品をけなしているみたいですが、けっしてそういうことではありません。また「だから北海道の美術界は…」とか、したり顔で解説する手合いが出てきそうですが、とりあえず、書いておくことにします。
 時計台ギャラリーは、貸し画廊ではありますが、道内でもっとも有名なギャラリーのひとつです。歴史は、スカイホールよりは新しいですが、道内の実力ある画家が個展、グループ展をひらく回数では、他のギャラリーをはるかにしのいでいます。また、昼休みや仕事帰りなどにふらりと立ち寄る愛好家の多さでも群を抜いています。
 7つの部屋があるというのも道内では最大。そして、部屋ごとの格式もあります。ベテランの個展はA室かB室。教室展などはC−G室です。インスタレーションなどの作家でときにG室をつよく希望する人もたまにいますし、徳丸滋さんのようになぜか毎年E・F室と決めている方もいますが。
 厳冬期はべつにして、駆け出しの作家がA室を貸してくれとたのんでも、おいそれとは借りられないことが多いとききます。
 ところが、今回のA室は、これまであまり例のない、工芸の、うつわや置物を中心とした二人展。「時計台さん、いったいどうしちゃったの」っていう感じが、正直なところいなめませんでした。
 まあ、どうでもいいっていえばどうでもいいんですけどね。


 11月25、26日(火・水)

 北星学園大学附属高等学校<第6回>原始林展 中野邦昭日本画展・山田聳宇近作書展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階  地図B
 あれ、ちょっと前まで「北星新札幌高校」だったような…。もっとむかしは「北星男子高」といって、琴似駅(国鉄)のちかくにあったんですよね。学生運動華やかなりしころは、制服自由化運動でも先駆的な役割をはたした高校でした。
 ま、そんな昔話はおいといて、この高校で美術・書道の指導をしているというだけで、2年に1度個展がひらけるというのは、うらやましく思う人もいるでしょうね。
 でも山田さんはわらいながら
 「会場代とかはただなんだけど、表具代はじぶん持ちだから…。そうとうかかるんですよ。でも、いつ死んでもいいようにやってますから」
と話します。
 山田さんは、公募展に所属せず、じぶんの書を追求しています。
 書壇には、かなとか近代詩文とかのジャンル分けがありますが、山田さんの個展の作品は、そんな区分けがとても小さなことに感じられるような気宇壮大さがあります。
 たとえば、芭蕉の句は「この道弥行人那四仁秋乃暮」(「この」は、ちがうかもしれない)と書かれています。万葉仮名でも、近代詩文でもありません。
 気負いのない書きぶりは、筆者には山口子羊とか藤根凱風といったあたりを思わせるのですが、ご本人がお好きなのは日比野五鳳(1901−85年)なんだそうで、岐阜県にある五鳳の記念館には何度も脚を運んでいるとか。
 アレ、でも五鳳って、かな作家だったんでは。
 「かなでも読める書を書いているし、幅の広い人なんですよ」
 あるいは、「平家物語」のあまりにも名高い書き出しを題材にした大作。これも、もとより近代詩文ではないのですが、行草書とかなを織りまぜ、違和感がありません。むしろ、筆者のようなしろうとの目には、語のとちゅうでへいきで改行する「かな書」よりもよっぽど自然にうつります。

 いっぽう、中野さん(道展会員)の日本画展は、既発表作が中心です。川べりの雪解けを描いた作品などは、落ち着いた描写です。
 中野さんが指導する高校生の日本画も展示されています。干場清順さんの「兆し」などは、わかいイマジネーションが爆発し、高校生離れした佳作です。

 いずれも30日まで。

 −陶− 雪ノ浦裕一と藤田直平の二人展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階  地図B
 雪ノ浦さんは旭川生まれ。岩手大を卒業後、道工試野幌窯業分場で研修し、現在は盛岡市で如月窯をひらいています。作品は、粉引と、天然の木灰がふって美しい景色をうんでいるうつわが中心です。
 藤田さんも、道工試野幌窯業分場での研修をへて、根室管内中標津町に開陽窯をひらいています(ちなみに開陽台というところは、330度の眺望から地平線がみわたせるという、およそ日本離れしたすばらしい景観の展望台です)。こちらは、素焼きのワイルドなうつわもあります。全体的にはシンプルなうつわが多いという印象を受けました。

