黒抜き

基本的な撮影技法から学んでいきましょう。まずは黒抜きです。

作例

では作例集を見て写真を読み取って見ましょう。

作例集

黒抜きの特徴

被写体が真っ黒な背景にいるためとても引き立ちます。色鮮やかな被写体をかっこよく撮る手段の一つです。黒抜きでは被写体本来の色もはっきり出るためとても綺麗に撮れます。周りが黒いので水中写真の明るい感じがなくなりますが、『主人公はあなた!!!』という撮り方です。

地味な被写体や黒い所のある被写体では、逆に黒い背景に溶け込んでしまうため、逆効果です。鮮やかな被写体の色を引き立てるための撮り方といえるでしょう。肖像画的な写真です。

写真を見よう

写真を見ればわかりますよね?第一章で勉強しましたから・・・

『青無し写真』です。それも極度の青無し写真ですね。

『前景+後景』 被写体と周りの地面などが前景。黒抜きにする部分が後景。

『被写界深度は深い』

写真を見よう、からわかる事

青無し写真ですから撮影時青い自然光の量が少なければ少ないほど撮りやすい写真です。雨の日や暗い海では簡単です。晴れた浅場では難易度が上がります。青い自然光量が少ない時に有利な戦いが出来ます。青い自然光が多量にある場所、浅い晴れた夏の沖縄などでは不利すぎるのでチャレンジしてはいけない写真ですね。

前景+後景ですから、後景が作れるアングルを探さなければいけません。中層を泳いでいる魚であれば横から撮れば後景が作れます。地面にくっついている被写体では、平らな地面で真横から撮り後景を作ります。出来れば少し小高い所や先端に居る場合より簡単に後景は作れます。中景が入るとそこにフラッシュが当たりうすぼんやり写りますので黒抜きにはなりませんね。

被写界深度は、深いです。このような絵コンテの場合被写界深度が深い方が被写体が細部まで写ります。しかし、被写界深度が深い事が絵コンテだったのでしょうか?そのために、F値を絞っているのでしょうか?
F値の役目について思い出しましょう。

『F値には被写界深度を変える効果と青い自然光の量を変える効果の2つの効果があります。』

そうです、黒抜きの場合青い自然光量を極度に少なくして青無し写真にしなければいけないので、F値も自然光量を変えるために絞っているのです。当然被写界深度は変わりますがそれは許容しなければ黒抜きは実現不可能です。

運用

仮にF8がデフォルトであるとしましょう。デフォルトではSSは同調速度ですから1/250です。極度の青無し写真ですからSSを遅くするという事は絶対にありえませんね。SSは同調速度で固定です。

ではこのF8・1/250で黒抜きが完成するでしょうか?後景もあるので光は多く入ろうとします。F8・1/250ではほとんどの場合黒抜きは完成しません。後景が黒くなりません。
SSは同調速度でこれ以上速くは出来ません。従って、F値にデメリット覚悟で登場していただきます。被写界深度が深くなってしまいますが、絞っていきます。だんだん、光景が青無し暗くなっていきます。真っ黒になったら完成です。
実際どこまで絞れば黒抜きが完成するかは、その時の青い自然光の量次第です。
暗い海では、F11位で黒抜きが完成するでしょう。明るい海ではF11でも真っ黒にはならないのでF16・F22とどんどん絞らなければいけなくなるでしょう。
まぁデメリットといてもこの黒抜きという絵コンテの場合、被写界深度が深い事がそんなにデメリットでもありませんので、取引は大成功ですね。

フラッシュ位置は標準。地面にくっついている被写体ならば120度型。中層ならば180度型です。
黒抜きは同調速度が1/320まで上げられるニコンの機種が1/200〜1/250のキャノンより有利です。

