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あーとだいありー 2003年11月前半
11月15日(土) 訃報です。 全道展会員の木版画家、瀬戸節子さん(石狩)が亡くなりました。68歳でした。 近年はトランプをモティーフにした作品にとりくみ、米国のアワードで受賞もしていました。ことしの全道展には「大地の力」と題した抽象的な作品を出品、まだまだ展開のある作家だったと思います。 ご冥福をお祈りします。 |
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11月14日(金) 原点回帰=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B) 道内から首都圏の美術系大学に進学した6人が、もういちど自己の原点に帰ってみよう−とひらいた、初のグループ展。 大学を出て北海道に戻ってきたたばかりだったり、大学院に在学中だったりという若手です。 なお、道内在住・出身の40歳以下で、昨年から3月にひらかれている「サッポロ未来展」とは、メンバーは重複していません。 そして、これはたんなる印象論ですけど、わりあい「公募展っぽい」絵画が多い「未来展」にくらべると、「原点回帰」のほうが、現代的というか、「あんまり見たことないなー」というおどろきみたいなものを感じさせます。 吉田直樹さんは「nature」と題した2点(写真左側)。 モティーフは特にないという、アクリルの抽象画。ポップな明快さと、荒々しいパワーとが同居した、鮮烈な絵画になっています。 服部篤浩さん「AP203」は、200号はあろうかという大作。題は、アパートの203号室という意味でしょう。扇風機などが置かれた部屋で、同居していた弟さんがすわってムービーカメラをまわしています。 まあ写実的な部類に入るのでしょうが、あまり細部に拘泥しない描法で、画面全体がなんとなくくすんだクリーム色に覆われたような感じがします。じぶんの青春の日常をてらいなく切り取ってみせた1枚といえるのかもしれません。 清水朋子さんは「A」「ハナ」など3枚(右の写真)。黒とレモンイエローのくみあわせがおもしろいと思いました。 伊藤亜未さんは「人体ジッケン」「…dog」。グレーなど、微妙な中間色をフラットに塗りくみあわせた、独特の色彩感覚。 佐々木春江さんは「SILENCE」など、坂井ヒロミさんは唯一の立体作品を出品しています。 18日まで。 こすもす1107展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C) 札幌と東京の女性たちでつくる異業種交流グループが毎年ひらいている展覧会。「1107」は「イイオンナ」のごろあわせです。でも、ことしは、出品者に男性がまじっているぞ。 展覧会というより、ポストカードや雑貨、小物などがならんで、フリーマーケットにちかいものがあります。ただし、出品者にはプロのデザイナーがいることもあって、素人の作品交換会とは一線を劃しているし、会場には、前衛書みたいな作品が展示されているので、あなどれません。墨で書いたマンガつき「しりとり絵巻」もわらえます。 毎年恒例の「お菓子のマチ」は、ことしは札幌。時計台がテレビ塔より大きいのがいいですね。 この展覧会は、「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)」ということを考えさせます。なにかをつくることによって人の日常がゆたかになっているのだなと思わせるのです。 16日まで。 星降る夜のクリスマス☆展★進藤紘子パッチワークキルト教室=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) パッチワークキルトという素材そのものが、クリスマスのふんいきにあっているんでしょうね、たぶん。 意外と作品は、オーソドックスな、パターン重視のパッチワーク。ほかに、テーブルウエアなど、にぎやかな展示になっています。 16日まで。 原田直樹 写真展 「I was here...#5」=コダックギャラリー札幌(北区北18西3) TEAM-NACSや奥田民生、たまなどの、臨場感あふれるステージ写真20枚あまり(すべてカラー)。ただし、なかみは、7月に札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)でひらいた個展とかなり重複しているようです。 17日まで。 ■03年7月の個展(11日の項) □原田さんのサイト 木滑邦夫油絵個展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) ことしの全道展には、まるで未完成作のような薄塗りの絵を出品して、どうしちゃったのと思わせた木滑さんですが、今回の個展にはおだやかな色調の風景画など24点をならべています。 「冬の林」「風のたより」など、写真でいうところの「ハイキー」なうすめの色づかいなのですが、それがなんともいいがたい味わいを出していると思います。雪野原にも微妙な色が乱反射しているようすが描かれていますが、つくりものめいた感じはなく 「ああ、雪にも色がついてみえることってあるよなあ」 とナットクしてしまいます。 「小さな舟」は、川か湿原にもやってあるボートの絵。北海道らしいたたずまいです。 airist 市江多樹子展=同 ちいさな絵によるインスタレーション。 入り口附近の壁と中央の床には花などを描いた小品がおかれ、左手の壁には空が描かれた丸キャンバスが、右手には打ち寄せる波が、そして奥の壁には、西洋的な街並みなどを描いた小品がかけられています。 いずれも、18日まで。 高幹雄 - MIKIO TAKA 「夢ではないのか」=FITS/CORE(中央区南3西2 WALL HALL 2階) ことしは、3月の「札幌の美術」、CAI(現代芸術研究所)での個展、プリントアドベンチャーなど、発表の機会の多い高(たか)君ですが、今回は「夢ではないのか」という新作を、美容院の中の壁にずらーっとならべました。 絵は、およそ半数が、ニスなどをといた、例によって(物理的に)重そうな板による作品。赤系統の色が多く、色がどろっとうねっています。のこる半数がインクジェットプリントですが、こちらも重量感があります。 さいきんの高さんは、絵の物質感を強調するような仕事が多いような気がするんですけど、どうでしょう。 人が髪を切ったりパーマをかけたりしている中なので、けっこう落ち着かなかったりします。 23日まで。 なお、店は南3条通に面しています。店の道路側には、大きな作品が1枚かざってあるのですが、見えるかな? ○-Tio-n-ppp-○ 迷子のうらじ=マクロギャラリー(中央区南2西1 アポロシティービル) 地図B イラストの小品。「隠れた名店」など、画面じゅうに、空間恐怖のように線や色をびっしりと描きこんでいるのがおもしろいです。 フライヤーには27日までとなっています。 |
