展覧会の紹介
新道展 会員小品展 |
2002年2月25日(月)〜3月2日(土)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3) |
さすが会員に絞っているので、一定水準を保っており、安心して見られた作品が多かった。
ここでは、ふだんの作風とは違った作品を出している作家を中心に述べたい。(市町村の表示ない場合は札幌在住)
- 佐藤萬寿夫「響A」「響B」
これまでの、広漠とした風景を感じさせる作品とは変わって、遠近に乏しい空間に、三角を横に連ねたような形が浮かんでいる光景を描いている。引っかいたような極細の線があちこちに走るなど、まティエールに細心の注意が払われている。
- 永井美智子「風達の調べを聞いてT」「風達の調べを聞いてU」
これまでと同様、白を主体にリズム感ある抽象画だが、コラージュなどを取り入れ、饒舌になってきた。
- 林教司「作品T」「作品U」 (空知管内栗沢町)
重厚な立体作品に取り組んできている作者だが、タブローを発表するのは久しぶりだと思う。前者はドーナツ型。後者は「ロ」の形。シンプルさゆえに、永遠の時間の流れのようなものが、そこはかとなく感じられる。
- 阿部みえ子「image(c)」「box」 (石狩市)
支持体のダンボールを黒く塗り、オイルチョークのような筆記具で線を自由に走らせた。小ぢんまりしているのに広がりのある作品。
坂元英子「ジャズタイム」「メモリー」 (空知管内栗沢町)
後藤和司「Stream新春T」「Stream新春U」
長沢晃「コンポジションT」「コンポジションU」 (苫小牧市)
三崎かおる「Walking T」「Walking U」 (福島県)
黒田孝「工場 T」「工場 U」 (伊達市)
藤野千鶴子「宙1−摩天子」「宙2−変天子」
細木博子「時の流れの中で」
中澤里美「10月の空」
荒川敬子「マリヤへ」「マリヤに」
- 福島靖代「ニンフ達の季節」「思考を超えるとき」
真っ赤な背景に、小さく描かれた図−という基本構図は変わらないものの、少女、花、雲といったモティーフ自体には、これまでのやり方をちょっと変えてみようという意欲が感じられる。
- 飯田和幸「舞」 (帯広市)
写実的に描かれたいくつもの青リンゴ。パステルという画材の幻想性がうまく出ていると思う。こういっちゃなんですけど、本展はここ数年あまり変わりばえのしない作品が続いているので、この画力を生かして新機軸を打ち出してほしいなあ。
- 中村哲泰「風景勇払」「黄昏」 (恵庭市)
構図は写実を生かしつつ、独特の色彩展開によって風景画の領野を開拓している中村さん。今作でも、空や雲に不思議な色の感覚がみられる。
- 香取正人「アンガス牧場T」「アンガス牧場U」
あいかわらずうまい。配色はよく計算されているし、筆遣いに快いリズムがある。構図は、思い切って画面を左右にすぱっときる形で、安定している。
- 古田瑩子「お告げの天使(T)」「お告げの天使(U)」 (石狩市)
油彩のような堅牢な画肌。ほんとに水彩かしらんと思うほど。ゼラニウムのような花と、天使を、写実的かつ丁寧に描き、主婦のお稽古ごと感覚に落ちそうでいて、独自の感覚をきちんと展開している。
- 松本道博「9月の雨」「残雪」
緑の階調豊かに、広がりのある風景画。針葉樹、畑、その他さまざまな緑を使い分けて、帯状に配した風景はすがすがしさを感じさせる。
- 東誠「食卓」 (函館市)
パロディー感覚あふれる作品を得意とするだけに、ごく写実的な静物画を出品してきたのには驚き。それもただ写実というのではなく、白をふんだんに使い、絵の具も薄塗りという特徴がある。本展が楽しみ。
飯田辰夫「漁村の一隅」 (函館市)
櫻井マチコ「明日、森へ行こう1」「明日、森へ行こうbQ」
金内敬子「想樹(こだま)」「森へ」 (苫小牧市)
- 居島恵美子「待つ」「連弾のあと」 (苫小牧市)
ピアノの鍵盤などをモティーフにした小粋な作品。とくれば、これが、昨年あたりから空間の把握に長足の進歩を遂げた作者の、やや古い作品であることは一目瞭然なのに、道新文化面も札幌タイムス「ギャラリー」欄もこの作品をわざわざ取り上げているのはなぜだろう。あまり先輩をあげつらうのもどうかと思いつつ、昨年の新道展の本展や先日の春陽会展をちゃんと見てるのかなあ、と疑念。
- 今本哲夫「犬吠崎」「亀串海岸」
