絵で見るキリストの生涯と教え

マリアがキリストを受胎したことが告知される


 イエスが誕生するはるか以前から預言者たちは御父の独り子がマリヤという名のおとめにお生まれになることを予告していました。マリヤは地球に来る前からこの大切な使命をはたすように選ばれ、予任されていました。マリヤは救い主の母親として、神の御子に骨肉の体を与え、夫のヨセフとともに神の御子を育て、教え、御子が偉大な使命に備えられるのをお助けすることになっていました。
 天父はナザレに住んでいたマリヤに天使ガブリエルを遣わして、マリヤに対して望んでいる事柄をお伝えになりました。「御使がマリヤのところにきて言った、『恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます。』」
 ガブリエルの言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがしました。なぜ天使が訪れたのかが分かりませんでした。マリヤの気持ちを察したガブリエルはマリヤに「恐れるな」と言って、やがて起こる奇跡的な出来事について説明しました。
 マリヤは自分の使命について分からないことがありました。彼女は「いと高き者の子」を産むであろうと言われたときに、「どうして、そんな事があり得ましょうか」と尋ねました。ガブリエルはマリヤが神の力に覆われると、その子供は天父の御子であることを告げ、そして「神には、なんでもできないことはありません」と言いました。マリヤはこの答えを聞いて、主が偉大な祝福を与えようとしておられることを知りました。そして忠実と従順の気持ちを込めてこのように答えました。「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように。」
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イエスの誕生


 ローマの皇帝アウグストは全国の人口調査をするようにという勅令を出しました。すべての人は自分の先祖の町で登録しなければならなかったので、ヨセフとマリヤもナザレからベツレヘムへ行かなければなりませんでした。マリヤはすでに身重になっていたので、旅をするのは大変でした。
 マリヤとヨセフがベツレヘムに着いた時には、町には登録しにやって来た人々であふれていました。宿屋はいっぱいで部屋が空いておらず、やっと馬小屋に泊めてもらうことになりました。ここでマリヤは初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせました。
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羊飼いに知らされるキリストの生誕


 イエスがお生まれになった夜、羊飼いたちは野で羊の番をしていました。そこへ主のみ使いが現れたので、羊飼いたちは非常に恐れました。その時み使いは言いました。
 「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。」
 その時突然おびただしい天の軍勢が現われ、神を賛美して言いました。
 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように。」
 み使いたちが去った後、羊飼いたちは互いに言いました。
 「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と。
 急いでベツレヘムへ行った羊飼いたちは、マリヤとヨセフ、そして飼い葉おけに寝かされた幼な子イエスを探し当てました。
 後に、羊飼いたちは羊の元へ帰り、み使いがイエスについて言ったことを人々に伝えました。そして見聞きしたことがみ使いの言葉どおりだったので、神をあがめ、賛美しました。
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東方の3博士


 ベツレヘムでイエスがお生まれになったころ、東方の博士たちは空に新しい星を見ました。博士たちはこの星がメシヤがお生まれになったしるしであることを知っていたので、エルサレムにやって来ました。その幼子を探して拝みたいと望んでいた博士たちは、「ユダヤ人の王としてお生まれになったかたは、どこにおられますか」と尋ねました。
 この時、国を統治していたヘロデ王は、ユダヤの王が自分のほかにいるという博士たちの言葉を聞いて、非常な不安を感じました。そこで王は祭司長と律法学者たちを集めて、キリストはどこに生まれるのかと尋ねました。キリストは「ユダヤのベツレヘム」に生まれると予言者が記していると答えました。
 ヘロデは博士たちを呼んで、彼らの見た星について尋ねました。そして彼らをベツレヘムに遣わして、「行って、その幼子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みにいくから」と言いました。
 星に導かれて、博士たちは幼子イエスのところへ行きました。そして、家に入って、母マリヤのそばにいる幼子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬などの贈り物をささげました。
 博士たちは天父からヘロデのところへ帰らないようにと夢で告げられたので、別の道を通って帰って行きました。ヘロデはイエスを拝むつもりはなく、殺そうとしていたのでした。
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エジプトへ逃れる


 イエスがまだ幼かったとき、主のみ使いが夢でヨセフに現れて言いました。「立って、幼子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼子を捜し出して、殺そうとしている。」
 ヨセフはこの命に従って、夜の間にマリヤと幼子イエスを連れてエジプトへ行きました。ヘロデが世を去り、危険がなくなると、主のみ使いが再び夢でヨセフに現れて言いました。「立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼子の命をねらっていた人々は、死んでしまった。」そこでヨセフはマリヤとイエスを連れてイスラエルの地に帰り、ナザレという町に住みました。
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イエスの少年時代


 イエスはガリラヤのナザレという小さい町で成長しました。ヨセフと母マリヤ、そして数人の弟、妹のいる、愛ある家庭の中で過ごしました。イエスの少年時代は、当時の普通の少年とあまり変わらなかったと思われます。イエスはユダヤの律法を学び、ヨセフから大工仕事を習い、聖典を勉強し、祈りを通して知恵を得ました。
 イエスが成長するにつれて、神のみたまが強く注がれました。そして地上での自分の使命を理解し、バプテスマを受けて伝道を開始する時を待ちました。
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神殿での少年イエス


 イエスは12歳になった時、家族と共に過越の祭りのためにエルサレムへ行きました。祭りが終わってナザレへ帰る時、ヨセフとマリヤはイエスが道連れの中にいると思い込んでいました。1日旅した後、イエスがいないことに気づきました。
 心配したヨセフとマリヤは、イエスを捜しながらエルサレムへ引き返しました。ふたりは3日間捜し回った後、教師たちの中に座って教えたり、質問に答えたりしているイエスをやっと見つけました。
 聞く人々はみな、イエスの賢さやその答えに驚嘆していました。
 マリヤが、なぜこんなことをしているのか、また自分とヨセフがどんなに心配して捜したことかと言うと、イエスは天父のみ業をしていたのですと答えました。ヨセフとマリヤはイエスがやがて救い主となることを知っていましたが、イエスの使命をまだはっきり悟ってはいなかったのです。
 イエスはナザレへ戻り、息子として両親によく仕えました。イエスは大きくなるにつれて、ますます知恵と知識を深めていきました。そして神に愛され、人々からも愛されました。
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バプテスマのヨハネ


