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あーとだいありー 2004年5月前半
5月15日(土) 伝統工芸新作展=三越札幌店(中央区南1西3 地図B)10階催事場 ことしは図録を買っておらず、あまりじっくり見ていません。ごめんなさい。でも、厳選を勝ち抜いた力作がそろっており、職人芸の見事さは、例年とかわっていません。 これでも、工芸のさかんな京都や金沢など西日本の作品は展示されていないのですから、日本の工芸はまだまだ作り手がたくさんいるのだと感心させられます。 で、あまりたしかなことはいえないのですが、全体として、具象的なかたちや絵付けよりも、シャープでモダンなデザインの作品が好まれているような感じがします。 道内勢で特筆したいのが長谷川房代さん(函館)の有線七宝蓋物「彩紋」です。緑の三角形のつらなりは、北海道の山とも、流氷の海とも見えます。伝統的な技法で北海道の風土を表現した稀有な作品になっていると同時に、コンパクトな大きさでスケール感を表現しています。 塩澤啓成さんの友禅訪問着「すすきの」は、直線を生かしてシャープな文様にしたススキが特質。緑の中間色の地も美しい。札幌の歓楽街とは関係ありません。 ほかに、(メモの字がきたないので、間違っているかもしれません) 岩山翠娥さんの型絵染め着物「秋香」 北川智浩さん「白磁組鉢」 中村裕さん「山並文組皿」 大野耕太郎さん「黄瓷扁壺」 西村和さん「網代文扁壺」 板橋美喜子さん「青白磁緑花文組皿」 尾形香三夫さん「練上四方皿『空中楼閣』」 村木昭彦さん「栓造重箱」 剣持小枝さん「ぼくのチャンネル」 ■02年の伝統工芸新作展 三越に行ったら、9階のギャラリーにも足を運んでほしいと思います。 ヨーロッパの詩情を描く- 川 雅吉 油絵展は、1920年小樽生まれの画家の熟達した画法が堪能できます。 「雨後(バードウインペン・ドイツ)」(P30)や「キューケンホフ」「川辺のいこい(ワイマール)」など、オランダ、ドイツ、フランスの、緑や水のある風景が中心。 筆を走らせるというよりは、置いていくといったほうがふさわしい、ていねいで落ち着いたタッチ。細かすぎず大まかすぎず、ちょうどいい筆のタッチが、心地よいリズム感を漂わせます。 また、色調がどことなく赤みを帯びて、夕方のようななつかしさを感じさせるのは、おそらく下地に朱をしっかり塗っているからだと思われます。その色が、画面全体に残響しているのでしょう。 「麗澤大学の四季」と題した油彩、版画コーナーを併設しています。 また、永井恒夫 急須展は、49年に宇都宮市に生まれた陶芸家の、道内初の個展。 ぐい飲みなどもありますが、中心は小さい急須。織部、緋襷、赤絵、黄瀬戸など、なんでもあります。 桃のかたちをした急須や、唐獅子牡丹急須、猿急須など、遊び心たっぷりのものもあります。 いずれも17日まで。 以下、14日に、時間切れのため更新できなかった分です。 すべて16日までです。 2004 北釉会=札幌市民ギャラリー(中央区南2東6、地図G) 1981年、道内の七宝サークルの、合同の発表の場として発足しました。 現在、アトリエアール、アトリエS、七宝あかしや、シルクロード、彩釉会(以上札幌)、オパールの会(砂川)、石狩川(江別)、麻釉会(同)、釧釉会(釧路)、七宝友の会(網走)、フリットの会(帯広)、釉美サークル(石狩)、ガーベラ(赤平)の13団体111人が加入しています。 今回はメンバー69人と、会員外3人が、額絵95点、アクサせりー55点、立体5点を出品しています。 三浦良子さん(アトリエS)「イギリス紀行」。コッツウオルズのかわいらしい村だそうです。写実的な描写が目を引きます。 金内淳子さん(石狩川)「ふくろう」「四季」。こちらも写実的で、白と緑のコントラストがあざやかです。 伊藤哲さん(オパールの会)「双鷲」。2羽の鷲が力強く描かれています。 能登誠之助さん(彩釉会)「chasm(裂)」。最近能登さんは「裂」をテーマに複数の金属をくみあわせた作品をつくっています。 山口七子さん(シルクロード)「妖精の森(花冠)」。メルヘン調の作品。森の緑の諧調が豊かで、シダや木々が美しく表現されています 横山利子さん(七宝あかしや)は、時計とくみあわせた「宇宙時計」などを出品しました。七宝あかしやは共同作品として大作の絵「情熱」も出しています。 第37回 さっぽろくろゆり会展=同 黒百合会は、ご存知のとおり、1908年に旗揚げされた北大(当時は札幌農学校)の絵画サークルで、道内でもっとも古い美術団体のひとつです。 この展覧会は、OBによるサークル展で、全体としては日曜画家の気楽な発表の場となっていますが、道展や全道展の会員もいます。 たとえば、石家修さんや武田誠一郎さんの静物画は、いかにも日曜画家らしい、屈託のない伸びやかな筆つかいとおだやかな色調で、見ごたえのあるものになっています。 このサイトでもおなじみの坂元輝行さんは「北大の四季」と題し、構内の古い建物を描いた4点の油彩を出品。 田中盛夫さんは、パリが日本人にとってはるかな憧れであった時代の気持ち(これは、いまの人にはなかなかわからないでしょうが)が画面に横溢する、にぎやかな水彩画を、毎年道展に出しています。出品目録と異なり、「風景」と題して4点を出品。このうち「風景 C」は、パリの街の建物を立体で表現しました。 山下脩馬さんは「小樽運河・冬」「古い工場」の油彩2点。群青の輪郭線と、味のあるマティエールが特徴です。 ほかに、印象派風の点描が印象的な元島英雄さん、穏当な写実の八鍬利郎さんなど、計30人が出品しています。 榊原彰さんと大谷敏行さんの遺作も特別展示されています。偶然でしょうが、お二人とも霧にかすむ海外の風景を描いています。 第6回 蒼樹会北海道支部展=同 19人が1ないし2点を出品。すべて油彩です。 齋藤義雄さん「運河春映」は、古い北運河がモティーフ。 桜井寛さん「眺望」は高台から見た後志管内岩内町の全景が題材と思われます。紅葉の山の、手前に配された白い木々が効果的です。 下山康麿さん「秋日」は、背後の山の木々をぼかして描き、中央のわらぶき屋根の民家を浮き立たせています。手前の、水を抜いた田が、わびしい情感をかもしだしています。 山村哲雄さん「十勝岳」は、ワインレッド色の山容が特徴。 空知管内新十津川町のベテラン田村隆さんは、ことしは穏当な構図の絵画です。「廃屋」は、屋根や板壁、雪など、材質感の生きた描写。左に廃屋、右に平野という構図もダイナミックです。 百島忠雄さん「大地の彼方」もベテランらしい味わい。前傾から遠景へと、草や木の列が、やや右上がりに繰り返され、リズム感のある構図に感服しました。 光画会 レッド&ブルー展A=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) 浅野明子個展=同 「光画会」は、山崎幸治さんの主宰する絵画グループ展。山崎さんと11人が、油彩と水彩を出品しています。激しいタッチの人物画や中心で、抽象もあります。 浅野さんは「光画会」にも出品しています。おもに茶色や灰色で描かれた、顔のはっきりしない人物を手前に置き、背景を中間色のくみあわせで構成した絵が多いです。ことしは、背景を緑の森でまとめた絵が何点かあるのが特徴です。 光画会のほうは、タイトルどおり赤と青を主にした絵がならびます。山崎さん「水中花」は、水色の中にとけて消えてしまいそうな女性を描いています。 第7回 北斌個展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) きた・つよしさんは、クリスチャンで、旧約聖書の場面を油彩の小品にしてシリーズ化した個展を精力的にひらいており、とても70代とは思えぬ活動ぶりです。ことしは「詩篇」を作品化しました。 作風は、素朴派というか、少ない色数ですばやく描いています。 青い髪と髭、緑の長衣の人物が大半の絵に登場しますが、これは「詩篇」の大半の作者で、主人公でもある古代イスラエルのダビデ王だそうです。 「むかしは道展に入選したいとか、まだ考えが子供だったですね。いまはじぶんのやりたいように描いておるです」 こんどは新約聖書にとりくむそうです。 第6回母さんの道草写真展=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) 札幌在住、上川管内風連町出身の工藤瑠美子さんが毎年ひらいている写真展。 今回はカラー24点をならべています。 キャプションがいっさいないのが特徴。エゾリスや、カルガモの親子、一面のヒマワリ畑などですが、コンテスト写真にありがちな「1点豪華主義」の重苦しさがなく、スナップのような気楽さがどこかにあるので、見ていて楽しさを感じます。 花あかり vol]V 手織り・染色教室作品展=同 タペストリーやテーブルセンターなどもありますが、あかりがめずらしい。 30センチくらいの立方体の枠組みに、染色をほどこした布を貼っています。夏向きの、すずしげな感触です。 |
