1−3 伝道の前の時期

道を備える者、ヨハネ


ユダの荒れ野
マタイ3:1-12,マルコ1:1-8,ルカ3:18(ジョセフ・スミス訳)


皇帝テベリオ在位の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤ・テラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主、
アンナスとカヤパとが大祭司であったとき、神の言が荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。
バプテスマのヨハネが荒野に現れて、ヨルダンのほとりの全地方に行って、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。
「悔い改めよ、天国は近づいた」。
それは、預言者イザヤの書に書いてあるとおりである。その言葉は次のとおりである。「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。荒れ野で叫ぶ者の声がする。『主の道を備え、その道筋をまっすぐにせよ。』
見よ、見よ、預言者たちの書に書いてあるとおりに、主は、世の罪を取り除き、異教の諸国民に救いをもたらし、イスラエルの羊の群れに属する行方の知れない者たちを集めるために来られるからである。
まことに、散らされ、苦難にある者たちを集めるために、主は来られる。また、道を備え、異邦人に福音が宣べ伝えられるようにするために来られる。
地の果てに至るまで暗闇に座しているすべての人への光となり、また死者の中から復活をもたらし、高い所に昇って御父の右に住むために来られる。
その後、時が満ちて、律法と証が結び固められ、王国の鍵が再び御父に引き渡される。
そして、主はすべてのものを裁かれる。すなわち、すべての者に裁きを行うために降って来て、不信心な者が犯した不信心な行いを立証される。このことはすべて、主が来られる日に起こる。
その日は力の日である。まことに、すべての谷は埋められ、すべての山と丘は低くされ、曲がった所はまっすぐになり、起伏の激しい所は平らになる。
そして、人は皆、神の救いを見るであろう。」

このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。
すると、エルサレムとユダヤ全土とヨルダン附近一帯の人々が、ぞくぞくとヨハネのところに出てきて、
自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
ヨハネは、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けようとしてきたのを見て、彼らに言った、「なぜ、あなたがたは神から送られた方の説教を受け入れないのか。もし、あなたがたがそれを心から受け入れないなら、あなたがたはわたしを受け入れないのである。そしてあなたがたがわたしを受け入れないなら、あなたがたはわたしが証した方を受け入れないのである。あなたがたは自分の罪を隠すことはできない。
悔い改めよ。そして、悔改めにふさわしい実を結べ。
アブラハムがわたしたちの父であり、わたしたちは神の戒めを守っている。アブラハムの子ら以外は、約束のものを受け継ぐことはできない。自分たちはアブラハムの子孫だ、自分たちだけが父アブラハムの子孫を起すことができるなどと、心の中で思ってもみるな。あなたがたに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。
斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ。」

そこで群衆が彼に、「それでは、わたしたちは何をすればよいのですか」と尋ねた。
彼は答えて言った、「下着を二枚もっている者は、持たない者に分けてやりなさい。食物を持っている者も同様にしなさい」。
取税人もバプテスマを受けにきて、彼に言った、「先生、わたしたちは何をすればよいのですか」。
彼らに言った、「きまっているもの以上に取り立ててはいけない」。
テオピロ閣下、これはあなたも御存じでしょうが、ユダヤ人のやり方に従って、また、集めた金を納める法的な慣習に従って、集めた金額のほかに、貧しいすべての人に分け前が割り当てられます。
取税人もこのやり方に従っていたので、ヨハネは「きまっているもの以上に取り立ててはいけない」と言ったのです。
兵卒たちもたずねて言った、「では、わたしたちは何をすればよいのですか」。彼は言った、「人をおどかしたり、だまし取ったりしてはいけない。自分の給与で満足していなさい」。
民衆は救主を待ち望んでいたので、みな心の中でヨハネのことを、もしかしたらこの人がそれではなかろうかと考えていた。
そこでヨハネはみんなの者にむかって言った、「わたしは悔改めのために、水であなたがたにバプテスマを授けている。そして、わたしが来ると証した人はわたしよりも力のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値うちもない。(わたしはそのかたの場所を満たすことはできない。)わたしが言ったように、このかたが来る前に、わたしはあなたがたにバプテスマを施す。このかたが来ると、このかたは、聖霊と火とによってあなたがたにバプテスマをお授けになるであろう。
わたしの証するかたは、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、そのかたの時が満ちるときに、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。
このようにヨハネは来て、ヨルダン川で説教とバプテスマを授けた。そして、自分よりも力のあるかたが後に来て、聖霊と火によってバプテスマを授けると証した。
こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまの勧めをして、民衆に教を説いた。