 バプテスマのヨハネはユダヤの荒野に住んでいました。彼はらくだの毛ごろもをまとい、腰には皮の帯をしめ、いなごと野蜜を食物としていました。
 ヨハネはヨルダン地方一帯を旅して、悔い改めと罪の赦しのためのバプテスマを宣べ伝えました。彼の使命はイエス・キリストが来られる前に、人々を備えることでした。そして間もなくやって来られるキリストに会う備えをするように教えました。ヨハネは悔い改めた大勢の人々に、ヨルダン川でバプテスマを施しました。また互いに親切にし、自分たちの持っている物を貧しい人々に分け与えるように教えました。
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ヨハネからバプテスマを受けられた


 イエスは30歳のころナザレからヨルダン川にやって来て、バプテスマのヨハネからバプテスマを受けられました。ヨハネはイエスが罪のないお方であることを知っていたので、バプテスマを受ける必要はないと思いました。自分こそイエスからバプテスマを受けるべきだと思ったのです。イエスは、世の救い主でさえもバプテスマを受ける必要があるということを説明されました。
 ヨハネは水の中へ入っていき、イエスにバプテスマを施しました。
 そしてイエスが水の中から上がられた時、ヨハネは聖霊がはとのように下るのを見ました。
 また天から「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」という声がありました。
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漁師たちを召された


 イエスがガリラヤの海辺におられたとき、大勢の人々がイエスの言葉を聞こうと集まってきました。この時イエスは岸に寄せてある2隻の小船に目を留められ、そのそばで漁師たちが網を洗っているのをごらんになりました。するとイエスはシモンの船に乗り込み、岸から少しこぎ出すように言われました。それから船の中に座って群衆にお教えになりました。
 話が終わると、イエスはシモンに沖へこぎ出し、ここで網を下ろして漁をすれば、たくさんの魚が捕れるだろうと言われました。シモンは仲間の漁師と夜通し働いたけれど、1匹の魚も取れなかったとイエスに話しました。「しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう。」そう言ってシモンとアンデレは水の中へ網を下ろしました。するとおびただしい魚の群れが入って、網が破れそうになりました。そこで、もう一隻の舟にいたヤコブとヨハネに加勢を頼み、両方の舟いっぱい魚をに入れたので、舟が沈みそうになってしまいました。
 これを見てシモンは、イエスのひざもとにひれ伏して言いました。「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です。」シモンもほかの者も、捕れた魚がおびただしいのに驚きました。
 イエスがシモンとアンデレに、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」と言われると、彼らは網を捨ててイエスに従いました。イエスがまたヤコブとヨハネにもついてくるように言われると、彼らも言われたとおりにし、すぐ舟と父とをおいて、イエスに従いました。
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十二使徒を聖任された


 伝道を始めて間もなく、イエスは山へ行き、夜を徹して神に祈られました。夜が明けると、忠実な弟子たちを呼び集め、その中から12人を選び、彼らを使徒とされました。使徒とされた弟子たちはシモン・ペテロ、その兄弟アンデレ、ゼベダイの子ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブとシモン、タダイ、そしてイスカリオテのユダでした。
 イエスは使徒たちに神権の力を与えられました。この力は、福音を教え、病気を癒し、死者をよみがえらせ、汚れた霊を追い出すなど、イエスのみ業を助けるために使われるものでした。
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山上の垂訓


 イエスは群衆を見て、山に登られました。そこでイエスは弟子たちに多くのことを教えられました。その教えは山上の垂訓と呼ばれています。
 イエスは、山上の垂訓の中でも、特に八福の教えと呼ばれる一連のみ言葉を通して、特別な祝福を約束されました。それは次のようなものです。
 「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
 悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。
 柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。
 義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。
 あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。
 心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
 平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。
 義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。」
 イエスはまた弟子たちに、次のように教えられました。
 「あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。
 また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。
 むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。
 そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、
 そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、
 天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。」
 イエスはまたモーセの律法の中にある多くの教えを人々に思い起こさせました。そのひとつは、イスラエル人に隣人を愛し、敵を憎むように教えていました。しかし今イエスは、弟子たちにより高い律法、すなわち敵を愛して、彼らのために善いことをするように教えられました。また、「それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい」とも教えられました。
 そして、善い行いをしたり、祈ったりするときには、人に見られないように注意するよう弟子たちに言われてから、祈りの模範を示されました。
 「だから、あなたがたはこう祈りなさい、天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。
 御国がきますように。みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。
 わたしたちの日ごとの食物を、きょうもお与えください。
 わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をもおゆるしください。
 わたしたちを試みに会わせないで、悪しき者からお救いください。」
 イエスはまた山上の垂訓の中で、人を裁いてはいけない、人の小さい欠点を裁くときには、自分の大きな欠点を忘れることが多いからであると言われました。まず自分の罪を悔い改めれば、人の欠点を直してあげることができるとイエスは教えておられるのです。
 どのようにしたら天の祝福を受けられるかを弟子たちに教えて、「求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。」と言われました。
 また天への門と道は狭く、それを見いだす者は少ないが、広い門から入って、滅んでしまう人は多いとイエスは教えておられます。イエスはさらに、「わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、ただ、天にいますわが父の御旨を行う者だけが、はいるのである。」とも言われました。
 イエスは、主のみ言葉を聞いてそれに従う者を、岩の上に家を建てた賢い人にたとえられました。雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いても、その家は堅い土台の上に築かれているので倒れることはありません。さらに主のみ言葉を聞いてこれを行わない者を、砂の上に家を建てた愚かな人にたとえておられます。雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹くと、その家は倒れてしますのです。
 イエスがこれらの言葉を語り終えられると、人々はその教えに非常に驚きました。それはイエスが神の権威と力を持つ者のように教えられたからでした。
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イエスが盲人を癒される