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5月14日(金) きょうは、16日までの展覧会をたくさん見ました。 ただひとつ、15日かぎりで終わるのが、非・連結展 vol.5=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A) 7人の参加者がみなばらばらのことをしているのがユニークです。 のざわゆきおさんの、沖縄をテーマにしたひとこまマンガの連作がおもしろかったです。講師が時間に遅れてくるとか。 脇坂淳さんは、木による立体と、抽象画。 大野玲さんは裸婦デッサン。 小林孝人さんはキノコのカラー写真。 高坂史彦さんは犬を題材にしたポップな絵画。 小口祐子さんはコラージュなど。 たぴお主宰の竹田博さんは、抽象一歩手前にまで構図が整理された風景画など数点の油彩を組みあわせて展示しています。 第4回 北の群展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C) 道内の抽象画を代表する画家だった菊地又男さんを中心にはじまった、抽象の多いグループ展ですが、第1回展のあと菊地さんが亡くなり、その後はすこしずつメンバーの出入りがありながらもつづいています。 第4回ともなると具象画の点数もしだいに増えてきているようです。 斉藤勝行さんは、檜山管内奥尻町で土木作業員として働きながら、毎年このグループ展で、社会的なメッセージ色のつよい作品を発表しています。 斉藤さんの絵は、通り一遍の平和賛美などではなく、じっくりと社会を見つめて制作したもので、その点で評価したいと思います。 ことし7点出品しているうち「ナガサキ」は、ベニヤ板4枚を横にならべた大作です。 中央上部の鳩の目に赤が差されている以外はすべてモノクロームの作品は、デッサン用の木炭で描かれています。 「むかし住んでいた岩内で大火があったとき家畜などが焼け焦げて炭化していた。長崎でも大勢の被爆者が炭になってしまったにちがいない」 という思いをこめて木炭をつかったそうです。 図柄の上では、右上の電球、さけぶ馬など、やはり戦争の惨禍を告発するモノクロの絵であるピカソの「ゲルニカ」を引用していますが、鳩、鐘、きのこ雲、泣く母子、かたむいた電柱などに、平和への祈りが反映しているようです。 お兄さんの斉藤邦彦さんは「白い原野の幻想」。白と灰色を基調とした広がりのなかに有彩色の矩形が浮遊する、北方ロマンを感じさせる作品。 木本アツ子さんは、ピカソのキュビスムの影響が感じられる「ギターのある静物」などを出品しています。 ことし初参加の北村トシヒロさんの「化身プロセスの断片」と題した連作2点は、クレーよりも太く勢いのある線が画面を縦横に躍ります。 おなじく初参加の鶴岡とよ子さんは、切り絵を3点。魚群などがモティーフで、すっきりした造形です。 昨年からくわわった三浦逸雄さんの「インテリオール」シリーズは、妙な絵画で、いちど見るとわすれられません。殺風景な部屋でバッグを手に立ち尽くしているワンピースの女性も、犬とあそんでいる裸婦も、顔は描かれていません。がらんとした室内が、人間の存在の不条理さを感じさせるのはふしぎです。 岡田玲子、桑村幸子、佐藤美雪(松本弥雪)、北村弘昭、斉藤千鶴子、小崎順、ニムエヒロミ、小林ヒロミの各氏も出品。 ■03年(画像あり) ■02年(画像あり) ■01年 第19回 北の日本画展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 道展の会員、会友、一般入選者らが出品する道内最大の日本画展。 もちろん道展に出していなくて、日本画にとりくんでいらっしゃる方もすくなくありませんが、全道展と新道展が日本画をあつかっていないこともあって、この展覧会がかなりの部分を網羅しています。 ただ、出品者が多いのはめでたいのですが、ひとり1点で、20−50号前後の作品が多いので、食い足りなさがのこるという面もあります。 写実的な傾向の絵が大半です。ベテランが安定した力量を発揮する一方、若手の意欲的な展開が目立ちました。 同世代の人物をもっぱら描いてきた今橋香奈子さん(芦別)の「静日」。花瓶、リンゴなど、個々のモティーフは、写実的に描かれていますが、リンゴがほとんど真横から見た図なのに対し、透視図法だと斜めになるはずのテーブルセンターの文様は、正面を向いています。 カップの底部が、真横を向いているのに、口の部分がまるいのは、キュビスム以後のピカソを連想させます。 ただし、テーブルクロスなど平面的な文様の処理は日本画の得意とするところなので、ピカソほどの強烈な違和感はありません。 架空の都市を精緻に描くことでキリコとはまた違ったふしぎな感覚を漂わせる朝地信介さん(留萌)ですが、今回は、その名も「ゾウ」。デフォルメされた白象は建築物のようにも見えてきます。 空と飛行をテーマに高い描写力で凝った画面をつくってきた吉川聡子さん(札幌)は、めずらしく一般的な植物画を出品してきました。緑の葉を、陰影をあまりつけずに、諧調ゆたかに描き分ける技量には感服します。 小林文夫さん(同)「斜里」は、冬の林の木々をリアルに描こうとするほど装飾的な要素が強まってしまう、ふしぎな森林がモティーフ。斜里岳のスカイライン近くに置かれた薄桃色が味わい深いです。 上西知子さん(同)「森(detail)」は、近くからだとそれほどでもありませんが、離れてみると写真のように見える絵です。おそらく、写真で言えばピントがあっている部分を細密に、そうでない部分をぼかして描いているのだと思いますが、変わったこころみです。 中島涼沙さん(同)「水に遊ぶ」は2匹のカエルがモティーフ。いよいよ視点がミクロになってきました。 西谷正士さん(登別)「倶利伽羅峠」。オレンジ・茶系の丘陵地帯にのびる一本道。構図的には、東山魁夷の名作「道」を思わせないでもありませんが、荒漠とした風景が心にのこりました。 河内厚子さん(札幌)のマルメロは存在感があります。 ベテラン勢では、千葉晃世さん(同)「北の風景」が、オレンジを背景に、墨で黒々と樹木を描き目を引きました。オレンジの下に青緑が塗られており、画面に厚みをもたらしています。 川井坦さん(同)は、「唐に来たゾウ」という題名はいかがなものかと思いますが(笑い)、古い布の文様と、その上に置いた象の置物などとが、渾然一体となっています。陰影がなく平面的な日本画の特質を逆手に取った描写といえるかも。 中野邦昭さん(同)のこまやかな女性像、大塚さつきさん(東京)の荘厳な富士と月、本間聖丈さん(小樽)の牡丹なども、安定した仕事で、印象にのこりました。 ■第18回 ■第17回 ■第16回 |