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11月12、13日(水、木) 北海道新聞によると、ことしの地域文化功労に、詩人の原子修さんと書家の佐藤満さんがえらばれました。おめでとうございます。 原子さんは美術にも造詣の深い方です。佐藤さんは、淡墨で、ひょろひょろとした細い線による漢字で知られ、北海道書道展などの運営にも長く尽力しています。 福岡幸一版画展 〜北の樹、果樹〜=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階 地図D) 桂やリンゴなど、道内の大木、古木を、銅版画で写実的に描いている札幌の版画家です。一部の小品はリトグラフです。 この1、2年の福岡さんは年に数回個展をひらいており、筆者はほとんど毎回出かけているので、個人的にはそれほど目新しい作品はないのが正直なところです。 今回の新作は、後志管内余市町や仁木町にある、ふるいリンゴの木。曲がりくねった枝ぶりに、なんともいえない味わいがあります。 北海道におけるリンゴの歴史をくわしくしらべるところが、福岡さんらしいところ。描いたうちの1本は、あるいは道内、国内で現存するリンゴの木のうち、最も古いものかもしれないということでした。 24日まで。 北村葉子個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 100号−200号の力強い大作がならびます。その他、デッサンが4点ほどです。 油彩は、ほとんどが「家族」をテーマにしています。 実際の北村さんの家族というよりは「想像上の家族です」とのこと。 人々を横一直線にならべ、奥行きを排した構図が多いですが、「母の日記」は、とおくに葬列のようなあるく人の列が見え、風景の広がりを感じさせます。 表面には 「石狩の浜辺でひろってきた砂や、ごみ捨て場にあった竹」 など、さまざまなものが付けられ、ごつごつとしたマティエールをつくっています。 札幌在住、全道展会友。 小野司絵画展=同 黒い紙を支持体に、おびただしい白い線が走り、その中を精子のようなかたちが泳いでいます。生命を思わせるエネルギーを感じさせます。 中美展会員。 いずれも15日まで。 第26回北海道金工作家協会展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) 会場にあった「出品目録」のプリントに、「協会のあゆみ」がしるされていましたが、これを読むとややさびしい思いにとらわれます。 協会は、1978年1月、畠山三代喜、中村矢一、飛鷹岸男、田辺隆吉、小林繁美の各氏が創立会員となり発足、8月に創立展をひらいたとあります。会員33人、出品者25人。ピーク時の85年には、会員75人、出品者45人にのぼっています。 創立会員のうち、ながく道内金工作家のまとめ役だった畠山さんはすでに故人で、今回は、中村、田辺、小林3氏の出品もありません。会員は28人、出品者は19人になっています(ただし、プリントに記載されていない出品者がひとりいるほか、2人の遺作が展示されています)。 その、名前のない出品者とは菅原義則さん。「鍛冶屋のドラゴン」は、2匹の竜が金属をトンカチとたたいている、かわいらしい立体です。芝木秀昭さん(道展会員)「連作−02流動」は、シャープな造形です。 平面では吉田由紀子さん(同)「作品」が、ススキを写実的に表現し、味わいがあります。 ほかに、道展会員の石水英雄、林薫、飛鷹岸男、安田眞紀子、渡部弘の各氏らが出品しています。 16日まで。 ポロロキェッチェ・クアッテスの生まれた日展=ギャラリーART−MAN(中央区南4東4 地図G) なんだかふしぎな題名ですが、架空の人物名で、とくに意味はないそうです。 須見明美、大野洋介、石場洋介の3氏の絵画展。3人とも1980年生まれ。 クラブのイベントのフライヤーのデザインなどを手がけているので、ポップで、ストリート的な感覚でまとめています。エアブラシなんかの使い方はうまいです。 15日まで。 井上まさじ展(ギャラリーミヤシタ=中央区南5西20)も見に行きました。 今回は作風が一変しました。美しい色彩の世界は、あらたなステージにはいったといえそうです。 詳細は後日。 |
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11月11日(火) きのう書き忘れましたが、新聞各紙によると、1960年代のイタリアを代表する芸術運動「アルテ・ポーヴェラ(まずしい芸術の意味)」を主導した美術家マリオ・メルツさんが亡くなりました。78歳でした。 1926年、ミラノ生まれ。新聞紙など身近な素材で彫刻をつくりました。 第21回 遠友絵画展=札幌市民会館(中央区北1西1 地図A) 遠友夜学校といえば、戦前北大の先生方が無償で教壇に立ち、苦学生や、まずしくて学校に通えなかった大人たちに勉強をおしえていた学校です。戦中 「軍事教練のない学校はけしからん」 と、軍部によって閉校を余儀なくされました。 遠友絵画サークルは、その夜学校の精神をうけつぎ、北大の八鍬利郎さん(元道展会員)が無償で教えているそうです。23人が水彩と油彩の小品を出品しており、みなさんたのしく絵筆をとっているようすがつたわってきます。 金谷実郎さん「ポプラ並木」は、創成川河畔のポプラと、水面にうつる緑を、濁りのない色彩で描いています。 芝垣陽子さん「ばら」「まがれい」は、絵の具をたっぷり塗って、こせこせしない悠々たる筆致が持ち味。 三野雅子さん「収穫の秋」は、ていねいにえがかれた静物画。 ほか、このサイトによく登場する人では、坂本輝行さんの淡彩スケッチ、原田富弥さん、綿谷憲昭さんらが出品しています。 