ふつうの風景画ではあるが、岩を思い切って手前に配し、まとまった構図になっている。
- 西川孝「山湖」「山麓彩る」 (根室管内中標津町)
前者は「双湖台」から見たペンケトー。緑の階調が独特だ。後者は、風景画でありながら、実際に画面を埋め尽くしているのは色斑だけという、ほとんど抽象画に接近しているユニークな作品。とはいいながら、よく見るとしっかりと構図は組み立てられ、線が色と色の間から浮かび上がる。
中矢勝善「余市の冬」 (恵庭市)
佐野雅子「呟き」 (石狩市)
佐藤光子「黙」 (北広島市)
金子正「光導」 (苫小牧市)
有村尚孝「陽だまりの樹」「秋風の呟くまち」 (岩見沢市)
柳川育子「幻想(1)」「幻想(2)」
大畑和子「想」
山本家弘「スペイン」「中世の町」 (空知管内栗沢町)
古川康子「暮れる夏」「伝言」
- 勘野悦子「累々たる」「プロテリヤ」
ほかの水彩作家に比べると、ふつうの水彩の描法だが、前者はモティーフを一変させている。大きな花を手にうずくまる女性の横には、瓦礫が転がる。あるいは、昨年の9・11テロに触発されて描いたのかもしれない。
- 渋谷美智子「雪どけの頃」「秋日」
前者は、道庁赤れんがを題材にしながらも、前景には枯れ木だけが配され、車も人も描かれない。そういう情景が、渋谷さん独特のほわーんとしたタッチで描かれている。
- 工藤悦子「パインのかおり」「パインのある静物」 (江別市)
本展では、深みのあるブルーで、生命の原形質を思わせる不思議な物体を描き続けている工藤さんだが、今回のような別の展覧会では必ずといっていいほど、本展のイメージを裏切る作品を出すので見逃せない。今回は、どこか岸田劉生を思わせる、やや茶色がかった独特の色調で、写実的に果実を描写していて、またまた意外である。
- 高野三男「入江」「入江の街」 (北広島市)
彩度の高さ、藍色の輪郭など、いつもの特徴を生かした風景画になっている。
武村のぶ「祈り」
巖信栄「樽前残影」「漁川秋色」 (恵庭市)
氏家功「冬景」「浅春」 (深川市)
田村豊「静物「秋」」「静物「薔薇」」
櫻井由紀子[窓辺の静物1」「窓辺の静物2」
近藤弘毅「北の心象−厳冬」「北の心象−早春」 (檜山管内今金町)
西沢宏生「秋影」「春影」
上原菊枝「早春賦」
岩佐淑子「耀」「爽」 (石狩市)
佐井秀子「奏でる」「奏でる」 (胆振管内白老町)
太田眞紀「刻の配分」 (石狩市)
- 野又圭司「これは戦争か」 (空知管内栗沢町)
トランク型のボックスアート。左サイドには「9・11テロ」の現場の惨状をうつした写真が貼られ、右サイドには飛行機の模型を中央に、その周囲にはアラファト議長ら世界の要人のモノクロ写真が配される。野又さん宛てに届いた封書も収められているが、その表には郵便局の「白い粉が検出されましたので…」という不審紙が附されている。題材は明確だが、さて作者の意図となると、けっこう分かりづらかったりするのだが。
- 阿部国利「深い川にもどろう」「静かな水の中に」
こんどのモティーフはどうも、イトウのような魚を思わせる。もちろん、不気味な人間の顔がついているのは、いつもの阿部さんなんだけど。
- 田中まゆみ「メメントモリ」
田中まゆみ健在なり! 浅い箱の裏側が黒く塗られ、卵の殻がぽつぽつと配されている。中央部分には新聞紙がコラージュのように貼られているのだが、大きな見出しなどはあまり読めないようになっている。ただ、社会面下のおくやみ広告の黒い枠だけが透けて見えるのだ。これまでにも増して、静謐さと、秩序だった美しさが際立つ作品だと思った。
横山隆「風景」
阿地信美智「自律の融点」「止まない風」
坂本順子「月の子供」「月の手」
鈴木秀明「牡丹」 (函館市)
残念ながら「欠席」した会員の皆さんは次のとおり。
穴井亜紀子、池田公一、石川ユリ子、井出宏子、伊藤武義、伊藤英実、今荘義男、今多博勝、太田敦子、大沼清、大橋弘子、大宮健嗣、柏谷聰、金沢ひで、金子賢義、亀田佳夜、亀谷葉子、川西勝、川本ヒロシ、菊地道之、木下和男、小林暁、斉藤志え子、斉藤新一、宍戸輝夫、白鳥洋一、菅原勇、鈴木薫、千徳哲子、園田郁夫、高沢のり子、高橋芳子、竹内はるみ、田中進、長沢勇、西田靖郎、濱中正博、比志恵司、藤田京子、松久充生、丸山恵敬、水戸稔、宮澤勝忠、宮下章宏、山口大、吉田繁幸、吉田隆一、和嶋みわこ
(3月5日記す)
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