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5月13日(木) コラージュ展=ギャラリーART−MAN(中央区南4東4 地図G) 千葉英希、OTTI、奈良知佳、糸井崇史の4氏が出品。 技法でくくるグループ展もめずらしいですね。 奈良さんは、3月のSTEP2004でも発表した「楽園追放」のほか、もう1点ベニヤ板に小さな写真と、絵の具のぶちまけによる「カムフラージュ」を発表しています。パンチのある作品です。 千葉さんの作品も大きいです。アフリカのかたちをした支持体にキノコの絵をたくさん貼り付けた作品の横には、さびた鉄の板が白く塗ったテーブルに置かれたものもありました。 15日まで。 近代日本画にみる女性たち=道立近代美術館(中央区北1西17 地図D) STV(札幌テレビ放送)が大量のスポットCMを流して宣伝に努めているためか、平日の午前にもかかわらず、なかなかの人出。 顔ぶれも、竹内栖鳳、寺崎広業、下村観山、川合玉堂、上村松園、鏑木清方、松岡映丘、小林古径、竹久夢二、川端龍子、前田青邨、村上華岳、堂本印象、小倉遊亀、伊東深水、棟方志功、橋本明治、石本正、片岡球子…と、豪華です。 菊川多賀の絵は道立近代美術館所蔵ですが、あとはほとんどが道内初公開だそうです。 和服に興味のある女性、美人画が好きな人は、行く価値のある展覧会だと思います。 そもそも「近代日本画」というくくりが、ひっかかるんだよなあ。 筆者ごときがいまさら指摘するまでもなく、「日本画」というのは、昔から日本にあった概念ではなく、洋画の流入という事態をきっかけに、それまでの大和絵や浮世絵、狩野派、四条派などを土台にあたらしくつくられた概念なわけです。 だから「中世日本画」とか「近世日本画」というのは、ない。 しかし、柄谷行人じゃないけど、起源というのは往々にしてわすれられます。 この展覧会にならんでいる美人画は、浮世絵の伝統をひきついでいるかのようなそぶりをしています。 まあ、それは誤りではない。筆者が、あらためてなるほどなーと思うのは、日本人が絵を描くと、平気で「空白」の部分をつくっちゃうんだなーっていうこと。マンガでも同じだよね。 西洋人はやらないですよね。セザンヌ以前は。 ファン・エイク以来、すべての空間をびっしりと埋め尽くす。背景はあっても空白はないのです。 栖鳳の代表作「アレ、夕立に」にしても深水の「ささやき」にしても、バックは描かれていません。 まだまだあるぞ。 陰影が、まったくといっていいほどないこと。 輪郭線が描かれていること。 伊藤小坡「歯久(はぐ)ろめ」のように江戸期の風俗を題材にしていること。 じっさい、小坡や深水の絵を見ていると、明治維新なんてなかったなんじゃないかと錯覚しそうです。 でも、だからといって、明治以後の日本画が、まったく江戸期から連続したものとしてあるというふうに考えるのは早計ではないでしょうか。 浮世絵と異なっている点として、春画がないことが挙げられそうです。 もうひとつは肉筆画であることです。 浮世絵があくまで大衆向けに、大量に出回ったものだったのに対し、「日本画」は、あくまで「芸術」として、ある程度は、お高くとまったものでなくてはならなかった。 だから、この展覧会の和服の女性たちは、性的なものを隠蔽しているのですが、だいたいきれいなねーちゃんを絵に描くという時点で性的な動機がまったくないことなんて考えられないのだから、彼女たちの官能性は、なんだか隠微というか、ねじけたかたちで露呈せざるを得ないわけです。 すくなくてもこの展覧会で裸婦が登場するのは、明治の最初をべつにすれば、1933年の龍子を待たなければならないのです。 また、いくら江戸期をなつかしんでいたとしても、急速な時代や社会の移り変わりをまったく反映しないで芸術が存在するはずもありません(そういうジャンルもありますが、それはつまらない芸術だと筆者は思います)。 たとえば、やはり33年の勝田哲「朝」のように、モガ(モダンガールの意)の姿を明るい色彩でとらえた絵などは、誰でも目に付く例ですので、ここでは小坡の「つづきもの」を挙げてみましょう。 この絵は、和服姿の女性が新聞小説を読みふけっているようすを描いています。 これは、なんでもないことのようで、じつはたいへんなことなのです。 初等教育が普及するまでは、文字が読めるのは、上流階級の人間にかたよっていたはずなのです。日本は教育熱心な国柄だったとはいえ、女性に教育なんぞ必要ないという偏見は根強く、つい近年まで田舎には 「女のくせに新聞なんて読んで」 という老人がいました。 これは1916年(大正5年)の大阪朝日新聞。となると娘が読んでいるのは、漱石の「道草」かもしれません。 で、これはごく個人的な感想。 「いかにも日本画」っていうのはもういいから、パンリアルとか横山操とか内田あぐりとか、今回みたいのでない堂本印象とか、従来の日本画の概念を打ち破る仕事をしてきた人たちの展覧会を北海道でやってくれないだろうか。 革新的な日本画の展覧会といえば、近年では加山又造ぐらいしか思い浮かばない。 もうひとつ。図録に作家略歴があるのは便利だけど、人名の読みがながどこにもない。 23日まで。 米寿を目指して彫る 森量夫=NHKギャラリー(中央区大通西1 地図A) きょうで最終日。 木彫だけでなく、版画や写真もあり、とても80代とは思えぬパワー。 大きな時計も何台もあり、りっぱなインテリアになりそう。 馬車や馬橇の木彫もけっこうありました。なかなか手馴れたものです。 |
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5月12日(水) 第15回山崎亮個展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 湿原とオオカミ、深海と女性、イスラエル…と、わりあい短い期間のうちにモティーフを変化させてきた山崎さん。1年おきにひらいている個展で、今回テーマに選んだのは、飛行機から見た景色でした。 左は「空から(ロンドンへ)」。 この絵でも、右中央から左上へと伸びていますが、翼が描きこまれ、機上から見ているということを明示した作品が多いです。 それにしても、羽田空港の附近を題材にした「空へ」にくらべると、英国の町並みは、緑が多く、屋根は茶系で統一され、うつくしさはきわだっています。 ほかに、秋田や、苫小牧(これは新千歳空港の着陸コース)、エルサレムなどの風景があります。 「ここ数年、飛行機に乗ってもかならず窓際を頼むなどして、だいぶ写真やスケッチもたまってきました。でも、どんな景色がそこにあるのかは、飛んでみないとわからないですからねえ」 女性をモデルにした小品「春」「夏」「秋」「冬」4点もあります。 山崎さんは道展会員。 河合キヨ子・大畑悦子 母娘展=同 河合さんは油彩。新道展会友。 板や魚の、だまし絵のようなリアルさには、ますます磨きがかかってきました。 「四方に散る魚」「時を泳ぐ」など、塗りを重ねた茶色の背景に、小さく描かれた魚や、古い板切れが浮かんでいます。一般的な絵の描法だと、なんだか空間がもったいないような感じもしてきますが、このスカスカな感じがむしろ空虚感や、時のはるかな流れを連想させるのでしょう。 「飛翔」は、茶色の森をバックに、魚が1匹だけ飛んでいる図柄。これはこれで、ふしぎな感覚です。 大畑さんはトールペインティングによる、動物のイラストなどを展示しています。 新麗樹会展=同 毎年5月ごろにこのギャラリーで展覧会を開いているグループですが、なんだか妙な感じがするのは、たぶん、メンバーに、公募展や個展で見る顔ぶれがほとんどいないからなんでしょうね。いったいどういうグループなんだろうと思ってしまうわけです。 だからといって水準が低いというわけでもありません。 毎年、菅原義則さんの金工は楽しさがつたわってきます。ことしは「少女のいのり」と題された、3体からなる作品。このうち2体には、虫のような羽がはえています。少女の持つかごや、中空に展示された天使?の巣のような部分には、じっさいのドライフラワーが使われ、親しみやすさを感じます。 ギャラリーたぴおのグループ展でも名を見かける後藤顕さんは、特殊な眼鏡をつかって見ると立体視できるユニークなタイポグラフィ作品を出品。 油彩では、佃多哉志さん「息を合わせて」が、父娘とおぼしきふたりがチェロとバイオリンの合奏に取り組んでいる情景を描き、三代修司さん「百合」は青系の背景に、百合と女性を、なかば抽象的な筆致で表現しています。 ほかに小野和子、山下司、滝谷賢治、亀田厚彦、石和雅治、矢内研一、似鳥修司の各氏が出品。 このほか、みずすまし会展は川井坦さん(道展会員、札幌)の日本画教室展、第4回リラの会展は鵜沼人士さん(同)の油彩教室展です。 いずれも15日まで。 |