 高山洋夫展=同
 札幌在住の抽象画家。
 ひとくちに「抽象画家」といいますが、高山さんはこれでプロ画家としてやっているので高山洋夫「沈黙の音」シリーズすから、すごいと思います。
 今回は、会場の都合で急きょきまった個展でしたが、それでも15点すべて新作をそろえるあたり、さすが。
 いつものように「沈黙の音」という題が全作品についています。
 細長く切った板に、砂と絵の具を塗って表面に凹凸をつけたものを、支持体にもちいています。乾いて、下地ができるまで半年以上かかるという、労作なのです。
 その上に、黒や灰色の地に、さまざまな色の躍動的な線をちらし、深みと広がりのある絵画空間をつくっています。
 なにせ、下地に砂が入っていますから、画面のたたえる重量感は、かなりのものがあります。
 近年の特徴として、上の写真の左から3番目の作品にあるような、あざやかな有彩色を大胆につかった絵があります。朱やビリジャン系の色を平滑に塗っているのですが、単調さはありません。
「最低10回は塗ってるな。でないと、深みが出ないからね。こんなんでも、完成までには1年はかかるよ」

 いずれも30日まで。
 ■02年3月の個展(画像あり)


 齋藤周「横移動の時間軸」=Capybara Cafe(石狩市花畔1の1 Art Warm
 アートウォームは、ふるいレンガの農協倉庫を転用して、石狩のあらたな文化拠点としたも齋藤周展の会場風景の。まさか壁に直接絵を描けないだろうし−と思って見に行ったら、極端に横長の支持体を、これまた横に、すこしずつ上下にずらして、壁ぎわにつるしてありました。
 細長い支持体の裏と表の両方に絵を描いて、台の上に乗っけてあるのも2点ほどありました。うむむ、「絵画の物質性」ということを、つい考えさせられます。つまり、キャンバスもじつは物体だ、ということ。
 描かれている絵は、おもに白い地と、黄色とオレンジの、風景のような模様。齋藤さんらしい、細い線もところどころ顔を出しますが、これまでにくらべるとややすくない印象を受けました。
 さっき「風景のような」と書きましたが、一般の風景画からうける印象とはもちろんちがいます。横につながっているからといって、絵巻物のような展開があるわけでもないのです。しかし、横のつらなりという形態は、たしかに風景のひろがりを連想させます。いわば、普遍的な風景というか。でも、齋藤さんの絵は同時に、すごく会場に存立を依存する部分の大きい、サイトスペシフィックな作品でもあり、そこがおもしろいところかもしれません。

 齋藤さんは、村上隆氏らが仕掛けているアートのおまつり「GEISAI」に参戦してきたそうですが、その報告については、「bond」のページにのっています。下のリンクからどうぞ。

 ■03年5月の個展(画像あり)
 ■02年10月の個展
 □作家のサイト
 □「GEISAI」リポートが掲載されているウェブマガジン「bond」
  地下鉄南北線麻生駅からバス(麻15、麻13、麻08、麻17)で約30分。「花畔中央(ばんなぐろちゅうおう)」下車徒歩4分。
 麻生駅の北寄り出口から出て、1番か4番のバス停から乗ります。
 片道380円。札幌市外のため、乗り継ぎ券もウィズユーカードもつかえません。
 駐車場はひろいです。


 11月24日(月)

 まだ書いていない展覧会を紹介します。
 いずれも25日で終了。おそくなってごめんなさい。

 藤井葉子展 FIBER WORKS 生命体’03―象(かたち)=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A
 藤井さんはテキスタイルとかファイバーアート作家ですが、一般的な染織作家とはこと藤井葉子展の会場風景なる独自の活動をつづけています。
 今回は、麻と真綿を、マジックシートという糊入りのシートで薄い縦長の円盤状にかためたものを、約300枚こしらえ、インスタレーションにしました。
 天井から絹糸でつりさげているほか、床に置いた白い台の上に置き、さらに壁のほぼおなじ高さにランダムに貼り付けています。貼り付けてあるあたりには、赤い糸が一直線に貼り付けられています。
「見た人に自由に解釈してほしいのですが、赤い糸は命のつながりみたいなものの象徴というふうにもとれると思います」
 白い台の上に重ねてあるシートのなかにはオレンジ色の卵がかくされていることからも、会場全体で、生命のようなものをあらわしているといえそうです。もっとも、白っぽい色からは、北国の雪景色も連想できます。自由な想像をかきたてる、興味ぶかいインスタレーションです。

