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あーとだいありー 2003年12月後半

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 12月29日(月)

 鵜沼人士展ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL) 地図D
 気品ただよう女性像の油絵を描き続けている鵜沼(うぬま)さんです。
 アカデミスムを思わせる、写実的で丹念な画風ですが、ただ細かさ一辺倒ではなくて、よく見るとけっこう大まかに描いています。
 その筆致と、フェルメールの絵のようにもっぱら左側からおだやかにさしこんでくる光のていねいなとらえかた、さらに、「冬の装い」の2作に代表される、黄金分割にのっとった絶妙な構図によって、見る人だれもがなごめる絵になっています。
 ただし、昨年あたりから、モデルの女性の背後を、室内の情景ではなく、花などを装飾的に散らす作品を発表しています(「FAFA@はまなす」「リラ咲く頃」)。個人的には、こういう絵のつくりかただと、人物以外の家具などに射していた光の調子を見ることができなくなってしまうのがざんねんなのですが、どのように絵が変化していくのか、当面は見守りたいと思います。
 今回の個展では、ほかに、100号の「リラ咲く頃」と8号の「窓辺にて」といった、同一のモティーフでことなる大きさの絵にどうやって仕上げるのか、見比べるおもしろさがありました。また、鵜沼さんとしてはそれほど多くない風景画(小樽運河を描いた「北浜橋から」など)や静物画もあるほか、鵜沼さんの絵(拍子を入れて13枚)を採用した来年の北電カレンダーもならんでいます。
 道展会員、札幌在住。
 絵の画像は、ギャラリーどらーるのサイトにあります。
 30日まで。

 ■鵜沼人士展

 28日の北海道新聞札幌市内・近郊版「あれから」は、1967年の手稲町合併がテーマでしたが、写真にうつっている町役場の絵は、富樫正雄さんの作品であることが読み取れます。コミュニティセンターに富樫さんの絵があるんですね。
 富樫さんは、ことし市立小樽美術館などで回顧展がひらかれたりして注目をふたたびあつめているリアリスムの画家です(1913−90年)。
 もっとも富樫さんは札幌との合併には反対していたのではないでしょうか。この文中には、反対運動のことはほとんど出てこないのが、皮肉といえば皮肉です。

 (註:上の文に誤りがあったので一部削除しました)
 12月28日(日)

 26・27日の続き。

 伴翼 solo exhibition=英広社(中央区南1東3)
 伴翼展の会場風景。中央の作品は「C」東京造形大を卒業したばかりの若手彫刻家の個展。
 抽象作品が多いですが、大理石、木など、素材がさまざまで、作風も多彩で、たのしめます。
「じぶんのあつかえるものの範囲をせばめることは、まだしたくないんです」
と伴さん。
 「akka」「C」は大理石のシンプルな作品。「akka」は、イタリア語で「H」の発音だそうです。
 また大木の切り株を思わせる「刈られた森」、トンボの羽のかたちを模した大作「揚力」などは、木にさからわずに削りだした、のびやかな木彫作品です。
 たのしいといえば、「あかり」などは、実際に天井からぶらさがっている電線につながっています(もちろん、大理石の中がくりぬかれているわけではないので、光りません)。「斜陽風景」は、タイルの1片とおなじ大きさなので、とくに場所をあつらえなくても部屋の中にかざれるというものです。
 会場は、南大通に面しており、以前はピアノの安売り店だったところ。「テナント募集中」という紙も貼ってあり、オーナーが、ギャラリーにしようか借り手をさがそうか、まよっているのでしょうか。
 29日まで。