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5月9日(日) 融合 −からだにかえる。− 山林優個展=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B) 札教大で彫刻をまなんでいる山林優(ゆう)さんの初個展。 6点の立体がならんでいますが、うち5点は、人体をモティーフの一部にした作品です。 いずれもタイトルやキャプションはついていません。ただし、案内状に写真が載っている、心臓の血管と人間とをオーヴァーラップさせたような作品には「思う人」という題が記されています。これは、スタイロフォームを何枚も重ねてからカッターナイフで削って制作したものだそうです。 従来の彫刻は、裸婦などをそのまま題材にしてきましたが、山林さんの場合は、からだの部分と他のものをくみあわせた作品が多いです。 「からだを媒体にして、からだのことを伝えたい」 と作者は話していましたが、筆者の目には、右の作品など、いささか閉塞感というか、周囲の空間にたいして十全に伸びていかない時代の人間というような感覚がうつります。 右の作品で、冷酷な感じから作品を救っているのは、直方体を覆っている黒い布が、和服の見本帳からとってきたものだということです。 会場の入口附近にあった作品は、立方体の箱の中からこぶしや手がたくさん突き出ようとしていて、一部は外側を覆っている黒い皮膜を破って白い手が出ているものの、のこりは皮膜を伸ばしているだけに終わっています。これは、ウエットスーツという題材が、おもしろい効果を出しています。 床に置かれた作品は、葉の文様の布の一部を切り抜いて、葉の形の立体数点を置いたインスタレーションで、こちらはむしろ、人体というよりも、環境に対する人間の意識を問う作品になっています。 ■02年11月の「自我像展」 置田貴代美写真展 キヨミのそら−空の表情=同 もともと弘前大で天体写真を撮っていたという宗谷管内浜頓別町生まれの置田さん。就職で札幌に来てからは写真から遠ざかっていましたが、或る日手にしたデジカメで空の美しさに目覚め、それからは自宅にいても職場でも、空のことが気になる日々だそうです。今回の個展では、デジタルと銀塩をほぼ半数ずつ出品していますが、近年よくある「なんとなく日常の空をうつしてみました女のコ写真」の域にとどまらない、といって「太陽に世界平和を祈りました」的な精神世界写真でもない、独自の「こだわり」が感じられる写真がならんで、見ていて飽きません。 たとえば、案内状にもあった「彩雲」の写真はみごと。これほどあざやかな七色の着いた雲はなかなかめずらしいと思います。 また、月齢2に満たない、新月がおわったばかりの極細の月の写真もありました。これは肉眼では見えず、あらかじめ場所をたしかめてから、300ミリの望遠レンズで狙ったそうです。となりに展示してある、ちょっとだけ太い月は、同じ日に撮ったそうで、地球照が鮮やか。月の満ち欠けは、同じ日のうちにも進んでいるのですが、それがじっさいに確かめられる写真は、おもしろいです。 ほかにも、カーペットのようなうろこ雲や、うつくしい夕焼けなどの写真がならび、見ていてほっとします。 グループ哲創作七宝展=同 講師の佐藤哲子さんが「記憶の中の花」「塔のある街」など、数枚の支持体を組み合わせた作品を出品しています。背後に世界の広がりを感じさせる作品です。 いずれも11日まで。 5日の項、「新世紀の顔・貌・KAO」展で、一部まぎらわしい記述がある旨読者の方から指摘がありましたので、削除しています。 |
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5月8日(土) 03富士フイルムフォトコンテスト入賞作品発表展 ネイチャーフォト部門=富士フォトサロン(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A) さきにおこなわれた発表展のつづき。 やっぱり北海道、「自由写真部門」にくらべると入賞者が多い。上位(グランプリ、金賞)は、なぜか西日本の人が多いですけど。 全体としては、風景を遠くからとらえたものはすくなく、狙いをしぼって接近して撮ったものが上位にえらばれているようです。 自由部門では銀賞(19点)はゼロだった道内勢は、ネイチャーフォトは2点入賞しています。 福田明広さん「ジャンプ!」は夕日をバックにリスが跳ねている一瞬をとらえています。オレンジと黒の「決定的瞬間」です。 小坂隆さん「氷塊の輝き」は、オレンジに光る透明な流氷がめずらしいです。 銅賞は39点のうち東日本分17点が展示されています。 12日まで。 草場一壽 札幌陶彩画展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) 作者は佐賀県在住。10回前後も窯で焼成をくりかえしてつくる、陶による絵画およそ80点が展示されています。 その色彩の美しさは、従来の釉薬の発色を超えるもので、すくなくても筆者は、「菩薩七彩」に見られるレモンイエローや若草色、薄いピンク、青紫といった色は、陶芸では見たことがありません。 「水の菩薩」の横には、さわってご覧くださいという張り紙がしてあります。なるほど、たしかに陶器の手触りで、堅牢感があります。地の藍色が、手前の魚や女性にくらべ、ずいぶん奥に引っ込んで見えるのもすごい。 また、フォルムのなく、ほとんど色彩のにじみだけで画面がつくられている「オーヴ」などは、モーリス・ルイスの絵画を連想させ、うっとりする美しさです。 ただ、描かれている題材は、女性の姿をした仏像、ヒンドゥー教に伝わるといわれる幾何学的な線図形、色彩だけによる絵画、花の静物画−の4種にほぼ大別されるのですが、最後の花は別にしても、インド的、「精神世界」的な含意が強調されているのが、どうも個人的には敬遠したくなります。作者の気持ちはわからないでもないですが、画面だけで勝負したほうがいいのに−と思いました。 9日まで。 第9回「ぱれっと彩」水彩画展=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) 道展のベテラン会員成田一男さんが講師を務める展覧会。おなじ建物の別室でおこなわれている「第8回 ぱれっと絵画展」とは別物です。ややこしい。 成田さんは「リラ咲く小道」「星きらめく」「赤い灯台」の3点。以前から薄い色調の作家でしたが、ますます薄くなってきているような感じがします。それに影響されてか、三好久美子さん、片野真澄さんら生徒さんも薄い絵が多いようです。 筆者の個人的な好みでは、和田泰子さん「にしん」のような、色彩にある程度メリハリがある絵がいいです。「在りし日の富樫邸」はなつかしいですね。 佐藤伸美油彩展=同 「スイカ」「リンゴののったテーブル」「冬の由仁」など油彩。セザンヌの影響を感じさせる画面は、補色を効果的に配置しながらも、似たような色同士を背景の空間にも置くなどして、全体に揺らぎを与えています。 グループ谷間絵画展=同 久保綾乃、賀数伊沙知、茶谷静子の3氏。 久保さんは油彩と鉛筆デッサン。精緻な筆つかいで、小さい画面におもわずひきこまれます。「闇・光・闇」は、薄気味悪い虫を描いています。 賀数さんは、森の中のこびとの公園を想像した「叶える夢」など。茶谷さんは、正方形の青いパネルを床のコーナーにならべています。 いずれも9日まで。 |