 ある安息日、イエスは生まれつきの盲人に会われました。弟子たちは、この人が生まれつき盲人なのは本人が罪を犯したためか、それとも両親が罪を犯したためかと尋ねました。イエスはどちらでもない、ただ神のみ業がこの人に現れるように、神がこれを許されたのだと答えました。
 イエスは地につばきをし、そのつばきで泥を作り盲人の目を塗って、「シロアムの池に行って洗いなさい」と言われました。盲人が言われたとおりにすると、驚くべき奇跡が起こりました。池から戻ってきた時には、目が見えるようになっていたのです。
 近所の人々や知り合いの人々は驚いて言いました。「この人は、すわってこじきをしていた者ではないか。」 ある人々は「その人だ」と言い、ほかの人々は「いや、ただあの人に似ているだけだ。」と言いました。しかし、本人は、「わたしがそれだ」と言い、イエスが目に泥を塗って、目が見えるようにしてくださったことを話しました。
 パリサイ人は、安息日に人を癒したイエスは罪人だと述べましたが、ほかの人々は「罪のある人が、どうしてそのようなしるしを行うことができようか」と言いました。
 彼らは盲人だった人に、イエスをどう思うかと尋ねると、彼らは「預言者だと思います」と答えました。
 後に、イエスは癒された人のところへ来て、人の子を信じるかと尋ねられました。するとその人は、「主よ、それはどなたですか。そのかたを信じたいのですが」と言いました。イエスは彼がもうすでにその人に会い、今話していると答えられたので、彼はイエスを信じ拝しました。
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イエスが嵐を静められる


 ある日、イエスはガリラヤ湖の向こう岸へ渡ろうと、弟子たちと共に舟に乗り込まれました。船出してしばらく湖を渡っている間に、イエスは眠ってしまわれました。その時突然暴風が起こり、舟は波にのまれそうになりました。弟子たちは死んでしまうのではないかと恐れてイエスを起こし、「先生、わたしどもがおぼれて死んでも、おかまいにならないのですか」と言いました。
 イエスは答えて言われました。「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ。」そして、起き上がって風をしかり、海に向かって「静まれ、黙れ」と言われると、風はやんで、大なぎになりました。
 嵐がやんだので、弟子たちは驚いて言いました。「いったい、この方はだれだろう。風も海も従わせるとは。」
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良いサマリヤ人のたとえ


 ある律法学者がイエスに「先生、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか。」と尋ねました。イエスが聖典には何と書いてあるかと言われると、律法学者は、「『心をつくし、精神をつくし、力をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ。』また、『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』とあります」と答えました。
 イエスは律法学者に、この律法どおり行なえば永遠の生命が得られると言われました。すると律法学者は、「では、わたしの隣り人とはだれのことですか」と尋ねました。イエスは律法学者の質問に答えて、エルサレムからエリコへ旅をした人の話をされました。この人は途中、強盗に襲われて着物をはぎ取られ、傷を負わされて、半死半生のまま倒れていました。そこへたまたま一人の祭司が通りかかりましたが、この傷ついた人を見ると、向こう側を通って行ってしまいました。それからレビ人もここにさしかかりましたが、彼を見ると、同じように目を背けて向こう側を通っていきました。
 最後に、一人のサマリヤ人が通りかかり、気の毒に思って傷の手当てをしました。そしてこの人を自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って、夜通し介抱しました。翌日、サマリヤ人は宿屋の主人にお金を渡して、「この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけに、わたしが支払います」と言いました。
 イエスは、この3人にうち、だれが傷ついた人のよい隣り人だと思うかと、律法学者に尋ねられました。律法学者が、「その人に慈悲深い行いをしたサマリヤ人です」と答えると、イエスは「あなたも行って同じようにしなさい」と言われました。
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放蕩(ほうとう)息子のたとえ


 イエスは悔い改めについて人々に教えられました。そして、ひとりの罪人が悔い改めたとき、神がどれほど喜ばれるかを教えるために、放蕩息子の話をされました。
 ある人にふたりの息子がいました。兄は父親を手伝い、言いつけをよく守りました。弟は財産の中から自分の分け前をもらって遠い所へ行き、放蕩に身を持ち崩して、それを使い果たしてしまいました。その地方にひどい飢饉がやってきましたが、食べる物を買うお金もありませんでした。豚を飼う仕事を探しましたが、ひもじくて豚のえさを食べたいと思うほどでした。
 その時弟は家のことを思いました。自分は飢えて死にそうなのに、家では雇い人さえ十分な食べ物があると考えました。しかし、自分が罪を犯したことを知っていたので、息子と呼ばれる資格はないと思いました。けれども、家に帰って父の赦しを請い、雇い人として働かせてくれるように頼むつもりでした。
 まだ息子が遠くにいるうちの父親は彼を見て駆け寄り、接吻しました。息子は父親に言いました。「父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。もうあなたの息子と呼ばれる資格はありません。」
 しかし、父親は召使を呼んで、息子に最上の着物を着せ、たくさんのごちそうを作らせました。そして、「この息子が死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから」と言いました。
 この時、兄は畑で働いていました。帰ってきて家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえました。皆が祝っている理由を知って怒り、家に入ろうとしなかった兄を、父親が出てきてなだめました。兄は今までずっと父親の言いつけを守って働いてきたのに、一度も祝ってはくれなかったと父親に言いました。
 そこで父親は、「子よ、あなたはいつもわたしと一緒にいるし、またわたしのものは全部あなたのものだ」と言って、弟は死んでいたのに生き返り、いなくなったのに見つかったのだから、その祝いをするのは当然だと説明しました。
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10人のらい病人


 ある時、イエスはエルサレムへ行かれる途中、サマリヤとカリラヤの間を通られ、10人のらい病人に出会われました。らい病人たちは、「イエスさま、わたしたちをあわれんでください。」と声を上げました。イエスは彼らに、祭司のところへ行くようにと言われました。彼らはイエスの言葉に従って祭司のところへ行きましたが、その途中で体が清められました。
 10人全部が癒されたにもかかわらず、彼らのために奇跡を起こしてくださったイエスに感謝をしようと戻ってきたのはただひとりでした。その人は大声で神をほめたたえながら帰ってきて、イエスの足元にひれ伏して感謝しました。イエスが他国人と呼んだその人はサマリヤ人でした。
 このサマリヤ人は神をたたえたので、イエスは「立って行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのだ」と言われました。
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井戸端の女