 来年3月に札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)でひらかれる「札幌の美術2004」の、出品者20人がきまったようです。
 かっこ内のジャンル説明は、筆者(ヤナイ)が附したものです。
  • 阿部和加子(1947−。書、かな)
  • 江川博(1937−。絵画、抽象)
  • 加藤祐子(1953−。染色、インスタレーション)
  • 川上加奈(1980−。彫刻。全道展会友)
  • 小林麻美(1980−。絵画)
  • 齋藤周(1968−。絵画、現代美術。道展会友)
  • 酒井広司(1960−。写真)
  • 佐々木徹(1949−。コラージュ、平面、立体)
  • 新明史子(1973−。写真をつかった現代美術)
  • 杉田光江(1949−。植物をつかった現代美術。前衛生け花)
  • 高橋俊司(1958−。インスタレーション)
  • 武田享恵(1968−。工芸、金属。道展会員)
  • 辻井京雲(1944−。書、近代詩文)
  • 楢原武正(1942−。インスタレーション)
  • 野又圭司(1963−。インスタレーション。新道展会員)
  • 樋口雅山房(1941−。書)
  • 藤本和彦(1965−。立体。道展会員)
  • 古幡靖(1963−。ビデオなどをつかった現代美術)
  • 三上雅倫(1944−。書、前衛)
  • 吉田三枝子(1949−。書、漢字)
 公募展に属していても、それぞれのジャンルを超えるような活動をしている作家がめだちます。このなかでは、書家は新鋭というよりも中堅・ベテランばかりの人選になっているほか、江川博さんと川上加奈さんが、旧来の絵画、彫刻にわりとすんなり分類されるような作品をつくっていますが、あとの13人は「現代美術」とよべるような展開を見せています。


 
 12月27日(土)

 なんと6日ぶりの更新です。
 つれづれ日録にもあるとおり、いそがしかったのですが、それにしてもサボりすぎ。反省します。

 リクエストにおこたえして、ことしのベスト5のページを新設しました。
 新聞などより20日はおくれてますが、みなさんの投稿をお待ちしております。年があけてもOKです。
 筆者のベスト5は、数日中に選定するつもりです。

 それでは、週末にあわてて見た展覧会から。

 第5回企画展 平松和芳展ギャラリーART-MAN(中央区南4東4 地図G
 「スケジュール」には「ブリキを使った」と書いてましたが、あれは筆者のかんちがい。平松さんといえば、鉛です。どうもすいません。
 今回は、おもに鉛片を貼り付けたコラージュ作品など、28点。
 それも、10年から数十年をへて、古びた鉛です。
 ほかにも、手術用の小さなランプ、海岸でひろった琥珀、陶片、工事現場でつかう道具など、じつにいろいろなものが貼り付けてあります。地には、水彩で色をつけ、油をぬって仕上げています。
 なかでも、工場の床からバールではがしてきたという、塗料の塊がユニーク。噴霧器で製品に色を塗っていた現場で、長い年月の間に、いろいろな色が床につみかさなっていったものです。古い鉛や琥珀もそうですが、平松さんの作品のテーマは「時間」なのかもしれません。
 27日で終了。

 ■野外オブジェ展in栗沢 2003年8月、平松さんの「時のテーブル」画像あり


 杉吉篤個展=ギャラリーユリイカ(中央区南3西1、和田ビル2階 地図B
 杉吉篤「伝説」年末恒例の杉吉さんのアクリル画個展。
 今回は、8月の野外オブジェ展in栗沢にも展示されていた立体「魚座の終わり」(リンク先画像あり)のほかは、近年とりくんでいる動物のシリーズ十数点です。
 動物といっても、右の「伝説」など、想像上の獣を真横から描いたものです。
 あるいは、太古の昔、こんな動物がいたかもしれないと思うと、たのしくなってきます。
 「神話」連作などの小品は、茶系だけで描かれており、一原有徳さんの絵にも通じるふしぎなマティエールをもっています。
 「描こうと意識しないで、自然に出てくるかたちを描いたんです」
と杉吉さん。
 札幌在住。全道展と自由美術の会員。
 28日まで。

■02年の個展
■01年の個展
■2000年の個展(すべて画像あり)