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5月7日(金) 彼方アツコ版画展 〜謡〜=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A) 1971年滝川生まれ、日大芸術学部を卒業し、東京でデザインの仕事についたあと、ニューヨークに渡って美術を学び、およそ1年前から札幌に住んでいる彼方さん。札幌では初めての個展です。 木版画6点と銅版画25点を展示しています。 個展の題にある「謡(うたい)」は、出品昨すべてに短歌や詩などが附せられているため。作者の親類などが、版画ができあがってから書いたものだそうで 「ふつうのイラストとは逆ですよね」。 木版画は、薄い和紙に刷られた、素朴な作風。バーの一場面やスケートをする人などを描いています。 銅版画は、略歴に「山本容子のアシスタント」とありましたが、軽妙な線はたしかに共通するものがあるかもしれません。老ピアニストを題材にしたイラストふうの「piano」のほか、点数では半分以上を占めたのが「スイセン」「バラ」「ワレモコウ」「アマ」など、花をテーマにした小品。紙が四角でなく、自由なかたちをしているのは、太い線をかいてから6時間腐蝕させて作ったため。 「このほうが、自由に絵柄が思い浮かぶこともあります」 フリースペースPRAHA(中央区南15西17)で銅版画教室も開催中だそうです。 8日まで。 北海道版画協会45周年記念展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) おもに道展と全道展の版画部門の会員、会友、入選者らでつくる集まりです(もちろん、双方の会員などで参加していない人もいます)。一時札幌に住んでいた国内木版画の大御所、北岡文雄さんを囲むかたちで、大本靖さんや尾崎志郎さんらが1959年につくった「札幌版画協会」が母体だと聞いています。 40周年のときのような版画集の制作がないこと、尾崎さんや一原有徳さん、清水淑枝さん、更科eさんが出品していないことはさびしいですが、50人以上の出品者による作品がならぶさまは、やはり壮観です。 抽象、ポップ、素朴なもの、木版、銅版、ミクストメディアなどなど、さまざまな画風や技法をひとまとめにくくるのは、相当むつかしいですが、それでも、多くの作品の根底にあるのは「生命」というテーマのような気がします。それは、単にバイオモルフィックな形態が図像として見られるというよりも、より広い意味あいで、いのちを希求しているというように感じられるのです(うまくいえないけれど)。 たとえば、卵の殻の破片をおびただしくはりつけた葉のかたちの紙4枚を壁に貼り、貝殻のかたちの立体を中央に配したナカムラアリさん「the veans of special leaf 葉脈」、広大な針葉樹の樹海と山塊を白と黒だけで表現した萩原常良さん「山麓地帯B」、シャープな線としぶきの集積がひろがる渡邊慶子さん「月虹−V」、なにかの気配や空気のようなものを3枚のパネルを自立させて表現したような石川亨信さん「each sight」などです。もちろん、フクロウを題材とした手島圭三郎さん、羊蹄山と格闘をつづける大本靖さんといったベテランの活躍も含まれます。 このほか、個人的に目を引いたのは、中谷有逸さん「碑 イシュタル神を待つ」。近年は錆を使って、時間の経過を感じさせる重厚な作風で、とりわけ昨年はイラク戦争を批判した力作がありましたが、ことしは作風が一変。赤や桃色の線による直径7−12センチの同心円や同心楕円が、一曲ニ双の屏風型の支持体にびっしりと貼り付けられ、若者向けの店の包装紙のようなポップさです。 白山久美子さん「ノスタルジー」は矩形が消えて、緑の濃淡がオールオーヴァーに表面を覆っています。 山内敏子さん「入日」は、漁村の夕焼けを題材に、いつもより情緒に満ちています。 デカルコマニーを効果的につかった宮井保郎さん「FOAM 3」「FOAM 4」は宇宙的な広がりを感じさせ、尾崎淳子さん「月の舟」は配色が現代的で楽しい。渋谷正巳さん「ヒマラヤ紀行」は大作です。浅野ナさんはネパールの新聞を支持体に使っています。 瀬戸節子さん「回想」、佐藤克教さん「喪失の季節」の、遺作2点が展示されていました。 ■03年7月の協会展 ■02年7月の協会展 ■01年7月の協会展 9日まで。 |
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5月6日(木) 訃報です。 朝日新聞などによると、日展参与の画家奈良岡正夫さんが亡くなりました。100歳でした。やわらかいタッチでヤギなどを描く画家として知られていました。 きのうのつづき。 小笠原実好展=夕張市美術館市民ギャラリー(夕張市旭町4) 小笠原さんは1947年夕張生まれ、苫小牧在住。 ミクストメディアという手法で絵画を制作しています。 ベニヤ板を支持体にして目の粗い麻布を貼り、その上にエマルジョンやペンキを塗りこみ、さらにアルミなべや缶、発泡スチロールなどを固定しています。 1991年の「廃船A」からことしまでに制作した大作20点。 いずれも、すごい迫力があります。 もっとも大きな「廃船SOS」は227×280センチ。幅数十センチの黒い線が画面を縦横に走り、表面は溶剤のためかどろどろに溶けています。 横山操の日本画をさらに剛直かつ大胆にしたようなパンチのある画面です。 昨年の「廃船C」は、半分だけが全道展に出品されたもの。今回の展覧会には、公募展の出品枠をはるかに超える作品が多くならんでいます。 新作3点「廃船風化C」「廃船A」「廃船B」は、いずれも227×162センチで、すきまをつめてならべられているので、これも迫力十分です。 具体的な廃船のモティーフがあるのではなく、現代文明からとりのこされたもののイメージが表現されているといえるかもしれません。その意味では、小笠原さんの生まれた夕張の炭鉱にも通じるものがあると思いました。 具象の木版4点も出品されています。こちらは「滝見通り」など、夕張の古い町並みが題材の、一般的な木版画です。 小笠原さんは全道展会友。9日まで(6・7日休み)。 なお、同美術館では「ミュージアムコレクション展」も7月19日までひらかれています。 全5室に分かれ、順に、地元出身の風景画をあつめた「畠山哲雄の春」、木版画「会津」シリーズなど21点をならべた「版画家・斎藤清の作品から」および陶器4点、佐藤時啓が炭鉱跡で撮った写真などからなる「写真と水彩画・版画」、戦前から活躍する夕張出身の諷刺漫画家の「昭和事件伝」などをあつめた「新収蔵・森熊猛の漫画」、そして「新収蔵作品と郷土作家」から成っています。 「新収蔵」といっても、寄託作品や、夕張市役所からの所蔵替え作品もあります。 夕張ゆかりの大黒孝儀(おおくろ・たかよし、1907−94年)、小林政雄(1917−)、木下勘ニ(1917−89)、加賀谷松雄(1939−86)、土屋千鶴子(1939−)、藤野千鶴子(1937−)、遠藤都世(1936−2001)、服部憲司、野崎嘉男(1939−)、比志恵司(ひし・やすじ、1935−)、三上雅倫(1944−)と、白江正夫、渡辺祐一郎、仲嶋貴将(よしゆき)の各氏の作品がならんでいます。 このうち、加賀谷さんという方は知りませんでしたが、「炭鉱のモニュメント」は16歳の絵だとは信じられない完成度です。