 藤井正治個展=同
 上のフロアでは夫の正治(まさじ)さんの個展。
 この十数年間制作した油彩が展示されています。
 90年代以降は、ピエロ・デッロ・フランチェスカや有元利夫に共通するような、静かで、宗教的な雰囲気がただよいます。べつに十字架とか教会とか、そういうモティーフが出藤井正治「日曜日の寓話」てくるわけじゃないので、どこが宗教的なんだと問われるとこまるのですが。
 ただ、おおまかに言うと「縦と横の、静的な構図にして、うごきは、背景に配した曲線で出すようにしてみました」という作家のお話なので、スタティックな画面になっているんですね。
 右の絵は「日曜日の寓話」。両手を広げて宙にうかぶ人物から下に向けて三角錐型の光がひろがり、画面下方には、大きな煙突を持った二階建ての古びた家、電柱、白い卵と赤い果実が、それぞれのスケール感を無視して描かれています。これらは、小品の「卓上の風景」とも共通するモティーフで、ふしぎな幻想性とリアリティーとをかもしだしています。
 ほかに「語り継ぐために」「横向きの風」「朝のアルバム」など。
 なお藤井正治さんは、18−23日にコンチネンタルギャラリーでひらかれていた「六稜美術展」にも小品を出していました。

 M.E.X #23 第23回存在派展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B
 「存在派」は、札幌の金子さんが中心となって毎年ひらいている現代美術のグループ展で、この手の展覧会としては息の長いものです。「MEX」は、存在派の英訳の略称です。
 その金子さん、ずっと立体をつくっていたのですが、ことしあたりからすっかり絵画の世界に回帰したようで、9月の個展のさいに出品したポップな小品を中心に出品しています。
 あたかも金子さんに代わるように木彫の荒削りな立体を出品しているのが、ギャラリーART−MAN(中央区南4東4)主宰者の野口耕太郎さんです。刃物の跡も生々しい丸太の十字架は、周囲を圧する迫力でそびえたっています。
 特筆しておきたいのは、林玲二さんの連作「土−『振動尺』へのオマージュ」が、抽象画としてかなりの高水準に達していることです。
 例によって、コンピューター・プリンター用の用紙を支持体につかっています。左側には、8枚組。右側は、2メートルをはるかに超す長い紙が、壁におさまりきれず、床の上にまでのびて、10枚ならんでいます。
 左側の8枚組は、これまでと同様、1枚ずつが完結したイメージを持ち、手がたくまとめられているようですが、右側の大作は、全体でひとつの作品という感じです。模様や線が描かれているのではなく、実物の土を表面にまぶすなど荒々しいマティエールがほぼ全面にわたっています。重厚な作品です。
 この反対側の空間に展示されているのが山岸せいじさんの「次へ」。パネル3枚からなる大作です。
 近年の山岸さんの作品に多い、あかるい色の飛沫を全面に展開した、ジャクソン・ポロックとも共通する絵です。これまで紙の地のままだった背景に、薄い色が塗られるようになったのは、新しい展開だと思います。
 川村雅之さんは、透明な樹脂による絵画のほか、透明なフィルムにドローイングを描いて裏返しに貼った「fazz」「love letter」など。構図や色彩が関心事ではない、ユニークな絵画です。
 斉藤邦彦さんは「ライブ ライブ ライブ」と題した抽象画2枚を出品。暗くしずんだ色調でうまくまとめています。
 常連では、太田ひろさんが楽器兼立体を、樋爪俊二さんが台湾とおぼしき旅行で撮ったスナップや女の子写真を、楢原武正さんはさびた針金によるオブジェを、それぞれ出品しています。
 ほかに、瀬野雅寛、金田有生、ニムエヒロミ、椿宗親の各氏。案内状に名前のあった麻生クミさんの作品は見当たらなかったようなんですけど…。