 北側恵世写真展札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G
 藤女子大3年生で、写真部長の個展。
 モノクロおよそ120枚が展示されています。
 夏に行った鹿児島のスナップが中心。といっても、桜島を撮ったものは1枚きりで、観光というよりは、暑さとか、空気感のような微妙な感じがよく出ています。
 とくに「街」とか「熱帯植物園」などは、夏のひりひりするような感じが表現されていると思います。全体に静かな雰囲気なのは、藤女子調とでもいえるかもしれません。
 ただ、コンパクトカメラで撮ったのか、大半に日付が入っているのは、気になりました(しかも、98年になっている)。
 焼きは非常にうまいです。「She is 21 years old,I 'm also 21 years old」など、白い壁を背景に、白いユリを持った女性が写っていて、なんの違和感もないんですから。この諧調の出し方は、なかなかできることではありません。
 28日まで。



 12月21日(日)

 伊藤隆介映像個展屋台劇場まるバ会館(南区澄川4の7)
 Bプログラムは、プライヴェイトフィルム編で、2作品の上映。
 「風がふいている」は、8ミリで、2000年の1年間、身辺をつづったもの。
 大雪の積もった道路のショットから始まり、春、夏、秋と経て、冬の道路で終わる。
 作者の父親の伊藤隆一さん(道教大名誉教授で、木工、漆芸、デザインなど幅広い分野で創作、普及活動に活躍した)と祖母が亡くなり、本人も秋に札幌厚生病院に入院した年でもあり(筆者は、ぜんぜん知らんかったけど)、死と再生を凝視する視線の深いフィルムになっている。
 あるいは、こうもいえるかもしれない。なんでもない風景、空などを見るまなざしも、それらの死によって、深く彫琢されている、と。
 何度も猫が登場したあとで、ふいに、路上の猫の轢(れき)死体を写したショットが挿入される。わたしたちは、居ずまいをたださずにはおれないような気持ちにさせられる。
 もちろん、深刻なショットばかりではなくて、むしろ飲み会などのたのしいショットも少なくない。そして、満開のライラックや、枯れたプラタナスの幹など、植物を淡々ととらえたショットもあちこちに配されている。
 植物ということでいえば、春の東京の桜が印象ぶかい。そこに立つ、やせた父親と息子(作者)。ふたりは、なんの用事で東京へ行ったのだろう。
 春のあたりで、作者の同僚であった丸山隆さんがちらっと出てくる。まさかこのフィルムを撮ったとき、丸山さんが2年後に亡くなるだろうとは思ってもみなかっただろう。
 この個人的なフィルムの「明」の部分をささえているのは、もしかしたら、まるバの支配人である吉雄孝紀さんかもしれない。ファストフード店でトレイを運んでくるときも、イチゴのかぶりものを着けたままセブンイレブンに入るときも、にこやかな笑みを絶やさない吉雄さん。待望の長男の誕生は、このフィルムでいちばんはれやかな情景である。
 「小早川家の秋」における笠智衆のように、「あとからあとから生まれてくること」、それが、わたしたちの本当の意味での数少ない希望なのかもしれない。
 ただ、正直なところ、サイレントの60分は「版」よりつらいものがあった。どうして音がないんだろう。

 「パタ、パタ」は、最新作。DVD、10分。
 どこか志賀直哉の「城崎にて」を思わせる死の影は、この作品でも色濃い。
 「タイタニック」の引用。イトーヨーカドーの窓際で死んで干からびている虫の屍骸。手塚治虫「火の鳥・ヤマト編」。青空。
 「パタパタ」は、作者が中学生のときによく学校でかかっていた、イスラエルのフォークダンスの音楽である。
(訂正。イスラエルのフォークダンスは「マイムマイム」でした。失礼しました)

■吉雄さんとのビデオレター「札幌映像短信」


 菅原彩子 中西揚一 川村雅之ora painting art exhibition=扇谷記念スタジオ ギャラリーシアターZOO(中央区南11西1、ファミール中島公園地下) 地図E
 川村さんは、さまざまな支持体と画材を使ったドローイングとペインティング。「存在派」展などで見せた実験精神がさらに幅広くなっています。
 中西さんは女の子をモティーフにしたペインティング。エリザベス・ペイトンやローラ・オーウェンスなどとの同時代性を感じさせる平面的な塗りです。赤い壁の酒場でふたりの女性が、酒瓶とろうそくを挟んで語り合っている絵などは、物語がありそうでない、ふしぎな情景です。
 菅原さんは、まったく作風のちがう2点の具象画があっただけなので、ここではコメントをさしひかえたいと思います。
 24日まで。