夕張・清水沢生まれで、56、57年に道展で受賞後、東京藝大に進んでから制作活動を中止してしまったそうですが、いったいなにがあったのでしょうか。 竹工房オンセ 高江雅人竹芸展=工芸ギャラリー愛海詩(えみし=中央区北1西28 地図D) 大分県の安心院(あじむ)町で工房を主宰する伝統工芸士の高江さんの作品展。 なにせ北海道には竹というものがないので、めずらしい展覧会です。 目を引くのが、買い物かごなどに使えそうなバッグ。丸みを帯びたかたちで 「和装に似合う、安っぽくないトートバッグはないかしら」 とお探しの女性にぴったりだと思います。35000円くらいからあります。 花入れは、竹の組み合わせ方がけっこう大胆です。 さじやすのこもあります。 9日まで。 大崎和男絵画・写真展=道新ぎゃらりー(中央区北1西2、時計台ビル地下 地図A ) 大崎さんは十勝管内新得町在住。札幌での個展はおよそ20年ぶりだそうです。 なかなか多才な方で、画家としては自由美術協会会員、道展会友、写真では写真道展会員、さらに新得では山岳会や俳句の会にも入っているそうです。 絵画30点はすべて「オロッコの詩」と題されています。このうち、馬や気球を題材にした具象が1点、黒が地のシャープな作品が2点ありますが、のこりは水色などを主にした抽象です。 抽象画をことばで説明するのはむつかしいけれど、水色や薄紫を背景に、青やオレンジなどで塗られたドーナツ型やひも型のかたちがうかびあがり、全体に白っぽい絵の具を、ストロークがわかるかたちでさっさと掛けた−というタイプの絵です。 この薄い色調が、北方少数民族の名前を連想させるのかもしれません。 写真はいずれも「落し子」と題されていますが、いわゆるふつうの写真ではなく、たくさんの写真をコラージュしたり、金網と組み合わせたりした大きな作品です。 或るものは、町内のダム建設現場の記録写真およそ100枚をはり合わせ、また別の作品では、畸形(きけい)魚や廃鉱の写真、戦中の慰問用絵はがきなどをくみあわせています。 11日まで。 |
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5月5日(水) 小畑静夫<個展> 手づくりアート展=スクラップアート美術館(空知管内栗沢町美流渡若葉町2の3) 小畑さんは川崎在住ですが、1945年満洲生まれで、46年に札幌に移住。北海道デザイン研究所で、スクラップアート美術館を主宰するM.BABATCHIさん(日本人です)といっしょにまなんでいたそうです。その後、70年に上京、独立しました。 札幌にいた当時に描いた油彩「苗穂駅」もありましたが、中心はワイヤーアート。針金で輪郭をつくり、その間を、色の着いた紙でうめこんでいくものです。「蝶の想い」など、ポップなデザインで、お店の壁などに似合いそう。 さらに、古い廃材によるレリーフ、かわいらしいイラストなどもあり、なかなか器用な人のようです。 6月27日までの土、日曜、祝日のみ開館。 6日のHBCテレビ「テレポート2000」で、ババッチさんの特集が出る予定だそうです。 札幌の自宅を出てから美術館まで、バス、JR、バス、自転車をのりついで3時間かけてやってくるところから撮影していたとか。(ババッチさんは自動車免許を持っていません) 新世紀の顔・貌・KAO −30人の自画像−2004=神田日勝記念館(十勝管内鹿追町東町3) 美術評論家の中野中さんが2001年から企画している展覧会。日勝記念館では昨年からスタートしました。中央で活躍する画家、彫刻家に「自画像」を描いてもらおうというもので、顔ぶれは毎年変わっています。 昨年も書きましたが、神田日勝の名が全国的に多少は知られるようになったのは、詩人の宗左近さんが1970年の独立美術展の評で代表作「室内風景」を賞賛したのがきっかけです。その展覧会を宗さんに見に行くよう勧めたのは中野さんだったそうです。 さて、ことしの顔ぶれは 泉谷淑夫 入江観 小堤良一 大貫達雄 大原裕行 笠井誠一 梶滋 金井訓志 上條陽子 小林裕児 小松欽 佐々亮瑛 サトウリツコ 杉本洋 醍醐イサム 高頭信子 多田夏雄 友永詔三 豊島和子 野田利常 萩駿 畑中優 平松利昭 藤浪理恵子 前島隆宇 丸山又史 峯田義郎 八島正明 弓手研平 米谷清和の各氏です。 このうち、梶、峯田、友永の3氏は彫刻、あとは平面です。 昨年は道内出身者がおりませんでしたが、わが国を代表する静物画家のひとり笠井誠一さんは、札幌西高の卒業生です。「自画像」はオーソドックスな作品ですが、太い、灰色の輪郭線に、笠井さんらしい、構築への意思を感じます。 峯田義郎さんのブロンズの「遺跡を巡る男」は、エトリスクの遺跡で目撃した、腰かけるサングラスの男が題材ですが、彼にじぶんの姿を見ているのかもしれません。峯田さんの作品は、札幌芸術の森にあります。 小林さんは96年に安井賞を受賞した実力派ですが、何度か札幌のギャラリーたぴおで個展をひらいています。「自像」は、首を上下さかさまになるまでひねった自画像です。 ほかに印象にのこったのが、畑中さん「人生からくり」。38×44センチの箱の中を22の小さなスペースに区切り、複数の自画像と、木などでつくった玩具や彫刻などを収めています。さまざまな角度からじぶんというものを見つめたポリフォニー的な作品です。 また、藤浪さんの「Blur‐sp」はフレスコセッコによる自画像で、金網などの織り込まれた支持体に、顔がぼうっと浮かぶ、余韻のただよう作品。友永さん「歩く魚−四万十川幻想」は、魚に人間の脚と眼鏡をかけた顔のついたユーモラスな木彫です。 9日まで。会期中も、常設展は通常通りひらかれています。 新宿、金沢、高知、倉敷、平塚の展覧会は終了。今後、17−27日に銀座・高輪画廊、6月2−8日に名古屋・名鉄百貨店ギャラリーに巡回。 ■03年の展覧会 最後に、5日かぎりで終わった展覧会。 「世界の戦場から」−日本ビジュアル・ジャーナリスト協会写真展=鹿追町民ホール(同) 岩波書店から同名のフォトドキュメンタリーのシリーズが発刊されたのを記念してひらかれた写真展。 広河隆一さんらメンバー10人と、大石芳野さんが特別友情参加しています。大石さんはコソボの子どもたちを撮っていますが、父親をセルビア兵に殺された13歳のレイモンド君が「やさしい父さんだった」と話して涙をぼろぼろこぼしている写真は、悲しいです。 いちばん衝撃的だったのは、カザフスタン・セミパラチンスクの核実験場附近を森住卓さんがルポした際の写真。旧ソ連の核実験の影響で、顔がしわくちゃになった少年や、6本足の子牛などが生まれているのです。 そう、この写真展は、戦場ばかりではなく、「汚染される大地」という側面もあります。 桃井和馬さんは、インドネシアの密林が、地平線が見えそうなくらいにまで切り開かれ、見える範囲だけでも30頭を超える象が荒れた野にぽつりぽつりと鎖につながれている光景をとらえています。 ロシアの「国内問題」としてあつかわれているためか近年めっきり報道量が減ったチェチェンですが(北海道新聞はときどき報道していますが)、粘り強く追い続けている林克明さんが撮ったチェチェンの首都グロズヌイの様子は、驚きです。空爆などによって、無事な建物はほとんどないということです。死体置き場の写真も衝撃的でした。 豊田直巳さんは03年のイラク。タバコをくわえて重機関銃を手にバグダッドの道路を封鎖している米兵のなんとエラソーなことか。 ほかに、フィリピンの貧民たちを追った山本宗輔さん、内戦のハイチをとらえた佐藤文則さん、アンゴラやモーリタニアなど国際社会からわすれられた内戦の様子を追跡した亀山亮さん、エチオピアとソマリアの国境を越える難民などを撮影した小林正典さん、パレスティナの屈せざる女たちをとらえた古居みずえさんなど、いずれも、危険を顧みず体を張ってものにした写真ばかりです。 会場の中央の移動壁には、星条旗の写真と、その裏側に「9・11テロ」の現場写真が貼ってありました。キャプションがないので主催者の意図は正確にはわかりませんが、世界各国の戦争や環境破壊が、米国による支配と無関係でないことを示唆しているように思えました。 繁野三郎 水彩画展=北海道画廊(中央区南3西1、HBC3条ビル2階 地図B) 道内の水彩画の大御所で北海道文化賞などを受けた繁野三郎(1894−1986年)の、水彩画とデッサンあわせて約30点を展示。 1938年の人物画から、晩年の北大植物園を題材にした作品まで、ほとんど半世紀の間、画風に変化があまりないというのがすごい。 ひとことでいうと写実的なのですが、大まか過ぎず細かすぎない、ちょうどよい太さのタッチ、めりはりの効いた色づかいなど、骨格はしっかりしています。風景画に人物がほとんど登場しないことも、見ていて心やすらぐ理由かもしれません。 保存状態も良く、古い水彩にありがちな紙の黄ばみ、褪色なども、まったくといっていいほど見られませんでした。 |