 ■金子辰哉さんの個展(03年9月)
 ■金子さんが出品していた「北海道抽象派協会展」(03年4月)
 ■昨年のMEX
 ■2001年のMEX

 第32回北海道書道連盟展=丸井今井札幌本店 南館4階イベントスペース(中央区南1西1 地図B
 これまで毎年、丸井今井札幌本店の大通館か一条館でひらかれてきたのですが、ことしは斜め向かいの旧長崎屋が会場です。場内放送のすくないぶんしずかに見られるのは良いのですが、道内一の老舗デパートからつめたくされたような一抹のさびしさを感じないでもありません。
 この展覧会は、道内にある連盟加盟団体の代表が1点ずつ出品します。図録によると、現在の加盟団体は239。社中だけでなく、各地の書道連盟や、社中を横断するタイプの組織(女流書作家集団など)もふくまれています。また、北海道書道展には参加していない書家も名を連ねています。今回は、顧問の宇野静山、中野北溟両氏と、206人の代表が出品しました。
 会場の関係で、二尺×八尺か、それより小さいものが大半です。とくに墨象系の書家については、もっとスケールの大きな作品を見たかったという、せんかたないことを思ったりもしますが、渋谷北象さん(旭川書道連盟)などはさすがにかっちりとまとめています。
 筆者のようなしろうとが見ていてたのしいのは、やはり近代詩文書です。水上祥邦さん(墨祥会=旭川)「我は海の子」は、余白の取り方のうつくしさで、今回筆者がいちばん気に入った作品です。
 前衛では、竹下青蘭さん(奎星倶楽部=札幌)が、にじみと点の配置に気を配った作品。三橋啓舟さん(心臨会=同)「祈」は、濃い色の紙に、樹脂を混ぜたような白い墨(?)で模様のようなものを書いています。岡田大岬さん(岬土会=江別)は、「弔」という漢字ですが、記号のように見えるユニークな作品です。
 多彩な書風で目の離せない安藤小芳さん(女流書作家集団=札幌)「遠音」は、わりあいオーソドックスな少字数書。山田太虚さん(虚心会=同)「圓妙」は、作者の気合がじかにつたわってくるようです。遠藤香峰さん(峰心会=石狩)は、にじみの可能性を追求しています。
 近代詩文の我妻緑巣さん(書道研究書鳳=札幌)、漢字の安保旭舟さん(旭舟会=同)、石田壱城さん(尚志会=北広島)は、大きく作風が変わったわけではありませんが、闊達さ・自在さが増したような印象をうけました
 ほかにもふれたい作品はたくさんありますが、このへんで。


 22日で終了した展覧会のうち、まだ書いていないものがありますので、ここでかんたんにふれておきます。
 西田陽二展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A
 白を基調とした気品ある裸婦像で知られる西田さんですが、今回の個展では、裸婦の油彩は2点だけで、のこりは花などを描いた小品と、裸婦のデッサンです。これらを見ても、西田さんの力量の高さがうかがわれました。デッサンは、かなり大きな紙に書いてありますが、この大きさで狂いのないデッサンを、線の無駄なしに描くのは、そうとうにむつかしいはずです。
 中央画壇には高塚省吾さんのような画家がいますが、道内で裸婦を主体に描き続けている画家としては西田さんくらいしか思い浮かびません。絵画のもつ要素(色彩)をあえて限定して、そこでなにができるかを追求しているのは、興味ぶかいことだと思います。
 光風会会員、道展会員。札幌在住。

 和田裕子銅版画展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A
 23点。いずれもリアルな画風で、果実や植物などを描いています。
 とりわけ多色刷りの「土手の野いちご」「白雲木の木の下で」などは、葉脈なども描かれた上、緑の諧調もじつに豊かで、版画とは思えない精緻さです。いったい何版つかったんだろう?
 全道展会員、札幌在住。

 シャンヒ・ソン「望夫石」などについては、また稿をあらためたいと思います。会期中にまにあわず申し訳ありません。

 芸術の森美術館(南区芸術の森2)の福士理学芸員がブリヂストン美術館に移り、あらたに今井里江子学芸員が来ました。イタリア語ができ、ベガルタ仙台のファンだそうです。
 11月23日(日)

 公募写真展「炭鉱再発見」=サッポロファクトリー煙突広場 ミニレンガ館特設会場(中央区北2東4) 地図G
 「炭鉱再発見」の会場炭鉱の産業遺産の価値を、以前からうったえていた写真家の風間健介さん(夕張)。
 ようやくそのうったえが実を結びつつありますが、それでも貴重な炭鉱の遺構は姿を消しつつあります。
 この展覧会は、風間さんのほかに、多くのプロ・アマの写真家から寄せられた、炭鉱施設や街並みの写真で構成されています。
 保安帽など、炭鉱でつかわれていた道具も展示され、手に取ることができます。
 炭労のペナントなど、さかんだったころの組合運動をしのぶものもありました。
 風間さんと仲間の写真が多いのかな、と予想していたら、かつての炭鉱マンなどから寄せられた炭鉱全盛期の写真などもけっこうあります。
 炭鉱遺産めぐりに出かけたくなってきました。
 24日まで。

