Superorder Acanthopterygii
アカンソプテリギー

棘鰭類/きょくきるい

棘鰭上目

  

 アカンソプテリギー/棘鰭上目の系統

 棘鰭類は派生的な真骨類であるといわれ、背びれに棘があることや、骨の数が少ないこと、口を突出するように動かせることなどが特徴といわれます。しかし非常に種類が多く、グループも多く、形態はさまざま。形態形質の相同性が問題になることもありますし、形態データと分子データによる系統解析の結果がしばしば一致しないようです。大グループであるカサゴ目は種数が1200以上、スズキ目にいたっては脊椎動物の目とされるもののなかで最大で、種数は9000以上、亜目の数がなんと18もあります。しかもカサゴ目は多系統であるとしばしばいわれていて、スズキ目も亜目どうしの関係や他の目との関係がどうなるのかよくわかりません。その単系統性さえ疑われており、

The important point is that the order Perciformes is not monophyletic. In addition, most families in many suborders are not currently definable in terms of common shared derived characters and thus many not be monophyletic. Nelson 1994, [Fishes of the Wolrd 3ed] JOHN WOLEY & SONS,INC pp330

重要な点は、スズキ目は単系統ではないということであり、加えて、スズキ目の多くの科、および亜目の多くが共有派生形質によって定義することができていない、ようするにこれらの多くは単系統ではないのだ。

という状況です。

 また、スズキ目以外の目も他の目との関係や、それ自体の単系統性の問題が錯綜しているらしく、文献によってはキンメダイ、カンムリキンメダイ、クジラウオがひとつにまとめられる時もあるし、そうならない時もあります。トゲウオ、ヨウジウオ、ウミテングも同様。また、古典的には棘鰭類にされていない他の真骨類との関係もどうなるのか分かりません。このように諸々の事柄から考えると棘鰭上目、およびその周辺の確からしい系統関係が分かるのにはしばらくかかりそうです。新しい論文やスタンダードな論文はおいおいリサーチする予定。

 

 系統関係:

 系統に関しては暫定的に以下の形で紹介。見ればわかるように以下の系統樹というかデンドログラムというかにはほとんど系統の情報がありません。目だ亜目だとグループを提示していますが、このグループがどこまで妥当なのかは、以上に述べたように怪しげな部分が多々あることがうかがえます。その怪しさ、反対に手堅さは個々のグループによって違うでしょう。例えばフグ目やカレイ目のように、グループの単系統性それ自体については問題がなさそうなものもあります。一方、単系統性が確かでも、将来、新しく示された系統にそって分類階級を当てはめた場合、既存の目、亜目、上科、科だとかがどうなってしまうのかは分かりません。

 余談:具体的な例を上げれば新しい系統仮説に基づいて、これまでの亜科を科に、ある亜目を消滅させて別の亜目に吸収させる、というようなことが起ります。こういう作業は時に状況をひどくややこしくするものなのですが、ただ、系統樹はテストの対象になる仮説であり、絶えず新しいデータでぐらぐら揺らされるものであること、それに対してどちらかというと安定性と利便性を求められる分類体系とがどこまで親和的にやっていけるのかちょっと興味深いですね。さてはて、アカンソプテリギーの系統仮説はどのようなトポロジーで安定するのか? そしてその時までに既存の分類体系のどれだけが生き延びられるのか? 系統と分類の解離が大きい場合、その擦り合わせを求められる魚類学者はその時、どのような対応を見せるのか? 不謹慎ながら個人的には非常に興味深い問題。

 いずれにせよ、既存の資料などをあさるには伝統的な体系を最小限反映させた方がよいと思われるので、以下のような配置にしています。これは系統を示しているというよりも、むしろ文献を見るさいの手引きのようなもんだと思って下さい。

 

_____Atheriniformes:アセリニフォームス/トウゴロウイワシ目

 | ?__Mugiliformes:ムギリフォームス/ボラ目(検索ではスズキ目の亜目、Mugiloidei:ムギロイデイ)

 | ?__Cyprinodontiformes:キプリノドンティフォームス/カダヤシ目

 | ?__Beloniformes:ベロニフォームス/ダツ目 サンマ 

 | ?__Stephanoberyciformes:ステファノベリシフォームス:カンムリキンメダイ目(検索ではキンメダイの亜目)

 | ?__Cetomimiformes:ケトミミフォームス/クジラウオ目(Nelson94ではカンムリキンメの科)

 | ?__Beryciformes:ベリシフォームス/キンメダイ目

 | ?__Zeiformes:ゼイフォームス/マトウダイ目 マトウダイ 

 | ?__Gasterosteiformes:ガステロステイフォームス/トゲウオ目(トゲウオ ヨウジウオ ウミテングはまとめられる場合あり)

 | ?__Syngnathiformes:シングナシフォームス/ヨウジウオ目 アカヤガラ 

 | ?__Pegasiformes:ペガシフォームス/ウミテング目

 | ?__Synbranchiformes:シンブランキフォームス/タウナギ目

 | ?__Lophiiformes:ロフィフォームス/アンコウ目

 | ?==Scorpaeniformes:スコルパエニフォームス/カサゴ目(多系統らしい)

 |    |_____カサゴ

 |    |_____ミノカサゴ 

 |    |_____イズカサゴ 

 |    |_____オニオコゼ 

 |    |_____アイナメ

 |    |_____ホウボウ 

 |

 | ?__Pleuronectiformes:プレウロネクティフォームス/カレイ目

 | ?__Tetraodontiformes:テトラオドンティフォームス/フグ目 ウマヅラハギ

 |

 |    以下Perciformes:ペルシフォームス/スズキ目(多系統?)

 |_______Percoidei:ペルコイデイ/スズキ亜目 ブリ カンパチ ソコイトヨリ アオハタ 

      |?_Polynemoidei:ポリネモイデイ/ツバメコノシロ亜目(Nelson ではスズキ亜目の科)

      |?_Echeneoidei:エケネオイデイ/コバンザメ亜目(Nelson ではスズキ亜目の科)

      |__Elassomatoidei:エラッソマトイデイ

      |__Labroidei:ラブロイデイ/ベラ亜目

      |__Zoarcoidei:ゾアルコイデイ/ゲンゲ亜目

      |__Notothenioidei:ノトセニオイデイ

      |__Trachinoidei:トラキノイデイ/ワニギス亜目

      |?_Ammodytoidei:アンモディトイデイ/イカナゴ亜目(Nelsonではワニギス亜目の科)

      |__Blennioidei:ブレンニオイデイ/ギンポ亜目

      |__Icosteoidei:イコステオイデイ/イレズミコンニャクアジ亜目

      |__Gobiesocoidei:ゴビエソコイデイ

      |__Callionymoidei:カリオニモイデイ/ネズッポ亜目

      |__Gobioidei:ゴビオビデイ/ハゼ亜目

      |?_Schindlerioidei:スキンドレリオイデイ/シラスウオ亜目(Nelsonではハゼ亜目の科)

      |__Kurtoidei:クルトイデイ

      |__Achanthuroidei:アカンスロイデイ/ニザダイ亜目

      |__Scombrolabracoidei:スコンブロラブラコイデイ/ムカシクロタチ亜目

      |__Scombroidei:スコンブロイデイ/サバ亜目 マサバ サワラ 

      |__Stromateoidei:ストロマテオイデイ/イボダイ亜目

      |__Anabantoidei:アナバントイデイ/キノボリ亜目

      |__Channoidei:キャンノイデイ/タイワンドジョウ亜目

 

 参考:

 Fishes of the World 3ed

 日本産魚類検索

 

 

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