15日まで。 第21回臥龍社書展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 道内書壇のベテラン宇野静山さん(小樽)が主宰するグループ。 漢字の創作を中心に、51人が出品。スカイホール全室をつかっています。 個人的には、加藤秋霜さんが三好達治の詩「甃(いし)のうへ」を書いた作品に興味を持ちました。題材的にはもちろん近代詩文なのですが、ちらし方にかなの方法論をとりいれているように見えるのです。墨色もユニークでした。 達治といえば、嶋田通子さんも、一般的な近代詩文の型を打ち破ろうと試行しているようです。 宇野渓雪さん「人馬平安」は、淡墨で、まっすぐでおおらかな筆使いが印象的。 宇野雉洞さん「仙姿玉質」は、余白のとりかたがおもしろく、印もおもしろい。 及川泉石さんは「寒風白梅」の横に、俳画ふうの絵を添えています。 16日まで。 白の会展(人物と花を描く)=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 札幌の八木保次・伸子夫妻(全道展会員)と中田やよひさん(全道展会友)が指導するデッサン、水彩、パステルの教室展。油彩はありません。 八木保次さんは「作品ローズ」という抽象画。一時の灰色中心から脱して、あざやかな寒色系が画面を覆っています。伸子さんは「つゆくさ」、中田さんは「秋」。 生徒さんでは、林田理栄子さんらが印象に残りました。 柿本胤二傘寿回顧展=同 ヘタかうまいか、と問われれば、どうしたってヘタな絵だと思いますが、巧拙なんぞふきとばしてしまう個性のある絵がならんでいます。一番古いのは、1960年代なかばの作品です。 たとえば「楽団員に造反されて苦悩する指揮者」なんて、そんな画題で絵を描こうなんていう人、まずいないんじゃないだろうか。 それよりも情念がこもっているのが、先の大戦に材を得た作品群。 「メレヨンの幻影」「亡友(トモ)よ故郷(クニ)へ還ろう」は、慰霊のため南洋に出かけた作者が、「故郷へかえろう」と呼びかけたところ、死んだ戦友たちがそこらじゅうから立ち上がって北へとあるきはじめたというまぼろしを見た体験をもとに描いたそうです。 体験の重みは、そんじょそこらの絵なんか問題にしないくらいだと思います。 16日まで。 |
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11月10日(月) MARI FUJITA EXHIBITION=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A) 札幌の若手画家の、2年ぶりの個展。 2年前にクレセールアートバーグで見たときはそれほどの印象でもなかったんですが、今回はびしっとこちらにきた! という感じがしました。 抽象画8点がならんでいます。「残雨覚」など、はなはだしくピントのぼけた写真のようにも見えますが、一種の空気感のようなものがとてもよく出ていると思うのです。 空気感といっても、一般的な風景画でいわれるそれとはちがいます。たとえば、夢と現実とのあわいにふとたち現れるような光の明滅というか、あるいは、記憶の彼方に余熱のようにのこっている微風の感触というか、そういう、ことばや記号ではけっしてわりきれない微妙な感覚なのです。 どうしてそんなものが感じられるのか説明せよといわれても、けっこうこまったりしますけど。 リヒターを思わせないでもないですが、この件については勉強不足につきパス<m(__)m> 15日まで。 百野道子・星こず枝二人展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) こちらも意欲的な若手の、二人展。 百野(びゃくの)さんは日本画で、「少年」など、みずみずしい感性の人物画を描いています。こういうのって若いときにしか描けませんよね。 星さんの「M」などは、段ボールが支持体で、その上から鉛筆でせっせと塗りつぶしています。段ボールの縞模様などが表面にうかびあがり、それが絵になっているといえましょう。 「絵というだけじゃなくて、物質としても見てほしかったんです」 と作者。 さらにおもしろいのは、二人が2点合作していること。やはり段ボールの支持体に紙をはり、水彩で女性の上半身などを描いています。鉛筆で塗ったところもあって、段ボールであることがはっきりわかります。うち1点は、水の上に女性の頭部が浮き出ている絵で、「オフィーリア」を思い出さずにはいられません。 11日まで。 |
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11月9日(日) 〜北大の情景〜 北海道大学写真部写真展=北海道大学総合博物館(北区北10西8 旧理学部) 題名のとおり、北大キャンパスを被写体とした写真展。 札幌のみなさんはご存知だと思いますが、なにせ広大なキャンパスです。正門から第二農場まであるくと25分はかかります。 そんなわけで被写体にもこと欠かないのですが、やはり農学部、旧理学部、古河講堂など、古い建物が「絵になる」ようです。 で、北大写真部というといつも齊藤市輔さんと原田玄輝さんのことが中心になってもうしわけないのですが、今回もこのふたりが、質量ともに他を圧しています。 原田さんの「農学部 冬の夜景」「農学部六景」の、夜のスローシャッターの写真などはほんとうにきれいです。齊藤さんの「夜の北大構内」も、しずかなうつくしい連作でした。 ほかには、森田優音さんの、クラーク会館裏を撮った「ゆらゆら」や、室蘭の施設を写した宮本朋美さんなど、ほんとにいろいろ写すところのある大学です。 29日まで。 ■5月の新入生歓迎写真展 吉田真波アート展「powa powa」=Gallery Strawberry's(中央区南2西1 RISEビル3階) 地図B 丸くてほわほわした生き物が出てくる自由なタッチのイラストや、サンタなどのかわいらしい立体など。立体は小さいものだと300円とか500円ぐらいで、安いのも特徴です。ラブリーな小物系の好きな方はどうぞ。 10日まで。 一彩会展=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) 北野清子さん(札幌、道展会員)の教室展。 北野さんの「晩秋のポロト湖」などにくわえ、佐藤信子さんの静物画がよく考えられている1枚だと思います。 9日で終了。 空港などに置いてある小冊子「北の旅ポケットマガジン レイラ」11月号の特集は、本郷新と札幌彫刻美術館。なかなか小さいながらまとまった特集なので、機会があったら手にとってほしいと思います。 |