 11月22日(土)

 千葉有造彫刻展TEMPORARY SPACE(中央区北4西27 地図D
 「ドッペルゲンガー」という題の個展です。
千葉有造彫刻展 ふたつの同じ大きさの金属の直方体がならべられています。
 ただし、よく見ると、チェスの駒のようなかたちをした脚のつきかたが、左右で微妙にちがっています。
 右側のは、底部にはいくつも穴があいて、脚が取り付けられるようになっているのですが、3本しかついていません。そのかわり、台座にあたる部分から1本、脚が飛び出ています。
 左側のほうは、直方体の側面に、脚がついています。
 一見、ミニマル的な作品のようですが、脚の位置は日々変えることができるのがおもしろいところ。また、20世紀半ばあたりまでは、一種の制度としてあった台座を、相対化しているのも、興味ぶかいところです。
 ドッペルゲンガーとは、分身という意味です。忍者マンガの分身ならたのしいですが、もしあなたが街の雑沓でじぶん自身を目撃したとしたら、それは背筋の凍るようなおそろしい体験にちがいありません。分身を見た者は近いうちに死ぬ−とまでいわれているのです。その意味では、ここにならんでいるふたつの彫刻は、日々すこしずつ脚をずらして姿を変えることによって、かろうじて死を回避しているのかもしれないのです。
 もっとも、作者は「ぼくはコンセプトを先にたてる主義じゃないんで、自由に見てください」とのことでした。

 さて、千葉さんは札教大出身の若手で、今春の「北海道抽象派作家協会展」などグループ展には参加していますが、意外なことに、国内での個展はこれが初めてです。
 じつは、近年は、名寄市が主催する国際雪像コンクールにとりくんでおり、ことし、初めて予選を国内代表にえらばれたとのこと。その会場で出会ったスイスやドイツの彫刻家にさそわれ、この夏、ドイツ南部のバイルという町のギャラリーで個展をひらいてきたそうです。
 来年2月にはまた厳寒の名寄で、雪像コンクールがあります。さっぽろ雪まつりなどとはまったく性格のことなる本格的な彫刻の催しだという話は以前にも耳にしていたので、機会があればぜひ見に行きたいと思っています。
 個展は23日まで。

 第16回六稜美術展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C
 道教大旭川校(前身の道学芸大旭川分校や北海道第三師範、旭川師範をふくむ)の同窓会展。昨年までは毎年ギャラリーノルテ(地図A)でひらいてきましたが、ギャラリーの閉鎖にともない、うつってきました。
 書道、篆刻、絵画、工芸、写真の5つの部門立てからなっていますが、見ごたえのあるのは書道です。
 日本の近代詩文を代表する書家、中野北溟さん「光」は、色紙よりもさらに小さな紙6枚からなる組作品。
「貝殻の中に夕陽が溜まる」
「慈愛の眼差し」
「こころのなかに花がさいた」
といったことばがやわらかい素朴な筆遣いで書かれています。
 東志青邨さんは「閑かさや岩にしみ入る蝉の聲」という芭蕉の句。
 高橋陌遥さん「凍蝶」は淡墨による、力強さと抒情さの合わさった作品。
 青木接秋さん「鶴の一聲」は、正攻法のパワフルな書です。
 工芸は、道陶芸作家協会の藤田和弘さんや、魚住劭さん、中野威さんらが、清新な陶器を出品しています。
 23日まで。

 〜森の夢・風の詩〜 近藤直樹メルヘンワールド展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1 地図A
 網走管内置戸町境野在住。メルヘン調の水彩画が展示されています。鹿やキツネのあそぶ野にちらちらと雪が舞う、といった図柄が多いです。
 23日まで。

 田所陸男彫刻展札幌市資料館(中央区大通西13 地図C
 テラコッタ、木彫、石、ブロンズ(あるいはFRP)など、いろいろな素材による人体彫刻。
 そのなかでいちばん多いのが、「母と子」と題された5点のテラコッタです。母が子をひざの上に抱いているさまなどを描写しており、とてもやさしい雰囲気にみちています。
 「母と子」だけでなく、女性の胸部像などを見ていると、じわーっと心があたたまるような感じがしました。
 札幌市資料館でこのような本格的な彫刻の展覧会がひらかれるのはめずらしいと思います。
 24日まで。