 イエスと弟子たちはユダヤからガリラヤへ行く途中、ユダヤ人ならたいてい避けるサマリヤを通りました。ヤコブの井戸へ着き、弟子たちが近くの町へ食物を買いに行っている間、イエスは井戸のそばで休んでおられました。
 そこへひとりのサマリヤの女が水をくみに来たので、イエスは水を飲ませてくれるように頼まれました。すると女は、「あなたはユダヤ人でありながら、どうしてサマリヤの女のわたしに、飲ませてくれとおっしゃるのですか」と言いました。女がこう言ったのは、ユダヤ人はサマリヤ人と交際していなかったからなのです。
 そこでイエスは、「もしあなたが『水を飲ませてくれ』と言った者が、だれであるか知っていたならば、あなたの方から願い出て、その人から生ける水をもらったことであろう」と言われました。
 女はイエスの言われた言葉の意味がよく分からずに、くむ物もなく、井戸も深いのに、その生ける水をどこから手に入れるのですかと尋ねました。女は、イエスが救い主であり、永遠の生命という生ける水を与えることができると知らなかったのです。
 イエスは、ヤコブの井戸から水を飲んだ人はまたのどが渇くけれど、イエスが与えられる水を飲む人は、二度と渇くことがなく、永遠の命を受けることができると説明されました。
 するとサマリヤの女は言いました。「主よ、わたしがかわくことがないように、その水をわたしに下さい。」そこでイエスが夫を連れてくるように言われると、女は私には夫はありませんと答えました。「夫がないと言ったのは、もっともだ。あなたには5人の夫があったが、今のはあなたの夫ではない」とイエスは言われました。
 女はイエスが神か預言者ででもあるように、自分のことを何もかも言い当てたことを知って、イエスは預言者だと言いました。イエスが、神は善良で正直な人々の礼拝を求めておられると言うと、女はメシヤが来て、一切のことを知らせてくださることを知っていると言いました。そこで、イエスは「あなたと話しているこのわたしが、それである」とお答えになりました。
 その時、弟子たちが帰って来たので、女は水がめを置いたまま町へ行って、サマリヤの人々にイエスについて話しました。そして、女がキリストと呼んでいる人を見ようと、人々はぞくぞくと井戸の所へやって来ました。
 多くのサマリヤ人は、この女が話したことによってイエスを信じました。人々は自分たちのところに滞在してほしいと願ったので、イエスはそこに2日間滞在して人々に教えられました。イエスの言葉を聞いて信じた人々は「わたしたちが信じるのは、もうあなたが話してくれたからではない。自分自身で親しく聞いて、この人こそまことに世の救い主であることがわかったからである」と女に言いました。
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子供たちを祝福された


 人々はイエスに祝福していただこうと子供たちを連れてきました。しかし、弟子たちはイエスのじゃまになるからと、彼らたしなめました。
 それを見てイエスは憤り、彼らに言われました、「幼子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。」そして、幼子のような信仰をもって福音を受け入れる者でなければ、神の国へ入ることはできないと教えられました。
 イエスは子供たちを愛しておられたので、彼らを抱き、手をその上において祝福されました。
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水の上を歩かれるイエス


 ある日の夜、イエスの弟子たちは舟に乗って海へとこぎだしました。その時、イエスは舟には乗らず、別の場所で天父に祈っておられました。やがて、嵐になったため、舟は波をかぶって大きくゆれました。イエスは弟子たちが嵐の中で困っているのをご覧になると、水の上を歩いて行かれました。弟子たちは人が水の上を歩いて来るのを見て恐ろしくなりました。すると、弟子たちは自分たちを呼んで、恐れるなと言われるイエスの声を聞きました。ペテロはイエスの所まで歩いて行かせて欲しいと言いました。するとイエスは来るように言われました。そこでペテロは歩き出しましたが、怖くなったとたんに沈み始めました。イエスはペテロの手をつかんで、舟にもどるのを助けてくださいました。海は再び静かになりました。弟子たちはイエスが神の御子であられることを証しました。
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キリストと金持ちの若い役人


 金持ちで役人をしている青年がイエスのもとへ来て、永遠の命を得るためにはどうすればよいでしょうかとたずねました。イエスは戒めを守らなければならないと言われました。金持ちの青年は神の律法に従ってきたと答えると、イエスはもう一つ守らなければならない戒めがあると言われました。青年は持ち物を全部売って、貧しい人々に与えてから、イエスに従って行かなければなりませんでした。金持ちの青年はとても悲しくなりました。イエスから言われたとおりにしたくなかったからでした。青年は神よりもお金を愛していました。
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ヤイロの娘の蘇生


 イエスが人々に教えておられるところへ、ヤイロという会堂司がやって来てイエスの前にひれ伏しました。12歳になるひとり娘が死にそうなので、来てほしいというのでした。彼はイエスが手を置けば、娘は癒されると信じていました。
 イエスがヤイロと一緒に行こうとされると、大勢の人々がその周りへ集まってきました。イエスが長血を患っている女を癒しておられたところへ、ヤイロの家の者が来て、娘が死んだことを告げました。これを聞いてイエスは「恐れることはない。ただ信じなさい。娘は助かるのだ」と言われました。
 イエスはヤイロの家に着くと、嘆き悲しんでいる人々に、娘は死んだのではないと言われました。しかし、人々は娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑いました。
 イエスは人々を外へ出し、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、ヤイロ、そしてヤイロの妻と一緒に家の中へ入りました。そして、イエスは娘の手を取って、「少女よ、さあ、起きなさい」と言われました。すると娘の霊が戻ってきて、すぐに立ち上がりました。
 両親は驚いてしまいました。イエスは娘に食物を与えるように言い、だれにもこのことを知らせてはいけないと厳しく命じられました。
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マリヤとマルタ


 イエスは友であるマリヤ、マルタ、ラザロの家を訪問されました。マルタが忙しく食事の支度をしている間、マリヤは主の足元に座って、み言葉に聞き入っていました。マルタは、マリヤに手伝わせようとして、イエスに「わたしの手伝いをするように妹におっしゃってください」と言いました。
 イエスはマルタの気持ちを理解されたものの、マリヤは良い方を選んだのだと言われました。主のみ言葉はいつまでも彼女の中に残るからです。
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ラザロの蘇生