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11月7日(金) 北海道女流工芸「一の会」20周年記念展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 道内で、染色、織、陶芸、皮革、人形、七宝、漆芸、ガラス、竹、刺繍に取り組む女性27人によるグループ展。スカイホール全室をつかっているだけに、大作が多く、見ごたえがあります。 テーマが「一」で、個々の作品には題がないのも、いさぎよさを感じさせます。 とくにパワーが感じられるのは染色作家勢。陶芸や絵画の作家とことなりあまり個展をひらきませんし、公募展などでも大きさに制限がありますが、今回、岩山テル子さん(札幌)は屏風を4点も出すなど、意欲に圧倒されます。 大谷孝子さん(旭川)も、道内の林などをモティーフにした清新なタペストリーです。 陶芸はオブジェ的な作品が目につきました。土屋幸子さん(札幌)はモニュメントのような形態で、川口純子さん(同)は、火花のようなかたちをした作品をいくつもつくりました。 人形は野口恭子さん(岩見沢)と堀江登美子さん(同)。野口さんは木に着彩、堀江さんは素焼きで着彩なしと、表現方法を広げようとしています。 ほかに、染色の伊藤厚子(札幌)、織の寺岡和子(小樽)、下村好子(札幌)、吉田澄子(石狩管内当別町)、篠原弘美(空知管内栗山町)、陶芸の木村初江(札幌)、武田律子(同)、田中静江(帯広)、長島明子(千歳)、皮革の藤田恵美子(札幌)、七宝の石田禎子(同)、仲真知子(旭川)、高野民子(札幌)、西田弘子(同)、漆芸の山田萩山(同)、村上晴香(同)、高橋美絵(同)、ガラスの天野澄子(岩見沢)、降旗ゆみ(江別)、竹芸の大島千寿子(網走管内斜里町)、刺繍の山崎明子(上川管内美瑛町)のみなさんが出品しています。 9日まで。 pipng hots!=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G) kaori.s、manabu.s、kentaro-.sの3人による写真展。どうしてわざわざローマ字で名前を表記するのかはわかりません。 manabuさんの写真に才気を感じました。デジタル撮影で、どぎつい色彩をあえて強調しています。街のゲーム機、夜のコンビナート、闇の中に斜めに並ぶ黄色い窓、アパートの階段に干された赤や青の布団など、何気ないですが、色は鮮烈です。とくに、遠くに小屋が2軒と、骨組みだけのビニールハウスが見える草むらに、安田侃の彫刻を思わせる白く平たい石がころがっている1枚はなんともふしぎでした。 9日まで。 久保猶司 游工房展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1 地図A) 津軽塗の作者。昨年12月につづく個展。 朱や黒だけではなく、緑などさまざまな色をつかってカラフルにしたてた凾が目につきました。もちろん、朱や黒のぴかぴかした器もいいのですが。月の満ち欠けをあしらった黒い板は、どんな料理を載せても、映えそうです。 9日まで。 プラタナス画会展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 中本昭平さん(道展会員。札幌)の道新文化センター「木曜美術アトリエ」の教室展。 師匠がうまいのは当然として、もうひとり、手慣れた感じの風景画を出している人がいて、どなたかと思ったら、河田隆子さんでした。北広島にお住まいで、道展にはキュビスムふうの静物画で毎年のように入選しています。 陶酔房 大滝窯新作展=同 後志管内大滝村に窯のある方のようですが、名前がわかりません。 生活のうつわが大半で、無釉の備前ふうのものが半数以上を占めています。いかにも土の存在感を押し出してくるタイプではなく、さらりとスマートな備前で、食卓でもうるさくなさそうです。 いずれも9日まで。 作陶展「用と美」=ギャラリー文京台(江別市文京台51の6) 江別で「早苗別窯」をひらいている北川範子さんの個展。 磁器のティーセットがすてきですが、それを載せているテーブルも作品とのこと。なんと脚が9本もついています。シラカバの林をイメージして制作したとのことです。 ほかにも、いろいろなスタイルのうつわがならんでいます。 8日まで。 地下鉄東西線新さっぽろ駅から、江別・大麻方面行きの夕鉄バスかJRバスに乗り「自治研修所前」下車、JOMOのガソリンスタンドの角を入って100メートル。 バス停からだと徒歩3分。ただし、札幌市外なので、ウィズユーカードはつかえません。 JR森林公園駅からあるいても10分程度です。 札幌フードセンターのわきの歩行者用道路に入って、ひたすら線路際をあるき、突き当たりを右折、線路の下をくぐる歩行者用トンネルを行くと、12号線はすぐです。駅を出てすぐ、12号線に出ると遠回りなので注意。 |
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11月6日(木) 草木染、手紡ぎ、手織り 小野寺かね子・宮崎うた子作品展=工芸ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28 地図D) 滝川・アンゴラウール研究会の会長を務める73歳の小野寺さんと、75歳の会員の宮崎さんの二人展。 工芸の場合、 「ちょっとのちがい、それが大きなちがい」 ということが多いのですが、この作品展は、ちがいがすぐに分かります。 黄色、水色、赤、橙色…。色あざやかなマフラーやストール、カーディガンなど、すべてが、マリーゴールドや玉ねぎなど、天然の染料で染めたものだというのです! 天然染料を使っている人も、あざやかな色を出すときは人工の染料を用いることはよくあります。天然だと、しぶい色になってしまうのです。天然で、ここまで色がきれいに出るのは、ちょっと信じられないというか、相当時間をかけて作業しているにちがいありません。 糸も、羊から採取したものを、じぶんで洗い、紡いでいるそうです。 それだけの手間をかけているわりには、安いです。 染色に興味のある人はもちろん、マフラーがほしいという人も、ぜひ、見に行ってほしいと思います。 9日まで。 |