 とりあえず、早くおわるものについてアップしました。

 11月18日(火)

 14th DON/呑展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
 大林雅さん、小林敏美さん、櫻庭恒彌さんの3人による恒例の絵画グループ展。
 大林さんは「ひまつぶし」「まどろむ」など8点。
 題はほのぼのとしていますが、例によって、不気味な宇宙生物のような、あるいはシーツのおばけのようなモノが、倦怠感をただよわせて画面の中を這いずりまわっています。
 小林さんは、古事記など、日本の古代神話の世界に
「かなりこだわってます」。
 今回は「八千矛まんだら」「トーテム・ポール」など6点。古代の英雄や神々をそのまま描くのではなく、それを素材として構築した画面といえそうです。
 櫻庭さんは「地形図の中の土偶」という連作を6点。茶系を中心に、土偶のフォルムの周りを、等高線のような線がうねうねとめぐっています。
 最初は、ほんとうの地図の等高線を描こうとしたそうですが
「間隔がせまくなって、線がうるさいのでやめました」。
 こうしてみると、大林さんは、透視図法のなかに「不気味なもの」を描き、あとの2人は、平面的な画面処理をしているといえそうです。
 
■昨年
■2001年

 中間弥生個展 Y=同
中間弥生「雨の歌」 中間さんは、北広島在住。ことしの全道展で奨励賞を受賞しました。今回は、受賞作「雨の音 U」など22点を展示しています。
 故・砂田友治さん(独立美術・全道展会員)に絵をならっていたということもあるためか、太い輪郭線が特徴です。
 太い輪郭線は、物と物とを区切るためにひかれているというよりも、むしろ、画面を構成する最大の要素のようになっています。輪郭線の色がアラベスクのように画面を覆っているのです。
 右の絵は、シューベルトに触発された「雨の音」と題した連作の1点。
 雲からまさに雨が落ちてこようとしているようすを描いているとのことです。
 これは比較的彩度が低く、おちついた感じですが、もっと彩度が高くにぎやかな絵がわりと多いです。「オオ・マイ・ガット」は、自由美術に出品した絵だと思いますが、コンサドーレファンとしてがっかりの1年だった作者らしい1枚です。
 絵日記「弥生月記」がたのしい作者のサイトはこちら

 札幌市立高等専門学校教員作品展=同
 廣嶋敬久さんは「眺 オニオコゼ」「祭り ケムシカジカ」「風 ユリ」の日本画3点。
 植物を丹念にえがいています。背景の色調が落ち着いているためか、しっとりとした空気感がただよいます。
 金工・水中写真の金子直人さんは、しっぽがゆらんゆらんと揺れる時計などで知られますが、今回は伝統的な花器がめだちます。
 あとは、建築、デザインの発表。
 国松明日香さんや上遠野敏さんは出品していません。

 以上、22日まで。

 花もこ部屋 千葉舞・松尾史絵・北原明日香作品展=ギャラリーユリイカ(中央区南3西1、和田ビル2階  地図B
 会場にだれもいなかったので確認できませんでしたが、札教大に在学中か出たばかりの若手だと思います。けっこうたのしいです。
 とくに、北原さんの「無題」。一見、画廊の壁に線をかいたみたいですが、毛糸で絵を描いているんです。たんすとかベッドとか、ふつうの部屋にあるものを線描してます。
 千葉舞さんは、ビーズと原毛であざやかな北海道をつくった「moco moco Hokkaido」など。松尾さんは本のかたちをした「名画本(めがほん)」など。
 手工芸的な素材を用いながらも、日常的なこまごました造形におちいっていないところがあっけらかんとしておもしろいです。
 23日まで。