 ベタニヤにすむラザロとその姉妹マリヤとマルタは、イエスの熱心な信者でした。イエスは彼らを大変、愛しておられました。そこでラザロが病気になると、マリヤとマルタは人を遣わしてイエスに知らせました。
 2日後、イエスはベタニヤへ出発されました。ベタニヤはユダヤにあり、そこにはイエスを殺そうとするユダヤ人がいたので、弟子たちは大変恐れました。しかし、イエスは「わたしたちの友ラザロが眠っている。わたしは彼を起こしに行く」と弟子たちに言われました。弟子たちは、イエスが、ラザロはただ眠っているだけだと言われたのだと思い、「主よ、眠っているのでしたら、助かるでしょう」と言いました。そこで、イエスはもっとはっきりと「ラザロは死んだのだ」と言われました。
 使徒トマスはユダヤ人がイエスを殺そうとしていることを恐れ、仲間の弟子たちに「わたしたちも行って。先生と一緒に死のうではないか」と言いました。
 さて、イエスがベタニヤに近づいたころには、ラザロはすでに4日間も墓の中に置かれていました。大勢のユダヤ人がマリヤとマルタを慰めようと家に集まっていました。
 イエスが来られた事を聞いて、マルタはイエスを迎えに行き、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。しかし、あなたがどんなことをお願いになっても、神はかなえて下さることを、わたしは今でも存じています」と言いました。
 イエスがラザロはよみがえると言われると、マルタは復活のときによみがえることは知っていますと答えました。するとイエスは言われました。「わたしはよみがえりであり、命である。わたしを信じる者は、たとい死んでも生きる。また、生きていて、わたしを信じる者は、いつまでも死なない。」そして、マルタにこれを信じるかとお尋ねになりました。「主よ、信じます。あなたがこの世にきたるべきキリスト、神の御子であると信じております」とマルタは答えました。
 マルタは家に帰り、イエスがマリヤを呼んでおられることを告げました。マリヤはすぐイエスの元へ行きましたが、大勢の人々もマリヤがラザロの墓へ泣きに行くのだろうと思って、後からついて行きました。
 マリヤは村の外のイエスのおられる所へ行き、その足元にひれ伏して言いました。「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。」イエスはマリヤも一緒に来たユダヤ人たちも泣いているのを見て、激しく感動され、「彼をどこに置いたのか」とお尋ねになりました。彼らは「主よ、来て、ご覧下さい」と言いました。イエスも友ラザロのために涙を流されました。人々は「ああ、なんと彼を愛しておられたことか」と言いましたが、イエスは盲人の目を開けたのに、ラザロを死なせないようにはできなかったのかと考えた人々もいました。
 イエスは洞穴に石がはめてある墓へ行きました。イエスが石を取り除けるように言われると、マルタはラザロが死んでからもう4日もたっているので臭くなっていると言いました。そこでイエスは、もし信じるなら神の栄光を見るであろうという約束をマルタに思い起こさせました。
 石が取り除かれると、イエスは、願いを聞いてくださったことに感謝しますと、声を出して天の御父に祈りました。こうしたのは、ご自分は神から遣わされた者であることを人々に信じさせるためでした。次にイエスが大声で、「ラザロよ、出てきなさい」と呼ばれると、ラザロはよみがえって洞穴から出てきました。ラザロの顔や手足はまだ布で巻かれていたので、イエスは「彼をほどいてやって、帰らせなさい」と言われました。
 マリヤと一緒に墓へ来た人々はこの大いなる奇跡を見て、イエスを信じました。
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エルサレムへの入城


 イエスは弟子たちと共に過越しの祭りのためにエルサレムに入られました。オリブ山に近づいたところで、イエスはふたりの弟子を近くの村へ遣わし、つながれているろばと子ろばを解いて連れて来るようにと命じられました。また、どうしてそんなことをするのか尋ねる人がいたら、「主がお入り用なのです」と言えば、すぐ渡してくれるだろうと言われました。
 ふたりの弟子が連れてきたろばの上に上着を掛けると、イエスはそれにお乗りになりました。そして、エルサレムに入って行かれると、群衆は自分たちの上着としゅろの枝を道に敷いてイエスをたたえ、「ホサナ、主の御名によって来たる者に、祝福あれ」と叫びました。
 イエスがエルサレムに入って行かれた時、人々は「これは、いったい、どなただろう」と尋ねたので、「この人はガリラヤのナザレから出た預言者イエスである」と弟子たちは答えました。
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神殿を清められた


 イエスは過越しの祭りのためにエルサレムに行き、神殿に入られました。そして、人々が神殿の庭で牛、羊、はとを売ったり、両替をしたりしているのをご覧になりました。神殿でそのようなことが行われていることに立腹し、縄でむちを作って動物も人もすべて神殿から追い出されました。両替人の金を散らし、その台をひっくり返し、「これらのものを持って、ここから出て行け。わたしの父の家を商売の家とするな」と言われました。
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最後の晩餐