【解説】
パリサイ人、サドカイ人とは

民族名でなく、主義主張を同じくする人々のグループ。
パリサイ人とはユダヤ教の一宗派に属し、
モーセの律法を厳格に守っていると自負していた人々。
パリサイ人は宗教を多くの儀式的行動の遵守に制限する傾向があった。
サドカイ人は裕福な階級のユダヤ人で、宗教的にも政治的にも大きな影響力があった。
この人々は復活の教義は信じていなかった。
どちらのグループも、神の律法がもともと意図したものからそれ、
それぞれのグループに属する人々の多くが、
神の預言者であるバプテスマのヨハネのメッセージを受け入れなかった。

イエスのバプテスマ


ユダヤのベタバラの近く
マタイ3:13-17(ジョセフ・スミス訳),マルコ1:9-11,ルカ3:21-22


そのときイエスは、ガリラヤを出てヨルダン川に現れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受けようとされた。
ところがヨハネは、それを思いとどまらせようとして言った、「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。
しかし、イエスは答えて言われた。「今はあなたからバプテスマを受けさせてもらいたい。このように、あらゆる義を満たすのは、わたしたちにふさわしいことである。」そこで、ヨハネはイエスの言われるとおりにした。

そして、ヨハネは水の中に降りて行き、イエスにバプテスマを施した。

イエスはバプテスマを受けられると、すぐ水から上がられた。そして、ヨハネが見ると、見よ、天が開かれ、神の御霊が鳩のようにイエスの上に降って来られるのが見えた。
また、天からの声を聞いた。「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である。彼に聞きなさい。」


【動画】イエス,バプテスマをお受けになる



【動画】イエスのバプテスマ




【解説】
神会の御三方は別個の存在である

カトリックやプロテスタントでは、三位一体説を唱えているが、
聖書には、神会の御三方は別個の存在であるという証拠が数多く記されている。
例えば、救い主のバプテスマに関する記述は、
父なる神、イエス・キリスト、聖霊の御三方が別個の存在であるという教義を裏付けている。
救い主がバプテスマを受けているとき、父なる神が天から語りかけられ、
聖霊(鳩に象徴される)が救い主に降られた。
同様の真理を教えている聖文をほかにも幾つか挙げる。
創世1:26-27
  神が自身を「われわれ」と言った。
マタイ17:1-5
  天父がイエスを証した。
ヨハネ17:20-23
  イエスが天父に祈った。
使徒7:55-56
  ステパノは天父と御子の御二方を見た。

イエス、神と交わられる、その後誘惑にあわれる


ユダの荒れ野
マタイ4:1-11,マルコ1:12-13,ルカ4:1-13(以上ジョセフ・スミス訳)


さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダン川から帰り、
御霊によって荒れ野に導かれた。神とともにいるためである。
そして、四十日四十夜、断食をし、神と交わられたのち、空腹になられた。
サタンはイエスを誘惑することを求めた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。
そして、悪魔に試みられるにまかせられた。

すると試みる者がきて言った、「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」。
イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」。

それから、イエスは聖なる都に連れて行かれた。そして、御霊がイエスを宮の頂上に立たせられた。
その時、悪魔がイエスのもとに来て言った。「もしあなたが神の子であるなら、飛び降りてごらんなさい。『神があなたのために天使たちにお命じになると、あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手で支えるであろう』と書いてありますから。」
イエスは彼に言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」。