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11月5日(水) 国松登 4つのコンポジション=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階) 地図C コンチネンタルギャラリー10周年記念展。ギャラリー開設にあたって助言をあたえるなど協力した画家を、モティーフや時代ではなく、表現手法に焦点をしぼって、回顧してみようというもの。 国展会員、全道展創立会員などとして活躍した画家(1907ー94年)は、生前は、まさに北海道を代表する画家でした。某雑誌の編集長と電話で話していたとき 「北海道の画家といえば国松登さんとか…」 と言われ 「なるほどなー」 と、あらためて思ったものです。 ただ、1995年の芸術の森美術館でひらかれた回顧展以来、昨年の息子さん(国松明日香さん)との二人展をべつにすれば、意外と展覧の機会がすくなく、筆者も今回はじめて実作を見る作品がけっこうありました。 また、入り口には、愛用のパレットなどが展示され、在りし日の画家をしのんでいます。 今回の展覧会は 1 形態と色彩のリフレイン 2 波形が織りなす様式の旋律 3 優しい楕円とカーブが生む抽象的風景 4 樹木が形成するアラベスクな風景 という、4つの章立てでなりたっています。 絵画の構図をまなびたい、という人は、何を措いても見なくてはならない展覧会ではないでしょうか。 たとえば「3」では、「眼のない魚」や、雪原を曲線で処理した、ほぼ抽象と言えそうな「雪野」などが陳列されています。 絵24点の大半は、道立近代美術館などが所蔵する大作、画家の代表作です。民間の画廊がひらいている物故作家の回顧展だからといって、売り絵の小品がならんでいる、というものではありません。あらためて、ギャラリーや、キュレイション担当者の労苦を多としたいと思います。 それにしても、どうしていま、このような視点の展覧会をひらくのだろうと思いました。いや、べつに、ダメだと言っているわけではぜんぜんありません。 テキストを書いた吉田豪介さん(美術評論家、市立小樽美術館長)に直接たずねたわけではありません。でも、おなじモティーフをくりかえし描いた国松を、「眼のない魚」といえば「戦後の混乱期の、画家の心象の反映」、「氷人」といえば「北方ロマン」という、定例の評から解放させようという思いはあったんじゃないかと、筆者は邪推します。ようするに、「文学的」な国松登を、造形主義的な国松登に読み替えようという企てだと思うのです。 20世紀の画家を、造形主義の目で評価するのは、当たり前のことです。ピカソの「ゲルニカ」が名画なのは、反戦の絵だからという理由ではありませんよね。 ただ、これもいまさら筆者が言ってどうなることでもないんですけど、ミニマルアートにおいて極限に達した感のある造形主義的な見方は、1970年代以降の現代美術の流れでは、後景にしりぞいた感があります。これからの絵画、美術は、内容と造形の両面から評価していかなくてはならない、というのが、筆者の個人的な思いです。 7日まで。 椎名澄子展=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20) 地図D 札幌の若手彫刻家の個展。 9月の「北海道立体表現展」(道立近代美術館)に出品していた「真果」の2点いがいは、すべて新作です。 人間と植物が一体になったかのような、「いのち」「生命」を感じさせる力作ぞろいです。 また、「秋意」などは、壁をバックに、女性が腰かけている、ひとつの風景を描写したような作品。これをヘタにやると、盤景のような、つくりものくさくなってしまいがちなのですが、緊張感のある空間に仕立てているのはさすがだと思います。 小品はテラコッタで造形。やや大きい作品は、土で型を取り、ブロンズのかわりにテラコッタ用の土をながしこんで焼いて成形しているそうです。これをすべてご自分のアトリエでやっているとのことで、お疲れさまです。 なお、テラコッタといえば、朱色の膚ですが、表面には着彩しています。ただ、テラコッタらしいざらついた肌合いは生かされています。 「裸婦だとつよすぎちゃうので」、女性は長いドレスのような、体の線をかくさないシンプルな洋服を着ていますが、「中国人ですか、とか、韓国人ですか、と言われることがあるんですよ」。 9日まで。 ■2002年の個展 大本靖自選展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 道内を代表するベテラン木版画家、大本さんが、時計台ギャラリーのA、B2室をつかっての大規模な個展。戦後の一時期札幌に住んでいた北岡文雄さんをかこんで結成された札幌版画協会(北海道版画協会の前身)のメンバーでしたから、そのあゆみは、道内版画界のあゆみと重なるといっても、いいすぎではないでしょう。 会場で配布されていたリーフレットに、道立近代美術館の佐藤友哉さんが、簡にして要を得た解説文を寄せていたので、筆者ごときがつけくわえることはなにもありません。近年の、おちついた風景作品が、半世紀ほど前の「作品60」といった抽象作品において形態のきびしい追求の先にあるということが、あらためて確認できました。 それにしても、このリーフレットを見ると、個展の開催地で札幌がいちばん多いのはともかく、東京より米国の方が多いんですね。すごい。 30点あまりの作品には、近年の全道展出品作も多く、なつかしかったです。個人的には、羊蹄山に材を得た一連の作品、「マッカリの山」「浅春」などが好きでした。画面にそびえたつ羊蹄山の巨大な山塊は、これらの作品がたんなる風景画ではなく、造形的な意思がつらぬかれた版画であることを如実にしめしていると感じました。 衆樹会秋展=同 メンバーの下田敏泰さんにお聞きした話ですが、「衆樹」というのはポプラの意だそうです。それにしても長くつづいている絵画グループ展ですね。 その下田さん、先日の個展とはちがって、以前のような雪の川辺をモティーフとした「漁川の黄昏時」を出品しています。ただ、むかしにくらべると、赤などを隠し味にもちいて、表現に幅が出てきているような感じがします。 風景画を多く描いてきたという印象のつよい沖本慎介さんは「せいぶつ」という題の静物画。 