 過越しの祭りの前日、弟子たちは過越しの食事をどこでしたらよいかとイエスに尋ねました。イエスはペテロとヨハネに、エルサレムに行くと水がめを持った男に会うので、その人について行って、「先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと一緒に過越しを守ろうと、言っておられます」と言いなさいとお命じになりました。ペテロとヨハネが市内に入っていくと、すべてはイエスの言われたとおりでした。そして、広い2階の部屋へ連れて行かれ、そこに過越しの食事の用意をしました。
 夕方になって、イエスは十二使徒と一緒に食事の席に着かれました。イエスはご自分の死が迫っていることを知っておられました。そして、苦しみを受ける前に、弟子たちと過越しの食事をすることを望んでいたと言われました。
 食事をしている時、イエスは悲しげに、「あなたがたの中のひとりで、わたしと一緒に食事をしている者が、わたしを裏切ろうとしている」と言われました。弟子たちは心配して、次々に「主よ、まさか、わたしではないでしょう」と言いました。するとイエスは答えて言われました。「わたしと一緒に同じ鉢に手を入れている者が、わたしを裏切ろうとしている。」イエスは人の子を裏切るその人は、生まれなかった方がよかっただろうと弟子たちに言われました。救い主を裏切ったユダが、「先生、まさか、わたしではないでしょう」と尋ねると、イエスは「いや、あなただ」と答えられました。
 このときイエスは最初の聖餐を準備されました。パンを取り、これを裂き、祝福して使徒たちに与え、「取って食べよ、これはわたしのからだである」と言われました。次に杯を取り、感謝して使徒たちに与え、「これは、罪のゆるしを得させるようにと、多くの人のために流すわたしの契約の血である」と言われました。
 ペテロはイエスの近くに座っていたヨハネに、12人のうちだれが主を裏切るのか聞いてくれるように頼みました。ヨハネの質問に答えてイエスは、ご自分がひと切れの食事を浸して与える者がそれであると言われ、ひと切れの食物を器に浸して取り上げ、イスカリオテのユダに与えられました。そして、彼に言われました。「しようとしていることを、今すぐするがよい。」ほかの使徒たちはイエスが何のことを言われたのかわかりませんでしたが、ユダにはすぐにわかりました。彼はすぐに出て行って、夜のやみの中に姿を消しました。
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使徒たちの足を洗われた


 使徒たちと共に最後の晩餐を取られた後、イエスは上着を脱ぎ、手ぬぐいを腰に巻かれました。そして、水をたらいに入れて、ひとりずつ使徒たちの足を洗い、手ぬぐいでおふきになりました。
 シモン・ペテロの番になった時、彼はなぜ自分の足を洗ってくださるのかと尋ねました。するとイエスはペテロに、今はあなたたちにはわからないが、後でわかるようになるとお答えになりました。ペテロが「わたしの足を決して洗わないで下さい」と言うと、イエスは「もしわたしがあなたの足を洗わないなら、あなたはわたしとなんの係わりもなくなる」と答えられました。そこでペテロは「主よ、では、足だけではなく、どうぞ、手も頭も」と言いました。イエスは、足のほかは洗う必要がないと言われました。
 イエスはご自分を裏切る者を知っておられたので、使徒たちみんながきれいではないと言われました。
 こうしてイエスは使徒たちの足を洗い終えられると、「しかし、主であり、また教師であるわたしが、あなたがたの足を洗ったからには、あなたがたもまた、互いに足を洗い合うべきである」と言われました。
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ゲツセマネの祈り


 イエスは弟子たちを連れてゲツセマネと呼ばれていたオリブの木の園へ行かれ、「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここに座っていなさい」と言われました。そして、ペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて園の奥の方へ入って行かれ、3人にそこで待っていて、自分が祈っている間、一緒に目を覚ましているようにと言われました。
 イエスの心は悲しみにあふれていました。人々の罪のために大きな苦しみを受けなければならない時が来たことを知って、イエスは地にひれ伏して祈り始められました。「わが父よ、もしできることでしたらどうか、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの思いのままにではなく、みこころのままになさって下さい。」
 そのとき、御使いが天からあらわれてイエスを力づけました。イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られました。そして、全身から血が汗のように地に落ちました。
 祈り終えて立ち上がり、ペテロ、ヤコブ、ヨハネのところにへ行かれると、彼らは眠っていました。そこでイエスはペテロに言われました。「あなたがたはそんなに、ひと時もわたしと一緒に目をさましていることが、できなかったのか。誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。」
 イエスは再び祈りに行かれ、3人の使徒のところへ戻ってみると、彼らはまた眠っていました。それで彼らをそのままにして、まら行って、三度目に同じ言葉で祈られました。そこから弟子たちの所に帰ってきて、言われました。「まだ眠っているのか、休んでいるのか。見よ、時が迫った。人の子は罪人らの手に渡されるのだ。」
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ユダがイエスを裏切る


 イエスはゲツセマネの園で祈り終えられると、3人の使徒たちを起こし、「立て、さあ行こう。見よ。わたしを裏切る者が近づいてきた」と言われました。イエスが話しているうちに、十二使徒のひとりのユダが祭司長、民の長老たちから送られた大勢の群衆を従えてやって来ました。彼らは剣と棒を持っていました。
 ユダはユダヤの祭司長たちのところへ行き、銀貨30枚と引き換えにイエスを引き渡すことを謀っていたのでした。ユダは武器を持ってついて来た者たちに、「わたしの接吻する者がその人だ。その人を捕まえろ」とあらかじめ言っておいたのでした。そこでユダはすぐにイエスに近寄って、「先生、いかがですか」と言って、イエスに接吻しました。イエスはユダが裏切ったことを知っておられたので、「ユダ、あなたは接吻をもって人の子を裏切るのか」と言われました。
 裏切られたイエスは、ご自分を捕らえようとしていた人々に「だれを捜しているのか」と言われました。すると彼らは「ナザレのイエスを」と答えました。そこで、イエスは「わたしが、それである」と言われて、イエスに従う人々を無事に帰らせてもらいたいと言われました。
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ペテロがイエスの知人であることを否定した


 最後の晩餐の席で、イエスは使徒たちにもうあまり長くは一緒にいられないと告げられました。そして、今ご自分が行く所へは彼らは来ることはできないが、後でついて来ることができるだろうと言われました。
 その時ペテロは、「主よ、なぜ、今あなたについて行くことができないのですか。あなたのためには、命もすてます」と言いました。しかし、イエスは悲しげに答えられ、「わたしのために命を捨てると言うのか。よくよくあなたに言っておく。鶏が鳴く前に、あなたはわたしを三度知らないと言うであろう」と言いました。
 イエスはゲツセマネへ行く途中で使徒たちに、その夜彼らはイエスの弟子であることを認めるのを恐れるだろうと言われました。ペテロが、たとえほかの人がイエスを否定しても、自分は決してそのようなことはしないと答えると、イエスは再び「今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われました。しかし、ペテロはもしイエスと一緒に殺されるようなことがあっても、自分は決してイエスを知らないなどとは言わないと言い張りました。
 イエスはゲツセマネの園で祈り苦しまれた後、捕らえられて引き立てられました。ペテロはその後からついて行き、大祭司の屋敷の中庭にいました。ペテロが召使いたちと庭で火にあたっていると、女中のひとりが彼を見て、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言いました。しかし、ペテロは、「わたしは、あなたの言うことがなんの事か、わからない」とそれを打ち消しました。
 それからペテロはそこを離れて入り口の方に出ていきました。するとほかの女中が彼を見て、そこにいる人々に、「この人は、ナザレ人イエスと一緒だった」と言いました。ペテロはまたこれを打ち消して、「そんな人は知らない」と言いました。
 しばらくすると大祭司の召使いのひとりが近寄り、ペテロがガリラヤ人の言葉使いをするのを聞いて、きっとイエスの弟子だとうと思い、「あなたが園であの人と一緒にいるのを、わたしは見たではないか」と言いました。ペテロは3度目もイエスを知っていることを否定して、「その人のことは何も知らない」と言いました。ちょうどその時、鶏が鳴きました。
 近くで辱められ、傷つけられていたイエスは振り向いてペテロをごらんになりました。その時ペテロは、「鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、外に出て激しく泣きました。
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十字架につけられた