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5月2日(日) 本日も大量です。 なお、北海道書道展については「展覧会の紹介」にうつしましたので、あわせてご覧ください。 金山当子・中間弥生二人展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) おふたりとも、故砂田友治さん(独立美術、全道展会員)に絵を習い、「友彩会」のメンバーでもあります。二人展ははじめて。 金山さんは19点。 なかなかたくみに抽象画を描きます。茶色と黄色を組み合わせ、縦横に線を走らせて、アクセントにピンクを加えた「最後の赤い実」、青と緑のコントラストが美しい「湿原と花」などです。 「赤い原野」など、牛乳パックを支持体につかったユニークな小品も5点。水彩や油彩だとうまく載らないのでアクリル絵の具をつかっているそうです。 一方、近年の全道展で入賞をかさねている中間さんは、輪郭線で何回もモティーフを縁取り、画面を埋め尽くす画風で、一度見たらわすれられません。 今回は1カ月半で仕上げた新作ばかり13点。 いちばん大きいのは「酔人」。昨年から「居酒屋 香澄」(中央区南3西5、三条美松ビル3階)を切り盛りしているだけに、酔っぱらいの生態はよく目にしているのかもしれません。空中には鳥かごが浮かび、下のほうには携帯電話がころがっています。 ほかにも、「コーラ」「金魚」「夏少女」など、あかるい感覚の絵が多いです。 金山さんは札幌、中間さんは北広島在住。 ■03年11月の中間弥生展(画像あり) ■03 北海道自由美術グループ展 ■01年8月の中間弥生展 □中間さんのサイト |
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4日まで。 佐藤弘延の世界展=同 埼玉県春日部市在住ですが、よく札幌でも個展をひらいています。 古い漢字をモティーフにした絵画のほか、軸装の書も数点ありました。 「天地躍動」など40号クラスの作品は、さまざまな色のかたちがうかび、宇宙の広がりをイメージした抽象画です。 4日まで。 長岐和彦個展 −Recent works−=Art Space/cafe MOKERA MOKERA(旭川市旭岡2の12の11) 長岐さんは上川管内美深町在住ということもあって、おもに旭川で発表することの多い抽象画家です。ほかに、海外での個展、グループ展にもたびたび参加しています。 道展会員なので、札幌でも毎年見ることはできますが。 今回は、連作の「FIELD」22点を展示しています。 「#1」は、S100号クラスの大作。明るいグレーを基調とした画面に、さまざまな種類の、感情を抑制した線が走るという基本のトーンは、これまでとあまり変わっていません。奥行きをまったく欠いた空間で、細い線や、青やオレンジの矩形が、ひそやかに展開します。 また、#8から#12までは、昨年の「ローギュラート」展で発表した、前衛書のような作品。 意外だったのは、#13以降の、アクリルとインクによる小品で、長岐さんの作品にはめずらしくカラフルです。 □旭川の画家らと結成したグループ「rawgulart」のサイト ■ローギュラート展(03年8月、画像あり) ■5人展(01年8月) 5日まで。 03富士フイルムフォトコンテスト入賞作品発表展 自由写真部門=富士フォトサロン(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A) 応募者16001人、総数56757人という、国内最大規模の写真コンテスト。 さすがにみなさんうまいです。スポーツ、祭り、人々の表情など、ほかの人が撮らないもの、意図がはっきりしているものがえらばれています。あと、子どもと老人は強いですね。題名がうまい作品も、かなり得をしています。 道内からは、水田と廃車の山というミスマッチな光景をとらえた小池貞子さん「あぜ道」をはじめ、吉江和幸さん、吉澤秀行さんが銅賞に、藤倉のりこさん、高橋春子さん、古平又男さん、竹田静子さん、柴田隆司さんの5人が優秀賞にえらばれ、展示されています。 5日まで。 HARADA MASAFUMI ART COLLABORATION 2004 炎のヒーロー伝説 昭和を想って=オリジナル画廊(中央区南2西26 地図D) 旭川の原田雅文さんは、本業は歯医者さんで、歯型をつかったボックスアートにより全道展で入賞している注目の新人です。 今回の個展は、歯型のシリーズではなく、まったくのオタク系。仮面ライダー、キューティーハニー、人造人間キカイダー(とその敵役のハカイダー)、デビルマン、ルパン3世といった、特撮、アニメのフィギュアを使ったボックスアートです。「オタクのコーネル」とよぶべきか。 特徴を挙げれば、廃品などを使ってわざと汚した背景にフィギュアを置いていることだと思います。この要素がないと、ただのモデルになってしまうので、重要なことです。 また、デビルマンをつかった「Dark Moon」以外は、ほとんどが箱などに入っています。 また、マジンガーZとグレートマジンガーが燃え盛る都会で、肩を抱いて助け合っているシーンを描いた「ZORO CITY」、宇宙戦艦ヤマトの後部が損傷して燃えている「地球滅亡まであと118日」など、原作にはない(であろう)シーンもあります。 筆者はほとんど同世代(原田さんは1965年生まれ)なので、だいたい元ネタがわかりますが、すこし世代がちがうとむつかしいかな。元ネタがわかると、その元ネタの世界観までが作品に入ってくるのだから、作品世界がすごく広がるんだけど。 それにしても、筆者たちの世代が見ていたテレビマンガや特撮ものがほとんど「戦い」を題材とし、その多くは地球滅亡や世界制服をライトモティーフにしていたことは興味深いけれど、ここでは深入りしません。 なお、案内状にあった仮面ライダーの箱は、ネタばれになるので、いまは書かないでおきます。 5日まで。 西山亮ガラス展=青玄洞(中央区南2西24、地図D) 食器の展覧会。どんな食卓にも合いそうな、すずしげで、オーソドックスなうつわが集められています。 4日まで。 第11回 大正館収蔵品展=大正館(歌志内市本町) 大正館とは、本城義雄さん(国展準会員、全道展会員)が集めた近代の骨董品を展示収蔵している蔵です。歌志内は炭鉱閉山後、過疎化がすすみ、古い家の解体などが多く、その現場に行ってもらいうけたものが多いそうです。 時計、真空管ラジオ、郵便ポスト、傘、黒い電話(黄色い公衆電話も)、巨大なレジスター、福助人形、SPレコードと手回し蓄音機、足踏みオルガン、クラシックカメラ、駅の表示板などなど、だれでもおどろく膨大なコレクションです。 本城さんはじぶんの絵のモティーフにするため収集を始めたそうですが、絵は、隣接の建物にまとめて展示しています。 