1−2 誕生と幼少時代

ヨハネの誕生についてのザカリヤへの啓示


紀元前2年 ユダヤのエルサレム
ルカ1:5-25(ジョセフ・スミス訳)


ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。
その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。
ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。
ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。
ザカリヤは、神権の位にあって神の前に祭司の務めをしていたとき、
祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。

香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。
すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。
ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。
そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。
彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。

彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、
そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。
彼はエリヤ(Elias)の霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。

するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。
御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。
時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたは口がきけなくなり、この事の起る日まで、ものが言えなくなる」。
民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。
ついに彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。
彼は彼らに合図をするだけで、引きつづき、口がきけないままでいた。
それから務の期日が終ったので、家に帰った。
そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、
「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。


【動画】エリサベツとザカリヤ


ガブリエルがマリヤに救い主の母となることを告げる


紀元前2年 ガリラヤのナザレ
ルカ1:26-38


六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。
この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。

御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。
この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろうかと、思いめぐらしていた。

すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。
見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。
彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。
そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、
彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。
そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。

御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。
それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。

あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。
不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。
神には、なんでもできないことはありません」。
そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。
そして御使は彼女から離れて行った。


【動画】マリヤと天使



【動画】キリストの誕生をマリヤに告げる天使




【解説】
救い主はどうして死すべき人間の母と、不死不滅の御父の間に誕生する必要があったのか。

「死に負けることのない一人の人の犠牲が必要でした。
しかし、その人は死を味わった後、再びよみがえらなければなりません。
それができるのは救い主だけでした。
救い主は母親を通して死ぬ力を受け、御父を通して死に打ち勝つ力を受けておられました。」
(「不変の原則」『聖徒の道』1994年1月号,40)

マリヤ、エリサベツを訪れる


紀元前2年 ユダヤの山里
ルカ1:39-56


そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、
ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした。
エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。
エリサベツは聖霊に満たされ、声高く叫んで言った、
「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。
主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。
ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。
主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。
するとマリヤは言った、
「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救主なる神をたたえます。
この卑しい女をさえ、心にかけてくださいました。
今からのち代々の人々は、わたしをさいわいな女と言うでしょう、
力あるかたが、わたしに大きな事をしてくださったからです。
そのみ名はきよく、そのあわれみは、代々限りなく主をかしこみ恐れる者に及びます。
主はみ腕をもって力をふるい、心の思いのおごり高ぶる者を追い散らし、
権力ある者を王座から引きおろし、卑しい者を引き上げ、
飢えている者を良いもので飽かせ、富んでいる者を空腹のまま帰らせなさいます。
主は、あわれみをお忘れにならず、その僕イスラエルを助けてくださいました、
わたしたちの父祖アブラハムとその子孫とをとこしえにあわれむと約束なさったとおりに」。
マリヤは、エリサベツのところに三か月ほど滞在してから、家に帰った。


【動画】ともに喜ぶマリヤとエリサベツ


ヨハネの誕生


紀元前2年
ルカ1:57-80


さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。
近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。
八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。
ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。
人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。
そして父親に、どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。

ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。

すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。
近所の人々はみな恐れをいだき、またユダヤの山里の至るところに、これらの事がことごとく語り伝えられたので、
聞く者たちは皆それを心に留めて、「この子は、いったい、どんな者になるだろう」と語り合った。
主のみ手が彼と共にあった。