佐藤悦實さん「郷」は、合掌造りの民家を、仰角ぎみに描いたもので、明澄な色彩とリズミカルな構図で目を引きました。菅野寅吉さん「廃船」は、古びた木のマティエールがとてもリアルに描写されていますが、あまりに多くの人がとりあげている題材なのがおしまれます。 北海道植物画協会展=同 碓井廣重さんが5月6日に亡くなっていたことを、この展覧会ではじめて知りました。 遺作「ヒマラヤの青いケシ」の横に附されていた年譜によると、碓井さんは1909年(明治42年)生まれ。スケッチをはじめたのは、じつに76歳のときですが、その後は札幌のギャラリーや滝川市美術自然史館で個展をひらいたり、画集を出版するなど、活溌に活動していました。 直接お会いしたことはありませんが、ものごとをはじめるのにおそすぎることはないーということを、身をもってしめされた方だと思います。御冥福をお祈りします。 8日まで。 第6回オリジナル大賞展・前期=オリジナル画廊(中央区南2西26) 地図D 昨年の第5回は、はっきり言ってしょぼい作品が多いなーという印象がありましたが、今回はまずまず個性的な作品があつまっています。ただ、無いものねだりかもしれませんが、公募展などでおなじみの作者が多く、「だれも知らない新人が登場」的な新鮮味はありません。 大賞は、3月に同画廊で個展をひらいた富良野の盛本学史さん「水辺のクジャク」。まばゆい黄色の絵です。 奨励賞は、梅原賢伸、セキ・トシ、高橋ゆり、原口由美子、原田雅文の5氏。 梅原さんは「今のボクらにできること」。ふたりの男の子をスーパーリアルなタッチで描いた絵で、道展で入選をかさねています。今作は、あえて男の子を後ろ向きにとらえ、ふたりとむきあっている馬の顔を大きく描いています。あざやかな青の背景、ざらざらしたマティエールも特徴的です。 原田さんは、石膏の歯形をつかった、絵画ともレリーフともつかぬ作品で、小品ながら昨年の全道展で入賞を果たし、話題を呼びました。今回は「親知らずの恋物語」が奨励賞、「上顎右側第1小臼歯と第1大臼歯の恋物語」が入選。歯をつかった作品といっても、中江さんのような深刻さはなく人を食ったユーモアが漂います。原田矯正歯科の名前入り歯ブラシが貼ってあるのもおもしろい。 入選は、前期と後期で展示替えをします。 前期は、伊藤京、大塚喬、合田彩、須田靖子、長澤満、谷地元麗子、夢天の7氏。 合田さん「太陽と蝶」「月と睡蓮」は、題の通りの幻想的な光景の油彩。 谷地元さんは、高校時代、道展に日本画で入選した、筆者に言わせると「天才」です。というか、日本画の装飾性ということについてこれほど自覚的な作家は、彼女を措いて、すくなくても道内にはいないと思います。エンボス処理で和服の模様を描いて画面をどう構築するのかという問題意識が感じられます。 前期は12日まで。後期は、17ー27日。いずれも日曜休み。 |
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11月3日(月) きょうは、もう終わってしまった展覧会と、終わりそうな展覧会ばかりです。すいません。 墨花朧凜 長谷川洋・佐々木康人二人展=クレセールアートバーグ(中央区大通西9、札幌デザイナー学院) 地図C 青森県在住の書家と、池坊のいけばな作家のコラボレーション。いつもの「クレセールアートバーグ」の領域を大きくはみだし、専門学校の1階ロビー全体を使った大がかりな展示になっていました。 鏡が張り巡らされた大きな空間をしつらえ、その中に液晶モニターを4台据え付けて書の文字がうごくアニメーションをうつす−といった大がかりなインスタレーション的展示もありました。 なかでも、奥にあった、「祷」という、ひとつの部屋くらいありそうな作品は、圧巻でした。暗い空間の中に水がたまって、枯れた草が配され、時折天井から水がぽたりと落ちます。床の、水の下には鏡が敷かれているので、天井に波紋がくっきりと反射するのがうつくしく、心をなごませました。 3日で終了。 橘井裕彫刻展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) さびた鉄の廃品を組み合わせた作品が20点あまり。 「愛すべき案山子」といった、ユーモラスなかたちのものがならびます。 なかには近年の全道展出品作に通じるような、長くてメッセージ性の強いタイトルの「黒字に黒く黒丸染めてああうそくさい日本の旗は」も。イラクへの自衛隊派遣など、きな臭い世相に対する本能的な反撥心が、作品の底流にあるように感じました。 全道展会員、札幌在住。 第49回創究展=同 堀昭、三沢十郎、向中野利子、村岡治夫、山崎隆治の5氏による油彩のグループ展。 ひとり3−6点、6−50号の風景画が中心です。堀さんは、「キャンバス(理学部)」など、あいかわらず精緻な筆致。山崎さんは「群(あいなめ)」など、迫力ある魚群を描いています。 いずれも4日まで。 |
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11月2日(日) 第41回歩々画展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル6階 地図B) 故・坂本直行さんらが山登りの折りにかきとめたスケッチなどを発表したのがはじまりの、のんびりしたグループ展。 油彩、水彩のほか、和紙ちぎり絵、貼り絵、墨彩画、写真、リース、陶芸、コンピュータグラフィクスなど、ジャンルがはばひろいのが特徴です。 あたらしいほうのメンバーだと思いますが、三明伸さんの「積丹ブルー」は、あいかわらずきれいな水彩。 古株では、鮫島淳一郎さんの「豊平峡トンネル」が、画面の大半を暗くぬりつぶした、大胆な構図です。 綿谷憲昭 原田富弥 日下康夫 第14回 小樽を描く三人展=同(同ビル5階) 毎年、行く先を決めて、連れ立ってデッサンに出かける3人組ですが、ことしはことのほか準備がおくれたようで、絵の中の木々はすでにすっかり色づいています。 それでも、7点(日下さんは6点)ずつ、手慣れた風景画をならべています。綿谷さんの「旧手宮線」と原田さんの「旧手宮線の午後」など、見比べるたのしさもありますが、3人3様で、ばらばらの場所をえらんで描いているのもおもしろいところです。 綿谷さんは、オーソドックスな画風です。有名な富岡教会を背後から描いた「教会の見える丘」では、錆びかかったトタン屋根を茶色に描いています。 色彩を強調する原田さんの絵は、似たような構図の「教会の家並」では、屋根をまばゆいオレンジに描いています。 いちばん速がきの日下さんは、灰色を帯びたブルーがうつくしい。左の写真は、小樽運河を描いた1点ですが、ぬるくよどんでたゆたっている運河の水の感じがよく出ています。 原田さんは 「14年もこの方式でやってきたけれど、来年からは、各自好きなところを描くようにしたい」 と話していました。 4日まで。 |