 陽窯 陶芸教室20周年記念展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B
 札幌の高野陽子さんのひさしぶりの教室展。先生のキャラクターを反映して? 陽気でたのしい、バラエティーに富んだ展覧会になっています。
 高野さんは、江別市セラミックアートセンターでことし7−8月にひらかれた企画展「陶のかたち」でも出品された「坐って椅ッ子」が2点ならんでいます。「陶のかたち」ではすわれなかったのですが
「すわっていいっていう題なんだから、どうぞ」
と言われて、すわってみました。
 会場中央の巨大なつぼは、中島かつ子さんの作品。しっかりした造形です。
 萩谷安彦さんが、すっぽんのかたちをした鍋(すっぽん鍋用)や、あんこうを模した鍋(あんこう鍋用)など、ユーモラスな作品をならべています。
 中島静佳さんは、「どさんこワイド212」などで活躍中のSTV(札幌テレビ放送)アナウンサーです。
「わたしが『先に帰らせて』と言うくらい、すごく熱心ですよ」
と高野さん。

 松本安弘個展=同
 石狩管内当別町在住の画家。
 道内各地の風景を描いています。石狩川の河口を、高岡地区から望んだ作品など、さまざまな諧調の緑を、画面で混ぜ合わさずに置いているのが特徴です。

 以上、23日まで。

 ぐる〜ぷ・マルディ展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)
 NHK文化センターの教室展。講師の八木伸子さんの絵は、会場内ではなく、ラ・ガレリアの南側の入り口にかざってあります。
 23日まで。


 11月16、17日(日、月)

 宝賀寿子と松井さんち展 V=マリヤクラフトギャラリー(中央区北1西3) 地図A
宝賀寿子さんの木版画 札幌の宝賀(ほうが)さんの木版画をはじめ、松井孝篤さんの焼物、松井マサさんの毛織、城川さんのリースなどを展示しています。
 宝賀さんは、おもに右側の壁に、1981年以来数種ずつつくっている年賀状などを、左側に大作をならべています。
 筆者が、単純に宝賀さんえらいなー、と思うのは、公募展を辞めると大作に取り組まなくなっちゃう人って案外いるんですけど(宝賀さんは2001年に全道展会員に推挙され、直後に退会)、きちんと制作をつづけていることです(まあ、大きければいいってもんでもないかもしれませんが)。
 左は、ベニヤ板を半分に切って彫ったもので、左から「地上の光」「初雪便り」「丘の上のシナの木」「鳥を待つ日々」です。この左側にもう1点、「まわる季節」が展示されています。
 グラデーションのない、黒と白だけによる、或る意味でシンプルな作品。写実的でありながら、計算された単純化がなされているようです。
 また、とくに「初雪便り」などは、作者の自然を見つめるまなざしのようなものが、1枚のなかに凝縮されているようにおもえました。
 「スローフードが脚光を浴びているけれど、わたしのはいわばスローアート。作品の中の野菜から、じぶんで育てているんだから。最先端の現代美術ばかりじゃなくて、こういうふうにじっくりと取り組んでいるものもあることを知ってほしい」
というような意味のことを話していました。
 18日まで。

 矢崎勝美展 Cosmosシリーズ=ギャラリー山の手(西区山の手7の6)
 ことしは、9月に道立近代美術館でひらかれたアジアプリントアドベンチャーの事務局を務め、札幌市の芸術賞をうけるなど、大忙しの1年だった矢崎さん。9月の個展では、矢崎勝美展の会場風景さすがにつかれたような顔をしていました。
 ところが、今回の個展、24点すべてが新作なのです。
 このタフさには、おどろかずにはおれません。
 作品は、ずっととりくんでいる「Cosmos」シリーズで、オフセット印刷の紙にシルクスクリーンをほどこし、さらに手彩色をくわえるという、手の込んだモノタイプ作品というのは、変わらないようです。
 ただし、あたかも宇宙空間に明滅するような白い光のフォルムは、変化しています。
 有機的なまるみを帯びた曲線が画面で大きくカーブしているのがひとつ。
 もうひとつは、超新星の爆発のように、中心から勢いよく白い光がとびちっているような図柄のもの。
 紺が多かったバックの色も、ますます多彩になってきました。
 スマートな、しかしけっしてそれだけではおわらない精神性のようなものをはらんだ作品群です。
 札幌在住。1940年生まれ。
 29日まで。

■03年9月の個展
■02年の個展
■01年の個展
□矢崎さんのサイト

 地下鉄東西線西28丁目駅からバス(どの路線でも可)に乗り「ふもと橋」下車、バスどおりを渡って住宅街の中に入り、琴似発寒川につきあたったところ。徒歩2分。
 あるいは、北1西4(グランドホテルの南向かい)からJRバス(どの路線でも可)に乗り「発寒橋」下車。琴似発寒川沿いに徒歩8分。