父ザカリヤは聖霊に満たされ、預言して言った、
「主なるイスラエルの神は、ほむべきかな。
神はその民を顧みてこれをあがない、
わたしたちのために救の角を僕ダビデの家にお立てになった。
古くから、聖なる預言者たちの口によってお語りになったように、
わたしたちを敵から、またすべてわたしたちを憎む者の手から、救い出すためである。
こうして、神はわたしたちの父祖たちにあわれみをかけ、その聖なる契約、
すなわち、父祖アブラハムにお立てになった誓いをおぼえて、
わたしたちを敵の手から救い出し、
生きている限り、きよく正しく、みまえに恐れなく仕えさせてくださるのである。
幼な子よ、あなたは、いと高き者の預言者と呼ばれるであろう。主のみまえに先立って行き、その道を備え、
罪のゆるしによる救をその民に知らせるのであるから。
これはわたしたちの神のあわれみ深いみこころによる。
また、そのあわれみによって、日の光が上からわたしたちに臨み、
暗黒と死の陰とに住む者を照し、わたしたちの足を平和の道へ導くであろう」。
幼な子は成長し、その霊も強くなり、そしてイスラエルに現れる日まで、荒野にいた。


【動画】バプテスマのヨハネの誕生



【動画】バプテスマのヨハネの命名


イエスの誕生についてのヨセフへの啓示


紀元前2年 ガリラヤのナザレ
マタイ1:18-25(ジョセフ・スミス訳)

イエス・キリストの誕生の次第はこのように記されている。
母マリヤはヨセフと婚約していたが、まだ一緒にならない前に、聖霊によって身重になった。

夫ヨセフは正しい人であったので、彼女のことが公けになることを好まず、ひそかに離縁しようと決心した。

彼がこのことを思いめぐらしていたとき、主の使が夢に現れて言った、
「ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。
その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。
彼女は男の子を産むであろう。
その名をイエスと名づけなさい。
彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。
すべてこれらのことが起ったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである。
すなわち、「見よ、おとめがみごもって男の子を産むであろう。その名はインマヌエルと呼ばれるであろう」。
これは、「神われらと共にいます」という意味である。

ヨセフは眠りからさめた後に、主の使が命じたとおりに、マリヤを妻に迎えた。
しかし、子が生れるまでは、彼女を知ることはなかった。そして、その子をイエスと名づけた。


【動画】ヨセフと天使


イエスの誕生についてのニーファイへの啓示


1ニーファイ11:18-20

すると天使は言った。「見よ、あなたが見ているおとめは、肉に関して神の御子の母である。」
そしてわたしは、そのおとめが御霊に連れて行かれるのを見た。
そのおとめが御霊に連れて行かれてからしばらくして、天使がわたしに「見なさい」と言った。
それで眺めると、腕に幼子を抱いたおとめが見えた。

イエスの誕生


紀元前1年4月 ユダヤのベツレヘム
ルカ2:1-20(ジョセフ・スミス訳)


そのころ、帝国内の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。
これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。
人々はみな登録をするために、それぞれ自分の町へ帰って行った。

ヨセフもダビデの家系であり、またその血統であったので、ガリラヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
それは、すでに身重になっていたいいなづけの妻マリヤと共に、登録をするためであった。


ところが、彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、
初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。
どの宿にも客間があいていなかったからである。

さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。
すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照したので、彼らは非常に恐れた。

御使は言った、「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。
きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。
あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。
それが、あなたがたに与えられるしるしである」。
するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、
「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。
御使たちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼たちは「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と、互に語り合った。

そして急いで行って、マリヤとヨセフ、また飼葉おけに寝かしてある幼な子を捜しあてた。

彼らに会った上で、この子について自分たちに告げ知らされた事を、人々に伝えた。
人々はみな、羊飼たちが話してくれたことを聞いて、不思議に思った。
しかし、マリヤはこれらの事をことごとく心に留めて、思いめぐらしていた。
羊飼たちは、見聞きしたことが何もかも自分たちに語られたとおりであったので、神をあがめ、またさんびしながら帰って行った。