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11月1日(土) ウィークデイに見た展覧会の紹介がとどこおっています。 きょうは大量です。 北海道陶芸会35周年記念展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) 道内陶芸界の先駆的存在だった山岡三秋氏らが中心となって1968年に発足した団体。 毎年展覧会をひらいており、ことしで35年になります。30周年のときは、道立近代美術館を借りたのでした(なつかしい)。 今回は、27人が1ないし3点を出品しています。 会場の手前には、壺や皿が、奥にオブジェ的作品が多く陳列されています。 中村照子さん(札幌)「青い像」「ある日の贈り物」。 後者は、ソファーのかたちのオブジェ。 「いすは、日常生活でお世話になってますからね。すきなんですよ。でも、意外とむずかしかったです」 1978年から毎年、札幌時計台ギャラリーで個展をひらいている坂田雅義さん(帯広)「灰釉大皿」。 図録と色合いがぜんぜんちがいます。実物は、緑を帯びた灰かぶりが、微妙な諧調を見せ、うつくしいです。聞くと、先日の地震で、写真の作品は割れてしまったとのこと。 「まあ、10年前ほどじゃないですけどね。けっこうやられました」 先日スカイホールで個展をひらいたばかりの香西信行さん(札幌)は「自然灰釉変壺」「2003 心の世界『静淵』」。 後者はまたまた巨大です。数字の「0」にも見えるし、こちら側の世界と向こう側の世界の通路にも見えます。 「説明しちゃうとつまらないでしょ。見る人の自由にまかせたいです」 南正剛さん(上川管内美瑛町)「化−03A」「GAZE 03−D」「GAZE 03−E」。 「化…」は、灰色のこまかい模様が浮かぶふしぎなオブジェ。「GAZE」は、仏像のような顔が三つ並ぶ、陶板の連作。焼き締めのなかに、銀色の鉛のしぶきが走ります。 それにしても、「GAZE」なのに、どうして眼を閉じているのか? 「心の中を見ているんですよ。目を閉じたほうが見えることってありますよね」 北川祥山さん(帯広)「壺中琴(こちゅうきん)」は、高さ1.1メートルもあります。ボタンを押すと、「ポチャン」という音の録音が聞けるのがユニーク。 木村初江さん(札幌)「生命(ゆめ)の記憶シリーズ『群 あ・か・り』」「生命(ゆめ)の記憶シリーズ『地球(このほし)』」。 前者は、白くて薄い陶板を球形につなげた灯りを、インスタレーション的に配置したもの。 島田正敏さん(札幌)「上へ」。道内ではめずらしい磁器の作家。清新な色づかいです。 鈴木勝さん(同)「円環花器(月輪−T)」「円環花器(月輪−T)」「インスタレーション2003」。「インスタレーション」は、題とちがってインスタレーションではないのですが、おびただしい輪が、知恵の輪みたいに連なって、どうやってつくったんだろうと思わせます。8月のNAC展の出品作をもっと大がかりにした作品です。 ケイト ポムフレットさん(空知管内由仁町)「十人十色」は、マトリョーシカみたいな人形52個をずらりと並べたもの。西洋のお地蔵さまみたいなものか。 毛利史長さん(室蘭)「土筒−異国の土の詩」「磁筒−異国の土の詩」。土をいくつか貼り付けて塔のようなかたちにしたオブジェ。土の色もなまなましいです。 愛澤光司さん(千歳)「和」「土との語らい」。 阿妻(あづま)一直さん(札幌)「自然釉窯変光器」「自然釉大皿」 荒関雄星さん(後志管内京極町)「窯変花生」「自然釉片口」 石川進一さん(空知管内栗山町)「灯心」 小木(おぎ)美則さん(旭川)「旭ひだすき壺」 柿崎淳一さん(伊達)「虫喰南蛮炭化壺」 桐生明子さん(札幌)「花づくし」 高井秀樹さん(函館)「灰釉花器」 高際美映子さん(札幌)「流」 谷本杉雄さん(十勝管内清水町)「焼締花瓶」 徳橋浩さん(室蘭)「証拠隠滅」「暗号解読器」 中村裕(ひろし)さん(札幌)「馬文陶屏風」 福盛田眞智子さん(江別)「ビル街U」 前野右子さん(石狩)「未来への内なる力」 山梨保子さん(上川管内風連町)「流れ」 吉田明さん(小樽)「INSECT T」「INSECT U」 吉田時彦さん(旭川)「切合せ手付鉢セット」 2日まで。 北海道陶芸会のサイトはこちら。 ■昨年の北海道陶芸会展 ■坂田雅義さんの個展(03年9月) ■香西信行さんの個展(10月) ■南正剛さんの個展(5月) ■木村初江さんの個展 □南正剛さんのサイト □木村初江さんのサイト 12−17日、函館・棒二森屋に、20−25日、石狩・Art Warmでも開催。 −現代人の姿を描く− 岸本裕躬 −人物画展−=札幌市教育文化会館・4階ギャラリー(中央区北1西13) 地図C 現代の絵画で人物画といえば、若い女性や家族などを写生的に描いた絵や、モティーフは裸婦などですが「描き方」に主眼のある絵(つまり、たまたまモティーフが人物であって、それがだれであるかはどうでもいい)が大半です。たとえば、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」は、ああいうふうに絵を描いたことがモンダイなのであって、モデルがだれであるかはほとんど問題ではありません。 そういうふうに見ていくと、岸本さんの人物画は、ありそうでない人物画なのです。つよいタッチと鮮烈な色彩(岸本さんによると、画集を作る際に印刷屋さん泣かせだったそうです)という点では、表現に力点がおかれているようですが、若い女性の絵はすくなく、子供やお年寄りばかりをモデルにしているあたりは、作家の人生観を色濃く反映しています。 今回の個展は、9月に深川のアートホール東洲館が企画した展覧会の移動展で、内容はおなじです。1966−95年に制作された油彩26点と素描4点を展示しています。 ただし、油彩でいちばん古いのは、76年の「老コック」です。