古いミシンが、大正館に入りきらなくなったのか、こちらに何台もおいてありました。 縦位置の、中央に基準となるものを配置した、スタティックな構図で、リアルな筆致による静物画を毎年描いています。 9日まで。 使って楽しむ創作食器展 ティータイムの風景2004=江別市セラミックアートセンター(江別市西野幌114の5) 江別市内とその近郊の陶芸家・ガラス作家による、毎春恒例の食器展。会場で販売予約を受け付け、また、センター内のラウンジで、出品作とおなじカップで珈琲が飲める(ただし5日まで)というのがミソです。 会場にはこんな貼り紙がしてありました。 作品にお手を触れての鑑賞の際は、十分配慮いただけますようお願い申し上げます。裏を返せば、さわってもいい、ということです。 さらに、三脚、ストロボを使わないのなら、写真にとってもかまわないようです。 美術館の展覧会としては、うれしい配慮です。 出品作家は陶芸43人とガラス2人。 もちろん、使ってナンボのものですから、あまり個性的なものを称揚してもしかたないのですが、ともあれ、ちょっと風変わりな作品を紹介すると…。 前田育子さん(胆振管内白老町)は、立方体のようなセット。ふたをあけると、カップなどが出てきます。 澤山久美子さん(札幌)は、トランペットやホルンの形をしたカップ。チェロやハープを弾く女性の置物も展示されています。 水林直巳さん(同)は、火星人のような置物と、空飛ぶ円盤のような食器。 ほとんどが洋風のカップを出しているのに対し、上田隆之さん(小樽)は、和風にこだわり、湯のみなどをならべています。 また、長畑ふみ子さん(江別)は、戦争放棄をうたった憲法第9条を書いたケーキ皿や、銃のかたちをした「銃よさらばスプーン」、「平和の祈り 万博旗はためく」と題されたポット、さらに「弾よけ千人針カップ」「大義のヘルメット、カフェオレボウル」と、遊び心と反戦の願いのまじったセットで、ひときわ目を引きました。 さて、ラウンジで、いちばんコーヒーが飲みづらそうな澤山さんのカップをためしてみました。 ちょっと重いのですが、けっこう快適につかえました。案外、パフェなんかにむいているのかもしれません。 出品者はつぎのとおり。 朝野暁子、阿妻一直、井上博子、木村初江、木村礼子、黒川好子、佐藤千恵子、澤山久美子、島田知子、島田正敏、関堂まゆみ、武田響、タニグチススム、干場優香、松下真弓、松田幸佳、水林直巳、水林春巳、水林瑞絵、三好栄智子、山田雅子(以上札幌)上田隆之(小樽)、恵波ひでお(胆振管内虻田町)、大野耕太郎(滝川市江部乙)、加藤和何子、きくち好恵(空知管内栗沢町)、北川智浩、北川範子、桜井幸子、対馬賢二、長畑ふみ子、能登順子、馬場兼冶、福盛田眞智子、森敏仁(以上江別)坂口篤志(同管内長沼町)澤すずこ(恵庭)、長島明子(千歳)、中田久枝(北広島)、前田育子(白老町)南正剛(上川管内美瑛町)毛利勝靖、毛利史長(以上室蘭)、吉田優子(岩見沢)、青木一彦(石狩管内厚田村・ガラス)、クスモトスケヒロ(北広島・ガラス) 16日まで。 東京芸術大学に集った画家たち展=苫小牧市博物館(苫小牧市末広町3) 東京藝大に教授、生徒として在籍した日本画家27人の作品を1点ずつ(吉田善彦と田渕俊夫のみ2点)紹介。入場無料です。 横山大観をはじめ、戦後の日本画壇をになってきた大家がずらりとそろっています。 ただし20−50号クラスが大半で、会場の雰囲気もあわせて、デパートの催事みたいな展覧会という感じがしないでもありません。 ヤマ場は、後藤純男「富岳」と岩橋英遠「夕雲」がならんでいるところでしょうか。群青の空にそびえる、金箔がびっしりとはられた荘厳な富士山を描く後藤。オレンジに照り映える山容と雲を描く岩橋。 岩橋の富士は、あまり霊峰とか、日本を代表する山という重たさがなく、むしろ大自然の中の一こまという、或る種の普遍性を描出しているようです。 唯一戦後の作品ではない(1940年ごろ)大観の「不二霊峰」は、右上に真っ赤な日輪が描かれ、こちらは国家主義的な時代の空気を色濃く反映しています。 ほかに、気になった作品をあげておきますと、加藤東一「漁火」。題材は、鵜飼いです。濃いエメラルドグリーンの夜空と群青の山々の間、あかるく燃え上がる炎が新鮮です。 吉田善彦「薬師寺の春」などは、金箔をうすく全体に貼り、春霞を表現しています。 稗田一穂「時雨れる湖」は、プラチナ箔で初冬のうそ寒い湖を、詩的に描いており、惹かれました。 出品作家は、院展11人、日展6人、創画8人。院展が、大観、前田青邨、奥村土牛、小林古径、英遠、善彦、純男、平山郁夫、小山硬、俊夫、中島千波(現在は無所属)、日展が山口蓬春、東山魁夷、高山辰夫、東一、加倉井和夫、大山忠作、創画が山本丘人、吉岡堅二、工藤甲人、一穂、毛利武彦、加山又造、堀越保二、滝沢具幸 苫小牧駅南口から市営バスで6分、「文化公園」で下車し徒歩6分。 16日まで。 最後に、すでに終了した展覧会です。 十二大祭イコン展 白石孝子画=TEMPORARY SPACE(中央区北4西27 地図D) 白石さんはもともと道内の出身で、東京で絵を描いていましたが、イコンに出あってその技法を習い、現在は岡山にお住まいです。 イコンとは、正教の聖像です。正教というのは、キリスト教のひとつで、ローマを総本山としたカトリックに対し、東ローマ帝国のコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を中心に発展したものです。15世紀に東ローマが滅亡したあとは、モスクワに本拠を移しました。「ロシア正教」「アルメニア正教」などといいますが、これは国によってべつべつの正教があるのではなく、典礼などがどの言葉でおこなわれるかの違いです。 白石さんは、16世紀のロシアのイコンを模写しました。12点のうち、復活祭の絵は、本来は「十二大祭」よりも大きな祭典で、「十二大祭」には入らないのだそうですが、イタリアに招かれて現在滞在中のため、1点は間に合わなかったそうです。 筆者がかつて見たイコンはどれも古いものばかりだったので、金色がぴかぴか輝いているイコンは、なんだかふしぎな感じがしました。 いまわたしたちは、絵は「美術品」としてあつかわれ、美術館やギャラリーで見るのがふつうですが、それはここ何百年かのことで、それよりもはるかに長い年月の間、「信仰の道具」として教会などにあったものでした。つまり、鑑賞するのではなく、イエスの生涯などを字の読めない信者にわからせるために存在したのです。 したがって、イコンについて、構図や色がどうのこうの言ってもはじまらないのです。 また、膨大な印刷物やテレビなどのイメージに取り囲まれたわたしたちには想像もしにくいことですが、19世紀以前のロシアにおいては、貴族などを別にすれば、そもそも画像がめずらしかった。教会以外の場で、日常生活で絵を見ることがほとんどなかったわけです。ロシアの文豪ゴーゴリの短篇「肖像」に、夜店で人々が食い入るように絵を見るシーンがあります。その意味でも、絵は「ありがたい」ものだったのでしょう。 道内の正教会のためにたくさんのイコンを描いた山下りん(1857−1939年)の油彩も1点展示されています。こちらは、西洋アカデミズムにのっとった描法です。 1日で終了。 田村郁子展 −水−=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20 地図D) 田村さんは札幌の織りの作家。 今回はタペストリーを展示していますが、庭の草花や、ビニールをひも状にしたものを織り込んだ、ユニークな作品になっています。 たとえば木賊(トクサ)が、縦糸のかわりとして何本も織り込まれています。乾燥のさせ方で色がことなっています。表側に、ナナカマドの実が接着剤でいくつかつけられ、画面に彩りをあたえています。 1日で終了。 |