 12月20日(土)

 北大写真部新人展は時間切れで、ついに行けずじまい。関係者の皆さん、ごめんなさい。
 きょうは、芸術の森美術館(南区芸術の森2)で、藤木正則さんのアーティストトークを聞き、いまや伝説となっている過去の「行為」の映像もたくさん見せてもらいました。
 それから屋台劇場まるバ会館(南区澄川4の7)で、伊藤隆介映像個展のAプロを観賞しました。
 学生が多かったですが、途中で急きょ椅子を追加する盛況ぶりでした。
 きょう上映されたのは、1993年の16ミリ「SENTINEL」、札幌では初の上映となる「ゴダールによる映画」、そして「版#2、#1及び#3」「版#9、#6、#7、#11、#5及び#8」「版#13、#14、#12及び#10」「版#15〜#18」「版#19〜22」「Songs(Plates#22) スタン・ブラッケージへのトリビュート作品)。
 「SENTINEL」は、米国Black Maria映画祭受賞、Ann Arbor映画祭入選とありますが、どこがSentinel(見張りの意)なのかわかりませんでした。
 むしろ、昆虫の屍骸、ディズニーランドの模型の動物たちと、その残骸のようなもの、廃墟になったビル、さらに、夕陽や経血の映像が、死と再生という要素を、くりかえし強調しているかのようでした。
 「版」シリーズは、言ってしまえば、フィルムのコラージュなのですが、それが絵画や詩などのコラージュと決定的にことなるのは、モノとして存在するだけではなく、上映もされてしまうことです。
 パーフォレーションや「KODAK」などの文字、あるいはフィルムを透過することなくスクリーンにとどいてしまう光の白さといった、一般的には、映像の上映では見えないものとして認識されていることがらや、たとえ見えたとしても、失敗とかノイズとして処理されてしまうことがらが、「版」では、上映作品を構成する要素になっています。
 さらには、ほんらいフィルムの音声帯域を認識するラインに、映像の部分が侵入してうなり声を上げ、上から下へとスムーズに流れてふだんはその存在すら意識させないフィルムのコマひとつひとつが、斜めに走るなどして、あらためて存在を主張しています。
 映像そのものは物質ではありませんが、フィルムは質量を持つ物質なワケで、「映像と実物」という問題意識は、伊藤さんの近年のインスタレーション「Realistic Virtuality」などにもつながっていると思います。

 21日は午後4時からBプロ、5時半からAプロです。
 すこし早めに行ったほうがいいと思います。
 まるバ会館は、地下鉄南北線自衛隊駅前で下車、セブンイレブンの右側の路地をまっすぐ行くとあります。

 きょうは、すてきな陶芸展をふたつみました。

 第9回 斎田英代作陶展=丸井今井札幌本店一条館9階美術工芸ギャラリー(中斎田英代作陶展。左から「雅」「舞」「爽」央区南1西2 地図B
 器は、いかにも和菓子が似合いそうな、清楚で、それでいて重々しさのない、卓上をたのしくしそうなものがならんでいます。
 桜や杜若などの文があわい色調でほどこされていますが、浮き彫りのように盛り上がっていることからわかるかもしれませんが、絵付けではなく、さまざまな色を配合した土を表面につけているのです。
 しかも、どの作品も、ろくろで成型していないため、独特のやわらかみがあります。
 「くわしい人ほど見に来ておどろきます。こんなに手間ひまかけてつくっている人って、あんまりほかにいないんじゃないかと思います」
と斎田さん。皿のほか、水差、コーヒーカップなども。
 ほかに、織部釉の茶碗などもあります。
 上の写真は、陶による彫刻のような作品で、左から「雅」「舞」「爽」。シンプルな造形です。写真では見にくいのですが、「雅」には、尾形光琳にインスパイアされたというカキツバタがデザインされています。
 「組織にしばられるのがいやで、一匹狼でやっております」
 23日まで。
 それにしても、石の蓋物をならべたマリヤクラフトギャラリーでの■昨年12月の個展とちがうので、びっくりしました。

