色の出方

水中写真と陸上写真の大きな差の一つに色の出方があります。陸上写真では昼間の自然光で撮ろうとフラッシュ光で撮ろうと基本的に色の出方は変わりません。しかし、水中写真では、青い自然光で撮るか、七色のフラッシュ光で撮るかによって色の出方が変わります。その理論とコントロールする方法を学びます。

写真を見よう

まず色の出方の違いを写真で確認しましょう。






色の差

ふわっと青っぽい色が出ているものと、はっきりとした色が出ているものがあります。

理由

●写真に青い自然光の量が多いとふわっと青っぽくなります。本来の色に青が足された色になります。

●写真に七色のフラッシュ光の量が多いとはっきりとした色が出ます。本来の色がそのまま出ます。

先に青い自然光の量が決まる、その後、七色のフラッシュが光る

写真を撮る時、まずF値を決めましたよね。その後SSを調整して決めましたよね。
そうやってF値とSSが決まると、窓の大きさとカーテンを開ける時間が決まる訳です。
つまりその時点でレンズを通ってカメラの中に入る青い自然光の量が決まります。

この横長の四角が写真を作る光の総量だとしましょう。これは、カメラが適正露出を考えて決めます。今カメラが四角10個分の光が必要だと考えたとしましょう。

                   

F値とSSを決めました。青い自然光の量が決まりました。四角2個分だとしましょう。
                   

残り8個分の光が足りません。そこでカメラはフラッシュのTTLに8個分光れと命令を出します。
                   

結果青い自然光が20%、七色のフラッシュ光が80%で写真が出来ます。
この場合青が2割足された色が発色されます。かなりはっきりした色ですね。

色の色々なパターン

青い自然光が1個分で少ない時、青無し写真です。色は、はっきりと被写体本来の色が出ます。ほとんど青の影響を受けない色です。黒抜き写真が代表例です。
                   

青い自然光が6個と多い場合、青多い写真が出来ます。すべてが青色の影響を受けて青っぽくなります。青抜き写真が代表例です。
                   

青い自然光が8個、超青多い写真。もう被写体本来の色より青の方が強く出ています。とても青が多い青抜き写真です。青被り写真もこれです。(青被りについては後で出てきます)
                   

ナイトダイビング。青い自然光がありません。ゼロです。被写体本来の色がそのまま出ます。陸上で撮るのと同じ色が出ます。
                   

フラッシュをつけない場合、ターゲットライトも消す場合、青のみです。水中マクロではやる事がないですが、ワイドで自然光撮影だとこうなりますね。
                   

では、お約束の写真で確認しましょう

F32 F11 F8 F2.8
SS1/250

拡大しておじさんの足元の白い板を見て下さい。絞りを開くと青っぽくなっています。
これは前景のみ(後景無し)です。本来青い自然光の影響をあまり受けない部分です。そんな前景でさえ実は青い自然光の影響を受けているのです。

  F11 
 SS1/200
 SS1/125
 SS1/60
 SS1/30
SSを遅くしても同じですね。青っぽくなっています。

自然光は青い

このHPの序章に書いた重要な事『青い自然光という意味』がここでも少しわかっていただけたと思います。

表で整理

  被写体本来の色が出る 青っぽい色が出る
 青い自然光量
七色のフラッシュ光  少
 F値 絞る 開く 
 SS 速い 遅い 

運用

先にSSで調整して下さい。SSが限界に達した場合のみF値で調整します。 なぜならば、SSよりもF値の方がデメリットが多いからです。これは青抜きの調整と同じですね。

青の調整はまずSSで調整、足りない場合のみデメリット覚悟でF値に登場してもらう事はいつも共通です。

運用・SS

●被写体本来の色を出したい場合は、まずSSをどんどん速くします。 青い自然光が減ります。被写体本来の色が出てきますが、デメリットとして、後景や中景を中心に前景も、青さがなくなってきます。絵コンテが青抜きなど青多い写真の場合、絵コンテが大きく変わります。SSが同調速度に達するともうそこが限度です。これ以上の調整はF値に登場していただきます。