【動画】イエス・キリストの降誕



【動画】マリアとヨセフがベツレヘムへ旅する



【動画】キリストの誕生を告げ知らされる羊飼い


アメリカ大陸におけるキリストの誕生のしるし


ヒラマン14:5,3ニーファイ1:4-22

また見よ、あなたがたが一度も見たことのないような一つの新しい星が現れる。これもあなたがたへのしるしである。

さて、第九十二年の初めには、見よ、預言者たちの預言がさらに完全に成就し始めた。
民の中にさらに大きなしるしと、さらに大きな奇跡が行われ始めたからである。
しかし、レーマン人サムエルによって述べられた言葉の成就する時は過ぎ去ったと言い出す者たちが何人かいた。
彼らは同胞のことを喜び始めて、「見よ、時は過ぎ去り、サムエルの言葉は成就していない。
だから、あなたがたがこのことを喜び、信じたのは、むなしいことだった」と言った。
そして彼らは、国中にひどい騒動を起こした。
そこで、信じていた人々は、述べられていることが何らかの理由で起こらないようなことがありはしないかと、非常に悩み始めた。
しかし見よ、彼らは、まるで夜のない一日のような二昼一夜を確固として待ち設け、自分たちの信仰がむなしいものでなかったことを知ろうとした。
さて、信仰心のない者たちはある一日を特に定め、預言者サムエルによって告げられたしるしがその日までに現れなければ、
これらの言い伝えを信じているすべての人を殺すことにした。
さて、ニーファイの息子ニーファイは、自分の民のこの悪事を見て、心に非常な憂いを覚えた。
そこで彼は、出て行って地に伏し、自分の民のために、すなわち先祖の言い伝えを信じていることで殺されようとしている人々のために、熱烈に神に叫び求めた。
そして彼は、終日熱烈に主に叫び求めた。すると見よ、主の声が彼に聞こえて言われた。
「頭を上げて、元気を出しなさい。見よ、時は近い。今夜、しるしが示され、明日、わたしは世に来る。そしてわたしは、聖なる預言者たちの口を通して語ってきたすべてのことを成就することを、世の人々に示す。
見よ、わたしは、世の初めから人の子らに知らせてきたすべてのことを成就するため、また父と子の両方の思いを行うために、わたし自身の民のもとへ行く。
わたし自身のゆえに父の御心を行い、わたしの肉のゆえに子の思いを行う。見よ、時は近い。今夜、しるしが示されるであろう。」
さて、ニーファイに下された御言葉は告げられたとおりに成就し、見よ、太陽が沈んでも少しも暗くならなかった。
こうして夜になっても暗くならなかったので、民は驚いた。
そして、預言者たちの言葉を信じなかった多くの者は地に倒れ、まるで死んだようになった。
預言者たちの言葉を信じた者たちに対して企てた殺害の大計画が破れてしまったことが分かったからである。
また、かつて告げられたしるしがすでに現れたからである。
そして彼らは、神の御子が間もなく御姿を現されるに違いないということを知るようになった。
まことに、要するに北の地でも南の地でも、西から東に至るまで全地の面にいる人々は皆、非常に驚いて地に倒れた。
彼らは預言者たちが長年これらのことについて証してきたこと、またかつて告げられたしるしがすでに現れたことを知ったからである。
そして彼らは、自分たちの罪悪と不信仰のために恐れ始めた。
そして、その夜は一晩中少しも暗くならず、まるで真昼のように明るかった。
そして朝には、いつものとおりに再び太陽が昇った。
そこで彼らは、しるしが与えられていたので、その日に主がお生まれになったことを知った。
そして、預言者の言葉のとおりに、すべてのことがことごとく成就した。
そして、一つの新しい星もその言葉のとおりに現れた。
さて、このとき以後、サタンは民の心をかたくなにし、彼らが見たそれらの数々のしるしと不思議を信じないようにさせるために、民の中に偽りを広め始めた。
しかし、これらの偽りと欺きにもかかわらず、民の大半は信じて、主に帰依した。