 イエスは十字架にかけられるために、ゴルゴタまたはカルバリと呼ばれる丘へ連れて行かれました。十字架にかけられる前に、苦痛を和らげるための薬の入ったぶどう酒を与えられましたが、イエスはこれをお飲みになりませんでした。
 ここでローマの兵卒たちはイエスを十字架につけました。手と足にくぎを打ち込み、同時に十字架にかけられるふたりの罪人の真ん中に立てました。十字架は、死を最も長引かせる刑であると同時に、あらゆる刑のうちで最も激しい苦痛を与えるもので、十字架にかけられている時間が長ければ長いほど、その苦痛は激しくなるのでした。
 兵卒たちがこの恐ろしい務めを終えようとしていた時、イエスは深い慈悲をもって「父よ、彼らをおゆるしください。彼ら何をしているのか、わからずにいるのです」と祈られました。
 刑の執行に当たっていた4人の兵卒たちは、イエスの着物を分けることにしました。彼らは縫い目がなく織られていた着物を切り裂きたくなかったので、くじを引いて分けました。
 十字架に罪状書きを打ちつけ、それに罪人の名前と犯した罪を書くのが当時の習わしでした。ピラトはイエスの十字架に、「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」という罪状書き掛けさせました。カルバリの近くを通る往来の激しい道を行くすべての人々が読めるようにと、この罪状書きはギリシャ語、ラテン語、ヘブル語で書かれていました。
 兵卒たちはイエスをののしり、「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救いなさい」と言ってあざげる人もいました。祭司長や律法学者、長老たちも一緒になって、「他人を救ったが、自分自身を救うことができない」と大声でイエスを嘲弄しました。そして、もし今十字架から降りてくることができたら、イエスがメシヤであることを信じようと言いました。通りがかりの人々も「もし神の子なら、自分を救え。そして十字架からおりてこい」とののしりました。
 イエスの横で十字架に掛けられていた犯罪人のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分を救い、またわれわれも救ってみよ」と悪口を言いました。しかし、もうひとりは自分たちは当然の報いを受けているが、イエスは何も悪いことをしていないとたしなめて、「あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」と言いました。イエスは、「あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」と言われました。
 イエスの母マリヤが、その姉妹とマグダラのマリヤを伴ってカルバリへやって来ました。使徒ヨハネも一緒でした。イエスは立って泣いている母をごらんになり、「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」と、そしてヨハネには「ごらんなさい。これはあなたの母です」と言われました。イエスはヨハネが母の世話をし、守ることを望んでおられたのです。それ以来ヨハネはイエスの母を自分の家に引き取りました。
 イエスが十字架につけられてから3時間ほどたった昼ごろから、一帯が暗くなりました。そして、この暗闇は3時間ほど続きました。
 午後3時ごろ、イエスは暗闇の中で大声で叫んで、「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と言われました。イエスでも耐えられないほどのひどい苦痛だったのです。
 救い主はゲツセマネで苦しまれ、十字架で命を捧げて私たちの罪を贖ってくださいました。天の御父はこれをイエスひとりにさせなければなりませんでした。
 イエスはすべてを成し遂げられて、「わたしは、かわく」と言われました。そこで人々は酢いぶどう酒を含ませた海綿を棒に結び付けて、イエスの口元に差し出しました。
 イエスはこのぶどう酒を受けて、「すべてが終わった」と大声で言われました。その使命を果たされたことを知っておられたのです。そして、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」と言い、頭を垂れ、ついに息を引き取られました。
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埋葬


 イエスが十字架にかけられてから、ユダヤ人の役人たちは、安息日の前にその体を十字架から降ろそうとしました。アマリタヤの金持ちで、ユダヤ人を恐れ、隠れてイエスについて来たヨセフは、ピラトのところへ行き、イエスの体を引き取る許可を求めました。ピラトはヨセフの願いを聞き届けました。
 アリマタヤのヨセフとやはりイエスの弟子であったニコデモは、イエスの体を十字架から降ろしました。ニコデモは香料を持ってきていたので、ユダヤ人の埋葬の習慣に従って、これを入れて死体を亜麻布で包みました。十字架の刑が行われた場所の近くの園にあったヨセフの新しい墓に、イエスの死体を納めた後、ヨセフとニコデモは墓の入り口に石を転がしておきました。
 マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤは、イエスが納められた場所を見届け、それから香料と香油の用意をするために帰っていきました。
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空になった墓


 墓の入り口は大きな石でふさがれていました。ローマ人の番人が墓に封をして、見張っていました。日曜日の朝早く一人の天使がやって来て、入り口から石をわきへ転がし、墓を開けました。番人は恐ろしくなって、地面に倒れてしまいました。マグダラのマリヤとイエスの母マリヤが墓へやって来ました。天使は二人をむかえて、約束どおりキリストが復活されたことを話して、空になった墓の中を見るように言いました。二人は大喜びで、イエスの弟子たちにこのことを伝えに行きました。
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復活された