そしてまた、イエスは御霊に満たされた。そして、御霊はイエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せられた。
すると、悪魔がまたイエスのもとに来て言った。「これらの国々の権威と栄華とをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしに任せられていて、だれでも好きな人にあげてよいのですから。もしあなたがひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものをすべて、あなたにあげましょう。」
するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。
そこで、悪魔はイエスを離れ去った。


【動画】イエス,誘惑をお受けになる




【解説】
「人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである」と書いてある場所は、旧約聖書である。
「人はパンだけでは生きず、人は主の口から出るすべてのことばによって生きることをあなたに知らせるためであった。」(申命記8:3)

ヨハネ、イエスがキリストであると証する


ユダヤのベタバラ
ヨハネ1:19-34(ジョセフ・スミス訳)

さて、ユダヤ人たちが、エルサレムから祭司たちやレビ人たちをヨハネのもとに遣わして、「あなたはどなたなのですか」と問わせたが、そのときヨハネが立てた証はこうであった。
すなわち、彼は告白して、自分がエライアスであることを否まず、「わたしはキリストではない」と告白して言った。
そこで、彼らは問うて言った。「どうしてあなたはエライアスなのですか。」彼は「わたしは万事を元どおりにするエライアスではない」と言った。すると彼らは問うて言った。「では、あの預言者ですか。」彼は「いいえ」と答えた。
そこで、彼らは言った。「あなたはどなたですか。わたしを遣わした人々に答えを持って行けるようにしていただきたい。あなたは自分を何だと言われるのですか。」
彼は言った。「わたしは、預言者イザヤが言っているように、『主の道をまっすぐにせよと荒れ野で叫ぶものの声』である。」
遣わされた者たちはパリサイ人であった。
彼らはヨハネに問うて言った。「では、あなたがキリストでも、万事を元どおりにすることになっていたエライアスでも、またあの預言者でもないのなら、なぜバプテスマを授けるのですか。」
ヨハネは彼らに答えて言った。「わたしは水でバプテスマを授けるが、あなたがたの知らない御方が、あなたがたの中に立っておられる。
わたしが証をするのは、その御方のことである。その御方はあの預言者、すなわちわたしの後においでになるエライアスであって、わたしよりも優れた御方である。わたしはその御方の履物のひもを解く値打ちもないし、その御方の座を占めることもできない。その御方は水だけでなく、火と聖霊とによってバプテスマを授けられるからである。」
その翌日、ヨハネはイエスが自分の方に来られるのを見て言った。「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。」
ヨハネは人々に、イエスについて証をして言った。「『わたしの後に来る御方は、わたしよりも優れた御方である。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この御方のことである。
わたしはこの御方を知っており、この御方がイスラエルに現れてくださるそのことのために、わたしは来て、水でバプテスマを授けているのである。」
ヨハネはまた証をして言った。「この御方がわたしからバプテスマをお受けになったとき、わたしは、御霊が鳩のように天から降って、この御方の上にとどまるのを見た。
わたしはこの御方を知っていた。水でバプテスマを授けるようにと、わたしをお遣わしになった御方が、わたしに言われた。『ある人の上に、御霊が降ってとどまるのを見たら、その人こそは、聖霊によってバプテスマを授ける人である。』
わたしはそれを見たので、この御方こそ神の御子であると、証をしたのである。」
これらのことは、ヨハネがバプテスマを授けていたヨルダンの向こうのベテアバラであったのである。

【解説】
ここで語られているエライアスとは、特別な使命を与えられた者たちに対する称号である。
バプテスマのヨハネもエライアスの一人であるが、万事を元どおりにするエライアスではなかった。
バプテスマのヨハネは主のために道を備える使命が与えられていた。
万事を元どおりにするエライアスは列王紀に出てくる預言者エリアである。
「あの預言者」は申命記18:15に語られているモーセのような預言者をいう。
エリアとモーセは、後にペテロ、ヤコブ、ヨハネの前に現れることになる。
(関連 4−1「キリストの変貌」

アンデレ、シモン、ピリポ、ナタナエルの召し


ベタバラ、ペレア、ベツサイダ、ピリポの領地
ヨハネ1:35-51(ジョセフ・スミス訳)