●青い色を出したい場合は、まず、SSをどんどん遅くしていきます。 青い自然光が増えます。青っぽい色が出てきますが、デメリットとして、後景や中景を中心に前景も、青くなってきます。絵コンテが黒抜きなど青無し写真の場合、絵コンテが大きく変わります。機械的な限界はありません。どこまでも遅く出来ます。しかし手ブレや被写体ブレなどの影響を考えると1/60が限界でしょうか?これ以上の調整はF値に登場していただきます。

運用・F値

F値での運用は、SSより後です。先にSSで調整して下さい。SSが限界に達した場合のみF値で調整します。

●被写体本来の色を出したい場合は、まず、F値をどんどん絞っていきます。 青い自然光が減ります。被写体本来の色が出てきますが、デメリットとして、被写界深度が深くなります。後景や中景を中心に前景も、青さがなくなってきます。絵コンテがボケの多い写真・青抜きなど青多い写真の場合、絵コンテが大きく変わります。

●青い色を出したい場合は、まず、F値をどんどん開けていきます。 青い自然光が増えます。青っぽい色が出てきますが、デメリットとして、被写界深度が浅くなります。後景や中景を中心に前景も、青くなってきます。絵コンテがボケの少ない写真・黒抜きなど青無し写真の場合、絵コンテが大きく変わります。

運用上の注意・デメリット無しの取引はない

被写体の色を本来の色にするか青っぽい色にするかの調整をする場合、必ずデメリットがあります。絵コンテが変わってしまいます。従って取引となります。どちらが良いかはもうあなたの好みです。

●F値・SSを変えて、被写体の色の中にある青の量を変化させると、同時に、中景・背景など写真全体の青の量が変わります。当たり前ですけど・・・。

●F値に関してはさらに被写界深度も変わります。

取引例

被写体の本来の色は諦めて、すべてを青に染める絵コンテです。青を優先した取引です。



中景の青さが変わるデメリットは少なくして、被写体の背景の青をキープしながら被写体自身の色もある程度だす絵コンテです。よく見るとハゼの白い所は少し青みがあります。しかし黄色もまぁ出ています。両方ほどほどの取引ですね。



被写体本来の色の再現を最優先にした取引です。デメリットとして写真から青さがなくなります。またF値にも登場してもらっての調整ですので2つ目のデメリットとして被写界深度も深くなっています。
しかし絵コンテ自体が黒抜きです。そのデメリット自体が絵コンテなので全く問題の無い取引が出来ます。

実際の運用

被写体の色の出方を最優先の絵コンテというのは多くはないと思います。図鑑写真的なもの位でしょうか?

実際には黒抜きや青抜きや様々な絵コンテで写真を撮りながら、被写体の本来の色の発色に気を付けながら取引を微調整していくという作業になると思います。

例としては、、、F13・SS1/250で黒抜きという絵コンテは完成した。背景は黒くなった。被写体自身が白ベースの体で青色が少しでも残ると青が目立つので被写体の本来の色を大事にするためにF16まで絞って撮りなおそう〜デメリットもこの絵コンテでは無いので良い取引です。(より詳しく)

より完成度の高い写真を目指そう

以上が色の出方についてです。へへへっ、結構繊細な話でしょ(^O^)書いてる本人の見掛けと違って(^O^)

写真は光で描く絵です。大きなイメージが絵コンテです。色の出方の調整は、描き終わる前の細かい調整、最後の仕上げなんだと思います。これで最終的な完成度が変わるんだと思います。
『まぁ綺麗だけどなんでここはこうなんだろう?なんか詰めの甘い写真だなぁ』〜と思われないように・・・みんな、頑張りましょうね〜〜

実は水中写真ならではの醍醐味

面倒くさい水中写真ならではの制約、青い自然光がもたらす弊害です。しかし、この色の出方を自分でコントロール出来るのは、水中写真だからでもあるのです。

これに振り回されてしまえば、水中写真のデメリットです。
しかし〜〜〜
これを自分で制御しコントロールし操れるようになったならば、これが水中写真の醍醐味になるのです。

そうです、はい皆さんご一緒に〜〜

撮れちゃった写真などいりません。写真は、撮るのです(^O^)

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