 綿スゲ陶房 小品展=ギャラリーユリイカ(中央区南3西1、和田ビル2階 地図B)
 荒関雄星さんのぐいのみ後志管内京極町に窯をひらいている荒関雄星さんの個展。
 大胆に灰、自然釉をかぶった作品というイメージがありますが、今回は小品がメーンです。
 穴窯とガス窯とがあり、高いのは穴窯で焼いたもののほうのようです。とくに、会場の奥にならんでいた壺は、景色がぜんぜんちがいますが
「穴窯だと、割れることも多くて、大きな壺はなかなかできない。上トロみたいなものです」
と荒関さん。
 マグカップや皿、コーヒーカップなど、いろいろありましたが、辰砂の赤紫がうつくしいぐいのみが1000円だったので、買ってきました。
 「北海道の陶芸は、益子焼あたりにくらべると高い。益子に行くとセンターがあって、作家の名前を出さずに売っている。北海道は贈答品需要ばかりで、やっぱり生活に根ざしてないんでしょうね。ぼくもよく仲間から『安い』と言われますが、ほかが高いんだと思いますよ」
 21日まで。

■江別市セラミックアートセンター企画展「陶のかたち」(03年8月)
■02年5月の個展
■01年4月の個展
■01年6月の個展


 Masayuki Kagei Exhibition=ギャラリー市田(中央区北1西18、地図D
 石狩市の20代、景井雅之さんの2度目の個展。
 前回と画風を変えて、ほとんど青だけによる画面構成の絵をおよそ10点ならべています。
 抽象画といってもよい絵もあれば、女性の顔が中央に浮かぶもの、馬が描かれているものなどさまざま。
 21日まで。


 
 12月19日(金)

 昨春札幌からドイツに移り住んだ新進の音楽家、畑中正人さんからメールが届きました。
第54回ベルリン映画祭プログラム「タレント・キャンパス」に
作曲家として公式招待される事が決定しました。
来年2月です。

ベルリン映画祭HP
http://www.berlinale.de/

タレント・キャンパスHP
http://www.berlinale-talentcampus.de/

世界各国3600以上の応募があった中から選ばれたそうです。
なんか、本人はいまいちまだピンときてませんが、
やっとこっちの映画界への扉が開きそうな予感がしています。

あとは自分の実力がどこまで通用するか。
やるだけやってきます!
 □畑中さんのサイトはこちら

 ベルリンは、カンヌ、ベネツィアとならぶ世界三大映画祭といわれていますが、こんなプログラムもあるんですね。
 畑中さん、すごいですね。

 そういえば、札教大出身で、北九州に住んでる出田郷さんからもメール。
 来年からオランダに1年ないし2年、移住するとのこと。
 レジデンスでしょうか?
 □出田さんのサイト


 さて今週は、学生の写真展でふたつ、いいのがありました。
 で、まずおわび。じつは、案内状をいただいておきながらまだ北大の新人展(クラーク会館)に行ってないんです。
 あす20日、最終日ですが、見に行かねば…。