その翌日、ヨハネはまたふたりの弟子たちと一緒に立っていたが、
イエスが歩いておられるのに目をとめて言った、「見よ、神の小羊」。
そのふたりの弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
イエスはふり向き、彼らがついてくるのを見て言われた、「何か願いがあるのか」。彼らは言った、「ラビ(訳して言えば、先生)どこにおとまりなのですか」。
イエスは彼らに言われた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこで彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を見た。そして、その日はイエスのところに泊まった。時は午後四時ごろであった。
ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。
彼はまず自分の兄弟シモンに出会って言った、「わたしたちはメシヤ(訳せば、キリスト)にいま出会った」。
そして、彼はシモンをイエスのもとに連れて来た。すると、イエスは彼に目を留めて言われた。「あなたはヨナの子シモンである。あなたをケパ(訳せば、聖見者または石)と呼ぶことにする。」
彼らは漁師であったが、この後すべてのものを置いて、イエスに従っうことになる。
(関連 2−2「ペテロ、アンデレ、ヤコブ、ヨハネの召し」
その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされたが、ピリポに出会って言われた、「わたしに従ってきなさい」。
ピリポは、アンデレとペテロとの町ベツサイダの人であった。
このピリポがナタナエルに出会って言った、「わたしたちは、モーセが律法の中にしるしており、預言者たちがしるしていた人、ヨセフの子、ナザレのイエスにいま出会った」。
ナタナエルは彼に言った、「ナザレから、なんのよいものが出ようか」。ピリポは彼に言った、「きて見なさい」。
イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた、「見よ、あの人こそ、ほんとうのイスラエル人である。その心には偽りがない」。
ナタナエルは言った、「どうしてわたしをご存じなのですか」。イエスは答えて言われた、「ピリポがあなたを呼ぶ前に、わたしはあなたが、いちじくの木の下にいるのを見た」。
ナタナエルは答えた、「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です」。
イエスは答えて言われた、「あなたが、いちじくの木の下にいるのを見たと、わたしが言ったので信じるのか。これよりも、もっと大きなことを、あなたは見るであろう」。
また言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。天が開けて、神の御使たちが人の子の上に上り下りするのを、あなたがたは見るであろう」。

婚宴で水をぶどう酒に変えられる[奇跡]


ガリラヤのカナ
ヨハネ2:1-11(ジョセフ・スミス訳)

三日目にガリラヤのカナに婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
イエスも弟子たちも、その婚礼に招かれた。
ぶどう酒がなくなったので、母はイエスに言った、「ぶどう酒がなくなってしまいました」。
イエスは母に言われた、「婦人よ、わたしに何をして欲しいのですか。それをいたしましょう。わたしの時は、まだきていませんから 」。
母は僕たちに言った、「このかたが、あなたがたに言いつけることは、なんでもして下さい」。
そこには、ユダヤ人のきよめのならわしに従って、それぞれ四、五斗もはいる石の水がめが、六つ置いてあった。
イエスは彼らに「かめに水をいっぱい入れなさい 」と言われたので、彼らは口のところまでいっぱいに入れた。
そこで彼らに言われた、「さあ、くんで、料理がしらのところに持って行きなさい 」。すると、彼らは持って行った。
料理がしらは、ぶどう酒になった水をなめてみたが、それがどこからきたのか知らなかったので、(水をくんだ僕たちは知っていた)花婿を呼んで
言った、「どんな人でも、初めによいぶどう酒を出して、酔いがまわったころにわるいのを出すものだ。それだのに、あなたはよいぶどう酒を今までとっておかれました」。
イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行い、その栄光を現された。そして弟子たちはイエスを信じた。


【動画】カナでの結婚式



【動画】水をぶどう酒に変えられたイエス


イエス、カペナウムへ


ヨハネ2:12

そののち、イエスは、その母、兄弟たち、弟子たちと一緒に、カペナウムに下って、幾日かそこにとどまられた。

キリストの生涯と教え

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