 ペテロとヨハネはそれを聞いて墓へ行きました。墓の中は空でした。しかし、彼らは死人のうちからイエスがよみがえるべきことをしるした聖句を、まだ悟っていませんでした。それから、ふたりは自分の家に帰って行きました。
 ペテロとヨハネが帰った後、マリヤは空になったイエスの墓の外に立って泣いていました。ふと墓の中をのぞくと、白い衣を着たふたりのみ使いが、ひとりは頭の方に、もうひとりは足の方に座っていました。なぜ泣いているのか尋ねられたマリヤは、「だれかが、わたしの主を取り去りました。そして、どこに置いたのか、わからないのです」と答えました。
 マリヤが振り向くと、そこにイエスが立っておられましたが、それがイエスであることに気がつきませんでした。イエスはなぜ泣いているのか、だれを捜しているのかと尋ねられました。マリヤはその人が園の番人だと思っていたので、「もしあなたが、あのかたを移したのでしたら、どこへ置いたのか、どうぞ、おっしゃって下さい。わたしがそのかたを引き取ります」と言いました。
 するとイエスが「マリヤよ」と呼ばれました。マリヤは振り向いて、それがイエスであることがわかり、「ラボニ」と言いました。それは「先生」という意味でした。
 イエスは、まだ御父のみもとに上っていないので、触ってはいけない、そして使徒たちのところへ行って、イエスに会ったことを伝えるように言われました。さらにイエスは「わたしは、わたしの父またあなたがたの父であって、わたしの神またあなたがたの神であられるかたのみもとへ上って行く」と話されました。
 マリヤは使徒たちのところへ急いで行き、自分が主に会ったこと、また主が自分に話されたことを報告しました。
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傷跡を見せるイエス


 イエスが復活された後の日曜日の夜、弟子たちの何人かが集まって復活について話し合っていました。そのとき突然イエスが現れて、「やすかれ」と言われました。弟子たちは霊を見ているのだと思って、大変恐れ驚きました。そこでイエスは、「なぜおじ惑っているのか」と尋ねられました。
 そして「わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」と言われました。
 そして、イエスは弟子たちにご自分の手足やわきの傷跡をお見せになりました。また、ご自分が霊ではなく、肉体を持っておられることをさらに証明するために、食物を求められました。そこで弟子たちが、焼いた魚のひと切れをさしあげると、みんなの前でそれを食べられました。弟子たちは救い主に会うことができ、主が復活されたことを知って大変喜びました。
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昇天


 復活されてから40日間、イエスは使徒たちとたびたび会われ、神の王国について話されました。使徒たちに教え終わると、イエスは彼らに聖霊の力が与えられ、救い主の証人となるであろうと約束されました。
 それから使徒たちは、イエスが天に上げられ、雲に迎えられるのを見ました。天を見つめていると、白い衣を着たふたりのみ使いが突然彼らのそばに立ち、なぜ天を仰いでいるのかと尋ねました。み使いたちは、救い主は今見たのと同じ有様で、またおいでになると、イエスの再臨について話しました。
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アメリカ大陸に降臨された


 イエスが十字架上ではりつけになられた時、アメリカ大陸では大嵐や地震などの天災に見舞われました。それらは地の全面が変わるほどの破壊力を振るい、しかもニーファイ人の住む土地は暗黒の霧に包まれました。嵐と暗闇が去った後、多くのニーファイ人はバウンテフルの地の神殿の周りに集まりました。大きな被害と変化を目にし、イエス・キリストとその死のしるしについて語り合っていました。
 突然天から声が聞こえましたが、何と言っているのかわかりませんでした。荒々しくも大きくもありませんでしたが、その小さな声は聞く者を震えさせ、その胸を熱く燃えさせました。声が再び聞こえた時も、まだ何を言っているのか彼らは理解することができませんだした。
 3度目に声が聞こえた時は、その言葉を聞き分けることができました。声はこう聞こえました。「わたしの愛する子を見なさい。わたしの心にかなう者である。わたしは彼によって、わたしの名に栄光を加えた。彼に聞きなさい。」
 ニーファイ人たちが天を仰ぐと、白い衣を身にまとったひとりのお方が降りてこられるのが見えました。そのお方が地に降りて群衆の中に立たれても、だれも口を開く勇気がありませんでした。人々は皆、このお方は天使であると思いました。しかし、このお方は手を差し伸べてこう言われました。「見よ、わたしはイエス・キリストであり、世に来ると預言者たちが証した者である。」
 群衆は、キリストが復活の後、彼らに現れるであろうという数々の予言を思い出しました。ニーファイ人はひとり残らず地に伏してイエスを拝しました。
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ニーファイ人を訪れられた


 イエスは人々にひとりずつ前に出て、手足の釘跡に触れてみるように言われました、イエスこそ復活した救い主であることを知らせるためでした。12人の弟子を選び、バプテスマを施して、聖霊の賜物を授ける権能を与えられました。そしてユダヤ人に教えたのと同じようなことを多く教えられました。また、病んでいるものを癒し、子供たちを祝福しました。聖餐についても教えられました。また聖典の重要性も教えられました。
 イエスは3日の間ニーファイ人に教え、その後もたびたび民にみ姿を現されました。こうして、イエスはニーファイ人の間での業を終え、弟子たちを祝福して天に戻られました。
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キリストの再臨


 イエスは再び地上においでになりますが、この時は、ベツレヘムにお生まれになった時と同じではありません。主が再臨される時には、力と栄光をもって来られるのです。主は赤い衣をまとわれ、その栄光は偉大にして、「太陽は恥じてその顔を隠し、月はその光を与えず、もろもろの星はその場所から投げ落とされるであろう。」と書かれています。
 主が再臨される日は、悪を行なう人にとっては恐ろしい日となるでしょう。悔い改めなかった人は、主が再臨される時の輝きに焼き尽くされて、滅びてしまいます。
 しかし、正しい人々にとっては、輝かしい日となります。地上の聖徒たちはその身が変わって、救い主に会うために天に上げられるのです。すでにこの世にいない正しい人々は、墓から出て、天の柱の中で主にまみえることができます。
 再臨されるときには、救い主は「見よ、彼はオリブの山に、また広大な大洋、すなわち大いなる深みの上に、また海の島々の上に、またシオンの地に立つであろう。」と言われているように、各地に姿を現されます。そして、人々の中に立って、地上の一切の生ける者を支配されるのです。

キリストの生涯と教え

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