この絵のコックは、右手にフライパンを持ち、腰に左手を当てて、口をへの字に曲げています。ノーテンキではない、偏屈で複雑な人間像がそこにうかびあがっています。この一種の疲労感のような感覚は、80年の「病棟の朝」などにも漂っています。 あるいは「休憩室」。老人ホームの一室かどこかでしょうか。横たわっている男はまるで死んでいるようです。床のまばゆい赤にひっぱられたのか、図録では、壁のあざやかな黄色がちょっとくすんで印刷されています。 札幌在住、行動展会員。 3日まで。 輪廻キルト展=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) ここ数年間に制作されたパッチワークキルトの壁掛けがならんでいます。 90年代は、おなじ大きさの正方形の布をつなぎ合わせるなどの手法でつくられた、いかにもパッチワークらしいものですが、近作は、絵柄がイラストレーションに似てきています。 「星のお祭り」など、光る糸やビーズなどもちりばめられ、ほんとうにまばゆくて、きらきらときれいな作品が多いです。「森へ還る日」は、森の中に人魚がすわっているような縦構図で、じつにメルヘンの世界です。 こういう甘やかな世界によわいんだよなあ。 「絵が好きなので、布で絵をかいているようなものです」 と作者ははなしていました。 3日まで。 八木伸子展=三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3 地図B) 札幌のベテラン画家によるひさしぶりの個展。 およそ25点の油彩(一部水彩など)は、最大でも25号。すべて値段のついた小品展であることに八木さんはちょっと恐縮ぎみでしたが、小品といえども八木さんらしさの感じられる絵になっています。 パリの街角を描いたとおぼしき「マドレーヌの花屋」は、ビリジャンがさえていますが、けっして下品ではありません。ことし、パリへ行ってきた成果でしょう。 自宅附近を描いたらしい「宮の森風景(北海道)」は黄色がまばゆい。一方、「冬の野(石狩にて)」は、白い雪原に灰色の空、手前に枯れた草という縦長の構図で、典型的な洋画でありながら、東洋的な枯淡の雰囲気もただよい、その上北海道の風土を反映した絵でもあるという、八木さんの「現在」をあらわした1枚になっていると思います。 ファンケル(化粧品メーカー)の広報誌に札幌在住の小説家・藤堂志津子さんが寄せたエッセーに添えた大通公園のカット原画も展示されています。 春陽会と全道展会員、女流協会の委員。 3日まで。 '03 国画会版画部札幌展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階) 地図B 春の公募展では、春陽会と国画会がそれぞれ伝統ある版画部を有していますが、こと道内関連にかぎって言えば、北岡文雄、渋谷栄一、尾崎志郎、大井戸百合子、府川誠らの各氏を擁した春陽会のほうが優勢で、国展のほうは、昔は北海道とかかわりの深い川上澄生や斉藤清らが活躍していたのですが、近年は木村多伎子さんが唯一の会員でした。しかし、ここ数年、若手の入選が道内からあいつぎ、ことしは札幌の三島英嗣さんが「岡田賞」を受けるなど、めざましいものがあります。 今回の移動展は、道内初の開催です。 道内の出品者はもちろん、全国の会員46人全員(!)と新人賞などの受賞者7人、さらに絵画部会員の菅野充造さん(全道展会員)のコンピュータグラフィクスと山本勇一さん(道展会員)の孔版が2点ずつ賛助出品するという、都美術館の本展に見劣りしない内容になっています。 道外勢は、「原始OKHOTSK」の角田元美さん(千葉)が「PLATE MARK展」に出品していた記憶がありますが、そのほかはほとんど見る機会がなく、新鮮でした。なかでは、セルリアンブルーのきれいな藤田和十さん(富山)「月光」や、ミノムシを描いた松江喜代寿さん(青森)「北辺春秋’03−M−1」などが印象に残りました。 道内勢は、木村さん(岩見沢。道展会員)が、会員のコーナーに「ベナレスの女」を、北海道出品者のコーナーに「ベナレスの地」を出品。前者は、衣服の文様の精緻さに目をみはります。 唯一の準会員の内藤克人さん(同)「Column」「双塔・相対」は、古代ギリシャ風の柱と、画面を縦横に走る曲線とを軽快に組み合わせています。 三島英嗣さん(札幌。道展会友)「時のはざま」の連作は、闇の中に浮かび上がる遺跡のような階段や建物がモティーフで、ひそやかなたたずまいです。 めだつのは、シャープなシルクスクリーンを制作する道都大出身の若手たちです。 短い線の集積がざわめく兼平浩一郎さん(上川管内美深町)、現代都市の風景をたくみにコラージュし、ことし東京藝大の大学院にすすんだ宮口拓也さん、顔のクローズアップをくみあわせにぎやかな画面をつくる神田真俊さん(札幌)をはじめ、橘内美貴子さん(同)、小林剛さん(北広島)、三田寛明さん(同)も道都大生と思いますが、現代的な感覚が新風をふきこんでいます。 ほかに、竹田道代さん(札幌。全道展会友)、種村美穂さん(同。道展会員)、早川尚さん(同)、吉田敏子さん(北広島。全道展会友)が多彩な作品を出品しています。 2日まで。 千窯 高橋千弥作陶展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 瑠璃色のおちついた、深みのある食器のほか、さまざまな作風の茶碗や花器がならびます。茶碗は、萩ふう、信楽ふうなどさまざまですが、いちように高級感がただよっています。 金沢愼水彩画展もひらかれています。欧州と道内の風景がほぼ半数ずつです。 いずれも2日まで。 まだあるのですが、とりあえず4日以降までひらかれている展覧会については、あすにします。 最後に、すでに終わった展覧会について。 Atsuko『秋風と妖精展』=アベイルの小さな木(厚別北1の2の8の1) 色鉛筆で、妖精の登場するかわいいイラストを描いている札幌の鈴木敦子さん。 額装もじぶんでしています。 旧作が多いような話でしたが、「もみじ舞う石段」「メイプルマジック」など、秋にぴったりの作品がならんでいました。 アベイルの小さな木は、JR森林公園駅を下りて、左に向かって歩き、小野幌川の若葉橋と信号をわたり、「スーパーホクノー」のある角を左折、2本目の角を右折して、すぐ。徒歩6分。 不動産屋さんの一室にある、8畳間ぐらいのちいさな画廊でした。 |