4月14日に巻き上がっていたのに、5月になるまで掲示できませんでした。失礼。とはいえ、満尾してしばらく経ってから読み返すと、また新鮮な思いがしますね。ちょっと複雑な心境でもあります。最初のうちは兼坊・優得軒・亜月庵の3吟のような形で始まり、途中で、各1句だけでしたが、木菟さん、玉ちゃん、猫房さんの句もありました。ところが後半になると兼坊・亜月庵の両吟になってしまいました。ずっとお付き合いいただいている亜月庵さんはとてもありがたい方ですが、他の方々がぷっつり見えなくなってしまったのが残念です。またいつの日か、復活してほしいと願っています。ともあれこれが、当連句道場4巻目の自由連句百韻でした。どうぞご鑑賞のほど。
自由連句百韻「時計忘れて」の巻 |
2001年12月31日首2002年4月14日尾 |
初表 |
温泉に時計忘れて年を越す |
兼坊 |
蕎麦の香りに小腹空かして |
優得軒 |
映画館行列になる三が日 |
兼坊 |
老人手帳で総て千円 |
亜月庵 |
お父さんここは百円ショップだよ |
兼坊 |
がらくたばかり集まっている |
優得軒 |
最近はフリマとやらに名を変えて |
亜月庵 |
日本人とは誰も知るめぇ |
兼坊 |
初裏 |
髭を剃りスーツを着込むビジネスマン |
優得軒 |
ジャージ姿でごろ寝の休日 |
亜月庵 |
意を決し股引はくのをやめました |
兼坊 |
人力車ゆく底冷えの町 |
木菟 |
顔見世の看板役者に血道あげ |
玉 |
まめ男との縁談は破棄 |
兼坊 |
しばられず生きていくのが楽しくて |
優得軒 |
つい脱走し野良と呼ばれる |
亜月庵 |
公園に廃用牛が五頭ほど |
兼坊 |
ベジタリアンと声高く言い |
猫房 |
手作りを失敬したる帰り道 |
亜月庵 |
左右の長さかなり違うぞ |
優得軒 |
いいでしょう私の彼はサウスポー |
兼坊 |
ピンクレディーも浅丘めぐみも |
亜月庵 |
二表 |
カラオケで歌う人なくなりにけり |
兼坊 |
もの悲しげに響く軍歌は |
亜月庵 |
家訓には博打はならぬと書き付ける |
優得軒 |
先祖代々尾羽打枯らして |
亜月庵 |
神様は貧乏神を拝みます |
兼坊 |
屁理屈並べて貧福論など |
亜月庵 |
本書いて金を儲ける策ないか |
兼坊 |
掲載料出しなおかしこまる |
亜月庵 |
全面にお詫び広告雪印 |
兼坊 |
仏の顔も三度目の春 |
亜月庵 |
遊んでたつもりはないが桜散る |
優得軒 |
青い静かな山の湖 |
亜月庵 |
忽然と短大生が消えた跡 |
兼坊 |
大学教授リストラに泣く |
優得軒 |
二裏 |
元来がつぶしの利かぬ頑固者 |
亜月庵 |
巨人以外は応援しない |
兼坊 |
なにゆうとん野球はカープで決まりじゃけん |
亜月庵 |
相も変わらぬ酒場の議論 |
兼坊 |
熱狂と言う名の暴徒フーリガン |
亜月庵 |
我が物顔に街を闊歩す |
優得軒 |
髪を染め環境ホルモン振りまいて |
兼坊 |
予をセクシーとひとはいふなり |
亜月庵 |
若い子は冬もミニスカ生足で |
兼坊 |
寒くないかと肩抱き寄せる |
優得軒 |
CMは年寄り嗤い笑いとる |
亜月庵 |
目玉と話芸の染太郎逝き |
兼坊 |
顔かたち何と様々日本人 |
兼坊 |
寄せ集めって純血のこと? |
亜月庵 |
三表 |
あどけない子供蛙の皮を剥ぎ |
兼坊 |
小公女でも鍋は空き缶 |
亜月庵 |
今だっておらの村には電気がね |
兼坊 |
蛍雪よりも爪に点す灯 |
亜月庵 |
アパートの窓を開ければ神田川 |
兼坊 |
二色の独楽と氷の世界 |
亜月庵 |
レコードで忘れかけてた歌を聴く |
兼坊 |
初めて買ったミュンシュの英雄 |
亜月庵 |
あっけなくアルバイト代消えて行き |
兼坊 |
円安毎日実感する日々 |
亜月庵 |
金のため俺は生きてるわけじゃない |
兼坊 |
馬一頭でムネオになれるさ |
亜月庵 |
道東の無人の原野に鍬を入れ |
兼坊 |
シャモ鍋などをつつく冬ざれ |
亜月庵 |
三裏 |
誕生日自分で祝うほかはなく |
兼坊 |
いとこきょうだい全て寂滅 |
亜月庵 |
遠縁の叔母の遺産が懐に |
兼坊 |
ポワロにバレた温室の砒素 |
亜月庵 |
逃亡者捕まるまでの逃亡者 |
兼坊 |
旅行の代わりのロードムービー |
亜月庵 |
就職列車急行津軽に乗り遅れ |
兼坊 |
なにが幸い演歌の星に |
亜月庵 |
勉強もダメスポーツもからっきし |
兼坊 |
恫喝できりゃ心配いらね |
亜月庵 |
政治家に清廉潔白求めるな |
兼坊 |
竄鼓しつつ去ってゆく漁父 |
亜月庵 |
安楽な老後果たして有りやなし |
兼坊 |
育て損ねた一人息子で |
亜月庵 |
名残表 |
保証人誰かなってはくれまいか |
兼坊 |
無駄に使った公共事業費 |
亜月庵 |
故郷の山川海を破壊して |
兼坊 |
オゾンホールを全開にする |
亜月庵 |
神様が気まぐれなのは人に似て |
兼坊 |
不倫偸盗大量殺戮 |
亜月庵 |
小説の素材は尽きず星のごと |
兼坊 |
かけばかくほど疼く水虫 |
亜月庵 |
病院は行かない誤診されてから |
兼坊 |
押し頂いた怪しげな水 |
亜月庵 |
宗教かはたまたマルチ商法か |
兼坊 |
欲かいて見る邯鄲の夢 |
亜月庵 |
錦などないが故郷へ帰りなん |
兼坊 |
荒れるどころか消えた田園 |
亜月庵 |
名残裏 |
責任者出て来い農水省の方 |
兼坊 |
古風なことは言いっこなしよ |
亜月庵 |
日の下に新しきこと何かある |
兼坊 |
柳絮飛び散り鼻がムズムズ |
亜月庵 |
職場でも花咲く頃はそわそわと |
兼坊 |
おたまじゃくしも尻尾捨て去る |
亜月庵 |
いつもより少し長めの昼寝して |
兼坊 |
パソコンの前明ける短夜 |
亜月庵 |
於キョン太の連句道場本部 |
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句上げ |
兼坊 |
44句 |
優得軒 |
10句 |
亜月庵 |
43句 |
木菟 |
1句 |
玉 |
1句 |
猫房 |
1句 |
計6名100句 |
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