展覧会の紹介
木村初江陶造形展 〜生命(ゆめ)の記憶〜 |
大同ギャラリー (中央区北3西3、大同生命ビル3階) 2002年2月28日(木)〜3月5日(火) |
あいかわらず活発に発表を続ける札幌の木村初江さん。個展のほか、造形集団のNAC、さらに昨年は北海道陶芸会にも加入するなど、活動の輪をさらに広げています。これだけのペースで、うつわでなく、陶芸を造形の手段として続けている作家は、道内でも数少ない存在です。白と黒、金属を思わせる光沢のある鈍い色を中心に、一見陶には見えない立体を作り続けています。
さて、右の写真は、会場の手前に配されたインスタレーション「白い記憶」です。
中央には玉砂利が敷かれ、そのぐるりを、10センチほどの長さの黒い陶の管が6列に並んで取り巻いています。
上下逆に置かれた白く丸い器は、大が3個、小が6個。ペーパークレイという土で薄く焼き上げた磁器です。大きな丸い器は、中に電球がしつらえられ、薄い表面を通してぼんやりと光っています。
陶の管はよくみると、表面に古代文字のような不思議な文様がびっしりと書かれています。
なんだか枯れ山水を思わせる、不思議な静寂感と存在感に満ちています。雪の上にあったらきれいだろうな、などと考えてしまいました。
会場の奥には、床に「記憶の痕跡」、壁に「記憶の断片」という作品が、対になって置かれています。
「痕跡」のほうは、銅板などと一緒に焼成した土の塊が三つ。重量感があります。いろんなものを焼いたので、窯の板がだいぶ傷んだと笑っていました。
「断片」のほうは、水を張った小さな同形の三つの器から、緑の麦が芽を出しています。
「故郷の山口県では、麦踏をしたりして、冬にも緑でいるのが麦なんです」と木村さん。
生命の根源のようなものを感じさせます。
右側の壁には、同じく「記憶の断片」という題で、やはり麦の芽が入った器十五個が並んでいます。
とにかく、既成概念にこだわらず、なんでもやってみようという心意気には、感服させられます。とくに陶芸は、きまりごとの多い世界ですが、そこであっけらかんといろいろなことに挑む姿勢を、今後も持ち続けてくれればうれしいと思います。