【動画】キリストの誕生のしるし


イエス、祝福と割礼を受けられる、シメオンとアンナの預言


ユダヤのエルサレム
ルカ2:21-39

八日が過ぎ、割礼をほどこす時となったので、受胎のまえに御使が告げたとおり、幼な子をイエスと名づけた。
それから、モーセの律法による彼らのきよめの期間が過ぎたとき、両親は幼な子を連れてエルサレムへ上った。
それは主の律法に「母の胎を初めて開く男の子はみな、主に聖別された者と、となえられねばならない」と書いてあるとおり、幼な子を主にささげるためであり、
また同じ主の律法に、「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽」と定めてあるのに従って、犠牲をささげるためであった。
その時、エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は正しい信仰深い人で、イスラエルの慰められるのを待ち望んでいた。また聖霊が彼に宿っていた。
そして主のつかわす救主に会うまでは死ぬことはないと、聖霊の示しを受けていた。
この人が御霊に感じて宮にはいった。
すると律法に定めてあることを行うため、両親もその子イエスを連れてはいってきたので、
シメオンは幼な子を腕に抱き、神をほめたたえて言った、
「主よ、今こそ、あなたはみ言葉のとおりにこの僕を安らかに去らせてくださいます、
わたしの目が今あなたの救を見たのですから。
この救はあなたが万民のまえにお備えになったもので、
異邦人を照す啓示の光、み民イスラエルの栄光であります」。
父と母とは幼な子についてこのように語られたことを、不思議に思った。
するとシメオンは彼らを祝し、そして母マリヤに言った、
「ごらんなさい、この幼な子は、イスラエルの多くの人を倒れさせたり立ちあがらせたりするために、また反対を受けるしるしとして、定められています。――
そして、あなた自身もつるぎで胸を刺し貫かれるでしょう。――それは多くの人の心にある思いが、現れるようになるためです」。
また、アセル族のパヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた。彼女は非常に年をとっていた。
むすめ時代にとついで、七年間だけ夫と共に住み、その後やもめぐらしをし、八十四歳になっていた。
そして宮を離れずに夜も昼も断食と祈とをもって神に仕えていた。
この老女も、ちょうどそのとき近寄ってきて、神に感謝をささげ、そしてこの幼な子のことを、エルサレムの救を待ち望んでいるすべての人々に語りきかせた。
両親は主の律法どおりすべての事をすませたので、ガリラヤへむかい、自分の町ナザレに帰った。


【動画】宮参り



【動画】神殿で紹介される幼子イエス


博士たちの訪れ


ユダヤのベツレヘム
マタイ2:1-12(ジョセフ・スミス訳)


イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、
「ユダヤ人のメシヤとしてお生れになったお子様は、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。

ヘロデ王はこのことを聞いて不安を感じた。エルサレムの人々もみな、同様であった。
そこで王は祭司長たちと民の律法学者たちとを全部集めて、彼らに問いただして言った。
「キリストが生れると預言者たちによって書かれている場所はどこか。」
彼はまだ預言者を信じていなかことを、大いに恐れた。
彼らは王に言った、「ユダヤのベツレヘムで生まれると預言者によって書かれております。このように彼らは言っています。
『主の言葉はわたしたちに現れ、そしてこのように言う。ユダヤの地に横たわるベツレヘムよ。おまえの中からひとりの君が生まれる。彼はユダの君たちの中で、決して最も小さいものではない。あなたがたからメシアが来られ、わたしの民、イスラエルを救うであろう。』」
そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、
彼らをベツレヘムにつかわして言った、「行って、その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みに行くから」。
彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。
彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。

そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
そして、夢でヘロデのところに帰るなとのみ告げを受けたので、他の道をとおって自分の国へ帰って行った。


【動画】博士たち



【動画】博士たちがイエスを探す




【解説】

東からきた博士たちの人数について、聖書には記載されていないが、
伝説では、3人であるといわれている。ペルシャ(現在のイラン)から来た。
訪れたのは、イエス誕生の直後でなく、かなり日にちが過ぎたときのようだ。
実写動画の方では、それが表現されている。
ヘロデが二歳以下の男の子を殺したことからも、
誕生から1年以上たっていることがわかる。