 以下の展覧会は、すべて21日までです。

 札幌大学写真部学外展札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G
 全体的に、いろいろやってみようという実験精神のある人が多いこと(けっして成功していない例も多いけど、それはそれとして)、学生の写真展にはめずらしく鉄道とネイチャーがあるなど非常にバラエティーに富んでいる、ってことで、おもしろい展覧会でした。
 ちょっとびっくりしたのは、吉永謙介さん。
 日本中を旅行した際に撮った写真からえらんだモノクロ「旅途」は、「ほんとに1年生?」といいたくなるほど、完成度が高いです。どのショットも、心象風景として、完成されており、しかも、だれかの亜流ではない。あえて言えば、うますぎるのが難ではないかといいたくなるほどです。
 塩見翔さん(3年)「アメアルキ」は、ガラス窓に写った水滴など、雨の日の表情。
 佐藤蘭子さん(2年)「一片の氷心」は5枚組み。最後の1枚がなければ、よくある「氷のこんな美しさもとらえてみました」写真なのですが、最後にタバコの吸殻をあえて入れたことで、氷の「ありのまま」さがきわだった、おもしろい作品になったと思います。
 木幡りかさん(3年)は、クリスマスがテーマ。モノクロは、フィルムを使わず、直接印画紙にモノをやいたようです。また、篠原正實さん(同)は、アートエマルジョンをつかって、印画紙ならぬ「印画木」に都会の風景を焼きこんでいます。こういう実験って、たのしいですね。
 坂井菜穂子さん「無気力なカメラ」は、冬の日のなにげないショットが印象的。
 ほかにも、興味ぶかい作品が多くありました。
 ただ、人によっては、モノクロの焼きがやや軟調すぎるかなという気がしないでもありません。ハイライトを白く飛ばさない−という教えをまもっているのは正しいですが、うーん、どう言ったらいいのかな。

 北星学園大学写真部「新人展札幌市資料館(中央区大通西13 地図C
 北星はOBの教えがいいんでしょうか? モノクロが多いですが、1年生としては、焼きはかなりいい線いってると思います。
 武田Kさん「好きな場所」は、低めの視点が印象的。空がひろくなって、風景が生き生きてくるんですよね。
 八塚惣さん(名前ちがってたらごめん)「おもいで」「教室」「寒」などの作品は、なんだかすごくなつかしいです。「寒」など、筆者が35年前に見ていた冬の風景そのものではないかという気がするくらいです。小川真司さんもふくめ、こういうなつかしい風景を見つけてくるのがうまいですね。
 岩城さやかさんも、風景のとらえかたが独特です。フィルムの管理には気をつけてほしいと思います。

 もうひとつ、学生とOBによるグループ展も、おもしろかったです。

 第37回道都大学中島ゼミ展 版と型をめぐって札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G
 シャープで現代的なセンスのシルクスクリーン作品で道内の版画界に新風をふきこんでいる道都大の中島ゼミの展覧会です。例によって、卒業生も多数出品していますが、とくに表示はないので、だれがOBでだれが学生なのかははっきりしません。
 白石達世さんは、「食事」などで、有機的ともエロティックともとれるふしぎな線の横溢した世界を描きます。
 小林剛さん「三都物語」は、送電設備のシルエットが中島ゼミ的。
 佐藤郁美さん「月食」。荒々しい縦線の氾濫。
 神田真俊さん「乱世」は、爬虫類の濃いイメージが乱舞します。どこか横尾忠則的なポップさ。
 渡辺政光さん「昇華」は、乱反射する都会のイメージをたくみに作品化しています。
 橘内美貴子さん「逢初め」は紫が印象的。
 OBの森迫暁夫さん「ウラニワノソボ」は、かわいいイメージがところせましと躍る、まさにモリサコさん以外には生み出せない独自の世界です。
 シルクスクリーンとならんでもうひとつの柱、染色は、いつもより作品数がすくなめ。小竹由紀さん「休み時間」の、ラフな線の感じがよかったです。
 さて、ミカミイズミさんは、ひさびさの「ワラビモ」の新刊、5冊目をリリースしました! これが、どれほど奇想天外な発想のコミックスか、あなたもぜひお買い求めの上、笑いつつたしかめてほしいとおもいます。
 「ワラビモ」については、1月のあーとだいありーをごらんください

 市民ギャラリーでは、東海大学第四高等学校美術部・中等部美術部校外展札幌西高等学校美術・書道展もひらかれています。
 札幌西高は、3コード系の谷越亮太さん「緊張する男」、地味ながら自然を誠実に見つめた芦野琴美さん「晴れた日に」など、力の入った絵や工芸がありました。長沼佳子さん「ミシン」は、いい絵だけど、どうして縦構図にしなかったの?
 書は、臨書に力を感じました。
 東海大四は、昨年にくらべると相当地味です。どうしたんだろう。