まとめ

●青い自然光量が少ない時が有利に戦えます。
●ロケハン時に後景を作る事は必須です。
●通常、F11位からのスタートでしょうか?SSは同調速度で放置です。
●試し撮りで確認。
●後景が黒くなければF値を絞る。黒くなるまで絞る。
で、、、完成。

失敗例

なぜかちゃんと黒くならないぜ〜写真が変だぜ〜


F32 SS1/250もうこれ以上青い自然光を減らす事が不可能な値です。しかし黒くなりません。
理由は前景のみ(後景無し)だからです。後景がないからですね。後景は必須です。


F32・SS1/250 これでも黒くなりません。後景が必須です。


惜しいですね・・・遠い中景にフラッシュ光が弱く当たっているため、写っています。上に行くにつれ距離が遠くなりフラッシュ光が届かなくなるためだんだん黒くなっていますね。あと10cm、アケボノハゼが高く飛んでくれれば、背景部分が後景になり黒抜きができたでしょうか?やはりしっかり背景を作る事が必須です。


被写体までの距離が遠い場合も黒抜きは完成しません。この写真はトリミング後です、実際はもっと小さく写っています。

F10です。F16やF22なら黒抜きが完成するはずですね。しかし、距離が遠い場合絞るとフラッシュの光量不足になってしまいます。この写真もすでに魚の体はアンダーで青被り気味です、絵コンテ黒抜きで、結果後景が黒くもならず前景が青被りしています。失敗です。
後景を黒くするため、これ以上絞ると明確に光量不足で前景の被写体が更にアンダーになり写真が壊滅します。
対策は、近寄る、です。近寄れば、もっと絞ってもフラッシュは光量不足になりません。従ってF16やF22で撮影出来ます。黒抜きも完成します。
被写体までの距離が遠い場合もF値を絞れないため黒抜きしにくいです。


同じく距離が遠いため黒抜きには、なっていません。これ以上絞ると被写体自身がアンダーになるのでここまでです。まぁ黒抜きにはなっていませんが紺色バックもいい感じなので、これ以上絞って失敗作になるよりましです。
撮影前の絵コンテは黒抜きでしたが、実現が無理である事を知るのは重要です。この場合試し撮りを見ながら黒抜きを諦めて絵コンテ変更したため、写真としては破綻していません。この写真ありでしょ?最初に絵コンテが、無理である事がわかれば、次の絵コンテに移れます。


実はハナダイの大人のような大きい被写体の場合、APS-C+105mmレンズでは、画角が狭すぎて近寄れません。従って黒抜きは、難しくなります。もっと小さい被写体に近寄って撮る方が有利な戦いになります。
50mmレンズやフルサイズ+105mmレンズあたりだとハナダイの大人サイズでも十分戦えます。お持ちのカメラとレンズのセットの画角によっても戦える相手が決まりますね。

ちなみにこのカシワハナダイはAPS-C+105mmレンズです。この条件は機材的に不利な戦いです。しかしこの時は夕暮れでもう薄暗くなりかけていました。青い自然光量がとても少ない条件です。そうです〜青無し写真には有利です。
これがエントリー前に青い自然光量を見るという意味ですね。『夕暮れだなぁ〜〜』の時は、エントリー前に考える事は『青無し写真に有利』です。明るい時には不可能な絵コンテ、青無し系の絵コンテをエントリー前にイメージしておくのです。この時も夕暮れなので青無し系、特に大きめで近寄れないハナダイやベラやチョウチョウウオの黒抜きは狙いの一つでした。
これが海を見るという事です。有利な戦いをする戦略を練るのです。何も考えずに、突撃〜〜〜と戦っては勝てませんよ(^O^)

この写真は通常大きすぎてAPS-C+105mmでは不利な戦いになる黒抜きを夕暮れという青い自然光量が少ない時に的確にチャレンジして撮れた写真です。戦略の勝利です(^O^)

黒抜きのような青無し写真の場合、温帯の暗い海の方が沖縄の明るい海より有利であるのは言うまでもありません。

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