エジプトへ逃れる


マタイ2:13-18


彼らが帰って行ったのち、見よ、主の使が夢でヨセフに現れて言った、「立って、幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼な子を捜し出して、殺そうとしている」。

そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。
それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。

さて、ヘロデは博士たちにだまされたと知って、非常に立腹した。
そして人々をつかわし、博士たちから確かめた時に基いて、ベツレヘムとその附近の地方とにいる二歳以下の男の子を、ことごとく殺した。
こうして、預言者エレミヤによって言われたことが、成就したのである。
「叫び泣く大いなる悲しみの声がラマで聞えた。ラケルはその子らのためになげいた。子らがもはやいないので、慰められることさえ願わなかった」。


【動画】悪いヘロデ王


ヨハネは山に逃れる、ザカリヤの死


ジョセフスミスの教え


ザカリヤはヨハネが殺されないように、エリサベツとヨハネを山に逃れさせた。こうしてヨハネはそこで無事に暮らした。

ヘロデはザカリヤに、ヨハネはどこにいるかと尋ねた。しかし、ザカリヤは答えなかった。

怒ったヘロデは、ザカリヤを殺そうとして兵士をつかわした。彼らは神殿の祭壇のそばでザカリヤを殺した。

エジプトからナザレに戻る


マタイ2:19-23(ジョセフ・スミス訳),ルカ2:40


さて、ヘロデが死んだのち、見よ、主の使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて言った、
「立って、幼な子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼な子の命をねらっていた人々は、死んでしまった」。
そこでヨセフは立って、幼な子とその母とを連れて、イスラエルの地に帰った。
しかし、アケラオがその父ヘロデに代ってユダヤを治めていると聞いたので、そこへ行くことを恐れた。
そして夢でみ告げを受けたので、ガリラヤの地方に退き、ナザレという町に行って住んだ。
これは預言者たちによって、「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」と言われたことが、成就するためである。

それから、イエスは弟たちとともに成長し、体もたくましくなり、御自分の務めの時が来るのを待っておられた。
イエスは知恵に満ち、そして神の恵みがその上にあった。
イエスは父親のもとで働いておられたが、その語ることは他の人々とは異なり、イエスを教えることのできる人はだれもいなかった。
教える人を必要とされなかったからである。

少年イエス、神殿にもうでられる


紀元12年4月 ユダヤのエルサレム
ルカ2:41-50(ジョセフ・スミス訳)

さて、イエスの両親は、過越の祭には毎年エルサレムへ上っていた。

イエスが十二歳になった時も、慣例に従って祭のために上京した。

ところが、祭が終って帰るとき、少年イエスはエルサレムに居残っておられたが、両親はそれに気づかなかった。

そして道連れの中にいることと思いこんで、一日路を行ってしまい、それから、親族や知人の中を捜しはじめたが、
見つからないので、捜しまわりながらエルサレムへ引返した。

そして三日の後に、イエスが神殿で 教師たちの真中に座っておられるのを見つけた。
教師たちはイエスの話を聞いたり、またイエスに質問したりしていた。
聞く人々はみな、イエスの賢さやその答に驚嘆していた。

両親はこれを見て驚き、そして母が彼に言った、「どうしてこんな事をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう様もわたしも心配して、あなたを捜していたのです」。
するとイエスは言われた、「どうしてお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずのことを、ご存じなかったのですか」。
しかし、両親はその語られた言葉を悟ることができなかった。


【動画】少年イエス



【動画】神殿で教える少年イエス


救い主の成長


ガリラヤのナザレ
ルカ2:51-52


それからイエスは両親と一緒にナザレに下って行き、彼らにお仕えになった。母はこれらの事をみな心に留めていた。
 
 
イエスはますます知恵が加わり、背たけも伸び、そして神と人から愛された。
それから何年もたって、務めの時が近づいた。

キリストの生涯と教え

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