 あとは、小さめの絵の展覧会が多いです。

 D.HISAKO展札幌市資料館(中央区大通西13 地図C
 予定表にはなく、Yさんから聞いてびっくりして見に行きました。
 例によって、どこか哲学的な哀しみすら感じさせるネコの絵なんですが、やや画風が変化してきています。
 ネコが、全体を覆う水色や黄色に同化して、輪郭線がもりあがって表現されるだけの透明な存在になっています。月光に透けちゃっているというか。
 あまりのシンプルさに、筆者は、熊谷守一を思い出しました。
 1点、ネコがジャズバンドを演奏している絵がありました。

 札幌市教職員組合教職員美術展=同
 新道展会員の高沢のり子さんが、「顔」のシリーズを2点出しています。

 第7回 藻岩山の花たち 高橋俊郎水彩画展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C
 2年ぶりの個展。
 水彩画71点のうち、43点は、高橋さんが通いつめているモイワ(藻岩)山の登山道などで見かけたエンレイソウ、シラネアオイ、ヒトリシズカといった可隣な花々の絵。例によって、スケッチしたときの情景などを記したキャプションを読むことも、高橋さんの個展のたのしみのひとつです。キャプションの札の片隅に、クマゲラやチョウの絵が小さく描かれていて、興味深いです。
 今回は、モイワランなどのラン類がわりあい多いですが、こちらは説明の端々に、あいつぐ盗掘への高橋さんの怒りが感じられます。
 モイワ山は、札幌市民の誇りです。市街の南西にあって、(近年でこそ邪魔な高層住宅が増えてきたけど)市内のたいていの場所から望めます。山の原生林は、特別天然記念物に指定されています。にもかかわらず、市域の北側は「中央区」なのです(のこる大半は南区)。
 しかし、あまりに身近な山だからこそ、盗掘も多いんでしょうね。
 ほかに、初の試みとして、キノコの絵と、北大農場などから見た山の絵も展示されています。
 つい10年くらい前までは、北大農場(といっても札幌駅の北西2キロくらいなのだが)からは、テイネ(手稲)山からモイワ山にいたるパノラマが見えたのですが、近年は市立病院などの高い建物が増えて、「都ぞ弥生」の風土もぶち壊しでありますな。

 三明伸水彩画展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B)
 定年後ばりばりと絵筆をとっている札幌の三明さん。画業の充実も、うらやましいというか、今回は、作品の半数以上が、海外(ドイツ、オランダ、ルクセンブルク)でのスケッチをもとにした風景画だったので、いやー、ほんとにうらやましいです。
 三明さんの境遇をうらやむ、というよりも、その和めてやすらげる絵の空間が、うらやましいんですよね。絵に幸福感が満ちている、というか。うまくいえないんですけど。
 今回は、ゴッホ美術館を巡るのがおもな目的のツアーだったらしいんですけど、ルクセンブルクの田舎の宿に滞在してスケッチ三昧というゆったりした日程だったそうで、そういう話を聞くと、はやくリタイアしたいという気分になってきます。
 札幌や旭川のなにげない風景もあります。東川(上川管内)の湖水と、宮城の風景画がならんでいるのですが、いずれも朝の風景なのに、前者が爽快でかわいた空気を感じさせるのに対し、後者がいかにも湿度75%という感じがするのは、ふしぎな体験でした。

 ■02年12月の個展

 同ギャラリーでは、器三人展もひらかれています。
 上田隆之、上野大作、恵波ひでお(NAM工房)の3氏で、けっして酒器ばかりではありません。
 恵波さんは朱をうまく配したうつわを出品していました。

 12月16日(火)

 北海道版画協会小品展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A
 きょうが最終日。
 ベテランの出品がすくなくなって、新顔や、わかい女性が多くなった印象。全道展会員は半分くらいしかいないんじゃないか。
 そのなかで、萩原常良さんが「にわか雪」など、北海道の風土への愛着を秘めた愛すべき作品をならべていて、ほっとしました。